説明

推進軸のバランスウェイト溶接方法

【課題】通常鋼管を用いた推進軸のバランスウェイト溶接方法に関し、推進軸を構成する通常鋼管へバランスウェイトを溶接する溶接部の残留応力の除去及び熱影響部硬さの低減を図り、捻り疲労強度の向上を図ることができるようにする。
【解決手段】通常鋼管21の両端に継手部材12,13を溶接した推進軸14の通常鋼管21の表面にバランスウェイト15,16を抵抗溶接により溶接する推進軸のバランスウェイト溶接方法であって、電流値を5kA〜20kA、且つ通電時間を15サイクル〜40サイクルとした前段溶接と、電流値を10kA〜24kA、且つ通電時間を100サイクル〜300サイクルとした後段溶接とから成る一対の溶接処理を同一の溶接装置により行なうように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常鋼管を用い、両端に継手部材が溶接され、回転の不釣り合いを調整するバランスウェイトが取り付けられた推進軸であって、捻り疲労強度特性に優れた推進軸のバランスウェイト溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンの駆動力を変速機から終減速装置に伝達する推進軸(プロペラシャフト)は、例えば、図3に示すように鋼管1の一側端に継手部材としてのジョイント2が、他側端に滑り継手(スプライン)3が溶接されて2継手形推進軸4が構成されている。
推進軸4は、鍛造品であるジョイント2、滑り継手3の重量バランス、溶接部の肉盛りの不均一等に起因する不釣り合いや取付部の偏心により振れ回り運動をしており、不釣り合いに起因する車体振動やこもり音、各部共振による破損の防止のため不釣り合いを極力少なくすることが必要であり、特に、高速回転時に振動が少ないことが重要である。
【0003】
不釣り合いの修正は、図示するような2継手形推進軸4では2箇所で行われ、鋼管1のジョイント2側端部近傍及び滑り継手3側端部近傍の表面に夫々バランスウェイト5、6を取り付けて周方向の重量バランス調整が行われる。バランスウェイト5、6は、プロジェクション部(突起部)5a、6aが鋼管1の表面に加圧された状態でプロジェクション溶接、スポット溶接等の電気抵抗溶接により溶接される。
【0004】
推進軸4には、軽量化(薄肉化)等を図るために鋼管1の材料として高張力鋼管(ハイテン材)が採用される傾向にあるが、より安価な通常鋼板を用いる場合もある。なお、ここで、高張力鋼管とは、引張り強さが735MPa級以上の鋼管であり、通常鋼管とは、引張り強さが735MPa級未満の鋼管であるものとする。
このような推進軸4では、薄肉化により捻り疲労の最弱部がバランスウェイト溶接部となり、捻り疲労強度が低下して溶接部に亀裂7が発生することがある。疲労強度の低下の原因としては、バランスウェイト5,6を鋼管1にプロジェクション溶接やスポット溶接による溶接部の急加熱、急冷による引張残留応力等の影響によるものである。
【0005】
そこで、推進軸4に高張力鋼管を用いる場合の捻り疲労改善対策として、バランスウェイト溶接後、溶接部を局所的あるいは推進軸全体を550℃〜850℃に加熱(後熱処理)する方法(例えば、特許文献1参照。)、バランスウェイトのプロジェクション溶接による残留応力等の発生軽減のため、鋼管材料の低炭素化、バランスウェイト材料も引張強さ70kgf/mm2以上のものを使用し、短時間接合する方法(例えば、特許文献2参照。)等が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、鋼管にバランスウェイトを溶接する設備とは別に後熱処理をするための熱源及び設備を設けて、バランスウェイトの溶接部を加熱しなければ後熱効果がなく、捻り疲労強度の向上を図ることができず、設備費、工程時間が大幅に増加してコストアップになる。また、特許文献2の技術は、短時間接合であり、接合部の信頼性が低く、捻り疲労強度にバラツキが大きく接合部の信頼性が低い。さらに、バランスウェイトの高張力鋼化は、材料費の増加、他の材質のバランスウェイトと混ざらないように管理が必要である等の課題が残る。
【0007】
そこで、本願発明者らは、推進軸を構成する高張力鋼管へのバランスウェイト溶接を、同一の溶接装置により前段溶接と後段溶接とから成る一対の溶接処理にて行ない、溶接部の残留応力の除去及び熱影響部硬さの低減を図り、捻り疲労強度の向上を図ることができる推進軸のバランスウェイト溶接方法を提案した(特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平6−246440号公報
【特許文献2】特許第3187274号公報
【特許文献3】特開2005−103575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述の特許文献1〜3のうち特許文献3は、より効果的な捻り疲労改善対策であると言えるが、上述の特許文献1〜3の技術は、何れも推進軸4に高張力鋼管を用いる場合の技術である。前述のように、推進軸4をより安価に製造するためには、推進軸4の鋼管1の材料として通常鋼板を用いる場合もある。
上述の推進軸4のバランスウェイト溶接部が、薄肉化により捻り疲労の最弱部となり、捻り疲労強度の低下からこの溶接部に亀裂が発生するという課題は、推進軸4の鋼管1に通常鋼板を用いた場合も生じるものであり、推進軸4に通常鋼管を用いる場合にも、有効な捻り疲労改善対策の開発が求められている。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、推進軸を構成する通常鋼管へのバランスウェイト溶接を、同一の溶接装置により前段溶接と後段溶接とから成る一対の溶接処理にて行なうようにしながら、条件設定を適切なものにすることにより、溶接部の残留応力の除去及び熱影響部硬さの低減を図り、捻り疲労強度の向上を図ることができるようにした、推進軸のバランスウェイト溶接方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、通常鋼管の両端に継手部材を溶接した推進軸の前記通常鋼管の表面にバランスウェイトを抵抗溶接により溶接する、推進軸のバランスウェイト溶接方法であって、電流値を5kA〜20kAとすると共に通電時間を15サイクル〜40サイクルとした前段溶接と、電流値を10kA〜24kAとすると共に通電時間を100サイクル〜300サイクルとした後段溶接と、から成る一対の溶接処理を同一の溶接装置により行なうことを特徴としている。
【0010】
後段溶接の通電時間については、より好ましくは120サイクル〜300サイクル、更に好ましくは、150サイクル〜300サイクルとする。
バランスウェイトのプロジェクション溶接を、前段溶接と後段溶接とから成る一対の溶接処理を同一の溶接装置にて実施し、前段溶接によりバランスウェイトのプロジェクション部を通常鋼管に溶着し、後段溶接により溶接部(ナゲット)と母材としての通常鋼管との間に後熱効果部を形成する。前段溶接及び後段溶接の各溶接条件を最適化することで、溶接部の残留応力及び熱影響部硬さを低減することができる。
【0011】
前段溶接の条件は、電流値を大きく、通電時間を短くしてバランスウェイトのプロジェクション部の溶接面積を小さくして通常鋼管への影響を少なくし、後段溶接の条件は、前段溶接よりも電流値を小さく、通電時間を長くして溶接部の後熱効果部の均一な移熱効果を得るようにしている。
請求項2の発明は、前記後段溶接は、前段溶接後1サイクル以上のクール時間後に行なうことを特徴としている。
【0012】
前段溶接後、1サイクル以上のクール時間をおいて後段溶接を行なうことで、前段溶接によるバランスウェイトのプロジェクション部の溶接と後段溶接による溶接部の後熱効果とを分けて前段溶接による後熱効果への影響をなくす。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、バランスウェイトのプロジェクション溶接を、前段溶接と後段溶接とから成る一対の溶接処理を同一の溶接装置にて実施し、前段溶接及び後段溶接の各溶接条件を最適化することで、溶接部は、後熱効果により残留応力及び熱影響部硬さを低減することができ、溶接割れ及び捻り疲労強度の向上を図ることができる。
そして、前段溶接は、電流値を大きく、通電時間を短くすることで、バランスウェイトのプロジェクション部の溶接面積を小さくして、母材である通常鋼管への影響を少なくすることができ、後段溶接は、前段溶接よりも電流値を小さく、通電時間を長くすることで、溶接部の後熱効果部の均一な移熱効果を得ることができ、バランスウェイトの溶接部の残留応力の除去、熱影響部硬さの低減をバラツキなく安定して実施することができる。
【0014】
また、同一の溶接設備にて短時間の後段溶接工程を実施するだけでよく、設備の増設の必要がなく、現状のライン設備、冶具を使用してインライン化で行なうことができ、バランスウェイト材料も変更がないためにコストアップも殆どない。
請求項2の発明によれば、前段溶接後1サイクル以上のクール時間をおいて後段溶接を行なうことで、前段溶接によるバランスウェイトのプロジェクション部の溶接と後段溶接によるナゲットの後熱効果とを分けることができ、前段溶接による後熱効果への影響をなくすことができ、良好な後熱効果部を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者は、上記の問題を解決するために通常鋼管の両端に継手部材を溶接し、この通常鋼管に電気抵抗溶接(プロジェクション溶接)によりバランスウェイトを溶接した推進軸における前記バランスウェイトの溶接部の溶接割れ及び捻り疲労強度に及ぼす影響に関して種々研究し、以下の知見を得た。
バランスウェイトのプロジェクション溶接は、従来から1回通電にて実施されているが、前段溶接(通電I)と後段溶接(通電II)とから成る一対の溶接処理を同一の溶接装置にて実施し、前段溶接によりバランスウェイトのプロジェクション部(突起部)を通常鋼管に溶着し、後段溶接により溶接部(ナゲット)と通常鋼管(母材)との間に後熱効果部を形成する。そして、前段溶接及び後段溶接の各溶接条件を最適化することで、溶接部は、後熱効果により残留応力及び熱影響部硬さが低減し、溶接割れ及び捻り疲労強度が改善される。
【0016】
前段溶接の条件は、電流値を大きく、通電時間を短くし、具体的には、電流値を5kA〜20kA、通電時間を15サイクル〜40サイクルとして、バランスウェイトのプロジェクション部の溶接面積を小さくして、通常鋼管への影響を少なくする。また、後段溶接の条件は、前段溶接よりも電流値を小さく、通電時間を長くし、具体的には、電流値を10kA〜24kA、通電時間を100サイクル〜300サイクルとして、溶接部の後熱効果部の均一な移熱効果を得る。後段溶接の通電時間は、より好ましくは120サイクル〜300サイクル、更に好ましくは、150サイクル〜300サイクルとする。
【0017】
更に、前段溶接後1サイクル以上のクール時間をおいて後段溶接を行ない、前段溶接によるバランスウェイトのプロジェクション部の溶接処理と後段溶接による溶接部の後熱効果処理とを分けて前段溶接による後熱効果への影響をなくす。
なお、前段溶接は、バランスウェイトのプロジェクション部の溶接であり、後段溶接は、溶接部の後熱効果部を得るためのもので厳密には溶接とは異なるものであるが後段溶接と称する。
【実施例】
【0018】
(1)使用した部材
推進軸の中空鋼管として、
材質:引張強さ735MPa級未満の通常鋼管
サイズ:φ114.3mm×4mm(肉厚)
を用い、
バランスウェイトとして、
材質:引張強さ270MPa級鋼板(軟鋼材)
サイズ:板厚2.3mm、長さ14〜83.5mm×幅40mm
プロジェクション部:φ5.5mm×高さ1.1mm×2個
を用いた。
(2)捻り疲労試験
図1に示すように(1)の通常鋼管21の両端に継手部材としてのジョイント12、滑り継手13を溶接して推進軸14を構成し、通常鋼管21のジョイント12側端部近傍及び滑り継手13側端部近傍の表面に夫々(1)のバランスウェイト15、16を、プロジェクション部(突起部)15a,16aに10kgf〜1000kgfの加圧力を加えてプロジェクション溶接により溶接した推進軸モデル20を11体(試験体A〜K)を製作した。図2は、図1の溶接部の拡大断面図である。
【0019】
バランスウェイト15,16の溶接は、前段溶接(通電I)と後段溶接(通電II)各1回の2回通電とし、前段溶接の条件は、電流値を5kA〜20kAの範囲、通電時間を15サイクル〜40サイクルの範囲、後段溶接の条件は、電流値を一部の比較例を除いて、10kA〜24kAの範囲、通電時間を一部の比較例を除いて、100サイクル〜300サイクルの範囲とした。
【0020】
捻り疲労試験機は、電気油圧式捻り疲労試験機を用い、負荷トルク一定にて試験体A〜Kの捻り疲労試験を行った。また、図2に砂地で示す溶接部(ナゲット)17と通常鋼管21との間に形成される後熱効果部18の×印で示す部位における熱影響部硬さ(HV)を測定した。その結果を表1に示す。
(3)試験結果
実施例A,B及び比較例D,E,H〜Jは、前段溶接及び後段溶接の条件が本発明で規定した範囲内であり、実施例A,Bについては疲労寿命の繰り返し数が100万回以上であり、破損が発生した場合(実施例B)の破損部位はジョイント部であった。これは、溶接部17の強度が十分にあり、且つ後熱効果部18に均一な移熱効果が得られた結果、溶接部17の捻り疲労強度が増し、ジョイント12が破損したものである。熱影響部硬さを見ると、実施例Aは319〜374HV、実施例Bは304〜331HVと、破損を招き難い値として想定される想定上限値400HVよりも、十分に低くなっている。
【0021】
比較例D,E,H〜Jについては、疲労寿命の試験を行なっていないが、一部の例に、部分的に想定上限値400HVよりも高い箇所が出現するものの概ね想定上限値400HVよりも低くなっている。
このように本発明による溶接方法を用いれば、バランスウェイト15,16と通常鋼管21との溶接部の接合強度を向上させることができ、バランスウェイト接合部の捻り疲労強度を大きく改善することができる。以下、各例について説明する。
【0022】
実施例A,Bは、いずれも、前段溶接の電流値を大きく、通電時間を短くしたことでバランスウェイトのプロジェクション部の溶接面積が小さくなって通常鋼管(母材)21への影響が少なく、後段溶接の電流値を前段溶接よりも小さくし(約75%)、通電時間を前段溶接よりも大幅に長く(約15倍)としたことで後熱効果部の均一な移熱効果が得られ、溶接部の捻り疲労強度が高くなって、実施例Aの場合は、1000万回の疲労寿命の繰り返し試験でも破損が生じなかった。また、実施例Bの場合は、溶接部の捻り疲労強度が高くなってジョイント部で破損したが、疲労寿命の繰り返し数は191万回と十分に長寿命であった。従って、実施例A,Bは、前段溶接及び後段溶接の条件が最適条件に近いものと推定される。熱影響部硬さは想定上限値400HVよりも十分に低くなっている。
【0023】
一方、比較例Cは、他の例とは大きく異なる条件であって、前段溶接及び後段溶接の時間サイクル条件が近似しており、また、前段溶接の電流値が低く設定され、さらに、後段溶接の電流値は2.5kAと前段溶接の電流値10kAの四分の一とさらに低く設定される。この場合、熱影響硬さ(HV)が高くなり、溶接部の脆性が進むことから、疲労寿命の繰り返し数が339万回と高いもののバランスウェイトにおいて破損したものと考えられる。なお、熱影響部硬さは464〜475HVと、想定上限値400HVを大きく越えている。
【0024】
比較例D,Eは、実施例A,Bに対して、後段溶接の通電時間のみを変更したもので、比較例Dは後段溶接の通電時間が100サイクル、比較例Eは後段溶接の通電時間が150サイクルと短く設定されている。比較例D,Eとも、疲労試験は実施していないが、熱影響部硬さを見ると、比較例Dは310〜412HVと一部の検査箇所で想定上限値400HVを超えているものの概ね想定上限値400HVよりも低くなっている。比較例Eは308〜381HVと全ての検査箇所で想定上限値400HVよりも低くなっている。したがって、通電時間として100サイクルが下限と考えられ、通電時間として150サイクルあれば十分であるとも判定することができる。
【0025】
比較例F,Gは、前段溶接の電流値を実施例A,Bや比較例D,Eよりも低く、前段溶接の通電時間を実施例A,Bや比較例D,Eよりも長く設定し、後段溶接の電流値を実施例A,Bや比較例D,Eよりも低く、後段溶接の通電時間を比較例Eレベルに設定したものである。熱影響部硬さを見ると、比較例F,Gは想定上限値400HVを大きく超えた検査箇所がある。
【0026】
比較例H,Iは、前段溶接の電流値を比較例F,Gと同レベルとし、前段溶接の通電時間を比較例F,Gよりも短く設定し、後段溶接の電流値及び通電時間を比較例F,Gレベルに設定したものである。熱影響部硬さを見ると、比較例H,Iも想定上限値400HVを大きく超えた検査箇所がある。
これらの比較例F〜Iから、後段溶接の電流値が低すぎると、溶接部の接合強度を十分に向上させることができないものと考えられる。
【0027】
比較例Jは、後段溶接の通電時間のみを実施例A,Bよりも短くし、他は実施例A,Bと同様に設定したものであり、比較例Kは、前段溶接の電流値を実施例A,Bよりも低く、前段溶接の通電時間を実施例A,Bよりも短く設定し、後段溶接の電流値を比較例Jよりもやや高く通電時間は比較例Jと同様に設定したものである。
比較例J,Kともに、熱影響部硬さは、全ての検査箇所で想定上限値400HVよりも低くなっている。
【0028】
したがって、比較例Kから、前段溶接の電流値や通電時間にも幅をもたせることができることが裏付けられる。
【0029】
【表1】

【0030】
表1から明らかなように、バランスウェイトのプロジェクション溶接において前段溶接と後段溶接の溶接処理を行ない、前段溶接(通電I)は、電流値を5kA〜20kA、且つ通電時間を15サイクル〜40サイクルの条件とし、後段溶接(通電II)は、電流値を10kA〜24kA、且つ通電時間を100サイクル〜300サイクル、より好ましくは120サイクル〜300サイクル、更に好ましくは、150サイクル〜300サイクル、の条件下で、前段溶接後1サイクル以上のクール時間をおいて後段溶接を行なうことで、溶接部の残留応力の除去、熱影響部硬さの低減をバラツキなく安定して実施することができ、捻り疲労強度の向上を図ることができた。
【0031】
また、同一の溶接設備にて短時間の後段溶接工程のみを実施するだけでよく、設備の増設の必要がなく、現状のライン設備、冶具を使用してインライン化で行なうことができ、バランスウェイト材料(軟鋼材)も変更がないためにコストアップも殆どなく、加工時間も1〜2秒溶接時間が延長されるだけ、バラつきのない高品質の溶接部を得ることができる。
【0032】
なお、上記実施例においては、溶接処理を前段溶接と後段溶接とから成る一対の溶接処理とし、後段溶接を1回としたが、1回目の後段溶接の後に、更に、同様又は異なる条件(ただし、1回目の後段溶接に対して電流値を10kA〜24kA、通電時間を100サイクル〜300サイクル)で2回目の後段溶接を行ない、後熱処理を実施してもよい。このように後段溶接を2回実施することで溶接部(ナゲット)の後熱効果を更に有効にすることが可能である。また、上記実施例ではプロジェクション溶接について説明したが、スポット溶接にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る推進軸のバランスウェイト溶接方法を適用した推進軸の斜視図である。
【図2】図1のバランスウェイトの溶接部の拡大断面図である。
【図3】従来の溶接方法によりバランスウェイトを溶接した推進軸の捻り疲労により亀裂が発生する場合の説明図である。
【符号の説明】
【0034】
12 ジョイント(継手部材)
13 滑り継手(継手部材)
14 推進軸
15,16 バランスウェイト
15a,16a プロジェクション部
17 溶接部
18 後熱効果部
20 推進軸モデル(試験体)
21 通常鋼管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常鋼管の両端に継手部材を溶接した推進軸の前記通常鋼管の表面にバランスウェイトを抵抗溶接により溶接する、推進軸のバランスウェイト溶接方法であって、
電流値を5kA〜20kAとすると共に通電時間を15サイクル〜40サイクルとした前段溶接と、電流値を10kA〜24kAとすると共に通電時間を100サイクル〜300サイクルとした後段溶接と、から成る一対の溶接処理を同一の溶接装置により行なう
ことを特徴とする、推進軸のバランスウェイト溶接方法。
【請求項2】
前記後段溶接は、前段溶接後1サイクル以上のクール時間後に行なう
ことを特徴とする、請求項1記載の推進軸のバランスウェイト溶接方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−148786(P2009−148786A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327753(P2007−327753)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)