説明

接触装置の液体配送部

【課題】パッキング内のガスおよび液体の流れを改善して、液体滴の形成を防止し、または液体滴がガス流によって搬送されることを防止し、よって滴分離器の使用を排除する接触装置を提供する。
【解決手段】ガス流のために装置の下方に配置された入口3と、処理済みのガス流を排出するための出口4、その間に配置された構造化パッキング8、さらに液体流のための入口6、および処理済みの液体流を排出するための出口7、さらに少なくとも1つの液体ディストリビュータ21が液体流のために前記入口6に配置される接触装置1において、液体ディストリビュータ21が、構造化パッキング8の流路18内に突出する少なくとも1つのノズルを備え、ノズルが、前記流路18内のガス流の基本的に完全な遮断を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接触装置に関し、接触装置は、上向きのガス流のため、接触装置の下方部分に配置された入口と、処理済みのガス流を排出するため、その上方部分にある出口との間に配置された構造化パッキング、さらに下向きの液体流のため、接触装置の上方部分にある入口、および処理済みの液体流を排出するため、その下方部分にある出口とを備え、それによって液体ディストリビュータが液体流のために上述した入口に配置される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、上述した種類の接触装置が以前から知られ、これは複数の異なる方向のパッキング層を有する構造化パッキングを備え、液体は、上部パッキング層内でガスと液体との接触を達成し、滴下の形成の危険を軽減するため、構造化パッキングの頂部に配置された液体ディストリビュータから上部パッキング層の上向きの流路へと直接導入される。
【0003】
以前に知られていた液体ディストリビュータは、液体を液体入口から構造化パッキングの上部パッキング層へと配送する。構造化パッキングは複数の板または薄層を示し、これはパッキングを通る上向きの流路を形成する。複数の平行な液体ディストリビュータが接触装置の直径に指し渡して配置される。液体ディストリビュータはそれぞれ、パッキングの流路と位置合わせして配置された液体配送穴を設けた平面の底面を有する路を示し、液体をパッキング層の上面へ、および構造化パッキングの流通路内へと直接配送する。液体ディストリビュータは、パッキング層の上面に直接配置され、前述した上面の一部を閉塞し、したがって上向きのガス流が液体ディストリビュータの各側に向かって、および滴分離器を通して伝導される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5139544号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接触装置のパッキング内の液体配送は一様であるが、ガスの配送が一様でない場合、またはその逆の場合は、パッキング内の配送不良の危険が大きく、これは接触装置を通るガスまたは液体の異なる路を形成することがある。その結果、予想されるよりガスと液体との接触が少なくなる。
【0006】
先行技術によると、吸収液体を上からパッキングの上面に直接配置された複数の配送路を通して導入する。つまり路はパッキング上にある。通常、液体は路の底部にある穴を通して導入され、したがってパッキングの上面に当たる。液体噴射の運動エネルギは、パッキングの構造とともに、液飛びをもたらし、パッキング内および上の区域に滴が形成される。このような液飛びによって形成された滴は、ガス流とともに搬送され、パッキングの下流で問題を引き起こす。この理由から、パッキングの下流に配置する滴分離器を使用する必要があると考えられてきた。このような滴分離器の欠点は、接触装置の投資費用および運転費が増加することである。
【0007】
本発明の目的は、パッキング内のガスおよび液体の配送を改善し、液体滴の形成を防止するか、液体滴が存在する場合は、このような滴がガス流によって搬送されることを防止し、したがって滴分離器の使用を排除することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本明細書の説明の導入部分で説明した種類の装置を有する本発明により達成され、これは、液体ディストリビュータが少なくとも1つのノズルを備え、これがパッキングの流路内に突出し、ノズルが、前記流路内のガス流を基本的に完全に遮断するよう設計されることを特徴とする。
【0009】
本発明により、パッキング内に適合する構造を示すよう液体ディストリビュータの路を形成することにより、液体をパッキング上に射出するのではなく、パッキング内に注入することができる。液体ディストリビュータの路のこの部分は、パッキング内に適合し、注入区域内のガスの完全な遮断を達成するよう設計される。それにより、液体をパッキングに導入する時の液飛びまたは滴形成の危険が低下する。それと同時に、液体ディストリビュータの出口から液体がパッキングに当たる点までの区域に、基本的にガスが流れない。また、この理由から、上述した区域に形成される可能性がある液体の滴が、ガス流によって搬送されない。
【0010】
本発明による液体ディストリビュータは、「オス/メスの原理」を使用することによって任意の種類の構造化パッキング内に適合するような方法で適切に設計される。これによって、液体をパッキングに注入することができ、液体流が液体ディストリビュータからパッキングの表面に液体が当たるまでの区域でガスの遮断が達成される。液体ディストリビュータの設計は、特定のパッキングに依存して、それに適合し、したがって本発明の範囲内で任意の選択された形状を示す。
【0011】
次に、本発明を添付図面に関して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による接触装置の概略断面図を示す。
【図2】液体ディストリビュータの上からの詳細図を示す。
【図3】図2に示す液体ディストリビュータの断面図の一部を示す。
【図4】液体ディストリビュータのノズルの側面図を示す。
【図5】図4によるノズルの上からみた図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面では、図1は基本的に垂直に配置された接触装置1を示し、これは接触装置1を通る上向きのガス流のため、接触装置の下方部分に配置され、基本的に接触装置1に対して直角である入口3、および処理済みのガス流を排出するため、その上方部分5にある出口4、さらに接触装置1を通る下向きの液体流のため、接触装置の上方部分5にある入口6、および処理済みの液体流を排出するため、その下方部分2にある出口7を備える。接触装置という表現は、例えば吸収、吸着、脱離または蒸留などのための塔、柱またはスクラバを含む。
【0014】
接触装置1は少なくとも1つの構造化パッキング8を備え、これは入口3と出口4との間に配置される。ガス流の入口3の上縁9は、ほぼ構造化パッキング8の下限面10と同位置レベルで外側に開く。既知の方法で、構造化パッキング8は相互に対して配置され、間に幾つかの流路18を形成する2枚の波形プレートなどから形成することができる。パッキング8は、複数のパッキング層11〜17を備えることが適切であり、そのうち少なくとも最下方パッキング層11は、パッキング層11を通るその流路18が、入るガス流の流れ19の方向に基本的に直角に配置された面で上方向に延在するような方法で配置される。2つの隣接する上部パッキング層12〜17にあるプレートは、相互に対して直角に配置することが適切であり、したがってガス流は、交互に流入ガスの流れ19の方向に対して平行および直角に配置された面で接触装置1を通って上方向に伝導される。
【0015】
最下方パッキング層11は、基本的に、構造化パッキング8内に配置された支持格子20の下で自由に支持される。2つの最下方パッキング層11〜12は同様の方法で配置される。つまり個々の流路18が共通面に配置される。
【0016】
最上パッキング層17の上に少なくとも1つの液体ディストリビュータ12が配置され、これに入口6からの液体を提供する。図は、それぞれが3本の配送路22を有する2つの液体ディストリビュータ21を示すが、液体ディストリビュータ21の数、配送路22の数および個々の設計は、言うまでもなく添付請求の範囲の中で変更することができる。
【0017】
図2から図5は、3本の液体配送路22、および底部24を有する共通の注入路23を備える液体ディストリビュータ21の一部を示す。注入路23は、液体を各方向で液体配送路22内に散布する。液体配送路22の底部25には、ノズル26を有する幾つかの穴があり、これは図1の構造化パッキング8の最上パッキング層17内に突出するよう意図される。
【0018】
ノズル26はパッキング内に適合する外形を有する。図4および図5に示す例では、ノズル26は基本的に円筒形の上方部分27を有し、これは液体配送路の底部25にある円形の穴を通して突出するよう意図され、さらに基本的に長方形の下部分28を有し、これは相互に当たっている2枚の波形プレート(図示せず)間にぴったり配置するよう意図され、これが実際のパッキングを形成する。構造化パッキングの異なる形状の場合、ノズル62は言うまでもなく異なる形状を有する。異なるパッキングの適応を容易にするため、ノズル26の全体または一部を路の底部に着脱式に取り付ける。
【0019】
ノズル26の本発明の実施形態により、液体をパッキング上に噴射するのではなく、パッキング内に注入することができる。ノズル26のパッキング内に適合する部分は、注入区域のガスの完全な遮断を達成するよう設計される。この方法で、液体をパッキングに導入する時の液飛びまたは滴の形成が回避される。その結果、液体ディストリビュータの出口から液体がパッキングに当たる点までの区域で、重大なガスの流れが発生せず、したがってガス流によって搬送される内部の滴がない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明では、パッキング層を通る一様なガス配送、およびパッキング内への液体注入が達成され、滴が一緒に搬送される危険が低下し、滴分離器なしでプロセスを実行することが可能である。これは、このようなパッキングが滴分離器として働くので可能になる。
【符号の説明】
【0021】
1 接触装置
3 入口
4 出口
6 入口
7 出口
8 構造化パッキング
18 流路
21 液体ディストリビュータ
26 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化パッキング(8)を含む接触装置(1)であって、前記構造化パッキング(8)が上向きのガス流のために前記装置の構造化パッキング(8)の下方に配置された入口(3)と、処理済みのガス流を排出するために、前記構造化パッキング(8)の上方にある出口(4)との間に配置され、さらに下向きの液体流のために前記装置の構造化パッキング(8)の上方にある入口(6)と、処理済みの液体流を排出するために前記構造化パッキング(8)の下方にある出口(7)と、を同様に備え、少なくとも1つの液体ディストリビュータ(21)がパッキング(8)の流路(18)内に突出する少なくとも1つのノズル(26)を備え、該ノズル(26)が、前記流路(18)内のガス流の基本的に完全な遮断を達成するよう設計されることを特徴とする接触装置。
【請求項2】
前記ノズル(26)の少なくとも一部が液体ディストリビュータ(21)に着脱式に取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載された接触装置。
【請求項3】
前記ノズルの少なくとも一部が、選択されたパッキング(8)の流路(18)に適合する任意の形状を有することを特徴とする、請求項2に記載された接触装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−36859(P2011−36859A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211132(P2010−211132)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【分割の表示】特願2001−546755(P2001−546755)の分割
【原出願日】平成11年12月20日(1999.12.20)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】