説明

描画装置

【課題】搬送される用紙のずれに対する画像の補正処理を素早く行う。
【解決手段】複数のノズル孔を有する吐出ヘッドと、ワークを搬送するワーク搬送部と、搬送される前記ワークの搬送ずれ量を取得する搬送ずれ量取得部と、制御部と、を備え、前記制御部では、前記複数のノズル孔を区分して複数のノズル群を形成するとともに、前記ノズル群毎に前記ワークに描画する画像データを割り当て、取得された前記搬送ずれ量に基づいて、前記複数のノズル群のうち、特定された特定ノズル群に割り当てられた前記画像データを補正し、補正された補正画像データに基づいて、前記ワークに向けて前記特定ノズル群から液滴を吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
搬送される記録媒体に向けて液滴を吐出し、当該記録媒体に画像を描画する描画装置では、画像の描画中に記録媒体が蛇行し、記録媒体の端部が規定の位置から外れてしまう、という課題があった。そこで、ステアリング装置を設けることにより、記録媒体の搬送ずれを低減させる方法があった。しかし、ステアリング装置を設けることで、装置が高価となり、また、装置の大型化を招く問題があった。そこで、記録媒体の搬送ずれ量に基づいて、吐出ヘッドの使用ノズルに対応する画像データを全てスライドさせる、データシフトが知られている(特許文献1、2)。また、その他の画像位置補償方法として、記録媒体の位置に応じてヘッドユニットの位置を移動追従する方法が知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−138489号公報
【特許文献2】特開2007−130881号公報
【特許文献3】特開2009−83350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなデータシフト式の処理方法は、例えば、ラインヘッドの吐出可能領域のほぼ全域に渡りデータをシフトさせるため、データ処理量が膨大となり、処理速度が遅れてしまう、という課題があった。また、処理速度を速めるためには、画像処理用のCPUの性能や必要な物理メモリーの量も莫大なものになって、装置が高額化してしまう、という課題があった。
【0005】
データ処理量が膨大になる理由として、そもそも吐出ヘッドのノズルのひとつひとつには吐出液滴重量や吐出液滴の飛行方向に性能差があり、それら性能差を均一化させるように画像処理を行っている。更にラインヘッドの構成によっては複数ヘッドを千鳥状に配置させている物もあり、その場合はヘッド同士の繋ぎ目(オーバーラップ領域)の処理が加わりその場合、どちらのノズルで吐出するか吐出タイミングまで計算する処理が加わるためである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部の解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる描画装置は、複数のノズル孔を有する吐出ヘッドと、ワークを搬送するワーク搬送部と、搬送される前記ワークの搬送ずれ量を取得する搬送ずれ量取得部と、制御部と、を備え、前記制御部では、前記複数のノズル孔を区分して複数のノズル群を形成するとともに、前記ワークに描画する画像データを前記ノズル群毎に区分して、前記ノズル群毎に区分された前記画像データを割り当て、取得された前記搬送ずれ量に基づいて、前記複数のノズル群のうち、特定された特定ノズル群に割り当てられた前記画像データを補正し、補正された補正画像データに基づいて、前記ワークに向けて前記特定ノズル群から液滴を吐出させることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、複数のノズル孔が複数のノズル群に分けられ、ノズル群毎にワークに描画する画像データが割り当てられる。そして、搬送されるワークの搬送ずれ量に基づいて、複数のノズル群のうちから特定された特定ノズル群に割り当てられた画像データが補正され、補正された補正画像データに基づいて、ワークに向けて液滴が吐出される。一方、特定ノズル群以外のノズル群では、元(当初)の画像データに基づいて、液滴が吐出される。すなわち、複数のノズル群のうち、特定ノズル群に割り当てられた画像データのみが補正され、補正画像データに基づいて液滴が吐出される。従って、ノズル群全体の画像データを変換処理する必要がないので、画像処理量が削減され、画像の補正を素早く行うことができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる描画装置の前記制御部では、前記ワークにおける描画領域と非描画領域とに跨る領域に対応して前記ノズル群を形成するとともに、前記描画領域と前記非描画領域とに跨る領域に対応して形成された前記ノズル群を前記特定ノズル群として特定することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、全体の描画データのうち端部のみ画像データが補正されるため、画像処理量が削減され、画像の補正を素早く行うことができる。さらに、画像データが補正される箇所が画像端部のため、目立たない。これにより、外観品質を維持しやすくすることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる描画装置の前記制御部では、前記ワークの搬送ずれ量に基づいて、前記特定ノズル群を、前記描画領域に対応する稼動ノズル群と前記非描画領域に対応する非稼動ノズル群とに設定し、前記搬送ずれ量が規定値内である場合の前記稼動ノズル群に前記画像データを割り当て、前記搬送ずれ量に基づいて設定される前記稼動ノズル群に対する前記描画領域に対応するように、前記画像データを補正し、補正された前記補正画像データに基づいて、前記ワークに向けて前記稼動ノズル群から液滴を吐出させることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、ワークの搬送ずれ量に基づいて、特定ノズル群が、ワークの描画領域に対応する稼動ノズル群と非描画領域に対応する非稼動ノズル群とに設定される。この場合、搬送ずれ量が規定値内である場合の稼動ノズル群に画像データが割り当てられる。そして、搬送ずれ量に基づいて設定される稼動ノズル群の領域に応じて、画像データが補正される。すなわち、搬送ずれ量が規定値内である場合の稼動ノズル群に対応する画像データを基準とし、搬送ずれ量に応じて補正される。そして、補正された補正画像データに基づいて、ワークに向けて稼動ノズル群から液滴が吐出される。従って、ワークの搬送ずれ量に応じて容易に画像データの補正を行うことができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる描画装置の前記制御部では、前記特定ノズル群に対して、前記搬送ずれ量に対応した複数の前記補正画像データを備え、取得された前記搬送ずれ量に対応した前記補正画像データを選択し、選択された前記補正画像データに基づいて、前記ワークに向けて前記特定ノズル群から液滴を吐出させることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、予め、搬送ずれ量に対応した補正画像データが用意されているため、取得された搬送ずれ量に基づいて補正画像データを演算する必要がない。従って、演算処理量が削減され、画像の補正を素早く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態にかかる描画装置の構成を示す模式図。
【図2】第1実施形態にかかる描画装置の平面図。
【図3】描画装置の電気的構成を示すブロック図。
【図4】描画装置の制御方法を示すフローチャート。
【図5】第1実施形態にかかる描画装置の制御方法を示す説明図。
【図6】第1実施形態にかかる描画装置の制御方法を示す説明図。
【図7】第1実施形態にかかる描画装置の制御方法を示す説明図。
【図8】第2実施形態にかかる描画装置の構成を示す模式図。
【図9】第2実施形態にかかる描画装置の平面図。
【図10】第2実施形態にかかる描画装置の制御方法を示す説明図。
【図11】第2実施形態にかかる描画装置の制御方法を示す説明図。
【図12】第2実施形態にかかる描画装置の制御方法を示す説明図。
【図13】変形例にかかる描画装置の構成を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を具体化した第1及び第2実施形態について説明する。なお、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、部材ごとに縮尺を異ならせて図示している。
【0017】
[第1実施形態]
(描画装置の構成)
まず、描画装置の構成について説明する。図1は、本実施形態にかかる描画装置の構成を示す模式図であり、図2は、本実施形態にかかる描画装置の平面図である。図1及び図2に示すように、描画装置1aは、複数のノズル孔300を有する吐出ヘッド111と、ワークを搬送するワーク搬送部10と、搬送されるワークの搬送ずれ量を取得する搬送ずれ量取得部としての紙端センサー101と、これらの部材を制御する制御部100等を備え、搬送されるワークに向けて液滴を吐出して、ワーク上に画像を描画するものである。ワークとしての記録媒体Aは、例えば、ラベル用のフィルムや用紙等のシート状のものであり、各種幅および厚みを有するものである。なお、本実施形態では、図2に示すように、記録媒体Aにおいて、画像が描画される領域を描画領域PAとし、画像が描画されない領域を非描画領域NPAとして示している。
【0018】
吐出ヘッド111は、図2に示すように、複数のノズル孔300を有する。ノズル孔300は、記録媒体Aの幅方向(Y軸方向)に列状に配列されている。すなわち、本実施形態では、吐出ヘッド111がラインヘッド状に配置された構成である。そして、吐出ヘッド111のノズル孔300から記録媒体Aに向けて機能液が液滴として吐出されるように構成されている。
【0019】
ワーク搬送部10は、記録媒体Aを搬送するものである。本実施形態のワーク搬送部10は、媒体供給部20、媒体回収部30等を備え、媒体供給部20から記録媒体Aが供給され、描画部15のプラテン4を通じて媒体回収部30で回収される。
【0020】
紙端センサー101は、規定値に対して、搬送される記録媒体Aの搬送ずれ量を取得するセンサーである。本実施形態の紙端センサー101は、図2に示すように、記録媒体Aの幅方向(Y軸方向)の両端部に配置され、記録媒体Aの幅方向の搬送ずれ量を取得するように構成されている。
【0021】
制御部100は、複数のノズル孔300を区分して複数のノズル群200を形成するとともに、ノズル群200毎に記録媒体Aに描画する画像データを割り当て、取得された搬送ずれ量に基づいて、複数のノズル群200のうち、特定された特定ノズル群201に割り当てられた画像データを補正し、補正された補正画像データに基づいて、記録媒体Aに向けて特定ノズル群201から液滴を吐出させるものである。なお、具体的な制御方法については後述する。
【0022】
(描画装置の電気的構成)
次に、描画装置の電気的構成について説明する。図3は、描画装置の電気的構成を示すブロック図である。描画装置1aは、装置全体を制御する制御部100を備えている。制御部100は、演算処理等を行う演算処理部102と、記録媒体Aに描画すべき画像データや描画プログラム等が格納された格納部103と、吐出ヘッド111の駆動を制御するヘッド駆動部104と、ワーク搬送部10の駆動を制御するワーク搬送駆動部107と、紙端センサー101の駆動を制御するセンサー駆動部108等を備えている。
【0023】
(描画装置の制御方法)
次に、描画装置の制御方法について説明する。図4は、描画装置の制御方法を示すフローチャートである。
【0024】
ステップS1では、画像データDに基づいて、複数のノズル孔300から液滴を吐出させて記録媒体A上に画像を描画するにあたり、当該複数のノズル孔300を区分して複数のノズル群200を形成する。ノズル群200の形成方法としては、記録媒体Aの幅(Y軸方向の距離)や記録媒体Aに描画される描画領域PAに応じて適宜区分けすることができる。本実施形態では、図2に示すように、記録媒体Aにおける描画領域PAと非描画領域NPAとに跨る領域に対応してノズル群200を形成した。具体的には、複数のノズル孔300を区分して、第1ノズル群200aと、第2ノズル群200bと、第3ノズル群200cの3つに区分けした。このうち、第1ノズル群200aと第3ノズル群200cは、記録媒体Aにおける描画領域PAと非描画領域NPAとに跨る領域に対応して形成されたノズル群である。
【0025】
次いで、ステップS2では、各ノズル群200に対応して画像データDを区分けするとともに、記録媒体Aに描画する画像データDをノズル群200毎に区分して、ノズル群200毎に区分された画像データを割り当てる。本実施形態では、第1〜第3ノズル群200a〜200cに対応して画像データDを第1〜第3画像データDa〜Dcに区分けし、第1ノズル群200aに対して第1画像データDaを割り当て、第2ノズル群200bに対して第2画像データDbを割り当て、第3ノズル群200cに対して第3画像データDcを割り当てた。
【0026】
次いで、ステップS3では、複数形成されたノズル群200の中から特定ノズル群201を特定する。本実施形態では、描画領域PAと非描画領域NPAとに跨る領域に対応して形成された第1ノズル群200aと第3ノズル群200cを特定ノズル群201a,201cとして特定する。なお、特定ノズル群201以外のノズル群200は非特定ノズル群202として特定する。本実施形態では、第2ノズル群200bが非特定ノズル群202として特定される。
【0027】
ここで、特定ノズル群201a,201cに割り当てられた画像データDa,Dcとの関係について説明する。図5は、本実施形態にかかる描画装置の制御方法を示す説明図である。図5に示すように、特定ノズル群201aは、画像端位置Bを境界として描画領域PAに対応する稼動ノズル群302と非描画領域NPAに対応する非稼動ノズル群301とで構成される。説明を容易にするため、稼動ノズル群302を白丸で示し、非稼動ノズル群301を黒丸で示している。特定ノズル群201aにおける稼動ノズル群302と非稼動ノズル群301は、記録媒体Aの搬送ずれ量に基づいて設定される。記録媒体Aの搬送ずれ量に基づいて特定ノズル群201aに対応する描画領域PAと非描画領域NPAとが変動するからである。
【0028】
なお、図5は、記録媒体Aの搬送ずれ量が規定値内である場合を示している。この場合、特定ノズル群201a(第1ノズル群200a)に第1画像データDaが割り当てられる。さらに詳細には、特定ノズル群201aのうち、稼動ノズル群302に対応する描画領域PAaに対して第1画像データDaが割り当てられる。なお、特定ノズル群201cと第3画像データDcとの関係についても上記同様なので説明を省略する。ここで、特定ノズル群201a,201cとは、後述するように、搬送される記録媒体Aの搬送ずれ量に応じて、特定ノズル群201a,201cのそれぞれに割り当てられた画像データDa,Dcを補正し、補正画像データに基づいて液滴を吐出するノズル群を指す。一方、非特定ノズル群202とは、当初の画像データに基づいて液滴を吐出するノズル群を指す。
【0029】
次いで、ステップS4では、記録媒体Aの搬送ずれ量を取得する。具体的には、ワーク搬送部10を駆動させることにより、記録媒体Aを搬送させる。そして、紙端センサー101を駆動させ、描画領域PA方向に搬送される記録媒体Aの搬送ずれ量を取得する。その取得情報は逐次、演算処理部102に送信され、記録媒体Aの搬送ずれ量が算出される。例えば、記録媒体Aの紙端位置の中央値からの移動量(ずれ量)が算出される。
【0030】
次いで、ステップS5では、取得した搬送ずれ量が規定値内か否かを判断する。規定値内である場合(YES)には、ステップS7に移行し、規定値から外れた場合(NO)には、ステップS6に移行する。
【0031】
ステップS6では、特定ノズル群に対応する画像データを補正処理する。具体的には、第1〜第3ノズル群200a〜200cのうち、特定された特定ノズル群201a,201cに対して割り当てられた第1及び第3画像データDa,Dcを、取得された搬送ずれ量に基づいて、補正処理する。例えば、第1及び第3画像データDa,Dcを伸張処理或いは縮小処理する。伸縮処理の方法としては、特定ノズル群201内を一定間隔ごとの1ラインを繰り返しの2ライン分繰り返したり、または、その逆に一定間隔ごとに1ライン分を間引くことや、或いは一定間隔ではなく端部と非特定ノズル群202との相対距離によって補正間隔を変化させるなどの方法を採用することができる。
【0032】
図6は、本実施形態にかかる描画装置の制御方法を示す説明図であり、記録媒体Aが規定値に対してY軸方向の負方向にずれた場合を示した説明図である。図5における特定ノズル群201aにおける描画領域PAaと比較して、図6における特定ノズル群201aにおける描画領域PAbの方が狭い。さらに、詳細には、図6における特定ノズル群201aの稼動ノズル群302aに対応する描画領域PAbが狭くなっている(逆に、非稼動ノズル群301aの領域が広くなっている)。この場合、記録媒体Aの搬送ずれ量に基づいて設定される稼動ノズル群302aに対する描画領域PAbに対応するように、基準となる第1画像データDaをY軸方向に縮めた補正を行い、補正画像データDaaを形成する。
【0033】
図7は、本実施形態にかかる描画装置の制御方法を示す説明図であり、記録媒体Aが規定値に対してY軸方向の正方向にずれた場合を示した説明図である。図5における特定ノズル群201aにおける描画領域PAaと比較して、図7における特定ノズル群201aにおける描画領域PAcの方が広い。さらに、詳細には、図7における特定ノズル群201aの稼動ノズル群302bに対応する描画領域PAcが広くなっている(逆に、非稼動ノズル群301bの領域が狭くなっている)。この場合、記録媒体Aの搬送ずれ量に基づいて設定される稼動ノズル群302bに対する描画領域PAcに対応するように、基準となる第1画像データDaをY軸方向に伸ばした補正を行い、補正画像データDabを形成する。なお、特定ノズル群201cにおける第3画像データDcの補正処理についても上記と同様なので説明を省略する。
【0034】
次いで、ステップS7では、吐出ヘッド111を駆動させ、ノズル孔300から液滴を吐出させる。詳細には、補正画像データに基づいて、記録媒体Aに向けて特定ノズル群201から液滴を吐出させる。本実施形態では、補正された補正画像データDaa,Dabに基づいて、記録媒体Aに向けて稼動ノズル群302a,302bから液滴を吐出させる(図6,7参照)。なお、図5に示すように、特定ノズル群201a(201c)であっても、記録媒体Aの搬送ずれ量が規定値内である場合には、第1画像データDaを補正処理することなく、第1画像データDaに基づいて、記録媒体Aに向けて稼動ノズル群302から液滴を吐出させる。また、非特定ノズル群202(第2ノズル群200b)に対しては、当初の第2画像データDbに基づいて、液滴を吐出させる。なお、特定ノズル群201cにおける液滴吐出についても上記と同様なので説明を省略する。
【0035】
従って、上記の第1実施形態によれば、以下に示す効果がある。
【0036】
記録媒体Aの搬送ずれ量に応じて、複数のノズル孔300を区分した第1〜第3ノズル群200a〜200cのうち、特定された特定ノズル群201a,201c(第1及び第3ノズル群200a,200c)に対応した第1及び第3画像データDa,Dcを補正し、補正された補正画像データDaa,Dabに基づいて描画させた。一方、非特定ノズル群202に対応する第2描画データDbについては、補正処理することなく、第2描画データDbに基づいて液滴を吐出させた。従って、ノズル群200全体に対応する第1〜第3画像データDa〜Dcを補正処理する必要がなく、一部の画像データDa,Dcのみを補正するため、画像処理量が削減され、画像の補正を素早く行うことができる。
【0037】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図8は、本実施形態にかかる描画装置の構成を示す模式図であり、図9は、本実施形態にかかる描画装置の平面図である。図8及び図9に示すように、描画装置1bは、複数のノズル孔300を有する吐出ヘッド111と、ワークを搬送するワーク搬送部10と、搬送されるワークの搬送ずれ量を取得する搬送ずれ量取得部としての紙端センサー101と、これらの部材を制御する制御部100等を備えている。描画装置1bは、ワークとしての記録媒体Aを枚葉状態で搬送し、搬送される記録媒体Aに対して吐出ヘッド111が搭載されたキャリッジ110がシリアル式動作(Y軸方向に移動)し、例えば、1パス毎に描画する装置である。なお、本実施形態では、図9に示すように、記録媒体Aにおいて、画像が描画される領域を描画領域PAとし、画像が描画されない領域を非描画領域NPAとして示している。この場合、記録媒体AをX軸方向に搬送させながら吐出ヘッド111から機能液を吐出させ、記録媒体Aの先頭側Ahから順に画像を描画させていくが、記録媒体Aの最後尾側Abの非印字領域NPAでは、そこに至るまで描画で複数パスを重ねているため、その間は記録媒体Aの送り精度の誤差が積み重なる。この時、最後尾側Abの非印字領域NPAを一定に保ちたい場合には、画像データの補正処理が必要となる。
【0038】
吐出ヘッド111は、図9に示すように、複数のノズル孔300を有する。ノズル孔300は、記録媒体Aの搬送方向(X軸方向)に列状に配列されている。なお、本実施形態では、6個の吐出ヘッド111がキャリッジ110に搭載されている。そして、吐出ヘッド111のノズル孔300から記録媒体Aに向けて機能液が液滴として吐出されるように構成されている。
【0039】
ワーク搬送部10は、記録媒体Aを搬送するものである。本実施形態のワーク搬送部10は、媒体供給部20、媒体回収部30等を備え、媒体供給部20から記録媒体Aが供給され、描画部15を通じて媒体回収部30で回収される。
【0040】
紙端センサー101は、規定値に対して、搬送される記録媒体Aの搬送ずれ量を取得するセンサーである。本実施形態における紙端センサー101は、X軸方向に搬送される記録媒体Aの最後尾側Abの搬送ずれ量を取得する。そして、図9に示すように、紙端センサー101は、例えば、キャリッジ110のY軸方向における両側に設けられている。
【0041】
制御部100は、複数のノズル孔300を区分して複数のノズル群200を形成するとともに、ノズル群200毎に記録媒体Aに描画する画像データを割り当て、取得された搬送ずれ量に基づいて、複数のノズル群200のうち、特定された特定ノズル群201に割り当てられた画像データを補正し、補正された補正画像データに基づいて、記録媒体Aに向けて特定ノズル群201から液滴を吐出させるものである。なお、具体的な制御方法については後述する。なお、描画装置1bの電気的構成については、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0042】
(描画装置の制御方法)
次に、描画装置の制御方法について説明する。描画装置1bの制御方法は、第1実施形態と同様であるが、例えば、複数のノズル孔300を区分して複数のノズル群200を形成するとともに、ノズル群200毎に記録媒体Aに描画する画像データを割り当て、取得された搬送ずれ量に基づいて、複数のノズル群200のうち、特定された特定ノズル群201に割り当てられた画像データDを補正し、補正された補正画像データに基づいて、記録媒体Aに向けて特定ノズル群201から液滴を吐出させる。
【0043】
まず、画像データDに基づいて、複数のノズル孔300から液滴を吐出させて記録媒体A上に画像を描画するにあたり、当該複数のノズル孔300を区分して複数のノズル群200を形成する。ノズル群200の形成方法としては、記録媒体Aの幅(Y軸方向の距離)や記録媒体Aに描画される描画領域PAに応じて適宜区分けすることができる。本実施形態では、図9に示すように、記録媒体Aの最後尾側Abにおける描画領域PAと非描画領域NPAとに跨る領域に対応してノズル群200を形成した。具体的には、複数のノズル孔300を区分して、第1ノズル群200aと、第2ノズル群200bの2つに区分けした。このうち、第1ノズル群200aは、記録媒体Aにおける描画領域PAと非描画領域NPAとに跨る領域に対応して形成されたノズル群である。
【0044】
次いで、各ノズル群200に対応して画像データDを区分けするとともに、ノズル群200毎に区分けされた画像データを割り当てる。なお、本実施形態では、第1及び第2ノズル群200a,200bに対応して画像データDを第1及び第2画像データDa,Dbに区分けし、第1ノズル群200aに対して第1画像データDaを割り当て、第2ノズル群200bに対して第2画像データDbを割り当てた。
【0045】
次いで、複数形成されたノズル群200の中から特定ノズル群201を特定する。本実施形態では、描画領域PAと非描画領域NPAとに跨る領域に対応して形成された第1ノズル群200aを特定ノズル群201として特定する。なお、特定ノズル群201以外のノズル群200は非特定ノズル群202として特定する。本実施形態では、第2ノズル群200bを非特定ノズル群202として特定する。
【0046】
ここで、特定ノズル群201に割り当てられた画像データDaとの関係について説明する。図10は、本実施形態にかかる描画装置の制御方法を示す説明図である。図10に示すように、特定ノズル群201は、画像端位置Bを境界として描画領域PAに対応する稼動ノズル群302と非描画領域NPAに対応する非稼動ノズル群301とで構成される。なお、説明を容易にするため、吐出ヘッド111を一つ示すとともに、稼動ノズル群302を白丸で示し、非稼動ノズル群301を黒丸で示している。特定ノズル群201における稼動ノズル群302と非稼動ノズル群301は、記録媒体Aの搬送ずれ量に基づいて設定される。記録媒体Aの搬送ずれ量に基づいて特定ノズル群201に対応する描画領域PAと非描画領域NPAとが変動するからである。
【0047】
なお、図10では、記録媒体Aの搬送ずれ量が規定値内である場合を示し、この場合、特定ノズル群201(第1ノズル群200a)に第1画像データDaが割り当てられる。さらに詳細には、特定ノズル群201のうち、稼動ノズル群302に対応する描画領域PAaに対して第1画像データDaが割り当てられる。ここで、特定ノズル群201とは、後述するように、搬送される記録媒体Aの搬送ずれ量に応じて、特定ノズル群201に割り当てられた画像データDaを補正し、補正画像データに基づいて液滴を吐出するノズル群を指す。一方、非特定ノズル群202とは、当初の画像データに基づいて液滴を吐出するノズル群を指す。
【0048】
次いで、記録媒体Aの搬送ずれ量を取得する。具体的には、記録媒体Aに対する最終パスが実施される前に紙端センサー101を駆動させ、記録媒体Aの最後尾側Abの搬送ずれ量を取得する。
【0049】
次いで、取得した搬送ずれ量が規定値内か否かを判断する。そして、規定値から外れた場合には、以下に示すように、割り当てられた第1画像データDaを補正処理する。具体的には、第1及び第2ノズル群200a,200bのうち、特定された特定ノズル群201に対して割り当てられた第1画像データDaを、取得された搬送ずれ量に基づいて、補正処理する。例えば、第1画像データDaを伸張処理或いは縮小処理する。伸縮処理の方法としては、特定ノズル群201内を一定間隔ごとの1ラインを繰り返しの2ライン分繰り返したり、または、その逆に一定間隔ごとに1ライン分を間引くことや、或いは一定間隔ではなく端部と非特定ノズル群202との相対距離によって補正間隔を変化させるなどの方法を採用することができる。
【0050】
図11は、本実施形態にかかる描画装置の制御方法を示す説明図であり、記録媒体Aが規定値に対してX軸方向の正方向にずれた場合を示した説明図である。図10における特定ノズル群201における描画領域PAaと比較して、図11における特定ノズル群201における描画領域PAbの方が狭い。さらに、詳細には、図11における特定ノズル群201の稼動ノズル群302aに対応する描画領域PAbが狭くなっている(逆に、非稼動ノズル群301aの領域が広くなっている)。この場合、記録媒体Aの搬送ずれ量に基づいて設定される稼動ノズル群302aに対する描画領域PAbに対応するように、基準となる第1画像データDaをX軸方向に縮めた補正を行い、補正画像データDaaを形成する。
【0051】
図12は、本実施形態にかかる描画装置の制御方法を示す説明図であり、記録媒体Aが規定値に対してX軸方向の負方向にずれた場合を示した説明図である。図10における特定ノズル群201における描画領域PAaと比較して、図12における特定ノズル群201における描画領域PAcの方が広い。さらに、詳細には、図12における特定ノズル群201の稼動ノズル群302bに対応する描画領域PAcが広くなっている(逆に、非稼動ノズル群301bの領域が狭くなっている)。この場合、記録媒体Aの搬送ずれ量に基づいて設定される稼動ノズル群302bに対する描画領域PAcに対応するように、基準となる第1画像データDaをX軸方向に伸ばした補正を行い、補正画像データDabを形成する。
【0052】
次いで、吐出ヘッド111を駆動させ、ノズル孔300から液滴を吐出させる。詳細には、補正画像データに基づいて、記録媒体Aに向けて特定ノズル群201から液滴を吐出させる。本実施形態では、補正された補正画像データDaa,Dabに基づいて、記録媒体Aに向けて稼動ノズル群302a,302bから液滴を吐出させる。なお、記録媒体Aの搬送ずれ量が規定値内である場合には、第1画像データDaを補正処理することなく、第1画像データDaに基づいて、記録媒体Aに向けて稼動ノズル群302から液滴を吐出させる。また、非特定ノズル群202(第2ノズル群200b)に対しては、当初の第2画像データDbに基づいて、液滴を吐出させる。
【0053】
従って、上記の第2実施形態の構成によれば、第1実施形態の効果に加え、以下に示す効果がある。
【0054】
記録媒体Aが搬送方向(X軸方向)に搬送ずれ量が変化しても、記録媒体Aの最後尾側Abに対する規定画像位置に対して、一定の位置を保持することができ、画像の補正を素早く行うことができる。
【0055】
なお、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下のような変形例が挙げられる。
【0056】
(変形例1)上記実施形態では、記録媒体Aの端部の搬送ずれ量を取得したが、これに限定されない。例えば、記録媒体Aのいずれかの場所を基準にして搬送ずれ量を取得してもよい。図13は、変形例にかかる描画装置の構成を示す平面図である。図13に示すように、記録媒体Aの中に基準線や中抜きなどが入っており、それらを位置検出して基準としてもよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
【0057】
(変形例2)上記実施形態では、一つの吐出ヘッド111において特定ノズル群201と非特定ノズル群202とを設定したが、これに限定されない。例えば、複数の吐出ヘッド111に跨って特定ノズル群201と非特定ノズル群202とを設定してもよい。このようにしても、上記同様の効果を得ることができる。
【0058】
(変形例3)上記実施形態における制御部100では、紙端センサー101による記録媒体Aの搬送ずれ量を随時演算したが、これに限定されない。例えば、特定ノズル群201に対して、搬送ずれ量に対応した複数の補正画像データを備え、取得された搬送ずれ量に対応した補正画像データを選択し、選択された補正画像データに基づいて、ワークとしての記録媒体Aに向けて特定ノズル群201から液滴を吐出させてもよい。すなわち、予め複数の伸縮量を変化させた補正画像データを作成して、格納部103に格納させておき、演算処理部102内かヘッド駆動部104内で紙端センサー101に対応したルックアップテーブルとする方法を用いてもよい。このルックアップテーブル化のメリットは、演算処理部102がリアルタイムに画像伸縮を行う必要がないため、負担軽減になり、高性能な画像処理CPUを用意する必要もないため、より高速な搬送に対応でき、コストダウンや消費電力軽減などが可能となる。
【0059】
(変形例4)上記の実施形態では、特定ノズル群201の位置を画像の端部に設けたが、これに限定されず、画像の中の任意のエリアを設定してもよい。何れも、これら画像伸縮処理を任意の特定ノズル群201として、部分的な処理として記録媒体に対する画像の位置補正ができるので、装置のコストダウンや小型化などのメリットがある。
【0060】
(変形例5)上記の実施形態では、ステップS5において、記録媒体Aの搬送ずれ量の規定値を画像端位置Bに基づいて判断したが、これに限定されず、画像端位置Bを基準に一定の許容範囲を持たせ、一定の許容範囲を基準にして記録媒体Aの搬送ずれ量の合否判定を行ってもよい。このようにすれば、画像品質を維持しつつ、画像データDの補正処理量を低減させることができる。
【0061】
(変形例6)第2実施形態では、記録媒体Aの最後尾側Abの搬送ずれ量に基づいて、画像データの補正処理を行ったが、これに限定されない。例えば、記録媒体Aの先頭側Ahの搬送ずれ量に基づいて、画像データの補正処理を行ってもよい。この場合、記録媒体Aの先頭側Ahの搬送ずれ量が取得できるように搬送ずれ量取得部を設置すればよい。このようにすれば、記録媒体Aの先頭側Ahの非描画領域NPAを一定に保持することができる。
【符号の説明】
【0062】
1a,1b…描画装置、10…ワーク搬送部、100…制御部、101…搬送ずれ量取得部としての紙端センサー、111…吐出ヘッド、200(200a〜200c)…ノズル群(第1〜第3ノズル群)、201(201a,201c)…特定ノズル群、202…非特定ノズル群、A…ワークとしての記録媒体、D(Da〜Dc)…画像データ(第1〜第3画像データ)、Daa,Dab…補正画像データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズル孔を有する吐出ヘッドと、
ワークを搬送するワーク搬送部と、
搬送される前記ワークの搬送ずれ量を取得する搬送ずれ量取得部と、
制御部と、を備え、
前記制御部では、
前記複数のノズル孔を区分して複数のノズル群を形成するとともに、前記ワークに描画する画像データを前記ノズル群毎に区分して、前記ノズル群毎に区分された前記画像データを割り当て、
取得された前記搬送ずれ量に基づいて、前記複数のノズル群のうち、特定された特定ノズル群に割り当てられた前記画像データを補正し、
補正された補正画像データに基づいて、前記ワークに向けて前記特定ノズル群から液滴を吐出させることを特徴とする描画装置。
【請求項2】
請求項1に記載の描画装置において、
前記制御部では、
前記ワークにおける描画領域と非描画領域とに跨る領域に対応して前記ノズル群を形成するとともに、前記描画領域と前記非描画領域とに跨る領域に対応して形成された前記ノズル群を前記特定ノズル群として特定することを特徴とする描画装置。
【請求項3】
請求項2に記載の描画装置において、
前記制御部では、
前記ワークの搬送ずれ量に基づいて、前記特定ノズル群を、前記描画領域に対応する稼動ノズル群と前記非描画領域に対応する非稼動ノズル群とに設定し、
前記搬送ずれ量が規定値内である場合の前記稼動ノズル群に前記画像データを割り当て、
前記搬送ずれ量に基づいて設定される前記稼動ノズル群に対する前記描画領域に対応するように、前記画像データを補正し、
補正された前記補正画像データに基づいて、前記ワークに向けて前記稼動ノズル群から液滴を吐出させることを特徴とする描画装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の描画装置において、
前記制御部では、
前記特定ノズル群に対して、前記搬送ずれ量に対応した複数の前記補正画像データを備え、
取得された前記搬送ずれ量に対応した前記補正画像データを選択し、
選択された前記補正画像データに基づいて、前記ワークに向けて前記特定ノズル群から液滴を吐出させることを特徴とする描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−81667(P2012−81667A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230303(P2010−230303)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】