説明

描画装置、描画処理プログラム、画像出力装置

【課題】一時記憶部を効率よく活用した描画処理を行うことができる描画装置を提供する。
【解決手段】描画制御部15は、与えられた描画命令をページ単位で描画処理部11または描画処理部12に割り当てて描画処理を行わせる。描画処理を行ってゆき、予め決められたタイミングで一時記憶部13,14に記憶されている描画結果の使用率を判定し、その使用率が予め設定されている閾値より小さい場合には、それまで使用していた割り当て方法では一時記憶部13,14が利用されないと判断し、描画処理部11,12に描画命令を割り当てる方法を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置、描画処理プログラム、画像出力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、描画命令に従って描画処理を行い、画像を生成している。近年では、そのような描画処理を行う手段(描画処理部)を複数設けて、1つの場合に比べて高速化することも行われている。このような複数の描画処理部を設けた構成では、例えばページ単位でそれぞれの描画処理部に描画処理を割り当て、処理が終了した描画処理部へ次のページの描画処理を割り当ててゆく。
【0003】
また、複数のページの画像を描画する場合に、類似した描画命令が与えられることがある。そのような場合に一連の描画命令とその一連の描画命令に従って描画処理を行った結果とを対応づけて記憶しておき、類似した一連の描画命令を受け取った場合に対応する描画結果を読み出して使用する、いわゆるキャッシュの技術も用いられている。このキャッシュ技術により、すべて描画命令に従って描画処理を行った場合よりも処理時間を短縮している。
【0004】
複数の描画処理部を有し、キャッシュ技術を併用するものもある。その場合には、それぞれの描画処理部に対応して一時記憶部が設けられており、それぞれの描画処理部が独立してキャッシュ制御を行っている。そのため、規則性のあるページ順で描画命令が与えられ、1つの描画処理部に類似した描画命令を含むページが割り当てられると、一時記憶部への登録とその利用が行われる。しかし、それぞれの描画処理部へのページの配分が乱れると、一時記憶部に記憶されている描画結果が利用されないばかりか、一時記憶部への登録も行われなくなる。
【0005】
一例として、2つの描画処理部が設けられており、奇数ページが類似し、偶数ページが類似する複数ページの画像を描画する場合、一方の描画処理部が1ページ目、他方の描画処理部が2ページ目の描画を行い、1ページ目の描画が先に終了すれば、一方の描画処理部は1ページ目と類似した3ページ目を処理し、類似した1以上の描画命令と描画結果が一時記憶部に記憶され、その後のページの処理に利用される。しかし、一方の描画処理部が1ページ目、他方の描画処理部が2ページ目の描画を行い、2ページ目の描画が先に終了した場合には、他方の描画処理部が3ページ目の描画処理を行い、一方の描画処理部が4ページ目の描画処理を行うことになり、それぞれの描画処理部は類似するページを処理していないので一時記憶部には記憶されず、以降の処理で描画結果が利用されることはない。
【0006】
例えば特許文献1では、ある描画処理部に対応する一時記憶部に1以上の描画命令が記憶されていない場合、別の描画処理部に対応する一時記憶部を検索し、そちらに存在していれば対応づけられている描画結果を利用している。これにより、他の一時記憶部を検索しない場合に比べて一時記憶部に記憶されている描画結果の利用効率が向上し、描画速度が速くなる。しかし、上述の例で説明した一時記憶部に記憶されない場合については回避されない。
【0007】
また、例えば特許文献2では一時記憶部を複数の描画処理部によって共有し、いずれの描画処理部から登録された1以上の描画命令と描画結果の対についても、いずれの描画処理部からでも読み出して使用し、描画処理を行う構成となっている。なお、この特許文献2ではフォームデータについて記憶させる指示を受けて一時記憶部に記憶するものであり、上述のように類似する1以上の描画命令について描画する場合に一時記憶部に記憶するものとは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−172725号公報
【特許文献2】特開2000−335022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、一時記憶部を効率よく活用した描画処理を行うことができる描画装置および描画処理プログラムと、そのような描画装置を用いた画像出力装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願請求項1に記載の発明は、1以上の描画命令と該1以上の描画命令による描画結果を対応づけて記憶する一時記憶手段と、描画命令に従って描画処理を行うとともに、連続して描画処理を行ったページで類似した1以上の描画命令が存在する場合に前記一時記憶手段に当該1以上の描画命令と描画結果を対応づけて記憶させ、また、描画する1以上の描画命令に対応づけられた描画結果が前記一時記憶手段に記憶されている場合に該1以上の描画命令に対応づけられている描画結果を読み出して使用する複数の描画処理手段と、与えられた描画命令をいずれかの描画処理手段に対して割り当てて描画処理を行わせる制御を行うとともに予め決められたタイミングで前記一時記憶手段に記憶されている描画結果の使用率を判定し該使用率が予め設定されている閾値より小さいの場合には前記描画命令を割り当てる方法を切り替える描画制御手段を有することを特徴とする描画装置である。
【0011】
本願請求項2に記載の発明は、本願請求項1に記載の発明における前記描画制御手段が、前記描画命令の割り当て方法として、予め決められたページ順で前記描画処理手段に描画命令を割り当てる方法を含むことを特徴とする描画装置である。
【0012】
本願請求項3に記載の発明は、本願請求項1に記載の発明における前記描画制御手段が、前記描画命令の割り当て方法として、前記描画処理手段による描画結果を受け取る装置に依存したページ順で前記描画処理手段に描画命令を割り当てる方法を含むことを特徴とする描画装置である。
【0013】
本願請求項4に記載の発明は、本願請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の発明の構成に、さらに、前記描画制御手段が前記使用率を判定するタイミングおよび割り当て方法を切り替えるか否かを判定する前記閾値を設定する判定設定手段を有することを特徴とする描画装置である。
【0014】
本願請求項5に記載の発明は、本願請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の発明の構成に、さらに、複数の割り当て方法を切り替える際の優先順位を設定する割り当て方法設定手段を有し、前記描画制御手段は、それぞれの割り当て方法における優先順位に従って割り当て方法を選択することを特徴とする描画装置である。
【0015】
本願請求項6に記載の発明は、コンピュータに、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の描画装置の機能を実行させるものであることを特徴とする描画処理プログラムである。
【0016】
本願請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の描画装置による描画結果を受け取って画像を出力する出力手段を有することを特徴とする画像出力装置である。
【発明の効果】
【0017】
本願請求項1に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、一時記憶部を効率よく活用した描画処理を行うことができるという効果がある。
【0018】
本願請求項2に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、それぞれの描画処理手段が類似した描画命令の処理に対応した一時記憶手段への登録の確率を高めることができる。
【0019】
本願請求項3に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、それぞれの描画処理手段が類似した描画命令の処理に対応した一時記憶手段への登録の確率を高めることができる。
【0020】
本願請求項4に記載の発明によれば、使用率を判定するタイミングおよび割り当て方法を切り替えるための閾値を変更することができる。
【0021】
本願請求項5に記載の発明によれば、複数の割り当て方法から、使用する割り当て方法の順番を変更することができる。
【0022】
本願請求項6に記載の発明によれば、本願請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明の効果を得ることができる。
【0023】
本願請求項7に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べて、高速に画像を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の描画装置の実施の一形態を示す構成図である。
【図2】本発明の描画装置の実施の一形態における描画制御部の動作の一例を示す流れ図である。
【図3】本発明の描画装置の実施の一形態における描画制御部の動作の具体例の説明図である。
【図4】本発明の描画装置の実施の一形態の変形例を示す構成図である。
【図5】設定部における設定画面の一例の説明図である。
【図6】本発明の画像出力装置の実施の一形態を示す構成図である
【図7】本発明の画像出力装置の実施の一形態を含むシステムの一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の描画装置の実施の一形態を示す構成図である。図中、11,12は描画処理部、13,14は一時記憶部、15は描画制御部である。図1に示した例では、描画処理部を2つ設けた例を示している。2つの描画処理部を描画処理部11,描画処理部12としている。描画処理部は3以上でもよく、数は制限されない。
【0026】
それぞれの描画処理部11,12は、描画制御部15の制御のもとで、割り当てられたページの描画命令に従って描画処理を行う。また、連続して描画処理を行ったページで類似した1以上の描画命令が存在する場合に、その1以上の描画命令と、その1以上の描画命令による描画結果とを対応付け、一時記憶部(この例では描画処理部11は一時記憶部13、描画処理部12は一時記憶部14)に記憶させる。さらに、一時記憶部(一時記憶部13または一時記憶部14)に1以上の描画命令に対応づけられて描画結果が記憶されており、受け取った描画命令中に記憶されている1以上の描画命令が含まれている場合に、その1以上の描画命令に対応づけられている描画結果を読み出して、受け取った描画命令中の当該1以上の描画命令による描画結果として使用する。
【0027】
図1に示す例では、それぞれ描画処理部11,12に対応して一時記憶部13,14が設けられている。一時記憶部13,14は、1以上の描画命令と、その1以上の描画命令による描画結果を対応づけて記憶する。なお、新たに1以上の描画命令と描画結果を記憶する際に空きがない場合には、古い順や使用頻度が低い順など、従来から用いられている手法を用いて1以上の描画命令と描画結果を削除し、新たに1以上の描画命令と描画結果を記憶するとよい。この例では一時記憶部をそれぞれの描画処理部に対応して設けているが、一時記憶部を共有する構成であってもよい。
【0028】
描画制御部15は、与えられた描画命令をページ単位で描画処理部11または描画処理部12に割り当てて描画処理を行わせる。また、一時記憶部13および一時記憶部14の利用状況を監視しており、予め決められたタイミングで一時記憶部13,14に記憶されている描画結果の使用率を判定し、その使用率が予め設定されている閾値より小さい場合には、描画命令を割り当てる方法を切り替える。描画命令を割り当てる方法は、予め複数の方法を設けておけばよく、利用者が設定してもよいように構成してもかまわない。いずれの方法を用いるかは、例えばそれぞれの方法に優先順位をつけておいて、その優先順位に従って選択すればよい。
【0029】
図2は、本発明の描画装置の実施の一形態における描画制御部の動作の一例を示す流れ図である。一連のページの描画命令を受け取ると、描画制御部15は、S41において、初期に用いる描画命令を割り当てる方法を設定する。例えばデフォルトで用いる割り当て方法を予め決めておいて、その割り当て方法を設定すればよい。あるいは、割り当て方法に優先順位をつけている場合には、優先順位の最も高い割り当て方法を設定すればよい。もちろん、このほかの設定方法であってもよい。
【0030】
S42において、現在設定されている割り当て方法によって描画処理部11に対して、1ページ分の描画命令を割り当てる。S43において、全ページの描画命令の割り当てが完了したか否かを判定し、未割り当てのページの描画命令が残っていれば、S44へ進む。全ページの描画命令の割り当てが完了したら、描画命令の割り当ての処理は終了するが、この例ではS48において、この時点で使用していた描画命令の割り当て方法の優先順位を上昇させて、割り当て方法の変更の際に選択される確率をそれまでよりも高めておく。もちろん、S48の処理を行わなくてもよい。
【0031】
S44において、予め決められたタイミングとなったか否かを判定する。このタイミングは、例えばページ数や描画命令の数など、種々の情報により条件を設定しておき、この条件を満たすか否かを判定すればよい。予め決められたタイミングに達していなければ、S42へ戻って、次の描画命令の割り当てから繰り返す。
【0032】
予め決められたタイミングとなった場合には、S45において、一時記憶部13および一時記憶部14の使用率を算出する。一時記憶部13,14の使用率は、例えば、描画処理部11,12が描画処理を行ったページ数をP、そのうち一時記憶部13,14に記憶されている描画結果を使用したページ数をCとし、
使用率=C/P
で算出すればよい。あるいは、描画処理部11,12によりイメージを描画処理した面積をS、そのうち一時記憶部13,14に記憶されている描画結果のイメージを使用した面積をTとし、
使用率=T/S
で算出してもよい。もちろん、このほかの算出方法により使用率を算出してもよい。
【0033】
S46において、S45で算出した使用率が予め設定されている閾値より小さいか否かを判定する。使用率が閾値以上であれば、現在使用している割り当て方法に従って描画命令の割り当てを行うことにより一時記憶部13,14が利用されているものと判断し、S42へ戻って現在の割り当て方法のままで処理を継続する。
【0034】
利用率が予め設定されている閾値よりも小さい場合には、現在の割り当て方法では一時記憶部13,14が利用されていないと判断し、S47において、描画命令の割り当て方法を切り替える。例えば、予め決められている順に割り当て方法を変更したり、あるいは、割り当て方法に優先順位が設定されている場合にはその優先順位に従って次の順位の割り当て方法を選択して切り替えればよい。あるいは、描画処理部11,12による描画結果を受け取る装置に依存したページ順で描画命令を割り当てる方法を選択し、その割り当て方法に切り替えてもよい。もちろん、それまでの描画命令の傾向を解析し、解析結果に従って割り当て方法を選択するなど、種々の選択方法により割り当て方法を選択し、選択した割り当て方法に切り替えてもよい。
【0035】
描画命令の割り当て方法の具体例としては、描画処理部11、12からの割り当て要求の早い順に割り当ててゆく方法、奇数ページと偶数ページに分けて一方の描画処理部には奇数ページの描画命令を割り当て、他方の描画処理部には偶数ページの描画命令を割り当てる方法、nページを単位として連続したnページを1つの描画処理部に割り当てる方法、1ページ目から連続したページを一方の描画処理部に割り当てるとともに最終ページから連続したページを他方の描画処理部に割り当てる方法、などがある。もちろん、このほかの割り当て方法を設定しておいてもよい。
【0036】
また、描画結果を受け取る装置に依存したページ順で描画命令を割り当てる方法としては、両面オプションが備えられている装置であれば上述の奇数ページと偶数ページに分ける方法、フィニッシャオプションが備えられている装置であれば1ページ目と最終ページから割り当てる方法やnページ単位で割り当てる方法などがある。もちろん、このほかの装置構成に依存して割り当て方法が設定され、選択されてもよい。また、上述の装置に依存しない割り当て方法とともに、あるいは両者を組み合わせた割り当て方法を含め、選択して切り替える構成であってもよい。
【0037】
割り当て方法を切り替えた後はS42へ戻り、今度は切り替えた後の割り当て方法によって描画命令の割り当てを行ってゆくことになる。全ページの描画命令の割り当てが終了すれば、描画命令の割り当て処理を終了する。その際に、使用していた描画命令の割り当て方法について、S48で優先順位を上げてもよい。
【0038】
図3は、本発明の描画装置の実施の一形態における描画制御部の動作の具体例の説明図である。この具体例では、奇数ページの1以上の描画命令が類似し、また偶数ページの1以上の描画命令が類似しているが、奇数ページと偶数ページでは類似した描画命令が存在していないものとしている。
【0039】
図3(A)では、初期の描画命令の割り当て方法として、割り当て要求の早い順に次のページの描画命令を割り当てる方法を採用したものとし、その場合の描画命令の割り当ての一例を示している。この図3(A)に示した例では、1ページ目の描画命令を描画処理部11に、2ページ目の描画命令を描画処理部12に割り当ててそれぞれ描画処理を行わせる。その後、描画処理部12における描画処理が描画処理部11よりも先に終了して描画命令を要求し、3ページ目の描画命令を描画処理部12に割り当て、続いて描画処理部11が描画命令を要求して4ページ目の描画命令を描画処理部11に割り当てたものとしている。
【0040】
この場合、例えば描画処理部11では1ページ目の描画命令に従って描画処理を行った後に4ページ目の描画命令に従った描画処理を行う。1ページ目と4ページ目の描画命令には類似した描画命令が存在しないので、一時記憶部13への描画命令と描画結果の登録は行われない。従って、続くページの描画処理で一時記憶部13は使用されない。描画処理部12についても、2ページ目の描画命令に従って描画処理を行った後に3ページ目の描画命令に従った描画処理を行う。2ページ目と3ページ目の描画命令には類似した描画命令が存在しないので、一時記憶部14への描画命令と描画結果の登録は行われない。従って、続くページの描画処理で一時記憶部14は使用されない。
【0041】
例えば10ページの描画処理を行ったことをタイミングとして割り当て方法を切り替えるか否かを判定する。図3(A)に示した例で1つの描画処理部に奇数ページと偶数ページの描画命令が交互に割り当てられると一時記憶部への登録が生じず、従って一時記憶部は利用されない。そのため、この場合には一時記憶部の使用率が予め設定されている閾値を下回ることがある。
【0042】
使用率が予め設定されている閾値を下回った場合には、描画命令の割り当て方法を切り替える。例えば、奇数ページと偶数ページに分けて割り当てる方法を選択し、切り替えた場合を図3(B)に示している。図3(B)に示した例では、奇数ページの描画命令を描画処理部11に、偶数ページの描画命令を描画処理部12に割り当てるものとしている。この割り当て方法に切り替えた後、11ページ目以降の描画命令については、11ページ目、13ページ目、…について描画処理部11で描画処理を行い、12ページ目、14ページ目、…については描画処理部12で描画処理を行う。
【0043】
この場合、例えば描画処理部11では11ページ目の描画命令に従って描画処理を行った後に13ページ目の描画命令に従った描画処理を行うと、11ページ目と類似した描画命令が13ページ目に存在することから、その類似した描画命令とその描画結果が一時記憶部13に登録され、続く15ページ目以降の描画処理の際に利用されることになる。描画処理部12についても、12ページ目の描画命令に従って描画処理を行った後に14ページ目の描画命令に従った描画処理を行うと、12ページ目と類似した描画命令が14ページ目の描画命令に存在することから、その類似した描画命令とその描画結果が一時記憶部14に登録され、続く16ページ目以降の描画処理の際に利用されることになる。
【0044】
例えば20ページの描画処理を行ったタイミングで割り当て方法を切り替えるか否かを判定すると、一時記憶部13,14が使用されており、使用率は10ページ目までの描画処理に比べて高くなる。例えば予め設定されている閾値以上となれば、割り当て方法を変更せずに21ページ以降の描画命令の割り当てを行ってゆくことになる。
【0045】
例えば奇数ページと偶数ページに分けて割り当てる方法でも一時記憶部の使用率が予め設定されている閾値を下回る場合には、さらに別の割り当て方法を選択して切り替え、続く10ページの描画命令の割り当てを行ってゆく。このようにして、一時記憶部の使用率が予め設定されている閾値を下回る場合には描画命令の割り当て方法を切り替えてゆき、一時記憶部の使用率が予め設定されている閾値以上となる割り当て方法を見つけて使用し、描画処理部において一時記憶部をなるべく利用した描画処理が行われるようにしている。
【0046】
図4は、本発明の描画装置の実施の一形態の変形例を示す構成図である。図中、16は設定部である。この変形例では、図1に示した構成に設定部16を設けた例を示している。
【0047】
設定部16は、描画制御部15が使用率を判定するタイミング、割り当て方法を切り替えるか否かを判定するための閾値等を設定する判定設定手段、および、描画命令の割り当て方法とその優先順位などを設定する割り当て方法設定手段として機能する。もちろん、これらの1以上が設定されるように構成すればよく、設定部16で設定しない項目については予め決めておけばよい。もちろん、そのほかの項目についても設定するように構成してもよい。この設定部16は、各種設定を利用者から受けるほか、外部の装置、他のソフトウェアなどから受け取る構成であってもよい。
【0048】
図5は、設定部における設定画面の一例の説明図である。設定部16は、例えば図5に示す設定画面を利用者に提示し、利用者からの設定を受け取るように構成してもよい。図5(A)に示した設定画面では、使用率を判定するタイミングとしてページ数を設定する項目(キャッシュチェックと記載)と、割り当て方法を切り替えるか否かを判定するための閾値を設定する項目(キャッシュ使用率閾値と記載)を設定する。この例では、10ページの描画命令を処理する毎に使用率を判定すること、およびそのタイミングで一時記憶部13,14の使用率が5%を下回った場合に描画命令の割り当て方法を切り替えることを設定している。キャッシュチェックの欄で設定された値が、例えば図2に示した動作例ではS44における予め決められたタイミングとなったか否かの判定で用いられることになる。もちろん、他の条件でこの判定を行う場合には、その判定条件に沿った設定を行えばよい。また、キャッシュ使用率閾値で設定された値が、図2に示した動作例ではS46における使用率の判定に用いられる。
【0049】
図5(B)に示した設定画面では、描画命令の割り当て方法とその優先順位を設定する画面の一例を示している。「先着順」と記載した描画命令の割り当て方法は、描画処理部11、12からの割り当て要求の早い順に割り当ててゆく方法である。また、「奇数、偶数ごと」と記載した描画命令の割り当て方法は、奇数ページと偶数ページに分けて一方の描画処理部には奇数ページの描画命令を割り当て、他方の描画処理部には偶数ページの描画命令を割り当てる方法である。さらに、「nページごと」と記載した描画命令の割り当て方法は、nページを単位として連続したnページを1つの描画処理部に割り当てる方法である。「1ページからと最終ページから」と記載した描画命令の割り当て方法は、1ページ目から連続したページを一方の描画処理部に割り当てるとともに最終ページから連続したページを他方の描画処理部に割り当てる方法である。それに、利用者が設定した割り当て方法として「ユーザー定義5」および「ユーザー定義6」が登録されている。もちろん、このほかの割り当て方法を設定しておいてもよい。
【0050】
これらの割り当て方法について、優先順位を対応づけている。図5(B)に示した例では、「先着順」をデフォルトの割り当て方法とし、「奇数、偶数ごと」の割り当て方法を優先順位1番、「nページごと」の割り当て方法を優先順位2番、「1ページからと最終ページから」の割り当て方法を優先順位3番とし、「ユーザー定義5」および「ユーザー定義6」の割り当て方法を優先順位4番、5番としている。もちろん、これらの優先順位は変更してもよいし、図2に示した動作例ではS48において変更される場合もある。なお、この例では「先着順」をデフォルトの割り当て方法として優先順位を付していないが、この「先着順」についても優先順位を付して、その優先順位が変更されてもよいように構成してもよい。
【0051】
図5(A)、(B)に示した設定画面は一例であって、その画面形状や内容は変更されてよい。また、図5(A)、(B)に示した設定画面のいずれか一方のみや、両者を統合した画面でもよい。設定する項目に応じて取捨選択され、さらに項目が追加されてもよいことは言うまでもない。
【0052】
図6は、本発明の画像出力装置の実施の一形態を示す構成図、図7は、本発明の画像出力装置の実施の一形態を含むシステムの一例を示す構成図である。図中、21はゲートウェイ、22は記憶部、23は描画部、24は出力制御部、31は画像処理部、32は画像出力部、33は端末である。図7に示したシステムでは、各端末33から送られてくる描画命令を画像処理部31が受け取り、画像を生成して画像出力部32に送り、画像出力部32により画像を出力する。なお、画像処理部31と画像出力部32は別体である場合に限らず、一体に構成されていてもよい。
【0053】
画像処理部31の構成の一例を図6に示している。ゲートウェイ21は、端末33など、外部から送られてくる描画命令を受け取るインタフェースである。
【0054】
記憶部22は、ゲートウェイ21で受け取った描画命令や描画部23で描画した画像を記憶する。なお、描画部23の一時記憶部13,14をこの記憶部22により構成してもかまわない。
【0055】
描画部23は、上述の本発明の描画装置の実施の一形態で説明した構成を有しており、記憶部22に記憶されている描画命令を読み出し、描画命令に従って画像を描画し、記憶部22に記憶させる。
【0056】
出力制御部24は、描画部23で描画され、記憶部22に記憶されている画像を読み出し、画像出力部32を制御して画像の出力を行わせる。
【0057】
本発明の描画装置の実施の一形態で説明した描画処理部11,12および描画制御部15の機能、あるいはさらに本発明の画像出力装置の実施の一形態で説明した出力制御部24の機能を、全部あるいは部分的に、コンピュータに実行させるプログラムによって実現してもよい。その場合、そのプログラムおよびそのプログラムが用いるデータなどは、コンピュータが読み取る記憶媒体に記憶させておいてもよい。この記憶媒体は、コンピュータのハードウェア資源に備えられている図示しない読取部に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気等のエネルギーの変化状態を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取部にプログラムの記述内容を伝達するものである。例えば、光磁気ディスク,光ディスク(CD、DVDなどを含む)、磁気ディスク,メモリ(ICカード、メモリカード、フラッシュメモリなどを含む)等である。もちろんこれらの記憶媒体は、可搬型に限られるものではない。
【0058】
これらの記憶媒体にプログラムを格納しておき、例えばコンピュータの図示しない読取部あるいは図示しないインタフェースにこれらの記憶媒体を装着してコンピュータからプログラムを読み出し、内部メモリまたは図6に示す構成では記憶部22(磁気ディスクやシリコンディスクなどを含む)に記憶し、CPUによってプログラムを実行することによって、上述の本発明の描画装置の実施の一形態または本発明の画像出力装置の実施の一形態で説明した描画処理部11,12や描画制御部15、出力制御部24の機能が全部あるいは部分的に実現される。あるいは、通信路を介してプログラムをコンピュータに転送し、コンピュータでは例えば図6に示す構成のゲートウェイ21でプログラムを受信して内部メモリまたは記憶部22に記憶し、CPUによってプログラムを実行することによって実現してもよい。
【0059】
もちろん、描画処理部11,12や描画制御部15、出力制御部24を部分的にハードウェアによって構成してもよいし、全部をハードウェアで構成してもよい。あるいは、他の機能のプログラムを含み、または他の機能のプログラムの一部として組み込まれていてもよい。また、図示しない様々な装置が含まれた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0060】
11,12…描画処理部、13,14…一時記憶部、15…描画制御部、16…設定部、21…ゲートウェイ、22…記憶部、23…描画部、24…出力制御部、31…画像処理部、32…画像出力部、33…端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の描画命令と該1以上の描画命令による描画結果を対応づけて記憶する一時記憶手段と、描画命令に従って描画処理を行うとともに、連続して描画処理を行ったページで類似した1以上の描画命令が存在する場合に前記一時記憶手段に当該1以上の描画命令と描画結果を対応づけて記憶させ、また、描画する1以上の描画命令に対応づけられた描画結果が前記一時記憶手段に記憶されている場合に該1以上の描画命令に対応づけられている描画結果を読み出して使用する複数の描画処理手段と、与えられた描画命令をいずれかの描画処理手段に対して割り当てて描画処理を行わせる制御を行うとともに予め決められたタイミングで前記一時記憶手段に記憶されている描画結果の使用率を判定し該使用率が予め設定されている閾値より小さいの場合には前記描画命令を割り当てる方法を切り替える描画制御手段を有することを特徴とする描画装置。
【請求項2】
前記描画制御手段は、前記描画命令の割り当て方法として、予め決められたページ順で前記描画処理手段に描画命令を割り当てる方法を含むことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項3】
前記描画制御手段は、前記描画命令の割り当て方法として、前記描画処理手段による描画結果を受け取る装置に依存したページ順で前記描画処理手段に描画命令を割り当てる方法を含むことを特徴とする請求項1に記載の描画装置。
【請求項4】
さらに、前記描画制御手段が前記使用率を判定するタイミングおよび割り当て方法を切り替えるか否かを判定する前記閾値を設定する判定設定手段を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の描画装置。
【請求項5】
さらに、複数の割り当て方法を切り替える際の優先順位を設定する割り当て方法設定手段を有し、前記描画制御手段は、それぞれの割り当て方法における優先順位に従って割り当て方法を選択することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の描画装置。
【請求項6】
コンピュータに、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の描画装置の機能を実行させるものであることを特徴とする描画処理プログラム。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の描画装置による描画結果を受け取って画像を出力する出力手段を有することを特徴とする画像出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−59873(P2013−59873A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198203(P2011−198203)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【特許番号】特許第4905746号(P4905746)
【特許公報発行日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】