説明

接続解除具

【課題】管と管継手との接続状態をより簡単且つ迅速に解除するための接続解除具を提供する。
【解決手段】本発明の接続解除具100は、弾性変形可能な外方に突出する係合片123が備えられた管20と、当該管20が挿入される受け口111及び係合片123が挿通されてその縁部112aに係合される貫通孔112を有する管継手10との接続状態を解除する。この接続解除具100は、管継手10に設けられた被掛止部114に掛止される掛止部101と、掛止部101を支点として回動操作するための操作部102と、回動操作により、貫通孔112内に挿入されて前記係合片123を押圧し、貫通孔111から係合片123を離脱させる押圧部103と、を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に配線などを収容して保護する管と、当該管が接続された管継手との接続状態を解除する接続解除具に関する。
【背景技術】
【0002】
地中や壁内に配線や配管材(以下、配線等という)を埋設する場合、配線等を保護するのに保護管が用いられている。この管は、埋設現場において適宜相互に接続可能とする必要があり、あるいは、収容された配線等の分岐等のために埋設ボックス(ハンドホール)へ接続可能とする必要があり、これら接続のために管継手が一般的に利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、管継手(30)(以下、()内で特許文献1の符号を示す。)が開示されている。この管継手(30)は、管(40)が挿入される受け口(1)を有する継手本体(10)と、管(40)の溝部(蛇腹の谷部)に装着される抜け止め部材(20)とを備える。この抜け止め部材(20)は、ほぼ馬蹄形状をしており、管の外形の一辺に沿うように形成された1つの直線部(12)と、外方に膨らむように湾曲していると共に内方に弾性変形可能に形成された2つの係止部(13)とからなる。そして、直線部(12)の両端部から2つの係止部(13)が延びていると共に、直線部(12)に対向する位置の辺が切り欠き部(11)として開放されている。つまり、抜け止め部材(20)は、直線部(12)としての1辺と、係止部(13)としての2辺とからなる平面視コ字状の帯体である。
【0004】
他方、継手本体(10)の周壁には2つの係止部(13)が係合するための係合部としての貫通孔(2)が穿設されている。そして、抜け止め部材(20)が装着された状態の管(30)を受け口(1)に挿入すると、係止部(13)が弾性変形し、さらに貫通孔(2)内で弾性復帰することで、各係止部(13)が各貫通孔(2)内にそれぞれ係合されて、管(40)が管継手(30)に抜け止め状態に接続される。すなわち、特許文献1の管継手(30)は、管(40)を抜け止め状態で容易に接続することを可能にするものである。
【0005】
そして、この管継手(30)と管(40)との接続状態を解除するには、外方から貫通孔(2)内の係止部(13)を押圧し、係止部(13)を内方に弾性変形させて、貫通孔(2)から係止部(13)を離脱させる必要がある。通常、ドライバー等の先端が鋭利な工具を貫通孔(2)から差し込み、まず一箇所において、係止部(13)を貫通孔(2)から離脱させた後に、工具を当該貫通孔(2)から引き抜き、続けて、残りの全ての箇所の係止部(13)を貫通孔(2)から同様に離脱させるという手順を経ることによって、管継手(30)と管(40)との接続解除作業が実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−309502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、管と管継手との接続状態を解除する作業において、ドライバー等の工具を貫通孔に差し込むには、工具を操作するための広い空間を必要とする。すなわち、管が複数本積み重なって配置され、又は、狭い場所に管が配設されている場合には、貫通孔の外方に工具を操作するのに十分な空間がないため、管継手の側方から工具を貫通孔に対して垂直に差し込むことができず、係止部に押圧力を効率的に付加することが困難であった。あるいは、工具を操作するための空間を形成するために、管及び管継手を手元に引き寄せて作業を行うことが必要となり、作業効率が低下するという問題があった。
【0008】
さらに、一箇所で管と管継手との接続(係合)状態を解除した後、工具を貫通孔から引き抜いた状態は、非常に不安定な状態であるため、僅かな振動等によって、同箇所の係止部が貫通孔に再侵入して、接続状態を再構成し易いという問題があった。つまり、一箇所の接続解除作業を終えて、別の箇所の接続解除作業を行っているときに、既に解除した箇所で係止部が貫通孔と再係合することにより、同箇所の接続解除作業をもう一度やり直す必要性が生じる。このため、従来の管継手と管との接続解除作業は、作業時間及び熟練を要する非常に困難なものであった。
【0009】
したがって、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、管と管継手との接続状態をより簡単且つ迅速に解除するための接続解除具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の接続解除具は、弾性変形可能な外方に突出する係合片が備えられた管と、この管が挿入される受け口を有すると共に係合片が挿通されてその縁部に係合される貫通孔を周壁に有する管継手との接続状態を解除するための接続解除具であって、管継手に設けられた被掛止部に掛止される掛止部と、当該掛止部を支点として回動操作するための操作部と、回動操作により、管継手の貫通孔内に挿入されて管の係合片を押圧し、貫通孔から係合片を離脱させる押圧部と、を備えてなることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の接続解除具は、請求項1の接続解除具において、当該接続解除具の押圧部が管の係合片を押圧した状態を維持すべく、管継手の貫通孔内に押圧部を保持する係止部を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の接続解除具は、請求項2の接続解除具において、係止部は、押圧部の先端側に形成されてなり、貫通孔から係合片を離脱させて管の係合片と管継手の貫通孔との係合を解除した状態の貫通孔縁部に係止されることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の接続解除具は、請求項1から3のいずれかの接続解除具において、前記掛止部と前記押圧部との距離が、前記掛止部と前記操作部との距離よりも短くなるように形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の接続解除具は、請求項1から4のいずれかの接続解除具において、掛止部は管継手の受け口端縁に掛止されるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の接続解除具によれば、本発明の接続解除具の掛止部を管継手の被掛止部に掛止し、当該掛止部を支点として操作部を回動操作すると、押圧部が貫通孔内に挿入されて係合片を押圧し、係合片を内方に弾性変形させることにより、係合片と貫通孔(の縁部)との係合状態を解除して貫通孔から係合片を離脱させることができる。つまり、操作部に伝えられる回動方向への押圧力を、押圧部が係合片を押圧するための押圧力に効果的に変換するため、操作部を操作するだけで、係合片を貫通孔から簡単に押し出すことができる。したがって、本発明の接続解除具は、ドライバー等の工具を使用して管継手の側方から管継手に直交させて係合片を押圧しなければならない従来の接続解除作業に取って代わる接続解除手段を提供し、管継手と管との接続解除作業をより簡単且つ迅速に実施可能にするものである。
【0016】
請求項2に記載の接続解除具は、請求項1の接続解除具の効果に加えて、貫通孔内に押圧部を係止するための係止部をさらに備えていることにより、押圧部が係合片を押圧した状態を維持することができる。つまり、接続解除具が貫通孔に差し込まれた状態で貫通孔内で保持(係止)されることにより、外方に弾性復帰しようとする係合片に押し出されることなく、押圧部が係合片を押圧し続けるので、係合片が弾性復帰して貫通孔に再係合する不具合を防止することができる。すなわち、本発明の接続解除具を複数使用して、各接続箇所を順番に接続解除することにより、管と管継手とを簡単且つ迅速に接続解除することができる。
【0017】
請求項3に記載の接続解除具は、請求項2の接続解除具の効果に加えて、接続解除具の押圧部の先端側に係止部が設けられ、当該係止部が係合片と貫通孔との係合を解除した状態で貫通孔縁部に係止されるように形成されていることにより、簡易な構造でもって、接続解除具を貫通孔に挿入したままの係合解除状態を一係合箇所において維持することが可能である。
【0018】
請求項4に記載の接続解除具は、請求項1から3のいずれかの接続解除具の効果に加えて、掛止部から押圧部までの距離が、掛止部から操作部までの距離よりも短くなるように形成されていることにより、より弱い力で操作部を操作(押圧)したとしても、係合片と貫通孔縁部との係合を解除することができる。つまり、掛止部(支点)と操作部(作用点)との距離と、掛止部(支点)と押圧部との距離との関係による「てこの原理」を利用して、操作部に加えた力が押圧部において増幅され、一層大きい押圧力を得ることができる。したがって、管と管継手とを容易に接続解除することができる。
【0019】
請求項5に記載の接続解除具は、請求項1から4のいずれかの接続解除具の効果に加えて、掛止部が管継手の受け口端縁(被掛止部)を利用して、これに掛止されることにより、管継手外面に別途被掛止部を加工形成する必要がなく、本発明の接続解除具を簡易に管継手外面に掛止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態における、接続解除具の全体斜視図。
【図2】図1の接続解除具に使用される、管継手及び管を示す分解斜視図。
【図3】図2の管継手の継手本体を示し、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は正面図。
【図4】図2の管継手の抜止部材を示し、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は正面図、(d)は係合部の断面図。
【図5】図2の管継手と管との接続状態を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は側面図。
【図6】図5(a)のA−A断面の部分拡大図。
【図7】図5(b)のB−B横断面図。
【図8】図1の接続解除具を使用して、管継手と管との接続状態を解除する方法を示し、(a)は接続解除具を被掛止片に掛止した状態、(b)は接続解除具で係合部を押圧した状態。
【図9】図1の接続解除具を使用して、係合部と貫通孔縁部との全係合状態を解除した状態を示す斜視図。
【図10】図9のC−C横断面図。
【図11】複数の管継手及び管が積み重なった状態を示す図。
【図12】本発明の一変形例の接続解除具を示す概略図。
【図13】本発明の一変形例の管継手及び管を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0022】
図1(a)〜(c)は、本発明の一実施形態としての接続解除具100を示す。接続解除具100は一端100aから他端100bに延びる扁平板形状を有し、前面100c及び背面100dからなる。図1(b)に示すとおり、この接続解除具の一端100aにおいて、前面100cから鉤爪状の掛止部101が前方に突出形成されている。また、接続解除具の略中央から他端100bにかけて、背面100dに複数の凹凸を有する操作部102が設けられている。当該凹凸は、操作部102を指で操作するときの滑り止め機能を有する。さらに、接続解除具100の略中央において、前面100cから略垂直に突起状の押圧部103が前方に突出形成されている。当該押圧部103の先端からは、爪状の係止部103aが下方に延在している。また、この押圧部103はその上面が下方に傾斜するようにテーパー状に形成されている。
【0023】
また、接続解除具100は、その上端100aに連結開口部104と、一方の側面略中央に連結突起105と、他方の側面略中央に連結孔106と、を有する。これら連結開口部104、連結突起105及び連結孔106は、当該接続解除具100を接続解除に使用する前又は使用した後に、複数の接続解除具100を連結して収納等することに使用される。すなわち、一の接続解除具100−1の連結突起105−1を他の接続解除具100−2の連結孔106−2に係合させ、さらに、連結開口部105−1及び105−2に紐などを挿通させることにより、接続解除具を一括りにして、収納又は持ち運び等することができる。なお、本実施形態では、管継手10及び管20の接続状態は4箇所の係合によって形成されているので、4つの接続解除具100が用いられる。
【0024】
さらに、図1(c)に示すとおり、接続解除具100の正面視において、掛止部101から押圧部103までの距離をL1、掛止部101から操作部102下端までの距離をL2と定義すると、L2はL1よりも大きい。
【0025】
なお、本実施形態の接続解除具100は、ポリカーボネートを成型して形成されているが、本発明は、この材料及び製法に限定されることなく、他の材料及び製法を任意に選択可能である。
【0026】
次に、本発明の一実施形態の接続解除具100を使用する方法を説明するために、本実施形態で用いられる管継手10及び管20について説明する。
【0027】
図2に示すとおり、管継手10は、継手本体110と抜止部材120とからなり、管20を継手本体110の受け口111内に挿入して接続状態を保持することにより、管同士の連通及び管のハンドホールへの接続等の用途に使用される。管20は、角型の可撓性波付管であり、内部に線材又は管材等が配置及び保護することに使用される。また、当該管20の外周に亘って、抜止部材120を装着するのに十分な所定幅の環状溝部21が形成されている。さらに、当該溝部21の左右両側部には、位置決め突起21aが設けられており、管20に対する抜止部材120の装着方向をガイドする機能を有する。
【0028】
図3(a)〜(c)に示すとおり、継手本体110は、断面視略矩形状の中空の筒体であり、管20の断面形状に対応する形状を有する矩形状の受け口111をその両端に有する。この継手本体110両端の受け口111近傍の4つの隅角部には、スリット状の貫通孔(被係合部)112が継手本体110の側壁にそれぞれ穿設されている。また、継手本体100の受け口111近傍の内周壁には、雨水等の侵入を防止するための止水材113が貼付されている。この止水材113は、水膨潤性不織布等が用いられ、管継手10と管20との接続状態で、雨水等を吸水して膨張復元し、管20外面及び継手本体110内壁間の空間を密封することにより、高い止水性を発揮する。さらに、受け口111の端縁が切り欠かれ、被掛止片(被係止部)114が形成されている。後述するとおり、当該被掛止片114は、当該接続解除具100の掛止部101を掛止可能に形成されている。
【0029】
図4(a)〜(c)に示すとおり、抜止部材120は平面視略矩形状の帯状体であり、その外周部120aが継手本体110の内周壁形状(寸法)に対応すると共に、その内周部120bが管20の溝部21の外周壁形状(寸法)に対応するように形成されている。また、抜止部材120は所定の幅を有し、幅方向の一端120cと他端120dとからなる。後述するとおり、管継手10と管20とを接続した際、一端120cが継手本体110の延在方向に位置し、他方、他端120dが管20の延在方向に位置する。この抜止部材120の各4辺の同一辺上に、各辺の略中央に位置する直線状の装着部121と、当該装着部121の両端から外方に凸設された内方に弾性変形可能な弾性変形部122(係合片)とが形成されている。後述するように、管継手10と管20とを接続する際、装着部121は管20の溝部21の外周壁に密着(当接)可能に形成されており、他方、弾性変形部122は、溝部21の外面から離隔すると共に、管20(及び抜止部材120)の挿入時に継手本体110の内周壁によって内方に押圧されるように装着部121から突設されている。
【0030】
当該弾性変形部122は抜止部材120の4つの隅角において各隣接する2辺に亘ってそれぞれ形成されており、各弾性変形部122の略中央(すなわち、抜止部材120の各隅角)には、継手本体110の(4つの)貫通孔112縁部に係合可能な(4つの)係合部123(係合片)が、各弾性変形部122から外方に突出形成されている。図4(d)に示すとおり、係合部123には、抜止部材120幅方向の一端120cから他端120dにかけて上昇傾斜する傾斜面123aが形成されている。
【0031】
さらに、抜止部材120の1辺(図4(c)における下辺)の装着部121には、開放部124が形成されている。後述するとおり、抜止部材120の帯状体全体を弾性変形させることにより、開放部124の幅を広げて、抜止部材120を管20に装着する。他方、抜止部材120の対向する2辺(図4(c)における左辺及び右辺)の装着部121には、後述の管20の溝部21に形成された位置決め突起21a上に、左右の装着部121が位置するように、管20への抜止部材120の取り付け方向をガイドするための切り欠き121aが抜止部材120の他端120d側に形成されている。
【0032】
図5(a)及び(b)は、本実施形態の管継手10の両端に管20(20−1及び20−2)が接続された継手構造を示している。管20の左右両側面の位置決め突起21aが抜止部材120の切り欠き121a内に収容されるように、管継手10が一方の管20−1と他方の管20−2とを連通するように左右に連結している。
【0033】
上記接続状態を、図6及び図7を参照して、より詳細に説明する。
【0034】
図6は、図5(a)のA−A断面の部分拡大図であり、係合部123と貫通孔112縁部との係合状態を示す。図6に示すとおり、継手本体110の貫通孔112内に抜止部材120の弾性変形部122に形成された係合部123が侵入して、係合部123が貫通孔112の端縁112a(縁部)に係合することによって、係合部123と貫通孔112縁部との係合状態を形成している。そして、弾性変形部122の弾性復帰力により、貫通孔112の周端縁112bと弾性変形部122外面とが当接している。
【0035】
図7は、図5(b)のB−B横断面図であり、接続状態において、管20の溝部21外周面と抜止部材120の装着部121内面とが当接している。当該装着部121は直線状に形成されており、平面状の管20外面に対して密着配置されている。そして、抜止部材120の弾性変形部122内面と管20の溝部21外面との間に空間を形成するように各弾性変形部122が各装着部121に対して突出していると共に、当該弾性変形部122外面と継手本体110内壁とが当接しつつ各係合部123が各貫通孔112の縁部に係合している。そして、この管20の内部にケーブル等(図示せず)が配線される。
【0036】
次に、本実施形態の接続解除具100を使用して上述した管継手10と管20との接続状態を解除する方法を説明する。図8(a)では、継手本体110の貫通孔112(の端縁)に、抜止部材120の弾性変形部122に形成された係合部123が係合し、管継手10と管20との接続状態を形成している。当該接続状態を解除するために、まず、図8(a)に示すとおり、接続解除具100の掛止部101を、継手本体110の受け口111端縁に切り欠き形成された被掛止片114に掛止する。この掛止した状態で、当該掛止部101を支点として、押圧部103を貫通孔112に差し込むように、操作部102を矢印方向に回動操作する。
【0037】
そして、操作部102を回動させると、押圧部103が貫通孔112縁部に係合した係合部123に当接する。さらに操作部102に力を加えると、図8(b)に示すとおり、テーパー状の押圧部103が係合部123の傾斜面123aを管20の内面方向且つ離脱方向に押圧し、弾性変形部122を内方に弾性変形させて、係合部123を貫通孔112から内方に離脱させる。これにより、当該箇所における係合部123の貫通孔112に対する係合状態を解除することができる。このとき、押圧部103の先端に形成された係止部103aと、貫通孔112の縁部112cとが係合し、当該接続解除具100は貫通孔112内に抜け止め状態で係止されて保持される。さらに、図8(b)の状態では、押圧部103が係合部123の傾斜面123aに対して離脱方向に作用しているので、抜止部材120を装着した管20を容易に離脱させることができる。これと同時に、係合部123の傾斜面123aが押圧部103に対して管継手110の貫通孔112端縁方向(図8(b)の左方向)に作用しているので、係止部103aを縁部112cに一層強固に係止させることができる。
【0038】
上述により、一の係合箇所での係合解除法を説明したが、一の係合箇所において接続解除具100を抜け止め状態で貫通孔112内に保持させたまま、他の係合箇所においても同様の作業により、各係合状態を解除することができる。すなわち、図9に示すとおり、各接続解除具100を各貫通孔112内に係止させた状態で、全ての係合箇所の係合状態を順番に解除することによって、管継手10と管20との接続状態を解除する。そして、管20を管継手本体110から引き抜くと、継手本体110の各貫通孔112内において、各接続解除具100の押圧部103に対する傾斜面123aによる作用力がなくなると共に、押圧部103上面に空間が生じる。この状態では、各接続解除具100が掛止部101を介して継手本体110の受け口111端縁にただ単に引っ掛かっているだけであり、つまり、各接続解除具100の掛止部101を受け口111端縁から離脱させることで、各接続解除具100が継手本体110から簡単に取り外される。この取り外された複数の接続解除具100は、上述したとおり、各接続解除具100の連結開口部104、連結突起105及び連結孔106を介して、一括りにして収容等される。
【0039】
図10は、全(4つの)係合箇所の係合状態が4つの接続解除具100によって解除された状態を示す図8のC−C横断面図である。図10に示すとおり、各接続解除具100は、継手本体110の各貫通孔112内に挿入され、抜止部材120の係合部123を押圧して、弾性変形部122を内方に弾性変形させ、それぞれの係合状態を解除している。すなわち、継手本体110と抜止部材120との係合が存在しないので、管20を管継手10から容易に引き抜くことができる。
【0040】
以下、本発明の一実施形態の接続解除具100の作用効果について説明する。
【0041】
一実施形態の接続解除具100の掛止部101を、管継手10の被掛止片114に掛止し、当該掛止部101を支点として操作部102を回動操作すると、押圧部103が貫通孔112内に挿入されて抜止部材120の係合部123を押圧することによって、押圧部103が抜止部材120の弾性変形部122を内方に弾性変形させ、貫通孔112から係合部123を離脱させることができる。つまり、操作部102に伝えられる回動方向への押圧力を、押圧部103が係合部123を押圧するための押圧力に変換させることにより、操作部102を所定の力で操作(押圧)するだけで、操作部102に与えた力を押圧部103に効果的に伝達し、貫通孔112から係合部123を簡単に押し出すことができる。したがって、本実施形態の接続解除具100は、接続解除作業を簡単且つ迅速に実施可能にするものである。
【0042】
また、一実施形態の接続解除具100では、貫通孔112内に押圧部113を係止するための係止部113aが押圧部113先端に設けられており、押圧部113が係合部123を押圧した状態で、当該係止部113aが貫通孔112の縁部112cに係止されることよって、接続解除具100を抜け止め防止状態で貫通孔112内に係止させて、当該押圧状態を維持することができる。つまり、接続解除具100の押圧部103が外方に弾性復帰しようとする弾性変形部122及び係合部123(係合片)に押し出されることなく、接続解除具100が貫通孔112内に留まり、押圧部103が係合部123を押圧し続けるので、係合部123が貫通孔112内に弾性復帰して再係合することを防止することができる。すなわち、本実施形態の接続解除具100を複数個使用し、各係合箇所を順番に離脱させることによって、(係合解除作業を完了した)各箇所での再係合を防ぎつつ、管継手10と管20とを簡単且つ迅速に接続解除することができる。
【0043】
さらに、一実施形態の接続解除具100では、正面視における、掛止部101から押圧部103までの距離L1が、掛止部101から操作部102下端までの距離L2よりも短くなるように形成されていることにより、弱い力で操作部102を操作(押圧)したとしても、係合部123と貫通孔112縁部との係合を解除することができる。つまり、掛止部101(支点)と操作部102(作用点)との距離L2と、掛止部101(支点)と押圧部103との距離L1との関係による「てこの原理」を利用し、操作部102下端に加えられた力が押圧部103において最大でL2/L1倍(操作部102の下端を押圧した場合)に増幅され、より強い押圧力を得ることができる。したがって、管継手10と管20とを容易に接続解除することができる。
【0044】
そして、一実施形態の接続解除具100は、扁平板状の簡易且つコンパクトな外形を有している。すなわち、管継手10の周囲に十分広い空間がなくとも、接続解除具100を管継手10の貫通孔112に差し込むことができる空間さえ利用可能であれば、管継手10と管20とを接続解除することが可能である。例えば、図10に示すとおり、管20は積み重なって配管される場合、隣接する管20の合間を縫って、各貫通孔112に各接続解除具100を差し込むことにより、管継手10と管20との接続状態を簡単に解除することが可能である。すなわち、図11のような複数の管20が積み重なった状態では、従来のドライバー等の工具を使用する場合には管20を引き出す等の作業を行い管継手10の側方から作業をしなくてはならないが、本実施形態の接続解除具100を使用すると、管継手10の正面側から接続解除具100を図11の矢印方向に差し込むことにより、管継手10と管20との接続解除が可能であるので、従来の接続解除作業と比較して作業効率を著しく改善する。
【0045】
(変形例1)
一実施形態の接続解除具100では、一端100aから他端100bにかけて、掛止部101、押圧部103及び操作部102が配置されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図12の接続解除具100Aは、一端100aAに前面100aA側に突出する掛止部101Aと、当該掛止部101Aと反対方向(すなわち裏面100bA側)に突出する操作部102Aと、他端100bAに前面100aA側に突出する押圧部103Aと、を備える。この接続解除具100Aを使用して一実施形態の管継手10と管20との接続状態を解除する際、接続解除具100Aの掛止部101Aを、管継手10の被掛止片114に掛止し、操作部102Aを回動操作して、押圧部103Aが係合部113を押圧することにより、一実施形態と同様に、係合状態を解除することができる。したがって、本発明の接続解除具は、少なくとも掛止部、操作部及び押圧部を有していればよく、その位置や寸法を任意に選択可能であり、且つ、他の構成要素を付加可能であることは言うまでもない。
【0046】
(変形例2)
一実施形態では、説明の便宜上、継手本体110及び抜止部材120からなる管継手10と、溝部21を形成された波付管20との接続状態を解除する方法について説明したが、本発明は管継手10と管20との接続形態に限定されない。すなわち、外方に突出すると共に内方に弾性変形可能な係合片を有する管と、管を挿入可能な受け口、係合片を係合可能な貫通孔及び掛止部を掛止可能な被掛止部を有する管継手との接続解除状態を解除することに対して、本発明の接続解除具を使用可能である。つまり、本発明の接続解除具は、一実施形態に限定されない任意の管継手と管との接続状態の解除に使用されることを意図している。例えば、図13に、円形の受け口111Aと貫通孔112Aとを有する継手本体110A(管継手10A)、及び、内方に弾性変形可能な複数の係合片123Aが外周に一体形成された円管20Aを示す。本発明の接続解除具を使用して、管継手10Aと円管20Aとの接続状態を、上述した方法で同様に解除可能である。
【0047】
(変形例3)
一実施形態では、継手本体110の端縁を切り欠いて、被掛止部としての被掛止片114が形成されているが、継手本体110の端縁自体を被掛止部として機能させることも可能である。あるいは、図示しないが、継手本体の外壁に凹部(又は被掛止孔)を形成し、被掛止部としての凹部の縁に掛止部を掛止することも可能である。すなわち、本発明に係る被掛止部は、実施形態の形態に限定されず、接続解除具の掛止部を掛止することが可能であれば、いかなる形態であっても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0048】
なお、本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0049】
100 接続解除具
101 掛止部
102 操作部
103 押圧部
103a 係止部
10 管継手
110 継手本体
111 受け口
112 貫通孔
112a 貫通孔端縁(縁部)
120 抜止部材
121 装着部
122 弾性変形部(係合片)
123 係合部(係合片)
124 開放部
20 管
21 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能な外方に突出する係合片が備えられた管と、前記管が挿入される受け口及び前記係合片が挿通されてその縁部に係合される貫通孔を有する管継手との接続状態を解除するための接続解除具であって、
前記管継手に設けられた被掛止部に掛止される掛止部と、
前記掛止部を支点として回動操作するための操作部と、
前記回動操作により、前記貫通孔内に挿入されて前記係合片を押圧し、前記貫通孔から前記係合片を離脱させる押圧部と、を備えてなることを特徴とする接続解除具。
【請求項2】
前記押圧部が前記係合片を押圧した状態を維持すべく、前記貫通孔内に前記押圧部を保持する係止部を備えることを特徴とする請求項1に記載の接続解除具。
【請求項3】
前記係止部は、前記押圧部の先端側に形成されてなり、前記貫通孔から前記係合片を離脱させて前記係合片の係合を解除した状態で前記貫通孔の縁部に係止されることを特徴とする請求項2に記載の接続解除具。
【請求項4】
前記掛止部と前記押圧部との距離が、前記掛止部と前記操作部との距離よりも短くなるように形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の接続解除具。
【請求項5】
前記掛止部は前記管継手の受け口端縁に掛止されるように形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の接続解除具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−11330(P2013−11330A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145778(P2011−145778)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】