掻取装置、これを備えたコントラスト向上シートの製造装置、およびコントラスト向上シートの製造方法
【課題】スジ不良および充填ムラが低減したコントラスト向上シートを得ることができる掻取装置、シートの製造装置および上シートの製造方法を提供する。
【解決手段】表面1aに複数の溝が並設された光透過部1と、光透過部1の溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造に用いられる掻取装置であって、表面1a上に供給されたインキ組成物を掻き取るための、先端部41aに貫通孔41bを有する第1の掻取ブレード41と、第1の掻取ブレード41と所定の間隔を置いて配置され、第1の掻取ブレード41による掻き取り後に光透過部1の表面1aに残るインキ組成物をさらに掻き取るための第2の掻取ブレード42と、貫通孔41bを介して第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42との間の空間Sに入り込んだインキ組成物を吸引する吸引機構とを備える。
【解決手段】表面1aに複数の溝が並設された光透過部1と、光透過部1の溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造に用いられる掻取装置であって、表面1a上に供給されたインキ組成物を掻き取るための、先端部41aに貫通孔41bを有する第1の掻取ブレード41と、第1の掻取ブレード41と所定の間隔を置いて配置され、第1の掻取ブレード41による掻き取り後に光透過部1の表面1aに残るインキ組成物をさらに掻き取るための第2の掻取ブレード42と、貫通孔41bを介して第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42との間の空間Sに入り込んだインキ組成物を吸引する吸引機構とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掻取装置、これを備えたコントラスト向上シートの製造装置、およびコントラスト向上シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では、通常、観察者がどのような位置から見ても良好な画像が得られるように、視野角が広いことが好まれる。一方、例えば通勤電車の中で仕事をする場合やATM等の公共の場に設置された液晶表示装置では、周りの人から画面を覗かれては困ることがあり、このような場合には液晶表示装置の観察者のみに見え、他人からは見えないようにプライバシーを保護するための覗き見防止機能が求められている。また、カーナビゲーションシステム等の車載型の液晶表示装置においては、夜間などに液晶表示装置の画面が窓ガラスに映り込み、視界を遮る現象がおこるため、映り込み防止機能が求められており、光線出光角度の制御が望まれている。
【0003】
このような要求に対して、例えば、特開2006−119365号公報(特許文献1)には、光透過層と遮光層とを交互に並べた構造であるルーバータイプの光学シートが提案されており、遮光層として、光透過層を構成する材料にカーボンブラックやカーボンファイバー等の充填材を混合したものを用いることが開示されている。
【0004】
一方、上記のようなルーバー型の光学シートは、斜め方向の映像光を単純にカットするものであるため、表示装置の種類によっては、観測者に到達させるべき映像光の拡散光源を減少させてしまうことにもなるため、表示画面の輝度が低下する場合があった。
【0005】
上記の問題を解消するため、外光を遮光してコントラストを向上させ、かつ二重像の発生も減少させることができるコントラスト向上シートを設置することが提案されている。このようなコントラスト向上シートとして種々の構造のものが提案されており、例えば、表面に複数の溝が並設された光透過部と、溝に光透過部よりも屈折率の低い材料とカーボン顔料等とを充填させて形成された光吸収部とを有するものが提案されている(例えば、特開2006−85050号公報等:特許文献2)。
【0006】
そして、コントラスト向上シートの製造において、電離放射線硬化型樹脂等のレンズ材料に着色樹脂ビーズを混合したインキ組成物を光透過部の溝に充填し、電離放射線を照射して硬化させて光吸収部を形成することが行われている(例えば、国際出願公開公報WO2006/090784:特許文献3)。
【0007】
インキ組成物の充填は、例えば、表面に複数の溝が並設されたシート状の光透過部を移動させながら、ドクターブレードの上流側よりインキ組成物を光透過部の表面に供給し、ドクターブレードの上流側かつドクターブレードの直近にインキ溜まりを形成しつつ、1枚のドクターブレードで光透過部の表面上のインキ組成物を掻き取ることにより行うことができる。
【0008】
しかしながら、このような方法により、インキ組成物を充填すると、帯状の充填ムラやスジ不良等が発生しやすい。コントラスト向上シートの外観品質は、画質に直接結び付くため、高い品質が要求される。このため、上記したような充填ムラやスジ不良を極力低減することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−119365号公報
【特許文献2】特開2006−85050号公報
【特許文献3】国際出願公開公報WO2006/090784
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、スジ不良および充填ムラが低減したコントラスト向上シートを得ることができる掻取装置、コントラスト向上シートの製造装置およびコントラスト向上シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、充填ムラおよびスジ不良を低減するため鋭意研究を重ねた結果、第1の掻取ブレードと、第1の掻取ブレードより下流側に配置された第2の掻取ブレードとを用い、かつ第1の掻取ブレードに付着して、固形化するインキ組成物を抑制した場合には、充填ムラおよびスジ不良を低減することができることを見出した。ここで、本明細書においては、「スジ不良」とは、白スジ、ピッチスジ不良および黒スジ不良の全てを含む意味である。「白スジ」とは、溝にインキ組成物が確実に充填されておらず、光吸収部が一部において凹んでいるものを意味する。「ピッチスジ不良」とは、光吸収部が一部において凹んでおり、そしてこの凹みが線状になっているものを意味する。「黒スジ不良」とは、インキ組成物の掻き取り後において光透過部上にインキ組成物が残存しており、そしてそれが線状または点状になっているものを意味する。なお、黒スジ不良は「カブリ」とも呼ばれることもある。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
【0012】
本発明の一の態様によれば、表面に複数の溝が並設された光透過部と、前記光透過部の前記溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造に用いられる掻取装置であって、表面に複数の溝が並設された光透過部の前記表面から前記表面上に供給されたインキ組成物を掻き取るための、先端部に貫通孔を有する第1の掻取ブレードと、前記第1の掻取ブレードと所定の間隔を置いて配置され、前記第1の掻取ブレードによる掻き取り後に前記光透過部の前記表面に残る前記インキ組成物をさらに掻き取るための第2の掻取ブレードと、前記貫通孔を介して前記第1の掻取ブレードと前記第2の掻取ブレードとの間の空間に入り込んだ前記インキ組成物を吸引する吸引機構とを備えることを特徴とする、掻取装置が提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、表面に複数の溝が並設された光透過部と、前記光透過部の前記溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造装置であって、上記の掻取装置を備えることを特徴とする、コントラスト向上シートの製造装置が提供される。
【0014】
本発明の他の態様によれば、表面に複数の溝が並設された光透過部と、前記光透過部の前記溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造方法であって、表面に複数の溝が並設されたシート状の光透過部を移動させながら、前記光透過部の前記表面にインキ組成物を連続的に供給し、前記インキ組成物の供給位置よりも下流側に配置された第1の掻取ブレードの上流側かつ前記第1の掻取ブレードの直近にインキ組成物からなるインキ溜まりを形成しつつ、前記光透過部の表面上の前記インキ組成物を、前記第1の掻取ブレードおよび前記第1の掻取ブレードよりも下流側に前記第1の掻取ブレードと所定の間隔を置いて配置された第2の掻取ブレードにより掻き取る充填工程とを備え、前記第1の掻取ブレードが、前記第1の掻取ブレードの先端部に貫通孔を有し、前記充填工程が、前記貫通孔を介して前記第1の掻取ブレードと前記第2の掻取ブレードとの間の空間に入り込んだ前記インキ組成物を吸引しながら行われることを特徴とする、コントラスト向上シートの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一の態様の掻取装置、本発明の他の態様のコントラスト向上シートの製造装置、および本発明の他の態様のコントラスト向上シート製造方法によれば、充填ムラおよびスジ不良を低減させたコントラスト向上シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係るコントラスト向上シートの製造装置を概略構成図である。
【図2】図1の掻取装置周辺を上流側から見た図である。
【図3】図1のホルダの断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る第1の掻取ブレードと第2の掻取ブレードの正面図である。
【図5】図1のホルダの側面図である。
【図6】第1の実施の形態に係る他のホルダの側面図である。
【図7】第1の実施形態に係るホルダの内側隅部を模式的示した図である。
【図8】第1の実施形態に係るコントラスト向上シートの製造工程を模式的に示した図である。
【図9】第1の実施形態に係る光透過部の形成工程を模式的に示した図である。
【図10】第1の実施形態に係る粘着層および剥離層を有する基材を示した図である。
【図11】第1の実施形態に係る掻取装置によるインク組成物の掻き取りの様子を模式的に示した図である。
【図12】第1の実施形態に係るコントラスト向上シートを備えた表示装置の断面図である。
【図13】第2の実施形態に係るコントラスト向上シートの製造装置を概略構成図である。
【図14】図13のホルダの断面図である。
【図15】図14で示されるスペーサの斜視図である。
【図16】第2の実施形態に係る他のスペーサの斜視図である。
【図17】第2の実施形態に係る掻取装置によるインク組成物の掻き取りの様子を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<掻取装置およびコントラスト向上シートの製造装置>
まず、本発明による掻取装置およびコントラスト向上シートの製造装置について、説明する。図1は本実施形態に係るコントラスト向上シートの製造装置を概略構成図であり、図2は図1の掻取装置周辺を上流側から見た図であり、図3は図1のホルダの断面図である。図4は本実施形態に係る第1の掻取ブレードと第2の掻取ブレードの正面図であり、図5は図1のホルダの側面図である。図6は本実施の形態に係る他のホルダの側面図であり、図7は本実施形態に係るホルダの内側隅部を模式的示した図である。なお、図1〜3、5、6中の矢印Aは光透過部の移動方向を表すものであり、図1中の矢印Bはインキ組成物の循環方向を表すものである。
【0018】
図1に示されるコントラスト向上シートの製造装置10は、表面1aに溝1bが並設された光透過部1の溝1bにインキ組成物3を充填させるためのものであり、主に、搬送系20と、供給装置30と、掻取装置40と、インキ循環系60とを備えている。
【0019】
図1に示される光透過部1は、基材2上に形成されており、溝1bは基材2側に向けて先細る略台形状となっている。溝1bは、略台形状に限られず、例えば、略V字状または略矩形状に形成されていてもよい。また、溝1bは光透過部1の長手方向(光透過部1の幅方向と直交する方向)に沿って延在している。光透過部1全体の幅は、500〜1500mmとすることが可能である。
【0020】
搬送系20は、光透過部1を基材2ごと一方方向に搬送するためのものであり、搬送ロール等から構成されている。搬送系20のライン速度(搬送速度)は、インキ組成物3の供給速度にもよるが、1〜50m/分であることが好ましい。
【0021】
供給装置30は、インキ組成物3を光透過部1の表面1aに供給するためのものである。供給装置30は、光透過部1の幅方向においてインキ組成物3を均一に供給できるものであることが好ましい。供給装置30によるインキ組成物3の供給速度は、0.5〜10L/分であることが好ましい。
【0022】
供給装置30としては、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、またはナイフコーターが挙げられるが、これらの中でも、光透過部1の幅方向においてインキ組成物3を光透過部1の表面1aに均一に供給できるダイコーターが好ましい。
【0023】
掻取装置40は、供給装置30によるインキ組成物3の供給位置よりも下流側に配置されている。掻取装置40は、図3に示される光透過部1の表面1a上に供給されたインキ組成物3を掻き取る第1の掻取ブレード41および第1の掻取ブレード41による掻き取り後に光透過部1の表面1aに残るインキ組成物3をさらに掻き取る第2の掻取ブレード42と、図1に示される、インキ組成物3を吸引する吸引機構43を少なくとも備えている。本実施形態では、その他、図1および図3に示されるように、第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42を保持するホルダ44を備えている。
【0024】
第1の掻取ブレード41の先端部41aには、図3および図4に示されるように貫通孔41bが設けられている。図4に示される貫通孔41bは、第1の掻取ブレード41の幅方向に沿って所定の間隔を置いて複数設けられている。第1の掻取ブレード41に貫通孔41bが設けられることにより、インキ組成物3からなる後述するインキ溜まり3a(図2参照)の一部を、貫通孔41bを介して、図3に示される、第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42との間の空間Sに入り込ませることができる。
【0025】
図4に示される貫通孔41bは等間隔に設けられているが、第1の掻取ブレード41の幅方向において第1の掻取ブレード41の中央部から端部に向けて貫通孔41bの間隔が広くなっていてもよい。また、図4に示される貫通孔41bは円形状となっているが、貫通孔41bの形状は、特に限定されず、円形状の他、例えば、楕円形状、四角状となっていてもよい。貫通孔41bは、3つ以上設けられていることが好ましい。
【0026】
貫通孔41bが円形状の場合、貫通孔41bの直径は1〜10mmであることが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、貫通孔41bの直径が1mm未満であると、インキ組成物3が十分に貫通孔41bから空間Sに供給されないおそれがあるからであり、また貫通孔41bの直径が10mmを超えると、第1の掻取ブレード41の強度が低下して、掻取不足もしくは第1の掻取ブレード41が破損するおそれがあるからである。
【0027】
第2の掻取ブレード42は、図3に示されるように第1の掻取ブレード41よりも光透過部1の移動方向に対して下流側に配置されている。また、第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42は、溝1bの延在方向とほぼ直交するように配置されている。
【0028】
第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42は薄板状のものであり、第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42の厚さは約200μm程度とすることができる。第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42としては例えばドクターブレード等を用いることができる。
【0029】
第1の掻取ブレード41の幅および第2の掻取ブレード42の幅は用いる基材2の幅により適宜決定され、例えば、第1の掻取ブレード41の幅および第2の掻取ブレード42の幅は、基材2の幅から50〜300mm短いことが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、第1の掻取ブレード41の幅および第2の掻取ブレード42の幅が基材2の幅よりも50mm未満短いと、インキ組成物3が基材1の幅方向両側から漏れるおそれがあり、また第1の掻取ブレード41の幅および第2の掻取ブレード42の幅が基材2の幅よりも300mmを超えて短いと、基材2のロスが大きくなり、不経済となるおそれがあるからである。
【0030】
図4に示される第1の掻取ブレード41は、第1の掻取ブレード41の幅が、第2の掻取ブレード42の幅よりも短くなっている。具体的には、例えば、第1の掻取ブレード41の幅が、第2の掻取ブレード42の幅よりも5〜30mm短くなっていることが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、第1の掻取ブレード41の幅が、第2の掻取ブレード42の幅よりも5mm未満短いと、後述する堰48に設けられた吸引孔48aから、空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引し難くなるおそれがあるからである。また、第1の掻取ブレード41の幅が、第2の掻取ブレードの幅よりも30mmを超えて短いと、掻取装置40によるインキ組成物3の掻き取り性が劣り、充填ムラやスジ不良が発生するおそれがある。
【0031】
図3に示されるように、第1の掻取ブレード41は、第1の掻取ブレード41の先端41cが光透過部1の表面1aに接触するように配置されており、第2の掻取ブレード42は、第2の掻取ブレード42の先端42aが光透過部1の表面1aから離間するようにホルダ44に保持されていることが好ましい。
【0032】
第2の掻取ブレード42の先端42aは第1の掻取ブレード41の先端41cに対して0.25mm〜0.55mm突き出していることが好ましい。ここで、第2の掻取ブレード42の先端42aが、第1の掻取ブレード41の先端41cよりも0.25mm〜0.55mm突き出しているとは、図3に示される突き出し長さL1が0.25mm〜0.55mmであることを意味する。
【0033】
図3に示される第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42との間の間隔dは、0.05〜2mmであることが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、この間隔dが0.05mm未満であると、第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42が重なってしまい、インキ組成物3の掻き取りが不十分となるおそれがある。またこの間隔dが2mmを超えると、第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42の間にインキ組成物3が詰まってしまい、ピッチスジの原因となるおそれがあるからである。なお、間隔dをこの数値範囲にするためには、第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42との間に、厚さ0.05〜2mmの後述するスペーサ49を配置すればよい。
【0034】
図3に示される、光透過部1の表面1aに対する第1の掻取ブレード41の先端部41aおよび第2の掻取ブレード42の先端部42bの角度α、βは、40°〜70°であることが好ましく、50°〜65°であることがより好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、角度α、βが40°未満であると、インキ組成物3の掻き取りが不十分となるおそれがあるからであり、また角度α、βが70°を超えると、第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42による掻き取り効率は向上するものの、インキ組成物3に接触する第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42の面積が小さくなるので、黒スジ不良が発生するおそれがあるからである。
【0035】
吸引機構43は、貫通孔41bを介して空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引するためのものである。吸引機構43は、図1に示されるように、エア吸引クリーナ等の吸引機45、および一端が吸引機45に接続された吸引ホース46を備えている。吸引ホース46の直径は、特に限定されないが、約10〜15mmとすることが可能である。
【0036】
吸引機構43によるインキ組成物3の吸引は、ホルダ44に設けられ、第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42との間の空間Sと連通した吸引孔を介して行われることが好ましい。このような吸引孔を介して行われることにより、空間Sが狭い場合であっても、確実にこの空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引することができる。
【0037】
以下、ホルダ44に、空間Sと連通した吸引孔を設けた例について説明する。なお、本発明においては、空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引することができれば、インキ組成物3の吸引はホルダ44に設けられた吸引孔を介さなくてもよい。具体的には、例えば、空間Sに直接ノズル等を配置して、空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引することも可能である。
【0038】
ホルダ44は、第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42を保持するホルダ本体47と、ホルダ本体47の両端部に設けられた堰48とを少なくとも備えている(図3および図5参照)。本実施形態では、ホルダ44は、その他、スペーサ49および当板50を備えている。
【0039】
ホルダ本体47は第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42を挟持するものである。堰48は、第1の掻取ブレード41の上流側かつ第1の掻取ブレード41の直近に形成された、インキ組成物3からなるインキ溜まり3a(図2参照)を保持するためのものである。堰48は、図7に示されるように、第1の掻取ブレード41よりも第1の掻取ブレードの掻取面41d側、すなわち上流側に突き出ている。
【0040】
堰48には、図5および図7に示されるように、空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引するための吸引孔48aが設けられている。ここで、本実施形態では、第1掻取ブレード41の幅が第2の掻取ブレード42の幅が短くなっているので、空間Sが第1の掻取ブレード41の掻取面41d側の空間と連通している。したがって、吸引孔48aから吸引を行うと、空間Sに入り込んだインキ組成物が図7中の矢印Cのように移動して吸引孔48aから吸引されるとともに、第1の掻取ブレード41の上流側かつ直近に形成されるインキ溜まり3aの一部が図7中の矢印Dのように移動して吸引孔48aから吸引される。すなわち、吸引孔48aは、インキ溜まり3aの一部を吸引するための吸引孔としても機能する。
【0041】
図5および図7に示される吸引孔48aは、空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引するための役割と、インキ溜まり3aの一部を吸引するための役割とを兼ね備えているが、堰48に、空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引するための吸引孔と、インキ溜まり3aの一部を吸引するための吸引孔とを別々に設けてもよい。例えば、図6に示されるように、空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引するための吸引孔48bを、堰48における第1のドクターブレード41と第2のドクターブレード42との間の位置に設け、吸引孔48bとは別に、インキ溜まり3aの一部を吸引するための吸引孔48cを堰48における第1の掻取ブレード41の上流側の位置に設けてもよい。この場合、第1の掻取ブレード41の幅は、第2の掻取ブレード42の幅と同じであってもよい。
【0042】
図5および図6に示される吸引孔48a〜48cの一端は、堰48の底面48dに位置していることが好ましい。吸引孔48a〜48cの他端は堰48の外側側面48eに位置している。外側側面48eおいて吸引孔48a〜cは吸引ホース46に接続されている。
【0043】
図5および図6に示されるように、吸引孔48a〜48cの一端が底面48dに形成されている場合には、堰48は、空間Sに入り込んだインキ組成物3およびインキ溜まり3aの一部を吸引可能なように堰部48の底面48dと光透過部1の表面1aとの間に若干隙間を有するよう配置されることが好ましい。
【0044】
吸引孔48a〜48cの直径は、10〜16mmであることが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、この直径が10mm未満であると、インキ組成物3を吸引するのに多大な時間を要するからであり、またこの直径が16mmを超えると、過剰にインキ組成物3を吸引してしまうからである。
【0045】
当板50は、図3に示されるように第2の掻取ブレード42における第1の掻取ブレード41側の面(掻取面)とは反対側の面に取り付けられている。当板50を構成する材料は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼等を用いることができる。当板50の厚さは、150〜1000μmであることが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、当板50の厚さが150μm未満であると、当板54の剛性が不十分となり黒スジが発生しやすくなるおそれあるからであり、また当板50の厚さが1000μmを超えると、当板50の剛性が必要以上となり、第2の掻取ブレード42のしなりを利用することができなくなり、インキ組成物3の充填率が低下するおそれがあるからである。
【0046】
当板50は、第2の掻取ブレード42における当板50により覆われていない部分の縦方向の長さ、すなわち図3に示される当板50の下端50aから第2の掻取ブレード42の先端42aまでの長さL2が1〜10mmとなるように配置されていることが好ましく、さらに3〜7mmとなるように配置されていることがより好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、長さL2が1mm未満であると、当板50による剛性向上により第2の掻取ブレード42のしなりを利用することができなくなるため、インキ組成物3の充填率が低下するおそれがあるからであり、また長さL2が10mmを超えると、当板50の剛性が不十分となり黒スジが発生しやすくなるおそれがあるからである。
【0047】
インキ循環系60は、吸引されたインキ組成物3を回収して、再び供給装置30にインキ組成物3を供給するためのものである。
【0048】
インキ循環系60は、図1に示されるように、ダイアフラムポンプ等のポンプ61、62、混合タンク63、未使用インキ組成物貯留タンク64およびフィルタ65等を備えている。ポンプ61は、吸引機構43で吸引されたインキ組成物3を搬送し、混合タンク63に送出するためのものであり、吸引機構43の後段に配置されている。混合タンク63は、回収された使用済みのインキ組成物3と、未使用インキ組成物貯留タンク64に貯留されている未使用のインキ組成物3bとを混合するためのものである。
【0049】
混合タンク63においては、使用済みのインキ組成物3と、未使用のインキ組成物3bとは、混合比が1:4〜4:1となるように混合されることが好ましい。また、混合タンク63においては、混合後のインキ組成物3の粘度が好ましくは2500〜5000mPa・sとなるように、より好ましくは3000〜4000mPa・sとなるようにインキ組成物3の粘度が調整される。この数値範囲が好ましいとしたのは、インキ組成物3の粘度が2500mPa・s未満であると、溝1bにインキ組成物3が充填させることが困難となるおそれがあり、またインキ組成物3の粘度が5000mPa・sを超えると、インキ溜まり3aの一部を吸引することが困難となるおそれがある。
【0050】
ポンプ62は、混合タンク63内の混合後のインキ組成物3を供給装置30に送出するためのものであり、フィルタ65はポンプ62と供給装置30との間に介在している。
【0051】
次に、インキ組成物3について説明する。なお、未使用のインキ組成物3bもインキ組成物3と同様の組成となっている。インキ組成物3は、透明な電離放射線樹脂組成物と光吸収粒子とを含むものである。電離放射線硬化型樹脂組成物としては、従来公知の視認性向上シートや視野角向上シート等に用いられる電離放射線硬化型樹脂組成物を用いることができる。例えば、アクリレート系の官能基を有するものを好適に使用することができ、具体的には、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマー又はプレポリマーを挙げることができる。なお、視認性向上シートの光透過部を構成する材料にもよるが、これらの樹脂のなかなら光透過部を構成する材料よりも屈折率の小さい樹脂を選択すればよい。
【0052】
また、上記樹脂組成物中には、反応性希釈剤を添加してもよく、このような反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマーを使用してもよく、具体的は、リメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
電離放射線硬化型樹脂組成物を紫外線硬化型樹脂組成物とするには、組成物中に光重合開始剤としてアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホソフィン等を混合して用いることができる。特に本発明では、オリゴマーとしてウレタンアクリレート、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を混合するのが好ましい。
【0054】
光吸収粒子としては、樹脂ビーズやガラスビーズに、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収できる光吸収粒子を使用してもよく、カーボンブラック、グラファイト、繊維状炭素、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等の着色剤を練り込んだものを使用することができる。着色剤の練り込み易さの観点からは、樹脂ビーズを用いることが好ましい。樹脂ビーズとしては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、塩ビビーズ等を好適に使用することができる。また、ウレタン架橋微粒子やシリコン系ビーズも好適に使用できる。これらの樹脂ビーズは、上記した電離放射線硬化型樹脂組成物の屈折率差が0.1程度のものを用いることが好ましい。また、着色剤を練り込む前の樹脂としては、透明な樹脂でも使用できるが、顔料または染料等で着色された樹脂を用いることが好ましいく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収するものであってよいが、好ましくは黒色に着色された樹脂ビーズが用いられる。
【0055】
着色剤としては、上記したもののなかでもカーボンブラックが好適に使用できる。樹脂ビーズへのカーボンブラックの練り込み量は、樹脂ビーズ1質量部に対してカーボンブラックを0.1〜0.7質量部程度であり、好ましくは0.15〜0.5質量部、より好ましくは0.2〜0.35質量部である。カーボンブラックの練り込み量が0.7質量部よりも多いと樹脂ビーズが割れやすくなる場合があり、一方、0.1質量部よりも少ないと、所望の黒色性を有する光吸収粒子を得られない場合がある。また、カーボンブラックは、平均粒子径が10〜500nmのものを好適に使用することができ、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等が使用できる。また、市販のものを使用することもでき、例えば、HCFシリーズ、MCFシリーズ、RCFシリーズ、LFFシリーズ(いずれも三菱化学株式会社製)、バルカンシリーズ(キャボット社製)、ケッチェンシリーズ(ライオン株式会社製)を好適に使用することができる。なお、ここでの平均粒子径とは、カーボンブラック粒子を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径を意味する。
【0056】
電離放射線硬化型樹脂組成物への光吸収粒子の分散性を向上させるために、光吸収粒子を表面処理しておくこともできる。表面処理としては、従来公知のシリカコーティングによる親水処理や、プラズマ等による表面改質が挙げられる。
【0057】
上記した各成分を含むインキ組成物3は、電離放射線硬化型樹脂組成物に、所定量の光吸収粒子を混合し、所望により重合開始剤等を添加することにより調製される。光吸収粒子の添加量は、インキ組成物の全質量に対して15〜35%の範囲とすることが好ましく、この範囲とすることにより、よりコントラストに優れるコントラスト向上シートを実現することができる。光吸収粒子の含有量が少なすぎると、光吸収部の光遮光性が不十分となる場合があり、光吸収粒子の含有量が多すぎると、樹脂ビーズどうしが接触し割れや欠けの問題が発生し易くなる。
【0058】
<コントラスト向上シートの製造方法>
次に、本発明によるコントラスト向上シートの製造方法について、図面を参照しながら説明する。図8は本実施形態に係るコントラスト向上シートの製造工程を模式的に示した図であり、図9は本実施形態に係る光透過部の形成工程を模式的に示した図であり、図10は本実施形態に係る粘着層および剥離層を有する基材を示した図であり、図11は本実施形態に係る掻取装置によるインク組成物の掻き取りの様子を模式的に示した図である。
【0059】
まず、基材2上に、層厚方向断面において複数の溝1bが並設された光透過部1を形成する(図8(a))。
【0060】
基材2は、光透過部1や後述する光吸収部4を形成するためのベースとなる層である。基材2としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスを用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、トリアセテートセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルロニトリルフィルム等を好適に使用できるが、これらの中でも、ポリエステル系フィルムが好ましく用いられる。ポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートの他、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0061】
この光透過部1の形成は、使用する樹脂の種類によって異なる。例えば、光透過部1を透明な熱可塑性樹脂を用いて形成する場合には、加熱した金型を熱可塑性樹脂に押圧する熱プレス法や射出成型法、金型内に熱可塑性樹脂モノマーを注入して重合・固化させるキャスティング法等によって、光透過部1を形成することができる。また、電離放射線硬化型樹脂、特に紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、当該樹脂を成形型内に注入して紫外線を照射して硬化させる、いわゆるUV法によって、光透過部1を形成することができる。これらの方法の中でも、本発明においては、量産性に優れるUV法が好適に使用できる。UV法によれば、金型ロールを用いて、光透過部1を連続的に製造することができる。
【0062】
具体的には、例えば、図9に示されるように、所定ピッチで光透過部1の形に対応した形の溝を有する金型ロール70と、ニップロール71との間に基材2を送り込む。図9中の矢印は、基材2を送り込む方向を表したものである。基材2の送り込みに合わせて、金型ロール70と基材2との間に供給装置72から例えば紫外線硬化型樹脂等を含む光透過部用組成物73の液滴を供給し続ける。供給装置72から基材2上に光透過部用組成物73を供給するとき、金型ロール70と基材2との間に、光透過部用組成物73が溜まった組成物溜まり74が形成されるようにする。この組成物溜まり74を形成することによって、光透過部用組成物73が基材2の幅方向に広がる。
【0063】
上記のようにして金型ロール70と基材2との間に供給された光透過部用組成物73は、金型ロール70とニップロール71との間の押圧力により、基材2と金型ロール70との間に充填される。その後、電離放射線照射装置75によって光透過部用組成物73に紫外線を照射し、光透過部用組成物73を硬化させて、光透過部1を形成する。光透過部1を形成した後、剥離ロール76を介して、金型ロール70から光透過部1を引き剥がす。
【0064】
金型ロール70に送り込まれる基材2は、図10に示されるように粘着層6および剥離層7を備えていてもよい。粘着層6は、コントラスト向上シートを表示装置の表示部に接着させるためのものである。粘着層6に用いられる粘着剤は光を透過するとともに、適切に光学シートを他に接着させることができれば、その材料は特に限定されるものではない。粘着剤としては、例えばアクリル系の共重合体を挙げることができる。
【0065】
剥離層7は、取扱時に粘着層6が他に接触しないようにするためのものであり、粘着層6上に形成されている。剥離層7としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等が挙げられる。
【0066】
なお、次のインキ組成物3の充填工程の前に、光透過部1の溝1bの表面に親水化処理を施しておくことが好ましい。溝1bの表面に親水化処理を施すことにより、溝1bへインキ組成物をより充填し易くなり、インキ充填率が向上する。親水化処理は、従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、エキシマランプ処理等のドライプロセスや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エタノールアミン等によるアルカリ処理等のウエットプロセスが挙げられる。これらの中でも、大気圧プラズマ処理が、製造効率の観点から好ましい。
【0067】
基材2上に光透過部1を形成した後、製造装置10を用いて、溝1b内にインキ組成物3を充填する(図8(b))。
【0068】
具体的には、まず、図1に示されるように、供給装置30および掻取装置40に対して、搬送系20によりシート状の光透過部1を基材2ごと移動させながら、光透過部1の表面1aに供給装置30からインキ組成物3を連続的に供給し、供給装置30の下流に位置する掻取装置40により光透過部1の表面1a上のインキ組成物3を掻き取る。これにより、溝1bにインキ組成物3が充填されるとともに、光透過部1の表面1aに存在する余剰のインキ組成物3が掻き取られる。
【0069】
ここで、インキ組成物3の供給は、第1の掻取ブレード41の上流側かつ第1の掻取ブレード41の直近にインキ組成物3からなるインキ溜まり3aが形成されるように行われる。具体的には、インキ溜まり3aは、供給装置30から比較的過剰にインキ組成物3を光透過部1の表面1aに供給することにより形成される。
【0070】
また、第1の掻取ブレード41によりインキ組成物3を掻き取ると、第1の掻取ブレード41には貫通孔41bが設けられているので、図11に示されるようにインキ溜まり3aを構成するインキ組成物3が貫通孔41bを介して第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42との間の空間Sに入り込む。そして、空間Sに入り込んだインキ組成物3は、第2の掻取ブレード42で掻き取られるとともに、堰48の吸引孔48aを介して吸引機構43により吸引される。本実施形態では、インキ組成物3の吸引は、光透過部1の幅方向の端部側から行われる。
【0071】
また、同時に、インキ溜まり3aの一部が、堰48の吸引孔48aを介して吸引機構43により吸引される。吸引孔48aから吸引された使用済みのインキ組成物3は、ポンプ61により、混合タンク63に送られる。
【0072】
混合タンク63に送られた使用済みのインキ組成物3は、混合タンク63にて、未使用のインキ組成物3bと混合され、その後、ポンプ62によりフィルタ65を介して供給装置30に送られる。そして、再び、供給装置30から光透過部1の表面1aに供給される。
【0073】
溝1bにインキ組成物3を充填した後、電離放射線を放射して、溝1b内のインキ組成物3を硬化させて、略台形の断面形状を有する光吸収部4を形成する(図8(c))。これにより、コントラスト向上シート5が作製される。インキ組成物3の硬化方法としては、通常の硬化方法、即ち、電子線又は紫外線の照射によって硬化することができる。例えば、電子線硬化の場合には、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速機から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線等が使用され、紫外線硬化の場合には超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
【0074】
インキ溜まりを形成すると、掻取ブレードに対するインキ組成物の接触量が多くなる。そして、インキ溜まりにおいて消費されなかったインキ組成物は滞留し、時間が経つにつれてインキ組成物の粘度が上昇してしまう傾向がある。このため、消費されなかったインキ組成物は掻取ブレード表面で、固形化してしまい、これが充填ムラおよびスジ不良の一因となると考えられる。これに対し、本実施形態によれば、インキ溜まり3aの一部を、貫通孔41bを介して空間Sに入り込ませるので、消費されなかったインキ組成物3を移動させることができる。また、この空間Sに入り込んだインキ組成物3を、吸引孔48aを介して吸引するので、この空間Sからインキ組成物3を除去することができる。これにより、第1の掻取ブレード41におけるインキ組成物3の固形化を抑制することができ、充填ムラおよびスジ不良を低減することができる。
【0075】
インキ組成物の粘度上昇は、インキ組成物の短寿命化引き起こすが、本実施形態によれば、空間Sに入り込んだインキ組成物3およびインキ溜まり3aの一部を吸引しているので、インキ組成物3の粘度上昇を抑制することができ、インキ組成物3の長寿命化を図ることができる。
【0076】
さらに、本実施形態によれば、以下の理由から、特にピッチスジ不良および黒スジ不良をさらに低減することができる。
【0077】
例えば、第2の掻取ブレードの先端が第1の掻取ブレードの先端よりも0.55mmを超えて突き出るように調整して、第1の掻取ブレードの先端が光透過部の表面から離間するように第1の掻取ブレードを配置し、かつ第2の掻取ブレードの先端が光透過部の表面に接触するように第2の掻取ブレードを配置した場合には、第1の掻取ブレードと光透過部の表面との間の隙間に、インキ組成物が滞留し、または詰まってしまい、インキ組成物の濃度ムラが形成され、これにより、光吸収部にピッチスジ不良が発生するおそれがある。
【0078】
また、第2の掻取ブレードの先端が第1の掻取ブレードの先端よりも0.25mm未満突き出るように調整して、第1の掻取ブレードの先端が光透過部の表面に接触するように第1の掻取ブレードを配置し、かつ第2の掻取ブレードの先端が光透過部の表面から離間するように第2の掻取ブレードを配置した場合には、第2の掻取ブレードによる掻き取り性が劣り、光透過部上にインキ組成物が残存し、黒スジ不良が発生するおそれがある。
【0079】
さらに、第2の掻取ブレードの先端が第1の掻取ブレードの先端よりも0.25mm以上0.55mm以下突き出るように調整した場合であっても、第1の掻取ブレードの先端が光透過部の表面に接触するように第1の掻取ブレードを配置し、かつ第2の掻取ブレードの先端が光透過部の表面に接触するように第2の掻取ブレードを配置した場合には、第1の掻取ブレードが光透過部の表面に押し込まれた状態となるので、第2の掻取ブレードによる掻き取り性が劣り、黒スジ不良が発生するおそれがある。
【0080】
これに対し、本実施形態のように、第2の掻取ブレード42の先端42aを第1の掻取ブレード41の先端41cよりも0.25mm〜0.55mm突き出るように調整し、第1の掻取ブレード41の先端41cが光透過部1の表面1aに接触するように第1の掻取ブレード41を配置し、かつ第2の掻取ブレード42の先端42aが光透過部1の表面1aから離間するように第2の掻取ブレード42を配置した場合には、第1の掻取ブレード41と光透過部1の表面1aとの間の隙間におけるインキ組成物3の滞留または詰まりを低減することができる。これにより、ピッチスジ不良をより低減することができる。また、第2の掻取ブレード42には当板50が取り付けられているので、光透過部1の移動による第2の掻取ブレード42の移動を抑制することができ、第2の掻取ブレード42による掻き取り性を向上させることができる。これにより、黒スジ不良をより低減することができる。
【0081】
<コントラスト向上シート>
上記のようにして得られたコントラスト向上シート5は、基材2と、基材2上に形成され、かつ複数の溝1bを有する光透過部1と、溝1b内に形成された光吸収部4とを備えている。
【0082】
光吸収部4は、光透過部1の屈折率と同じかまたは小さい屈折率を有する。光透過部1と光吸収部4との屈折率が上記のような関係となることにより、所定条件で光透過部1に入射した光源からの映像光を光吸収部4と光透過部1との境界面で適切に反射させ、観測者に明るい映像を提供することができる。また、観測者側からの外光の一部を吸収するため、コントラストも向上する。また、光透過部1と光吸収部4との境界面で反射せずに、光吸収部4の内側に入射した迷光が、光吸収部4中の光吸収材によって吸収される。また、所定角度で入射した観測者側からの外光を適切に吸収することができるため、コントラストを向上させることもできる。
【0083】
また、コントラスト向上シートを2層重ね合わせてもよく、その場合、各コントラスト向上シートで異なった構造となるようにしてもよい。例えば、1層目のコントラスト向上シートと2層目のコントラスト向上シートとで、光吸収部の幅やピッチ、深さ、形状を変えたり、光吸収部の厚み方向の向きを変えたり、映像光に対する光吸収部のバイアス角度(水平方向に対する光吸収部の傾斜角度)を変えたりすることができる。また、光吸収部を形成する材料(樹脂の種類や光吸収粒子の濃度)を変えることもできる。例えば、1層目は効率良く外光をカットし、コントラストの向上を重視した設計とし、2層目は反射を利用した正面輝度向上効果を重視した設計とするような、各層で作用効果を変えることが好ましい。
【0084】
本発明によるコントラスト向上シートは、従来の光学シートや視野角拡大部材に採用されている他の機能層を含んでいてもよい。具体的には、反射防止層、粘着層、電磁波遮蔽層、波長フィルタ層、防眩層、ハードコート層などを適宜組み合わせてもよい。これらの各機能層の積層順や積層数は、用途に応じて適宜決定することができる。
【0085】
本発明によるコントラスト向上シートは、例えば、表示装置の表示部上に配置することができる。具体的には、コントラスト向上シートは、例えば、表示装置用光学フィルタとして使用することができる。表示装置の表示部としては、例えばプラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電界放出ディスプレイ(FED)、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、プロジェクションテレビ等が挙げられる。
【0086】
<表示装置用光学フィルタおよび表示装置>
以下、本発明によるコントラスト向上シートを表示装置用光学フィルタとして表示装置の表示部に取り付けた例について説明する。図12は本実施形態に係るコントラスト向上シートを備えた表示装置の断面図である。図12に示される表示装置81は、上記した製造方法により製造されたコントラスト向上シート5を備えている。コントラスト向上シート5は、基材2が映像光源側となるように表示装置81の表示部82に接着層83を介して貼り付けられている。コントラスト向上シート5の前面側には、帯電防止層84、反射防止層85、防眩層86等が配置されている。なお、本実施の形態においては、コントラスト向上シート5の前面に帯電防止層84等が配置されているが、これらに限られず、電磁波、赤外線、またはネオン線を遮断する層を配置してもよい。
【0087】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図13は本実施形態に係るコントラスト向上シートの製造装置を概略構成図である。図14は図13のホルダの断面図であり、図15は図14で示されるスペーサの斜視図である。図16は本実施形態に係る他のスペーサの斜視図であり、図17は本実施形態に係る掻取装置によるインク組成物の掻き取りの様子を模式的に示した図である。なお、図13、図14および図17において、図1、図3および図11に付されている符号と同じ符号が付されているものは、図1、図3および図11に付されている符号に係る部材等と同じものを意味するものである。
【0088】
図13に示されるように、本実施形態のコントラスト向上シートの製造装置90は、図1に示される製造装置10とほぼ同様の構成となっているが、掻取装置100の構成が掻取装置40の構成とは若干異なっている。具体的には、図14に示されるように掻取装置100のホルダ101は、スペーサ49の代わりに、吸引孔102aを有するスペーサ102を備えており、空間Sに入り込んだインキ組成物3は吸引孔102aを介して吸引機構43により吸引される。本実施形態においては、空間Sに入り込んだインキ組成物3は吸引孔102aを介して吸引するので、第1の掻取ブレード41の幅は第2の掻取ブレード42の幅よりも短くなっていなくともよい。
【0089】
スペーサ102は、図15に示されるように櫛歯状に形成されている。すなわち、スペーサ102の吸引孔102aは凹状の孔となっている。この吸引孔102aは、スペーサ102の一方の面102bからこの面102bとは反対側の面102cまで貫通している。なお、吸引の際には、スペーサ102に第2の掻取ブレード42が当接するので、吸引孔102aの開口面は第2の掻取ブレード42により覆われる。
【0090】
また、スペーサ102の代わりに、図16に示されるスペーサ103を用いてもよい。スペーサ103は、スリット状、すなわち複数に分割された形状となっており、個々のスペーサ103間の隙間が吸引孔103aとなっている。
【0091】
そして、このような掻取装置100を備えた製造装置90を使用して、光透過部1の溝1bにインキ組成物3を充填する。具体的には、第1の実施形態と同様に、まず、図13に示すように、供給装置30および掻取装置100に対して、搬送系20によりシート状の光透過部1を基材2ごと移動させながら、光透過部1の表面1aに供給装置30からインキ組成物3を連続的に供給し、第1の掻取ブレード41の上流側かつ第1の掻取ブレード41の直近にインキ溜まり3aを形成しつつ、供給装置30の下流に位置する掻取装置100により光透過部1の表面1a上のインキ組成物3を掻き取る。
【0092】
また、供給装置30からのインキ組成物3の供給および掻取装置100によるインキ組成物3の掻き取りを行いながら、吸引機構43により空間Sに入り込んだインキ組成物3aを、図17に示されるように吸引孔102aを介して吸引する。なお、図16に示されるスペーサ103を用いた場合には、吸引孔103aを介してインキ組成物3を吸引する。本実施形態では、インキ組成物3の吸引は、第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42との間から行われる。また、同時に、吸引機構43によりインキ溜まり3aの一部を、吸引孔48aを介して吸引する。
【0093】
吸引機構43により吸引された使用済みのインキ組成物3は、第1の実施形態と同様に循環し、そして、再び、供給装置30から光透過部1の表面1aに供給される。
【0094】
本実施形態によれば、インキ溜まり3aの一部を、貫通孔41bを介して空間Sに入り込ませ、かつこの空間Sに入り込んだインキ組成物3を、吸引孔102a、103aを介して吸引により除去するので、インキ溜まり3aを構成するインキ組成物3を移動させることができる。これにより、第1の掻取ブレード41におけるインキ組成物3の固形化を抑制することができ、充填ムラおよびスジ不良を低減することができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。本実施例においては、上記実施の形態と同様の方法でコントラスト向上シートを作製し、コントラスト向上シートの外観観察を行った。
【0096】
(実施例1)
<掻取装置>
第1の掻取ブレードとしての金属製の厚さ200μmの第1のドクターブレードと、第2の掻取ブレードとしての金属製の厚さ200μmの第2のドクターブレードと、第1のドクターブレードおよび第2のドクターブレードを保持するホルダとを備える掻取装置を用意した。
【0097】
第1のドクターブレードの幅は1150mmであり、第2のドクターブレードの幅は1160mmであった。すなわち、第1のドクターブレードの幅は第2のドクターブレードの幅よりも、10mm短くなったものであった。また、第1のドクターブレードは、第1のドクターブレードの幅方向に75mm間隔で15箇所に貫通孔が設けられたものであった。
【0098】
このホルダは、ホルダ本体と、ホルダ本体の両端に設けられ、第1のドクターブレードより第1のドクターブレードの掻取面側に突き出た堰と、第1のドクターブレードと第2のドクターブレードとの間に配置されたスペーサと、第2のドクターブレードに取り付けられた当板とを備えるものであった。
【0099】
ホルダ本体は、光透過部の表面に対する第1のドクターブレードの先端部および第2のドクターブレードの先端部の角度がともに65°となるように第1のドクターブレードおよび第2のドクターブレードを保持していた。スペーサは0.05mmの厚さを有するものであった。すなわち、第1のドクターブレードと第2のドクターブレードとの間の間隔は0.05mmとなっていた。
【0100】
堰の底面には、第1のドクターブレードと第2のドクターブレードとの間の空間に連通した直径6mmの吸引孔が設けられていた。この吸引孔にはエア吸引クリーナが吸引ホースを介して接続されていた。
【0101】
<インキ組成物の調製>
光硬化型プレポリマーとして、エポキシアクリレートオリゴマーOxirane,2,2'-[(1-methylethylidene)bis(4,1-phenyleneoxymethylene)]bis-,homopolymer,2-propenoate20.0質量部と、反応性希釈モノマーとして、2−フェノキシエチル=アクリラート20.0質量部、α−アクリロイル−ω−フェノキシポリ(オキシエチレン)20.0質量部、及び2−{2−[2−(アクリロイルオキシ)(メチル)エトキシ](メチル)エトキシ}(メチル)エチル=アクリラート13.0質量部と、光吸収粒子として、平均粒径4.0μmのカーボンブラックを25%含有したアクリル架橋微粒子(ガンツ化成株式会社製)20.0質量部と、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)7質量部と、を混合し、均一化してインキ組成物を得た。
【0102】
このインキ組成物の25℃での粘度は、4000mPa・sであった。なお、本発明において、粘度は、JIS K-5400の回転粘度計法に基づいて測定した。具体的には、株式会社東京計器製のBL型粘度計、No.4ロータを使用し、25℃で12rpm、1分後の粘度計の指示値を測定し、測定した粘度計指示値に換算乗数(本条件では500)を乗じた値を粘度とした。
【0103】
なお、このインキ組成物の光吸収粒子を除いた組成物を厚さ10μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.547であった。
【0104】
<光透過部用組成物の調整>
ビスフェノールA―エチレンオキシド2モル付加物41質量部、イソホロンジイソシアネート14.0質量部を、およびウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液))0.02質量部を加え、80℃で5時間反応させ、その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート5質量部を加え、80℃で5時間反応させて得られたウレタンアクリレート系オリゴマーを、光硬化型プレポリマーとして用いた。このウレタンアクリレート系オリゴマー32、0質量部と、光硬化性モノマーとして、フェノキシエチルアクリレート(分子量192)10.0質量部、およびビスフェノールAのEO4モル付加物のジアクリレート(分子量512)30.0質量と、金型離型剤として、テトラデカノール−エチレンオキシド10モル付加物のリン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)0.03質量部と、テアリルアミンエチレンオキシド15モル付加物0.02質量部、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)3質量部と、を混合し、均一化して光透過部用組成物を得た。
【0105】
なお、この光透過部用組成物を厚さ100μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させ、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.550であった。
【0106】
<コントラスト向上シートの作製>
上記、光透過部用組成物をポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡績株式会社、A4300、厚さ100μm、幅1400mm)上に供給し、光透過部用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された光透過部を形成した。
【0107】
次いで、上記掻取装置を用いて、光透過部の溝にインキ組成物を充填した。具体的には、10m/分のライン速度で、光透過部を基材ごと移動させながら、ダイコーターのダイヘッドから、上記で得られたインキ組成物が光透過部の幅方向において均一に供給されるように、5L/分の供給速度で、光透過部の表面に連続的に供給し、その後、上記掻取装置を用いて、光透過部の表面のインキ組成物を掻き取った。
【0108】
インキ組成物の供給は、第1のドクターブレードの上流側かつ第1のドクターブレードの直近にインキ溜まりが形成されるように行われた。また、ダイヘッドからのインキ組成物の供給および第1および第2のドクターブレードによるインキ組成物の掻き取りを行いながら、堰に設けられた吸引孔を介して、エア吸引クリーナにより第1のドクターブレードと第2のドクターブレードとの間の空間に入り込んだインキ組成物を吸引するとともに、この吸引孔を介してインキ溜まりの一部を吸引した。そして、吸引された使用済みのインキ組成物を、ポンプにより混合タンクに送り、混合タンクにて、未使用のインキ組成物と混合した。そして、この混合後のインキ組成物を、ポンプによりフィルタを介してダイヘッドに送り、再び、ダイヘッドから光透過部の表面に供給した。
【0109】
光透過部の溝にインキ組成物を充填した後、インキ組成物に紫外線を照射して、インキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、実施例1のコントラスト向上シートを作製した。
【0110】
(実施例2)
実施例2においては、実施例1とは異なる掻取装置を用いて、コントラスト向上シートを作製した。
【0111】
<掻取装置>
実施例2で用いた掻取装置は、実施例1で用いた掻取装置とほぼ同様の構成となっていたが、スペーサに凹状の吸引孔が設けられていた。具体的にはスペーサは櫛歯状になっていた。また、第1のドクターブレードおよび第2のドクターブレードの幅は1160mmであり、第1のドクターブレードの幅は第2のドクターブレードの幅と同じであった。
【0112】
<コントラスト向上シートの作製>
まず、実施例1と同様に、実施例1で用いた光透過部用組成物をポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡績株式会社、A4300、厚さ100μm、幅1400mm)上に供給し、光透過部用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された、幅が1400mmの光透過部を形成した。
【0113】
次いで、実施例2の掻取装置を用いて、光透過部の溝に実施例1で用いたインキ組成物を充填した。具体的には、10m/分のライン速度で、光透過部を基材ごと移動させながら、ダイコーターのダイヘッドから、インキ組成物が光透過部の幅方向において均一に供給されるように、5L/分の供給速度で、光透過部の表面に連続的に供給し、その後、実施例2の掻取装置を用いて、光透過部の表面のインキ組成物を掻き取った。
【0114】
インキ組成物の供給は、第1のドクターブレードの上流側かつ第1のドクターブレードの直近にインキ溜まりが形成されるように行われた。また、ダイヘッドからのインキ組成物の供給および第1および第2のドクターブレードによるインキ組成物の掻き取りを行いながら、スペーサに設けられた吸引孔を介して、エア吸引クリーナにより第1のドクターブレードと第2のドクターブレードとの間に入り込んだインキ組成物を吸引するとともに、堰に設けられた吸引孔を介してエア吸引クリーナによりインキ溜まりの一部を吸引した。そして、吸引された使用済みのインキ組成物を、ポンプにより混合タンクに送り、混合タンクにて、未使用のインキ組成物と混合した。そして、この混合後のインキ組成物を、ポンプによりフィルタを介してダイヘッドに送り、再び、ダイヘッドから光透過部の表面に供給した。
【0115】
光透過部の溝にインキ組成物を充填した後、インキ組成物に紫外線を照射して、インキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、実施例2のコントラスト向上シートを作製した。
【0116】
(比較例1)
比較例1においては、実施例1および実施例2とは異なる掻取装置を用いて、コントラスト向上シートを作製した。
【0117】
<掻取装置>
比較例1で用いた掻取装置は、実施例1で用いた掻取装置とほぼ同様の構成となっていたが、この掻取装置のドクターブレードは、2枚ではなく、1枚であった。しかも、このドクターブレードには、貫通孔が設けられておらず、また堰やスペーサにも吸引孔が設けられていなかった。また、ドクターブレードの幅は1160mmであった。
【0118】
<コントラスト向上シートの作製>
まず、実施例1と同様に、実施例1で用いた光透過部用組成物をポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡績株式会社、A4300、厚さ100μm、幅1400mm)上に供給し、光透過部用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された、幅が1400mmの光透過部を形成した。
【0119】
次いで、比較例1の掻取装置を用いて、光透過部の溝に実施例1で用いたインキ組成物を充填した。具体的には、10m/分のライン速度で、光透過部を基材ごと移動させながら、ダイコーターのダイヘッドから、インキ組成物が光透過部の幅方向において均一に供給されるように、5L/分の供給速度で、光透過部の表面に連続的に供給し、その後、比較例1の掻取装置を用いて、光透過部の表面のインキ組成物を掻き取った。
【0120】
インキ組成物の供給は、ドクターブレードの上流側かつドクターブレードの直近にインキ溜まりが形成されるように行われた。また、ダイヘッドからのインキ組成物の供給およびドクターブレードによるインキ組成物の掻き取りを行った。なお、比較例1では、インキ組成物およびインキ溜まりの吸引は行わなかった。
【0121】
光透過部の溝にインキ組成物を充填した後、インキ組成物に紫外線を照射して、インキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、比較例1のコントラスト向上シートを作製した。
【0122】
(比較例2)
比較例2においては、実施例1および実施例2とは異なる掻取装置を用いて、コントラスト向上シートを作製した。
【0123】
<掻取装置>
比較例2で用いた掻取装置は、実施例1で用いた掻取装置とほぼ同様の構成となっていたが、第1のドクターブレードには貫通孔が設けられておらず、また堰やスペーサには吸引孔が設けられていなかった。また、第1のドクターブレードおよび第2のドクターブレードの幅は1160mmであり、第1のドクターブレードの幅は第2のドクターブレードの幅と同じであった。
【0124】
<コントラスト向上シートの作製>
まず、実施例1と同様に、実施例1で用いた光透過部用組成物をポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡績株式会社、A4300、厚さ100μm、幅1400mm)上に供給し、光透過部用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された、幅が1400mmの光透過部を形成した。
【0125】
次いで、比較例2の掻取装置を用いて、光透過部の溝に実施例1で用いたインキ組成物を充填した。具体的には、10m/分のライン速度で、光透過部を基材ごと移動させながら、ダイコーターのダイヘッドから、インキ組成物が光透過部の幅方向において均一に供給されるように、5L/分の供給速度で、光透過部の表面に連続的に供給し、その後、比較例2の掻取装置を用いて、光透過部の表面のインキ組成物を掻き取った。
【0126】
インキ組成物の供給は、第1のドクターブレードの上流側かつ第1のドクターブレードの直近にインキ溜まりが形成されるように行われた。また、ダイヘッドからのインキ組成物の供給および第1および第2のドクターブレードによるインキ組成物の掻き取りを行った。なお、比較例2では、インキ組成物およびインキ溜まりの吸引は行わなかった。
【0127】
光透過部の溝にインキ組成物を充填した後、インキ組成物に紫外線を照射して、インキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、比較例2のコントラスト向上シートを作製した。
【0128】
(比較例3)
比較例3においては、実施例1および実施例2とは異なる掻取装置を用いて、コントラスト向上シートを作製した。
【0129】
<掻取装置>
比較例3で用いた掻取装置は、実施例1で用いた掻取装置とほぼ同様の構成となっていたが、第1のドクターブレードには貫通孔が設けられておらず、またスペーサには吸引孔が設けられていなかった。また、第1のドクターブレードおよび第2のドクターブレードの幅は1160mmであり、第1のドクターブレードの幅は第2のドクターブレードの幅と同じであった。
【0130】
<コントラスト向上シートの作製>
まず、実施例1と同様に、実施例1で用いた光透過部用組成物をポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡績株式会社、A4300、厚さ100μm、幅1400mm)上に供給し、光透過部用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された、幅が1400mmの光透過部を形成した。
【0131】
次いで、比較例3の掻取装置を用いて、光透過部の溝に実施例1で用いたインキ組成物を充填した。具体的には、10m/分のライン速度で、光透過部を基材ごと移動させながら、ダイコーターのダイヘッドから、インキ組成物が光透過部の幅方向において均一に供給されるように、5L/分の供給速度で、光透過部の表面に連続的に供給し、その後、比較例3の掻取装置を用いて、光透過部の表面のインキ組成物を掻き取った。
【0132】
インキ組成物の供給は、第1のドクターブレードの上流側かつ第2のドクターブレードの直近にインキ溜まりが形成されるように行われた。また、ダイヘッドからのインキ組成物の供給および第1および第2のドクターブレードによるインキ組成物の掻き取りを行いながら、堰に設けられた吸引孔を介してエア吸引クリーナによりインキ溜まりの一部を吸引した。そして、吸引された使用済みのインキ組成物を、ポンプにより混合タンクに送り、混合タンクにて、未使用のインキ組成物と混合した。そして、この混合後のインキ組成物を、ポンプによりフィルタを介してダイヘッドに送り、再び、ダイヘッドから光透過部の表面に供給した。
【0133】
光透過部の溝にインキ組成物を充填した後、インキ組成物に紫外線を照射して、インキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、比較例3のコントラスト向上シートを作製した。
【0134】
外観観察
このようにして作製された実施例1、2および比較例1〜3のコントラスト向上シートの外観を観察して、充填ムラ、スジ不良の発生を確認した。なお、この評価の基準は以下の通りとした。
【0135】
(1)充填ムラ
○:充填ムラが確認されなかった。
△:充填ムラが若干観察されたが、実用上問題のない程度であった。
×:充填ムラが多数確認された。
【0136】
(2)スジ不良
○:スジ不良が確認されなかった。
△:スジ不良が若干確認されたが、実用上問題のない程度であった。
×:スジ不良が多数確認された。
【0137】
以下、結果について述べる。
【表1】
表1に示されるように比較例1に係るコントラスト向上シートは充填ムラおよびスジ不良ともに抑制できなかった。また、比較例2および3に係るコントラスト向上シートにおいては、充填ムラおよびスジ不良が若干観察された。これに対し、実施例1および2に係るコントラスト向上シートには、充填ムラおよびスジ不良が観察されず、良好な状態であった。
【0138】
これらの結果から、第1のドクターブレードに貫通孔を形成し、かつ貫通孔を介して第1のドクターブレードと第2のドクターブレードに入り込むインキ組成物を吸引した場合には、充填ムラおよびスジ不良が低減できることが確認された。
【符号の説明】
【0139】
1…光透過部、1a…表面、1b…溝、2…基材、3…インキ組成物、3a…インキ溜まり、4…光吸収部、5…コントラスト向上シート、10、90…製造装置、30…供給装置、40、100…掻取装置、41…第1の掻取ブレード、41a…先端部、41b…貫通孔、42…第2の掻取ブレード、43…吸引機構、44、101…ホルダ、47…ホルダ本体、48…堰、48a、102a、103a…吸引孔、49、102、103…スペーサ、60…インキ循環系。
【技術分野】
【0001】
本発明は、掻取装置、これを備えたコントラスト向上シートの製造装置、およびコントラスト向上シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では、通常、観察者がどのような位置から見ても良好な画像が得られるように、視野角が広いことが好まれる。一方、例えば通勤電車の中で仕事をする場合やATM等の公共の場に設置された液晶表示装置では、周りの人から画面を覗かれては困ることがあり、このような場合には液晶表示装置の観察者のみに見え、他人からは見えないようにプライバシーを保護するための覗き見防止機能が求められている。また、カーナビゲーションシステム等の車載型の液晶表示装置においては、夜間などに液晶表示装置の画面が窓ガラスに映り込み、視界を遮る現象がおこるため、映り込み防止機能が求められており、光線出光角度の制御が望まれている。
【0003】
このような要求に対して、例えば、特開2006−119365号公報(特許文献1)には、光透過層と遮光層とを交互に並べた構造であるルーバータイプの光学シートが提案されており、遮光層として、光透過層を構成する材料にカーボンブラックやカーボンファイバー等の充填材を混合したものを用いることが開示されている。
【0004】
一方、上記のようなルーバー型の光学シートは、斜め方向の映像光を単純にカットするものであるため、表示装置の種類によっては、観測者に到達させるべき映像光の拡散光源を減少させてしまうことにもなるため、表示画面の輝度が低下する場合があった。
【0005】
上記の問題を解消するため、外光を遮光してコントラストを向上させ、かつ二重像の発生も減少させることができるコントラスト向上シートを設置することが提案されている。このようなコントラスト向上シートとして種々の構造のものが提案されており、例えば、表面に複数の溝が並設された光透過部と、溝に光透過部よりも屈折率の低い材料とカーボン顔料等とを充填させて形成された光吸収部とを有するものが提案されている(例えば、特開2006−85050号公報等:特許文献2)。
【0006】
そして、コントラスト向上シートの製造において、電離放射線硬化型樹脂等のレンズ材料に着色樹脂ビーズを混合したインキ組成物を光透過部の溝に充填し、電離放射線を照射して硬化させて光吸収部を形成することが行われている(例えば、国際出願公開公報WO2006/090784:特許文献3)。
【0007】
インキ組成物の充填は、例えば、表面に複数の溝が並設されたシート状の光透過部を移動させながら、ドクターブレードの上流側よりインキ組成物を光透過部の表面に供給し、ドクターブレードの上流側かつドクターブレードの直近にインキ溜まりを形成しつつ、1枚のドクターブレードで光透過部の表面上のインキ組成物を掻き取ることにより行うことができる。
【0008】
しかしながら、このような方法により、インキ組成物を充填すると、帯状の充填ムラやスジ不良等が発生しやすい。コントラスト向上シートの外観品質は、画質に直接結び付くため、高い品質が要求される。このため、上記したような充填ムラやスジ不良を極力低減することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−119365号公報
【特許文献2】特開2006−85050号公報
【特許文献3】国際出願公開公報WO2006/090784
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、スジ不良および充填ムラが低減したコントラスト向上シートを得ることができる掻取装置、コントラスト向上シートの製造装置およびコントラスト向上シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、充填ムラおよびスジ不良を低減するため鋭意研究を重ねた結果、第1の掻取ブレードと、第1の掻取ブレードより下流側に配置された第2の掻取ブレードとを用い、かつ第1の掻取ブレードに付着して、固形化するインキ組成物を抑制した場合には、充填ムラおよびスジ不良を低減することができることを見出した。ここで、本明細書においては、「スジ不良」とは、白スジ、ピッチスジ不良および黒スジ不良の全てを含む意味である。「白スジ」とは、溝にインキ組成物が確実に充填されておらず、光吸収部が一部において凹んでいるものを意味する。「ピッチスジ不良」とは、光吸収部が一部において凹んでおり、そしてこの凹みが線状になっているものを意味する。「黒スジ不良」とは、インキ組成物の掻き取り後において光透過部上にインキ組成物が残存しており、そしてそれが線状または点状になっているものを意味する。なお、黒スジ不良は「カブリ」とも呼ばれることもある。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
【0012】
本発明の一の態様によれば、表面に複数の溝が並設された光透過部と、前記光透過部の前記溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造に用いられる掻取装置であって、表面に複数の溝が並設された光透過部の前記表面から前記表面上に供給されたインキ組成物を掻き取るための、先端部に貫通孔を有する第1の掻取ブレードと、前記第1の掻取ブレードと所定の間隔を置いて配置され、前記第1の掻取ブレードによる掻き取り後に前記光透過部の前記表面に残る前記インキ組成物をさらに掻き取るための第2の掻取ブレードと、前記貫通孔を介して前記第1の掻取ブレードと前記第2の掻取ブレードとの間の空間に入り込んだ前記インキ組成物を吸引する吸引機構とを備えることを特徴とする、掻取装置が提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、表面に複数の溝が並設された光透過部と、前記光透過部の前記溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造装置であって、上記の掻取装置を備えることを特徴とする、コントラスト向上シートの製造装置が提供される。
【0014】
本発明の他の態様によれば、表面に複数の溝が並設された光透過部と、前記光透過部の前記溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造方法であって、表面に複数の溝が並設されたシート状の光透過部を移動させながら、前記光透過部の前記表面にインキ組成物を連続的に供給し、前記インキ組成物の供給位置よりも下流側に配置された第1の掻取ブレードの上流側かつ前記第1の掻取ブレードの直近にインキ組成物からなるインキ溜まりを形成しつつ、前記光透過部の表面上の前記インキ組成物を、前記第1の掻取ブレードおよび前記第1の掻取ブレードよりも下流側に前記第1の掻取ブレードと所定の間隔を置いて配置された第2の掻取ブレードにより掻き取る充填工程とを備え、前記第1の掻取ブレードが、前記第1の掻取ブレードの先端部に貫通孔を有し、前記充填工程が、前記貫通孔を介して前記第1の掻取ブレードと前記第2の掻取ブレードとの間の空間に入り込んだ前記インキ組成物を吸引しながら行われることを特徴とする、コントラスト向上シートの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一の態様の掻取装置、本発明の他の態様のコントラスト向上シートの製造装置、および本発明の他の態様のコントラスト向上シート製造方法によれば、充填ムラおよびスジ不良を低減させたコントラスト向上シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態に係るコントラスト向上シートの製造装置を概略構成図である。
【図2】図1の掻取装置周辺を上流側から見た図である。
【図3】図1のホルダの断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る第1の掻取ブレードと第2の掻取ブレードの正面図である。
【図5】図1のホルダの側面図である。
【図6】第1の実施の形態に係る他のホルダの側面図である。
【図7】第1の実施形態に係るホルダの内側隅部を模式的示した図である。
【図8】第1の実施形態に係るコントラスト向上シートの製造工程を模式的に示した図である。
【図9】第1の実施形態に係る光透過部の形成工程を模式的に示した図である。
【図10】第1の実施形態に係る粘着層および剥離層を有する基材を示した図である。
【図11】第1の実施形態に係る掻取装置によるインク組成物の掻き取りの様子を模式的に示した図である。
【図12】第1の実施形態に係るコントラスト向上シートを備えた表示装置の断面図である。
【図13】第2の実施形態に係るコントラスト向上シートの製造装置を概略構成図である。
【図14】図13のホルダの断面図である。
【図15】図14で示されるスペーサの斜視図である。
【図16】第2の実施形態に係る他のスペーサの斜視図である。
【図17】第2の実施形態に係る掻取装置によるインク組成物の掻き取りの様子を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
<掻取装置およびコントラスト向上シートの製造装置>
まず、本発明による掻取装置およびコントラスト向上シートの製造装置について、説明する。図1は本実施形態に係るコントラスト向上シートの製造装置を概略構成図であり、図2は図1の掻取装置周辺を上流側から見た図であり、図3は図1のホルダの断面図である。図4は本実施形態に係る第1の掻取ブレードと第2の掻取ブレードの正面図であり、図5は図1のホルダの側面図である。図6は本実施の形態に係る他のホルダの側面図であり、図7は本実施形態に係るホルダの内側隅部を模式的示した図である。なお、図1〜3、5、6中の矢印Aは光透過部の移動方向を表すものであり、図1中の矢印Bはインキ組成物の循環方向を表すものである。
【0018】
図1に示されるコントラスト向上シートの製造装置10は、表面1aに溝1bが並設された光透過部1の溝1bにインキ組成物3を充填させるためのものであり、主に、搬送系20と、供給装置30と、掻取装置40と、インキ循環系60とを備えている。
【0019】
図1に示される光透過部1は、基材2上に形成されており、溝1bは基材2側に向けて先細る略台形状となっている。溝1bは、略台形状に限られず、例えば、略V字状または略矩形状に形成されていてもよい。また、溝1bは光透過部1の長手方向(光透過部1の幅方向と直交する方向)に沿って延在している。光透過部1全体の幅は、500〜1500mmとすることが可能である。
【0020】
搬送系20は、光透過部1を基材2ごと一方方向に搬送するためのものであり、搬送ロール等から構成されている。搬送系20のライン速度(搬送速度)は、インキ組成物3の供給速度にもよるが、1〜50m/分であることが好ましい。
【0021】
供給装置30は、インキ組成物3を光透過部1の表面1aに供給するためのものである。供給装置30は、光透過部1の幅方向においてインキ組成物3を均一に供給できるものであることが好ましい。供給装置30によるインキ組成物3の供給速度は、0.5〜10L/分であることが好ましい。
【0022】
供給装置30としては、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、またはナイフコーターが挙げられるが、これらの中でも、光透過部1の幅方向においてインキ組成物3を光透過部1の表面1aに均一に供給できるダイコーターが好ましい。
【0023】
掻取装置40は、供給装置30によるインキ組成物3の供給位置よりも下流側に配置されている。掻取装置40は、図3に示される光透過部1の表面1a上に供給されたインキ組成物3を掻き取る第1の掻取ブレード41および第1の掻取ブレード41による掻き取り後に光透過部1の表面1aに残るインキ組成物3をさらに掻き取る第2の掻取ブレード42と、図1に示される、インキ組成物3を吸引する吸引機構43を少なくとも備えている。本実施形態では、その他、図1および図3に示されるように、第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42を保持するホルダ44を備えている。
【0024】
第1の掻取ブレード41の先端部41aには、図3および図4に示されるように貫通孔41bが設けられている。図4に示される貫通孔41bは、第1の掻取ブレード41の幅方向に沿って所定の間隔を置いて複数設けられている。第1の掻取ブレード41に貫通孔41bが設けられることにより、インキ組成物3からなる後述するインキ溜まり3a(図2参照)の一部を、貫通孔41bを介して、図3に示される、第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42との間の空間Sに入り込ませることができる。
【0025】
図4に示される貫通孔41bは等間隔に設けられているが、第1の掻取ブレード41の幅方向において第1の掻取ブレード41の中央部から端部に向けて貫通孔41bの間隔が広くなっていてもよい。また、図4に示される貫通孔41bは円形状となっているが、貫通孔41bの形状は、特に限定されず、円形状の他、例えば、楕円形状、四角状となっていてもよい。貫通孔41bは、3つ以上設けられていることが好ましい。
【0026】
貫通孔41bが円形状の場合、貫通孔41bの直径は1〜10mmであることが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、貫通孔41bの直径が1mm未満であると、インキ組成物3が十分に貫通孔41bから空間Sに供給されないおそれがあるからであり、また貫通孔41bの直径が10mmを超えると、第1の掻取ブレード41の強度が低下して、掻取不足もしくは第1の掻取ブレード41が破損するおそれがあるからである。
【0027】
第2の掻取ブレード42は、図3に示されるように第1の掻取ブレード41よりも光透過部1の移動方向に対して下流側に配置されている。また、第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42は、溝1bの延在方向とほぼ直交するように配置されている。
【0028】
第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42は薄板状のものであり、第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42の厚さは約200μm程度とすることができる。第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42としては例えばドクターブレード等を用いることができる。
【0029】
第1の掻取ブレード41の幅および第2の掻取ブレード42の幅は用いる基材2の幅により適宜決定され、例えば、第1の掻取ブレード41の幅および第2の掻取ブレード42の幅は、基材2の幅から50〜300mm短いことが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、第1の掻取ブレード41の幅および第2の掻取ブレード42の幅が基材2の幅よりも50mm未満短いと、インキ組成物3が基材1の幅方向両側から漏れるおそれがあり、また第1の掻取ブレード41の幅および第2の掻取ブレード42の幅が基材2の幅よりも300mmを超えて短いと、基材2のロスが大きくなり、不経済となるおそれがあるからである。
【0030】
図4に示される第1の掻取ブレード41は、第1の掻取ブレード41の幅が、第2の掻取ブレード42の幅よりも短くなっている。具体的には、例えば、第1の掻取ブレード41の幅が、第2の掻取ブレード42の幅よりも5〜30mm短くなっていることが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、第1の掻取ブレード41の幅が、第2の掻取ブレード42の幅よりも5mm未満短いと、後述する堰48に設けられた吸引孔48aから、空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引し難くなるおそれがあるからである。また、第1の掻取ブレード41の幅が、第2の掻取ブレードの幅よりも30mmを超えて短いと、掻取装置40によるインキ組成物3の掻き取り性が劣り、充填ムラやスジ不良が発生するおそれがある。
【0031】
図3に示されるように、第1の掻取ブレード41は、第1の掻取ブレード41の先端41cが光透過部1の表面1aに接触するように配置されており、第2の掻取ブレード42は、第2の掻取ブレード42の先端42aが光透過部1の表面1aから離間するようにホルダ44に保持されていることが好ましい。
【0032】
第2の掻取ブレード42の先端42aは第1の掻取ブレード41の先端41cに対して0.25mm〜0.55mm突き出していることが好ましい。ここで、第2の掻取ブレード42の先端42aが、第1の掻取ブレード41の先端41cよりも0.25mm〜0.55mm突き出しているとは、図3に示される突き出し長さL1が0.25mm〜0.55mmであることを意味する。
【0033】
図3に示される第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42との間の間隔dは、0.05〜2mmであることが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、この間隔dが0.05mm未満であると、第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42が重なってしまい、インキ組成物3の掻き取りが不十分となるおそれがある。またこの間隔dが2mmを超えると、第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42の間にインキ組成物3が詰まってしまい、ピッチスジの原因となるおそれがあるからである。なお、間隔dをこの数値範囲にするためには、第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42との間に、厚さ0.05〜2mmの後述するスペーサ49を配置すればよい。
【0034】
図3に示される、光透過部1の表面1aに対する第1の掻取ブレード41の先端部41aおよび第2の掻取ブレード42の先端部42bの角度α、βは、40°〜70°であることが好ましく、50°〜65°であることがより好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、角度α、βが40°未満であると、インキ組成物3の掻き取りが不十分となるおそれがあるからであり、また角度α、βが70°を超えると、第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42による掻き取り効率は向上するものの、インキ組成物3に接触する第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42の面積が小さくなるので、黒スジ不良が発生するおそれがあるからである。
【0035】
吸引機構43は、貫通孔41bを介して空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引するためのものである。吸引機構43は、図1に示されるように、エア吸引クリーナ等の吸引機45、および一端が吸引機45に接続された吸引ホース46を備えている。吸引ホース46の直径は、特に限定されないが、約10〜15mmとすることが可能である。
【0036】
吸引機構43によるインキ組成物3の吸引は、ホルダ44に設けられ、第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42との間の空間Sと連通した吸引孔を介して行われることが好ましい。このような吸引孔を介して行われることにより、空間Sが狭い場合であっても、確実にこの空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引することができる。
【0037】
以下、ホルダ44に、空間Sと連通した吸引孔を設けた例について説明する。なお、本発明においては、空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引することができれば、インキ組成物3の吸引はホルダ44に設けられた吸引孔を介さなくてもよい。具体的には、例えば、空間Sに直接ノズル等を配置して、空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引することも可能である。
【0038】
ホルダ44は、第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42を保持するホルダ本体47と、ホルダ本体47の両端部に設けられた堰48とを少なくとも備えている(図3および図5参照)。本実施形態では、ホルダ44は、その他、スペーサ49および当板50を備えている。
【0039】
ホルダ本体47は第1の掻取ブレード41および第2の掻取ブレード42を挟持するものである。堰48は、第1の掻取ブレード41の上流側かつ第1の掻取ブレード41の直近に形成された、インキ組成物3からなるインキ溜まり3a(図2参照)を保持するためのものである。堰48は、図7に示されるように、第1の掻取ブレード41よりも第1の掻取ブレードの掻取面41d側、すなわち上流側に突き出ている。
【0040】
堰48には、図5および図7に示されるように、空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引するための吸引孔48aが設けられている。ここで、本実施形態では、第1掻取ブレード41の幅が第2の掻取ブレード42の幅が短くなっているので、空間Sが第1の掻取ブレード41の掻取面41d側の空間と連通している。したがって、吸引孔48aから吸引を行うと、空間Sに入り込んだインキ組成物が図7中の矢印Cのように移動して吸引孔48aから吸引されるとともに、第1の掻取ブレード41の上流側かつ直近に形成されるインキ溜まり3aの一部が図7中の矢印Dのように移動して吸引孔48aから吸引される。すなわち、吸引孔48aは、インキ溜まり3aの一部を吸引するための吸引孔としても機能する。
【0041】
図5および図7に示される吸引孔48aは、空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引するための役割と、インキ溜まり3aの一部を吸引するための役割とを兼ね備えているが、堰48に、空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引するための吸引孔と、インキ溜まり3aの一部を吸引するための吸引孔とを別々に設けてもよい。例えば、図6に示されるように、空間Sに入り込んだインキ組成物3を吸引するための吸引孔48bを、堰48における第1のドクターブレード41と第2のドクターブレード42との間の位置に設け、吸引孔48bとは別に、インキ溜まり3aの一部を吸引するための吸引孔48cを堰48における第1の掻取ブレード41の上流側の位置に設けてもよい。この場合、第1の掻取ブレード41の幅は、第2の掻取ブレード42の幅と同じであってもよい。
【0042】
図5および図6に示される吸引孔48a〜48cの一端は、堰48の底面48dに位置していることが好ましい。吸引孔48a〜48cの他端は堰48の外側側面48eに位置している。外側側面48eおいて吸引孔48a〜cは吸引ホース46に接続されている。
【0043】
図5および図6に示されるように、吸引孔48a〜48cの一端が底面48dに形成されている場合には、堰48は、空間Sに入り込んだインキ組成物3およびインキ溜まり3aの一部を吸引可能なように堰部48の底面48dと光透過部1の表面1aとの間に若干隙間を有するよう配置されることが好ましい。
【0044】
吸引孔48a〜48cの直径は、10〜16mmであることが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、この直径が10mm未満であると、インキ組成物3を吸引するのに多大な時間を要するからであり、またこの直径が16mmを超えると、過剰にインキ組成物3を吸引してしまうからである。
【0045】
当板50は、図3に示されるように第2の掻取ブレード42における第1の掻取ブレード41側の面(掻取面)とは反対側の面に取り付けられている。当板50を構成する材料は、特に限定されないが、例えばステンレス鋼等を用いることができる。当板50の厚さは、150〜1000μmであることが好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、当板50の厚さが150μm未満であると、当板54の剛性が不十分となり黒スジが発生しやすくなるおそれあるからであり、また当板50の厚さが1000μmを超えると、当板50の剛性が必要以上となり、第2の掻取ブレード42のしなりを利用することができなくなり、インキ組成物3の充填率が低下するおそれがあるからである。
【0046】
当板50は、第2の掻取ブレード42における当板50により覆われていない部分の縦方向の長さ、すなわち図3に示される当板50の下端50aから第2の掻取ブレード42の先端42aまでの長さL2が1〜10mmとなるように配置されていることが好ましく、さらに3〜7mmとなるように配置されていることがより好ましい。この数値範囲が好ましいとしたのは、長さL2が1mm未満であると、当板50による剛性向上により第2の掻取ブレード42のしなりを利用することができなくなるため、インキ組成物3の充填率が低下するおそれがあるからであり、また長さL2が10mmを超えると、当板50の剛性が不十分となり黒スジが発生しやすくなるおそれがあるからである。
【0047】
インキ循環系60は、吸引されたインキ組成物3を回収して、再び供給装置30にインキ組成物3を供給するためのものである。
【0048】
インキ循環系60は、図1に示されるように、ダイアフラムポンプ等のポンプ61、62、混合タンク63、未使用インキ組成物貯留タンク64およびフィルタ65等を備えている。ポンプ61は、吸引機構43で吸引されたインキ組成物3を搬送し、混合タンク63に送出するためのものであり、吸引機構43の後段に配置されている。混合タンク63は、回収された使用済みのインキ組成物3と、未使用インキ組成物貯留タンク64に貯留されている未使用のインキ組成物3bとを混合するためのものである。
【0049】
混合タンク63においては、使用済みのインキ組成物3と、未使用のインキ組成物3bとは、混合比が1:4〜4:1となるように混合されることが好ましい。また、混合タンク63においては、混合後のインキ組成物3の粘度が好ましくは2500〜5000mPa・sとなるように、より好ましくは3000〜4000mPa・sとなるようにインキ組成物3の粘度が調整される。この数値範囲が好ましいとしたのは、インキ組成物3の粘度が2500mPa・s未満であると、溝1bにインキ組成物3が充填させることが困難となるおそれがあり、またインキ組成物3の粘度が5000mPa・sを超えると、インキ溜まり3aの一部を吸引することが困難となるおそれがある。
【0050】
ポンプ62は、混合タンク63内の混合後のインキ組成物3を供給装置30に送出するためのものであり、フィルタ65はポンプ62と供給装置30との間に介在している。
【0051】
次に、インキ組成物3について説明する。なお、未使用のインキ組成物3bもインキ組成物3と同様の組成となっている。インキ組成物3は、透明な電離放射線樹脂組成物と光吸収粒子とを含むものである。電離放射線硬化型樹脂組成物としては、従来公知の視認性向上シートや視野角向上シート等に用いられる電離放射線硬化型樹脂組成物を用いることができる。例えば、アクリレート系の官能基を有するものを好適に使用することができ、具体的には、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジェン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アルリレート等のオリゴマー又はプレポリマーを挙げることができる。なお、視認性向上シートの光透過部を構成する材料にもよるが、これらの樹脂のなかなら光透過部を構成する材料よりも屈折率の小さい樹脂を選択すればよい。
【0052】
また、上記樹脂組成物中には、反応性希釈剤を添加してもよく、このような反応性希釈剤としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマーを使用してもよく、具体的は、リメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
電離放射線硬化型樹脂組成物を紫外線硬化型樹脂組成物とするには、組成物中に光重合開始剤としてアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホソフィン等を混合して用いることができる。特に本発明では、オリゴマーとしてウレタンアクリレート、モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を混合するのが好ましい。
【0054】
光吸収粒子としては、樹脂ビーズやガラスビーズに、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収できる光吸収粒子を使用してもよく、カーボンブラック、グラファイト、繊維状炭素、黒色酸化鉄等の金属塩、染料、顔料等の着色剤を練り込んだものを使用することができる。着色剤の練り込み易さの観点からは、樹脂ビーズを用いることが好ましい。樹脂ビーズとしては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、塩ビビーズ等を好適に使用することができる。また、ウレタン架橋微粒子やシリコン系ビーズも好適に使用できる。これらの樹脂ビーズは、上記した電離放射線硬化型樹脂組成物の屈折率差が0.1程度のものを用いることが好ましい。また、着色剤を練り込む前の樹脂としては、透明な樹脂でも使用できるが、顔料または染料等で着色された樹脂を用いることが好ましいく、映像光の特性に合わせて特定の波長を選択的に吸収するものであってよいが、好ましくは黒色に着色された樹脂ビーズが用いられる。
【0055】
着色剤としては、上記したもののなかでもカーボンブラックが好適に使用できる。樹脂ビーズへのカーボンブラックの練り込み量は、樹脂ビーズ1質量部に対してカーボンブラックを0.1〜0.7質量部程度であり、好ましくは0.15〜0.5質量部、より好ましくは0.2〜0.35質量部である。カーボンブラックの練り込み量が0.7質量部よりも多いと樹脂ビーズが割れやすくなる場合があり、一方、0.1質量部よりも少ないと、所望の黒色性を有する光吸収粒子を得られない場合がある。また、カーボンブラックは、平均粒子径が10〜500nmのものを好適に使用することができ、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、カーボンナノチューブ、カーボンファイバー等が使用できる。また、市販のものを使用することもでき、例えば、HCFシリーズ、MCFシリーズ、RCFシリーズ、LFFシリーズ(いずれも三菱化学株式会社製)、バルカンシリーズ(キャボット社製)、ケッチェンシリーズ(ライオン株式会社製)を好適に使用することができる。なお、ここでの平均粒子径とは、カーボンブラック粒子を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均径を意味する。
【0056】
電離放射線硬化型樹脂組成物への光吸収粒子の分散性を向上させるために、光吸収粒子を表面処理しておくこともできる。表面処理としては、従来公知のシリカコーティングによる親水処理や、プラズマ等による表面改質が挙げられる。
【0057】
上記した各成分を含むインキ組成物3は、電離放射線硬化型樹脂組成物に、所定量の光吸収粒子を混合し、所望により重合開始剤等を添加することにより調製される。光吸収粒子の添加量は、インキ組成物の全質量に対して15〜35%の範囲とすることが好ましく、この範囲とすることにより、よりコントラストに優れるコントラスト向上シートを実現することができる。光吸収粒子の含有量が少なすぎると、光吸収部の光遮光性が不十分となる場合があり、光吸収粒子の含有量が多すぎると、樹脂ビーズどうしが接触し割れや欠けの問題が発生し易くなる。
【0058】
<コントラスト向上シートの製造方法>
次に、本発明によるコントラスト向上シートの製造方法について、図面を参照しながら説明する。図8は本実施形態に係るコントラスト向上シートの製造工程を模式的に示した図であり、図9は本実施形態に係る光透過部の形成工程を模式的に示した図であり、図10は本実施形態に係る粘着層および剥離層を有する基材を示した図であり、図11は本実施形態に係る掻取装置によるインク組成物の掻き取りの様子を模式的に示した図である。
【0059】
まず、基材2上に、層厚方向断面において複数の溝1bが並設された光透過部1を形成する(図8(a))。
【0060】
基材2は、光透過部1や後述する光吸収部4を形成するためのベースとなる層である。基材2としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスを用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、トリアセテートセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルロニトリルフィルム等を好適に使用できるが、これらの中でも、ポリエステル系フィルムが好ましく用いられる。ポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートの他、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0061】
この光透過部1の形成は、使用する樹脂の種類によって異なる。例えば、光透過部1を透明な熱可塑性樹脂を用いて形成する場合には、加熱した金型を熱可塑性樹脂に押圧する熱プレス法や射出成型法、金型内に熱可塑性樹脂モノマーを注入して重合・固化させるキャスティング法等によって、光透過部1を形成することができる。また、電離放射線硬化型樹脂、特に紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、当該樹脂を成形型内に注入して紫外線を照射して硬化させる、いわゆるUV法によって、光透過部1を形成することができる。これらの方法の中でも、本発明においては、量産性に優れるUV法が好適に使用できる。UV法によれば、金型ロールを用いて、光透過部1を連続的に製造することができる。
【0062】
具体的には、例えば、図9に示されるように、所定ピッチで光透過部1の形に対応した形の溝を有する金型ロール70と、ニップロール71との間に基材2を送り込む。図9中の矢印は、基材2を送り込む方向を表したものである。基材2の送り込みに合わせて、金型ロール70と基材2との間に供給装置72から例えば紫外線硬化型樹脂等を含む光透過部用組成物73の液滴を供給し続ける。供給装置72から基材2上に光透過部用組成物73を供給するとき、金型ロール70と基材2との間に、光透過部用組成物73が溜まった組成物溜まり74が形成されるようにする。この組成物溜まり74を形成することによって、光透過部用組成物73が基材2の幅方向に広がる。
【0063】
上記のようにして金型ロール70と基材2との間に供給された光透過部用組成物73は、金型ロール70とニップロール71との間の押圧力により、基材2と金型ロール70との間に充填される。その後、電離放射線照射装置75によって光透過部用組成物73に紫外線を照射し、光透過部用組成物73を硬化させて、光透過部1を形成する。光透過部1を形成した後、剥離ロール76を介して、金型ロール70から光透過部1を引き剥がす。
【0064】
金型ロール70に送り込まれる基材2は、図10に示されるように粘着層6および剥離層7を備えていてもよい。粘着層6は、コントラスト向上シートを表示装置の表示部に接着させるためのものである。粘着層6に用いられる粘着剤は光を透過するとともに、適切に光学シートを他に接着させることができれば、その材料は特に限定されるものではない。粘着剤としては、例えばアクリル系の共重合体を挙げることができる。
【0065】
剥離層7は、取扱時に粘着層6が他に接触しないようにするためのものであり、粘着層6上に形成されている。剥離層7としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等が挙げられる。
【0066】
なお、次のインキ組成物3の充填工程の前に、光透過部1の溝1bの表面に親水化処理を施しておくことが好ましい。溝1bの表面に親水化処理を施すことにより、溝1bへインキ組成物をより充填し易くなり、インキ充填率が向上する。親水化処理は、従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、エキシマランプ処理等のドライプロセスや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、エタノールアミン等によるアルカリ処理等のウエットプロセスが挙げられる。これらの中でも、大気圧プラズマ処理が、製造効率の観点から好ましい。
【0067】
基材2上に光透過部1を形成した後、製造装置10を用いて、溝1b内にインキ組成物3を充填する(図8(b))。
【0068】
具体的には、まず、図1に示されるように、供給装置30および掻取装置40に対して、搬送系20によりシート状の光透過部1を基材2ごと移動させながら、光透過部1の表面1aに供給装置30からインキ組成物3を連続的に供給し、供給装置30の下流に位置する掻取装置40により光透過部1の表面1a上のインキ組成物3を掻き取る。これにより、溝1bにインキ組成物3が充填されるとともに、光透過部1の表面1aに存在する余剰のインキ組成物3が掻き取られる。
【0069】
ここで、インキ組成物3の供給は、第1の掻取ブレード41の上流側かつ第1の掻取ブレード41の直近にインキ組成物3からなるインキ溜まり3aが形成されるように行われる。具体的には、インキ溜まり3aは、供給装置30から比較的過剰にインキ組成物3を光透過部1の表面1aに供給することにより形成される。
【0070】
また、第1の掻取ブレード41によりインキ組成物3を掻き取ると、第1の掻取ブレード41には貫通孔41bが設けられているので、図11に示されるようにインキ溜まり3aを構成するインキ組成物3が貫通孔41bを介して第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42との間の空間Sに入り込む。そして、空間Sに入り込んだインキ組成物3は、第2の掻取ブレード42で掻き取られるとともに、堰48の吸引孔48aを介して吸引機構43により吸引される。本実施形態では、インキ組成物3の吸引は、光透過部1の幅方向の端部側から行われる。
【0071】
また、同時に、インキ溜まり3aの一部が、堰48の吸引孔48aを介して吸引機構43により吸引される。吸引孔48aから吸引された使用済みのインキ組成物3は、ポンプ61により、混合タンク63に送られる。
【0072】
混合タンク63に送られた使用済みのインキ組成物3は、混合タンク63にて、未使用のインキ組成物3bと混合され、その後、ポンプ62によりフィルタ65を介して供給装置30に送られる。そして、再び、供給装置30から光透過部1の表面1aに供給される。
【0073】
溝1bにインキ組成物3を充填した後、電離放射線を放射して、溝1b内のインキ組成物3を硬化させて、略台形の断面形状を有する光吸収部4を形成する(図8(c))。これにより、コントラスト向上シート5が作製される。インキ組成物3の硬化方法としては、通常の硬化方法、即ち、電子線又は紫外線の照射によって硬化することができる。例えば、電子線硬化の場合には、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速機から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線等が使用され、紫外線硬化の場合には超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線等が利用できる。
【0074】
インキ溜まりを形成すると、掻取ブレードに対するインキ組成物の接触量が多くなる。そして、インキ溜まりにおいて消費されなかったインキ組成物は滞留し、時間が経つにつれてインキ組成物の粘度が上昇してしまう傾向がある。このため、消費されなかったインキ組成物は掻取ブレード表面で、固形化してしまい、これが充填ムラおよびスジ不良の一因となると考えられる。これに対し、本実施形態によれば、インキ溜まり3aの一部を、貫通孔41bを介して空間Sに入り込ませるので、消費されなかったインキ組成物3を移動させることができる。また、この空間Sに入り込んだインキ組成物3を、吸引孔48aを介して吸引するので、この空間Sからインキ組成物3を除去することができる。これにより、第1の掻取ブレード41におけるインキ組成物3の固形化を抑制することができ、充填ムラおよびスジ不良を低減することができる。
【0075】
インキ組成物の粘度上昇は、インキ組成物の短寿命化引き起こすが、本実施形態によれば、空間Sに入り込んだインキ組成物3およびインキ溜まり3aの一部を吸引しているので、インキ組成物3の粘度上昇を抑制することができ、インキ組成物3の長寿命化を図ることができる。
【0076】
さらに、本実施形態によれば、以下の理由から、特にピッチスジ不良および黒スジ不良をさらに低減することができる。
【0077】
例えば、第2の掻取ブレードの先端が第1の掻取ブレードの先端よりも0.55mmを超えて突き出るように調整して、第1の掻取ブレードの先端が光透過部の表面から離間するように第1の掻取ブレードを配置し、かつ第2の掻取ブレードの先端が光透過部の表面に接触するように第2の掻取ブレードを配置した場合には、第1の掻取ブレードと光透過部の表面との間の隙間に、インキ組成物が滞留し、または詰まってしまい、インキ組成物の濃度ムラが形成され、これにより、光吸収部にピッチスジ不良が発生するおそれがある。
【0078】
また、第2の掻取ブレードの先端が第1の掻取ブレードの先端よりも0.25mm未満突き出るように調整して、第1の掻取ブレードの先端が光透過部の表面に接触するように第1の掻取ブレードを配置し、かつ第2の掻取ブレードの先端が光透過部の表面から離間するように第2の掻取ブレードを配置した場合には、第2の掻取ブレードによる掻き取り性が劣り、光透過部上にインキ組成物が残存し、黒スジ不良が発生するおそれがある。
【0079】
さらに、第2の掻取ブレードの先端が第1の掻取ブレードの先端よりも0.25mm以上0.55mm以下突き出るように調整した場合であっても、第1の掻取ブレードの先端が光透過部の表面に接触するように第1の掻取ブレードを配置し、かつ第2の掻取ブレードの先端が光透過部の表面に接触するように第2の掻取ブレードを配置した場合には、第1の掻取ブレードが光透過部の表面に押し込まれた状態となるので、第2の掻取ブレードによる掻き取り性が劣り、黒スジ不良が発生するおそれがある。
【0080】
これに対し、本実施形態のように、第2の掻取ブレード42の先端42aを第1の掻取ブレード41の先端41cよりも0.25mm〜0.55mm突き出るように調整し、第1の掻取ブレード41の先端41cが光透過部1の表面1aに接触するように第1の掻取ブレード41を配置し、かつ第2の掻取ブレード42の先端42aが光透過部1の表面1aから離間するように第2の掻取ブレード42を配置した場合には、第1の掻取ブレード41と光透過部1の表面1aとの間の隙間におけるインキ組成物3の滞留または詰まりを低減することができる。これにより、ピッチスジ不良をより低減することができる。また、第2の掻取ブレード42には当板50が取り付けられているので、光透過部1の移動による第2の掻取ブレード42の移動を抑制することができ、第2の掻取ブレード42による掻き取り性を向上させることができる。これにより、黒スジ不良をより低減することができる。
【0081】
<コントラスト向上シート>
上記のようにして得られたコントラスト向上シート5は、基材2と、基材2上に形成され、かつ複数の溝1bを有する光透過部1と、溝1b内に形成された光吸収部4とを備えている。
【0082】
光吸収部4は、光透過部1の屈折率と同じかまたは小さい屈折率を有する。光透過部1と光吸収部4との屈折率が上記のような関係となることにより、所定条件で光透過部1に入射した光源からの映像光を光吸収部4と光透過部1との境界面で適切に反射させ、観測者に明るい映像を提供することができる。また、観測者側からの外光の一部を吸収するため、コントラストも向上する。また、光透過部1と光吸収部4との境界面で反射せずに、光吸収部4の内側に入射した迷光が、光吸収部4中の光吸収材によって吸収される。また、所定角度で入射した観測者側からの外光を適切に吸収することができるため、コントラストを向上させることもできる。
【0083】
また、コントラスト向上シートを2層重ね合わせてもよく、その場合、各コントラスト向上シートで異なった構造となるようにしてもよい。例えば、1層目のコントラスト向上シートと2層目のコントラスト向上シートとで、光吸収部の幅やピッチ、深さ、形状を変えたり、光吸収部の厚み方向の向きを変えたり、映像光に対する光吸収部のバイアス角度(水平方向に対する光吸収部の傾斜角度)を変えたりすることができる。また、光吸収部を形成する材料(樹脂の種類や光吸収粒子の濃度)を変えることもできる。例えば、1層目は効率良く外光をカットし、コントラストの向上を重視した設計とし、2層目は反射を利用した正面輝度向上効果を重視した設計とするような、各層で作用効果を変えることが好ましい。
【0084】
本発明によるコントラスト向上シートは、従来の光学シートや視野角拡大部材に採用されている他の機能層を含んでいてもよい。具体的には、反射防止層、粘着層、電磁波遮蔽層、波長フィルタ層、防眩層、ハードコート層などを適宜組み合わせてもよい。これらの各機能層の積層順や積層数は、用途に応じて適宜決定することができる。
【0085】
本発明によるコントラスト向上シートは、例えば、表示装置の表示部上に配置することができる。具体的には、コントラスト向上シートは、例えば、表示装置用光学フィルタとして使用することができる。表示装置の表示部としては、例えばプラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電界放出ディスプレイ(FED)、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、プロジェクションテレビ等が挙げられる。
【0086】
<表示装置用光学フィルタおよび表示装置>
以下、本発明によるコントラスト向上シートを表示装置用光学フィルタとして表示装置の表示部に取り付けた例について説明する。図12は本実施形態に係るコントラスト向上シートを備えた表示装置の断面図である。図12に示される表示装置81は、上記した製造方法により製造されたコントラスト向上シート5を備えている。コントラスト向上シート5は、基材2が映像光源側となるように表示装置81の表示部82に接着層83を介して貼り付けられている。コントラスト向上シート5の前面側には、帯電防止層84、反射防止層85、防眩層86等が配置されている。なお、本実施の形態においては、コントラスト向上シート5の前面に帯電防止層84等が配置されているが、これらに限られず、電磁波、赤外線、またはネオン線を遮断する層を配置してもよい。
【0087】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図13は本実施形態に係るコントラスト向上シートの製造装置を概略構成図である。図14は図13のホルダの断面図であり、図15は図14で示されるスペーサの斜視図である。図16は本実施形態に係る他のスペーサの斜視図であり、図17は本実施形態に係る掻取装置によるインク組成物の掻き取りの様子を模式的に示した図である。なお、図13、図14および図17において、図1、図3および図11に付されている符号と同じ符号が付されているものは、図1、図3および図11に付されている符号に係る部材等と同じものを意味するものである。
【0088】
図13に示されるように、本実施形態のコントラスト向上シートの製造装置90は、図1に示される製造装置10とほぼ同様の構成となっているが、掻取装置100の構成が掻取装置40の構成とは若干異なっている。具体的には、図14に示されるように掻取装置100のホルダ101は、スペーサ49の代わりに、吸引孔102aを有するスペーサ102を備えており、空間Sに入り込んだインキ組成物3は吸引孔102aを介して吸引機構43により吸引される。本実施形態においては、空間Sに入り込んだインキ組成物3は吸引孔102aを介して吸引するので、第1の掻取ブレード41の幅は第2の掻取ブレード42の幅よりも短くなっていなくともよい。
【0089】
スペーサ102は、図15に示されるように櫛歯状に形成されている。すなわち、スペーサ102の吸引孔102aは凹状の孔となっている。この吸引孔102aは、スペーサ102の一方の面102bからこの面102bとは反対側の面102cまで貫通している。なお、吸引の際には、スペーサ102に第2の掻取ブレード42が当接するので、吸引孔102aの開口面は第2の掻取ブレード42により覆われる。
【0090】
また、スペーサ102の代わりに、図16に示されるスペーサ103を用いてもよい。スペーサ103は、スリット状、すなわち複数に分割された形状となっており、個々のスペーサ103間の隙間が吸引孔103aとなっている。
【0091】
そして、このような掻取装置100を備えた製造装置90を使用して、光透過部1の溝1bにインキ組成物3を充填する。具体的には、第1の実施形態と同様に、まず、図13に示すように、供給装置30および掻取装置100に対して、搬送系20によりシート状の光透過部1を基材2ごと移動させながら、光透過部1の表面1aに供給装置30からインキ組成物3を連続的に供給し、第1の掻取ブレード41の上流側かつ第1の掻取ブレード41の直近にインキ溜まり3aを形成しつつ、供給装置30の下流に位置する掻取装置100により光透過部1の表面1a上のインキ組成物3を掻き取る。
【0092】
また、供給装置30からのインキ組成物3の供給および掻取装置100によるインキ組成物3の掻き取りを行いながら、吸引機構43により空間Sに入り込んだインキ組成物3aを、図17に示されるように吸引孔102aを介して吸引する。なお、図16に示されるスペーサ103を用いた場合には、吸引孔103aを介してインキ組成物3を吸引する。本実施形態では、インキ組成物3の吸引は、第1の掻取ブレード41と第2の掻取ブレード42との間から行われる。また、同時に、吸引機構43によりインキ溜まり3aの一部を、吸引孔48aを介して吸引する。
【0093】
吸引機構43により吸引された使用済みのインキ組成物3は、第1の実施形態と同様に循環し、そして、再び、供給装置30から光透過部1の表面1aに供給される。
【0094】
本実施形態によれば、インキ溜まり3aの一部を、貫通孔41bを介して空間Sに入り込ませ、かつこの空間Sに入り込んだインキ組成物3を、吸引孔102a、103aを介して吸引により除去するので、インキ溜まり3aを構成するインキ組成物3を移動させることができる。これにより、第1の掻取ブレード41におけるインキ組成物3の固形化を抑制することができ、充填ムラおよびスジ不良を低減することができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。本実施例においては、上記実施の形態と同様の方法でコントラスト向上シートを作製し、コントラスト向上シートの外観観察を行った。
【0096】
(実施例1)
<掻取装置>
第1の掻取ブレードとしての金属製の厚さ200μmの第1のドクターブレードと、第2の掻取ブレードとしての金属製の厚さ200μmの第2のドクターブレードと、第1のドクターブレードおよび第2のドクターブレードを保持するホルダとを備える掻取装置を用意した。
【0097】
第1のドクターブレードの幅は1150mmであり、第2のドクターブレードの幅は1160mmであった。すなわち、第1のドクターブレードの幅は第2のドクターブレードの幅よりも、10mm短くなったものであった。また、第1のドクターブレードは、第1のドクターブレードの幅方向に75mm間隔で15箇所に貫通孔が設けられたものであった。
【0098】
このホルダは、ホルダ本体と、ホルダ本体の両端に設けられ、第1のドクターブレードより第1のドクターブレードの掻取面側に突き出た堰と、第1のドクターブレードと第2のドクターブレードとの間に配置されたスペーサと、第2のドクターブレードに取り付けられた当板とを備えるものであった。
【0099】
ホルダ本体は、光透過部の表面に対する第1のドクターブレードの先端部および第2のドクターブレードの先端部の角度がともに65°となるように第1のドクターブレードおよび第2のドクターブレードを保持していた。スペーサは0.05mmの厚さを有するものであった。すなわち、第1のドクターブレードと第2のドクターブレードとの間の間隔は0.05mmとなっていた。
【0100】
堰の底面には、第1のドクターブレードと第2のドクターブレードとの間の空間に連通した直径6mmの吸引孔が設けられていた。この吸引孔にはエア吸引クリーナが吸引ホースを介して接続されていた。
【0101】
<インキ組成物の調製>
光硬化型プレポリマーとして、エポキシアクリレートオリゴマーOxirane,2,2'-[(1-methylethylidene)bis(4,1-phenyleneoxymethylene)]bis-,homopolymer,2-propenoate20.0質量部と、反応性希釈モノマーとして、2−フェノキシエチル=アクリラート20.0質量部、α−アクリロイル−ω−フェノキシポリ(オキシエチレン)20.0質量部、及び2−{2−[2−(アクリロイルオキシ)(メチル)エトキシ](メチル)エトキシ}(メチル)エチル=アクリラート13.0質量部と、光吸収粒子として、平均粒径4.0μmのカーボンブラックを25%含有したアクリル架橋微粒子(ガンツ化成株式会社製)20.0質量部と、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)7質量部と、を混合し、均一化してインキ組成物を得た。
【0102】
このインキ組成物の25℃での粘度は、4000mPa・sであった。なお、本発明において、粘度は、JIS K-5400の回転粘度計法に基づいて測定した。具体的には、株式会社東京計器製のBL型粘度計、No.4ロータを使用し、25℃で12rpm、1分後の粘度計の指示値を測定し、測定した粘度計指示値に換算乗数(本条件では500)を乗じた値を粘度とした。
【0103】
なお、このインキ組成物の光吸収粒子を除いた組成物を厚さ10μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.547であった。
【0104】
<光透過部用組成物の調整>
ビスフェノールA―エチレンオキシド2モル付加物41質量部、イソホロンジイソシアネート14.0質量部を、およびウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)(2−エチルヘキサン酸50%溶液))0.02質量部を加え、80℃で5時間反応させ、その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート5質量部を加え、80℃で5時間反応させて得られたウレタンアクリレート系オリゴマーを、光硬化型プレポリマーとして用いた。このウレタンアクリレート系オリゴマー32、0質量部と、光硬化性モノマーとして、フェノキシエチルアクリレート(分子量192)10.0質量部、およびビスフェノールAのEO4モル付加物のジアクリレート(分子量512)30.0質量と、金型離型剤として、テトラデカノール−エチレンオキシド10モル付加物のリン酸エステル(モノエステル/ジエステル=モル比1/1)0.03質量部と、テアリルアミンエチレンオキシド15モル付加物0.02質量部、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティケミカルズ株式会社製)3質量部と、を混合し、均一化して光透過部用組成物を得た。
【0105】
なお、この光透過部用組成物を厚さ100μmで塗工し、高圧水銀灯により800mJ/cm2の紫外線を照射して光透過部構成組成物を硬化させ、多波長アッベ屈折計DR−M4(株式会社アタゴ製)を用いて589nmの屈折率を測定したところ、1.550であった。
【0106】
<コントラスト向上シートの作製>
上記、光透過部用組成物をポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡績株式会社、A4300、厚さ100μm、幅1400mm)上に供給し、光透過部用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された光透過部を形成した。
【0107】
次いで、上記掻取装置を用いて、光透過部の溝にインキ組成物を充填した。具体的には、10m/分のライン速度で、光透過部を基材ごと移動させながら、ダイコーターのダイヘッドから、上記で得られたインキ組成物が光透過部の幅方向において均一に供給されるように、5L/分の供給速度で、光透過部の表面に連続的に供給し、その後、上記掻取装置を用いて、光透過部の表面のインキ組成物を掻き取った。
【0108】
インキ組成物の供給は、第1のドクターブレードの上流側かつ第1のドクターブレードの直近にインキ溜まりが形成されるように行われた。また、ダイヘッドからのインキ組成物の供給および第1および第2のドクターブレードによるインキ組成物の掻き取りを行いながら、堰に設けられた吸引孔を介して、エア吸引クリーナにより第1のドクターブレードと第2のドクターブレードとの間の空間に入り込んだインキ組成物を吸引するとともに、この吸引孔を介してインキ溜まりの一部を吸引した。そして、吸引された使用済みのインキ組成物を、ポンプにより混合タンクに送り、混合タンクにて、未使用のインキ組成物と混合した。そして、この混合後のインキ組成物を、ポンプによりフィルタを介してダイヘッドに送り、再び、ダイヘッドから光透過部の表面に供給した。
【0109】
光透過部の溝にインキ組成物を充填した後、インキ組成物に紫外線を照射して、インキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、実施例1のコントラスト向上シートを作製した。
【0110】
(実施例2)
実施例2においては、実施例1とは異なる掻取装置を用いて、コントラスト向上シートを作製した。
【0111】
<掻取装置>
実施例2で用いた掻取装置は、実施例1で用いた掻取装置とほぼ同様の構成となっていたが、スペーサに凹状の吸引孔が設けられていた。具体的にはスペーサは櫛歯状になっていた。また、第1のドクターブレードおよび第2のドクターブレードの幅は1160mmであり、第1のドクターブレードの幅は第2のドクターブレードの幅と同じであった。
【0112】
<コントラスト向上シートの作製>
まず、実施例1と同様に、実施例1で用いた光透過部用組成物をポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡績株式会社、A4300、厚さ100μm、幅1400mm)上に供給し、光透過部用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された、幅が1400mmの光透過部を形成した。
【0113】
次いで、実施例2の掻取装置を用いて、光透過部の溝に実施例1で用いたインキ組成物を充填した。具体的には、10m/分のライン速度で、光透過部を基材ごと移動させながら、ダイコーターのダイヘッドから、インキ組成物が光透過部の幅方向において均一に供給されるように、5L/分の供給速度で、光透過部の表面に連続的に供給し、その後、実施例2の掻取装置を用いて、光透過部の表面のインキ組成物を掻き取った。
【0114】
インキ組成物の供給は、第1のドクターブレードの上流側かつ第1のドクターブレードの直近にインキ溜まりが形成されるように行われた。また、ダイヘッドからのインキ組成物の供給および第1および第2のドクターブレードによるインキ組成物の掻き取りを行いながら、スペーサに設けられた吸引孔を介して、エア吸引クリーナにより第1のドクターブレードと第2のドクターブレードとの間に入り込んだインキ組成物を吸引するとともに、堰に設けられた吸引孔を介してエア吸引クリーナによりインキ溜まりの一部を吸引した。そして、吸引された使用済みのインキ組成物を、ポンプにより混合タンクに送り、混合タンクにて、未使用のインキ組成物と混合した。そして、この混合後のインキ組成物を、ポンプによりフィルタを介してダイヘッドに送り、再び、ダイヘッドから光透過部の表面に供給した。
【0115】
光透過部の溝にインキ組成物を充填した後、インキ組成物に紫外線を照射して、インキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、実施例2のコントラスト向上シートを作製した。
【0116】
(比較例1)
比較例1においては、実施例1および実施例2とは異なる掻取装置を用いて、コントラスト向上シートを作製した。
【0117】
<掻取装置>
比較例1で用いた掻取装置は、実施例1で用いた掻取装置とほぼ同様の構成となっていたが、この掻取装置のドクターブレードは、2枚ではなく、1枚であった。しかも、このドクターブレードには、貫通孔が設けられておらず、また堰やスペーサにも吸引孔が設けられていなかった。また、ドクターブレードの幅は1160mmであった。
【0118】
<コントラスト向上シートの作製>
まず、実施例1と同様に、実施例1で用いた光透過部用組成物をポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡績株式会社、A4300、厚さ100μm、幅1400mm)上に供給し、光透過部用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された、幅が1400mmの光透過部を形成した。
【0119】
次いで、比較例1の掻取装置を用いて、光透過部の溝に実施例1で用いたインキ組成物を充填した。具体的には、10m/分のライン速度で、光透過部を基材ごと移動させながら、ダイコーターのダイヘッドから、インキ組成物が光透過部の幅方向において均一に供給されるように、5L/分の供給速度で、光透過部の表面に連続的に供給し、その後、比較例1の掻取装置を用いて、光透過部の表面のインキ組成物を掻き取った。
【0120】
インキ組成物の供給は、ドクターブレードの上流側かつドクターブレードの直近にインキ溜まりが形成されるように行われた。また、ダイヘッドからのインキ組成物の供給およびドクターブレードによるインキ組成物の掻き取りを行った。なお、比較例1では、インキ組成物およびインキ溜まりの吸引は行わなかった。
【0121】
光透過部の溝にインキ組成物を充填した後、インキ組成物に紫外線を照射して、インキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、比較例1のコントラスト向上シートを作製した。
【0122】
(比較例2)
比較例2においては、実施例1および実施例2とは異なる掻取装置を用いて、コントラスト向上シートを作製した。
【0123】
<掻取装置>
比較例2で用いた掻取装置は、実施例1で用いた掻取装置とほぼ同様の構成となっていたが、第1のドクターブレードには貫通孔が設けられておらず、また堰やスペーサには吸引孔が設けられていなかった。また、第1のドクターブレードおよび第2のドクターブレードの幅は1160mmであり、第1のドクターブレードの幅は第2のドクターブレードの幅と同じであった。
【0124】
<コントラスト向上シートの作製>
まず、実施例1と同様に、実施例1で用いた光透過部用組成物をポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡績株式会社、A4300、厚さ100μm、幅1400mm)上に供給し、光透過部用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された、幅が1400mmの光透過部を形成した。
【0125】
次いで、比較例2の掻取装置を用いて、光透過部の溝に実施例1で用いたインキ組成物を充填した。具体的には、10m/分のライン速度で、光透過部を基材ごと移動させながら、ダイコーターのダイヘッドから、インキ組成物が光透過部の幅方向において均一に供給されるように、5L/分の供給速度で、光透過部の表面に連続的に供給し、その後、比較例2の掻取装置を用いて、光透過部の表面のインキ組成物を掻き取った。
【0126】
インキ組成物の供給は、第1のドクターブレードの上流側かつ第1のドクターブレードの直近にインキ溜まりが形成されるように行われた。また、ダイヘッドからのインキ組成物の供給および第1および第2のドクターブレードによるインキ組成物の掻き取りを行った。なお、比較例2では、インキ組成物およびインキ溜まりの吸引は行わなかった。
【0127】
光透過部の溝にインキ組成物を充填した後、インキ組成物に紫外線を照射して、インキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、比較例2のコントラスト向上シートを作製した。
【0128】
(比較例3)
比較例3においては、実施例1および実施例2とは異なる掻取装置を用いて、コントラスト向上シートを作製した。
【0129】
<掻取装置>
比較例3で用いた掻取装置は、実施例1で用いた掻取装置とほぼ同様の構成となっていたが、第1のドクターブレードには貫通孔が設けられておらず、またスペーサには吸引孔が設けられていなかった。また、第1のドクターブレードおよび第2のドクターブレードの幅は1160mmであり、第1のドクターブレードの幅は第2のドクターブレードの幅と同じであった。
【0130】
<コントラスト向上シートの作製>
まず、実施例1と同様に、実施例1で用いた光透過部用組成物をポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡績株式会社、A4300、厚さ100μm、幅1400mm)上に供給し、光透過部用組成物を硬化させて、表面に複数の溝が並設された、幅が1400mmの光透過部を形成した。
【0131】
次いで、比較例3の掻取装置を用いて、光透過部の溝に実施例1で用いたインキ組成物を充填した。具体的には、10m/分のライン速度で、光透過部を基材ごと移動させながら、ダイコーターのダイヘッドから、インキ組成物が光透過部の幅方向において均一に供給されるように、5L/分の供給速度で、光透過部の表面に連続的に供給し、その後、比較例3の掻取装置を用いて、光透過部の表面のインキ組成物を掻き取った。
【0132】
インキ組成物の供給は、第1のドクターブレードの上流側かつ第2のドクターブレードの直近にインキ溜まりが形成されるように行われた。また、ダイヘッドからのインキ組成物の供給および第1および第2のドクターブレードによるインキ組成物の掻き取りを行いながら、堰に設けられた吸引孔を介してエア吸引クリーナによりインキ溜まりの一部を吸引した。そして、吸引された使用済みのインキ組成物を、ポンプにより混合タンクに送り、混合タンクにて、未使用のインキ組成物と混合した。そして、この混合後のインキ組成物を、ポンプによりフィルタを介してダイヘッドに送り、再び、ダイヘッドから光透過部の表面に供給した。
【0133】
光透過部の溝にインキ組成物を充填した後、インキ組成物に紫外線を照射して、インキ組成物を硬化させることにより、光吸収部を形成し、比較例3のコントラスト向上シートを作製した。
【0134】
外観観察
このようにして作製された実施例1、2および比較例1〜3のコントラスト向上シートの外観を観察して、充填ムラ、スジ不良の発生を確認した。なお、この評価の基準は以下の通りとした。
【0135】
(1)充填ムラ
○:充填ムラが確認されなかった。
△:充填ムラが若干観察されたが、実用上問題のない程度であった。
×:充填ムラが多数確認された。
【0136】
(2)スジ不良
○:スジ不良が確認されなかった。
△:スジ不良が若干確認されたが、実用上問題のない程度であった。
×:スジ不良が多数確認された。
【0137】
以下、結果について述べる。
【表1】
表1に示されるように比較例1に係るコントラスト向上シートは充填ムラおよびスジ不良ともに抑制できなかった。また、比較例2および3に係るコントラスト向上シートにおいては、充填ムラおよびスジ不良が若干観察された。これに対し、実施例1および2に係るコントラスト向上シートには、充填ムラおよびスジ不良が観察されず、良好な状態であった。
【0138】
これらの結果から、第1のドクターブレードに貫通孔を形成し、かつ貫通孔を介して第1のドクターブレードと第2のドクターブレードに入り込むインキ組成物を吸引した場合には、充填ムラおよびスジ不良が低減できることが確認された。
【符号の説明】
【0139】
1…光透過部、1a…表面、1b…溝、2…基材、3…インキ組成物、3a…インキ溜まり、4…光吸収部、5…コントラスト向上シート、10、90…製造装置、30…供給装置、40、100…掻取装置、41…第1の掻取ブレード、41a…先端部、41b…貫通孔、42…第2の掻取ブレード、43…吸引機構、44、101…ホルダ、47…ホルダ本体、48…堰、48a、102a、103a…吸引孔、49、102、103…スペーサ、60…インキ循環系。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の溝が並設された光透過部と、前記光透過部の前記溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造に用いられる掻取装置であって、
表面に複数の溝が並設された光透過部の前記表面から前記表面上に供給されたインキ組成物を掻き取るための、先端部に貫通孔を有する第1の掻取ブレードと、
前記第1の掻取ブレードと所定の間隔を置いて配置され、前記第1の掻取ブレードによる掻き取り後に前記光透過部の前記表面に残る前記インキ組成物をさらに掻き取るための第2の掻取ブレードと、
前記貫通孔を介して前記第1の掻取ブレードと前記第2の掻取ブレードとの間の空間に入り込んだ前記インキ組成物を吸引する吸引機構と
を備えることを特徴とする、掻取装置。
【請求項2】
前記第1の掻取ブレードおよび前記第2の掻取ブレードを保持するホルダをさらに備え、前記吸引機構が、前記ホルダに設けられた、前記空間に連通した吸引孔を介して前記インキ組成物を吸引する、請求項1に記載の掻取装置。
【請求項3】
前記ホルダが、ホルダ本体と、前記ホルダ本体の両端部に設けられ、かつ前記第1の掻取ブレードよりも前記第1の掻取ブレードの掻取面側に突き出た堰とを有し、前記第1の掻取ブレードの幅が前記第2の掻取ブレードの幅よりも短くなっており、かつ前記吸引孔が前記堰部に設けられている、請求項2に記載の掻取装置。
【請求項4】
前記ホルダが、ホルダ本体と、前記第1の掻取ブレードと前記第2の掻取ブレードの間に配置されたスペーサとを備えており、前記吸引孔が前記スペーサに設けられている、請求項2に記載の掻取装置。
【請求項5】
前記吸引孔の一端が前記堰部の底面に設けられている、請求項3に記載の掻取装置。
【請求項6】
表面に複数の溝が並設された光透過部と、前記光透過部の前記溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造装置であって、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の掻取装置を備えることを特徴とする、コントラスト向上シートの製造装置。
【請求項7】
表面に複数の溝が並設された光透過部と、前記光透過部の前記溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造方法であって、
表面に複数の溝が並設されたシート状の光透過部を移動させながら、前記光透過部の前記表面にインキ組成物を連続的に供給し、前記インキ組成物の供給位置よりも下流側に配置された第1の掻取ブレードの上流側かつ前記第1の掻取ブレードの直近にインキ組成物からなるインキ溜まりを形成しつつ、前記光透過部の表面上の前記インキ組成物を、前記第1の掻取ブレードおよび前記第1の掻取ブレードよりも下流側に前記第1の掻取ブレードと所定の間隔を置いて配置された第2の掻取ブレードにより掻き取る充填工程とを備え、
前記第1の掻取ブレードが、前記第1の掻取ブレードの先端部に貫通孔を有し、前記充填工程が、前記貫通孔を介して前記第1の掻取ブレードと前記第2の掻取ブレードとの間の空間に入り込んだ前記インキ組成物を吸引しながら行われることを特徴とする、コントラスト向上シートの製造方法。
【請求項8】
前記インキ組成物の吸引が、前記光透過部の幅方向の端部側から行われる、請求項7に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項9】
前記インキ組成物の吸引が、前記第1の掻取ブレードと前記第2の掻取ブレードとの間から行われる、請求項7に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項10】
吸引された前記インキ組成物が、再び前記光透過部の表面に供給される、請求項7ないし9のいずれか1項に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項11】
吸引された前記インキ組成物が、未使用の前記インキ組成物と混合された後、前記光透過部の表面に供給される、請求項10に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項12】
吸引された前記インキ組成物と、未使用の前記インキ組成物との混合比が1:4〜4:1である、請求項11に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項1】
表面に複数の溝が並設された光透過部と、前記光透過部の前記溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造に用いられる掻取装置であって、
表面に複数の溝が並設された光透過部の前記表面から前記表面上に供給されたインキ組成物を掻き取るための、先端部に貫通孔を有する第1の掻取ブレードと、
前記第1の掻取ブレードと所定の間隔を置いて配置され、前記第1の掻取ブレードによる掻き取り後に前記光透過部の前記表面に残る前記インキ組成物をさらに掻き取るための第2の掻取ブレードと、
前記貫通孔を介して前記第1の掻取ブレードと前記第2の掻取ブレードとの間の空間に入り込んだ前記インキ組成物を吸引する吸引機構と
を備えることを特徴とする、掻取装置。
【請求項2】
前記第1の掻取ブレードおよび前記第2の掻取ブレードを保持するホルダをさらに備え、前記吸引機構が、前記ホルダに設けられた、前記空間に連通した吸引孔を介して前記インキ組成物を吸引する、請求項1に記載の掻取装置。
【請求項3】
前記ホルダが、ホルダ本体と、前記ホルダ本体の両端部に設けられ、かつ前記第1の掻取ブレードよりも前記第1の掻取ブレードの掻取面側に突き出た堰とを有し、前記第1の掻取ブレードの幅が前記第2の掻取ブレードの幅よりも短くなっており、かつ前記吸引孔が前記堰部に設けられている、請求項2に記載の掻取装置。
【請求項4】
前記ホルダが、ホルダ本体と、前記第1の掻取ブレードと前記第2の掻取ブレードの間に配置されたスペーサとを備えており、前記吸引孔が前記スペーサに設けられている、請求項2に記載の掻取装置。
【請求項5】
前記吸引孔の一端が前記堰部の底面に設けられている、請求項3に記載の掻取装置。
【請求項6】
表面に複数の溝が並設された光透過部と、前記光透過部の前記溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造装置であって、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の掻取装置を備えることを特徴とする、コントラスト向上シートの製造装置。
【請求項7】
表面に複数の溝が並設された光透過部と、前記光透過部の前記溝内に形成された光吸収部とを備えるコントラスト向上シートの製造方法であって、
表面に複数の溝が並設されたシート状の光透過部を移動させながら、前記光透過部の前記表面にインキ組成物を連続的に供給し、前記インキ組成物の供給位置よりも下流側に配置された第1の掻取ブレードの上流側かつ前記第1の掻取ブレードの直近にインキ組成物からなるインキ溜まりを形成しつつ、前記光透過部の表面上の前記インキ組成物を、前記第1の掻取ブレードおよび前記第1の掻取ブレードよりも下流側に前記第1の掻取ブレードと所定の間隔を置いて配置された第2の掻取ブレードにより掻き取る充填工程とを備え、
前記第1の掻取ブレードが、前記第1の掻取ブレードの先端部に貫通孔を有し、前記充填工程が、前記貫通孔を介して前記第1の掻取ブレードと前記第2の掻取ブレードとの間の空間に入り込んだ前記インキ組成物を吸引しながら行われることを特徴とする、コントラスト向上シートの製造方法。
【請求項8】
前記インキ組成物の吸引が、前記光透過部の幅方向の端部側から行われる、請求項7に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項9】
前記インキ組成物の吸引が、前記第1の掻取ブレードと前記第2の掻取ブレードとの間から行われる、請求項7に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項10】
吸引された前記インキ組成物が、再び前記光透過部の表面に供給される、請求項7ないし9のいずれか1項に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項11】
吸引された前記インキ組成物が、未使用の前記インキ組成物と混合された後、前記光透過部の表面に供給される、請求項10に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【請求項12】
吸引された前記インキ組成物と、未使用の前記インキ組成物との混合比が1:4〜4:1である、請求項11に記載のコントラスト向上シートの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−226072(P2012−226072A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92781(P2011−92781)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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