説明

接触検知装置、携帯情報端末、静電容量校正プログラム及び方法

【課題】 タッチキーを備えた携帯情報端末において、温度変化による影響を受けずに安定した長押し等を実現可能とする。
【解決手段】
タッチキーAは、ユーザの指等が接触することで押し操作されると、その静電容量がON閾値を超える。ユーザの指等が接触していないタッチキーB,C等のうち、静電容量がON閾値に最も近い方のタッチキー(B)の静電容量とON閾値との差分(PS)を校正閾値とする。また静電容量がON閾値から最も離れているタッチキー(C)の静電容量を校正値とする。そして、校正値が校正閾値を超える場合(T5)、その校正値を用いて全タッチキーの静電容量を校正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザ入力デバイスとして静電容量型の検知センサを備えた接触検知装置と、その接触検知装置を備えた携帯情報端末と、静電容量校正プログラム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、タッチキーを備えた携帯電話端末などのモバイル機器が多数製品化されている。また、これら携帯情報端末に搭載されるタッチキーとしては、いわゆる静電容量型のタッチセンサが使用されることが多い。当該静電容量型のタッチセンサからなるタッチキーは、例えばユーザの指等が接触した時の静電容量変化を監視することにより、当該ユーザによる押し操作を検知可能となされている。
【0003】
ここで、静電容量型のタッチセンサは、温度変化により静電容量が大きく変化するという特性を有している。
【0004】
当該タッチセンサの温度を変化させる要因としては、例えば、環境の変化(気温の変化)や、当該タッチセンサが搭載された端末の温度上昇などが考えられる。また、環境による温度変化は比較的長い時間をかけて起こるが、特に端末の温度上昇については、短時間のうちに急激に起こることが多い。なお、端末の温度上昇は、例えば複数アプリケーションを同時に実行したり、或るアプリケーションの処理を長時間実行している場合のような高負荷状態での使用等により、CPUやバッテリの温度が上昇することで起こる。
【0005】
また、タッチセンサの静電容量の変化は、例えばユーザが指等にて所望のタッチキーに触れた際に、意図しない別のタッチキーにも多少触れてしまうことで起こることも多い。特に携帯電話端末のような小型筐体上の限られたスペースに複数のタッチキーを設けた場合には、各タッチキー同士が隣接して配置されることになるため、そのような意図しない別のタッチキーへの接触による静電容量変化が起こり易くなる。勿論、指等がタッチセンサに触れている時には、当該指の熱によりタッチセンサの静電容量の変化も起こることになる。
【0006】
上述のように、静電容量型のタッチセンサからなるタッチキーは、温度変化や意図しない接触により静電容量が変化し易いという特徴を有している。
【0007】
このようなことから、例えば、ユーザが所望のタッチキーを長押し等している時に、そのタッチキーの隣接タッチキーに意図せずに指等が接触して、当該隣接タッチキーの静電容量が増加している状態の時に、上記所望タッチキーの長押しによりアプリケーション処理が長時間実行されて高負荷状態となり、端末温度が上昇して各タッチセンサの静電容量が変化するようなことが起こると、上記隣接タッチキーが誤ってON状態になってしまう可能性が高くなる。
【0008】
従来の携帯電話端末等は、このような誤動作の発生を回避するために、所望のタッチキーが長押しされている場合、その長押しに対して数分程度の時間制限を設けている。すなわち、長押し状態が制限時間を超えた場合、携帯電話端末は、一度タッチキーを無効にし、各タッチキーを校正するようになされている。なお、タッチキーの校正は、例えば静電容量の基準値を再設定するような処理となされている。
【0009】
その他、タッチスクリーンの校正システム及び方法として、特表2005−512197号の公表特許公報(特許文献1)には、複数の端子を備えるタッチスクリーンと、少なくとも1つの信号を前記端子に加え、タッチスクリーン上のタッチに因る信号への影響を感知するための制御回路と、校正インピーダンスをタッチスクリーンに適用するためのスイッチング回路と、校正インピーダンスの適用によって測定誤りを計算し、タッチに応答して、測定誤りを適用して、測定されたタッチ位置から補正済みのタッチ位置を得るように構成されるマイクロプロセッサとを備えたタッチスクリーン校正システムが開示されている。
【0010】
【特許文献1】特表2005−512197号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、例えば近年の大容量のメモリを搭載した音楽再生機能付き携帯電話端末などにおいては、膨大な曲リストの中から所望の曲を検索するためには、例えば数十分以上の長い時間の検索操作が必要になる。すなわちこの場合、ユーザは、より長い時間タッチキーを押し続けるような操作を行うことになる。
【0012】
しかしながら、従来の携帯電話端末は、前述したように、タッチキーの長押しに対して時間制限を設けることで誤動作の発生を回避するようになされているため、上述のような数十分以上にも及ぶ長押しはできない。勿論、タッチキーの長押しに対する時間制限を取り去れば、数十分以上の長押しも可能になるが、この場合、前述のような温度上昇による誤動作が起こる確率が高くなってしまう。
【0013】
このようなことから、温度変化による影響を受けずに、安定した長押し等が可能なタッチキーを備えた携帯電話端末の登場が待たれている。
【0014】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、静電容量型の接触検知センサを備え、温度変化による影響を受けずに、安定した長押し等を可能とする接触検知装置と、その接触検知装置を備えた携帯情報端末と、静電容量校正プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、少なくとも外部物体の接触の有無を検知するための複数の接触検知領域を備えた静電容量型の接触検知部と、外部物体の接触が検知された接触検知領域を除く他の接触検知領域の静電容量値を基に接触検知領域の静電容量を校正する際の校正値を決定する校正値決定部と、同じく他の接触検知領域の静電容量値を基に接触検知領域の静電容量の校正の要否を判定する校正判定部と、校正要と判定された時に校正値を用いて全接触検知領域の静電容量を校正する静電容量校正部とを有することにより、上述した課題を解決する。
【0016】
本発明によれば、何れかの接触検知領域にて外部物体の接触が検知されている場合には、他の接触検知領域の静電容量値を基に、静電容量の校正値の決定と、静電容量校正の要否判定が行われ、校正要の時には、全接触検知領域の静電容量を校正するようになされている。すなわち本発明によれば、何れかの接触検知領域にて外部物体の接触が検知されている間は、リアルタイムな校正が続けられるようになされている。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、外部物体の接触が検知された接触検知領域を除く他の接触検知領域の静電容量値を基に、静電容量の校正値を決定すると共に、静電容量校正の要否を判定し、そして、校正要と判定された時には、全接触検知領域の静電容量を校正値を用いて校正するようにしている。このため、本発明においては、例えば、温度変化などにより静電容量が変化したとしても、温度変化の影響を除去するような校正が行われることになり、したがって、温度変化による影響を受けずに、安定した長押し等が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
【0019】
なお、以下の実施形態では、本発明の適用例として静電容量型のタッチキーを備えた携帯電話端末を挙げているが、勿論、ここで説明する内容はあくまで一例であり、本発明はこの例に限定されないことは言うまでもない。
【0020】
〔携帯電話端末の概略内部構成〕
図1には、本実施形態の携帯電話端末の概略的な内部構成を示す。
【0021】
図1において、通信アンテナ12,通信回路11は、通話や電子メール等のパケット通信のための信号電波を送受信し、送受信信号の周波数変換、変調と復調等を行う。
【0022】
スピーカ20は、携帯電話端末に設けられている受話用のスピーカや、リンガ(着信音)、アラーム音、再生音楽等の音声出力用スピーカである。マイクロホン21は、送話用及び外部音声集音用のマイクロホンである。音声処理部23は、通話音声データや再生音楽等の音声に関連する各種の処理を行う。
【0023】
操作部14は、携帯電話端末の図示しない筐体上に設けられているテンキーや発話キー、終話/電源キー等の各キーや十字キー、シャッターボタン、ジョグダイヤル等の各操作子と、それら操作子が操作された時の操作信号を発生する操作信号発生器とからなる。
【0024】
表示部13は、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示デバイスと、そのディスプレイの表示駆動回路からなる。画像処理部22は、文字や記号、静止画像、動画像等の表示画像に関連する各種の処理を行う。
【0025】
メモリ部16は、例えばOS(Operating System)プログラムや、制御部10が各部を制御するための制御プログラム、本発明にかかる後述するタッチキー校正プログラム等の各種のアプリケーションプログラム、その他の各種データを記憶し、また、制御部10の作業領域として随時データを格納する。なお、メモリ部16のプログラム格納部17には本発明にかかるタッチキー校正プログラム等の各種のアプリケーションプログラムが格納され、データ格納部18には後述の本発明にかかるタッチキー校正プログラムが使用する閾値等を含む各種データが格納される。また、メモリ部16に格納されている本発明にかかるタッチキー校正プログラムを含む各プログラムは、ディスク状記録媒体や外部半導体メモリ等を介して格納されたり、外部インターフェースを通じたケーブルや無線等を介して格納されたものであっても良い。
【0026】
時計部15は、年月日、日時等の時間情報の生成や時間の計測等を行う。本実施形態の場合、当該時間情報は後述するタッチキーの長押し操作や短押し操作の判定のためにも用いられる
タッチキーモジュール3は、静電容量の変化を検知可能な接触検知領域(タッチセンサ面)により構成された複数のタッチキーからなる。なお、タッチキーモジュール3の複数の接触検知領域は、それぞれ独立したタッチセンサ面により構成されているものの他、一つのタッチセンサ面を複数の接触検知エリアに分けたものであっても良い。
【0027】
タッチキー制御部26は、上記タッチキーモジュール3のON/OFF制御や各タッチキーについて静電容量の測定を行い、静電容量の測定データを制御部10へ送る。また、タッチキー制御部26は、制御部10による制御の基で、後述するように各タッチキーの校正を行う。
【0028】
制御部10は、CPU(中央処理ユニット)からなり、本実施形態の携帯電話端末の各部の制御と各種信号処理制御等を行う。特に、本実施形態の場合、詳細については後述するが、制御部10は、メモリ部16のプログラム格納部17に格納されているタッチキー校正プログラムの実行及びそれに付随する各種データ処理等を行う。
【0029】
その他、図1には図示を省略しているが、本実施形態の携帯電話端末は、一般的な携帯電話端末に設けられる各構成要素についても備えている。
【0030】
〔携帯電話端末の概略外観構成〕
図2には、本発明実施形態の携帯電話端末1の概略的な外観図を示す。なお、図2の例は、いわゆる折り畳み型の携帯電話端末1を折り畳んだ時の正面外観図であり、その状態の時の携帯電話端末1の筐体上には、セカンドディスプレイ2と五個のタッチキーA〜Eからなるタッチキーモジュール3とが設けられている。
【0031】
この図2に示す携帯電話端末1において、上記五個のタッチキーA〜Eは、それぞれ隣接して配置されており、例えばタッチキーBを中心にして上側にタッチキーAが、下側にタッチキーCが、左側にタッチキーDが、右側にタッチキーEが配されている。
【0032】
ここで、これらタッチキーA〜Eは、近接配置されているため、例えばユーザが指等により所望のタッチキーAにタッチした場合に、そのタッチキーAだけでなく、タッチキーB,D,Eにも触れてしまう確率が高くなっている。なお、図中の指示符号4にて示す円は、ユーザの指が接触している範囲を表しており、その指接触範囲4内に所望のタッチキーAの他に、タッチキーB,D,Eも入ってしまっている。
【0033】
この図2の例のように、その指接触範囲4内に入っている所望のタッチキーAとそれ以外のタッチキーB,C,Dは、それぞれ静電容量が増加することになる。なお、ユーザが意図的に指を接触させているタッチキーAについては、当該指の接触による静電容量の増加後もその静電容量は安定している、一方で、ユーザが意図しない状態で指が接触しているタッチキーB,D,Eは、その指が中途半端に触れているので、その静電容量は不安定となる。
【0034】
〔タッチキーの閾値〕
図3には、携帯電話端末1に搭載されている五個のタッチキーA〜Eのうち、タッチキーA,B,Cの静電容量変化のグラフを示している。なお、図3の上段のグラフは、ユーザが意図的に指を接触させていることで静電容量が安定しているタッチキーAの静電容量変化を表している。図3の中段のグラフは、ユーザが意図しない状態で指が接触しているタッチキーB,D,Eの中で最も静電容量が増加しているタッチキーBの静電容量変化を表している。図3の下段のグラフは、上記指接触範囲4内に入っていないタッチキー、つまり、ユーザの指が接触していないタッチキーCの静電容量変化を表している。
【0035】
また、この図3に示すように、各タッチキーには、ユーザが意図的に指等を接触させる押し操作がなされたか否かを判断するための閾値、つまりONとなったかどうかを判断するためのON閾値が設定されている。したがって、何れかのタッチキーの静電容量が当該ON閾値を超えた場合、そのタッチキーのみがON状態となる。
【0036】
すなわち図2及び図3の例では、ユーザが意図的に押し操作したタッチキーAのみがONとなる。一方、タッチキーBは、ユーザが意図しない状態で指が接触しているが、その接触面積が或る程度少ないため、静電容量は増加するものの、ON閾値を超えるには至らず、ONとはならない。勿論、タッチキーCについては、ユーザの指が接触していないため、静電容量は略々変化せず、ON状態とはならない。
【0037】
なお、図3では図示していないが、タッチキーには、ON状態からOFF状態に変化したかどうかを判定するためのOFF閾値も設定されている。OFF閾値は、ON閾値を超えてON状態となったタッチキーの静電容量が、何らかの理由(例えば指が動いて接触量が減る等の理由)により多少低下した場合であっても、ON状態を維持できるようにするための閾値である。当該OFF閾値は、通常はON閾値の3/4程度の値(環境温度変化に換算すると20度C程度の差)に設定されている。
【0038】
〔タッチキー校正処理のフロー〕
以下、図4のフローチャートと図3のグラフを参照しながら、本実施形態の携帯電話端末1がタッチキーの校正を行う際の処理の流れを説明する。なお、図4のフローチャートは、本実施形態の携帯電話端末の制御部10がメモリ部16のプログラム格納部17に格納されているタッチキー校正プログラムを実行することにより行われる処理である。
【0039】
図4において、制御部10は、タッチキー制御部26によりタッチキーモジュール3に電源が投入されると、ステップS1の処理として、タッチキー制御部26を制御して、各タッチキーA〜Eの現時点での静電容量を測定させ、その測定データを受け取る。そして、制御部10は、その測定データを監視し、図3の例のように、何れかのタッチキーの静電容量がON閾値を超えたことを検知すると、ステップS2へ処理を進める。なお、図3の例では、図2のタッチキーAの静電容量がON閾値を超えている。
【0040】
ステップS2の処理に進むと、制御部10は、上記ON閾値を超えたタッチキーAが、ユーザにより押し操作続けられている状態、すなわちいわゆる長押しがなされているかどうか判定する。具体的には、上記ON閾値を超えている状態が一定時間(例えば500msec程度)以上続いている場合、制御部10は、長押しされていると判定してステップS3へ処理を進める。一方、一旦ON閾値を超えた後、上記一定時間を超える前に静電容量が下がりOFF閾値を下回った場合、制御部10は、通常の押し操作(つまり短押し)であると判断し、ステップS8へ処理を進める。なお、図3の例では、図2のタッチキーAが長押しされていると判定される。
【0041】
ステップS3の処理に進むと、制御部10は、各タッチキーの静電容量の測定データを監視することで誤動作する可能性が最も高いタッチキーを判定すると共に、静電容量の校正を行うかどうかを判定するための校正閾値を決定する。すなわちこの場合の制御部10は、先ず、上記ON閾値を超えてON状態になっているタッチキーを除いた残り全てのタッチキーについて、現在の静電容量の値とON閾値との差分を計算する。次に、制御部10は、その差分値が最も小さくなっているタッチキーが最も誤動作し易いタッチキーであると判定する。つまり、制御部10は、例えば温度上昇等により静電容量が増加した場合に、ON閾値を超えてしまう確率が最も高いタッチキーを、最も誤動作し易いタッチキーであると判定する。そして、制御部10は、最も誤動作し易いタッチキーの現在の静電容量値とON閾値の差分値を、静電容量の校正を行うかどうかを判定するための校正閾値に決定する。なお、図3の例では、図2のタッチキーBが最も誤動作し易いキーであると判定される。また、図3の例では、タッチキーBの静電容量測定グラフ内の矢印PSにて示す差分値が、静電容量の測定タイミング毎に得られる校正閾値となる。上記静電容量の測定タイミングとしては、一例として25msecを挙げることができる。
【0042】
次に、制御部10は、ステップS4の処理として、静電容量の校正値を生成する際に使用するタッチキーを決定する。すなわちこの場合、制御部10は、上記ON閾値を超えていない各タッチキーの現在の静電容量の値とON閾値との差分値が最も大きくなっているタッチキーを、校正値生成の際に使用するタッチキーとして決定する。つまり、制御部10は、例えば温度上昇等により静電容量が増加した場合であっても、ON閾値を超えてしまう確率が最も低いタッチキーを、上記校正値生成の際に使用するタッチキーとして決定する。なお、図3の例では、図2のタッチキーCが当該校正値生成の際に使用するキーであると判定される。
【0043】
そして、制御部10は、ステップS5の処理として、上記校正値生成の際に使用すると決定されたタッチキーCの静電容量の現時点の測定値を、校正値として決定する。
【0044】
次に、制御部10は、ステップS6の処理として、全タッチキーの静電容量の校正処理を実行するか否かの判定を行う。すなわち制御部10は、ステップS3の校正閾値(矢印PSで示す差分値)と、上記ステップS5の校正値(タッチキーCの静電容量値)とを比較し、校正値が校正閾値を超えていない時には校正不要と判定する。一方、校正値が校正閾値を超えた場合、制御部10は、校正が必要であると判定する。そして、制御部10は、校正値が校正閾値を超えず校正不要と判定した時にはステップS1へ処理を戻し、一方、校正値が校正閾値を超えて校正が必要と判定した時にはステップS7へ処理を進める。なお、図3の例では、静電容量測定タイミングT1,T2,T3,T4の時の校正値は校正閾値を超えておらず、静電容量測定タイミングT5の時に校正値が校正閾値を超えている。したがって、制御部10は、静電容量測定タイミングT5の時に校正が必要であると判定する。
【0045】
ステップS7の処理に進むと、制御部10は、全てのタッチキーA〜Eの静電容量を上記ステップS5で決めた校正値(タッチキーCの静電容量値)で減算することにより、全タッチキーを校正する。すなわち、図3の例の場合、静電容量測定タイミングT5の時に、全タッチキーの静電容量値をタッチキーCの静電容量値分だけ減算する。当該校正処理により、全タッチキーの静電容量値は、上記タッチキーCの静電容量値分だけ減ることになる。
【0046】
これにより、最も誤動作する確率が高かったタッチキーBの静電容量は減り、例えば、当該タッチキーBの静電容量が図3中の静電容量値SHになってON閾値を超えてしまって誤動作する状態になるのを回避できることになる。
【0047】
なお、既にON状態になっているタッチキーAは、上記校正処理により静電容量が減らされたとしても、前述のOFF閾値を下回ることはないため、誤ってOFF状態になってしまうこともない。
【0048】
上記ステップS7の処理後、制御部10は、ステップS1へ処理を戻す。これにより、上述したような校正処理の実行後にも、リアルタイムな校正閾値及び校正値の決定、校正要否の判定等の処理が繰り返し続けられることになる。したがって、本実施形態によれば、温度変化の影響を受けない長押し操作が可能となる。
【0049】
なお、図4のフローチャートには図示していないが、例えばユーザの指が離されてタッチキーAの静電容量がOFF閾値を下回った時には、ステップS1に処理が戻される。
【0050】
この場合、ステップS1で測定されている全てのタッチキーの静電容量は減少することになる。したがって、この時の制御部10は、ステップS2にて長押しされているタッチキーが無いと判定し、ステップS8へ処理を進める。
【0051】
ステップS8の処理に進むと、制御部10は、全てのタッチキーを校正する。すなわちこの場合、各タッチキーの静電容量は、温度変化等により初期の基準値からずれた値になっている可能性がある。このため、制御部10は、全てのタッチキーの静電容量の平均値を求め、この平気値を新たな基準値として全タッチキーの静電容量を校正した後、ステップS1へ処理を戻す。
【0052】
〔まとめ〕
以上説明したように、本発明実施形態の携帯電話端末は、例えば温度センサなど他のデバイスを使用することなく、温度変化によるタッチキーの静電容量の増加をリアルタイムに校正することができる。したがって本実施形態の携帯電話端末は、タッチキーの安定した長押し操作を実現することができる。
【0053】
なお、上述した本発明の実施形態の説明は、本発明の一例である。このため、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんである。
【0054】
上述の説明では、前記差分値が最も小さいタッチキーが一つしかない例を挙げたが、例えば差分値が最も小さいタッチキーが複数ある場合、本実施形態の携帯電話端末は、それらの中から例えば一つのタッチキーのみを、最も誤動作し易いタッチキーとして選択することも可能である。
【0055】
同様に、前記差分値が最も大きいタッチキーが複数ある場合、携帯電話端末の制御部は、それらの中から例えば一つのタッチキーのみを校正値生成に使用するタッチキーとして選択することも可能である。また、前記差分値が最も大きいタッチキーが複数ある場合に、それらの中から一つを校正値生成用のタッチキーに選択する際、携帯電話端末の制御部は、例えばON状態になっているタッチキーから物理的な距離が最も遠い位置に配されているタッチキーを選択するようなことも可能である。
【0056】
また、上述の説明では、タッチキーモジュール3の各タッチキーがそれぞれ略々同じ形状で略々同じ面積を有している例を挙げているが、それら各タッチキーの形状や面積は個々に異なっていても良い。特に、各キーの形状や面積が異なることで、温度変化に対する各タッチキーの静電容量変化に差があるような場合、携帯電話端末の制御部は、その差に応じて、前述の校正閾値や校正値に重み付けを行うこともできる。
【0057】
また、略々同時に2以上のタッチキーが押し操作された場合、携帯電話端末の制御部は、それらタッチキーの押し操作を無視しても良い。もちろん、携帯電話端末の制御部は、二つ以上のタッチキーの略々同時押し操作に応じて、二つのタッチキーを両方ONにしても良いし、何れか少しでも早く押し操作された方のみをONにしても良い。
【0058】
その他、本発明は、携帯電話端末に限定されず、タッチキーモジュールを備えたPDA(Personal Digital Assistant)やパーソナルコンピュータ、携帯型テレビゲーム装置、携帯型ディジタルテレビジョン受信機、カーナビゲーション装置など様々な端末にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明実施形態の携帯電話端末の概略内部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明実施形態の携帯電話端末の概略的な外観図である。
【図3】ユーザの押し操作によりON状態となるタッチキーAの静電容量変化例と、押し操作されていない他のタッチキーの静電容量変化例を示すグラフである。
【図4】本実施形態の携帯電話端末がタッチキーの校正を行う際の処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 携帯電話端末、2 セカンドディスプレイ、3 タッチキーモジュール、4 指接触範囲、10 制御部、11 通信回路、12 通信アンテナ、13 表示部、14 操作部、15 時計部、16 メモリ部、17 プログラム格納部、18 データ格納部、20 スピーカ、21 マイクロホン、22 画像処理部、23 音声処理部、26 タッチキー制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外部物体の接触の有無を検知するための複数の接触検知領域を備えた静電容量型の接触検知部と、
上記接触検知部にて外部物体の接触が検知された接触検知領域を除く他の接触検知領域の静電容量値を基に、上記接触検知領域の静電容量を校正する際の校正値を決定する校正値決定部と、
上記接触検知部にて外部物体の接触が検知された接触検知領域を除く他の接触検知領域の静電容量値を基に、上記接触検知領域の静電容量の校正の要否を判定する校正判定部と、
上記校正判定部にて校正が要と判定された時に、上記校正値決定部にて決定された校正値を用いて、上記複数の全接触検知領域の静電容量を校正する静電容量校正部と、
を有する接触検知装置。
【請求項2】
上記接触検知部は、上記複数の接触検知領域の各静電容量の測定値と、静電容量の所定閾値とを比較して、上記静電容量の測定値が上記所定閾値を超えた接触検知領域を、上記少なくとも外部物体が接触した接触検知領域とし、
上記校正値決定部は、上記外部物体の接触が検知された接触検知領域を除く他の接触検知領域の静電容量の測定値のなかで、上記所定閾値との差分が最も大きい測定値を校正値として決定し、
上記校正判定部は、上記外部物体の接触が検知された接触検知領域を除く他の接触検知領域の静電容量の測定値のなかで、上記所定閾値との差分が最も小さい測定値を校正閾値として決定すると共に、上記校正閾値と校正値を比較して、上記校正値が校正域値を超えた時に、上記校正が要と判定し、
上記静電容量校正部は、上記複数の全接触検知領域の静電容量を上記校正値で減算することで上記校正を行う請求項1記載の接触検知装置。
【請求項3】
上記接触検知部は、外部物体の接触が検知された接触検知領域にて当該接触検知状態が一定時間継続しているか否かの検知を行い、
上記校正値決定部と上記校正判定部は、上記接触検知部にて上記接触検知状態が一定時間継続していることが検知されている時に、上記校正値の決定と校正の要否判定を行う請求項1又は請求項2記載の接触検知装置。
【請求項4】
上記校正値決定部と上記校正判定部は、所定の測定タイミング毎に上記校正値の決定と校正の要否判定を行う請求項1又は請求項2記載の接触検知装置。
【請求項5】
少なくとも外部物体の接触の有無を検知するための複数の接触検知領域を備えた静電容量型の接触検知部と、
上記接触検知部の複数の接触検知領域が外表面上に配置された端末筐体と、
上記接触検知部にて外部物体等の接触が検知された接触検知領域に応じた信号処理を行う信号処理部と、
上記接触検知部にて外部物体の接触が検知された接触検知領域を除く他の接触検知領域の静電容量値を基に、上記接触検知領域の静電容量を校正する際の校正値を決定する校正値決定部と、
上記接触検知部にて外部物体の接触が検知された接触検知領域を除く他の接触検知領域の静電容量値を基に、上記接触検知領域の静電容量の校正の要否を判定する校正判定部と、
上記校正判定部にて校正が要と判定された時に、上記校正値決定部にて決定された校正値を用いて、上記複数の全接触検知領域の静電容量を校正する静電容量校正部と、
を有する携帯情報端末。
【請求項6】
上記接触検知部は、上記複数の接触検知領域の各静電容量の測定値と、静電容量の所定閾値とを比較して、上記静電容量の測定値が上記所定閾値を超えた接触検知領域を、上記少なくとも外部物体が接触した接触検知領域とし、
上記校正値決定部は、上記外部物体の接触が検知された接触検知領域を除く他の接触検知領域の静電容量の測定値のなかで、上記所定閾値との差分が最も大きい測定値を校正値として決定し、
上記校正判定部は、上記外部物体の接触が検知された接触検知領域を除く他の接触検知領域の静電容量の測定値のなかで、上記所定閾値との差分が最も小さい測定値を校正閾値として決定すると共に、上記校正閾値と校正値を比較して、上記校正値が校正域値を超えた時に、上記校正が要と判定し、
上記静電容量校正部は、上記複数の全接触検知領域の静電容量を上記校正値で減算することで上記校正を行う請求項5記載の携帯情報端末。
【請求項7】
上記接触検知部は、外部物体の接触が検知された接触検知領域にて当該接触検知状態が一定時間継続しているか否かの検知を行い、
上記校正値決定部と上記校正判定部は、上記接触検知部にて上記接触検知状態が一定時間継続していることが検知されている時に、上記校正値の決定と校正の要否判定を行う請求項5又は請求項6記載の携帯情報端末。
【請求項8】
上記校正値決定部と上記校正判定部は、所定の測定タイミング毎に上記校正値の決定と校正の要否判定を行う請求項5又は請求項6記載の携帯情報端末。
【請求項9】
少なくとも外部物体の接触の有無を検知するための複数の接触検知領域を備えた静電容量型の接触検知センサにて外部物体の接触が検知された接触検知領域を除く、他の接触検知領域の静電容量値を基に、上記接触検知領域の静電容量を校正する際の校正値を決定する校正値決定部と、
上記接触検知センサにて外部物体の接触が検知された接触検知領域を除く他の接触検知領域の静電容量値を基に、上記接触検知領域の静電容量の校正の要否を判定する校正判定部と、
上記校正判定部にて校正が要と判定された時に、上記校正値決定部にて決定された校正値を用いて、上記複数の全接触検知領域の静電容量を校正する静電容量校正部として、
接触検知センサを備えたコンピュータを機能させる静電容量校正プログラム。
【請求項10】
少なくとも外部物体の接触の有無を検知するための複数の接触検知領域を備えた静電容量型の接触検知センサにて外部物体の接触が検知された接触検知領域を除く他の接触検知領域の静電容量値を基に、校正値決定部が、上記接触検知領域の静電容量を校正する際の校正値を決定するステップと、
上記接触検知センサにて外部物体の接触が検知された接触検知領域を除く他の接触検知領域の静電容量値を基に、校正判定部が、上記接触検知領域の静電容量の校正の要否を判定するステップと、
上記校正判定部にて校正が要と判定された時に、静電容量校正部が、上記校正値決定部にて決定された校正値を用いて、上記複数の全接触検知領域の静電容量を校正するステップと、
を有する静電容量校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−265851(P2009−265851A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113187(P2008−113187)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(501431073)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】