説明

接触分解プロセス用のバナジウムトラップおよび同調製方法

本発明は、酸化アルミニウムと酸化マグネシウムとの混合物、好ましくはそのスピネル相のアルミン酸マグネシウム上に担持された異なるピロリン酸塩M(M=BaまたはCaである)によって形成された活性相を含む、バナジウムを汚染物質として含む炭化水素接触分解プロセスに使用可能な化学組成物に関する。前記組成物は、原料から生じる金属、特にバナジウムを捕捉し、ひいては触媒を保護する。前記組成物は好ましくは別個の粒子形態で使用して、原料の金属含有量に従って装置に係る組成物を添加するのを制御する。本発明は、ピロリン酸塩の合成、M酸化物と共にベーマイト型アルミナ、酸化マグネシウムまたは水酸化マグネシウムの懸濁液の形成、噴霧乾燥、およびM酸化物の結晶構造の破壊を生じさせずにマイクロスフェアを焼成することを含む、前記組成物を調製する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、特にバナジウムの含有量が高い原料を処理してSOの存在下で係る金属を捕捉することができ、且つ、そのようにして、工業用プロセスユニットにおける接触分解触媒の活性および選択性を保持することのできる化学組成物に向けられたものである。それらの活性相(ピロリン酸バリウムまたはピロリン酸カルシウム)の結晶構造の保持を可能にするとともに、それを添加剤として市販のユニットに使用するための最小の物理的特性を同時に提供するこれらの組成物の調製方法も本発明の一部である。
【背景技術】
【0002】
原料に由来するバナジウムおよびナトリウムなどの金属の作用による触媒の活性の不可逆的損失は、流動接触分解装置の主要な操業上の問題の1つである。再生器の非常に厳しい熱水条件下で生じるこの触媒破壊は、有用な製品の収率を低減するだけでなく、新鮮な触媒のユニットへの添加を増大させることにより製造コストも著しく増大させる。
【0003】
この問題を解決するための2つの異なる方法が文献に提唱されており、それらはゼオライトなどの触媒の個々の成分、基質、およびバナジウムトラップが触媒インベントリに加えられる他のものにおいてバナジウムに対する耐性を改善するものである。
【0004】
文献にある特許付与された様々な活性成分のうち、工業レベルで適用されるものとしては、希土類酸化物、具体的にはLaが際立って素晴らしいものである(特許文献1〜8)。文献は添加剤RV4、Laをベースにしたバナジウムトラップには平衡触媒におけるバナジウムの破壊作用を中和する能力が僅か20%しかないことを報告しており、このことは様々な市販の用途で観察されている。
【0005】
工業的に使用されるその他の活性成分は、その商業利用に関する利用可能な成績はないが、触媒処方に添加されるか(特許文献9)、または独立粒子に添加剤として添加される(特許文献10および11)、純粋な、またはドロマイトおよびセピオライトなどのカルシウムおよびマグネシウムを含有する材料と混合された、MgOおよびCaOなどのアルカリ土類金属に相当する。
【0006】
元素周期表の相当な部分が元素形態あるいは関連する酸化物またはリン酸塩として、バナジウムトラップの活性成分として特許付与されているということを上記情報に加えられる。
【0007】
ここで、バナジウムトラップの活性成分はそれ自身を工業用装置に加えることはできない。これらは、一体粒子を形成するためのその調製プロセス中に触媒に加えることができるか、または独立粒子を形成するために担体上に付着させることができる。独立粒子化学組成物を使用することは、装置の要求に従ってシステムに加えることができるという利点が得られる。
【0008】
独立粒子バナジウムトラップは接触分解化学組成物(流動接触分解(FCC))であり、そういうものとしてFCC触媒と同じ特徴(すなわち、工業用装置に存在する過度の工業条件を支援するためのサイズ、サイズ分布、形状および機械的強度)を有する必要があり、十分に露出された活性領域である触媒において最も重要な特性(すなわち、活性化合物の最大の分散性およびアクセシビリティ)であり得る。
【0009】
これらの特徴を有する化学組成物は3種類の構成要素、つまり担体、活性相およびバインダによって基本的に構成される。担体は、機械的強度と、比表面積、細孔容積および平均孔径などのテクスチャ特性とをトラップに付与するのに有用である。バインダの機能はその名が示す通り、担体と活性成分との間に堅固な結合性を維持し、これにより最終製品の磨耗性に対する形態学的特性および機械的抵抗性を確保することである。
【0010】
前記化学組成物の担体およびバインダを適切に選択することは、その両方の場合、活性成分−バインダまたは活性成分−担体の相互作用がバナジウムを捕捉するための新しい失活化合物を生じ得るため、工業施設でのその信頼性を決定するものとなる。
【0011】
上記から、バナジウムトラップの使用は文献では新しいものではないが、それにもかかわらず、またバナジウムの作用を中和することのできる多数の物質が存在しているにもかかわらず、前記例の大半では、それらの成績は実験室規模でしか期待できないことは明白である。工業利用とのこの食い違いは、バナジウムを捕捉するトラップの能力を妨げる商業運転において硫黄化合物SOが存在することが原因である。
【0012】
実験室においてより期待できる化合物の幾つかは、M(PO、M、M(PO、M10(OH)(PO、M(HPO、MHPO、3M(PO.MCO、M(HPO、MHPO、M(PO、M、M(PO、M10(OH)(PO、M(HPO、MHPO3M(PO.MCO、M(HPO、MHPO、M(PO、M、およびA(PO(ここで、Mは二価金属(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、およびPb)を表し、AはViv価ならびにV価の安定化合物の形態のバナジウムを中和することのできる三価金属(例えば、Al、Ga、In、As、Sb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd))などの異なる無機リン化合物を開示する特許文献12に報告されている。前記適用に従えば、分解触媒におけるバナジウム不動態化への直接適用について最良の結果を示すリン化合物は、Ba(PO、Ba、Ba(PO、Ba10(OH)(PO、およびそれらの混合物である。
【0013】
ピロリン酸バリウム(PBA)およびピロリン酸カルシウム(PCA)は、酸化還元(REDOX)機構によりバナジウムの破壊作用を中和することができる活性成分であることが報告されている。この機構は、塩基性活性成分が酸性バナジウム酸化物と反応するという文献に報告されている機構とは異なるものである。この特性は工業用再生器に存在する硫黄酸化物SOによって活性成分の望ましくない中和反応を回避する。
【0014】
特許文献12は、異なる担体(例えば、特に、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、ケイ酸アルミナ)に堆積させることによるPBAならびにPCAトラップの調製も報告している。引用した特許にある前記活性剤および担体を用いて作製された異なる調製物によって、本発明者らはシリカ、アルミナまたはシリカアルミナに担持されたPBAは、SOの存在下ではバナジウムを捕捉する能力を示さないBa(PO、AlPO、BaHPOなどの異なるタイプのリン酸塩およびBaAl11の酸化物に完全に分解するのでトラップは役に立たなくなるということを観察することができた。上記に加え、MgOが担体である場合、低表面積であることおよび水の存在下で焼結する傾向が高いことを示すので、この担体とのトラップ同化(trap elaboration)は不都合である。
【0015】
他方、クロロヒドロール(Chlorhydrol)またはケイ酸ナトリウムなどの異なるバインダを用いたPBAに基づくトラップ調製物が、DRX回折スペクトル分析によって、PBAがこれらの調製物中で分解してリンおよびバリウムを含んだ異なる酸化アルミニウムおよびシリカ酸化物を生じることが示された。
【0016】
これらの先例からは、それらがアルミナおよびシリカなど一般に使用される担体のヒドロキシル基に対して高い活性を呈し、これがこれらのリン酸塩の破壊を引き起こすとともに効果的なトラップの生成を妨げるので、現状技術では、接触分解プロセスのためにピロリン酸バリウムおよびピロリン酸カルシウムに基づいてバナジウムトラップを調製する際に伴うすべての欠点の解決策が存在しないことが明らかとなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,603,823号
【特許文献2】米国特許第5,077,263号
【特許文献3】米国特許第5,001,096号
【特許文献4】米国特許第4,900,428号
【特許文献5】米国特許第4,515,683号
【特許文献6】米国特許第4,921,824号
【特許文献7】米国特許第5,304,299号
【特許文献8】米国特許第5,364,516号
【特許文献9】米国特許第4,988,654号
【特許文献10】米国特許第5,002,653号
【特許文献11】米国特許第5,071,807号
【特許文献12】米国特許第6,159,887号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
PBAまたはPCAは、少なくとも実験室においてはSOの存在下でバナジウムを捕捉するための最も有望な物質の一部であるので、前述の不都合を克服するトラップまたはトラップの製造を可能にする方法を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記不利を克服するだけでなく、接触分解装置において重質原料を処理しながら触媒を保護することができることが明らかである、現行の技術に存在する他のどの触媒よりも優れたバナジウムトラップを調製するための処方および方法を提供する。
【0020】
本願の主張される発明は、原料中に存在するバナジウムが係るプロセスに用いられる触媒成分を被毒化し、破壊してその活性ならびにガソリンなどの有用な産物の収率を低減させる炭化水素接触分解プロセスに有用である。触媒の被毒および破壊を回避するためには、バナジウム用の触媒と競合する添加剤を用いる必要がある。本出願人はアルミニウムまたはマグネシウムをベースにした基材上に担持されたPBAまたはPCAを適用すれば、それらをバナジウムと反応させて、接触分解プロセスの条件下でバナジウムがその4価ならびに5価の酸化状態において安定化される安定した化合物を形成することが可能になることを明らかにした。
【発明を実施するための形態】
【0021】
したがって、本発明の第1の態様は、汚染物質としてバナジウムを含有する炭化水素接触分解プロセスに有用な化学組成物を提供し、該化学組成物がピロリン酸塩M(ここでM=BaまたはCaである)と、MgO、Mg(OH)、またはMg(NOなどの任意の可溶性塩などの異なるマグネシウム化合物と組み合わせた酸化マグネシウム担体とを含むことを特徴とする。
【0022】
具体的には、本発明はピロリン酸バリウムまたはピロリン酸カルシウムと、そのスピネル相のアルミン酸マグネシウム担体とを含む組成物を指す。
【0023】
本発明の組成物は、10乃至60重量%のピロリン酸バリウムまたはピロリン酸カルシウム、60乃至90重量%の酸化アルミニウム、および10乃至40重量%の酸化マグネシウムを含むことを特徴とする。好ましくは、本発明の組成物は、30%のピロリン酸バリウムまたはピロリン酸カルシウム、55重量%の酸化アルミニウム、15重量%の酸化マグネシウムを含む。
【0024】
第2の態様では、本願は本発明の組成物を製造するための方法にも向けられており、該方法は次のステップを含む:
−2種の溶液((NHHPOまたはHPOなどの第1のリン源と(Ba(NOおよびBaClから選択された硝酸塩型または塩化物型のBaまたはCaの第2の源)の共沈殿によって生成したピロリン酸塩の前駆体塩であるBaHPOまたはCaHPOを焼成することによりピロリン酸塩を調製する。1μm未満の粒径の有するBaHPOまたはCaHPOを得るために、共沈殿は高速で攪拌しながらpHが7.5を超えるまでNHOH溶液を上記溶液に添加することによって実行する。次いで、これらの固体を750乃至820℃の温度で焼成して約1μmの粒径を有するPBAおよびPCAをそれぞれ得る。
−HNOまたはHClなどの無機酸あるいは酢酸または特にギ酸などの有機酸の存在下で酸化アルミニウム、好ましくはベーマイト型水酸化アルミニウムを部分溶解することにより、担体を別個に調製する。熟成時間後、MgOまたは水酸化マグネシウム懸濁液をアルミナ懸濁液に添加してNHOH溶液を添加することによりpHを4.0より大きく、好ましくは4.5より大きく調整する。
−上記のように得られたPBAまたはPCA懸濁液を前ステップの担体に添加し、最後に、得られた懸濁液を散布(dispersion)によって乾燥させて、工業プロセスで使用するのに必要な機械的強度を有するバナジウムトラップマイクロスフェアを得る。
【0025】
この手順を用いて、活性相の結晶構造がバナジウムを捕捉するその最大の能力で維持される。この形態のバナジウム不動態化は、それが一般に使用されるバナジウムトラップ用の硫酸の競合を回避または最小化するので、従来の酸−塩基機構よりも優れている。
【0026】
本発明の用途および利点を説明するために以下の実施例を示す。しかしながら、以下の実施例は本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例1】
【0027】
80gのプロトタイプを調製するために、以下のものを使用する:
−ベーマイト型水酸化アルミニウム 100g
−98%ギ酸 55.1g
−ヘキサメタリン酸ナトリウム(NaPO 0.3g
−脱塩水 178.2g
【0028】
分散剤(NaPOを水に添加し、次いでギ酸を加えた後、水酸化アルミニウムを添加して、30重量%の懸濁液を形成し、次いでその懸濁液を激しく攪拌する。最後に、濃縮水酸化アンモニウムを添加することによって、pHを4.5を超える値に調整する。
【0029】
その最終懸濁液を乾燥機装填容器(dryer loading container)に入れる。乾燥させ、篩過した最終プロトタイプを750乃至820℃の温度で2時間、マッフル炉で焼成する。
【実施例2】
【0030】
133.3gのプロトタイプを調製するために、以下のものを使用する:
−ベーマイト型水酸化アルミニウム 112.15g
−MgO懸濁液 20g
−98%ギ酸 29.5g
−ヘキサメタリン酸ナトリウム(NaPO 0.4g
−脱塩水 200g
【0031】
分散剤(NaPOを水に添加し、次いでギ酸を加えた後、水酸化アルミニウムを添加して、30重量%の懸濁液を形成し、次いでその懸濁液を激しく攪拌する。次に、MgO懸濁液を添加し、その混合物を激しく攪拌する。最後に、濃縮水酸化アンモニウムを添加することによって、pHを4.5を超える値に調整する。
【0032】
最後に、その懸濁液を乾燥機装填容器に入れる。乾燥させ、篩過した最終的なプロトタイプを750乃至820℃の温度で2時間、マッフル炉で焼成する。
【実施例3】
【0033】
153.3gのプロトタイプを調製するために、以下のものを使用する:
−ベーマイト型水酸化アルミニウム 112.15g
−MgO懸濁液 40g
−98%ギ酸 29.5g
−ヘキサメタリン酸ナトリウム(NaPO 0.4g
−脱塩水 200g
【0034】
分散剤(NaPOを水に添加し、次いでギ酸を加えた後、水酸化アルミニウムを添加して、30重量%の懸濁液を形成し、次いでその懸濁液を激しく攪拌する。次に、MgO懸濁液を添加し、その混合物を激しく攪拌する。最後に、濃縮水酸化アンモニウムを添加することによって、pHを4.5を超える値に調整する。
【0035】
最後に、その懸濁液を乾燥機装填容器に入れる。乾燥させ、篩過した最終的なプロトタイプを750乃至820℃の温度で2時間、マッフル炉で焼成する。
【実施例4】
【0036】
50gのプロトタイプを調製するために、以下のものを使用する:
−ベーマイト型水酸化アルミニウム 53.5g
−粒径1μm未満のPBA 15g
−98%ギ酸 29.5g
−ヘキサメタリン酸ナトリウム(NaPO 0.1606g
−脱塩水 95.4g
【0037】
分散剤(NaPOを水に添加し、次いでギ酸を加えた後、水酸化アルミニウムを添加して、30重量%の懸濁液を形成し、次いでその懸濁液を激しく攪拌する。次に、濃縮水酸化アンモニウム溶液を添加することによって懸濁液のpHを4.0まで上げる。並行して、PBAを水を用いて1/1の比で懸濁させ、激しく攪拌する。
【0038】
このPBA懸濁液を水酸化アルミニウムに添加し、1分間連続して攪拌する。
【0039】
最終の懸濁液を乾燥機装填容器に入れる。乾燥させ、篩過した最終的なプロトタイプを750乃至820℃の温度で2時間、マッフル炉で焼成する。
【実施例5】
【0040】
133.3gのプロトタイプを調製するために、以下のものを使用する:
−ベーマイト型水酸化アルミニウム 112.5g
−粒径1μm未満のPBA 40g
−MgO懸濁液 20g
−98%ギ酸 29.5g
−ヘキサメタリン酸ナトリウム(NaPO 0.4g
−脱塩水 200g
【0041】
分散剤(NaPOを水に添加し、次いでギ酸を加えた後、水酸化アルミニウムを添加して、30重量%の懸濁液を形成し、次いでその懸濁液を激しく攪拌する。次に、激しく攪拌を続けながらMgO懸濁液を添加する。次いで、濃縮水酸化アンモニウムを添加することによって、懸濁液のpHを4.0より大きく調整する。
【0042】
最後に、攪拌を続けながら粉末状のPBAを添加する。
【0043】
最後に、その懸濁液を乾燥機装填容器に入れる。乾燥させ、篩過した最終的なプロトタイプを750乃至820℃の温度で2時間、マッフル炉で焼成する。
【0044】
熱水条件下のトラップ評価
市販の新鮮な触媒混合物であるCATFとバナジウムトラップとの10重量%プロトタイプにシクロヘキサンに溶解したバナジウム源(3.4%バナジウム濃縮ガスオイル)から初期含浸法により0.6重量%のバナジウムを含浸させる。この固体を最初は120℃の温度まで加熱し、さらに2時間この温度を維持しながらマッフル炉で焼成する。次いで、10℃/分の速度で600℃まで温度を迅速に上昇させ、この温度で固体をさらに2時間放置する。
【0045】
焼成後、(バナジウムを含むか、または含まない)CATFサンプルとCATF/プロトタイプ/0gとの混合物を乾燥空気流下の連続流および固定床反応器に入れる。固体を3〜4℃/分で815℃まで緩やかに加熱する。この温度に達したら、45℃の一定温度に液体水を維持する飽和器に空気を流す。このような条件下で、空気流を18%水(モル分分率)で飽和させ、この空気流を触媒床に20.5時間流す。この期間の終わりに、この失活化流を同じ温度でさらに1時間乾燥窒素に切り換え、次いで、乾燥窒素流を維持しながらこのシステムを室温まで迅速に冷却する。
【0046】
表1および2は上記実施例1〜5に従って調製したトラップの特徴付けおよび失活化後の混合物のMAT(マイクロ活性分析)の成績を示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
これら2つの表の成績からは、担体がアルミナであってもアルミナ−MgOの混合物であっても、熱水条件下では単独でバナジウムトラップとしての特性を有することが認められる。
【0050】
21.5%MgOと78.5%アルミナとの混合物を用いる場合、保護を有するアルミン酸マグネシウムのスピネル相が69.1%の有用な産物(ガソリン+GLP)の上に形成されることがわかるが、実施例3において生じるように、混合物中にMgOが過剰にある場合、有用な産物上の保護は10.5%まで低下する。後者はMgOの遊離相がアルミン酸マグネシウムのスピネル相においては有害な作用があることの証拠である。
【0051】
実施例4のプロトタイプの興味深い別の側面は、この調製ではPBAは完全に破壊されたことに加え、純粋なアルミナにおいて観察された保護を上回る保護が認められることである。
【0052】
また、最良の保護特性は実施例2のアルミニウムとMgOとの組み合わせおよび実施例5によって生成された本発明の添加用処方において示されることは強調する価値がある。
【0053】
SO存在下のCPSサイクルによるトラップ評価
市販の触媒とトラップと8000ppmのバナジウム(100g)との混合物を流動床に投入して周期的酸化還元失活化プロセス(40サイクル)に供する。
【0054】
マッフル炉で焼成し、失活化温度に達した後、触媒に吸着された酸素を真空排気するために、流動床に窒素流を10分間流す。第2段階では、50%プロピレンと50%蒸気とを含んだ流れを触媒の流動床に更に10分間流す。次いで、触媒を再度窒素流で10分間真空排気し、最後に、4%SOを含んだ50%空気と50%蒸気とからなる流れで処理する。この手順を40回繰り返す。全手順の間、温度は788℃で一定のままとする。
【0055】
表3は0.8重量%のバナジウムを有する触媒、バナジウムを有さない触媒、および10%の調製した異なるプロトタイプを有する触媒混合物(0.8重量%バナジウムを含浸させた混合物)のMAT(マイクロ活性試験)の成績を示す。
【0056】
【表3】

【0057】
示した成績からは、アルミナからまたはアルミナとマグネシウムとの混合物から構成された担体は、水蒸気および空気による失活化とは異なり、SO存在下(空気中2%モル)では、バナジウムを捕捉するどのような種類の能力も如何にして示さないかが強調される。このことはバナジウムトラップとして現状技術に報告された固体がSO存在下(工業用ユニットと同様の背景)でそのように働かない理由を説明するものである。
【0058】
対照的に、市販の触媒およびバナジウムと混合された、酸化アルミニウムと酸化マグネシウムとの混合物上に担持されたPBAから成る固体は、SO存在下で、熱水失活化において観察される有用な産物の収率を保護する同じ能力をほぼ維持する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質としてバナジウムを含有する、炭化水素接触分解プロセスに有用な化学組成物であって、該化学組成物が、ピロリン酸塩M(ここで、M=BaまたはCaである)と、MgO、Mg(OH)、またはMg(NOなどの任意の可溶性塩などの異なるマグネシウム化合物と組み合わせた酸化アルミニウム担体とを含むことを特徴とする、化学組成物。
【請求項2】
前記担体が好ましくは、そのスピネル相のアルミン酸マグネシウムであることを特徴とする、請求項1に記載の化学組成物。
【請求項3】
ピロリン酸バリウムまたはピロリン酸カルシウムの量が5乃至60重量%であることを特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の化学組成物。
【請求項4】
ピロリン酸バリウムまたはピロリン酸カルシウムの量が好ましくは30重量%であることを特徴とする、請求項3に記載の化学組成物。
【請求項5】
酸化アルミニウムの量が40乃至90重量%であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の化学組成物。
【請求項6】
酸化アルミニウムの量が55重量%であることを特徴とする、請求項5に記載の化学組成物。
【請求項7】
酸化マグネシウムの量が5乃至30重量%であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の化学組成物。
【請求項8】
酸化マグネシウムの量が15重量%であることを特徴とする、請求項7に記載の化学組成物。
【請求項9】
5乃至60重量%のピロリン酸バリウムまたはピロリン酸カルシウム、40乃至90重量%の酸化アルミニウム、および5乃至30重量%の酸化マグネシウムを含むことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の化学組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9の化学組成物を生成する方法であって、該方法が:
i)(NHHPOまたはHPOなどのリン源溶液と(Ba(NOおよびBaClなどの硝酸塩型または塩化物型のBaまたはCa源溶液とを混合し、ii)高速で攪拌しながらpHが7.5を超えるまでNHOH溶液を前記溶液に添加することによって共沈殿させて、1μm未満の粒径の有するBaHPOまたはCaHPOを得、iii)前記ステップの固体を750乃至820℃の温度で焼成して約1μmの粒径を有するPBAおよびPCAを得るステップを含む、a)BaHPOまたはCaHPOの共沈殿または焼成によりピロリン酸塩を調製するステップと、
i)HNOまたはHClなどの無機酸あるいは酢酸または特にギ酸などの有機酸の存在下で酸化アルミニウム、好ましくはアルミナを部分溶解するステップと、ii)MgOまたは水酸化アルミニウム懸濁液を添加するステップと、iii)NHOH溶液を添加することによりpHを4.0より大きく、好ましくは4.5より大きく調整するステッップとを含む、b)担体を調製するステップと、
c)PBAまたはPCA懸濁液を前記担体に添加し、散布(aspersion)によって乾燥させるステップとを含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項11】
ステージb)の第1ステップで用いられる酸が好ましくはギ酸であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステージb)の第1ステップが分散剤を添加するステップを含むことを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
ステージb)の第1ステップが、分散剤として(NaPOを0.1乃至2%の濃度で添加するステップを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物が請求項10乃至13のいずれか1項に記載のプロセスを用いて得られることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の化学組成物。

【公表番号】特表2010−511768(P2010−511768A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539830(P2009−539830)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004328
【国際公開番号】WO2008/081325
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(509161060)
【氏名又は名称原語表記】ECOPETROL S.A.
【住所又は居所原語表記】CARRERA 13 No. 36−24 P.11, Bogota D.C., Colombia
【Fターム(参考)】