説明

推進補助装置及びその固定方法

【課題】細径化、及び小型化に有利にして、径の異なる各種先端硬性部を強固に固定できる推進補助装置を提供する。
【解決手段】
内視鏡の先端硬性部3が挿通される中空部18aの先端側内部にクランパ20とCリング21とが配されている。Cリング21は、径方向に弾性的に拡縮する。クランパ20は、その外周面の雄ねじ61aが中空部18aの内周面に形成された雌ねじ59に螺合する。クランパ20を時計方向に回転すると、クランパ20が後端に向かって移動し、その後端に設けた斜面20aが、Cリング21の先端に設けた斜面21aを押圧する。この押圧でCリング21縮径し、先端硬性部3を締め付ける。また、Cリング21がクランパ20と支持面58との間に挟持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、消化管等の管内に挿入された内視鏡の先端部の挿入を補助する推進補助装置及びその固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、大腸や小腸のような屈曲した消化管内に内視鏡の挿入部を挿入して、消化管内壁面の観察や診断、治療を施すことが行われている(例えば、特許文献1参照)。この場合、消化管が複雑に屈曲し、かつ比較的自由に動くS字結腸であると、このS字結腸内で挿入部を奥へ進めるためには、高い熟練度が要求されていた。このため、S字結腸のような複雑に屈曲した消化管内でも挿入部を容易に奥へ進めることができる内視鏡が求められていた。
【0003】
近年、挿入部の先端硬性部に取り付けられ、この先端硬性部を消化管内で推進させる推進補助装置が開発されている(例えば特許文献2参照)。この推進補助装置は、内視鏡の挿入部に装着される筒状の外筒に循環移動体を循環するように取り付け、この循環移動体の外側を消化管の内壁に接触させた状態で循環走行させることで、両者の間に生じる摩擦により挿入部の先端部を消化管内で移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−253892号公報
【特許文献2】特表2009−513250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように内視鏡に装着して使用される推進補助装置は、使用中に外れることがないように先端硬性部に強固に固定することが要求される。また、内視鏡は、推進補助装置を装着せずに使用されることもあるから、推進補助装置は着脱自在にしておき、必要なときに簡単に装着できることが望ましい。このような条件を満たす手法として、例えばバヨネット止め、係止爪の係合などの機構を用いることが挙げられるが、このような手法を用いた場合には、大きな取付けスペースを要する。このため内視鏡と同様の細径化が望まれる推進補助装置が大径化してしまう。また、推進補助装置に係合させるための爪などを先端硬性部に一体に設ける必要があり、推進補助装置を利用できる内視鏡が限定されてしまい、例えば既存の内視鏡には利用できないという問題も生じる。
【0006】
また、本出願人は、先端硬性部が挿通される推進補助装置の中空部内に配したOリングによって先端硬性部を固定する手法を提案している。この手法は、中空部の先端側からねじ込まれるリング状のネジ部材によって、先端硬性部が通されたOリングを圧縮して内径を縮径させて、その内周部分を先端硬性部の外周面に圧接して固定するものである。このようにOリングを用いた固定手法では、Oリングの圧縮による内径の変化はあまり大きくない。このため、確実に固定できる先端硬性部の径の範囲が狭く、利用できる内視鏡が限定されてしまうという問題がある。また、接触面積を大きくして固定力を高めるためには、太いOリングを用い圧縮量を大きくする必要がある。このようにすると推進補助装置の細径化、軸方向の長さの短縮化の妨げになる。さらには、Oリングを圧縮するためにかなり大きな力が必要であり、装着するための操作性が悪いという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、細径化、軸方向の長さの短縮化に有利であり、小さな操作力で内視鏡の先端硬性部を確実に固定でき、利用できる先端硬性部の径の範囲が広い推進補助装置及びその固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の推進補助装置は、前記先端硬性部が通される中空部が設けられ、内周面に雌ねじが形成されたキャリア筒と、後端が前記中空部内に設けられた支持面に当接して軸方向で位置決めされ、先端に第1の斜面が形成されるとともに、円環の一部を切り欠いて径方向に弾性的に拡縮自在なC字状であり、挿通された前記先端硬性部に内周面が圧接する圧接状態とその圧接を解除した解除状態とに変形するCリングと、外周面に雄ねじが形成されるとともに後端に第2の斜面が形成された円筒状とされ、前記雄ねじと前記雌ねじとの螺合によって前記中空部内を軸方向に移動自在であり、前記第2の斜面で前記第1の斜面を押圧し前記Cリングを縮径させて圧接状態として前記先端硬性部を固定する固定位置と、前記第2の斜面による前記第1の斜面の押圧を解除して前記Cリングを解除状態とする解除位置との間で移動されるクランパとを備えるものである。
【0009】
また、本発明の推進補助装置の固定方法では、前記中空部内に配されたCリングの内側に前記先端硬性部を通して、中空部に前記先端硬性部を挿通する挿通ステップと、円筒状のクランパの外周面に形成したねじを前記中空部内のねじに螺合させることによって、前記クランパを前記中空部で後端に向けて移動させる移動ステップと、前記移動ステップで移動される前記クランパの後端の斜面で前記Cリングの先端の斜面を押圧し、前記クランパと前記中空部内の支持面との間に前記Cリングを挟持するとともに、前記Cリングを縮径方向に弾性変形させて前記先端硬性部を締め付けることにより、前記先端硬性部を固定する固定ステップとを有するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中空部の内周面に螺合したクランパを後端側に移動させ、そのクランパの後端の斜面で、Cリングの先端の斜面を押圧し、このCリングの内周面を先端硬性部に圧接することにより、先端硬性部を推進補助装置に固定するから、推進補助装置の細径化及び軸方向の長さの短縮を図ることができる。また、Cリングの変形量を大きくとることが容易であり、固定できる先端硬性部の径の範囲が広く、小径のものでも強固に固定できる。さらには、Cリングを変形させればよいので、固定するための操作力を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】推進補助装置を装着した内視鏡を示す概略図である。
【図2】推進補助装置の外観を示す斜視図である。
【図3】推進補助装置の分解斜視図である。
【図4】ピニオンギヤ、駆動筒、及びヘリカルギヤの噛み合い状態を示す斜視図である。
【図5】推進補助装置の断面図である。
【図6】メンブレンの断面構造を示す断面図である。
【図7】先端硬性部の固定するためのCリング及びクランパを示す斜視図である。
【図8】クランパを回転させるための治具を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、推進補助装置2は内視鏡の先端硬性部3に固定して使用される。先端硬性部3には、例えば撮像光学系とともにCMOS型あるいはCCD型のイメージセンサが組み込まれ、先端硬性部3に設けられた照明窓からの照明光のもとで胃壁や腸壁の画像を撮像する。先端硬性部3を所期の位置まで挿入操作することができるように先端硬性部3の基端側には湾曲部が設けられ、また挿入操作を補助するために推進補助装置2が併用される。湾曲部は、操作部5に備えられたアングルノブの操作により挿入しやすいように屈曲動作させることができる。
【0013】
操作部5には、さらに、吸・排気/吸・排水の切替え操作を行うための操作ボタン、生検鉗子などが挿入される鉗子チャンネルの口金などが設けられている。操作部5からは接続コード6が引き出され、光源装置7と内視鏡プロセッサ8に接続されている。光源装置7に組み込まれた照明ランプからの光は、接続コード6内及び内視鏡内部に組み込まれたライトガイドファイバを通して照明窓まで導光される。
【0014】
内視鏡プロセッサ8は、接続コード6から入力される画像信号に適宜の信号処理を行い、得られた画像は表示モニタ9に表示される。なお、内視鏡プロセッサ8は、接続コード6を経由して供給される内視鏡からの入力情報に基づき、現在接続されている内視鏡の機種情報を識別することができる。そして、内視鏡が操作されるときに機種ごとに異なった制御が必要である場合、あるいは機種ごとに表示モニタ9上で異なった画像表示が必要である場合などには、機種情報に対応した適切な制御あるいは表示に自動切り替えすることが可能となる。
【0015】
内視鏡プロセッサ8にはコントローラ10が電気的に接続される。コントローラ10は推進補助装置2の作動を監視・制御するために用いられる。推進補助装置2の後端から並列二連となった柔軟なシース12が引き出されている。シース12はサージカルテープ4などにより内視鏡の挿入部に適宜に固定され、推進補助装置2を装着した内視鏡を体腔内に挿入しあるいは操作する際にシース12が体腔内で不用意な挙動をすることはない。
【0016】
ダブルルーメン型のシース12内には、推進補助装置2の内部機構に先端部が機械的に連結されたトルクワイヤがそれぞれ挿通されている。トルクワイヤは可撓性を有しながらも捩じり剛性が高く、一端側から入力されたトルクをほとんど減衰させることなく他端側に伝達する。これらのトルクワイヤの後端は二股のプラグ13を介してコントローラ10のコネクタ14に連結される。コントローラ10には一対のモータが組み込まれ、プラグ13をコネクタ14に連結したときに各々のトルクワイヤはそれぞれのモータにより個別に駆動できる状態になる。
【0017】
大腸用の内視鏡の場合、特にS状結腸や横行結腸における挿入操作や引き出し操作を楽にする目的で、推進補助装置2が効果的に用いられる。推進補助装置2は略円柱形状を有し、外表面がトロイド状の循環移動体となる柔軟かつ強靱な合成樹脂製のシート材からなるメンブレン15で覆われている。図2及び図3では、構造を分かりやすくするためにメンブレン15を筒状に展開して表しているが、メンブレン15はその最終的な組み込み形態では、図示の内周面が外周面となるように反転させた状態で前端と後端とが互いに接合され、トロイド状の袋体(図5参照)となる。なお、図2〜図5,図7は、図中左方が先端硬性部3を突出させる先端側、図中右方が内視鏡の操作部5に近い基端側になるように表されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、推進補助装置2は、筒状に展開したメンブレン15の内側の構造体となるインナーユニット16と、メンブレン15の外側の構造体となるアウターユニット17とを備えている。インナーユニット16は、内周側に円筒状の中空部18aを有し、外周面側が三角筒形状に整形されたキャリア筒18と、キャリア筒18の後端側にビス止め、圧入、カシメ等で係止止めされる略三角筒状のキャップ28と、キャリア筒18の先端側、キャップ28の後端側にそれぞれ固定されるフロントワイパー19a,リアワイパー19bと、中空部18aに挿入された先端硬性部3をキャリア筒18に固定するためのクランパ20及びCリング21と、キャリア筒18の内周に回転自在に支持された円筒状の駆動筒24を有している。
【0019】
図4に示すように、駆動筒24はその両端がベアリングボール25を円環状に並べて保持した軸受リング26a,26bを介してキャリア筒18の内周側に回転自在に支持され、キャリア筒18の後端に固定されたキャップ28により抜け止めされる。駆動筒24の外周面にはウォームギヤ部24aと平ギヤ部24bとが設けられている。ウォームギヤ部24aには、キャリア筒18に回転自在に保持された一対のヘリカルギヤ27、27がキャリア筒18の開口を通して噛み合わされる。この一対のヘリカルギヤ27,27は、駆動筒24の回転中心軸に関して120度の回転対称となる3個所にそれぞれ組み付けられ、駆動筒24が回転するとこれらのヘリカルギヤ27,27はそれぞれの軸27aを中心に一斉に同方向に回転する。
【0020】
シース12の先端は、キャップ28の後端側から形成された凹部内に接着または熱溶着などによって固着される。そしてシース12の先端から突出したトルクワイヤ30a,30bの先端部は、キャップ28に形成された貫通孔を通ってキャップ28の前方に突出し、その各々にピニオン32a,ピニオン32bが固着される。図示のように、ピニオン32a,ピニオン32bの各々の先端から回転中心となる軸が突出し、これらの軸がキャリア筒に設けられた穴に挿通されることによってピニオン32a,ピニオン32bの各々が回転自在に支持される。
【0021】
これらのピニオン32a,32bのうち、駆動筒24の平ギヤ部24bにはトルクワイヤ30aに固着されたピニオン32aが噛み合う。他方のトルクワイヤ30bに連結されたピニオン32bはピニオン32aに噛み合い、平ギヤ部24bには噛み合わされない。したがって、駆動筒24はトルクワイヤ30aに連結されたピニオン32aの回転によって駆動される。しかし、トルクワイヤ30a,30bの各々は、コントローラ10から個別に供給される回転力で駆動され、ピニオン32bはピニオン32aとは逆向きに回転される。このためピニオン32aにはトルクワイヤ30bからの回転力も加算され、駆動筒24を高いトルクで回転させることができる。
【0022】
フロントワイパー19a及びリアワイパー19bのそれぞれは、先端側に庇状に広がったスリーブ部を有し、これらのスリーブ部の先端はメンブレン15が循環移動するときに内周側の面に摺接する。そして、メンブレン15の内周側の面に付着した異物や消化管内壁がメンブレン15の移動とともに推進補助装置2の中に引き込まれることを防ぐ。
【0023】
先端硬性部3は、キャリア筒18の中空部18aに通した状態で推進補助装置2に固定される。この先端硬性部3は、推進補助装置2の後端側から挿通され、その先端を推進補助装置2の先端側から突出させた状態で固定される。詳細を後述するように、先端側からねじ込み操作を行ってクランパ20を軸方向に移動すると、クランパ側の斜面20a(図5参照)によって、Cリング21側の斜面21a(図5参照)が押圧されることによって、Cリング21が縮径する。これにより、Cリング21の内周面を先端硬性部3の外周面に強く圧接して、キャリア筒18の中空部18a内に先端硬性部3を固定する。
【0024】
メンブレン15の外側の構造体となるアウターユニット17は、先端側から順に、フロントバンパー35aと、シールドカバー36と、円筒状のローラ保持筒38と、リアバンパー35bとを有する。このアウターユニット17は、以下の手順にしたがってインナーユニット16及びメンブレン15と一体的に連結した状態に組み立てられる。
【0025】
図2及び図3に示すように、各種部品を組み込んだインナーユニット16の外表面が覆われるように筒状に展開したメンブレン15の中にインナーユニット16を入れた後、ローラ保持筒38の中空部内に、メンブレン15を被せた状態のインナーユニット16を挿入する。ローラ保持筒38には、その中心軸に関して120度の回転対称となる3個所に軸方向に長い略矩形の開口38aが形成されている。この開口38aにはローラアセンブリ40が組み付けられる。
【0026】
ローラアセンブリ40は、一対の細長いフレーム41の間に3本のローラ42を整列保持させたものである。フレーム41は弾性力に富む金属薄板製で、各々の両端を開口38aの前・後端に形成された係合部に嵌め込んでこれらをローラ保持筒38に固定すると、フレーム41の長手方向中央部が開口38aを通してローラ保持筒38の中空部内に入り込むように湾曲する。こうしてフレーム41が湾曲することによって、フレーム41で保持された3本のローラ42はメンブレン15をヘリカルギヤ27に向かって押し付ける。この結果、図5に示すように、メンブレン15が一対のヘリカルギヤ27と3本のローラ42との間に強く挟持される。ここで、3本のうちの中央のローラ42は、その支軸がフレーム41の長手方向に延びた長孔で支持されているためフレーム41の長手方向での位置に関して自由度をもつ。したがって、両側の2本のローラ42との相対位置に関しては、一対のヘリカルギヤ27との間にメンブレン15を最もバランスよく挟持できる位置に自動調整される。
【0027】
こうして3個所の開口38aを覆うように、ローラ保持筒38にローラアセンブリ40が組み付けられると、各ローラ42がローラ保持筒38の内側に突出するためインナーユニット16に対してローラ保持筒38は軸方向に移動できなくなり、これらはメンブレン15を挟んだ状態で一体的に組み合わされる。そして、ローラ保持筒38の先端にフロントバンパー35a、後端にリアパンパー35bが固定される。フロントパンパー35aの先端部及びリアパンパー35bの後端部には、ローラアセンブリ40と軸方向に並ぶように外周の三個所にそれぞれ溝45a,45bが設けられている。さらに、ローラアセンブリ40を含めてローラ保持筒38の外表面を緊密に覆うようにシールドカバー36が被せられる。
【0028】
インナーユニット16とアウターユニット17との間に筒状に展開されたメンブレン15を挟み、これらを一体的に組み合わせた後に、メンブレン15の前端と後端とをそれぞれ逆向きに反転させて裏返しにしてから接合する。このとき、それぞれの接合面に傾斜をつけておけば、接合部15aに極端な厚みムラが生じることがない。図5は組み立て後の推進補助装置2の断面を模式的に示している。このようにトロイド状に接合することによって、メンブレン15はアウターユニット17を全体的に包み込むような内部空間を備える。この内部空間にはエアー、生理食塩水、コロイド状の合成樹脂材料、オイルやグリスなどの潤滑材等、適宜のものを封入することも可能である。
【0029】
図6に円筒状にしたメンブレン15の断面構造の一例を示す。メンブレン15は、例えばウレタン樹脂などのシート材を積層した構造を有し、内周側には円周を三等分する位置に断面が台形状の隆起部50が形成されている。この隆起部50は、他の薄肉部51よりもシート材の積層数を多くすることによって厚くした部分で、メンブレン15の軸方向全長にわたって形成されている。隆起部50の内周面にはヘリカルギヤ27と噛み合うように斜めに傾斜した歯を並べたギヤ列52が設けられている。また、メンブレン15の外周面には隆起部50の位置に対応して軸方向に延びたリブ53が設けられ、さらにギヤ列52とリブ53との間にはメッシュ状の繊維シート54が積層されている。
【0030】
メンブレン15は、図5に示すようにトロイド状にして用いられる。このとき、軸方向に延びた三列の隆起部50がそれぞれヘリカルギヤ27とローラ42との間に挟持され、しかもギヤ列52にヘリカルギヤ27が噛み合わされる。そしてヘリカルギヤ27の回転がギヤ列52を介して直接的にメンブレン15に伝達され、メンブレン15を軸方向に効率的に移動させることができる。隆起部50はシート材の多層構造からなり、しかもメッシュ状の繊維シート54も積層されているから、ヘリカルギヤ27から直接的に駆動力を受けてもギヤ列52が延び変形したりメンブレン15が破断したりすることはなく、十分な機械的強度を確保することができる。また、隆起部50以外は薄肉部51にしてあるから、メンブレン15がインナーユニット16とアウターユニット17との間を通過するときの抵抗を減らすことができる。
【0031】
さらに、隆起部50の内面側に設けられたリブ53は、メンブレン15の移動とともにローラ42の中央部分に形成された溝に係合する。また、アウターユニット17がメンブレン15で緊密に包み込まれるようにトロイド形状の内部空間を縮小調節する場合には、リブ53はフロントバンパー35a及びリアバンパー35bの溝45a,45bにも係合するようになる。このようにリブ53を利用することによって、メンブレン15を軸方向に移動させるときの蛇行を防ぎ、移動経路を安定に保つことができる。
【0032】
図7において、キャリア筒18の中空部18aの先端側内部に先端側からクランパ20,Cリング21を順番に配してある。なお、図7では、キャリア筒18、クランパ20、及びCリング21のみを描いてあり、推進補助装置2の他の部材を省略してある。
【0033】
Cリング21は、合成樹脂などの弾性を有する材料で円環の一部を切り欠いたC字形状に作製されている。また、このCリング21は、外径が中空部18aの内径よりも少し大きくされるとともに、断面が略台形状であり、その先端には後端に向かって大径となる斜面21aを形成してある。Cリング21は、中空部18a内に配され、その内側に先端硬性部3が通される。
【0034】
上記Cリング21は、先端硬性部3を推進補助装置2に固定するためのものであり、後述するように、クランパ20によって、先端硬性部3を固定するために、縮径してその内周面21bを先端硬性部3に圧接した圧接状態と、先端硬性部3の挿入及び取り外しのためにその圧接を解除した圧接解除状態との間で変形される。内周面21bは、先端硬性部3の軸方向に平行な面にしてあり、縮径したときにほぼ全面が先端硬性部3の外周面に密着する。
【0035】
上記のようにCリング21の内周面21bを先端硬性部3の外周面に密着させることで、接触面積が大きい状態で推進補助装置2に先端硬性部3を固定している。このため、先端硬性部3が強固に固定される。また、Cリング21は、その外径が先端硬性部3よりわずかに大きく、また軸方向の長さもかなり短くてよいので、推進補助装置2の細径化、及び軸方向の長さの短縮に有利となる。
【0036】
中空部18a内で駆動筒24の組み付け位置よりも先端側のキャリ筒18aの内面には、その周方向に沿って溝57を形成してある。溝57は、中空部18aの径を大きくすることにより形成され、中空部18aの全周に設けてある。Cリング21は、縮径するように弾性変形させて中空部18aの先端側からに挿入されて溝57に嵌め込まれる。溝57に嵌め込まれたCリング21は、溝57内で復元力により拡径する。溝57の深さは、Cリング21の径方向の厚みよりも浅くしてあり、斜面21aの少なくとも一部が中空部18a内に露呈する。
【0037】
溝57を形成する各面のうちの後端側の面は、Cリング21をその後端に当接して軸方向で位置決めする支持面58となっている。この支持面58は、クランパ20によって押圧されるCリング21が中空部18aの軸方向で後端に向かって移動することを阻止するとともに、クランパ20との間にCリング21を挟持する。支持面58は、中空部18aの内径を小さくするように、中空部18aの中心に向かって適当な高さで全周に設けてある。これにより、Cリング21が縮径した場合にもCリング21の後端方向への移動を阻止する。
【0038】
クランパ20は、プラスチックなどにより円筒状に形成されており、後端側のリング部61と先端側の凹凸係合部62とからなる。リング部61の外周には、雄ねじ61aを形成してある。また、リング部61の後端は、断面が略台形状であり、Cリング21の斜面21aと対称となるように、後端ほど径が大きくなる斜面20aを形成してある。このクランパ20は、雄ねじ61aを中空部18aの先端側の内周面に形成した雌ねじ59に螺合させることによって中空部18aに組み付けられている。
【0039】
各ねじ59,61aの螺合により、クランパ20は、それの回転操作の回転方向に応じて、中空部18a内を先端方向または後端方向に移動する。先端硬性部3を固定する際には、クランパ20を後端に向けて移動して固定位置とし、また先端硬性部3を中空部18aに挿抜する際には、押圧位置から先端に向けて移動し固定解除位置にする。
【0040】
上記の固定位置は、Cリング21を圧接状態として先端硬性部3を固定する位置である。クランパ20を後端方向に移動させると、斜面20aがCリング21の斜面21aを押圧しCリング21が縮径するように変形する。これにより、Cリング21の内周面21bが先端硬性部3の外周面に押し付けられ、またクランパ20と支持面58との間にCリング21が挟持されることにより推進補助装置2に先端硬性部3が固定される。先端硬性部3を固定できるCリング21の変形量は、先端硬性部3の外径によって異なるから、クランパ20の固定位置は先端硬性部3の外径に応じた位置になる。Cリング21の切り欠いた部分の大きさや、斜面20a,21aのサイズ,傾斜角度を適宜調整することにより、Cリング21を大きく変形させることができるので、先端硬性部3の径に広く対応可能となる。なお、クランパ20またはCリング21のいずれか一方のみに斜面を形成した構成としてもよい。
【0041】
一方、解除位置は、Cリング21を圧接解除状態として、先端硬性部3に対する固定を解除した位置である。クランパ20を固定位置から先端側に移動させると、斜面20aによりCリング21の斜面21aの押圧が解除される。この押圧の解除により、Cリング21が拡径して先端硬性部3に対する固定が解除される。
【0042】
なお、推進補助装置2から先端硬性部3を外すために、上記のようにクランパ20によるCリング21の押圧が解除されたときに、Cリング21をその弾性力で拡径しているが、推進補助装置2、あるいはCリング21が1回限りの使用である場合、Cリング21が完全に元の形状に復元しなくてもよい。すなわち、この場合には、先端硬性部3を引き抜くことができる程度にCリング21が拡径すればよい。
【0043】
凹凸係合部62には、規則的な凹凸が周方向に整列して設けてある。この凹凸係合部62には、図8に一例を示す専用の治具63を先端側から係合させることができる。治具63は、円板状の操作部63aと、これと同軸に形成した円筒状の係合部63bとからなる。係合部63bには、凹凸係合部62と対称となるように凹凸を形成してある。係合部63bを凹凸係合部62に係合させ、操作部63aを回転操作することによってクランパ20を回転させることができる
【0044】
なお、組み付けた状態でのCリング21の内径、支持面58部分における中空部18aの内径、クランパ20の内径,係合部63bの内径は、いずれも先端硬性部3の外形よりも大きくしてあり、先端硬性部3を挿通可能にしてある。
【0045】
次に上記構成の作用について説明する。推進補助装置2は、先端硬性部3の先端を部分的に突出させた状態で内視鏡に固定される。まず、推進補助装置2の後端側から、中空部18aに先端硬性部3を挿通する。このとき、先端硬性部3がクランパ20に挿通され、さらに推進補助装置2の先端から適当な長さだけ突出するようにする。
【0046】
次に、治具63の係合部63bに先端硬性部3の先端側を挿入した状態にして、係合部63bの先端をクランパ20の凹凸係合部62と係合した状態にする。この後に、治具63の操作部63aを把持して回転操作して、クランパ20を時計方向に回転させる。
【0047】
クランパ20は、中空部18aの先端側内周に形成された雌ねじ59に螺合しているから、時計方向への回転により、中空部18aの奥側(後端側)へと移動して斜面20aでCリング21の斜面21aを押圧する。このときに、Cリング21は、その後端が支持面58に当接して後端方向に移動しない。そして、Cリング21の斜面21aが後端側に向かって径が漸増するように傾斜しているから、クランパ20の斜面20aによって押圧されると、Cリング21は直径が狭まるように弾性変形する。こうしてCリング21が圧接状態に変形すると、キャリア筒18の中空部18aに挿入されている内視鏡の先端硬性部3がCリング21で締めつけられる。また、Cリング21がクランパ20と支持面58との間に挟持された状態となる。このため、Cリング21がキャリア筒18に固定された状態になる。したがって、先端硬性部3が推進補助装置2に固定される。
【0048】
Cリング21の内周面21bの全面が先端硬性部3の外周面に圧接した状態となっているため、先端硬性部3は大きな面積でCリング21に圧接されている。このため、推進補助装置2が先端硬性部3に強固に固定された状態となる。また、Cリング21の締め付けの際には、Cリング21の剛性に抗して縮径する方向に変形させればよいから、クランパ20を回転させるために大きな操作力は不要であり、容易に先端硬性部3に固定することができる。
【0049】
治具63をクランパ20から外した後、推進補助装置2の後端から引き出されたシース12を内視鏡の湾曲部から軟性部の表面に沿わせるように引き延ばす。シース12の表面には適切な間隔でテープ止め位置を表す表示が設けられている。この表示に合わせてサージカルテープ4などを利用してシース12を内視鏡の湾曲部や軟性部に固定する。そして、シース後端のプラグ13をコネクタ14に挿入してコントローラ10に接続し、コントローラ10の電源をオンする。
【0050】
コントローラ10は、電源がオンされたときにコネクタ14にプラグ13が接続されているか否かを電気的にチェックし、未接続あるいは適正に接続されていないときには音あるいは警告灯などの点滅により報知する。接続が適正であるときには、コネクタ14に組み込まれたセンサーがプラグ13のブリッジ部分に設けられている信号部から推進補助装置2の機種情報を読み取る。そしてコントローラ10は、読み取った機種情報に応じてトルクワイヤの回転速度やトルクリミッタの値を自動設定し、トルクワイヤ30a,30bが過大な速度やトルクで回転されることを防止する。
【0051】
また、コントローラ10は、電源がオンされたときに、内視鏡プロセッサ8に接続されている内視鏡の機種情報を内視鏡プロセッサ8からの電気信号として受け取る。コントローラ10は、現在使用されている内視鏡の機種情報と、推進補助装置2の機種情報とをコントローラ10の内部記憶手段で保有しているテーブル情報で照合する。テーブル情報には、内視鏡の機種ごとに適用可能な推進補助装置2の機種を対応づけた照合データが格納されている。そして、例えば推進補助装置2の機種情報からCリング21の拡縮範囲が特定され、また内視鏡の機種情報から内視鏡の先端硬性部3の外径が特定されれば、その推進補助装置2がその内視鏡の先端硬性部3に適正に装着して使用できるか否かは即座に判定することができる。したがって、もし不適切な組み合わせであると判定されたときには、警告音や警告灯の点滅などにより報知を行い、あるいは同時に推進補助装置2の作動を禁止するなどの手段を講じることによって、思わぬ事故の発生を防ぐことができる。
【0052】
コントローラ10に接続されたフットスイッチ11を操作すると、コントローラ10内で一対のモータが回転してトルクワイヤ30a,30bには回転力が加えられる。この回転力はそれぞれピニオン32a,32bに伝えられ、ピニオン32aに噛み合っている平ギヤ部24bを介して駆動筒24を回転させる。ピニオン32bはピニオン32aとは逆方向に回転され、その回転はピニオン32aにそのまま伝達されるようにしている。したがって、コントローラ10内の一対のモータの双方を利用して駆動筒24を回転させることができる。
【0053】
駆動筒24の回転とともにウォームギヤ部24aが回転すると、ヘリカルギヤ27がそれぞれの軸27aを中心に一斉に同じ方向に回転する。ヘリカルギヤ27の歯面と、ローラアセンブリ40の各ローラ42との間にはメンブレン15が強く挟持されているから、ヘリカルギヤ27の回転とともにローラ42が従動して両者で挟持されたメンブレン15は駆動筒24の軸方向に移動する。例えば図5においてヘリカルギヤ27が時計方向に回転するとローラ42は反時計方向に回転し、これらに挟持されているメンブレン15は、内周側(アウターユニット17の内側)では後端側から先端側へと移動するように送られ、メンブレン15の外周側(アウターユニット17の外側)ではメンブレン15は先端側から後端側へと送られる。すなわち図中に矢線Yで示すように、トロイド状のメンブレン15はその全周で先端では内周側から外周側へと順次に送り出され、後端では外周側から内周側へと順次に繰り込まれるように循環移動する。
【0054】
内視鏡が推進補助装置2とともに大腸に挿入され、メンブレン15の外周側の面が腸壁に接触した状態になっていると、メンブレン15が上記循環移動を行っている間は、内視鏡の先端硬性部3を前進させる方向への推進力が得られ、あるいは大腸壁を手前側にたぐり寄せる作用力を得ることができる。このようにメンブレン15が移動する間には、メンブレン15の外周側に付着した異物などはアウターユニット17の後端側から内周側に移動してくるが、その直前でリアワイパー19bの後端側に延びたスリーブ部の先端がメンブレン15と摺接して異物が引き込まれることを阻止する。もちろん、メンブレン15の移動とともに生体組織の一部が巻き込まれることも防止することができる。なお、メンブレン15が逆方向に循環移動するときには、フロントワイパー19aのスリーブ部の先端が同等の作用を果たすことになる。
【0055】
推進補助装置2を先端硬性部から取り外すときには、治具を利用してクランパ20を反時計方向に回転させる。これによりクランパ20は回転しながら手前に移動し、Cリング21への押圧を解除する。この結果、自身の弾性によってCリング21が拡径して内周面が先端硬性部3の外周面から離れるから、推進補助装置2は内視鏡から簡単に取り外すことができるようになる。
【符号の説明】
【0056】
2 推進補助装置
3 先端硬性部
18 キャリア筒
18a 中空部
20 クランパ
20a 斜面
21 Cリング
21a 斜面
58 支持面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の先端硬性部に装着され、この先端硬性部の軸方向に循環移動体を移動させることによって前記先端硬性部の管内で推進を補助する推進補助装置において、
前記先端硬性部が通される中空部が設けられ、内周面に雌ねじが形成されたキャリア筒と、
後端が前記中空部内に設けられた支持面に当接して軸方向で位置決めされ、先端に第1の斜面が形成されるとともに、円環の一部を切り欠いて径方向に弾性的に拡縮自在なC字状であり、挿通された前記先端硬性部に内周面が圧接する圧接状態とその圧接を解除した解除状態とに変形するCリングと、
外周面に雄ねじが形成されるとともに後端に第2の斜面が形成された円筒状とされ、前記雄ねじと前記雌ねじとの螺合によって前記中空部内を軸方向に移動自在であり、前記第2の斜面で前記第1の斜面を押圧し前記Cリングを縮径させて圧接状態として前記先端硬性部を固定する固定位置と、前記第2の斜面による前記第1の斜面の押圧を解除して前記Cリングを解除状態とする解除位置との間で移動されるクランパとを備えることを特徴とする推進補助装置。
【請求項2】
内視鏡の先端硬性部が通される中空部内で前記先端硬性部に固定する推進補助装置の固定方法において、
前記中空部内に配されたCリングの内側に前記先端硬性部を通して、中空部に前記先端硬性部を挿通する挿通ステップと、
円筒状のクランパの外周面に形成したねじを前記中空部内のねじに螺合させることによって、前記クランパを前記中空部で後端に向けて移動させる移動ステップと、
前記移動ステップで移動される前記クランパの後端の斜面で前記Cリングの先端の斜面を押圧し、前記クランパと前記中空部内の支持面との間に前記Cリングを挟持するとともに、前記Cリングを縮径方向に弾性変形させて前記先端硬性部を締め付けることにより、前記先端硬性部を固定する固定ステップとを有することを特徴とする推進補助装置の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−111447(P2013−111447A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263469(P2011−263469)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】