説明

接線流れ濾過のための、変化のある気孔率を有する支持体および膜

処理すべき流体の接線濾過のための多孔質支持体に関する。この支持体は、所与の流れ方向に流れる処理すべき流体に向いた少なくとも1つの表面(3)と、これを通って流れる濾液と呼ばれる画分の抽出のための表面(1)とを有する。この支持体は、初期支持体の修正によって形成され、初期支持体に対して低減された透過率を有し、透過率が、処理すべき流体の流れ方向で、処理すべき流体に向いた表面(3)に平行に進むときに一様であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、一般に膜として知られている分離要素を採用する接線分離の技術分野に関する。これらの膜は通常、無機材料からなり、多孔質支持体と少なくとも1つの分離層とから構成され、その性質および形態は、処理すべき流体媒体中に含有される分子または粒子の分離を行うように設計される。膜分離は、分子および/または粒子を含有する液体を2つの部分に分離する。すなわち、膜を通過し、したがって支持体および分離層を通過した分子または粒子を含有する濾液部分と、膜によって保留される分子または粒子を含有する残液部分とである。
【0002】
より正確には、本発明の主題は、多孔質媒体、およびそのような媒体を組み込む膜の形成である。膜は、膜が分離する流体体積の間での、物質の伝達のための駆動力の効果の下で、選択的な阻止または通過を可能にする有形構造である。
【0003】
行われる分離の名前は、伝達に使用される駆動力に依存する。伝達のための駆動力が
−電界である場合、分離は電気透析と呼ばれ、
−圧力である場合、分離は精密濾過、限外濾過、ナノ濾過、または逆浸透と呼ばれ、
−化学ポテンシャルの差である場合、分離は透析と呼ばれる。
【0004】
本発明の主題は、ナノ濾過、限外濾過、精密濾過、濾過、または逆浸透の分野で特に有利な用途がある。
【0005】
分離膜は、2つの主な用途を有する。
−回収すべき分子または粒子が膜を通過する場合の抽出
−回収すべき分子または粒子が膜によって保留される場合の濃縮
【0006】
従来、膜は、セラミックなど無機材料での多孔質支持体と、無機材料での1つまたは複数の分離層との関連によって定義される。支持体は、処理すべき流体に向けられた、したがって濾液の進入のための1つの表面と、濾液の抽出のための1つの表面とを有する。1つまたは複数の分離層が、処理すべき流体に向けられた表面の上に設けられ、焼結プロセスによって互いに、かつ支持体に接続される。これらのタイプの膜は複合膜として知られている。これらの膜は、特に平坦型または管型の様々な幾何形状を取ることができる。層の役割は、分子または微粒子種の分離を行うことであり、支持体の役割は、その機械的強度によって非常に薄い層の作成を可能にすることである。
【0007】
膜が、流れの方向を横切って膜の厚さを通って真直に延在する孔によって特徴付けられると考えると、これらの孔は通常、(「エッフェル塔」形の)非対称形態を有し、最も細い部分が、処理すべき流体と接触する。この形態は、孔の活性部分で最小孔直径を有することを可能にし、最大透過率をもたらす。この形態は、セラミック膜の場合、低減する粒径の多孔質媒体を多孔質支持体の上に積層することによって得られる。
【0008】
作用する力が圧力であるとき、分離は単に物理的なものである。分子または粒子は変化を加えられず、それらの初期状態で保たれる。膜によって阻止される分子または粒子は、膜の表面上に堆積され、閉塞を生じ、これは非常に激しい場合がある。
【0009】
閉塞を低減するために、2つの技術が存在する。
−処理すべき液体が膜の表面に接線方向で流れる接線閉塞防止。この流れは摩擦を生じ、伝達係数を高める。
−濾過された液体の一部を膜を通して逆方向に戻すことからなる逆濾過。
【0010】
現在、工業用の膜型装置は、接線閉塞防止を単独で、または逆濾過と組み合わせて使用している。しかし、どのような閉塞防止技法が採用されるにせよ、時間の関数としての透過率のグラフは、常に図1に示されるグラフの形を有する。透過率の突然の降下が、膜の動作の最初の時間に観察される。この降下は、実質的に横ばいになることによって安定し、終了する。720分の動作後の透過率の値と、4分後の透過率の値との比は20である。この降下の大きさは、現行の閉塞防止システムが、経済的に受け入れるのには十分に良い透過率の値をもたらすとしても、満足なものでないことを示す。
【0011】
時間にわたる透過率のこの降下の原因は、閉塞の性質にある。実際、2つのタイプの閉塞、すなわち表面閉塞と深さ方向閉塞とが現れる。表面閉塞は、処理すべき流体の接線方向流れによって制限される。これは、接線方向の流れが、処理すべき流体の流れ表面に対する擦れをもたらし、それにより表面上への任意の堆積をなくすからである。原則として、逆濾過は、膜の内部に物理的に固着された粒子を移動し、それにより任意の深さ方向閉塞を制限することができるはずである。それにも関わらず、孔の相互接続ネットワークを形成する、膜を構成する要素の特定の形態が、この可能性を低める。
【0012】
したがって、これら2つの閉塞防止方法は、どちらも完全には満足の行くものでない。膜の動作の最初の時間が、この制限された効果の理由である。実際、上の例で、膜の透過率は、水に対する透過率の値から、生成物に対する透過率の値へ低減する。これら2つの値の比は約20である。粒子または分子は、濾過表面に対する流れの比率に等しい速度で膜の表面に達する。動作の最初の時間で、この速度は最大であり、粒子または分子の移動の度合いも最大である。壁との衝突が生じるとき、粒子または分子は、その移動の度合いに比例する深さまで膜の内部に浸透する。ここで膜に浸透した粒子または分子には、接線閉塞防止が届かない。粒子または分子がより深く浸透するほど、除去するのが難しくなる。
【0013】
したがって、膜への粒子または分子のこの浸透を回避する必要がある。
【0014】
この文脈で、本発明は、この浸透を回避することができ、かつ膜を形成するために支持体が分離層と関連付けられるときに支持体の透過率および膜の透過率を制限することができる解決策を提供する。したがって、本発明は、その主題として、処理すべき流体の接線濾過のための多孔質支持体であって、所与の流れ方向に流れる処理すべき流体に向けられた少なくとも1つの表面と、多孔質支持体を通って流れる濾液と呼ばれる画分のための出力表面とを有する多孔質支持体を有する。この支持体は、修正によって、特に初期支持体の部分的な閉塞によって得られ、初期支持体に対して低減された透過率を有し、透過率は、処理すべき流体の流れ方向で、処理すべき流体に向けられた支持体の表面に平行に進むときに一様である。多孔質支持体の透過率は、好ましくは、初期支持体に対して10分の1〜1.5分の1に低減されている。
【0015】
本発明の別の態様によれば、処理すべき流体に向けられた支持体の表面から測定される所与の一定の深さにわたって、支持体が、処理すべき流体に向けられた表面から濾液の抽出のための表面に向かって、処理すべき流体に向けられた支持体の表面を横切って支持体の内部に向かって進むときに、増加する平均横方向気孔率を有し、一方、支持体の平均長手方向気孔率は、その部分では、処理すべき流体の流れ方向で、処理すべき流体に向けられた支持体の表面に平行に支持体の内部に向かって進むときに一様である。
【0016】
また、本発明は、その主題として、処理すべき流体の接線濾過のための膜であって、上述したような多孔質支持体を、処理すべき流体に向けられた支持体の表面を覆う、処理すべき流体のための少なくとも1つの分離層に関連付け、前記分離層が支持体の気孔率以下の気孔率を有する膜を有する。
【0017】
別の態様によれば、本発明は、処理すべき流体の接線濾過のための多孔質支持体であって、所与の流れ方向に流れる処理すべき流体に向けられた少なくとも1つの表面と、多孔質支持体を通って流れる濾液と呼ばれる画分のための出力表面とを有する多孔質支持体の製造のための方法であって、処理すべき流体に向けられた支持体の表面から、概ね一定の深さまでの、初期支持体の孔の平均直径dpよりも平均直径が小さい無機粒子の浸透によって、多孔質初期支持体を修正することからなる段階を含み、処理すべき流体に向けられた表面から濾液の抽出のための表面に向かって、処理すべき流体に向けられた支持体の表面を横切って、一方、支持体の平均長手方向気孔率は、その部分では、処理すべき流体の流れ方向で、処理すべき流体に向けられた支持体の表面に平行に支持体の内部に向かって進むときに一様である方法に関する。
【0018】
様々な他の特徴は、添付の図面を参照して以下に続く説明から理解されよう。
【0019】
本発明による多孔質支持体は、無機材料から構成され、伝達に対するその無機材料の抵抗は、行うべき分離に適合されている。多孔質支持体1は、金属酸化物、木炭、または金属などの無機材料から作成される。図2に示される実施例では、多孔質支持体1は、長手方向中心軸Aに沿って延びた管形状である。中心面に沿った平坦形状を取ることもできる。多孔質支持体1は、多角形の直進する断面を有し、または図2に示される例のように円形断面を有する。
【0020】
多孔質支持体1は、処理すべき流体に向けられた少なくとも1つの表面3を有し、この表面は、支持体が単独で使用されるときに、処理すべき流体が上を流れる表面に対応する。膜4の作成に関して、一般に、支持体1は分離層5と関連付けられ、この場合、処理すべき流体は、処理すべき流体に向けられた支持体の表面3の上を直接には流れず、分離層5の上を流れる。その際、処理すべき流体に向けられた支持体の表面3は、所与の方向で、かつ支持体の上流端部と下流端部との間の流れ方向で流れる処理すべき流体媒体と接触するように意図されたこの分離層5によって覆われ、そのような膜は接線モードで機能する。1つまたは複数の分離層5の性質は、得るべき分離または濾過の力に応じて選択され、多孔質支持体1と密接な接触を成す。この(1つまたは複数の)層は、例えば、少なくとも1つの金属酸化物を含有しており、鉱物濾過要素の製造に従来使用されている懸濁液から提供することができる。乾燥後、この(1つまたは複数の)層は焼結操作を施され、この焼結操作は、層を固化し、層を互いに、かつ多孔質支持体1に結合するために使用される。流体媒体の一部が、分離層5および多孔質支持体1を通過し、支持体1は、濾液と呼ばれる、流体のこの処理された部分の抽出のための出口表面1を有する。
【0021】
多孔質支持体1は、少なくとも1つのチャネル、図2に示される例では支持体の軸Aに平行に形成されたチャネル2を有するように構成することができる。図示される例では、チャネルは、円筒形状の支持体の軸Aで直進する断面を有する。チャネル2は内面3を有し、この面は、処理すべき流体に向けられた支持体の表面3に対応する。膜4の作成に関して、支持体1が分離層5と関連付けられる。図3は、管型の膜の作成の一例を示す。この例によれば、チャネル2は、チャネル2内部をその2つの開端部の間で所与の流れ方向に流れる処理すべき流体媒体と接触するように意図された分離層5によって覆われる。これらの端部の一方を上流端部6と呼び、他方を下流端部7と呼ぶ。処理すべき流体は、上流端部6を通ってチャネル内に入り、残液が、下流端部7を通ってチャネルから出る。濾液の抽出のための表面1は、1つまたは複数のチャネルを有する膜の場合には支持体の外周面1に対応し、支持体は、図2および3に示される例では円筒形であり、円形断面を有する。
【0022】
本発明のより詳細な説明の前に、いくつかの定義を確立する必要がある。支持体の気孔率は、支持体の総計の見かけの体積に対する支持体の孔の体積を表す。気孔率は、例えば水銀多孔質測定によって測定される。これは、多孔質試料内に圧力下で水銀を送る計器を用いる。この計器は、多孔質直径の分布だけでなく、多孔質体の気孔率も与える。
【0023】
中心方向での所与の一定の厚さの体積スライスで平均気孔率が測定され、中心方向に沿って平均気孔率の変動を測定することが望ましい。この平均気孔率が一様である、または概ね一定であるという言い回しは、測定方向に対応するスライスの中心軸に関して横方向である断面に対応する一連の等しい基本体積にこの一定の厚さのスライスが分割されるとき、これらの基本体積の平均気孔率が、このスライスの中心軸に沿って進むときに変化しないことを意味する。この平均気孔率が増加するという言い回しは、基本体積の平均気孔率が増加することを意味する。
【0024】
以下のように定義する。
−支持体の平均長手方向気孔率とは、処理すべき流体の流れ方向で(単一または複数チャネル支持体の場合には1つまたは複数のチャネルの内部領域に対応する)処理すべき流体に向けられた表面に平行に支持体内部で進むときに測定される気孔率である。
−横方向気孔率とは、処理すべき流体に向けられた表面に対して横方向に、すなわち垂直に支持体内部で進むときに測定される気孔率である。
【0025】
単位圧力当たりの流れ密度と、多孔質支持体の透過率とが、流体媒体が上記支持体を通過する容易さを反映する。流れ密度は、本発明の意味合いでは、単位時間(s)当たりに支持体の単位面積(m)を通って流れる濾液の量mを表す。したがって、単位圧力当たりの流れ密度は、m/m/s/Pa×10−12で測定される。
【0026】
透過率は、本発明の意味合いでは、厚さに対して正規化された単位圧力当たりの流れ密度に対応し、m/m/s/m/Pa×10−12で表現される。透過率は、抵抗の逆数である。膜の抵抗は、支持体と分離層の抵抗の和に等しい。当然、膜において、支持体の平均孔直径のほうが大きいので、支持体の抵抗は分離層の抵抗よりも低い。多孔質体を通る流体の伝達に対する抵抗は、孔直径、気孔率、およびこの多孔質体の厚さに依存する。処理すべき流体の流れ方向で(単一または複数チャネル支持体の場合には1つまたは複数のチャネルの内部領域に対応する)処理すべき流体に向けられた表面に平行に進むときに支持体または膜が一様な透過率を有するという言い回しは、(長手方向軸または中心面に平行に取られた)等しい厚さを有し、管状支持体の場合には支持体の長手方向軸に垂直である、または平面支持体の場合には支持体の中心面に垂直であるスライスにこの膜または支持体が切られた場合に、これらのスライスそれぞれに関して測定される透過率が概ね一定であることを意味する。
【0027】
本発明によれば、支持体1は、支持体の表面3に隣接する深さにわたって、支持体の残りの部分と比べて修正された気孔率を有する。処理すべき流体に向けられた表面3の近傍で、支持体1はより低い気孔率を有し、その結果、この表面3から濾液の抽出のための表面1に向かって、処理すべき流体に向けられた表面3を横切って進むときに、支持体の気孔率は増加する。単一チャネル管状支持体およびそれに関連する膜を図示する図2および3に示される例では、チャネル2から外面1に向かってチャネル2の表面3を横切って進むときに、支持体の気孔率は増加する。横方向気孔率のこの変化は、例えば、処理すべき流体に向けられた表面3からの支持体1に沿った部分的な閉塞によるものである。それにも関わらず、一方で長手方向気孔率は、図2に示される例では、処理すべき流体の流れ方向で、すなわちチャネルに沿って、その端部の一方から他方へ、処理すべき流体に向けられた表面に平行に進むとき、概ね一定に保たれる。支持体は依然として流体を通しているので完全には閉塞されていないため、この閉塞は「部分的」と表現される。処理すべき流体に向けられた支持体の表面3から測定される所与の一定の深さにわたって、支持体1は、処理すべき流体に向けられた支持体の表面3を横切って支持体の内部に向けて進み、かつ処理すべき流体に向けられたこの表面3から離れるように進むときに、増加する平均横方向気孔率を有する。有利には、部分的な閉塞cは、処理すべき流体に向けられた表面3に垂直に進むときに変化し、一定の深さpにわたって平均気孔率の勾配を生み出し、平均気孔率は、この表面3から離れるように進むときに増加する。最低の平均気孔率を有する最も閉塞された支持体1の部分は、処理すべき流体に向けられた表面3の近くに、したがって図示される例でのチャネル2に向かって位置され、最高の平均気孔率を有する最も閉塞されていない部分は、濾液の抽出のための表面1(図2に示される例では支持体1の外周面1)に向かって位置される。
【0028】
本発明の好ましい変形形態によれば、処理すべき流体に向けられた表面3から濾液の抽出のための表面1に向かって、処理すべき流体に向けられた支持体の表面3を横切って進むときに、支持体の孔の平均直径が支持体1内部で増加する。
【0029】
平均気孔率の勾配は、初期支持体において、処理すべき流体に向けられた支持体の表面3からの粒子の浸透によって生み出され、粒子の平均直径は、初期支持体の孔の平均直径よりも小さく、この粒子は、支持体1の部分的な閉塞cを得るために使用される。図2に示される例によれば、この部分的な閉塞は、処理すべき流体に向けられた支持体の表面3から測定される(深さe以下の)ある一定の深さpにわたって生成される。この深さpは、処理すべき流体に向けられた支持体の表面3から決定される。粒子の浸透に対応する閉塞cは、粒子の大きさ、すなわち直径と、実験浸透条件とに依存する深さpにわたって生じる。一般に、浸透の深さpは大きく、所望の透過率低減に応じている。例えば、支持体1は、閉塞プロセス中に、初期支持体を構成する凝集粒子の平均半径よりも大きい、好ましくはそれらの平均直径よりも大きい深さpにわたって閉塞され、最大深さは、最も微細な粒子によって到達される深さである。有利な様式では、部分的な閉塞は、2.5μm以上、好ましくは5μm以上の深さpにわたって生成される。本発明の支持体は、初期支持体に対して人工的に低減され、しかし、処理すべき流体の流れ方向で、処理すべき流体に向けられた表面に平行に進むときには一様である透過率を有する。
【0030】
本発明の第1の変形形態によれば、平均横方向気孔率は、処理すべき流体に向けられた支持体の表面3から離れるように進むときに、概ね連続的に増加することができる。別の変形態様によれば、平均横方向気孔率は、段差Piを伴って増加することができる。この段差は、好ましくは全て、処理すべき流体に向けられた表面3を横切って取られる概ね同一の長さをもつ。
【0031】
図2および3で説明される例は、概ね卵形の直進する断面の円筒形状のチャネルを含む単一チャネル支持体に関するものであることに留意されたい。当然、本発明の主題は、異なる様々な形状の1つまたは複数のチャネルを有する支持体に関しても同様に良好に実施することができる。同じ意味合いで、本発明の主題を、多孔質ブロックとして構成された、多角形断面の少なくとも1つのチャネル2を含む支持体に適用することもできることは明らかである。平坦または平面型の支持体1の場合、処理すべき流体を支持体の一方の面3に直接循環させることができ、濾液は他方の面1に出て、支持体の質量内にはチャネルが構成されない。このタイプの平面型の多孔質支持体1では、長方形の直進する断面をそれぞれ有する一連のチャネル2を重ね合わせることもできる。複数のチャネルを含む支持体の場合、支持体は、チャネル2を画定する各内部領域3から延びるある深さにわたって、上記で特定されたような気孔率を有する。したがって、支持体は、チャネル2と支持体の外面1との間、および2つのチャネル2の間の両方に位置された内部領域3に隣接する体積にわたる修正された気孔率を有する。
【0032】
したがって、本発明の多孔質支持体は、濾液と同じ方向に支持体の質量内で進むときに増加する平均横方向気孔率と、一定の平均長手方向気孔率とによって定義される気孔率を有し、これは、先行の設計の従来の支持体の透過率よりも低いこの支持体に関する透過率を得るために使用される。
【0033】
また、本発明の主題は、上述したように、濾過支持体1を作成するためのプロセスを提案する。そのようなプロセスは、処理すべき流体に向けられた支持体の表面3からの、修正前の初期支持体の孔の平均直径dpよりも平均直径が小さい無機粒子の浸透によって、初期支持体を修正することからなる段階を含む。この浸透は、この表面3から濾液の抽出のための支持体1の表面1に向かって、処理すべき流体に向けられた支持体の表面3を横切って支持体の内部に向かって進むときに、増加する平均横方向気孔率を実現するように行われ、一方、支持体1の平均長手方向気孔率は、処理すべき流体の流れ方向で、処理すべき流体に向けられた支持体の表面に平行に支持体1の内面に向かって進むときに一様である。
【0034】
初期支持体の孔の平均直径dpよりも小さい平均直径とは、好ましくは、無機粒子の平均直径がdp/100〜dp/2の間であることを意味する。
【0035】
初期支持体の内部への粒子の浸透は、そのような粒子の解膠懸濁液によって実現される。懸濁液の解膠は、粒子の塊の形成を防止するため、したがって支持体の孔の内部に浸透することが可能な別個の状態で粒子を保つために必要である。有利には、懸濁液は、低い粘性を有する。
【0036】
そのような粒子は、金属酸化物など無機材料から構成され、無機粒子を構成する無機材料は、支持体および/または任意の分離層5を構成するものと同一にすることが可能である。
【0037】
浸透段階に焼結の段階が続き、この焼結段階は、固体支持体1の孔の中に存在する粒子を一体にまとめるために使用され、上記粒子の増大およびアマルガム化をもたらし、多孔質支持体1の閉塞を決定する。以下の説明は、少なくとも1つの内部チャネル2を有する図2に例示される支持体を作成するために計画されたプロセスに関する。この場合、同じ粒径の粒子、または異なる粒径の粒子の混合物の浸透が、処理すべき流体に向けられた支持体1の内部領域3から測定される深さpにわたって支持体の孔内部に行われ、浸透は、処理すべき流体に向けられた支持体1の表面3に平行に進むときには一定である。支持体の長さにわたって一定であり、しかし深さにわたって変化する(これは、チャネル2の内部領域3に関して深く進めば進むほど、粒子の浸透が小さくなることを意味する)そのような浸透は、コーティング法によって行うことができる。この方法は、多孔質支持体1を鉛直に配置し、蠕動型のポンプによって、可変回転速度で、(閉塞前の)支持体の孔の平均直径dpよりも平均直径が小さい無機粒子の解膠懸濁液でチャネル2を充填することからなる。チャネルの充填時間をTrと呼ぶ。ポンプの回転の速度に作用を及ぼすことによって、支持体が懸濁液で充填されて保たれる時間をTaと呼ぶ。次いで、支持体は、ポンプの回転の方向を逆にすることによって空にされ、この排出時間をTvと呼ぶ。3つの時間Tr、Ta、およびTvが、支持体1の内部領域3の各点と懸濁液との接触時間Tcを決定する。
【0038】
高さhに位置された支持体1の内部領域3の点xで、懸濁液との接触時間Tcは、
Tc=(Tr+Ta+Tv)−Ss/Qpr*h−Ss/Qpv*h ……(I)
となる。ここで、
Tr=充填時間
Ta=管を満たした待機時間
Tv=排出時間
Tc=接触時間
Qpr=充填中のポンプ内の流れ
Qpv=排出中のポンプ内の流れ
Ss=チャネルの断面積
h=充填高さ
である。
【0039】
支持体内部での粒子の浸透の深さpは、多孔質支持体1と懸濁液との接触時間Tcに依存する。また、パラメータTr、Ta、およびTvを調節することによって、支持体の上端部から下端部への概ね一定な浸透の深さpを得ることができる。様々な値の接触時間Tcを使用し、関係Iに従ってTr、Ta、およびTvを調節することによって、支持体1内部に浸透する無機粒子の質量を選択することができる。粒子の浸透深さの変化は、支持体1内部の蓄積の測定と平行して、支持体の毛管吸引が低下することによって自然に生じる。
【0040】
チャネルに沿った一様な閉塞cを実現するために使用することができる別の技法は、2つの段階で、すなわち支持体を反転させることによって、したがって浸透の途中で支持体の上端部と下端部とを逆にすることによって垂直浸透を行うものである。
【0041】
実際、本発明は、任意の要件に従う気孔率、したがって透過率を有するカスタマイズされた支持体、その結果として膜を製造することができるようにする。特に、支持体の透過率を低減することによって、本発明を使用して、そのような支持体から得られる膜の透過率を低減することができる。また、このプロセスは、支持体の、さらには膜の最終的な透過率を制御するという利点を有する。実際、以下のような様々なパラメータの調節によって透過率のレベルを調整することができる。
−浸透の深さおよび閉塞密度に特に影響を及ぼす、粒子の大きさの選択
−解膠懸濁液の濃度
−含浸時間
−含浸操作の数。実際、特に段差Piの勾配の場合、同じ直径または異なる直径の粒子を使用することによって連続して複数の浸透を行うことが可能である。
【0042】
当然、増加する平均横方向気孔率と一定の平均長手方向気孔率とによって上記のように決定されるような気孔率を含む多孔質支持体の製造は、上述したもの以外のプロセスによって実現することもできる。特に、チャネルを有さない平面支持体の場合、浸透は、処理すべき流体に向けられるように意図された表面3から行われ、この表面3は水平に配置される。
【0043】
本発明の別の態様によれば、支持体の閉塞と、処理すべき流体に向けられた支持体1の表面3への分離層の堆積とを連続プロセスで連続的に、さらには同時に行うように構成を成すことができる。したがって、支持体の閉塞に関して、膜の製造中に、分離層5の堆積に使用されるものと寸法および組成が同一の無機粒子を使用することができる。
【0044】
処理すべき流体に向けられた支持体1の表面3のごく近傍での低い気孔率がすでに満足な濾過を可能にすると仮定して、本発明の支持体は、特に腐食媒体濾過に関して単独で使用することができる。したがって、処理すべき流体に向けられた支持体1の表面3が、流体の流れ表面を画定する。
【0045】
主な適用例の1つによれば、この支持体は、膜の設計に使用され、支持体の最低の気孔率、すなわち処理すべき流体に向けられた支持体1の表面3の近くでの気孔率よりも低い、または場合によってはそれに等しい気孔率を有する分離層5と関連付けられる。好ましい変形形態によれば、分離層5は、欧州特許第1074291号に記載されているように、処理すべき流体の流れ方向fで低減する厚さを有することができる。
【0046】
以下の説明は、本発明による膜の実施例を提供することを狙いとする。
【0047】
25mmの外径と1200mmの長さとを有する複数チャネル支持体が使用される。この多孔質支持体は、5μmの平均等価孔直径を有する。
【0048】
0.6μmの粒径を有する酸化ジルコニウムの粒子の懸濁液が調製される。この水性懸濁液は、酢酸を使用してpHを調節し、その後、ガラス化されたジルコニウムのボールを含む容器内で粉砕または塊分散する段階によって解膠される。懸濁液は有機結合剤を含有せず、粒子の濃度は100g/l未満である。これら2つのパラメータの値は、非常に低い粘性で得られるように意図されている。
【0049】
支持体は、この懸濁液を使用して、コーティングプロセスによって修正される。2つの堆積が結果として得られ、その後、乾燥される。次いで、1つまたは複数の濾過層が作成される。得られる最終的な膜は、0.14μmの遮断しきい値を有する。
【0050】
水に対する透過率は、500l/h/m/barと測定される。比較として、同様にして、しかし支持体の修正に関する段階を有さずに製造された膜の透過率は、1500l/h/m/barと測定される。
【0051】
次の図4は、ミルクの濾過中のこれら2つの膜の透過率を示し、本発明の価値を完全に例示している。本発明の支持体の使用が、動作時間に伴う膜の透過率の損失を制限することを可能とすることが明らかに分かる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】先行技術の膜の透過率の時間に伴う変化を示す図である。
【図2】本発明による支持体の長手方向断面を示す図である。
【図3】図2による支持体を含む、本発明による膜の断面を示す図である。
【図4】本発明による膜の透過率と、先行の設計の膜の透過率との時間に伴う変化を比較する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理すべき流体の接線濾過のための多孔質の支持体(1)であって、所与の流れ方向に流れる前記処理すべき流体に向いた少なくとも1つの表面(3)と、当該支持体を通って流れる濾液と呼ばれる画分の抽出のための表面(1)とを有する、前記支持体(1)において、
初期支持体の部分的な閉塞によって得られ、前記初期支持体に対して低減された透過率を有し、透過率が、前記処理すべき流体の前記流れ方向で、前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)に平行に進むときに一様であることを特徴とする支持体。
【請求項2】
当該支持体の透過率が、前記初期支持体に対して10分の1〜1.5分の1に低減されていることを特徴とする請求項1に記載の支持体。
【請求項3】
処理すべき流体の接線濾過のための多孔質の支持体(1)であって、所与の流れ方向に流れる前記処理すべき流体に向いた少なくとも1つの表面(3)と、当該支持体を通って流れる濾液と呼ばれる画分の抽出のための表面(1)とを有する、前記支持体(1)において、
前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)から測定される所与の一定の深さ(e)にわたって、当該支持体(1)が、前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)から前記濾液の抽出のための前記表面(1)に向かって、前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)を横切って該支持体の内部に向かって進むときに、増加する平均横方向気孔率を有し、一方、当該支持体(1)の平均長手方向気孔率は、その部分では、前記処理すべき流体の前記流れ方向で、前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)に平行に当該支持体(1)の内部に向かって進むときに一様であることを特徴とする支持体。
【請求項4】
前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)から前記濾液の抽出のための前記表面(1)に向かって、前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)を横切って当該支持体(1)の内部に向かって進むときに、孔の平均直径が、前記支持体(1)の深さ(e)にわたって増加することを特徴とする請求項3に記載の支持体。
【請求項5】
前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)から測定される所与の一定の深さ(p)にわたる、前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)から生成される初期支持体(1)の部分的な閉塞(c)によって、当該支持体(1)が得られることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項6】
前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)から前記濾液の抽出のための前記表面(1)に向かって、前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)を横切って当該支持体の内部に向かって進むときに、前記部分的な閉塞(c)が、前記一定の深さ(p)にわたって、増加する平均横方向気孔率を実現するように行われる請求項1〜5のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項7】
前記閉塞深さ(p)が、前記初期支持体を構成する凝集粒子の平均半径よりも大きく、好ましくは前記凝集粒子の平均直径よりも大きいことを特徴とする請求項5または6に記載の支持体。
【請求項8】
前記閉塞深さ(p)が、2.5μm以上であり、好ましくは5μm以上であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項9】
当該支持体の前記部分的な閉塞(c)が、前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)からの無機粒子の浸透によって実現され、前記無機粒子の平均直径が、閉塞前の当該支持体の孔の平均直径(dp)未満であり、好ましくはdp/100〜dp/2の間であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項10】
無機粒子の前記浸透に焼結プロセスが続くことを特徴とする請求項9に記載の支持体。
【請求項11】
前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)から前記濾液の抽出のための前記表面(1)に向かって、前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)を横切って前記支持体(1)の内部に向かって進むときに、前記平均横方向気孔率が、前記深さ(p)にわたって規則的に連続して増加することを特徴とする請求項5〜10のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項12】
前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)から前記濾液の抽出のための前記表面(1)に向かって、前記処理すべき流体に向いた前記表面(3)を横切って前記支持体(1)の内部に向かって進むときに、前記平均横方向気孔率が段差(Pi)を伴って増加することを特徴とする請求項3〜10のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項13】
両端が開いており、前記処理すべき前記流体に向いた前記表面(3)によって画定される少なくとも1つの内部チャネル(2)を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の支持体。
【請求項14】
処理すべき流体の接線濾過のための膜(4)であって、請求項1〜13のいずれか一項に記載の多孔質の支持体(1)を、前記処理すべき流体に向いた前記支持体の前記表面(3)を覆う、前記処理すべき流体のための少なくとも1つの分離層(5)に関連付け、前記分離層(5)が前記支持体(1)の気孔率よりも小さい気孔率を有する膜。
【請求項15】
前記分離層(5)が、前記処理すべき流体の流れ方向(f)に沿って低減する厚さを有することを特徴とする請求項14に記載の膜。
【請求項16】
処理すべき流体の接線濾過のための膜(4)の作成のために意図された多孔質の支持体(1)であって、所与の流れ方向に流れる前記処理すべき流体に向いた少なくとも1つの表面(3)と、該支持体を通って流れる濾液と呼ばれる画分の抽出のための表面(1)とを有する、前記支持体(1)を製造するための方法において、
概ね一定の深さ(p)にわたって、前記処理すべき流体に向いた前記支持体の前記表面(3)からの、初期支持体の孔の平均直径(dp)よりも平均直径が小さい無機粒子の浸透によって、多孔質の初期支持体を修正することからなる段階を含み、それにより、前記処理すべき流体に向いた前記支持体の前記表面(3)から前記濾液の抽出のための前記表面(1)に向かって、前記処理すべき流体に向いた前記支持体の前記表面(3)を横切って前記支持体の内部に向かって進むときに、増加する平均横方向気孔率を実現し、一方、前記支持体(1)の平均長手方向気孔率は、その部分では、前記処理すべき流体の前記流れ方向で、前記処理すべき流体に向いた前記支持体の前記表面(3)に平行に前記支持体(1)の内部に向かって進むときに一様であることを特徴とする方法。
【請求項17】
浸透によって前記支持体を修正することからなる前記段階の後に、焼結の段階を続けることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記無機粒子の平均直径がdp/100〜dp/2の間であることを特徴とする請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
無機粒子の前記浸透が、前記初期支持体を構成する凝集粒子の平均半径よりも大きい深さ、好ましくは前記凝集粒子の平均直径よりも大きい深さ(p)にわたって行われることを特徴とする請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記処理すべき流体に向いた前記支持体の前記表面(3)から前記濾液の抽出のための前記表面(1)に向かって、前記処理すべき流体に向いた前記支持体の前記表面(3)を横切って前記支持体の内部に向かって進むときに、前記支持体の閉塞が、前記無機粒子の浸透の前記深さ(p)にわたって低減することを特徴とする請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−533443(P2007−533443A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508939(P2007−508939)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000989
【国際公開番号】WO2005/110583
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(506350012)テクノロジーズ アドヴァンセ エ メンブレインズ アンデュストリーユ (1)
【Fターム(参考)】