説明

接触・非接触共用型ICカードと接触・非接触共用型ICカードの製造方法

【課題】 カード基体内のアンテナ端部とICモジュールのアンテナ接続用端子間をキレート剤もしくは防食剤を含有する導電性ペーストにより接続することにより、初期接続抵抗を低くし通信特性の優れたICカードを提供する。
【解決手段】 本発明の接触・非接触共用型ICカードは、ICモジュールの2つのアンテナ接続用端子7a,7bと、カード基体10内のアンテナの開始端部21と終端部22とが、ICモジュール装着用凹部30内で導電性ペーストを介して接続する構造の接触・非接触共用型ICカードにおいて、前記アンテナを金属箔または金属線を使用して形成すると共に、アンテナの開始端部21と終端部22と、前記ICモジュール5の2つのアンテナ接続用端子7a,7bとの間が、キレート剤もしくは防食剤を含有する導電性ペーストにより接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触・非接触共用型ICカード(「デュアルインターフェースICカード」、「コンビ式」ともいう。)とその製造方法に関する。接触・非接触共用型ICカードはICモジュールを装着する際、アンテナの一部がICモジュールを装着するために掘削した凹部内に現れ空気中に露出するため、その金属材質が酸化を受け易い問題がある。
そこで本発明は、接触・非接触共用型ICカードのICモジュールのアンテナ接続用端子とカード基体内のアンテナとの良好な接続を確保することと、接続部の経時的な抵抗増大による通信性能の低下を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードは、データの通信をカード表面の接続端子を介して行う接触型ICカード、ICチップおよび通信用のアンテナコイルがカード基体内に埋め込まれカード表面に端子がない非接触式、および両者の機能を兼ね備えた接触・非接触共用型の3種類がある。
このうち、接触・非接触共用型は、ICモジュールの裏側(ICモジュールの外部装置接続用端子板の背面)にアンテナ端部(通常2箇所)と接続するためのチップ所定のパッドと導通がとれているアンテナ接続用端子が設けられており、これがカードに掘削したICモジュール埋設用凹部に露出するアンテナ端部と導電性接着剤を介して接続されることで、非接触カードとしての機能を備えることになる。
【0003】
ところで、この接触・非接触共用型ICカードの製造上の特徴として、あらかじめアンテナが形成されたアンテナシートを内蔵させたカード基体に所定のICモジュール埋設とアンテナ両端部とICモジュールのアンテナ接続用端子との電気的接続(導通)をはかるためのICモジュール装着用凹部形成を行い、特に後者の目的のため、一旦、カードが基体に埋め込まれているアンテナの両端部(開始端部と終端部)を外部に露出させることが必要になる。
【0004】
ところが、アンテナ構成部材が酸化され易い金属であると空気中に露出させた直後に、表面に酸化物皮膜が形成されるため、酸化物皮膜の形成により導電性の失われる時間が早いと、導電性が失われた状態で、その後の工程(導電ペーストの塗布工程、ICモジュールの熱圧による機械的、電気的接合工程)を行ってもICモジュールとアンテナとの十分な導通がとれないため、通常は、酸化物皮膜の影響が小さい銅をアンテナ部材として選択するのが通常である。
【0005】
アンテナが表面に露出することのない非接触ICカード(非接触単機能のICカード)では、アンテナ部材として銅だけではなく、コスト的にも安価で、電気抵抗値も比較的低いアルミニウムを使用する例が多い。しかし、接触・非接触共用型ICカード用としては上記理由によりアルミニウムを選定することが困難という問題があり、一般的には、銅箔のエッチングアンテナや被覆付き銅線が使用されている。
【0006】
また、アルミニウム表面に酸化防止剤を塗布したり、表面に酸化しない金属めっき(例えば、金等)を施す方法もあるが、上記のように、切削加工でアンテナ端部を露出させる場合の切削深さ、つまりアンテナ端部の露出する厚み方向の深さ位置は一定ではなく、カード基材の各層の厚み誤差、アンテナ部材の厚み誤差、切削深さの誤差等によって変動が生じ易い。従って、アンテナ部材の表面のみに酸化防止対策を施しても、切削加工で露出した部分がアンテナ端部の最表面である確証はなく、最表面より深い部位が露出すれば、直ぐに酸化が進行し酸化物皮膜が形成されてしまう、という結果になる。つまりこの方法では効果が得られない。
【0007】
導電性接着剤が電極間の接続剤として使用される場合、測定される抵抗は導電性接着剤そのものの抵抗と被着体(電極材)と導電性接着剤の接触界面で生じる接続抵抗(接触抵抗)という二つの合成抵抗になる。従って、導電性接着剤の体積抵抗率が低いばかりでなく、被着体との接続抵抗が低いことが重要となる。
また、一般に初期接続抵抗を小さくして接続しても経時的に接続抵抗が増大することが認められている。この場合は、銅を使用しても長期間の使用では経時劣化が生じることが考えられる。接続抵抗の経時的増加は、導電性接着剤中の金属粒子、あるいは端子板等の電極が高湿下の電気化学的反応により酸化膜を形成するか活性金属粒子数が減少する現象と考えられている。
【0008】
非特許文献1に記載されるように、各種導電性接着剤と各種基板との接続抵抗(mΩ)は、表1のようになる。この表1によれば、銀ペーストを使用した場合、アルミニウム基板が6000mΩであるのに対し、銅基板は0.33mΩであるように、非常に高い接続抵抗値を示している。ただし、理由は明らかではないが、カーボンペーストでは数値が逆転している。従って、必ずしもアルミニウムが銅に比較して一律に接続抵抗が大きいと言えるものではない。経験的に見出される接続抵抗の意味である。
また、化学便覧基礎編(昭和53年8月20日発行、1155頁)によれば、アルミニウムの比抵抗は、2.75×10-6Ωcm、銅が、1.72×10-6Ωcm(いずれも20°C)であるから、金属自体の比抵抗にはあまり大きな違いがない。これにより金属酸化物の皮膜により接続抵抗が高くなっていることが推認できる。
なお、表2は各種導電性接着剤の体積抵抗率値(ρ)であり、銀ペーストが、1.1×10-4Ω・mと小さい体積抵抗率値を示している。表2も非特許文献1から引用したものである。
【0009】
【表1】

【0010】
【表2】

【0011】
一方、導電性接着剤において、導電性金属充填剤と共にその組成中にキレート剤、防食剤、または酸素捕捉剤を添加する場合は、初期接続抵抗を低減し、経時的な劣化をも防止することが知られている。特許文献4、特許文献5等には、そのような技術が開示されている。本願はこのような導電性ペーストを接触・非接触共用型ICカードのアンテナ接続部に利用し、初期接続抵抗や経時的接続抵抗増大を小さくすることを目的とするものである。
【0012】
非接触ICカードや共用型ICカードのアンテナやアンテナシートに関しては、特許文献1、特許文献2等の他に多数の先行文献があるが、アンテナの接続に上記接着剤を使用する例を見出すことができない。なお、特許文献2は非接触単機能ICカードのアンテナシートである。特許文献3は、接触型非接触型共用ICカードとその製造方法に関する先行特許文献に関する。
【0013】
【特許文献1】特開2005− 45161号公報
【特許文献2】特開2005−275502号公報
【特許文献3】特開2000−182017号公報
【特許文献4】特開2002−348486号公報
【特許文献5】特開2006−225426号公報
【非特許文献1】スリーボンド社「Technical News」 平成11年1月1日発行 ナンバー52
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述のように、ICモジュールと接続するアンテナの両端部は、製造過程において空気との接触時間が長く酸化を受け易い。アンテナにアルミニウムを使用したのでは、酸化皮膜が表面に形成され易く初期接続抵抗が大きくなる。そのため、アンテナ受信効率が低下し、非接触通信処理ができなかったり、通信距離が短かくなるという問題があった。
一方、銅を使用すれば初期接続抵抗を比較的に小さくできるが、希少な資源の浪費に繋がることと製造コストを高くする問題がある。また、特に高温高湿度環境下では銅であっても、長期間には接続抵抗の上昇が同様に生じると考えられる。
そこで、本発明は、アンテナ開始端部と終端部とICモジュールの前記2つのアンテナ接続用端子との間の接続に、キレート剤もしくは防食剤を含有する導電性ペーストを使用することとする。それにより、第1に、初期接続抵抗を低くし、第2に、接続抵抗の経時的な上昇を防止することを目的とするものである。
また、アンテナの金属材料に、アルミニウムを主成分とする箔や被覆付き線材を使用して、銅資源の節減とコスト低減を図ることをも目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決する第1の発明は、外面に外部装置接続用端子板を有し、内面に2つのアンテナ接続用端子を有する基板に、接触・非接触共用ICチップが搭載されたICモジュールの前記2つのアンテナ接続用端子と、カード基体内のアンテナの開始端部と終端部とが、ICモジュール装着用凹部内で導電性ペーストを介して接続する構造の接触・非接触共用型ICカードにおいて、前記アンテナを金属箔または金属線を使用して形成すると共に、アンテナの開始端部と終端部と、前記ICモジュールの2つのアンテナ接続用端子との間が、キレート剤もしくは防食剤を含有する導電性ペーストにより接続されていることを特徴とする接触・非接触共用型ICカード、にある。
【0016】
上記第1の発明において、キレート剤もしくは防食剤の含有率が1〜10質量%である、ようにすることができ、その場合には初期接続抵抗と接続抵抗の経時変化を効果的に小さくできる。
【0017】
上記課題を解決する第2の発明は、外面に外部装置接続用端子板を有し、内面に2つのアンテナ接続用端子を有する基板に、接触・非接触共用ICチップが搭載されたICモジュールの前記2つのアンテナ接続用端子と、カード基体内のアンテナの開始端部と終端部とが、ICモジュール装着用凹部内で導電性ペーストを介して接続する構造の接触・非接触共用型ICカードにおいて、前記アンテナを金属箔または金属線を使用して形成すると共に、アンテナの開始端部と終端部と、前記ICモジュールの2つのアンテナ接続用端子との間が、8−ヒドロキシキノリンをキレート剤として含有する導電性ペーストにより接続されていることを特徴とする接触・非接触共用型ICカード、にある。
【0018】
上記第2の発明において、前記導電性ペーストにおける8−ヒドロキシキノリンの含有率が1〜10質量%である、ようにすることができ、その場合には初期接続抵抗と接続抵抗の経時変化を効果的に小さくできる。
上記第1、第2の発明において、前記アンテナにアルミニウム(Al)を主成分とする金属箔または金属線を使用することができ、前記導電性ペーストが、銀(Ag)粒子とエ熱硬化性ポキシ樹脂を含有している、ものとすることができる。
【0019】
上記課題を解決する第3の発明は、外面に外部装置接続用端子板を有し、内面に2つのアンテナ接続用端子を有する基板に、接触・非接触共用ICチップが搭載されたICモジュールの前記2つのアンテナ接続用端子と、カード基体内のアンテナの開始端部と終端部とが、ICモジュール装着用凹部内で導電性ペーストを介して接続する構造の接触・非接触共用型ICカードの製造方法において、アンテナを銅箔または金属線を使用して形成する工程と、アンテナ形成シート、コアシート、オーバーシートとを積層して一体のカード基体を作製する工程と、当該カード基体のICモジュール装着部に前記アンテナ開始端部と終端部とが露出するようにICモジュール装着用凹部を切削する工程と、露出されたアンテナの開始端部と終端部に、キレート剤もしくは防食剤を含有する導電性ペーストを塗布する工程と、前記ICモジュール装着用凹部にICモジュールを装着する工程と、を有することを特徴とする接触・非接触共用型ICカードの製造方法、にある。
【0020】
上記課題を解決する第4の発明は、外面に外部装置接続用端子板を有し、内面に2つのアンテナ接続用端子を有する基板に、接触・非接触共用ICチップが搭載されたICモジュールの前記2つのアンテナ接続用端子と、カード基体内のアンテナの開始端部と終端部とが、ICモジュール装着用凹部内で導電性ペーストを介して接続する構造の接触・非接触共用型ICカードの製造方法において、アンテナを銅箔または金属線を使用して形成する工程と、アンテナ形成シート、コアシート、オーバーシートとを積層して一体のカード基体を作製する工程と、当該カード基体のICモジュール装着部に前記アンテナ開始端部と終端部とが露出するようにICモジュール装着用凹部を切削する工程と、露出されたアンテナの開始端部と終端部に、キレート剤もしくは防食剤を含有する導電性ペーストを塗布する工程と、前記アンテナ開始端部と終端部を表面の酸化膜部とともに貫通するように穴状もしくは線状の切削加工を前記導電性ペーストごしに施す工程と、前記ICモジュール装着用凹部にICモジュールを装着する工程と、を有することを特徴とする接触・非接触共用型ICカードの製造方法、にある。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明(請求項1)においては、アンテナとの接続に、キレート剤もしくは防食剤を含有する導電性ペーストを使用するので、アンテナの初期接続抵抗を小さくでき、経時的な接続抵抗増大を小さくすることができる。
第2の発明(請求項3)においては、8−ヒドロキシキノリンを含有する導電性ペーストを使用するので、同様にアンテナの初期接続抵抗を小さくでき、経時的な接続抵抗増大を小さくすることができる。
アンテナの全体に酸化抵抗値の変化の少ない材料を使用する場合、例えば、銅を使用する場合は希少資源の浪費に繋がる問題があるが、請求項5のように、アルミニウムを使用することでその問題を緩和できると共に製造コストの低減を図れる。また、アルミニウムは銅に比較して伸展性に優れるので、ICカードに対する曲げ変形や衝撃に対して、アンテナを破断させてしまうことを少なくできるという効果がある。
【0022】
第3の発明(請求項7)においては、露出されたアンテナの開始端部と終端部に、キレート剤もしくは防食剤を含有する導電性ペーストを塗布してICモジュールを装着するので、アンテナの初期接続抵抗を小さくでき、経時的な接続抵抗増大を小さくすることができる。
第4の発明(請求項8)においては、アンテナ開始端部と終端部の表面の酸化膜部を貫通するように穴状もしくは線状の切削加工を前記導電性ペーストごしに施すので、上記第3の発明の効果の他に、アンテナ開始端部と終端部が空気酸化を受ける時間的要素を非常に少なくできるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明のアンテナシートの例を説明する図、図2は、線材を使用したアンテナシートの例を説明する図、図3は、本発明の接触・非接触共用型ICカードを説明する平面図、図4は、接触・非接触共用型ICカードの部分断面図、図5は、接触・非接触共用型ICモジュールの例を示す図、図6は、本発明の接触・非接触共用型ICカードの製造工程を説明する図、図7は、導電性ペーストの塗布後に、穴状の切削加工を施す製造方法の説明図、図8は、導電性ペーストの塗布後に、線状の切削加工を施す製造方法の説明図、図9は、非接触ICカードの通信性能の経時変化を示す図、である。
【0024】
図1は、アンテナシートの例を説明する図であって、金属箔を使用しエッチングでパターン形成した場合である。本来は、特許文献2の各図のように精細パターンからなるが、アンテナの構成要素を概念的に図示している。従って実際の形状を示すものではない。
図1において、実線はベースシート11の表面側にあるパターンや配線を、斜線のハッチングを施した部分はベースシート11の裏面側にあるコイル部27等を示している。
アンテナシート20は、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックフィルムからなるベースシート11面に、アンテナ2が形成されている。
【0025】
アンテナ2はアンテナ開始端部21と終端部22を有し、その両端部間にコイル部27やコンデンサパターン23,24と表裏配線接続部25,26を有している。金属箔の利点は、エッチングにより配線幅や形状を自由にレイアウト可能であるとともに、アンテナ配線と同時にコンデンサパターン23,24を形成することが可能となり、通信特性を向上させられることである。被覆付き線材を使用してアンテナ形成する場合はコンデンサパターンの形成は困難と考えられる。アンテナ2の両端部21,22はいずれを開始端部21、あるいは終端部22と考えても良いものである。当該両端部21,22によりICモジュールの2つのアンテナ接続用端子に接続させることができる。
【0026】
通常、コンデンサパターンは複数の小さいパターンの集合からなり、小パターンのコンデンサを順次切断することにより容量を調製できるようにされているが、図1の場合は表裏コンデンサパターン23,24で1つのコンデンサを表現している。表裏コンデンサパターン23,24は、実際は、ほぼ同一サイズであって、誘電体であるベースシート11を介してコンデンサを形成している。切断して調製するのは、コンデンサ容量を変化させて共振周波数を調製する目的である。上記説明から明らかなように、アンテナ2とは、アンテナ開始端部21や終端部22、コンデンサパターン23,24、アンテナコイル部27、表裏配線接続部25,26等を含むものである。
ただし、アンテナ開始端部21と終端部22を裏面側とし、アンテナコイル部27を表面側としてもよいものである。
【0027】
図1の場合、コイル部を含むアンテナ2の大部分がベースシート11の背面側に形成され、表裏配線接続部25,26の間のコンデンサパターン24とその接続回路のみが、ベースシート11の表面側に形成されている。アンテナ2は、前記した理由により銅箔を使用するのが通常である。このようなアンテナシート20は、ベースシート11の両面に銅箔をラミネートし、この銅箔面に感光性樹脂材料を塗工した後、フォトマスクからなるアンテナパターンを露光し現像し、エッチングして製造する。
アンテナをパターン化する前は、ベースシート11の両面に厚み35μm程度の銅箔がラミネートされており、エッチングにより大半が溶解されることになる。全面に銅を使用するので貴重な資源を消費する問題がある。
【0028】
図2は、線材を使用したアンテナシートの例を説明する図である。被覆線材を使用する場合は、ベースシート11の表面側(あるいは背面側)にのみアンテナを形成し、表裏に形成することは少ない。図2のアンテナシート20の場合も、アンテナ開始端部21と終端部22を有し、その両端部間にアンテナコイル部27を有している。ICモジュールはアンテナ開始端部21と終端部22の上に装着されることになる。被覆線材を使用するアンテナの形成は、超音波ウェルダーのキャピラリー中を線材を通しながら、加熱して被覆材料を溶融させながらベースシート11に巻き回して仮留めする方法が採用される。線材には径(φ)が50〜100μm程度の銅線やアルミニウム線で、エナメル樹脂やウレタン樹脂が2〜5μm程度の厚みで被覆されているものを使用する。
【0029】
線材の交差部29も被覆材料が残存しており短絡することはない。前記のようにコンデンサパターンは形成されていない。アンテナ開始端部21と終端部22は、線材を折り畳んで密着させ一定の面積を有する状態にしておく。線材の利点は、エッチングのように材料を捨てる必要がないため、安価なアンテナを形成できることである。
なお、図1でも図2でも、単一のアンテナシート20を図示しているが、製造工程では通常多面付けの状態で用いられる。
【0030】
図3は、本発明の接触・非接触共用型ICカード1を説明する平面図、図4は、接触・非接触共用型ICカードの部分断面図、である。
図3の平面図では接触・非接触共用型ICカードであるため外部装置接続用端子板4をカード表面に有するが、端子板面パターン形状等は省略されている。カード周囲に表示する鎖線はカード基体10内部にアンテナ2が存在することを意味している。
【0031】
アンテナ開始端部21と終端部22はアンテナ2の両端とICモジュール5のアンテナ接続用端子7a,7b(図4参照)を接続するためICモジュール装着部に臨むように形成されている。本発明の接触・非接触共用型ICカード1ではアンテナ開始端部21と終端部22との導電性と接着強度を確保するため、通常の場合も同様であるが、アンテナ両端部は大面積に形成されていることが好ましい。十分な強度を確保するためには、ICモジュール装着用凹部内におけるアンテナ開始端部21と終端部22の合計面積(A)が3mm2 以上であることが好ましい。従って、当該アンテナに接続するICモジュール側アンテナ接続用端子7a,7bも大面積に形成されていることが好ましく、アンテナ接続用端子7a,7bの合計面積(a)が3mm2 以上であることが好ましい。3mm2 以上とするのは、面積が3mm2 未満ではいずれの場合も十分な接着強度が得られない場合が生じるからである。
【0032】
図4は、ICモジュール5の装着部を示している。この実施形態では接触・非接触共用型ICカード1のカード基体10はアンテナベースシート11と接着シート12,13、コアシート14,15、オーバーシート16,17の7層から構成されている。ただし、カード基体10は7層構成に限らることはない。ICモジュール装着用凹部30は本実施形態では2段の深さに形成されていて、第1凹部31はICモジュール5の基板厚みに掘削されている。第1凹部31の一部はアンテナ開始端部21と終端部22が露出する深さにさらに掘削される。第2凹部32はICモジュール5のモールド樹脂部8が埋設できる深さに形成されている。ただし、モジュール装着部の凹部形状は2段に限られることはなく、外周部に溝が具備されていても構わない。第1凹部31の深さはまた、オーバーシート16の厚みと実質的に同等程度の厚みとする場合もある。
【0033】
図4のように、第1凹部31の一部は表面にアンテナ開始端部21、終端部22が露出するようにさらに切削する。この切削はNC加工等により予め計算された基材厚みをカード表面から切り取りするようにする。また、好適には、アンテナ部を金属センサにより検知して切削量を制御しても構わない。第2凹部32は、ICモジュール5のモールド樹脂部8が埋設できる深さに切削する。次に、アンテナ開始端部21、終端部22に導電性ペースト9を塗布してからICモジュール5を装着して加熱加圧する。
これにより、ICモジュール5側のアンテナ接続用端子7a,7bとカード基体側のアンテナ両端部(アンテナ開始端部21、終端部22)とが導電性ペースト9を介して電気的に接続され、かつICモジュール5をカード基体10に固定することができる。
【0034】
この場合、導電性ペーストや異方性導電性接着シートのみを用いてICモジュール5をICモジュール装着用凹部30の第1凹部31に固定してもよく、導電性ペーストと絶縁性接着剤(あるいは接着シート)を併用してICモジュール5を固定してもよい。
本発明では、前記ICモジュールの2つのアンテナ接続用端子との間が、キレート剤もしくは防食剤を含有する導電性ペーストにより接続されていることを特徴とする。この接着剤については後述する。
【0035】
図5は、接触・非接触共用型ICモジュールの例を示す図であって、図5(A)は外部装置接続用端子板4の表面側を示し、図5(B)はモールド樹脂部8の背面側を示している。横断面は、図4から類推できると考えられる。ICモジュール5の表面には通常のように、C1〜C8の8個の端子板を有している。接触・非接触共用型ICチップ3は、背面側に非接触インターフェース用のC9,C10パッドを有する特徴がある。
C9,C10パッドは2つのアンテナ接続用端子7a,7bにボンディングワイヤ19により接続している。他の機能のパッドも勿論有するが図示していない。ICチップ3やワイヤ部は樹脂封止され、モールド樹脂部8を形成している。
【0036】
次に、金属箔を用いる場合のアンテナシートの製造方法について説明する。なお、アンテナはベースシートの片面にのみ形成する場合もあるが、両面の場合を説明する。
まず、アンテナベースシートの両面に金属箔をラミネートする。通常はベースシートのほぼ全面にラミネートするが、帯状に部分的にラミネートしてもよい。接触・非接触共用型ICカードの場合、金属箔としては銅(Cu)箔またはアルミニウム(Al)箔を用いることができる。金属箔材料(厚み15μm〜50μm程度)を1μmから20μm厚程度の接着剤によりラミネートする。
なお、アンテナベースシート11には、ポリイミドやPET、PEN(ポリエチレンナフタレート)の他、各種の材料を採用できる。例えば、塩化ビニル樹脂、PET−G、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。
【0037】
次に、片面の金属箔面に、アンテナ開始端部21と終端部22とアンテナコイル部27の一部とコンデンサパターン23を含むアンテナ2のレジスト膜を形成する。また、前記他の面の金属箔面に、アンテナコイル部27の残りの部分とコンデンサパターン24を含むアンテナ2のレジスト膜を形成する。この工程は、フォトレジストを用いても良く、レジストパターンを印刷するものであっても良い。レジスト膜を耐蝕膜として両面の金属箔をエッチングする。
【0038】
表裏エッチングの後、レジストを剥離し洗浄してから、表裏アンテナを接続する。これには少なくとも2箇所の接続が必要である。両面の金属箔とアンテナベースシート11を貫通するように、小径の開口(径0.2mm程度)を形成した後、表裏の金属箔間をめっき、もしくは導電性ペーストにより接続、もしくは抵抗溶接、超音波接続、開口を形成しないでクリンピング加工、のいずれかの方法により接続する。めっきの場合は、銅等による無電界めっきを行った後、ニッケル(Ni)の下地めっき、金(Au)めっきを行う。抵抗溶接は、接合する箇所に電流を流し、その電流による抵抗発熱で接合部の温度を上昇させ、加圧下で接合させる方法である。
【0039】
次に、接触・非接触共用型ICカードの製造方法について説明する。
図6は、接触・非接触共用型ICカードの製造工程を説明する図である。図6のアンテナシート20は、図1とは異なり表面側(コアシート14側)にアンテナコイル部27があり、裏面側にアンテナ開始端子21と終端部22があるように図示されている。前記のように、いずれの側にアンテナ開始端部21と終端部22があっても加工は可能であり、掘削深さが変わるだけで性能的にも特に差異は生じない。
まず、図6(A)のように、アンテナ2のアンテナ開始端部21や終端部22、アンテナコイル部27、コンデンサパターン23,24がフォトエッチング等により製造されたPET、塩化ビニール等のアンテナシート20を前記のように準備する。
【0040】
図6は、アンテナシート20のベースシート11として2軸延伸PETシートを使用した場合であり、この場合は、アンテナシート20とスペーサシート14,15との間に接着シートを使用して積層する。ただし、図6では接着シートの図示を省略している。
次に、これにコアシート14,15とオーバーシート16,17を仮積み積層してから、熱圧プレスして一体のカード基体を作製する(図6(B))。コアシート14,15とオーバーシート16,17の双方にPET−Gを使用する場合、両者間は熱融着するので、この間には接着シートを使用しなくてよい。この工程までは多面付けの状態で行う。
なお、カード基体10には、塩化ビニール樹脂やPET、PET−Gの他、各種の材料を採用でき、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。
【0041】
その後、個々のカードに切断した後、ICモジュール5を装着する第1凹部31を切削加工、NC加工等により切削して、カード基体10内のアンテナ開始端部21と終端部22の表面を露出させる。アンテナの両端部はできるだけ切削しないようにして表面を露出させることが好ましい。さらにICモジュール5のモールド樹脂部8を埋設できる深さと大きさの第2凹部32を第1凹部31のほぼ中央に切削する(図6(C))。
【0042】
次に、ICモジュール5に具備されたチップ側アンテナ接続用端子7a,7bと、カード基体10側のアンテナ開始端部21、終端部22間を導電性ペースト9で接続する。これには、アンテナ開始端部21、終端部22上に接続剤として、銀ペースト等の導電性ペースト9の塗布を行う(図6(D))。この塗布領域は短絡を生じないように少なくとも2つの領域に分割して行う。また、ICモジュール5のアンテナ接続用端子上の導電性ペースト塗布領域以外の部分に絶縁性接着シートを貼着しても良い。
なお、ICモジュールには、COT(Chip On Tape)やCOB(ChipOn Board)を使用する。
【0043】
導電性ペースト9の塗布後、ICモジュール5を装着し熱圧(例えば、200°C、1秒)を印加することによりICモジュール5とカード基体10との接着およびアンテナ2との電気的接続を行う。常温硬化型接着剤の場合、加熱しないで室温近くで比較的長い時間放置して硬化させることもできる。これにより、本発明の接触・非接触型共用ICカード1が完成する(図6(E))。
【0044】
また、好適には、導電性ペースト9の塗布後、針状の切削治具でアンテナ開始端部21および終端部22の表面から酸化膜を貫通させるように、穴状もしくは線状の切削加工を施した上、ICモジュール5装着し熱圧を印加することにより、ICモジュール5とカード基体10との接着およびアンテナ2との電気的接続を行うことがより好ましい。この切削加工はアンテナ開始端部21および終端部22自体を必ずしも完全に貫通させる必要はなく、酸化膜下面の金属層が露出すればよい。
導電性ペースト9の塗布後にアンテナ開始端部および終端部の表面の酸化膜を貫通させることにより絶縁体である酸化膜を除去して導電性ペーストとの接続が可能になるとともに、アンテナ端部の表面は導電性ペーストにより空気中の酸素に触れることが無いため、酸化が生じ難くなり、接続抵抗の増加を防止することが可能になる。
【0045】
図7、図8は、導電性ペースト9の塗布後に、穴状もしくは線状の切削加工を施す製造方法の説明図である。図7は、穴状の切削加工、図8は線状の切削加工の場合である。
図7、図8では、接着シートS1,S2を図示しているが、カード基体10自体の構成は、図6と同様である。図7(A)のように、ICモジュール装着用凹部30を切削すると共に、カード基体10内のアンテナ開始端部21と終端部22の表面を露出させる。
次に、アンテナ開始端部21と終端部22の表面に導電性ペースト9を塗布する(図7(B))。導電性ペースト9ごしに、細めのエンドミル切削刃40を用いてアンテナ開始端部21と終端部22を貫通するように数個の穴を切削加工する。これにより、表面の酸化膜部を貫通し開始端部21と終端部22が空気に接触することなく、切削加工の間、導電性ペースト9で覆われていることになる(図7(C1))。その後、ICモジュール5を装着し熱圧(例えば、200°C、1秒)を印加することによりICモジュール5とカード基体10との接着およびアンテナ2との電気的接続を行う(図7(D1))。
図7(E1)は、穴状の切削加工を行った後の、アンテナ開始端部21と終端部22の表面状態を示すものである。この場合は、各4個の穴28hが切削されている。
【0046】
図8は線状の切削加工の場合も同様であり、図8(B)までは図7と同様に加工する。線状の切削加工の場合も、細目のエンドミル切削刃40を用いるが、アンテナ開始端部21と終端部22を完全に貫通しないように、ただし、表面の酸化膜部を除去するように切削刃40を操作する。切削を導電性ペースト9ごしに行うので、開始端部21と終端部22が空気に接触することなく、切削加工の間、導電性ペースト9で覆われていることになる(図8(C2))。その後、図7と同様にして、ICモジュール5を装着する。
図8(E2)は、線状の切削加工を行った後の、アンテナ開始端部21と終端部22の表面状態を示すものである。この場合は、各3本の線28lが切削されている。
【0047】
導電性ペースト9には、銀ペーストや銅ペーストを使用することができる。これらの接着剤の塗布はカード基体10側のアンテナ接続端子上であっても、ICモジュール側アンテナ接続用端子7a,7b上であっても良い。
【0048】
導電性ペーストは、一般に導電粒子とバインダーである高分子樹脂と適量の溶剤と添加剤とからなるが、本発明ではこれに、キレート剤もしくは防食剤を含有するものを使用する。キレート剤は、金属粒子または電極との間にキレートを作るかまたは反応して防食作用を行うことができる。溶解した金属イオンをキレート剤でトラップして防食する考えは古くから知られている。これらの効果を生じさせるキレート剤としては、8−ヒドロキシキノリン、6−ヒドロキシキノリン、および2−ヒドロキシキノリンなどのキノリン誘導体がある。最も好ましくは、8−ヒドロキシキノリンである。これらのキノリン誘導体と電気的接点を増加させる低融点金属充填剤とを含む導電性ペーストが、電気化学反応を低減させ、抵抗率の顕著な増加を防止するという効果を発揮する。
【0049】
防食剤の例としては、1, 10 −フェナチオジン、フェノチアジン、ベンゾトリアゾール、ベンズイミダゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ジシアンジアミド、3 −イソプロピルアミノ−1 −ブチン、臭化プロパルギルキノリニウム、3 −ベンジルアミノ−1 −ブチン、ジプロパルギルエーテル、ジプロパルギルチオエーテル、カプロン酸プロパルギル、ジアミノヘプタン、フェナントロリン、アミン、ジアミン、トリアミン、ヘキサメチレンイミド、デカメチレンイミド、安息香酸ヘキサメチレンイミン、3, 5−ジニトロ安息香酸ヘキサメチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、d −オキシミノ−b −ビニルキヌクリジン、アニリン、6 −N −エチルプリン、1 −エチルアミノ−2 −オクタデシルイミダゾリン、モルホリン、エタノールアミン、アミノフェノール、8 −ヒドロキシキノリン、6−ヒドロキシキノリン、および2−ヒドロキシキノリンなどのキノリン誘導体、ピリジンとその誘導体、アクリジン、イミダゾールとその誘導体、トルイジン、メルカプタン、チオフェノールとその誘導体、スルフィド、スルホキシド、チオリン酸エステルおよびチオ尿素などがある。
【0050】
導電性充填剤としては、一般的には銀、銅、ニッケル、パラジムウ、金、銀−錫合金、カーボンブラック、黒鉛、アルミニウム、酸化インジウム錫、銀で被覆した銅、銀で被覆したアルミニウム、等の粉体が使用されるが、本発明では通信性能を高めるため、比較的体積抵抗率の低い銀を使用するのが推奨される。
【0051】
好ましい低融点金属および合金には、インジウム、インジウム/銀、およびインジウム/錫などのインジウム合金、ビスマス/錫、ビスマス/鉛/錫、および錫/鉛などの錫合金がある。
【0052】
高分子樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれをも使用できる。熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂などを挙げることができ、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーンエポキシ樹脂、シリコーンポリエステル樹脂などを挙げることができる。本発明では、熱硬化性のエポキシ樹脂を推奨できる。自己硬化性のエポキシ樹脂であってもよく、アミン類、イミダゾール類、酸無水物のような硬化剤や硬化促進剤を配合してもよい。
【実施例1】
【0053】
以下、本発明の接触・非接触共用型ICカードの実施例について説明する。
カード基体10のアンテナベースシート11として、厚み38μmの2軸延伸PETシートを使用し、その表裏面に厚み35μmのアルミニウム箔を接着剤を介してラミネートした。このベースシート11に対して、フォトエッチング技術を用いてアンテナ2を形成した。アンテナシート20は、図1のように、ベースシート11の表面側(コアシート14側)にアンテナ開始端部21と終端部22、およびコンデンサパターン23を有し、裏面側(コアシート15側)には、アンテナコイル部27、コンデンサパターン24を有するものとした。ベースシート11の表裏の配線間は2箇所の表裏配線接続部25,26を介して超音波接続したものである。
【0054】
このアンテナシート20に対して、その表裏に厚み50μmのポリエステル系ホットメルト接着シート12,13を介して厚み280μmのPET−G製樹脂シートからなるコアシート14,15を積層し、さらにその外側に、厚み50μmのPET−Gシートをオーバーシート16,17として使用した。これらのシートを仮積みした後、プレス機の熱板上に載置してプレスラミネートした。プレス工程の条件は、熱板温度120°C、圧力2.0MPa、成形(加熱)時間20分とした。カード基体10の総厚は、800μmとなった。
【0055】
個々のカードサイズに裁断後、アンテナシート埋め込み済カード基体10にICモジュール装着用凹部30を、NC加工によりアンテナ開始端部21、終端部22が現れる深さに第1凹部31を切削した。続いて、さらに双方のアンテナ端子間に第2凹部32をICモジュール5のモールド樹脂部が十分に埋設できる深さに掘削した。
【0056】
一方、別にガラスエポキシ基板の両面に銅箔を貼り付け、フォトエッチング処理を行って表面に外部装置接続用端子板4を形成し、裏面にアンテナ接続用端子7a,7bをその一つが2.0mm×3.0mmの大きさになるように2箇所形成した。端子部分にニッケル、金めっきを施した。モジュール基板6に接触・非接触共用型ICチップ3を実装した後、ワイヤボンディング、スルーホールを介して外部装置接続用端子板4とアンテナ接続用端子7a,7bとの接続を金ワイヤーにより行い、さらに、ICチップ周辺部をエポキシ樹脂により封止した。これにより、ICモジュール5を完成した。
【0057】
このカード基体10のアンテナ開始端部21、終端部22に導電性ペーストを1の端部に約1mg塗布し、導電性ペースト塗布域以外の第1凹部31部分には絶縁性接着シートの貼り込みを行った。上記で準備したICモジュール(ICチップ実装基板)5を装填した後、熱圧(例えば、180°C、20秒)を印加して、ICモジュールとカード基体との接着及び電気的接続を行った。これにより、接触・非接触共用型ICカード1を完成した。なお、上記導電性ペーストは、銀粒子を含んだ熱硬化性エポキシ系樹脂からなり、キレート剤として8−ヒドロキノリンを10質量%、5質量%、1質量%、含有するものの3種を試作した。
【実施例2】
【0058】
実施例1の厚み35μmのアルミニウム箔に替えて、厚み35μmの銅箔を使用した以外のその他の材料は実施例1と同一にし、同一条件で加工して実施例2の接触・非接触共用型ICカード1を完成した。なお、導電性ペーストも、熱硬化性エポキシ系樹脂からなり、キレート剤として8−ヒドロキノリンを10質量%、5質量%、1質量%、含有するものの3種を試作した。
【0059】
[比較例]
実施例1と同一の材料を使用し、同一の条件で加工して比較例の接触・非接触共用型ICカード1を完成した。ただし、導電性ペーストは、熱硬化性エポキシ系樹脂からなり銀粒子を含むが、キレート剤を含有しないものを使用した。
【0060】
実施例1と比較例の接触・非接触共用型ICカード1を、60°C、相対湿度(RH)が90%の恒温恒湿槽中に長時間保管した後の通信距離の変化を、非接触リーダライタを用いた通信距離の測定により経時変化を調べた。図9は、その結果を示す図である。
図9のように、比較例の接触・非接触共用型ICカード(図9中、■印マークの線)は、初期通信距離は20mm弱であるが、100時間では15mm程度となり、200時間を経過すると14mm以下となるのが認められた。一方、8−ヒドロキノリンを10質量%(図9中、×印マークの線)含有と5質量%(図9中、▲印マークの線)含有する導電性ペーストを使用した場合は、23mm〜24mmの通信距離を340時間経過するまで持続するのが認められた。8−ヒドロキノリンを1質量%(図9中、●印マークの線)含有のものは、100時間までは22mm程度の通信距離であるが、244時間では、17mm程度になった。ただし、比較例のものよりは良好な結果を示している。
【0061】
実施例2の銅箔を使用したものについても同一条件で測定したが、初期(完成直後)から340時間までは、いずれも24mmの通信距離が得られた。ただし、より長期間の試験では通信距離が短縮することが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のアンテナシートの例を説明する図である。
【図2】線材を使用したアンテナシートの例を説明する図である。
【図3】本発明の接触・非接触共用型ICカードを説明する平面図である。
【図4】接触・非接触共用型ICカードの部分断面図である。
【図5】接触・非接触共用型ICモジュールの例を示す図である。
【図6】本発明の接触・非接触共用型ICカードの製造工程を説明する図である。
【図7】導電性ペーストの塗布後に、穴状の切削加工を施す製造方法の説明図である。
【図8】導電性ペーストの塗布後に、線状の切削加工を施す製造方法の説明図である。
【図9】非接触ICカードの通信性能の経時変化を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 接触・非接触共用型ICカード
2 アンテナ
3 接触・非接触共用型ICチップ
4 外部装置接続用端子板
5 ICモジュール
6 モジュール基板
7a,7b アンテナ接続用端子
8 モールド樹脂部
9 導電性ペースト
10 カード基体
11 ベースシート
12,13 接着シート
14,15 コアシート
16,17 オーバーシート
20 アンテナシート
21 アンテナ開始端部
22 アンテナ終端部
23,24 コンデンサパターン
25,26 表裏配線接続部
27 アンテナコイル部
28h 穴状の切削
28l 線状の切削
29 交差部
30 ICモジュール装着用凹部
31 第1凹部
32 第2凹部
40 切削刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面に外部装置接続用端子板を有し、内面に2つのアンテナ接続用端子を有する基板に、接触・非接触共用ICチップが搭載されたICモジュールの前記2つのアンテナ接続用端子と、カード基体内のアンテナの開始端部と終端部とが、ICモジュール装着用凹部内で導電性ペーストを介して接続する構造の接触・非接触共用型ICカードにおいて、前記アンテナを金属箔または金属線を使用して形成すると共に、アンテナの開始端部と終端部と、前記ICモジュールの2つのアンテナ接続用端子との間が、キレート剤もしくは防食剤を含有する導電性ペーストにより接続されていることを特徴とする接触・非接触共用型ICカード。
【請求項2】
キレート剤もしくは防食剤の含有率が1〜10質量%であることを特徴とする請求項1記載の接触・非接触共用型ICカード。
【請求項3】
外面に外部装置接続用端子板を有し、内面に2つのアンテナ接続用端子を有する基板に、接触・非接触共用ICチップが搭載されたICモジュールの前記2つのアンテナ接続用端子と、カード基体内のアンテナの開始端部と終端部とが、ICモジュール装着用凹部内で導電性ペーストを介して接続する構造の接触・非接触共用型ICカードにおいて、前記アンテナを金属箔または金属線を使用して形成すると共に、アンテナの開始端部と終端部と、前記ICモジュールの2つのアンテナ接続用端子との間が、8−ヒドロキシキノリンをキレート剤として含有する導電性ペーストにより接続されていることを特徴とする接触・非接触共用型ICカード。
【請求項4】
前記導電性ペーストにおける8−ヒドロキシキノリンの含有率が1〜10質量%であることを特徴とする請求項3記載の接触・非接触共用型ICカード。
【請求項5】
前記アンテナにアルミニウム(Al)を主成分とする金属箔または金属線を使用したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1の請求項記載の接触・非接触共用型ICカード。
【請求項6】
前記導電性ペーストが、銀(Ag)粒子と熱硬化性エポキシ樹脂を含有していることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1の請求項記載の接触・非接触共用型ICカード。
【請求項7】
外面に外部装置接続用端子板を有し、内面に2つのアンテナ接続用端子を有する基板に、接触・非接触共用ICチップが搭載されたICモジュールの前記2つのアンテナ接続用端子と、カード基体内のアンテナの開始端部と終端部とが、ICモジュール装着用凹部内で導電性ペーストを介して接続する構造の接触・非接触共用型ICカードの製造方法において、アンテナを銅箔または金属線を使用して形成する工程と、
アンテナ形成シート、コアシート、オーバーシートとを積層して一体のカード基体を作製する工程と、
当該カード基体のICモジュール装着部に前記アンテナ開始端部と終端部とが露出するようにICモジュール装着用凹部を切削する工程と、
露出されたアンテナの開始端部と終端部に、キレート剤もしくは防食剤を含有する導電性ペーストを塗布する工程と、
前記ICモジュール装着用凹部にICモジュールを装着する工程と、
を有することを特徴とする接触・非接触共用型ICカードの製造方法。
【請求項8】
外面に外部装置接続用端子板を有し、内面に2つのアンテナ接続用端子を有する基板に、接触・非接触共用ICチップが搭載されたICモジュールの前記2つのアンテナ接続用端子と、カード基体内のアンテナの開始端部と終端部とが、ICモジュール装着用凹部内で導電性ペーストを介して接続する構造の接触・非接触共用型ICカードの製造方法において、アンテナを銅箔または金属線を使用して形成する工程と、
アンテナ形成シート、コアシート、オーバーシートとを積層して一体のカード基体を作製する工程と、
当該カード基体のICモジュール装着部に前記アンテナ開始端部と終端部とが露出するようにICモジュール装着用凹部を切削する工程と、
露出されたアンテナの開始端部と終端部に、キレート剤もしくは防食剤を含有する導電性ペーストを塗布する工程と、
前記アンテナ開始端部と終端部の表面の酸化膜部を貫通するように穴状もしくは線状の切削加工を前記導電性ペーストごしに施す工程と、
前記ICモジュール装着用凹部にICモジュールを装着する工程と、
を有することを特徴とする接触・非接触共用型ICカードの製造方法。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−31956(P2009−31956A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194034(P2007−194034)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】