説明

接着剤

【課題】シクロオレフィンポリマーに対して高い接着性を示す接着剤の提供。
【解決手段】以下(A)〜(C)成分を含有する接着剤。(A)成分は、分子の末端又は側鎖に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、且つ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有する(メタ)アクリレート、(B)成分は、ジシクロペンテニル基を有する(メタ)アクリレート、(C)成分は、光開始剤である。ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンの水素添加物、及びポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の骨格が好ましい。シランカップリング剤を含有してもよい。被着体表面に、該接着剤を厚み0.0001〜5mmで塗布し、波長300〜400nm、積算光量1000〜6000J/cm2、照射時間1〜60秒の条件下で、被着体を接着することを特徴とする接着方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロオレフィンポリマー用接着剤に関する。さらに詳しくは、光硬化であると共に、シクロオレフィンポリマーに対して高い接着力を示すシクロオレフィンポリマー用接着剤とそれを用いた接着体に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロオレフィンポリマーは、電子材料、光学レンズ及び医療材料等の用途に使用されている。シクロオレフィンポリマーは極性が小さく、表面に多くの官能基を持たないことから、難被着体として知られている。このようなシクロオレフィン系樹脂を接着する接着剤としては溶剤型接着剤やホットメルト接着剤が挙げられる。
【0003】
又、オレフィン系樹脂を接着する方法としては、特許文献1に開示されているように、プライマーによる処理を行ってから瞬間接着剤により接着するという方法が挙げられる。
【特許文献1】特開昭62−18485号公報
【発明の開示】
【0004】
溶剤型接着剤は、溶剤を使用することから人体に有害である上、溶剤の揮発に時間がかかり、接着強度自体も十分なものが得られない。
【0005】
ホットメルト接着剤は、接着剤を溶融させる手間及び装置が必要である。又、この接着剤の場合も十分な接着強度を得ることができない。尚、ホットメルト接着剤を用いる場合、シクロオレフィンポリマーを予め加熱しておけば、接着強度は向上するが、樹脂が変形してしまうという新たな問題が発生する。
【0006】
特許文献1に開示されている接着方法によれば、プライマー処理に手間がかかるという問題がある上、接着強度も十分なものが得られない。
【0007】
特許文献2は、(メタ)アクリレートを含有することを特徴とするエネルギー線硬化性樹脂組成物が開示されている。しかし、ジシクロペンテニル基を有する(メタ)アクリレートについては記載がない。
【特許文献2】特開2007−77321号公報
【0008】
本発明はそのような実情に鑑みてなされたもので、シクロオレフィンポリマーに対して短時間で十分な接着強度を発現でき、且つ、無溶剤型で環境に優しいシクロオレフィンポリマー用接着剤の提供を目的とする。
【0009】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有する(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル構造を有する(メタ)アクリレート及び光開始剤を含有する接着剤が、前記の目的を達成し得ることを見いだし、本発明に至ったものである。
【0010】
即ち、本発明は、以下の通りである。
下記(A)〜(C)成分を含有する接着剤。
(A)成分は、分子の末端又は側鎖に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、且つ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有する(メタ)アクリレート、
(B)成分は、ジシクロペンテニル基を有する(メタ)アクリレート、
(C)成分は、光開始剤
ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格が、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンの水素添加物及びポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の骨格である該接着剤。
さらに(D)成分として、シランカップリング剤を含有することを特徴とする該接着剤。
さらに(E)成分として、単官能(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする該接着剤。
(A)成分の(メタ)アクリレートの分子量が500〜50000である該接着剤。
さらに(B)成分が、ジシクロペンテニルアクリレートであることを特徴とする該接着剤。
該接着剤の硬化物の弾性率が0.1〜10000MPa(23℃)の範囲内であることを特徴とするシクロオレフィンポリマー用接着剤。
該接着剤がシクロオレフィンポリマー用接着剤である接着剤。
該接着剤を用いて被着体を接着する接着体。
被着体が、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール及びガラスからなる群から選ばれる1種又は2種以上である該接着体。
被着体表面に、該接着剤を厚み0.0001〜5mmになるように塗布し、波長300〜400nm、積算光量1000〜6000J/cm2、照射時間1〜60秒の条件下で、被着体を接着することを特徴とする接着方法。
【0011】
本発明の接着剤は、シクロオレフィンポリマーに対して高い接着強度を示すという特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における(A)成分は、分子の末端又は側鎖に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有してなり、且つ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有する(メタ)アクリレートである。
【0013】
(メタ)アクリレートの主鎖骨格は、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格である。ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンの水素添加物及びポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の骨格が挙げられる。これらの中では、ポリイソプレン及びポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ポリイソプレンがより好ましい。
【0014】
(メタ)アクリレートは、上記主鎖骨格の末端又は側鎖に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する。中でも主鎖骨格の両末端に(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。
【0015】
(メタ)アクリレートは分子量が500〜50000が好ましく、8000〜45000がより好ましい。分子量が500以上であれば、本発明の接着剤にエネルギー線を照射して得られる硬化物の硬度が高いので接着剤層を形成しやすくなる。分子量が50000以下であれば、得られる接着剤の粘度が小さいので、製造過程での混合等における作業性や実用用途において当該接着剤を用いる際の作業性が良好である。
【0016】
(A)成分の(メタ)アクリレートとしては、クラレ社製「UC−203」(イソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2-ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物オリゴマー)、日本曹達社製「TEAI−1000」(水素添加1,2−ポリブタジエンオリゴマー)、日本曹達社製「TE−2000」(1,2−ポリブタジエンオリゴマー)、サートマー社製「CN−301」「CN−303」「CN−307」(ポリブタジエン系アクリレートオリゴマー)等が挙げられる。
【0017】
(B)成分は、分子の末端又は側鎖に1個以上のジシクロペンテニル基を含有する(メタ)アクリレートである。(A)成分の(メタ)アクリレートとしては、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等を例示することができる。これらの中では、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0018】
(C)成分は、光開始剤である。光開始剤には紫外線重合開始剤や可視光重合開始剤等があるが、どちらも制限なく用いられる。紫外線重合開始剤としては、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系等が挙げられる。可視光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキサイド系、チオキサントン系、メタロセン系、キノン系、α−アミノアルキルフェノン系等が挙げられる。
【0019】
光開始剤としては、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンジル,ベンゾイン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、1−(4−イソプロピルフェニル)2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1―プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、カンファーキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル―2-ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0020】
(D)成分は、シランカップリング剤である。シランカップリング剤としては、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン、ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸エステル、メタクリロキシオキシエチルアシッドフォスフェート、メタクリロキシオキシエチルアシッドフォスフェートモノエチルアミンハーフソルト等が挙げられる。特にガラス密着性という観点から、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び/又はγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好まれる。
【0021】
本発明の接着剤は、前記(A)〜(C)成分を必須成分として含有する。前記(A)〜(C)成分を含有する接着剤は、光を照射することにより硬化する。硬化物はシクロオレフィンポリマーに対して接着性が良好であるとともに、前記硬化に際して表面硬化性が高い特徴を示す。本発明の接着剤は、ポリカーボネート等の汎用プラスチック樹脂、ガラス被着体に対しても高い接着強さを示す。
【0022】
本発明の接着剤は、特にガラス面への密着性を一層向上させることを目的に、カルボキシル基を有する(メタ)アクリレート、分子中に水酸基を有する(メタ)アクリレートをさらに含有することができる。
【0023】
本発明の接着剤は、柔軟性を一層向上させることを目的に、エステル結合を介することにより炭素数10〜22の炭化水素を有する単官能(メタ)アクリレートを含有することができる。
【0024】
(E)成分は、単官能(メタ)アクリレートである。単官能(メタ)アクリレートをとしては、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、アルキル(C12〜13)(メタ)アクリレート、アルキル(C12〜15)(メタ)アクリレート、アルキル(C14〜18)(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。特に柔軟性付与の観点より、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレートからなる群のうちの1種又は2種以上が特に好まれる。
【0025】
本発明の接着剤は、シクロオレフィンポリマーに対する密着性をさらに向上させることを目的に、C5留分より合成された添加剤を使用することができる。
【0026】
C5留分より合成された添加剤としては、日本ゼオン社製「クイントン」(ジシクロペンタジエン樹脂)、荒川化学社製「アルコン」、日本石油社製 「ネオポリマー」等が挙げられる。
【0027】
本発明の接着剤に於いて、(A)成分を5〜90質量%、(B)成分を5〜90質量%、(C)成分を0.05〜30質量%、(D)成分を0.01〜5質量%含有する場合が、接着剤のシクロオレフィンポリマーに対する接着性が特段に高くなり、且つ、ポリカーボネート等の汎用プラスチック樹脂、ガラス被着体に対しても高い接着強さを有するようになるので、好ましい。本発明の接着剤に於いて、(A)成分を10〜80質量%、(B)成分を10〜80質量%、(C)成分を0.1〜15質量%、(D)成分を0.1〜3質量%含有する場合が、より好ましい。
【0028】
本発明の接着剤に於いて、(E)成分を含有する場合の含有量は以下の通りである。(A)成分を5〜90質量%、(B)成分を5〜90質量%、(C)成分を0.05〜30質量%、(D)成分を0.01〜5質量%、(E)成分を1〜70質量%含有する場合が、接着剤のシクロオレフィンポリマーに対する接着性が特段に高くなり、且つ、ポリカーボネート等の汎用プラスチック樹脂、ガラス被着体に対しても高い接着強さを有するようになるので、好ましい。本発明の接着剤に於いて、(A)成分を10〜80質量%、(B)成分を10〜80質量%、(C)成分を0.1〜15質量%、(D)成分を0.1〜3質量%、(E)成分を2〜50質量%含有する場合が、より好ましい。
【0029】
尚、本発明の接着剤は、本発明の目的を損なわない範囲で、アクリルゴム、ウレタンゴム等の各種エラストマー、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体やアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系グラフト共重合体等のグラフト共重合体、溶剤、増量材、補強材、可塑剤、増粘剤、染料、顔料、難燃剤、酸化防止剤及び界面活性剤等の添加剤を使用することができる。
【0030】
本発明の接着剤の硬化物は0.1〜10000MPa(23℃)の弾性率を有することが好ましく、1〜1000MPaの弾性率を有することがより好ましい。接着剤硬化物の弾性率が0.1MPa以上である場合、硬化物が硬化し、未反応成分が残らない。10000MPa以下である場合、硬化物が剛直になりすぎず、接着力が低下しない。
【0031】
本発明のシクロオレフィンポリマーとは、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等の環状オレフィン(シクロオレフィン)モノマー由来の構成単位を有する熱可塑性樹脂をいう。シクロオレフィンポリマーとしては、シクロオレフィンの開環重合体、2種以上のシクロオレフィンを用いた開環共重合体の水素添加物、鎖状オレフィンやビニル基を有する芳香族化合物とシクロオレフィンとの付加共重合体等が挙げられる。又、シクロオレフィンポリマーに、極性基を導入してもよい。
【0032】
市販のシクロオレフィンポリマーとしては、例えば、独 Ticona 社製の「Topas 」、ジェイエスアール社製の「アートン」、日本ゼオン社製の「ゼオノア(ZEONOR)」や「ゼオネックス(ZEONEX)」、三井化学社製の「アペル」等が挙げられる。
【0033】
本発明の接着剤の接着方法は、例えば、以下の通りである。被着体2枚のうち少なくとも1枚の被着体表面に接着剤を厚み0.0001〜5mmになるように塗布し、その後、被着体同士を貼り合わせ、波長300〜400nm、積算光量1000〜6000J/cm2、照射時間1〜60秒の条件下で接着剤を硬化し、被着体を接着する方法が好ましい。
【実施例】
【0034】
以下に、実験例をあげて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実験例に記載の接着剤中の各成分として、以下の化合物を選択した。
【0035】
(A)成分の、分子の末端又は側鎖に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有してなり、且つ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有する(メタ)アクリレートとして、
(A−1)イソプレン重合物の無水マレイン酸付加物と2−ヒドロキシエチルメタクリレートとのエステル化物オリゴマー(クラレ社製「UC−203」)(GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量36000)
(A−2)水素添加1,2−ポリブタジエンオリゴマー(日本曹達社製「TEAI−1000」)(GPCによるポリスチレン換算の数平均分子量1000)
(B)成分の、ジシクロペンテニル基を含有する(メタ)アクリレートとして、ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成社製「FA−511AS」)
(C)成分の光開始剤として、
(C−1) 1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製「IRGACURE184」)
(C−2)ベンジルジメチルケタール
(D)成分のシランカップリング剤として、
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
(E)成分の単官能(メタ)アクリレートとして、
ラウリルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルL」)
比較例として、
2−ヒドロキシブチルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルHOB」)、ベンジルメタクリレート(共栄社化学社製「ライトエステルBZ」)
【0036】
各種物性は、次のように測定した。
【0037】
〔光硬化性〕温度23℃で測定した。光硬化性に関しては、ZEONEX480R(日本ゼオン社製)試験片(25×25×2.0mm)表面に接着剤を厚み0.08mmになるように塗布した。その後、無電極放電ランプを使用したフュージョン社製硬化装置を用い、波長365nm、積算光量2000mJ/cm2の条件にて15秒間照射し、硬化させた。光硬化性として、硬化率を記載した。硬化率は、FT−IRを使用し、以下の式により算出した。
(硬化率)=[100−((硬化後の、炭素と炭素の二重結合の吸収スペクトルの強度)/(硬化前の、炭素と炭素の二重結合の吸収スペクトルの強度))]×100(%)
【0038】
〔シクロオレフィンポリマー接着性評価(ZEONEX 試験片間の引張接着強さ)〕ZEONEX480R(日本ゼオン社製)試験片(25×25×2.0mm)同士を、厚み80μm×幅11.5mm×長さ25mmのテフロン(登録商標)テープをスペーサーとして用い、接着剤を接着させた(接着面積3.125cm2)。硬化後、接着剤で接着した該試験片を用いて引張接着強さを測定した。接着条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。
【0039】
〔汎用ポリマー接着性評価(ポリカーボネート(帝人社製) 試験片間の引張接着強さ)〕パンライト(帝人社製)試験片(25×25×2.0mm)同士を、厚み80μm×幅11.5mm×長さ25mmのテフロン(登録商標)テープをスペーサーとして用い、接着剤を接着させた(接着面積3.125cm2)。硬化後、接着剤で接着した該試験片を用いて引張接着強さを測定した。接着条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。
【0040】
〔ガラス接着性評価(耐熱ガラス 試験片間の引張接着強さ)〕耐熱ガラス試験片(25×25×2.0mm)同士を、厚み80μm×幅11.5mm×長さ25mmのテフロン(登録商標)テープをスペーサーとして用い、接着剤を接着させた(接着面積3.125cm2)。接着条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。上記条件にて接着剤を硬化させた後、さらに、試験片の裏側に電気化学工業社製接着剤「G−55」を使用し、亜鉛メッキ鋼板(100×25×2.0mm、エンジニアリングテストサービス社製)を接着させた。硬化後、接着剤で接着した該試験片を用いて引張接着強さを測定した。
【0041】
引っ張り接着強さ(単位:MPa)は、温度23℃、湿度50%の環境下、引張速度10mm/分で測定した。
【0042】
〔貯蔵弾性率評価〕温度23℃で測定した。接着剤を硬化させて、長さ20mm×幅5mm×厚み1mmの硬化物試料を調製した。接着条件は〔光硬化性〕に記載の方法に従った。この硬化物試料を評価した。セイコー電子工業(株)社製テンションモジュールDMS210を使用し、周波数1Hz、歪み0.05%の条件で温度を変更して、引っ張りモードで動的粘弾性スペクトルを測定し、23℃における貯蔵弾性率E‘の値を求めた。
【0043】
(実験例1〜12)表1に示す種類の原材料を表1に示す組成で混合して接着剤を調製した。得られた接着剤について、各種物性の測定を実施した。それらの結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
表1より以下のことが認められる。本発明の接着剤は、シクロオレフィンポリマーに対して高い接着性を示す(実験例1〜7)。本発明の接着剤は、ポリカーボネートやガラスに対しても高い接着性を示す(実験例1〜7)。(D)成分のシランカップリング剤を使用すると、より高い接着性を示す(実験例1〜4、6〜7)。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のシクロオレフィンポリマー用接着剤は、光学部品を初めとする難被着体に対して高い接着強さを有する。特にシクロオレフィンポリマーに対する接着性が高い。シクロオレフィンポリマーは、軽量化・高強度化が進行する光デバイス分野で使用している。本発明は、光デバイス分野において応用できることから、産業上非常に有効である
【0047】
又、本発明の接着剤は、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール及びポリカーボネート等の汎用プラスチック樹脂及びガラス被着体等の光学部品に対して高い接着強さを有する。
【0048】
又、本発明の接着剤は、シクロオレフィンポリマー、ポリビニルアルコール及びセルローストリアセテートなど光学用途に必須な位相差フィルム及び偏光板などの薄膜フィルムに対して高い接着強さを有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)成分を含有する接着剤。
(A)成分は、分子の末端又は側鎖に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、且つ、ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格を有する(メタ)アクリレート、
(B)成分は、ジシクロペンテニル基を有する(メタ)アクリレート、
(C)成分は、光開始剤
【請求項2】
ジエン系又は水素添加されたジエン系の骨格が、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリブタジエンの水素添加物及びポリイソプレンの水素添加物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の骨格である請求項1に記載の接着剤。
【請求項3】
さらに(D)成分として、シランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の接着剤。
【請求項4】
さらに(E)成分として、単官能(メタ)アクリレートを含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項5】
(A)成分の(メタ)アクリレートの分子量が500〜50000である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項6】
さらに(B)成分が、ジシクロペンテニルアクリレートであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の接着剤。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の接着剤の硬化物の弾性率が0.1〜10000MPa(23℃)の範囲内であることを特徴とするシクロオレフィンポリマー用接着剤。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の接着剤がシクロオレフィンポリマー用接着剤である接着剤。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の接着剤を用いて被着体を接着する接着体。
【請求項10】
被着体が、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、ポリビニルアルコール及びガラスからなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項9に記載の接着体。
【請求項11】
被着体表面に、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の接着剤を厚み0.0001〜5mmになるように塗布し、波長300〜400nm、積算光量1000〜6000J/cm2、照射時間1〜60秒の条件下で、被着体を接着することを特徴とする接着方法。

【公開番号】特開2009−299037(P2009−299037A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113079(P2009−113079)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】