説明

揚砂装置及び揚砂方法

【課題】複数の沈砂ピットに堆積した砂や小石等を効率よく吸い上げて排出することができる揚砂装置及び揚砂方法を提供する。
【解決手段】揚砂装置11は、複数の沈砂ピットにそれぞれ配置した沈砂吸入管12と、複数の沈砂吸入管を吸入弁13を介して並列に接続した沈砂貯留槽14と、沈砂貯留槽内の流体を吸引して排気するエゼクタ22と、エゼクタと沈砂貯留槽とに水を圧送する圧送ポンプ18と、圧送ポンプとエゼクタとをエゼクタ作動弁25を介して接続したエゼクタ駆動水供給経路26と、圧送ポンプと沈砂貯留槽とを排砂水供給弁15を介して接続した排砂水供給経路16と、沈砂貯留槽内から排砂弁19を介して沈砂を排出する沈砂排出経路20とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚砂装置及び揚砂方法に係り、例えば、取水設備等における沈砂池の沈砂ピットに堆積した砂や小石等を吸い上げて排出するための揚砂装置及び揚砂方法に関する。
【背景技術】
【0002】
取水設備や下水処理設備、ポンプ場等に設けられる沈砂池に堆積した砂等を吸い上げて排出するための揚砂装置として、水中に揚砂ポンプを設置した揚砂装置が広く知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−11542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の揚砂装置では、各沈砂ピットの水中に1台ずつ揚砂ポンプを配置していることからコストが嵩み、また、保守整備に手間が掛かるという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、圧送ポンプとエゼクタとによって、複数の沈砂ピットに堆積した砂や小石等を吸い上げることのできる揚砂装置及び揚砂方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の揚砂装置は、池底部に形成された沈砂ピット内の沈砂を、沈砂吸入管を介して水と共に吸引して移送する揚砂装置において、複数の沈砂ピットにそれぞれ配置した複数の沈砂吸入管と、該複数の沈砂吸入管を吸入弁を介してそれぞれ並列に接続した沈砂貯留槽と、該沈砂貯留槽内の流体を排出弁を介して吸引するエゼクタと、該エゼクタと前記沈砂貯留槽とに水を圧送する圧送ポンプと、該圧送ポンプと前記エゼクタとをエゼクタ作動弁を介して接続したエゼクタ駆動水供給経路と、前記圧送ポンプと前記沈砂貯留槽とを排砂水供給弁を介して接続した排砂水供給経路と、前記沈砂貯留槽内から排砂弁を介して沈砂を排出する沈砂排出経路とを備えたことを特徴としている。
【0007】
また、本発明の揚砂方法の第1の構成は、前記揚砂装置を使用した揚砂方法であって、前記エゼクタ作動弁と前記流体排出弁とを開き、他の弁を閉じた状態として前記圧送ポンプから前記エゼクタに水を圧送して前記沈砂貯留槽内の流体を前記流体排出弁を介して吸引して沈砂貯留槽内を減圧する減圧操作と、いずれか一つの前記吸入弁を開き、減圧された前記沈砂貯留槽に前記沈砂吸入管を介して該沈砂吸入管が設けられた沈砂ピット内の水と沈砂とを吸い上げる沈砂吸上操作と、前記排砂水供給弁と前記排砂弁とを開き、他の弁を閉じた状態として前記圧送ポンプから前記沈砂貯留槽内に排砂水を供給し、該排砂水と共に沈砂貯留槽内の沈砂を前記沈砂排出経路に排出する排砂操作とを、前記複数の沈砂ピットに対して順次行うことを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明の揚砂方法の第2の構成は、前記揚砂装置を使用した揚砂方法であって、いずれか一つの前記吸入弁と前記エゼクタ作動弁と前記流体排出弁とを開き、他の弁を閉じた状態として前記圧送ポンプから前記エゼクタに水を圧送して前記沈砂貯留槽内の流体を前記流体排出弁を介して吸引するとともに、吸入弁を開いた一つの沈砂吸入管を介して該沈砂吸入管が設けられた沈砂ピット内の水と沈砂とを前記沈砂貯留槽に吸い上げる沈砂吸上操作と、前記排砂水供給弁と前記排砂弁とを開き、他の弁を閉じた状態として前記圧送ポンプから前記沈砂貯留槽内に排砂水を供給し、該排砂水と共に沈砂貯留槽内の沈砂を前記沈砂排出経路に排出する排砂操作とを、前記複数の沈砂ピットに対して順次行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧送ポンプと1台のエゼクタとにより、複数の沈砂ピット内に堆積した砂や小石等を水と共に沈砂貯留槽に吸い上げて沈砂ピットから排出することができるので、使用する機器を削減することができ、コストの削減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1形態例を示す揚砂装置の系統図である。
【図2】本発明の揚砂装置における減圧操作時の状態を示す系統図である。
【図3】同じく沈砂吸上操作時の状態を示す系統図である。
【図4】同じく排砂操作時の状態を示す揚砂装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本形態例に示す揚砂装置11は、沈砂池の底部に形成された複数の沈砂ピット(図示せず)内の沈砂を、各沈砂ピットにそれぞれ配置された沈砂吸入管12にて吸い込んで揚砂するもので、各沈砂吸入管12は、吸入弁13を介して一つの沈砂貯留槽14にそれぞれ並列に接続されている。沈砂貯留槽14には、排砂水供給弁15を備えた排砂水供給経路16を介して貯水槽17内の水を圧送する2台の圧送ポンプ18,18が接続されると共に、排砂弁19を備えた沈砂排出経路20が槽下部に接続され、さらに、流体排出弁21を介して沈砂貯留槽14内の流体を吸引するエゼクタ22が槽上部に接続され、さらに、槽底部にはドレン排出弁23を備えたドレン排出管24が設けられている。また、エゼクタ22は、エゼクタ作動弁25を備えたエゼクタ駆動水供給経路26を介して前記2台の圧送ポンプ18,18に接続されると共に、吐出側が排出管27に接続されている。
【0012】
さらに、本形態例では、エゼクタ22から排出管27に吐出された水に含まれる空気を分離して排出するための空気弁28を備えたエア抜タンク29を設け、該エア抜タンク29で空気を分離した水を沈砂池に設けた集砂装置30に供給できるように形成し、前記排出管27に吐出される水を集砂装置30の噴出水として利用できるようにしている。加えて、エゼクタ22及びエゼクタ作動弁25をバイパスするバイパス弁31を備えたバイパス管32を設け、このバイパス管32を使用することによって揚砂処理とは別に集砂装置30に噴出水を供給できるように形成している。
【0013】
次に、このように形成した揚砂装置11を用いた揚砂方法の第1形態例を、図2乃至図4に基づいて説明する。なお、図2乃至図4では、揚砂処理に必要な経路のみを図示しており、図1に示した揚砂装置と同じ構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0014】
まず、図2に示すように、前記エゼクタ作動弁25と前記流体排出弁21とを開いて他の弁を閉じた状態とし、前記圧送ポンプ18から前記エゼクタ22に水を圧送してエゼクタ22を作動させ、前記沈砂貯留槽14内の空気を排出弁19を介して吸引し、排出管27に排出することによって沈砂貯留槽14内を減圧する減圧操作を行う。
【0015】
この減圧操作で沈砂貯留槽14内を十分に減圧した後、図3に示すように、何れか一つの吸入弁13を開き、一つの沈砂ピットから沈砂吸入管12を介して沈砂と水とを沈砂貯留槽14内に吸い上げる沈砂吸上操作を行う。この沈砂吸上操作は、沈砂貯留槽14内があらかじめ十分に減圧された状態で開始するので、沈砂貯留槽14内と沈砂ピットとの圧力差が大きくなり、強い吸引力で沈砂を吸い上げることができる。これにより、比較的大きな砂利、小石等も確実に沈砂貯留槽14内に吸い上げることが可能となる。
【0016】
さらに、圧送ポンプ18及びエゼクタ22は、減圧操作で沈砂貯留槽14を十分に減圧できればよいことから、圧送ポンプ18やエゼクタ22として小型のものを用いることができ、従来の揚砂ポンプに比べてコストや消費エネルギーを大幅に低減することができる。
【0017】
沈砂吸上操作を行った後、沈砂貯留槽14内に貯留された沈砂を排出するため、図4に示すように、排砂水供給弁15と排砂弁19とを開き、他の弁を閉じた状態で圧送ポンプ18を作動させ、圧送ポンプ18から排砂水供給経路16を介して沈砂貯留槽14内に沈砂排出用の排砂水を供給し、沈砂貯留槽14内の沈砂を排砂水に同伴させて沈砂排出経路20から排出する排砂操作を行う。沈砂排出経路20に排出した沈砂を含む排砂水は、例えば、別途設けた沈砂分離機のホッパーなどに移送される。排砂操作終了後は、圧送ポンプ18を停止させて沈砂貯留槽14内に残る排砂水を沈砂排出経路20あるいはドレン排出管24から排出する。
【0018】
一つの沈砂ピットの揚砂を行った後、他の沈砂ピットの揚砂を行う際には、前記減圧操作を行って沈砂貯留槽14内を減圧した後、他の吸入弁13を開いて他の沈砂ピットの沈砂吸上操作を行い、他の沈砂ピットから沈砂と水とを沈砂貯留槽14内に吸い上げた後、前記排砂操作を行って沈砂貯留槽14内の沈砂を排出する。このように、複数の沈砂ピットに対して減圧操作、沈砂吸上操作及び排砂操作を順次行うことにより、各沈砂ピットから沈砂を揚砂して排出することができる。
【0019】
また、沈砂池や沈砂ピットの状況、圧送ポンプ18及びエゼクタ22の能力によっては、前記減圧操作を省略することも可能である。すなわち、最初に、図3に示すように、何れか一つの吸入弁13と、流体排出弁21と、エゼクタ作動弁25とを開き、他の弁を閉じた状態で、圧送ポンプ18を作動させ、圧送ポンプ18からエゼクタ駆動水供給経路26を介してエゼクタ22に駆動水を供給し、エゼクタ22の吸引作用で沈砂貯留槽14内の空気を吸引して排出管27に排出する。
【0020】
これにより、沈砂貯留槽14内の空気がエゼクタ22によって吸引されて沈砂貯留槽14内が減圧状態になるとともに、吸入弁13を開いた一つの沈砂ピットから沈砂吸入管12を介して沈砂と水とが沈砂貯留槽14内に吸い上げられて沈砂吸上操作が行われる。このとき、沈砂貯留槽14の構造や大きさを適当に設定することにより、沈砂貯留槽14内で沈砂と水とを分離することができ、沈砂貯留槽14が満杯状態になったときでも、沈砂貯留槽14内で分離した水のみをエゼクタ22に吸引して排出管27に排出することができ、エゼクタ22に砂などが吸引されることを回避できる。排出管27に排出されたエゼクタ駆動水などは、貯水槽17に戻したり、沈砂池に戻したりすることができる。
【0021】
この沈砂吸上操作を行った後は、前記同様、図4に示すように、排砂水供給弁15と排砂弁19とを開き、他の弁を閉じた状態で圧送ポンプ18を作動させて排砂水供給経路16から沈砂貯留槽14内に排砂水を供給し、沈砂貯留槽14内の沈砂を沈砂排出経路20から排出する排砂操作を行う。
【0022】
この場合、排砂操作を行って沈砂貯留槽14内の沈砂を排出した後、そのまま他の吸入弁13を開いて他の沈砂ピットの沈砂吸上操作を連続して行うこともできる。このように、沈砂吸上操作と排砂操作とを複数の沈砂ピットに対して順次行うことにより、1台のエゼクタ22に圧送ポンプ18からエゼクタ駆動水を供給することで、複数の沈砂ピットの沈砂を順番に沈砂貯留槽14に吸い上げて排出することができる。
【0023】
また、前記減圧操作や前記沈砂吸上操作を行っているときに、圧送ポンプ18から供給されてエゼクタ22から吐出された水や空気と水との混合流体をエア抜タンク29に導入し、エア抜タンク29で空気を分離排出した水を集砂装置30に供給することにより、沈砂池の底部に堆積した沈砂を沈砂ピットに集めることができる。例えば、次に揚砂を行う沈砂ピットに沈砂をあらかじめ集めておくことにより、揚砂効率を向上させることができる。
【0024】
また、雨天などで池底に堆積する沈砂の量が多くなるときには、バイパス弁31を開いて他の弁を閉じておくことにより、圧送ポンプ18から圧送される水を集砂装置30に直接供給することができるので、沈砂池の底部に大量の沈砂が堆積することを防止できる。
【0025】
さらに、圧送ポンプ18を停止してドレン排出弁23を開いた状態で流体排出弁21を開くことにより、エア抜タンク29内の水を沈砂貯留槽14に逆流させることができ、沈砂貯留槽14内を清掃することができ、また、ドレン排出弁23に代えて任意の吸入弁13を開くことにより、沈砂吸入管12に水を逆流させて沈砂吸入管12内の清掃を行うことができ、沈砂吸入管12の閉塞を解消することができる。
【0026】
なお、本発明は、様々な池、水槽等の揚砂に適用することができる。また、圧送ポンプの作動、各弁の開閉は、それぞれ手動で行うこともでき、予め設定した手順に基づいて自動的に行うこともできる。また、圧送ポンプの台数は任意であり、さらに、沈砂貯留槽での水と砂との分離も任意の手段で行うことができる。
【符号の説明】
【0027】
11…揚砂装置、12…沈砂吸入管、13…吸入弁、14…沈砂分離槽、15…排砂水供給弁、16…排砂水供給経路、17…貯水槽、18…圧送ポンプ、19…排砂弁、20…沈砂排出経路、21…流体排出弁、22…エゼクタ、23…ドレン排出弁、24…ドレン排出管、25…エゼクタ作動弁、26…エゼクタ駆動水供給経路、27…排出管、28…空気弁、29…エア抜タンク、30…集砂装置、31…バイパス弁、32…バイパス管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
池底部に形成された沈砂ピット内の沈砂を、沈砂吸入管を介して水と共に吸引して移送する揚砂装置において、複数の沈砂ピットにそれぞれ配置した複数の沈砂吸入管と、該複数の沈砂吸入管を吸入弁を介してそれぞれ並列に接続した沈砂貯留槽と、該沈砂貯留槽内の流体を流体排出弁を介して吸引するエゼクタと、該エゼクタと前記沈砂貯留槽とに水を圧送する圧送ポンプと、該圧送ポンプと前記エゼクタとをエゼクタ作動弁を介して接続したエゼクタ駆動水供給経路と、前記圧送ポンプと前記沈砂貯留槽とを排砂水供給弁を介して接続した排砂水供給経路と、前記沈砂貯留槽内から排砂弁を介して沈砂を排出する沈砂排出経路とを備えたことを特徴とする揚砂装置。
【請求項2】
請求項1記載の揚砂装置を使用した揚砂方法であって、前記エゼクタ作動弁と前記流体排出弁とを開き、他の弁を閉じた状態として前記圧送ポンプから前記エゼクタに水を圧送して前記沈砂貯留槽内の流体を前記流体排出弁を介して吸引して沈砂貯留槽内を減圧する減圧操作と、いずれか一つの前記吸入弁を開き、減圧された前記沈砂貯留槽に前記沈砂吸入管を介して該沈砂吸入管が設けられた沈砂ピット内の水と沈砂とを吸い上げる沈砂吸上操作と、前記排砂水供給弁と前記排砂弁とを開き、他の弁を閉じた状態として前記圧送ポンプから前記沈砂貯留槽内に排砂水を供給し、該排砂水と共に沈砂貯留槽内の沈砂を前記沈砂排出経路に排出する排砂操作とを、前記複数の沈砂ピットに対して順次行うことを特徴とする揚砂方法。
【請求項3】
請求項1記載の揚砂装置を使用した揚砂方法であって、いずれか一つの前記吸入弁と前記エゼクタ作動弁と前記流体排出弁とを開き、他の弁を閉じた状態として前記圧送ポンプから前記エゼクタに水を圧送して前記沈砂貯留槽内の流体を前記流体排出弁を介して吸引するとともに、吸入弁を開いた一つの沈砂吸入管を介して該沈砂吸入管が設けられた沈砂ピット内の水と沈砂とを前記沈砂貯留槽に吸い上げる沈砂吸上操作と、前記排砂水供給弁と前記排砂弁とを開き、他の弁を閉じた状態として前記圧送ポンプから前記沈砂貯留槽内に排砂水を供給し、該排砂水と共に沈砂貯留槽内の沈砂を前記沈砂排出経路に排出する排砂操作とを、前記複数の沈砂ピットに対して順次行うことを特徴とする揚砂方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−251248(P2011−251248A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126591(P2010−126591)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【Fターム(参考)】