説明

推進管および閉塞部材

【構成】 推進管10は、管本体12および閉塞部材14を含み、低耐荷力方式の推進工法に用いられて、下水管路などの地中管路を形成する。管本体12の端部には、推進装置(20)に設けられる爪部材(34)を差し込むための切欠部44が形成され、切欠部44には、閉塞部材14が装着される。閉塞部材14は、弾性を有するゴム等によって形成され、爪部材(34)を切欠部44から抜き取った後に、元の形状に復元する等して切欠部44を自動的に塞ぎ、管内面を平滑にする。
【効果】 切欠部に閉塞部材を嵌め込んでおくことによって、爪部材を切欠部から抜き取った後に、閉塞部材が自動的に切欠部に管内面を形成するので、内面平滑な地中管路を簡単に形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は推進管および閉塞部材に関し、特にたとえば、推進装置に設けた爪部材によって推進管を所要本数ごとに押しながら推進させて地中管路を形成する推進工法に用いる、推進管および閉塞部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の推進工法の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の推進工法は、合成樹脂製の推進管を用いる低耐荷力方式の推進工法である。この推進工法では、推進装置に爪状の支持部材を設け、この支持部材によって、所要本数ごとに推進管の管端を押すようにしている。これにより、推進管の外周面と周囲の土との摩擦抵抗力は、推進管の所要本数分に分散されるので、低耐荷力方式の推進工法における長距離推進が可能となる。具体的には、地盤の土質や推進管の管径などの条件にもよるが、支持部材を用いない低耐荷力方式の推進工法では、推進可能距離は通常30〜70mであるのに対して、支持部材を用いる低耐荷力方式の推進工法では、推進可能距離は200〜300mにも達し、安価で耐腐食性に優れる合成樹脂製の推進管の長距離推進が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−266922号公報 [E21D 9/06]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、推進管の管端を支持部材によって押すため、推進管の管端突合せ部には、支持部材を差し込むための差込孔(溝)が形成される。このため、推進管の押し込み作業が終了して支持部材を回収すると、差込孔が窪みとなって管内面にそのまま残ってしまう。たとえばこの管路を下水管路として用いる場合、管内面(特に管底付近)に窪みがあると、その窪みにゴミ等の流下物が挟まる等して、下水の円滑な流れが阻害されてしまう恐れがある。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、推進管および閉塞部材を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、内面が平滑な管路を容易に形成できる、推進管および閉塞部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0008】
第1の発明は、推進装置に設けた爪部材によって推進管を所要本数ごとに押しながら推進させて地中管路を形成する推進工法に用いる推進管であって、合成樹脂製の管本体、管本体の端部に形成され推進時に爪部材が差し込まれる切欠部、および切欠部に嵌め込まれ爪部材を切欠部から抜き取った後に切欠部に管内面を形成する閉塞部材を備える、推進管である。
【0009】
第1の発明では、推進管(10)は、合成樹脂製の管本体(12)を含み、推進装置(20)に設けた爪部材(34)によって推進管を所要本数ごとに押しながら推進させる、低耐荷力方式の推進工法に用いられる。管本体の端部には、爪部材を差し込むための切欠部(44)が形成され、切欠部には、閉塞部材(14)が嵌め込まれる。閉塞部材は、爪部材を切欠部から抜き取った後、たとえば元の形状に復元する等して切欠部を自動的に塞ぎ、切欠部に管内面を形成する。
【0010】
第1の発明によれば、爪部材を切欠部から抜き取った後に、閉塞部材が切欠部に管内面を形成するので、内面平滑な地中管路を簡単に形成できる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、閉塞部材は、弾性材によって形成され、爪部材からの圧縮力によって弾性変形し、圧縮力から解放されると復元する。
【0012】
第2の発明では、閉塞部材(14)は、ゴム、スポンジおよび板バネ等の弾性材によって形成される。この閉塞部材は、切欠部(44)に爪部材(34)が差し込まれた状態では、爪部材からの圧縮力によって管径方向または管軸方向に弾性変形し、切欠部から爪部材が抜き取られると、爪部材の圧縮力から解放されて元の形状に復元して切欠部を自動的に塞ぎ、切欠部に管内面を形成する。
【0013】
第2の発明によれば、第1の発明と同様の作用効果を奏する。
【0014】
第3の発明は、第1の発明に従属し、閉塞部材は、水膨潤ゴムによって形成され、水を吸収することによって膨張する。
【0015】
第3の発明では、閉塞部材(14)は、水膨潤ゴムによって形成される。この閉塞部材は、非膨潤状態で切欠部(44)に嵌め込まれ、爪部材(34)を切欠部から抜き取った後に、水を吸収して膨張することによって切欠部を自動的に塞ぎ、切欠部に管内面を形成する。
【0016】
第3の発明によれば、第1の発明と同様の作用効果を奏する。
【0017】
第4の発明は、第1の発明に従属し、閉塞部材は、管本体内面側に設けられる合成樹脂製の蓋部、および管本体外面側に設けられ、爪部材を切欠部から抜き取った後に復元または膨張する変形部を備える。
【0018】
第4の発明では、閉塞部材(14)は、蓋部(80)および変形部(84)を備える。蓋部は、合成樹脂によって形成され、管本体(12)の内面側に配置される。復元部は、ゴム、スポンジおよびバネ等の弾性材、または水膨潤ゴムによって形成され、管本体の外面側に配置される。この閉塞部材は、切欠部(44)から爪部材(34)が抜き取られると、変形部が弾性力によって復元、または水の吸収によって膨張する。そして、この変形部の変形によって蓋部の位置を管径方向や管軸方向などに移動させ、蓋部によって切欠部を塞ぐ。
【0019】
第4の発明によれば、管内面には合成樹脂製の蓋部が露出するので、管路の耐久性が向上する。
【0020】
第5の発明は、推進装置に設けた爪部材によって推進管を所要本数ごとに押しながら推進させて地中管路を形成する推進工法に用いられ、推進管の端部に形成される爪部材を差し込むための切欠部に嵌め込まれ、爪部材を切欠部から抜き取った後に切欠部に管内面を形成する、閉塞部材である。
【0021】
第5の発明では、閉塞部材(14)は、推進装置(20)に設けた爪部材(34)によって推進管を所要本数ごとに押しながら推進させる、低耐荷力方式の推進工法に用いられる。閉塞部材は、推進管(10)の切欠部(44)に嵌め込まれ、爪部材を切欠部から抜き取った後、たとえば元の形状に復元する等して切欠部を自動的に塞ぎ、切欠部に管内面を形成する。
【0022】
第5の発明によれば、推進管の切欠部に嵌め込んでおくだけで、爪部材を切欠部から抜き取った後に切欠部に管内面を形成するので、内面平滑な地中管路を簡単に形成できる。
【発明の効果】
【0023】
この発明によれば、爪部材を切欠部から抜き取った後に、閉塞部材が切欠部を塞いで管内面を形成するので、切欠部が窪みとなって管内面にそのまま残ることが無く、内面平滑な管路を容易に形成できる。
【0024】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の一実施例である推進管を示す、(A)は正面図であり、(B)は左側面図であり、(C)は一方端部の部分断面図である。
【図2】地中管路を形成する際に用いる推進装置の構成を示す図解図である。
【図3】図1の推進管が備える閉塞部材の一例を示す斜視図である。
【図4】図1の推進管と共に用いる標準推進管の一例を示す正面図である。
【図5】図1の推進管と標準推進管とを接続した状態を示す図解図である。
【図6】推進工法によって地中管路を形成する様子を示す図解図である。
【図7】(A)は図1の推進管の切欠部に爪部材を差し込んで閉塞部材を管径方向に弾性変形させた様子を示す部分断面図であり、(B)は爪部材を抜き取ったときに閉塞部材が復元して切欠部を塞いだ様子を示す部分断面図である。
【図8】(A)は図1の推進管の切欠部に爪部材を差し込んで閉塞部材を管軸方向に弾性変形させた様子を示す部分断面図であり、(B)は爪部材を抜き取ったときに閉塞部材が復元して切欠部を塞いだ様子を示す部分断面図である。
【図9】この発明の他の実施例の推進管の管端部を示す部分断面図である。
【図10】図9の推進管が備える閉塞部材の一例を示す斜視図である。
【図11】この発明のさらに他の実施例の推進管の管端部を示す部分断面図である。
【図12】図11の推進管の管端部を示す部分斜視図である。
【図13】閉塞部材の他の一例を示す斜視図である。
【図14】閉塞部材のさらに他の一例を示す斜視図である。
【図15】この発明のさらに他の実施例の推進管の管端部を示す部分断面図である。
【図16】図15の推進管が備える閉塞部材の一例を示す斜視図である。
【図17】この発明のさらに他の実施例の推進管の管端部を示す部分斜視図である。
【図18】図17の推進管が備える閉塞部材の一例を示す斜視図である。
【図19】(A)は図17の推進管の切欠部に爪部材を差し込んだ様子を示す部分断面図であり、(B)は爪部材を抜き取ったときに変形部材が変形して蓋部によって切欠部を塞いだ様子を示す部分断面図である。
【図20】図17の推進管が備える閉塞部材の他の一例を示す部分断面図であって、(A)は推進管の切欠部に爪部材を差し込んだ様子を示し、(B)は爪部材を抜き取ったときに変形部材が変形して蓋部によって切欠部を塞いだ様子を示す。
【図21】図17の推進管が備える閉塞部材のさらに他の一例を示す部分断面図であって、(A)は推進管の切欠部に爪部材を差し込んだ様子を示し、(B)は爪部材を抜き取ったときに変形部材が変形して蓋部によって切欠部を塞いだ様子を示す。
【図22】この発明のさらに他の実施例の推進管の管端部を示す部分斜視図である。
【図23】図23の推進管が備える閉塞部材の一例を示す斜視図である。
【図24】閉塞部材の変形部の他の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1を参照して、この発明の一実施例である推進管10は、低耐荷力方式の推進工法に用いられる推進管であって、管本体12および閉塞部材14を含む。詳細は後述するように、推進管10は、推進装置20に設けた爪部材34の位置に合わせて所定間隔ごとに配置され、他の推進管(標準推進管)52とカラー60によって接続されて下水管路などの地中管路を形成する。なお、この発明では、推進管10および標準推進管52の2種類の推進管を用いて地中管路を形成するが、説明の際にこれらを区別する必要がない場合には、符号を付けずに単に推進管と記載する。
【0027】
以下には、先ず、この発明の理解に必要な範囲で、低耐荷力方式の推進工法、およびそれに用いる推進装置20について説明する。
【0028】
低耐荷力方式の推進工法とは、先導体の推進に必要な元押しジャッキからの推進力の初期抵抗力を推進力伝達ロッドに作用させ、推進管には周囲の土との周面抵抗力のみを負担させる推進工法であり、鉄筋コンクリート管と比較して許容耐荷力の低い、塩化ビニル等の合成樹脂製の推進管に適用される推進工法である。低耐荷力方式の推進工法には、圧入方式、オーガ方式、泥水方式および泥土圧方式などがある。
【0029】
また、推進管10が適用される推進工法では、推進力伝達ロッドによって先導体を押すと共に、推進力伝達ロッドに設けた爪部材(推進管支持部材)によって、所要本数ごとに推進管の管端を押すようにしている。これにより、推進管の外周面と地盤との摩擦抵抗力は推進力伝達ロッドに作用するようになる、つまり推進管にかかる周面抵抗力は所要本数分に分散されて小さくなるので、合成樹脂製の推進管であっても長距離推進が可能になる。なお、上記所要本数は、推進管と地盤との周面抵抗力が、推進管の許容忍耐力を下回る本数に設定され、たとえば8本〜15本に設定される。
【0030】
具体的には、図2に示すように、この推進工法に用いられる推進装置20は、推進力の発生源である元押しジャッキ22、先端にカッタ24が装着される先導体26、元押しジャッキ22からの推進力を先導体26に伝える推進力伝達ロッド28、および掘削した土砂を送るための送土管(図示せず)などを備える。
【0031】
推進力伝達ロッド28は、複数のロッド部材30を連結することによって形成される。ロッド部材30は、推進管の管長と同じ所定長さ(たとえば1.33m)を有し、鋼材などの高耐荷力材によって形成される。ロッド部材30の両端部の上部および下部のそれぞれには、接続部32が設けられ、隣り合うロッド部材30の接続部32同士は、横方向に屈曲可能にピン接合される。
【0032】
また、推進力伝達ロッド28には、爪部材34が設けられる。爪部材34は、推進力伝達ロッド28の外周面から上方および下方に突出するように形成され、外方に突出する突出状態と内方に引込む引込状態とに状態変化できる機能を有する。このような爪部材34は、所要本数ごとにロッド部材30に設けられる。
【0033】
この発明の一実施例である推進管10は、上述のように、この爪部材34の位置に合わせて配置される推進管である。以下、図1および図3を参照して、推進管10の構成について具体的に説明する。
【0034】
図1に示すように、推進管10の管本体12は、硬質塩化ビニル等の合成樹脂によって直管状に形成される。管本体12の呼び径は、たとえば300mmであり、その管長は、たとえば1330mmである。管本体12の両端部には、その中央部よりも薄肉に形成されるカラー装着部40が形成され、カラー装着部40の外周面には、ゴム輪溝42が形成される。
【0035】
また、管本体12の一方端には、推進装置20の爪部材34を差し込むための2つの切欠部44が、上下対称位置に形成される。切欠部44は、径方向の断面形状が略台形状になるように形成される。つまり、切欠部44を形成する壁面はテーパ状となっており、内面側が外面側より周方向において縮径されている。切欠部44の大きさは、爪部材34の大きさに応じて適宜設定され、その管軸方向の長さは、たとえば15−20mmである。
【0036】
切欠部44には、弾性を有するゴムによって形成される閉塞部材14が嵌め込まれる。図3に示すように、閉塞部材14は、切欠部44とほぼ同じ外形および大きさを有しており、管本体12に装着した状態では、その上面(管内面側の面)46が切欠部44を塞いで管本体12の内面を平滑に連結する。ただし、閉塞部材14は、切欠部44を塞いで管内面を平滑にできる形状であればよく、たとえば、中空状に形成されてもよいし、下面48や側面50に肉盗み(切欠き)を有する形状に形成されてもよい。このような閉塞部材14は、詳細は後述するように、爪部材34からの圧縮力によって管径方向または管軸方向に弾性変形し、圧縮力から解放されると弾性力によって元の形状に復元する。
【0037】
また、図4に示すように、推進管10と共に用いられる標準推進管52は、切欠部44が形成されておらず、閉塞部材14も有していない点を除いて、推進管10とほぼ同様の構成を有する。具体的には、標準推進管52は、硬質塩化ビニル等の合成樹脂によって直管状に形成され、その呼び径は、たとえば300mmであり、その管長は、たとえば1330mmである。標準推進管52の両端部には、その中央部よりも薄肉に形成されるカラー装着部54が形成され、カラー装着部54の外周面には、ゴム輪溝56が形成される。
【0038】
図5に示すように、地中管路を形成する際に推進管同士を接続するときには、ゴム輪溝42,56にゴム輪58が装着され、推進管の管端同士を突き合わせるようにして、カラー装着部40,54にカラー60が外嵌される。これにより、推進管の外面とカラー60の内面とによってゴム輪58が圧接されてシール機能を発揮し、形成した管路内からの水漏れ、および管路内への水の浸入が防止される。ゴム輪58としては、水膨潤タイプのゴム輪などを用いることができ、カラー60としては、SUSカラー等を用いることができる。
【0039】
また、推進管10の一方端と標準推進管52とを接続する部分においては、推進管10の切欠部44に嵌め込まれた閉塞部材14は、下面48がカラー60によって支持されると共に、管周方向側の側面50が切欠部44のテーパ面に係止されることによって固定され、管路内への抜けが防止される。
【0040】
なお、推進管10の切欠部44は、推進方向の前方側および後方側のどちら側になるように配置されてもかまわないが、推進方向の前方側になるように配置して、爪部材34が標準推進管52の後端を押すようにすることが好ましい。これは、切欠部44を形成した部分は、切欠部44を形成しない管端と比較して若干強度に劣るからであり、強度に優れる標準推進管52の管端に対して、爪部材34からの推進力を作用させる方が好ましいからである。
【0041】
次に、図6を参照して、推進管10、標準推進管52および推進装置20を用いた推進工法による地中管路の形成方法について説明する。上述のように、推進管10は、所定間隔ごとに配置される推進管であり、標準推進管52と共に地中管路を形成する。
【0042】
地中管路を形成する際には、先ず、発進立孔62および到達立孔64を掘削し、掘削した発進立孔64に元押しジャッキ22を設置する。次に、元押しジャッキ22に先導体26をセットし、先導体26のカッタ24を回転駆動させて地盤を掘削しながら、元押しジャッキ22によって先導体26を押し込んで推進させる。
【0043】
続いて、ロッド部材30をピン接合によって先導体26に接続し、それに外嵌するように、標準推進管52を先導体26に接続し、元押しジャッキ22によってロッド部材30および標準推進管52の後端を押し込んでさらに推進させる。その後、ロッド部材30同士および標準推進管52同士の接続作業、および元押しジャッキ22による押し込み作業を順次繰り返し、所定の推進経路を通る地中管路を形成していく。
【0044】
そして、所要本数目には、爪部材34の位置と切欠部44の位置が合うように、爪部材34を設けたロッド部材30および推進管10を接続する。このとき、爪部材34を突出状態にすると、図7(A)に示すように、爪部材34からの圧縮力によって閉塞部材14が管径方向に弾性変形して、切欠部44に爪部材34が差し込まれる。この状態で推進させることによって、爪部材34が推進管の管端(標準推進管52の後端)を押すようになり、推進管にかかる周面抵抗力が分散される。
【0045】
その後、同様の作業を繰り返し、推進管(管路)の先頭が到達立孔64に到達するまで押し込み作業を続ける。推進管の先頭が到達立孔64に到達すると、爪部材34の突き出しを引き込ませ、ロッド部材30を順次分離しながら推進力伝達ロッド28を回収する。このとき、爪部材34を引込状態にすることによって、閉塞部材14は、爪部材34による圧縮力から解放されるので、図7(B)に示すように、元の形状に復元して切欠部44を塞ぎ、内面平滑な地中管路が形成される。推進力伝達ロッド28を回収後、適宜の後処理を行って地中管路の形成作業を終了する。
【0046】
この実施例によれば、切欠部44に閉塞部材14を嵌め込んでおくことによって、爪部材34を切欠部44から抜き取ったときに、閉塞部材14が自動的に復元して切欠部44に管内面を形成するので、内面平滑な地中管路を簡単に形成できる。たとえば、地中管路を形成した後に、走行ロボット等を利用して硬化剤などを流し込んで切欠部44を塞ぐことと比較して、格段に作業性が向上する。
【0047】
なお、上述の実施例では、爪部材34を切欠部44に差し込む際には、爪部材34によって閉塞部材14を管径方向に圧縮するようにしたが、これに限定されず、図8(A)に示すように、閉塞部材14を管軸方向に圧縮することもできる。この場合には、標準推進管52と推進管10とをカラー60によって接続した後に爪部材34を突出状態にするのではなく、たとえば、爪部材34を予め突出状態にしておき、標準推進管52の管端に爪部材34を当接させ、その後から推進管10を接続する。このとき、爪部材34と管本体12とで閉塞部材14を挟み込むようにして圧縮させつつ、標準推進管52と推進管10とをカラー60によって接続するとよい。この場合にも、閉塞部材14は、爪部材34による管軸方向の圧縮力から解放されると、元の形状に復元して切欠部44を塞ぎ、切欠部44に管内面を形成する(図8(B)参照)。このように、管軸方向に閉塞部材14を圧縮するようにすれば、より深くまで爪部材34を切欠部44に差し込むことができるので、より確実に爪部材34によって推進管の管端を押すことができる。
【0048】
また、上述の実施例では、爪部材34からの圧縮力によって弾性変形し、圧縮力からの解放によって復元する弾性材として、ゴムを用いて閉塞部材14を形成したが、これに限定されない。たとえば、SUS等の金属などによって形成される板バネ、またはスポンジ等を弾性材として用いて閉塞部材14を形成することもできる。
【0049】
さらに、弾性力によって復元する弾性材を用いて閉塞部材14を形成することにも限定されず、たとえば、水膨潤ゴムによって閉塞部材14を形成することもできる。この場合には、閉塞部材14を非膨潤状態(乾燥状態や半乾燥状態)で切欠部44に嵌め込んでおき、この状態で爪部材34を切欠部44に差し込んで、推進管の押込み作業を行う。そして、押込み作業が終了して爪部材34を切欠部44から抜き取った後に、閉塞部材14に水を吸収させて膨潤状態にすることによって、切欠部44を塞いで管内面を形成するようにするとよい。なお、閉塞部材14を膨張させる方向は、特に限定されず、管径方向、管周方向および管軸方向のいずれの方向に膨張させて切欠部44を塞ぐようにしてもよい。
【0050】
また、上述の実施例では、閉塞部材14の管内への抜けを防止するために、切欠部44をテーパ状に形成してその内面側を縮径したが、これに限定されない。たとえば、図9に示すように、切欠部44を形成する壁面に突起部66を形成し、切欠部44を段差状にしてその内面側を縮径してもよい。この場合には、図10に示すように、切欠部44の形状に合わせて、閉塞部材14の管周方向側の側面50を段差状に形成するとよい。
【0051】
また、図11および図12に示すように、切欠部44にテーパや段差を設けずに、切欠部44の壁面同士が平行面となるように形成することもできる。この場合には、たとえば、閉塞部材14の管軸方向側の側面50を接着面として、閉塞部材14を切欠部44に接着接合するとよい。そして、切欠部44に爪部材34を差し込む際には、接着接合した側面50の対面側に爪部材34を当接させ、爪部材34からの圧縮力によって閉塞部材14を管軸方向に圧縮するようにするとよい。
【0052】
さらに、上述の実施例では、閉塞部材14と切欠部44とを略同一形状としたが、これに限定されない。上述のように、閉塞部材14は、切欠部44を塞いで管内面を平滑にできる形状であればよく、たとえば、図13に示すように、管本体12の内面と同じ曲率で湾曲する薄板状の上壁70、および上壁70の両側部から下方(管外面側)に延びる薄板状の側壁72を有する、断面U字状に閉塞部材14を形成することもできる。また、たとえば、上記2つの側壁72のうち一方の長さが短い形状に閉塞部材14を形成することもできるし、上壁70の一方側部から下方に延びる1つの側壁72を有する、断面L字状に閉塞部材14を形成することもできる。
【0053】
これらの場合にも、閉塞部材14の側壁72(管軸方向側の側面)を切欠部44に接着接合したり、切欠部44を形成する壁面の形状に合わせて、閉塞部材14の両端部(管周方向側の側面)をテーパ状や段差状に形成したりすることによって、閉塞部材14の管内への抜けを防止するとよい。たとえば、図14に示すように、上壁70の一方側部から下方に延び、段差状に突出する係止部74がその両端に形成される第1側壁72a、および上壁70の他方側部から下方に延び、第1側壁72aより短い第2側壁72bを有する形状に閉塞部材14を形成することができる。この場合には、第1側壁72aの係止部74に応じた大きさの溝状の切込み(係止溝)が、切欠部44を形成する壁面に形成される。
【0054】
また、図15および図16に示すように、閉塞部材14には、硬質塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される蓋部80を設けることもできる。具体的には、蓋部80は、閉塞部材14の上部(管本体12の内面側)に設けられ、管本体12の内面と同じ曲率で湾曲する薄板状に形成される。蓋部80の管周方向の両側部82は、切欠部44を形成する壁面の形状に合わせて段差状やテーパ状に形成され、係止部として機能する。また、閉塞部材14の下部(管本体12の外面側)には、変形部84が設けられる。変形部84は、ゴム、スポンジ、コイルバネおよび板バネ等の弾性材、または水膨潤ゴム等によって形成され、蓋部80の下面に接着接合等される。このような閉塞部材14では、爪部材34を切欠部44から抜き取った後に、変形部84が管径方向に変形(復元または膨張)することによって蓋部80が押し上げられ、蓋部80によって切欠部44が塞がれる。これによって、管内面には合成樹脂製の蓋部80の上面86が露出するので、管内面にゴム等がそのまま露出することと比較して、管路の耐久性が向上する。
【0055】
また、変形部84を管径方向に変形させて蓋部80を押し上げるのではなく、変形部84を管軸方向に変形させることによって蓋部80を管軸方向に移動させて、切欠部44を塞ぐ構成とすることもできる。この場合には、たとえば、図17および図18に示すように、蓋部80の管軸方向側部の一方には、下方(管外面側)に向かって延びる壁部88が形成される。そして、変形部84の管軸方向の一方側面が壁部88に接着接合等されると共に、変形部84の管軸方向の他方側面が切欠部44に接着接合等される。これによって、蓋部80の下面と変形部84の上面とが固定されない状態、つまり変形部84が管軸方向に変形可能であり、かつ蓋部80が管軸方向に移動可能な状態で、切欠部44に閉塞部材14が固定される。また、蓋部80の側部下面には、先端に向かって徐々に肉薄となるように、面取り90が形成され、管本体12の内面には、蓋部80の面取り90と対応する面取り92が形成される。これら面取り90,92の管軸方向の長さは、特に限定されないが、変形部84が変形する長さ等に応じて適宜設定され、たとえば12mmである。このように、蓋部80の下面および管本体12の内面に面取り90,92を施しておくことによって、蓋部80の管軸方向の移動をスムーズに行うことができる。
【0056】
このような閉塞部材14では、図19に示すように、爪部材34が切欠部44に差し込まれているときには、蓋部80の面取り90の部分が管本体12の面取り62上に乗る状態となる。そして、爪部材34を切欠部44から抜き取った後には、変形部84が管軸方向に変形(復元または膨張)することによって蓋部80が管軸方向に移動し、蓋部80によって切欠部44が塞がれて、切欠部80に管内面が形成される。
【0057】
ただし、切欠部44に爪部材34を差し込んだ状態のときに、蓋部80および管本体12の面取り90,92の位置が合うようにすると、蓋部80を管軸方向に移動させて切欠部44を塞いだときに、管本体12に形成した面取り92が、僅かではあるが窪みとなって管内面に残る。そこで、たとえば、図20に示すように、蓋部80の管軸方向の長さを長くして、蓋部80によって切欠部44に塞ぐときに、蓋部80および管本体12の面取り90,92の位置が合うようにする、つまり蓋部80によって切欠部44に管内面を形成すると共に面取り92に管内面を形成するようにしてもよい。また、必ずしも変形部84が変形する長さに合わせて面取り90,92を施す必要はなく、図21の示すように、たとえば、軸方向長さが1−2mm程度の面取り90,92を、蓋部80および管本体12に施すようにしてもよい。図20および図21に示す推進管10によれば、蓋部80を管軸方向に移動させて切欠部44に管内面を形成したときに、より平滑な管内面を形成することができる。
【0058】
さらに、図22および図23に示すように、蓋部80に形成される壁部88には、周方向に延びるガイド部94を形成することもできる。この場合、管本体12の切欠部44には、ガイド溝96が形成される。これによって、蓋部80が管軸方向に移動する際には、壁部88のガイド部94がガイド溝96に沿って移動するので、蓋部80の管軸方向の移動をより正確に行うことができる。
【0059】
なお、図17−23には、略直方体状の変形部84を示してあるが、これに限定されず、変形部84は、中空状に形成されてもよいし、適宜の肉盗み(切欠き)を有する形状に形成されてもよい。たとえば、ゴムによって変形部84を形成する場合には、図24に示すように、変形部84を断面M字状に形成するとよい。これによって、変形部84が管軸方向に圧縮および復元され易くなる。
【0060】
また、上述の実施例では、管本体12の上下対称位置に2つの切欠部44を形成し、その双方に閉塞部材14を嵌め込むようにしたが、これに限定されない。たとえば、閉塞部材14は、管本体12の下部に形成される切欠部44のみに装着することもできる。これは、下水管路では、排水は管路を満水状態で流れるよりも管路の底面付近を流れることが多いので、排水が流れる部分をカバーできればよいからである。また、上述の実施例では、上方および下方に突出する爪部材34を有する推進装置20を用いたので、管本体12の上下対称位置に2つの切欠部44を形成したが、切欠部44を形成する位置は、爪部材34の突出方向に合わせて適宜変更可能である。切欠部44の位置を変更する場合、閉塞部材14は、少なくとも管底付近に形成される切欠部44に装着される。
【符号の説明】
【0061】
10 …推進管
12 …管本体
14 …閉塞部材
20 …推進装置
28 …推進力伝達ロッド
30 …ロッド部材
34 …爪部材
44 …切欠部
52 …標準推進管
60 …カラー
80 …蓋部
84 …変形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進装置に設けた爪部材によって推進管を所要本数ごとに押しながら推進させて地中管路を形成する推進工法に用いる推進管であって、
合成樹脂製の管本体、
前記管本体の端部に形成され、推進時に前記爪部材が差し込まれる切欠部、および
前記切欠部に嵌め込まれ、前記爪部材を前記切欠部から抜き取った後に前記切欠部に管内面を形成する閉塞部材を備える、推進管。
【請求項2】
前記閉塞部材は、弾性材によって形成され、前記爪部材からの圧縮力によって弾性変形し、前記圧縮力から解放されると復元する、請求項1記載の推進管。
【請求項3】
前記閉塞部材は、水膨潤ゴムによって形成され、水を吸収することによって膨張する、請求項1記載の推進管。
【請求項4】
前記閉塞部材は、
前記管本体内面側に設けられる合成樹脂製の蓋部、および
前記管本体外面側に設けられ、前記爪部材を前記切欠部から抜き取った後に復元または膨張する変形部を備える、請求項1記載の推進管。
【請求項5】
推進装置に設けた爪部材によって推進管を所要本数ごとに押しながら推進させて地中管路を形成する推進工法に用いられ、
前記推進管の端部に形成される前記爪部材を差し込むための切欠部に嵌め込まれ、前記爪部材を前記切欠部から抜き取った後に当該切欠部に管内面を形成する、閉塞部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−47220(P2011−47220A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197527(P2009−197527)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(502218617)株式会社エム・シー・エル・コーポレーション (14)
【Fターム(参考)】