説明

換気装置

【課題】風量調整弁の開閉操作性に優れ、閉鎖状態のときの気密、水密性が高い換気装置を提供する。
【解決手段】建築物屋内外に連通する空気出入り口を有する風洞10と、無風状態で風洞を全開にし且つ風を受けて風洞を閉じる方向に回動する風量調整弁20と、風量調整弁とともに回動する当接部材41と、所定の風速以下のときに風量調整弁が風洞を閉じる方向に回動することの回動抵抗になるように風量調整弁を風洞を開く方向に付勢する一次弾性体32と、所定の風速以上のときに風量調整弁が風洞をさらに閉じる方向に回動することの回動抵抗になるように当接部材と当接して風量調整弁を風洞を開く方向に付勢し1次弾性体と2次弾性体とで風洞内を通過する風量を一定に保つ2次弾性体42と、操作部の操作にて風量調整弁を回転して風洞を閉鎖するとともに2次弾性体を当接部材に当接しない位置まで移動する閉鎖機構よりなる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物屋内外に連通する空気出入り口に設ける換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窓を開閉することなく、屋外の空気を自然に屋内に取り入れる換気装置は公知である。
特許文献1には、風量調整弁の回動にて風洞を開閉する技術を開示し、特許文献2には、微風時には一の弾性体で風量調整板が開く方向に付勢し、微風以上の強い風のときは複数の弾性体で風量調整板が開く方向に付勢する技術を開示する。
ここで、風量調整弁の回動で風洞の開閉をし、微風以上の強い風に対して回動抵抗となるように風量調整弁が開く方向に弾性付勢した場合には、風量調整弁で風洞を完全に閉じた状態の時に、風量調整弁が開く方向に大きな弾性力が働いたままの状態なり、風量調整弁の全閉に大きな力が必要であり、全閉状態の維持に信頼性が欠ける問題がある。
【0003】
【特許文献1】特開平10−232039号公報
【特許文献2】特開2005−273256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、風量調整弁の開閉操作性に優れ、閉鎖状態のときの気密、水密性が高い換気装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載に係る換気装置は、風洞と風量調整弁と当接部材と1次弾性体と2次弾性体と閉鎖機構とを備え、風洞は、建築物屋内外に連通する空気出入り口を有し、風量調整弁は無風状態で風洞を全開にし、且つ風を受けて風洞を閉じる方向に回動するものであり、当接部材は風量調整弁とともに回動するものであり、1次弾性体は、所定の風速以下のときに風量調整弁が風洞を閉じる方向に回動することの回動抵抗になるように風量調整弁を風洞を開く方向に付勢し、2次弾性体は、所定の風速以上のときに風量調整弁が風洞をさらに閉じる方向に回動することの回動抵抗になるように当接部材と当接して風量調整弁を風洞を開く方向に付勢し、1次弾性体と2次弾性体とで風洞内を通過する風量を一定に保つものであり、閉鎖機構は、操作部の操作にて風量調整弁を回転して風洞を閉鎖するとともに2次弾性体を当接部材に当接しない位置まで移動するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明に係る換気装置においては、風量調整弁の閉鎖機構として、操作部の操作で風量調整弁を回転閉鎖するとともに、風量調整弁とともに回動する当接部材が、風量調整弁が開いているときで且つ所定の風速以上で2次弾性体と当接するが、風量調整弁が閉鎖状態のときに2次弾性体を移動して当接部材と当接しないようにしたので、風量調整弁の全閉時に大きな力が必要なく、風量調整弁の開閉操作性が向上し、また、風量調整弁が閉鎖状態のときには風量調整弁に2次弾性体による開き方向の力が加わらないため、水密、気密性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る換気装置の実施例を以下図面に基づいて説明する。
図1に本発明に係る換気装置1の全体斜視図を示す。
なお、図1には換気装置の長手方向の両端部付近と、締りカム60からなる風量調整弁20の閉鎖機構付近を要部断面斜視図として表し、中間部分の表示を省略してある。
換気装置の長手方向の長さは、建築物に設ける屋内外の空気出入り口の大きさに合わせることになり、締りカム60は、風量調整弁20の長さに応じて複数配置して良い。
まず、図1に基づいて全体の構成を説明し、詳細な構成については後述する。
アルミ押出形材等で製作した風洞壁11、12にて建築物の屋内外を連通させた風洞10を形成し、風洞10の長手方向両端部は側壁13、14で塞いである。
風洞10の長手方向には回動軸21を軸芯にして開閉自在に回動する風量調整弁20を有している。
回動軸21の一端は側壁13の外側に延在し、風量調整弁20とともに回動揺動するボス30を連結し、このボス30と側壁13に取り付けたブラケット33との間にコイルバネ等の1次弾性体32を連結して、風量調整弁を開く方向に付勢してあり、微風時にはこの1次弾性体32が風量調整弁20の閉じる方向に対して回動抵抗となり、風が風洞内を通過する場合に通過する風量が一定になるように作用する。
回動軸21の他端は側壁14の外側に延在し、風量調整弁20の回動とともに回動揺動する当接部材41を連結してあり、側壁14にはベース40を設けてコイルバネ等の2次弾性体42を保持している。
微風時には当接部材41が2次弾性体とは当接せず、先に述べた1次弾性体32のみが風量調整弁の閉じる方向に対して回動抵抗になっていて、所定以上の風速になると当接部材41が2次弾性体42に対して圧縮する方向に当接し、この2次弾性体42が風量調整弁20の閉じる方向に対して回動抵抗になる。
従って、所定以上の風速になると、1次弾性体32と2次弾性体42との回動抵抗で風洞内を通過する風量を一定に保つ。
風量調整弁20を風洞閉鎖状態にするには、操作部50のハンドルを図1では奥側に押すことで支持軸52に連結した締りカム60が時計廻りに回転する。
これにより締りカム60を構成する支桿61とその先に連節した弁当接部62が回転し、弁当接部62が風量調整弁20に当接し、この風量調整弁20を閉鎖方向に回転させる。
風量調整弁20が回転し、閉鎖位置に近づくと弁当接部62はガイド部材64にも当接するようになり弁当接部62の移動をガイドする。
また、支持軸52の回転に伴い、図1では手前にベース40が移動し、風量調整弁20の閉鎖状態では2次弾性体42が手前に後退して当接部材41と当接しないようになっている。
【0008】
次に各部位の詳細な構成及び動作について説明する。
図2に基づいて微風時の風量調整弁20の動きについて説明する。
図2(a)は無風状態を示し、風洞に微風が流れ込んだ状態を図2(b)に示す。
無風状態では、風洞壁11、22と風量調整弁20の両側に出来る開口部d1が最大になるようになっていて、風量調整弁20の回動軸21には風量調整弁20の回動揺動に追随して回動揺動するボス30を連結してある。
風洞の側壁13にはブラケット33をビス33a等で取り付けてあり、このブラケット33にコイルバネ等の1次弾性体32の一端32bを連結し、ボス30に他端32aを連結してある。
図2(a)に示すように、風量調整弁20の全開状態からb側に逆回転しないようにボス30が当接するストッパー31を設けてある。
図2(b)に示すように、風洞10内に微風が流れ込むと、風量調整弁20は矢印aの方向に回動する。
極くわずかの微風のときには風を取り込みやすいように風量調整弁20の形状は翼形状になっている。
風量調整弁20は1次弾性体32で開く方向に付勢してあり、風洞10に流れ込む屋外からの風速に応じて1次弾性体32の伸長による回動抵抗を受けて開口部d2を調整するので屋内に流れ込む風量がほぼ一定になる。
【0009】
例えば、風速3m/分以上等所定の設定した微風以上の風が風洞10に流れ込んだ場合の風量調整弁20の動きを図3に示す。
回動軸21に風量調整弁20とともに回動揺動するボス状の当接部材41を連結してある。
一方、ベース40にはシャフト43がベース40に対して上下動するように取り付けてあり、このシャフト43はコイルバネ等の2次弾性体42にて図3ではヘッド43aが上方に突出する方向に弾性付勢してある。
設定した所定の風速以下の微風状態では図3(a)に示すように当接部材41が2次弾性体42で付勢したシャフト43のヘッド43aには当接しない状態で風量調整弁20が回動揺動している。
この時の開口部d3の状態から、風速が強くなると屋内に流れ込む風量を少なくすべく開口部d4の状態になるように風量調整弁20がさらに閉じる方向に回動する。
このような状態では当接部材41の当接部41aがシャフト43のヘッド43aに当接するようになる。
ヘッド43aは2次弾性体42にて突出方向に付勢してあるので、当接部材41がヘッド43aに当たると反発力が生じる。
この弾性反発力は風量調整弁20が開く方向に作用し、風量調整弁20が閉じる方向に対しては回動抵抗となるので屋内に流れ込む風量がほぼ一定になるように作用する。
【0010】
次に図4及至図6に基づいて風量調整弁20が閉鎖状態になる動作を説明する。
図4は操作部50のハンドル操作にてベース40が移動する状態を示し、図5は操作部50の動きに連動して締りカム60が回転し、風量調整弁20で風洞10を閉鎖状態にするように風量調整弁20を回転させる動きを示し、図6は風量調整弁20の閉鎖状態での気密、水密状態を示す。
図4に基づいてベース40が移動する動きを説明する。
操作部50のハンドルを図4(a)の位置から図4(b)の位置に操作すると(図4ではハンドルを左側に動かす)略L字状のハンドルが支点軸50aを回転中心にして回転する。
第1連動アーム51に設けた長孔51aとL字ハンドル先端部50bとを摺動連結し、第1連動アーム51は支持軸52と固定連結してあるので図4では第1連動アーム51の時計廻り回転により支持軸52も時計廻りに回転し、図5に示すように締りカム60が図5では時計廻りに回転する。
支持軸52は図4に示すように、第2連動アーム53と連結してあり、第2連動アーム53の先には第3連動アーム54を連節し、第3連動アーム54とベース40とは軸結部54aで軸結してあり、ベース40はブラケット44に回転可能に取り付けてあるので図4ではベース40が反時計廻りに回転する。
これにより図4(b)に示すように2次弾性体42により弾性付勢してあるシャフト43のヘッド43aが後退移動し、風量調整弁20の回動軸21に連結してある当接部材41が風量調整弁20の閉鎖状態に回動してもこのヘッド43aと当接しない。
よって、風量調整弁20の閉鎖状態においては2次弾性体が移動し、風量調整弁20が開く方向に付勢されることはなくなり気密、水密性が向上する。
なお、図4に示した例はベース40が回転して後退移動する例であるが2次弾性体が作用しない状態に移動できればよく回転移動に限定されない。
また、図4に示した操作部50の例はハンドルを手動操作するものであるがこの部分を電動駆動源に置き換えて電動操作してもよい。
締りカム60の回転による風量調整弁20の動きを図5に基づいて説明する。
締りカム60は支桿61と弁当接部62からなり、支桿61の一端61aは支持軸52に固定連結し、この支桿61の他端に弁当接部62を回動連結部61bで連結してある。
支桿61と弁当接部62とは回動連結部61bで相互に約10度程度回動自在になっていて、支桿61が支持軸52の回転により回転すると図5(a)の状態から図5(b)に示すように弁当接部62の先端部が風量調整弁20の翼の上端側部20aに当接し、閉鎖方向に風量調整弁20を回転する。
弁当接部62の先端部にはローラー63を軸着部62aで軸着してあり風量調整弁20を押し込みやすくなっている。
風量調整弁20の形状は風が流れやすいように翼形状になっていて、風量調整弁20がローラーと当接する位置は回転につれてずれるのでこの当接する位置は締りカム60の回転中心に対する同一円周上を移動する回転軌跡とはならない。
そこで弁当接部62の先端の動きをガイドするガイド部材64をビス等の固定部材65を用いて風洞壁12に取り付けることでガイド部材64のガイド面64aに沿ってローラー63の移動をガイドするとともに支桿61と弁当接部62との回動連結部61bが約10度程度の所定の角度、回動自在になっているので図5(c)に示すように風量調整弁20との同一円周上からのズレを吸収しながら閉鎖状態までに風量調整弁20を押し込む。
従って、風量調整弁の外形形状が変化してもその変化量を支桿61と弁当接部62との角度変化で吸収するので、風量調整弁の設計自由度が高い。
また、図5(c)に示すように閉鎖状態ではガイド部材64と風量調整弁20との間に弁当接部62の先端部が挟まれた状態になっているので風量調整弁20に生じる反発力はガイド部材64でも受けることになり、締りカム60に負荷が集中するのを抑えている。
ガイド部材64は、上下方向に移動調整可能に固定部材65で風洞壁12に固定してあり、このガイド部材64の上下で、風量調整弁20の閉鎖位置を調整する。
図6に示すように風洞壁11、12には長手方向に沿ってタイト材71、72をそれぞれ取り付けてあり、風洞の長手方向両端部は、風洞の側壁13、14にスポンジ状の側面シール部材74を取り付け、風量調整弁20の端面には端部シール部材73を取り付けてある。
なお、図6は、風量調整弁20の端面を2点鎖線で示し、風洞10の内部から側壁13方向を見た図になっていて点々で示した部分がスポンジ状のシール材を表す。
端部シール部材73は、図6A−A線断面図に示すようにプレートの閉鎖時下側に当接片73aを有し、開閉時上部側にスポンジ状のシール材73bを取り付けてあり、図6(a)に示すように風量調整弁20が風洞10を開いた状態では端部シール部材73と側面シール部材74とは当接しないが、図6(b)に示すように閉鎖状態では端部シール部材73と側面シール部材74が相互に当接し、気密、水密性を確保している。
この風量調整弁20の閉鎖状態では、図4に示したように、2次弾性体42がベース40の移動により後退し、当接部材41と当たっていないので、比較的強い2次弾性体の反発力を風量調整弁20が開く方向に受けないため、閉鎖時の気密、水密性が向上する。
なお、図1に示した実施例は建築物に対して換気装置1を水平(横)方向に設けたものであるが、垂直(縦)方向に設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る換気装置の斜視図を示す。
【図2】微風時における1次弾性体の作動状況説明図である。
【図3】微風以上の風速における2次弾性体の作動状況説明図である。
【図4】風量調整弁閉鎖時の2次弾性体の移動説明図である。
【図5】締りカムの作動説明図である。
【図6】気密、水密の説明図である。
【符号の説明】
【0012】
1 換気装置
10 風洞
20 風量調整弁
21 回動軸
32 1次弾性体
40 ベース
41 当接部材
42 2次弾性体
50 操作部
52 支持軸
60 締りカム
61 支桿
62 弁当接部
64 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風洞と風量調整弁と当接部材と1次弾性体と2次弾性体と閉鎖機構とを備え、
風洞は、建築物屋内外に連通する空気出入り口を有し、
風量調整弁は無風状態で風洞を全開にし、且つ風を受けて風洞を閉じる方向に回動するものであり、
当接部材は風量調整弁とともに回動するものであり、
1次弾性体は、所定の風速以下のときに風量調整弁が風洞を閉じる方向に回動することの回動抵抗になるように風量調整弁を風洞を開く方向に付勢し、
2次弾性体は、所定の風速以上のときに風量調整弁が風洞をさらに閉じる方向に回動することの回動抵抗になるように当接部材と当接して風量調整弁を風洞を開く方向に付勢し、1次弾性体と2次弾性体とで風洞内を通過する風量を一定に保つものであり、
閉鎖機構は、操作部の操作にて風量調整弁を回転して風洞を閉鎖するとともに2次弾性体を当接部材に当接しない位置まで移動するものであることを特徴とする換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−214828(P2011−214828A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118629(P2011−118629)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【分割の表示】特願2006−168533(P2006−168533)の分割
【原出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000175560)三協立山アルミ株式会社 (529)
【出願人】(591006117)株式会社ナガエ (16)
【Fターム(参考)】