説明

接触位置検出機能付き電界通信システム

【課題】簡単な構成にて接触面に対する接触位置を検出する、新規な構成の電界通信システムを提供する。
【解決手段】接触位置検出機能付き電界通信システムは、第1の電界通信装置と、人が任意の接触位置に接触することを許容する接触面(18)と、人が接触面(18)に接触しているときに、人の表面に電界を誘起する電界通信を第1の電界通信装置と行う第2の電界通信装置とを備える。第2の電界通信装置は、接触面(18)に沿って設けられた電極(44)と、電極(44)を介して第2の電界通信装置と電界通信を行う電界通信回路(38)と、電極(44)の少なくとも2つの検出部位にて、第1の電界通信装置から電界を通じて供給された信号に対応する受信信号をそれぞれ検出し、検出した複数の受信信号の強度に基づいて、接触面(18)における人の接触位置を検出する位置検出回路(50)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触位置検出機能付き電界通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
接触面に対する接触位置を検出し、接触位置に対応した信号を外部機器に入力する入力装置としては、タッチパネルやタッチパッドが知られている。これら入力装置としては、抵抗膜式や静電容量式のものが広く使用されている。
一方、人が特別意識することなく、命令を外部機器に入力するための装置として、電界通信装置が知られている。電界通信装置では、例えば、人が携帯する子機が人体の表面に変調された電界を励起し、親機は変調された電界を検出して外部機器に命令を入力する。この種の電界通信装置は、例えば入退室管理システムや、自動車のドア施錠システム等に使用されている。
【0003】
そして近年、タッチパネルと電界通信装置とを併用する技術の開発が行われている。例えば、特許文献1が開示する情報通信装置は、電界通信を行うための電界通信送信部及び電界通信受信部と、位置検出のための静電容量検出部と、電界通信及び位置検出の双方に使用されるタッチパネルとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−253478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する情報通信装置に適用されたタッチパネルは、静電容量の変化に基づいて接触位置を検出するために、通常、相互に積層されたX電極及びY電極を有し、構成によっては検出電極を更に有する。このため、この種のタッチパネルは2層以上の複雑な積層構造を有し、高価である。
【0006】
また、抵抗膜式のタッチパネルも、通常、相互に積層されたX電極及びY電極からなる2層の複雑な積層構造を有し、高価である。
更に、特許文献1が開示する情報通信装置では、電界通信送信部及び電界通信受信部と、静電容量検出部とが独立して設けられており、単に併存しているにすぎない。このため、この情報通信装置は、電界通信送信部及び電界通信受信部と、静電容量検出部とを切り換えるためのスイッチを含み、構成が複雑である。
【0007】
本発明は上記した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、簡単な構成にて接触面に対する接触位置を検出する、新規な構成の電界通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の解決手段を採用する。
【0009】
解決手段1:本発明の一態様によれば、人によって携帯される第1の電界通信装置と、前記人が任意の接触位置に接触することを許容する接触面と、前記人が前記接触面に接触しているときに、前記人の表面に電界を誘起する電界通信を前記第1の電界通信装置と行う第2の電界通信装置とを備え、前記第2の電界通信装置は、前記接触面に沿って設けられた電極と、前記電極を介して前記第2の電界通信装置と前記電界通信を行う電界通信回路と、前記電極の少なくとも2つの検出部位にて、前記第1の電界通信装置から前記電界を通じて供給された信号に対応する受信信号をそれぞれ検出し、検出した複数の受信信号の強度に基づいて、前記接触面における前記人の接触位置を検出する位置検出回路とを有することを特徴とする接触位置検出機能付き電界通信システムが提供される。
【0010】
解決手段1の接触位置検出機能付き電界通信システムでは、第2の電界通信装置の位置検出回路が、電極の少なくとも2つの検出部位にて受信信号を検出する。そして、位置検出回路は、検出部位と接触位置との間の距離に応じて受信信号の強度が変化することを利用して、接触位置を検出する。
かかる新規な構成の位置検出回路によれば、電極が複雑な構造を有していなくても、接触位置が検出される。この結果として、この接触位置検出機能付き電界通信システムは、簡単な構成を有する。
なお、第1の電界通信装置及び第2の電界通信装置が、人の所持品の表面に電界を誘起可能であるときには、当該所持品が接触面に接触することも、本発明における「人が接触面に接触する」ことに含まれるものとする。
【0011】
解決手段2:好ましくは、前記電極は、1層の導電体層のみからなる。
【0012】
解決手段2の接触位置検出機能付き電界通信システムは、電極が1層の導電体層のみからなり、極めて簡単な構成を有する。
【0013】
解決手段3:好ましくは、接触位置検出機能付き電界通信システムは、前記人が前記接触面に接触したとき、前記位置検出回路によって検出された接触位置に対応する座標に関連付けられた処理を実行する制御装置を更に備える、
解決手段3の接触位置検出機能付き電界通信システムによれば、制御装置が接触位置に関連づけられた処理を実行することによって、第1の電界通信装置を携帯する人に、種々のサービスを提供可能である。
【0014】
解決手段4:好ましくは、接触位置検出機能付き電界通信システムは、前記第2の電界通信装置に電気的に接続され、前記接触面における座標に関連付けられた情報を記憶する第2の記憶装置を更に備え、前記制御装置は、前記処理として、前記第2の記憶装置に記憶された情報のうち、前記位置検出回路によって検出された接触位置に対応する座標に関連付けられた情報を前記第2の電界通信装置から前記第1の電界通信装置に送信させ、前記第1の電界通信装置は、前記第2の電界通信装置から送信されてきた情報を前記人に伝達するための伝達手段を有する。
解決手段4の接触位置検出機能付き電界通信システムによれば、第1の電界通信装置を携帯する人は、希望する情報を容易に入手可能である。
【0015】
解決手段5:好ましくは、接触位置検出機能付き電界通信システムは、前記第1の電界通信装置と一体に設けられ、前記人又は前記第1の電界通信装置の固有情報を記憶する第1の記憶装置を更に備え、前記制御装置は、前記処理として、前記固有情報を前記第1の電界通信装置から前記第2の電界通信装置に送信させる。
解決手段5の接触位置検出機能付き電界通信システムによれば、制御装置は、第1の電界通信装置から送信された固有情報に基づいて、更に実行すべき処理の種類や実行の可否を決定可能である。
【0016】
解決手段6:好ましくは、触位置検出機能付き電界通信システムは、前記接触面に沿って設けられ、前記接触面及び前記電極を透して視認可能な表示部を有する表示装置を更に備え、前記制御装置は、前記処理の各々に割り当てられた標章を、前記処理に関連付けられた座標に重なるように前記表示部に表示させる。
解決手段6の接触位置検出機能付き電界通信システムによれば、第1の電界通信装置を携帯する人は、標章に基づいて処理を選択することで、希望するサービスを的確に受けることが可能である。
【0017】
解決手段7:本発明の他の態様によれば、人が任意の接触位置にて接触することを許容する接触面と、前記人が前記接触面に接触しているときに、前記人の表面に電界を誘起する電界通信を外部と行う電界通信装置とを備え、前記電界通信装置は、前記接触面に沿って設けられた電極と、前記電極を介して前記電界通信を外部と行う電界通信回路と、前記電極の少なくとも2つの検出部位にて、外部から前記電界を通じて供給された信号に対応する受信信号をそれぞれ検出し、検出した複数の受信信号の強度に基づいて、前記接触面における前記人の接触位置を検出する位置検出回路とを有することを特徴とする接触位置検出機能付き電界通信システムが提供される。
【0018】
解決手段7の接触位置検出機能付き電界通信システムでは、電界通信装置の位置検出回路が、電極の少なくとも2つの検出部位にて受信信号を検出する。そして、位置検出回路は、検出部位と接触位置との間の距離に応じて受信信号の強度が変化することを利用して、接触位置を検出する。
かかる新規な構成の位置検出回路によれば、電極が複雑な構造を有していなくても、接触位置が検出される。この結果として、この接触位置検出機能付き電界通信システムは、簡単な構成を有する。
【0019】
解決手段8:好ましくは、前記電極は、1層の導電体層のみからなる。
解決手段8の接触位置検出機能付き電界通信システムは、電極が1層の導電体層のみからなり、極めて簡単な構成を有する
【0020】
解決手段9:好ましくは、接触位置検出機能付き電界通信システムは、前記人が前記接触面に接触したとき、前記位置検出回路によって検出された接触位置に対応する座標に関連付けられた処理を実行する制御装置を更に備える。
解決手段9の接触位置検出機能付き電界通信システムによれば、制御装置が接触位置に関連づけられた処理を実行することによって、接触面に接触した人に、種々のサービスを提供可能である。
【0021】
解決手段10:好ましくは、接触位置検出機能付き電界通信システムは、前記電界通信装置に電気的に接続され、前記接触面における座標に関連付けられた情報を記憶する記憶装置を更に備え、前記制御装置は、前記処理として、前記記憶装置に記憶された情報のうち、前記位置検出回路によって検出された接触位置に対応する座標に関連付けられた情報を前記電界通信装置から前記電極を介して外部に送信させる。
解決手段10の接触位置検出機能付き電界通信システムによれば、接触面に接触した人は、希望する情報を容易に入手可能である。
【0022】
解決手段11:好ましくは、接触位置検出機能付き電界通信システムは、前記接触面に沿って設けられ、前記接触面及び前記電極を透して視認可能な表示部を有する表示装置を更に備え、前記制御装置は、前記処理の各々に割り当てられた標章を、前記処理に関連付けられた座標に重なるように前記表示部に表示させる。
解決手段11の接触位置検出機能付き電界通信システムによれば、第1の電界通信装置を携帯する人は、標章に基づいて処理を選択することで、希望するサービスを的確に受けることが可能である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば簡単な構成にて接触面に対する接触位置を検出する、新規な構成の電界通信システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態の接触位置検出機能付き電界通信システムが適用された商品の売り場の一部を示す図である。
【図2】図1の接触位置検出機能付き電界通信システムの子機の概略的な構成を示すブロック図である。
【図3】図1の接触位置検出機能付き電界通信システムの親機の概略的な構成を示す断面図である。
【図4】図3の親機の電界通信装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【図5】変形例の接触位置検出機能付き電界通信システムの用途を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態の接触位置検出機能付き電界通信システム10(以下、単に電界通信システム10ともいう)が適用された百貨店の売り場の一部を概略的に示している。
電界通信システム10は親機12及び子機14を有し、親機12は、POP(Point of Purchase)広告として、陳列棚に取り付けられている。陳列棚には、例えば2種類の商品A,Bが陳列され、親機12は、商品A,Bの近傍に配置されている。
【0026】
親機12の筐体16には開口が形成され、開口内において、操作面(接触面)18が表出している。操作面18には、商品A,Bの標章20A,20Bがそれぞれ表示されている。
【0027】
一方、子機14は、買い物客によって携帯されている。子機14の筐体22にも開口が形成されており、開口内において、例えば液晶パネルからなる表示部24が表出している。
【0028】
より詳しくは、図2に示したように、子機14は、例えばCPU(中央演算処理装置)によって構成される制御装置26、並びに、制御装置26によって制御される、電界通信回路28、表示回路30、及び、記憶装置32を有する。
電界通信回路28は、電界通信のための電極34に接続されている。すなわち、電界通信回路28は、電極34を介し、受信時には、人体の表面に誘起された、変調された電界を検出可能であり、送信時には、人体の表面に変調された電界を誘起可能である。従って、電界通信回路28及び電極34は、互いに協働して、子機14における電界通信装置を構成している。
【0029】
表示回路30は、表示部24に接続され、制御装置26によって指示された情報を表示部24に表示する。つまり、表示回路30及び表示部24は、子機14における表示装置を構成している。そして、制御装置26は、例えば、電界通信回路28を介して親機12から受信した情報を表示部24に表示させる。
【0030】
一方、記憶装置32は、例えば、買い物客又は子機14の固有情報として、顧客番号、クレジットカード番号、又は、子機14の識別番号等を記憶している。制御装置26は、電界通信回路28を介して、記憶装置32が記憶している情報を親機12に送信可能である。また、制御装置26は、電界通信回路28を介して親機12から受信した情報を記憶装置32に記憶させることが可能である。
【0031】
図3は、親機12の概略構成を示しており、操作面18は、好ましくは透明なガラス板の表面によって構成されている。そして、親機12は、筐体16内に、例えばCPU(中央演算処理装置)によって構成される制御装置36、並びに、制御装置36によって制御される、電界通信回路38、表示回路40、及び、記憶装置42を有する。
【0032】
電界通信回路38は、電界通信のための電極44に接続されている。すなわち、電界通信回路38は、電極44を介し、受信時には、操作面18に接触している人体の表面に誘起された、変調された電界を検出可能であり、送信時には、操作面18に接触している人体の表面に変調された電界を誘起可能である。
【0033】
電極44は、好ましくは透明電極であり、例えばITO(酸化インジウム錫)からなる1層の薄膜である。薄膜からなる電極44は、例えば、透明なガラス基板46に形成され、ガラス基板46は、電極44が操作面18を構成するガラス板に沿うように配置される。
【0034】
表示回路40は、例えば液晶パネルからなる表示部48に接続され、制御装置36によって指示された情報を表示部48に表示する。つまり、表示回路40及び表示部48は、親機12における表示装置を構成している。
一方、記憶装置42は、例えば、商品A及び商品Bに関する情報、並びに、商品A及び商品Bの標章20A及び標章20Bを記憶している。商品A及び商品Bに関する情報として代表的なものは価格であるが、その外には、原材料、製造日、賞味期限、生産者、及び、流通経路等がある。
標章20A及び標章20Bは、文字、図形又はこれらの組み合わせであり、商品A及び商品Bを連想させるものであれば特に限定されることはない。
【0035】
制御装置36は、標章20A及び標章20Bを、表示部48の所定の位置に表示させることが可能である。そして、制御装置36は、表示部48に表示された標章20Aに重なる操作面18の領域に、子機14を携帯している買い物客の指先が接触したときに、記憶装置42内の商品Aに関する情報を、電界通信回路38を介して、子機14に送信可能である。
【0036】
一方、制御装置36は、表示部48に表示された標章20Bに重なる操作面18の領域に、子機14を携帯している買い物客の指先が接触したときに、記憶装置42内の商品Bに関する情報を、電界通信回路38を介して、子機14に送信可能である。
【0037】
つまり、標章20A及び標章20Bが表示される座標は、商品A及び商品Bの情報と関連付けられている。そして、制御装置36は、操作面18における指先の接触位置の座標が、標章20A又は標章20Bが表示される座標と一致したときに、標章20A又は標章20Bの情報を子機14に送信する。
なお制御装置36は、子機14に情報を送信する前に、子機14に対して買い物客又は子機14の固有情報の送信を命令し、送信されてきた固有情報に基づいて、記憶装置42内の情報のうちから、子機14に送信する情報を選択してもよく、あるいは、情報の送信の可否を決定してもよい。また、送信されてきた固有情報に基づいて、情報送信以外の他の処理を実行してもよい。
【0038】
このように、操作面18における指先の接触位置に応じて、実行する処理の選択を制御装置36に行わせるために、親機12は位置検出回路50を更に有する。位置検出回路50は、操作面18における指先の接触位置を検出する機能を有する。
ここで、位置検出回路50は、電極44で受信した信号の強度に基づいて接触位置を検出しており、位置検出回路50は、電界通信回路38と機能の一部を共有可能である。このため本実施形態では、位置検出回路50は、電界通信回路38と一体に設けられ、電界通信回路38及び位置検出回路50は、1つのモジュール(電界通信モジュール)52を構成している。そして、電界通信モジュール52及び電極44が、互いに協働して親機12の電界通信装置を構成している。
【0039】
図4は、親機12の電界通信装置の概略的な構成を示す図である。
電極44は、操作面18に対向するガラス基板46の領域全体に渡って形成された層状の電極、則ちべた電極である。電極44の4つの角からは、リード線55a,55b,55c,55dがそれぞれ引き出され、リード線55a,55b,55c,55dは相互に独立して位置検出回路50に接続されている。従って、電極44の4つの角は、電極44と位置検出回路50とを接続するための端子部(検出部位)56a,56b,56c,56dとして形成されている。
なお以下では、リード線55a,55b,55c,55dをまとめて単にリード線55ともいい、端子部56a,56b,56c,56dをまとめて単に端子部56ともいう。
【0040】
従って、位置検出回路50は、子機14からの信号を独立した4系統にて受信する。ここで、指先が図4中の領域Pに接触したと仮定すると、4つの受信信号の強度は、領域Pとリード線55若しくは端子部56の各々との間の電気抵抗、即ち距離に依存して減衰する。そこで、位置検出回路50は、得られた4つの受信信号の強度を比較することによって、接触位置を検出することができる。
【0041】
なお、電界通信回路38は、4系統の全て又は一部の受信信号を利用して、子機14からの信号を受信する。また、電界通信回路38は、4系統の全て又は一部を利用して、子機14に向けて信号を送信する。
【0042】
上述した一実施形態の電界通信システム10では、親機12の電界通信装置の位置検出回路50が、電極44の4つの端子部56にて受信信号を検出する。そして、位置検出回路50は、端子部56の各々と接触位置との間の距離に応じて受信信号の強度が変化することを利用して、接触位置を検出する。
かかる新規な構成の位置検出回路50によれば、電極44が複雑な構造を有していなくても、接触位置が検出される。この結果として、この電界通信システム10は、簡単な構成を有する。
【0043】
そして、上述した一実施形態の電界通信システム10は、電極44が1層の導電体層のみからなり、極めて簡単な構成を有する。
また、上述した一実施形態の電界通信システム10によれば、親機12の制御装置36が接触位置に関連づけられた処理を実行することによって、子機14を携帯する人に、種々のサービスを提供可能である。
【0044】
更に、上述した一実施形態の電界通信システム10によれば、子機14を携帯する人は、希望する情報を容易に入手可能である。
また更に、上述した一実施形態の電界通信システム10によれば、親機12の制御装置36は、子機14から送信された固有情報に基づいて、更に実行すべき処理の種類や実行の可否を決定可能である。
一方、上述した一実施形態の電界通信システム10によれば、子機14を携帯する人は、表示された標章20A,20Bに基づいて処理を選択することで、希望するサービスを的確に受けることが可能である。
【0045】
本発明は、上述した一実施形態に限定されることはなく、当該実施形態に変更を加えた形態も含む。
例えば、上述した一実施形態では、4系統にて受信信号を検出し、強度を比較したが、少なくとも2つ検出部位で受信信号を検出すれば、おおよその位置を検出することができる。従って、要求される位置検出精度に応じて、電極34から受信信号を受け取る系統の数、即ちリード線55や端子部56の数を選択することができる。
上述した一実施形態では、電極44はべた膜であったが、端子部56間で受信信号の強度差を検出可能であれば、べた膜でなくてもよい。例えば、電極44は、網目形状であってもよい。
【0046】
また、親機12の操作面18に標章20A,20Bが印刷されたシール等を貼れば、表示部48及び表示回路40を省略してもよい。そしてこの場合、電極44は透明である必要はなく、金属膜であってもよい。ただし、位置検出回路50が電気抵抗の大きさに応じて接触位置を検出することから、電極44はある程度の電気抵抗を有することが好ましく、ITO等の金属酸化物の導電体であるのが好ましい。
【0047】
上述した一実施形態では、子機14が、情報を伝達するための手段として表示部24を有していたけれども、伝達手段はこれに限定されることはない。例えば、伝達手段として、スピーカや、音声出力端子及びイヤホンを採用してもよい。
【0048】
上述した一実施形態では、電界通信システム10が、POP広告に適用されていたが、電界通信システム10の用途は、これに限定されることはない。つまり、制御装置36が実行する処理は、商品A,Bの情報を子機14に送信することに限定されず、他の処理も実行可能である。そしてこの場合、処理の内容に応じて、表示部48に表示する標章も変更可能である。
【0049】
例えば、美術館に展示された、相互に隣接する美術品の近傍に親機12を設置しておき、各美術品を表す標章を表示部48に表示させる。そして、記憶装置42には、美術品に関する情報、例えば、作者や作成日等を記憶させておく。この場合、子機14を携帯している鑑賞者が標章に重なる操作面18の領域に接触したときに、情報が子機14に送信され、表示部24に表示される。
【0050】
また図5は、室内における人の存在位置に応じて、電灯及び空調を制御する例を示している。この例では、床一面に電極60が設けられ、電極60の4つの隅に検出部位としての端子部62a,62b,62c,62dが設けられている。従って、子機14を携帯している人の存在位置を、位置検出回路(図示せず)は検出可能である。そして、制御装置(図示せず)は、検出された存在位置を中心として、明かりや温度が最適になるように、電灯64a,64b,64c,64d及び空調装置66を制御可能である。
この例のように、親機の電極の大きさは特に限定されることはなく、接触面に接触する人の部位も、指先に限定されることはない。なおこの例の場合、子機14は、表示部24等の情報伝達手段を有さなくてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 接触位置検出機能付き電界通信システム
12 親機
14 子機
18 操作面(接触面)
20A,20B 標章
24 表示部
28 電界通信回路(第1の電界通信装置)
34 電極(第1の電界通信装置)
36 制御装置
38 電界通信回路(第2の電界通信装置)
42 記憶装置
44 電極(第2の電界通信装置)
50 位置検出回路(第2の電界通信装置)
52 位置検出モジュール
55a,b,c,d リード線
56a,b,c,d 端子部(検出部位)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人によって携帯される第1の電界通信装置と、
前記人が任意の接触位置に接触することを許容する接触面と、
前記人が前記接触面に接触しているときに、前記人の表面に電界を誘起する電界通信を前記第1の電界通信装置と行う第2の電界通信装置とを備え、
前記第2の電界通信装置は、
前記接触面に沿って設けられた電極と、
前記電極を介して前記第2の電界通信装置と前記電界通信を行う電界通信回路と、
前記電極の少なくとも2つの検出部位にて、前記第1の電界通信装置から前記電界を通じて供給された信号に対応する受信信号をそれぞれ検出し、検出した複数の受信信号の強度に基づいて、前記接触面における前記人の接触位置を検出する位置検出回路とを有する
ことを特徴とする接触位置検出機能付き電界通信システム。
【請求項2】
前記電極は、1層の導電体層のみからなることを特徴とする請求項1に記載の接触位置検出機能付き電界通信システム。
【請求項3】
前記人が前記接触面に接触したとき、前記位置検出回路によって検出された接触位置に対応する座標に関連付けられた処理を実行する制御装置を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の接触位置検出機能付き電界通信システム。
【請求項4】
前記第2の電界通信装置に電気的に接続され、前記接触面における座標に関連付けられた情報を記憶する第2の記憶装置を更に備え、
前記制御装置は、前記処理として、前記第2の記憶装置に記憶された情報のうち、前記位置検出回路によって検出された接触位置に対応する座標に関連付けられた情報を前記第2の電界通信装置から前記第1の電界通信装置に送信させ、
前記第1の電界通信装置は、前記第2の電界通信装置から送信されてきた情報を前記人に伝達するための伝達手段を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の接触位置検出機能付き電界通信システム。
【請求項5】
前記第1の電界通信装置と一体に設けられ、前記人又は前記第1の電界通信装置の固有情報を記憶する第1の記憶装置を更に備え、
前記制御装置は、前記処理として、前記固有情報を前記第1の電界通信装置から前記第2の電界通信装置に送信させる
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の接触位置検出機能付き電界通信システム。
【請求項6】
前記接触面に沿って設けられ、前記接触面及び前記電極を透して視認可能な表示部を有する表示装置を更に備え、
前記制御装置は、前記処理の各々に割り当てられた標章を、前記処理に関連付けられた座標に重なるように前記表示部に表示させる
ことを特徴とする請求項3乃至5の何れか一項に記載の接触位置検出機能付き電界通信システム。
【請求項7】
人が任意の接触位置にて接触することを許容する接触面と、
前記人が前記接触面に接触しているときに、前記人の表面に電界を誘起する電界通信を外部と行う電界通信装置とを備え、
前記電界通信装置は、
前記接触面に沿って設けられた電極と、
前記電極を介して前記電界通信を外部と行う電界通信回路と、
前記電極の少なくとも2つの検出部位にて、外部から前記電界を通じて供給された信号に対応する受信信号をそれぞれ検出し、検出した複数の受信信号の強度に基づいて、前記接触面における前記人の接触位置を検出する位置検出回路とを有する
ことを特徴とする接触位置検出機能付き電界通信システム。
【請求項8】
前記電極は、1層の導電体層のみからなることを特徴とする請求項7に記載の接触位置検出機能付き電界通信システム。
【請求項9】
前記人が前記接触面に接触したとき、前記位置検出回路によって検出された接触位置に対応する座標に関連付けられた処理を実行する制御装置を更に備えることを特徴とする請求項7又は8に記載の接触位置検出機能付き電界通信システム。
【請求項10】
前記電界通信装置に電気的に接続され、前記接触面における座標に関連付けられた情報を記憶する記憶装置を更に備え、
前記制御装置は、前記処理として、前記記憶装置に記憶された情報のうち、前記位置検出回路によって検出された接触位置に対応する座標に関連付けられた情報を前記電界通信装置から前記電極を介して外部に送信させる
ことを特徴とする請求項9に記載の接触位置検出機能付き電界通信システム。
【請求項11】
前記接触面に沿って設けられ、前記接触面及び前記電極を透して視認可能な表示部を有する表示装置を更に備え、
前記制御装置は、前記処理の各々に割り当てられた標章を、前記処理に関連付けられた座標に重なるように前記表示部に表示させる
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の接触位置検出機能付き電界通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−176403(P2011−176403A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37012(P2010−37012)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】