説明

描画プログラム、記録媒体、描画方法及び描画装置

【課題】3次元オブジェクトの特徴を把握しやすくすることができる描画プログラム、記録媒体、描画方法及び描画装置を提供すること。
【解決手段】描画装置により実行され、仮想の3次元空間に配置された3次元オブジェクトに基づく3次元グラフィックスを描画する描画プログラムであって、それぞれのビュースクリーン内に3次元オブジェクトが含まれる第1視点及び第2視点を、それぞれ異なる位置に設定する視点設定ステップS3と、第1視点に基づいて3次元オブジェクトをレンダリングした第1画像、及び、第2視点に基づいて3次元オブジェクトをレンダリングした第2画像をそれぞれ描画する描画ステップS4と、互いに同期した第1画像及び第2画像を1フレーム内に設定した出力画像を生成する画像生成ステップS5とを実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画プログラム、記録媒体、描画方法及び描画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、仮想の3次元空間内に配置された複数のポリゴンからなる3次元オブジェクトをレンダリングして3次元グラフィックスを描画する手法が知られている。このような3次元グラフィックスは、例えば、CAD(Computer Aided Design)において利用されているほか、ゲームの分野においても利用されている。そして、このような3次元グラフィックスを表示可能なゲーム機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1に記載のゲーム機では、仮想の3次元空間(仮想空間)内に、コントローラーにより操作可能な主人公のゲームキャラクター、及び、建物等のオブジェクトが配置され、設定された視点に基づいて、これらを描画した画像が生成される。そして、当該生成された画像は表示装置(テレビジョンモニター装置)により表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7094153号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述の特許文献1に記載のゲーム装置では、移動する1つの視点(カメラ視点)に基づいて、キャラクターを含む仮想空間内のオブジェクトを描画しているので、例えば、キャラクターの特定の部位が変化した場合でも、描画される画像中に当該特定の部位が必ずしも含まれず、当該変化を観察しづらい。このため、キャラクターの構成、形状及び状態等の特徴を把握しづらいという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、3次元オブジェクトの特徴を把握しやすくすることができる描画プログラム、当該描画プログラムを記録した記録媒体、描画方法及び描画装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するために、本発明の描画プログラムは、描画装置により実行され、仮想の3次元空間に配置された3次元オブジェクトに基づく3次元グラフィックスを描画する描画プログラムであって、それぞれのビュースクリーン内に前記3次元オブジェクトが含まれる第1視点及び第2視点を、それぞれ異なる位置に設定する視点設定ステップと、前記第1視点に基づいて前記3次元オブジェクトをレンダリングした第1画像、及び、前記第2視点に基づいて前記3次元オブジェクトをレンダリングした第2画像をそれぞれ描画する描画ステップと、互いに同期した前記第1画像及び前記第2画像を1フレーム内に設定した出力画像を生成する画像生成ステップと、を実行させることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、当該描画プログラムが描画装置により実行されることにより、それぞれ異なる位置に設定された第1視点及び第2視点に基づいて3次元オブジェクトをレンダリングした第1画像及び第2画像がそれぞれ描画され、当該第1画像及び第2画像が1フレーム内に設定された出力画像が生成される。これによれば、複数の視点から1つの3次元オブジェクトを同時に観察できる。従って、3次元オブジェクトの特徴を把握しやすくすることができる。
【0009】
また、これら第1画像及び第2画像は、仮想の3次元空間に配置された同じ3次元オブジェクトをレンダリングした画像である。これによれば、個別に3次元空間を定義し、当該各3次元空間にモデリングされたそれぞれ別の3次元オブジェクトから第1画像及び第2画像を描画する場合に比べ、第1画像及び第2画像の同期を取り易くすることができるほか、処理の簡略化、及び、描画に利用されるメモリーの容量を低減することができる。
更に、これら第1画像及び第2画像が同期しているので、3次元オブジェクト全体を一方の画像により把握しつつ、当該3次元オブジェクトの特定の部位を他方の画像により把握することにより、3次元オブジェクトが動的に変化した場合に、当該3次元オブジェクトの特徴を一層把握しやすくすることができる。
【0010】
本発明では、前記視点設定ステップでは、前記第1視点を、当該第1視点のビュースクリーン内に前記3次元オブジェクトの略全体が含まれるように設定させ、前記第2視点を、当該第2視点のビュースクリーン内に前記3次元オブジェクトの所定の部位が含まれるように、当該3次元オブジェクトの動きに応じて位置が変動する前記所定の部位に追随して設定させることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、第1視点に基づいて描画される第1画像には、3次元オブジェクトの略全体が含まれるので、仮想の3次元空間における3次元オブジェクトの位置、向き及び姿勢等を把握しやすくすることができる。
また、第2視点は、3次元オブジェクトの動きに応じて位置(ワールド座標系での位置)が移動する所定の部位に追随して設定される。これによれば、第2視点に基づいて描画される第2画像には、当該所定の部位が常に含まれるので、当該所定の部位を常に観察することができ、当該所定の部位に現れる変化を把握しやすくすることができる。
例えば、3次元オブジェクトが人等を模したキャラクターであり、当該キャラクターの動きに応じて表情が変化したり、筋肉の動きが再現されたりする場合に、顔や筋肉の部位を前述の所定の部位として第2視点を設定することにより、第2画像を観察することで、当該表情及び筋肉の変化を把握することができる。
従って、3次元オブジェクトの特徴をより一層把握しやすくすることができる。
【0012】
本発明では、前記視点設定ステップでは、前記第1視点を、前記3次元オブジェクトの一方の側に設定させ、前記第2視点を、前記3次元オブジェクトの前記一方の側とは反対側に設定させることが好ましい。
ここで、第1視点が3次元オブジェクトにおける一方の側(例えば、背面側)に設定された場合、第1画像には、当該3次元オブジェクトにおける一方の側とは反対側(例えば、正面側)は必ずしも含まれない。このため、第1画像のみからでは、3次元オブジェクトの特徴をより正確には把握できない。
これに対し、3次元オブジェクトにおける当該反対側に第2視点を設定することにより、出力画像中に含まれる第1画像及び第2画像により、それぞれ反対側から3次元オブジェクトを観察することができる。
従って、3次元オブジェクトの特徴をより正確に把握しやすくすることができる。
【0013】
本発明では、前記描画ステップでは、前記第2視点のビュースクリーン内の前記3次元オブジェクトをレンダリングした画像を所定の背景画像に重ねた前記第2画像を描画させることが好ましい。
ここで、ビュースクリーン内のオブジェクトの数は多ければ多いほど、レンダリングされるオブジェクトの数が増えることとなり、描画装置にかかる負担が大きくなる。
これに対し、本発明では、第2視点のビュースクリーン内の3次元オブジェクトの部位のみをレンダリングした画像と、所定の背景画像とを重ねることで、第2画像を描画する。これによれば、レンダリングされるオブジェクトの数を少なくすることができる。従って、描画装置の負担を軽減することができる。
また、第2画像には、背景画像を除いて、第2視点のビュースクリーン内の3次元オブジェクトの部位のみが含まれることとなるので、当該3次元オブジェクトの特徴をより一層把握しやすくすることができる。
【0014】
本発明では、前記描画ステップの前に、前記3次元空間に対して有効な空間用光源と、前記第2視点のビュースクリーン内の前記3次元オブジェクトの部位に対して有効なオブジェクト用光源とを設定する光源設定ステップを実行させ、前記描画ステップでは、前記第1視点及び前記空間用光源に基づいてシェーディングされた前記第1画像を描画し、前記第2視点及び前記オブジェクト用光源に基づいてシェーディングされた前記第2画像を描画させることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、3次元オブジェクトが配置される3次元空間に対して有効な空間用光源が設定され、当該空間用光源及び前述の第1視点に基づいて、当該3次元オブジェクトがシェーディングされて第1画像が描画される。これによれば、第1画像から、3次元空間での3次元オブジェクトの位置、向き及び姿勢等を把握しやすくすることができる。また、3次元オブジェクトに対して有効なオブジェクト用光源が設定され、当該オブジェクト用光源及び前述の第2視点に基づいて、当該3次元オブジェクトがシェーディングされて第2画像が描画される。これによれば、3次元オブジェクトが個別の光源に基づいてシェーディングされるので、第2視点側の3次元オブジェクトの形状及び変化を把握しやすくすることができる。従って、3次元オブジェクトの特徴を一層把握しやすくすることができる。
【0016】
本発明では、前記描画ステップでは、前記第1画像の明度に応じて、前記第2画像の明度を設定させることが好ましい。
本発明によれば、3次元オブジェクトが空間用光源の影に移動するなどして、第1画像の明度が下がった場合に、第2視点及びオブジェクト用光源に基づいて3次元オブジェクトがシェーディングされた第2画像の明度が下がる。これによれば、第1画像と第2画像とがそれぞれ同期していることを、観察者に把握しやすくすることができる。従って、3次元空間における3次元オブジェクトの状態を把握しやすくすることができる。
【0017】
本発明では、前記3次元オブジェクトは、目を有する顔を備えたキャラクターをモデリングしたオブジェクトであり、前記視点設定ステップでは、前記顔をビュースクリーンの中心とし、かつ、当該顔に対向する位置に前記第2視点を設定させ、前記描画ステップでは、前記目に反射領域を設定させることが好ましい。
本発明によれば、3次元オブジェクトの顔に応じて第2視点が設定されるので、3次元オブジェクトが移動したり、姿勢を変えたりした場合でも、当該顔に追随する第2視点に基づく第2画像により、キャラクターの顔を観察し続けることができる。従って、当該顔の変化、すなわち、表情を正確に把握しやすくすることができる。
また、目に反射領域が設定されるので、モデリングされたキャラクターの生命感及び躍動感を表現することができる。なお、設定される反射領域としては、鏡面反射領域とすることができ、この場合には、光沢度合いを大きくすることが好ましい。これにより、ハイライト部が小さくなるので、当該生命感及び躍動感を強めることができる。
【0018】
本発明では、前記画像生成ステップでは、前記1フレーム内に第1領域と、前記第1領域内に当該第1領域より小さい第2領域とを設定し、前記第1領域及び前記第2領域に、それぞれ前記第1画像及び前記第2画像を設定して、前記出力画像を生成させることが好ましい。
本発明によれば、第1画像をメイン画像とし、第2画像をサブ画像とすることができ、注視する視点に応じて第1画像及び第2画像の大きさを調整した出力画像を生成することができる。
【0019】
また、本発明の記録媒体は、前述の描画プログラムをコンピューター読取可能に記録したことを特徴とする。
本発明によれば、記録媒体にコンピューター読取可能に記録された描画プログラムをコンピューターが読み取って実行することで、前述の描画プログラムと同様の効果を奏することが可能となる。また、記録媒体として、DAT(Digital Audio Tape)等の磁気テープ、FD(Flexible Disc)等の磁気ディスク、CD(Compact Disc)及びDVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスク、光磁気ディスク、HDD(Hard Disc Drive)、並びに、半導体メモリー等を用いることができ、これらを利用して、前述の描画プログラムをコンピューターにてインストール及び実行することができるほか、当該描画プログラムの配布を容易に行うことができる。
【0020】
また、本発明の描画方法は、仮想の3次元空間内に配置された3次元オブジェクトに基づく3次元グラフィックスを描画する描画方法であって、それぞれのビュースクリーン内に前記3次元オブジェクトが含まれる第1視点及び第2視点を、それぞれ異なる位置に設定する視点設定ステップと、前記第1視点に基づいて前記3次元オブジェクトをレンダリングした第1画像、及び、前記第2視点に基づいて前記3次元オブジェクトをレンダリングした第2画像をそれぞれ描画する描画ステップと、互いに同期した前記第1画像及び前記第2画像を1フレーム内に設定した出力画像を生成する画像生成ステップと、を有することを特徴とする。
本発明によれば、前述の描画方法と同様の効果を奏することができる。
【0021】
また、本発明の描画装置は、仮想の3次元空間内に配置された3次元オブジェクトに基づく3次元グラフィックスを描画する描画装置であって、それぞれのビュースクリーン内に前記3次元オブジェクトが含まれる第1視点及び第2視点を、それぞれ異なる位置に設定する視点設定部と、前記第1視点に基づいて前記3次元オブジェクトをレンダリングした第1画像、及び、前記第2視点に基づいて前記3次元オブジェクトをレンダリングした第2画像をそれぞれ描画する描画部と、互いに同期した前記第1画像及び前記第2画像を1フレーム内に設定した出力画像を生成する画像生成部と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、前述の描画方法と同様の効果を奏することができる。そして、このような描画装置は、前述の記録媒体に記録された描画プログラムをインストール及び実行するコンピューターにより構成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、仮想の3次元空間(1つのワールド座標系)に配置された同じ3次元オブジェクトを複数の視点から同時に観察できるので、当該3次元オブジェクトの特徴を把握しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の構成を示すブロック図。
【図2】前記実施形態における出力画像の一例を示す図。
【図3】前記実施形態における出力画像の一例を示す図。
【図4】前記実施形態における出力画像の一例を示す図。
【図5】前記実施形態における出力画像の一例を示す図。
【図6】前記実施形態における出力画像の一例を示す図。
【図7】前記実施形態におけるメインボードの機能的構成を示すブロック図。
【図8】前記実施形態におけるキャラクター用光源、第1視点及び第2視点を示す側面図。
【図9】前記実施形態における第1視点及び第2視点を示す平面図。
【図10】前記実施形態におけるキャラクター用光源、第1視点及び第2視点を示す側面図。
【図11】前記実施形態における第2画像を示す図。
【図12】前記実施形態における第2画像の一部を拡大して示す図。
【図13】前記実施形態における第2画像を示す図。
【図14】前記実施形態における描画処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔情報処理装置の構成〕
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る情報処理装置1の構成を示すブロック図である。
本実施形態の情報処理装置1は、ネットワークを介して取得された情報、並びに、半導体メモリーカード、光ディスク及びHDD(Hard Disk Drive)等に記録された情報を処理する電子機器である。具体的に、情報処理装置1は、当該情報に含まれる画像及び音声を出力するほか、当該情報に含まれるプログラム(例えば、ゲームプログラム)を実行する。この情報処理装置1において、ゲームプログラムを実行する際には、詳しくは後述するが、ゲームの進行状況に応じた画像を生成し、接続された表示装置(図示省略)に当該画像を出力する。すなわち、情報処理装置1は、本発明の描画装置に相当する。
このような情報処理装置1は、図1に示すように、操作装置2、ネットワークインターフェース(以下「ネットワークIF」と略す場合がある)3、カードリーダー4、USBモジュール5、ディスク装置6及びHDD7と、これらを制御するメインボード8とを備える。
【0025】
操作装置2は、情報処理装置1を操作するための複数のキーを有する。そして、操作装置2は、入力されたキーに応じた操作信号を、メインボード8に出力する。このような操作装置2としては、コントローラーの他、キーボード及びポインティングデバイスを挙げることができる。
ネットワークIF3は、インターネット等のネットワーク上の他の機器(例えば、サーバー)と通信接続する。そして、ネットワークIF3は、メインボード8から入力される情報を、当該他の機器に送信するほか、当該他の機器から受信される情報を、メインボード8に出力する。このネットワークIF3は、図示を省略するが、LAN(Local Area Network)ケーブルが接続可能なソケットの他、IEEE802.11規格及びIEEE802.15規格等に準拠した無線通信手段を備え、当該無線通信手段を介して、他の機器と無線で通信することも可能である。
【0026】
カードリーダー4は、各種半導体メモリーカードを接続可能に構成され、当該メモリーカードに対して情報の読取及び記録を行う。
USBモジュール5は、USB(Universal Serial Bus)規格に準拠した機器に接続されるUSB−A端子を接続可能なソケットを有する。そして、USBモジュール5は、当該ソケットを介して他の機器と通信接続する。
【0027】
ディスク装置6は、メインボード8から入力される情報を光ディスクに記録するほか、光ディスクから読み出した情報をメインボード8に出力する。
HDD7は、各種情報を読出及び記録可能に構成されており、当該HDD7は、ネットワークIF3、カードリーダー4、USBモジュール5及びディスク装置6からメインボード8により取得された情報を記録する。このHDD7は、例えば、シリアルATA(SATA:Serial Advanced Technology Attachment)規格に準拠した接続形式で、メインボード8に接続される。
【0028】
〔メインボードの構成〕
メインボード8は、各種回路が実装された回路基板として構成されている。具体的に、メインボード8には、チップセット81、プログラムメモリー82、ワークメモリー83、CPU(Central Processing Unit)84、ビデオメモリー85及びGPU(Graphics Processing Unit)86等が実装されている。
チップセット81は、メインボード8に対する情報の入出力を制御する入出力制御回路である。このチップセット81は、いわゆるノースブリッジ及びサウスブリッジの機能を有し、後述するCPU84及びGPU86と、各メモリー82,83,85と、メインボード8外の機器(例えば、前述のHDD7等)との間で送受信される情報を仲介する。
【0029】
プログラムメモリー82は、情報処理装置1の制御及び処理に必要な各種プログラム及びデータが記憶されたメモリーである。これらプログラム及びデータは、CPU84により読み出され、ワークメモリー83に展開される。
ワークメモリー83は、CPU84の作業領域として使用されるメモリーである。このワークメモリー83には、前述のプログラム及びデータの一部が展開されるほか、CPU84による演算処理結果等が記憶される。
【0030】
CPU84は、操作装置2から入力される操作信号に応じて、プログラムメモリー82に記憶されたプログラムに沿って動作し、情報処理装置1全体を制御する制御回路である。また、CPU84は、前述のネットワークIF3、カードリーダー4及びUSBモジュール5を介して取得されたゲームプログラム、或いは、ディスク装置6及びHDD7から取得されたゲームプログラムを実行し、当該ゲームプログラムに沿ったゲームの画像を描画させるためのコマンドを、GPU86に出力する。
【0031】
ビデオメモリー85は、CPU84及びGPU86による描画処理が行われるメモリーである。このビデオメモリー85は、詳しい図示を省略するが、表示(出力)される画像が描画されるフレームバッファー領域を有する。
GPU86は、前述のCPU74から入力されるコマンドに応じて動作する。具体的に、GPU86は、当該コマンドに応じた3次元グラフィックスをビデオメモリー85上に描画し、描画された3次元グラフィックスを、図示しない表示装置に出力する。
【0032】
〔出力画像の構成〕
ここで、メインボード8により描画されるゲーム中の画像(出力画像G)について説明する。なお、以下に説明するゲームは、CPU84によって操作される敵であるノンプレイヤーキャラクターNPChを避けながら、プレイヤーの操作に応じて、椅子及び当該椅子に座った人間を模したプレイヤーキャラクターPChが仮想の3次元空間(以下、「仮想空間」と略す場合がある)を自由に移動して、所定の目的地に制限時間内に到達することを目的とするゲームである。そして、当該ゲームでは、プレイヤーキャラクターPChが、敵であるノンプレイヤーキャラクターNPChの攻撃によりダメージを受けた場合には、当該ダメージを受けたプレイヤーキャラクターPChの様子を示すムービーがスローモーションで表示される。
【0033】
図2〜図6は、描画された3次元グラフィックスである出力画像G(G1〜G5)の一例をそれぞれ示す図である。これらのうち、図2〜図4は、プレイ中の出力画像G1〜G3を示す図であり、図5及び図6は、ムービー表示中の出力画像G4,G5を示す図である。なお、「プレイ中」とは、プレイヤーによりプレイヤーキャラクターPChを操作可能な状態をいい、「ムービー表示中」とは、前述のムービーが表示される状態をいう。
3次元グラフィックスである出力画像G(G1〜G5)は、図2〜図6に示すように、複数の視点及び複数の光源に基づいて、仮想空間に配置されたプレイヤーキャラクターPChを含む複数の3次元オブジェクトをレンダリングした複数の画像が合成されたものである。
【0034】
具体的に、出力画像G1〜G5は、1フレーム分の寸法に応じて設定された第1領域A1を有する。この第1領域A1には、プレイヤーキャラクターPChの背面側に設定された第1視点(メイン視点)に基づいて、当該第1視点のビュースクリーン内のプレイヤーキャラクターPCh及び他のオブジェクトが透視変換された第1画像P1(メイン画像)が設定される。また、当該第1領域A1には、第2領域A2、ゲージ表示領域A3、速度表示領域A4、残余時間表示領域A5、スコア表示領域A6、メッセージ表示領域A7及び目的地指示領域A8が設定される。
【0035】
第2領域A2は、詳しくは後述するが、プレイヤーキャラクターPChの顔Fの正面に設定された第2視点に基づいて、当該第2視点のビュースクリーン内の顔Fが透視変換された第2画像P2(サブ画像)が設定される。すなわち、第2領域A2には、当該プレイヤーキャラクターPChの顔Fを描画した第2画像P2が設定される。
ゲージ表示領域A3には、プレイヤーキャラクターPChのエネルギーを示すゲージの画像が設定される。
速度表示領域A4は、仮想空間におけるプレイヤーキャラクターPChの速度を示す画像が設定される。
残余時間表示領域A5は、ゲーム中の制限時間の残余時間を示す画像が設定される。
スコア表示領域A6は、プレイヤーが獲得したスコアを示す画像が設定される。
メッセージ表示領域A7は、プレイヤーに対するメッセージを示す画像が設定される。
目的地指示領域A8は、仮想空間における現在のプレイヤーキャラクターPChからのゴールの方向を示す画像が設定される。
【0036】
〔メインボードの機能部〕
図7は、前述のメインボード8の機能的構成を示す機能ブロック図である。
このような出力画像G1〜G5を生成するメインボード8は、図7に示すように、それぞれ前述の構成81〜86により実現されるモデリング部91、光源設定部92、視点設定部93、描画部94、画像生成部95及び画像出力部96を機能的に有する。
【0037】
〔モデリング部の構成〕
モデリング部91は、ワールド座標系に仮想空間を定義し、複数のポリゴンによりモデリングした各種オブジェクトを当該仮想空間に配置する。このようなオブジェクトとして、前述のプレイヤーキャラクターPChのほか、ノンプレイヤーキャラクターNPCh、建物、ガードレールGR(図4)、並びに、ドラム缶及びダンボール(それぞれ図2)等の障害物が挙げられる。このようなオブジェクトのうち、移動可能に設定されたオブジェクト(オブジェクトに付加される小さなオブジェクトも含み、例えば、プレイヤーキャラクターPChがかけている眼鏡)には、それぞれ固有の物理特性が設定されている。そして、モデリング部91は、当該物理特性及びプレイヤーによる操作に基づいて、各オブジェクトが有するポリゴンを操作し、当該各オブジェクトの動作及び移動を表現する。
【0038】
詳述すると、モデリング部91は、プレイヤーの入力操作に応じて、仮想空間に配置されたプレイヤーキャラクターPChの位置、向き及び姿勢等を変化させるほか、ノンプレイヤーキャラクターNPCh及び他のオブジェクトの位置、向き及び姿勢等を自律的に変化させる。また、モデリング部91は、プレイヤーキャラクターPChの状態や、他のオブジェクトの位置及び動作等に応じて、当該プレイヤーキャラクターPChの表情を動的に変化させる。
例えば、プレイヤーキャラクターPChがのけぞる場合には、モデリング部91は、図3において示したように、当該プレイヤーキャラクターPChがかけている眼鏡をずらし、口を開けて怯えたような表情に変化させる。また、仮想空間内を移動するプレイヤーキャラクターPChの速度が速くなった場合には、モデリング部91は、図4において示したように、プレイヤーキャラクターPChの表情を気合の入った表情に変化させる。更に、プレイヤーキャラクターPChがダメージを受けた場合には、モデリング部91は、図5及び図6において示したように、悲しい表情や、痛がっている表情に変化させる。
【0039】
〔光源設定部の構成〕
図8〜図10は、プレイヤーキャラクターPChに対して設定される光源及び視点を示す図である。詳述すると、図8及び図10は、当該キャラクター用光源CL、第1視点V1及び第2視点V2を示す側面図であり、図9は、第1視点V1及び第2視点V2を示す平面図である。
光源設定部92は、後述する描画部94による描画に供される光源を設定する。この光源設定部92は、第1光源設定部921及び第2光源設定部922を有する。
第1光源設定部921は、仮想空間に対して有効な空間用光源をワールド座標系の所定の位置に設定する。なお、本実施形態では、当該空間用光源として無限遠光源が設定される。
【0040】
第2光源設定部922は、図8及び図10に示すように、プレイヤーキャラクターPChの顔Fにのみ有効なキャラクター用光源CL(本発明のオブジェクト用光源)を設定する。この際、第2光源設定部922は、顔Fの正面に当該光源CLを設定するが、プレイヤーキャラクターPChの動きに追随して、常に当該顔Fの正面に位置するようにキャラクター用光源CLを設定する。すなわち、キャラクター用光源CLは、仮想空間内での位置及び向きが変更される顔Fに対して相対的に同じ位置及び同じ向きに常に設定される。換言すると、キャラクター用光源CLは、仮想空間におけるモデルとしての顔Fの位置及び向きから一義的に決定される位置に設定される。なお、本実施形態では、当該光源CLとして、スポットライトが設定される。
【0041】
〔視点設定部の構成〕
視点設定部93は、前述の仮想空間に、所定範囲のビュースクリーンをそれぞれ有する複数の視点を設定する。この視点設定部93は、第1視点設定部931及び第2視点設定部932を有する。
第1視点設定部931は、前述の第1画像P1を生成するための第1視点V1を設定する。この際、第1視点設定部931は、ゲームのプレイ中では、仮想空間内で移動するプレイヤーキャラクターPChの略全体がビュースクリーン内に含まれるように、当該プレイヤーキャラクターPChの背面側に追随させて第1視点V1を設定する。このため、当該第1視点V1に基づく第1画像P1は、図2〜図4において示したように、背面側からプレイヤーキャラクターPChを見た画像となる。
【0042】
このような第1視点設定部931は、ゲームのプレイ中では、プレイヤーキャラクターPChの動作に応じて、第1視点V1の位置を変化させる。
例えば、図3において示した第1画像P1のように、プレイヤーキャラクターPChがのけぞった場合には、第1視点設定部931は、図8に示すように、第1視点V1を下方に設定する。これにより、当該第1画像P1では、プレイヤーキャラクターPChの下方(足元)がビュースクリーン内に入る。
【0043】
また、図4において示した第1画像P1のように、仮想空間に配置されたオブジェクトであるガードレールGRにプレイヤーキャラクターPChが乗った場合など、当該プレイヤーキャラクターPChの位置が出力画像G1での位置より高くなった場合には、図8に示すように、第1視点V1を高く設定し、より高い位置からプレイヤーキャラクターPChを見下ろすアングルとする。これにより、出力画像G3では、出力画像G1に比べて、プレイヤーキャラクターPChの下方(足元)を含む広い範囲がビュースクリーン内に入る。
なお、ムービー表示中には、図8及び図9に示すように、プレイヤーキャラクターPChの背面側だけでなく正面側にも第1視点V1が設定される。これにより、図5及び図6において示したように、プレイヤーキャラクターPChの動き及び表情が観察し易くなる。
【0044】
第2視点設定部932は、前述の第2領域A2に設定される第2画像P2を生成するための第2視点V2を設定する。
この際、第2視点設定部932は、図8〜図10に示すように、仮想空間内で移動するプレイヤーキャラクターPChの所定の部位(本実施形態では、顔F)の正面が常にビュースクリーンの中心に位置するように第2視点V2を設定する。すなわち、第2視点V2は、仮想空間内での位置及び向きが変更される顔Fに対して相対的に同じ位置及び同じ向きに常に設定される。換言すると、第2視点V2は、仮想空間における顔Fの位置及び向きから一義的に決定される位置に設定される。
【0045】
例えば、プレイヤーキャラクターPChの顔が左右を向く場合には、第2視点設定部932は、図9に示すように、当該顔Fの正面に位置するように第2視点V2を設定する。同様に、図10に示すように、プレイヤーキャラクターPChがのけぞった場合でも、第2視点設定部932は、当該プレイヤーキャラクターPChの顔Fの正面に位置するように、第2視点V2を設定する。
このため、第2視点V2に基づく第2画像P2、すなわち、第2領域A2に設定される第2画像P2は、図2〜図6において示したように、プレイヤーキャラクターPChの動きに依らずに、同一方向(顔Fの正面)から見た顔Fの画像となる。
なお、本実施形態では、第2視点V2の画角は、第1視点V1の画角より狭く、また、第2視点V2の焦点深度は、第1視点V1の焦点深度より短く設定されている。具体的に、第2視点V2の焦点深度は、2mに設定されている。
【0046】
〔描画部の構成〕
図7に戻り、描画部94は、光源設定部92及び視点設定部93により設定された各光源及び各視点に基づいて、当該視点のビュースクリーン内のオブジェクトに対して、マッピング及びシェーディング等のレンダリング処理を施して、第1画像P1及び第2画像P2を生成する。このレンダリング処理には、各種レンダリング手法を採用することができ、例えば、レイトレーシング法(光線追跡法)を採用することができる。このような描画部94は、第1画像描画部941及び第2画像描画部942を有する。
【0047】
第1画像描画部941は、第1光源設定部921により設定された空間用光源と、第1視点設定部931により設定された第1視点V1とに基づいて、当該第1視点V1のビュースクリーン内のオブジェクト(プレイヤーキャラクターPChを含む)をレンダリングして、第1画像P1を描画する。この際、第1画像描画部941は、空間用光源だけでなく、環境光も考慮する。このような第1画像P1は、前述のように、プレイヤーキャラクターPChの動きに追随して、当該プレイヤーキャラクターPChの背面側に設定された第1視点V1に基づく画像である。このため、第1画像P1には、背面側から見たプレイヤーキャラクターPChの略全体が含まれることとなるが、当該プレイヤーキャラクターPChの顔が必ずしも含まれるとは限らない。
【0048】
図11は、第2画像P2の一例を示す図である。
第2画像描画部942は、第1画像描画部941による第1画像P1の描画と同期して、前述のキャラクター用光源CL及び第2視点V2に基づいて、当該第2視点V2のビュースクリーン内のプレイヤーキャラクターPChの顔Fをレンダリングする。
この際、第2画像描画部942は、ビュースクリーン内のプレイヤーキャラクターPChを描画対象に設定し、当該ビュースクリーン内の他のオブジェクトを描画対象から外す。そして、第2画像描画部942は、レンダリングされて生成された顔Fの画像を、所定の背景画像BPに重ねることで、図11(A)に示すような第2画像P2を描画する
【0049】
ここで、プレイヤーキャラクターPChが空間用光源の影に入った場合など、第1画像P1の明度が下がった場合には、第2画像描画部942は、図11(B)に示すように、当該メイン画像の明度に応じて、顔Fをレンダリングした画像の明度を下げる。また、第2画像描画部942は、当該顔Fの画像が重ね合わされる背景画像BPとして、通常の背景画像BP、すなわち、プレイヤーキャラクターPChが空間用光源の影に入っていない場合に用いられる背景画像BP(図11(A)の背景画像BP)より明度が低い背景画像BPを選択する。そして、第2画像描画部942は、選択された背景画像BPに、顔Fをレンダリングした画像を重ねることで、第2画像P2を描画する。
【0050】
図12は、第2画像P2の一部を拡大して示す図である。
また、第2画像描画部942は、顔Fをレンダリングする際に、キャラクター用光源CLの光を反射させる反射領域(鏡面反射領域)を両目Eに設定する。このようにして描画された第2画像P2(図12(A)に示す第2画像P2)では、両目Eにハイライト部HLが形成されるので、当該反射領域が設定されずに描画された第2画像P2(図12(B)に示す第2画像P2)に比べて、プレイヤーキャラクターPChに生命感及び躍動感を与えることができる。
【0051】
図13は、第2画像P2の他の例を示す図である。
更に、第2画像描画部942は、ゲームの進行状況に応じて、描画した第2画像P2にヒットポイント(或いは、プレイヤーストック)を示す加工を行う。例えば、プレイヤーキャラクターPChのヒットポイントが「5」に設定され、当該プレイヤーキャラクターPChがノンプレイヤーキャラクターNPCh等からダメージを負うごとにヒットポイントが「1」減算される場合には、第2画像描画部942は、ダメージを負うごとに、図13(A)に示す第2画像P2に対して、図13(B)〜(F)に示す加工を行う。なお、プレイヤーキャラクターPChがダメージを負ったか否かは、CPU84の演算処理によって判定される。
【0052】
すなわち、プレイヤーキャラクターPChが1回ダメージを負うと、図13(A)に示す第2画像P2に、1回目のダメージを示すレイヤーL1(左下領域の透過度が下がるレイヤーL1)が重ね合わされ、図13(B)に示す第2画像P2が生成される。
更にプレイヤーキャラクターPChがダメージを負うと、図13(C)に示すように、2回目のダメージを示すレイヤーL2(右上領域の透過度が下がるレイヤーL2)が更に重ね合わされる。この後、プレイヤーキャラクターPChがダメージを負うごとに、図13(D)〜(F)に示すように、3〜5回目のダメージを示すレイヤーL3〜L5(左上領域、右下領域及び中央領域の透過度がそれぞれ下がるレイヤーL3〜L5)が順に重ね合わされる。そして、最終的には、図13(F)に示すように、第2画像P2の全領域の透過度が当該レイヤーL1〜L5により下げられる。これにより、プレイヤーキャラクターPChのヒットポイントを視覚的に把握できる。
なお、ダメージの回数に応じたレイヤーをそれぞれ保持し、プレイヤーキャラクターPChが負ったダメージの回数に応じたレイヤーを重ねるようにしてもよい。
【0053】
このような第2画像P2は、前述のように、プレイヤーキャラクターPChの顔Fの動きに追随して、当該顔Fの正面に設定された第2視点V2に基づく画像である。このため、第2画像P2に、プレイヤーキャラクターPChの略全身が含まれることはない。しかしながら、当該第2画像P2には、第1画像P1には必ずしも含まれない顔F、すなわち、プレイヤーキャラクターPChの状態等に応じてモデリング部91により表情が変化される顔Fが、常に含まれる。
【0054】
〔画像生成部及び画像出力部の構成〕
図7に戻り、画像生成部95は、描画部94により描画された第1画像P1及び第2画像P2を、前述の第1領域A1及び第2領域A2に配置するとともに、各領域A3〜A8に前述の画像を配置して、表示装置(図示省略)に表示させる出力画像Gを、1フレームごとに生成する。
画像出力部96は、描画された出力画像Gを1フレームごとに定期的に出力する。
これにより、前述の出力画像Gが表示装置(図示省略)により表示される。
【0055】
〔描画処理〕
以下、前述の情報処理装置1にて実行される描画処理について説明する。
図14は、当該描画処理を示すフローチャートである。
情報処理装置1は、前述のように、ネットワークIF3、カードリーダー4及びUSBモジュール5を介して取得されるゲームプログラム、ディスク装置6によりディスクから読み出されるゲームプログラム、並びに、HDD7に記憶に記憶されたゲームプログラムを実行する。これらゲームプログラムには、描画プログラムが含まれており、情報処理装置1は、当該描画プログラムに沿って以下に示す描画処理を実行し、出力画像Gを生成及び出力する。
【0056】
この描画処理は、前述のように、CPU84及びGPU86等を有するメインボード8により実行される。
この描画処理では、図14に示すように、まず、モデリング部91が、前述の仮想空間を定義し、当該仮想空間のワールド座標系に各種オブジェクトをモデリングする(ステップS1)。
この後、光源設定部92が、空間用光源及びキャラクター用光源CLを設定する(ステップS2)。この際、第1光源設定部921が、空間用光源(本実施形態では無限遠光源)をワールド座標系の所定の位置(座標)に設定し、第2光源設定部922が、キャラクター用光源CLを、常にプレイヤーキャラクターPChの顔Fに対して相対的に同じ位置から同じ向きで当該顔Fに向くように設定する。
【0057】
次に、視点設定部93が、視点を設定する(ステップS3)。この際、第1視点設定部931が、プレイヤーキャラクターPChがビュースクリーンの幅方向の中心に位置するように、当該プレイヤーキャラクターPChに常に向くように第1視点V1を設定する。また、第2視点設定部932が、プレイヤーキャラクターPChの顔Fがビュースクリーンの中心に位置し、常に当該顔Fに対して相対的に同じ位置から同じ向きで顔Fに向くように第2視点V2を設定する。
なお、これらステップS2,S3の順序は逆でもよい。
【0058】
そして、描画部94が、設定された各光源及び各視点に基づいて、当該視点のビュースクリーン内のオブジェクトを描画する(ステップS4)。
具体的に、第1画像描画部941が、空間用光源及び第1視点V1に基づいて、前述の第1画像P1を描画する。また、第2画像描画部942が、キャラクター用光源CL及び第2視点V2に基づいて、前述の第2画像P2を描画する。この際、前述のように、目に反射領域を設定した上で、当該顔Fをレンダリングするほか、必要に応じて、顔F及び背景画像の明度を低くする。更に、第2画像描画部942は、描画した第2画像P2に、プレイヤーキャラクターPChのヒットポイントに応じた前述のレイヤーL1〜L5を重ね合わせる。このような第1画像描画部941による第1画像P1の描画、及び、第2画像描画部942による第2画像P2の描画は、それぞれ同期している。このため、各画像P1,P2の描画においては、各視点V1,V2のビュースクリーン内のオブジェクト(プレイヤーキャラクターPChを含む)が同じタイミングで透視変換される。
【0059】
この後、画像生成部95が、出力画像Gを生成する(ステップS5)。この際、画像生成部95は、生成された第1画像P1及び第2画像P2を、第1領域A1及び第2領域A2に配置した後、各領域A3〜A8に対応する画像をそれぞれ配置して、出力画像Gを生成する。これにより、空間用光源及び第1視点V1に基づいて描画された第1画像P1と、当該第1画像P1の描画と同期し、キャラクター用光源CL及び第2視点V2に基づいて描画された第2画像P2とが配置された出力画像Gが生成される。
そして、画像出力部96が、生成された出力画像Gを、表示装置(図示省略)に出力する(ステップS6)。
【0060】
以上説明した本実施形態に係る情報処理装置1によれば、以下の効果がある。
すなわち、出力画像Gの1フレーム内に、第1視点V1のビュースクリーン内のプレイヤーキャラクターPCh及び他のオブジェクトをレンダリングした第1画像P1と、当該第1視点V1とは異なる位置に設定された第2視点V2のビュースクリーン内のプレイヤーキャラクターPChの顔Fをレンダリングした第2画像P2とが設定される。これによれば、同じプレイヤーキャラクターPChをそれぞれ異なる視点から同時に観察できる。
【0061】
具体的に、第1画像P1は、プレイヤーキャラクターPChの背面側に常に設定され、かつ、視角内に当該プレイヤーキャラクターPChの略全体が含まれる第1視点V1に基づく画像である。このため、当該第1画像P1を観察することにより、仮想空間内でのプレイヤーキャラクターPChの位置、向き及び姿勢等を把握できる。
しかしながら、第1画像P1には、プレイヤーキャラクターPChの正面側が必ずしも含まれないため、当該第1画像P1から、プレイヤーキャラクターPChの正面側部位の変化(具体的には、顔Fの表情)を正確に把握することは困難である。
これに対し、第2画像P2は、ビュースクリーン内にプレイヤーキャラクターPChの顔Fの略全てが含まれるように、当該顔Fの正面に対して常に設定される第2視点V2に基づく画像である。そして、当該顔Fの表情は、モデリング部91により、プレイヤーキャラクターPChの状態等に応じて動的に変化される。このため、当該第2画像P2を観察することにより、動的に変化され、かつ、第1画像P1では観察することが難しい顔Fの表情を把握しやすくすることができる。
従って、プレイヤーキャラクターPChの特徴を把握しやすくすることができるほか、ゲームの演出効果及び興趣を高めることができる。
【0062】
また、第1画像P1及び第2画像P2は、仮想空間に配置された同じプレイヤーキャラクターを各視点V1,V2に基づいてそれぞれレンダリングした画像である。これによれば、個別にモデリングされたプレイヤーキャラクターPChから第1画像及び第2画像を描画する場合に比べ、各画像P1,P2の同期を取り易くすることができるほか、処理の簡略化、及び、描画に利用されるビデオメモリー85の容量を低減することができる。更に、各画像P1,P2が同期しているので、プレイヤーキャラクターPChの全体を第1画像P1により把握しつつ、特定の部位(顔F)を第2画像P2により把握することにより、動的に変化されるプレイヤーキャラクターPChの表情等の特徴を一層把握しやすくすることができる。
【0063】
ここで、ビュースクリーン内のオブジェクトの数が多ければ多いほど、情報処理装置1にかかる負担が大きくなる。これに対し、第2画像描画部942は、第2視点V2のビュースクリーン内のプレイヤーキャラクターPChの部位(主に顔F)のみをレンダリングした画像と、所定の背景画像BPとを重ねることで、第2画像P2を描画する。これによれば、レンダリングされるオブジェクトの数を少なくすることができる。従って、情報処理装置1(メインボード8)の負担を軽減することができる。
また、第2画像P2には、背景画像を除いて、第2視点のビュースクリーン内のプレイヤーキャラクターPChの部位のみが含まれることとなるので、当該プレイヤーキャラクターPChの特徴をより一層把握しやすくすることができる。
【0064】
第1画像P1は、設定された空間用光源及び第1視点V1に基づいて、当該第1視点V1のビュースクリーン内のプレイヤーキャラクターPCh及び他のオブジェクトがシェーディングされて描画される。これに対し、第2画像P2は、プレイヤーキャラクターPChのみに有効なキャラクター用光源CL及び第2視点V2に基づいて、当該第2視点V2のビュースクリーン内の顔Fがシェーディングされて描画される。これによれば、第2視点V2側のプレイヤーキャラクターPChの形状(顔Fの表情)を把握しやすくすることができる。
従って、プレイヤーキャラクターPChの特徴を一層把握しやすくすることができる。
【0065】
プレイヤーキャラクターPChが空間用光源の影に移動するなどして、第1画像P1の明度が下がった場合には、第2画像描画部942は、描画した第2画像P2の明度を下げる。これによれば、第1画像P1と第2画像P2とがそれぞれ同期していることを、観察者に把握しやすくすることができる。従って、プレイヤーキャラクターPChの状態を把握しやすくすることができる。
なお、本実施形態では、第2画像P2における背景画像BPも明度を下げた画像が選択されるので、第2画像P2に含まれる顔Fが浮いて見えることを防止できる。
【0066】
第2視点設定部932により、目Eに反射領域(鏡面反射領域)が設定されるので、当該目Eには、キャラクター用光源CLによりハイライト部HLが形成される。これによれば、プレイヤーキャラクターPChに生命感及び躍動感を付与することができる。
また、プレイヤーキャラクターPChと、その周囲のオブジェクトとがレンダリングされた第1画像P1が第1領域A1に設定され、当該プレイヤーキャラクターPChの顔Fがレンダリングされた第2画像P2が、第1領域A1より小さな第2領域A2に設定された出力画像Gが生成される。これによれば、描画範囲の大きな第1画像P1をメイン画像とし、描画範囲の小さな第2画像P2をサブ画像として観察することができる。従って、プレイヤーキャラクターPChの特徴及び状態をより一層把握しやすくすることができるほか、注視する視点に応じて第1画像P1及び第2画像P2の大きさを調整した出力画像Gを生成することができる。
【0067】
〔実施形態の変形〕
本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記実施形態では、ゲームのプレイ中は、第1視点V1及び第2視点V2は、これらのビュースクリーン内に、プレイヤーキャラクターPChの背面側及び顔Fが含まれるように設定されるとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、3次元オブジェクトの左右の一方側を写すように第1視点を設定し、当該3次元オブジェクトの左右の他方側を写すように第2視点を設定してもよい。すなわち、各視点がそれぞれ異なる位置に設定されればよく、各視点が移動してもよい。
また、視点の数も3つ以上でもよく、各視点に基づく画像が1フレームに設定されればよい。更に、これら視点は、情報処理装置1の使用者が設定してもよい。
【0068】
前記実施形態では、第1視点V1は、3次元オブジェクトとしてのプレイヤーキャラクターPChの略全体を写すように設定され、第2視点V2は、顔Fを写すように設定されるとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、それぞれ位置が異なる第1視点及び第2視点が、3次元オブジェクトの略全体をそれぞれ写すように設定されてもよい。逆に、第1視点及び第2視点が、それぞれ異なる3次元オブジェクトの所定の部位のみを写すように設定されてもよい。
【0069】
前記実施形態では、第1光源設定部921が空間用光源をワールド座標系の所定の位置に設定し、第2光源設定部922がオブジェクト用光源としてのキャラクター用光源CLを、常に顔Fに対して相対的に同じ位置から同じ向きで当該顔Fに向くように設定したが、本発明はこれに限らない。例えば、オブジェクト用光源はなくてもよく、また、第1画像P1の描画に供される第1光源は、前述のキャラクター用光源CLのように、常にプレイヤーキャラクターPChに対して同じ位置から同じ向きで当該プレイヤーキャラクターPChに向くように設定されてもよい。更に、描画対象の3次元オブジェクトが自己発光体である場合には、空間用光源及びオブジェクト用光源を設定しなくてもよい。
また、前記実施形態では、空間用光源として無限遠光源が設定され、キャラクター用光源CLとしてスポットライトが設定されたが、これに限らず、点光源、線光源及び面光源等でもよい。また、当該光源は、情報処理装置1の使用者が設定してもよい。
【0070】
前記実施形態では、第2画像描画部942は、第1画像P1の明度の変化に伴って、第2画像P2の明度を変化させ、明度が異なる背景画像BPを選択するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、第2画像P2の明度は、第1画像P1の明度から独立して設定されてもよい。
【0071】
前記実施形態では、第2画像描画部942は、第2視点V2のビュースクリーン内のプレイヤーキャラクターPChの部位を描画対象に設定し、当該ビュースクリーン内の他のオブジェクトを描画対象から外すとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、当該他のオブジェクトも描画対象に設定してもよい。
【0072】
前記実施形態では、プレイヤーキャラクターPChの目Eに、鏡面反射する反射領域を設定するとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、当該反射領域は設定されなくてもよい。また、鏡面反射に限らず、拡散反射領域としてもよい。この場合、例えば、プレイヤーキャラクターPChがダメージを負うごとに、当該反射領域を鏡面反射領域から拡散反射領域に変化させることで、当該ダメージを表現してもよい。また、鏡面反射領域の光沢度合いを調整して、ハイライト部HLの大きさを変化させることで、ダメージを表現してもよい。
【0073】
前記実施形態では、プレイヤーキャラクターPChは、椅子及び当該椅子に座った人を模してモデリングされた3次元オブジェクトであるとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、人以外の動物でもよく、生命体でないキャラクターを模したオブジェクトでもよい。また、プレイヤーキャラクターは、必ずしも椅子に座っている必要はない。更に、描画対象は、プレイヤーキャラクターでなくてもよい。
【0074】
前記実施形態では、出力画像Gにおいて、第1画像P1が設定される第1領域A1内に、第2画像P2が設定される第2領域A2を配置したが、本発明はこれに限らない。すなわち、第1画像P1と第2画像P2とを1つのフレーム内に配置した出力画像が生成されればよく、各画像P1,P2の大きさも問わない。例えば、第1画像P1と第2画像P2とをそれぞれ分けて配置した出力画像を生成するようにしてもよく、第1画像P1が設定される第1領域A1と、第2画像P2が設定される第2領域A2とを入れ替えてもよい。
【0075】
前記実施形態では、描画プログラムがゲームプログラムに組み込まれた形態を例示したが、本発明はこれに限らない。例えば、CAD(Computer Aided Design)等の3次元グラフィックスを生成するアプリケーションプログラムに、本発明の描画プログラムを組み込んでもよく、前述のゲームとは異なるゲームプログラムに組み込んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、3次元グラフィックスを描画する描画プログラムに利用でき、特にゲームやCADに利用される描画プログラムに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…情報処理装置(描画装置)、93…視点設定部、94…描画部、95…画像生成部、A1…第1領域、A2…第2領域、BP…背景画像、CL…キャラクター用光源(オブジェクト用光源)、E…目、F…顔(所定の部位)、G(G1〜G5)…出力画像、P1…第1画像、P2…第2画像、PCh…プレイヤーキャラクター(3次元オブジェクト)、S2…ステップ(光源設定ステップ)、S3…ステップ(視点設定ステップ)、S4…ステップ(描画ステップ)、S5…ステップ(画像生成ステップ)、V1…第1視点、V2…第2視点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画装置により実行され、仮想の3次元空間に配置された3次元オブジェクトに基づく3次元グラフィックスを描画する描画プログラムであって、
それぞれのビュースクリーン内に前記3次元オブジェクトが含まれる第1視点及び第2視点を、それぞれ異なる位置に設定する視点設定ステップと、
前記第1視点に基づいて前記3次元オブジェクトをレンダリングした第1画像、及び、前記第2視点に基づいて前記3次元オブジェクトをレンダリングした第2画像をそれぞれ描画する描画ステップと、
互いに同期した前記第1画像及び前記第2画像を1フレーム内に設定した出力画像を生成する画像生成ステップと、を実行させることを特徴とする描画プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載の描画プログラムにおいて、
前記視点設定ステップでは、
前記第1視点を、当該第1視点のビュースクリーン内に前記3次元オブジェクトの略全体が含まれるように設定させ、
前記第2視点を、当該第2視点のビュースクリーン内に前記3次元オブジェクトの所定の部位が含まれるように、当該3次元オブジェクトの動きに応じて位置が変動する前記所定の部位に追随して設定させることを特徴とする描画プログラム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の描画プログラムにおいて、
前記視点設定ステップでは、
前記第1視点を、前記3次元オブジェクトの一方の側に設定させ、
前記第2視点を、前記3次元オブジェクトの前記一方の側とは反対側に設定させることを特徴とする描画プログラム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の描画プログラムにおいて、
前記描画ステップでは、前記第2視点のビュースクリーン内の前記3次元オブジェクトをレンダリングした画像を所定の背景画像に重ねた前記第2画像を描画させることを特徴とする描画プログラム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の描画プログラムにおいて、
前記描画ステップの前に、前記3次元空間に対して有効な空間用光源と、前記第2視点のビュースクリーン内の前記3次元オブジェクトの部位に対して有効なオブジェクト用光源とを設定する光源設定ステップを実行させ、
前記描画ステップでは、前記第1視点及び前記空間用光源に基づいてシェーディングされた前記第1画像を描画し、前記第2視点及び前記オブジェクト用光源に基づいてシェーディングされた前記第2画像を描画させることを特徴とする描画プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の描画プログラムにおいて、
前記描画ステップでは、前記第1画像の明度に応じて、前記第2画像の明度を設定させることを特徴とする描画プログラム。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の描画プログラムにおいて、
前記3次元オブジェクトは、目を有する顔を備えたキャラクターをモデリングしたオブジェクトであり、
前記視点設定ステップでは、前記顔をビュースクリーンの中心とし、かつ、当該顔に対向する位置に前記第2視点を設定させ、
前記描画ステップでは、前記目に反射領域を設定させることを特徴とする描画プログラム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の描画プログラムにおいて、
前記画像生成ステップでは、前記1フレーム内に第1領域と、前記第1領域内に当該第1領域より小さい第2領域とを設定し、前記第1領域及び前記第2領域に、それぞれ前記第1画像及び前記第2画像を設定して、前記出力画像を生成させることを特徴とする描画プログラム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の描画プログラムをコンピューター読取可能に記録したことを特徴とする記録媒体。
【請求項10】
仮想の3次元空間内に配置された3次元オブジェクトに基づく3次元グラフィックスを描画する描画方法であって、
それぞれのビュースクリーン内に前記3次元オブジェクトが含まれる第1視点及び第2視点を、それぞれ異なる位置に設定する視点設定ステップと、
前記第1視点に基づいて前記3次元オブジェクトをレンダリングした第1画像、及び、前記第2視点に基づいて前記3次元オブジェクトをレンダリングした第2画像をそれぞれ描画する描画ステップと、
互いに同期した前記第1画像及び前記第2画像を1フレーム内に設定した出力画像を生成する画像生成ステップと、を有することを特徴とする描画方法。
【請求項11】
仮想の3次元空間内に配置された3次元オブジェクトに基づく3次元グラフィックスを描画する描画装置であって、
それぞれのビュースクリーン内に前記3次元オブジェクトが含まれる第1視点及び第2視点を、それぞれ異なる位置に設定する視点設定部と、
前記第1視点に基づいて前記3次元オブジェクトをレンダリングした第1画像、及び、前記第2視点に基づいて前記3次元オブジェクトをレンダリングした第2画像をそれぞれ描画する描画部と、
互いに同期した前記第1画像及び前記第2画像を1フレーム内に設定した出力画像を生成する画像生成部と、を有することを特徴とする描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−65552(P2011−65552A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217447(P2009−217447)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(310021766)株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント (417)
【Fターム(参考)】