説明

握り勝手が改善された一体エンボス/デボス加工側壁部を有する壁が一重の紙容器

【課題】 飲料を保持するための壁が一重の紙容器を提供すること。
【解決手段】 容器は1つの層の厚紙からなる側壁部を有する。容器は、また、それにより液体用容器が形成されるように、側壁部に取り付けられている底壁部を有する。底壁部および側壁部の両方は外面および内面を有する。容器はまた、複数の非断熱性刻印パターンを含む。刻印パターンは側壁部と一体に形成されていて、側壁部の内面および外面上で見ることができる。刻印パターンは、容器の側壁部上に凹凸のある握り面を形成するのに十分な深さを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照) なし
【0002】
(連邦支援研究または開発) なし
【0003】
本発明は、壁が一重の紙容器に関し、特に握り勝手が改善された一体形成のエンボス加工またはデボス加工をした側壁部を含む一重壁の紙カップに関する。
【背景技術】
【0004】
ホット飲料やコールド飲料等に使用する一重壁の紙容器は、商業向けや消費者向けにますます大量に使用されている。紙をベースとする容器に対する需要が増大した1つの理由は、プラスチックまたはポリスチレンのビーズ発泡カップよりもマーケティングや広告のための印刷をより詳細に行うことができるからである。さらに、紙をベースとする容器は、微生物により容易に無害な物質に分解することができ、そのため、例えば、ポリスチレン・ビーズ発泡容器よりも環境に優しい。
【0005】
このように需要および使用が増大しているという観点から、飲料および容器産業は、引き続き製品をコストパフォーマンスの良い状態に維持しながら紙容器を改善する種々の方法を探求している。改善することができる分野としては、安全性、コスト、設計、および製造法等がある。これらの分野は、多くの場合相互に関係しているが、また多くの場合、相互に無関係でもある。例えば、多くの場合、容器の他の特性よりも材料コストおよび製造コストが優先する。
【0006】
しかし、改善がますます求められている1つの分野は、紙容器、特に紙カップに関連する人間工学の分野である。このことは、特に「持ち帰り」飲料の人気の上昇という観点から言えることである。至る所で、非常に多くの人々が、ソーダ、水、コーヒー、お茶および他の飲料が入っているカップを片方の手または両方の手に持ちながら、歩いたり、走ったり、ドライブしたり、通勤したり、働いたりしている。従来の壁が一重の紙容器に関連する人間工学上の問題の1つは、握り勝手が悪いことである。ポリスチレン・ビーズ発泡容器の外側の手触りとは異なり、壁が一重の紙容器の側壁部は通常つるつるしている。それ故、紙カップはユーザが手にしている間に、ますます滑りやすくなっている。このような滑り易さのために、ユーザは究極的には容器を落としたり、その中身をこぼしたりすることになる。それ故、容器が滑ったりまたは中身がこぼれるのを防止するために、これらのカップの握り勝手をよくする必要がある。
【0007】
この問題を解決する1つの方法として、外装の形または二重壁の紙の製紙原料の形で、容器の側壁部に取り付けた厚紙の第2の層上に隆起した面を形成する方法がある。Stopkayの米国特許第5,820,016号には、断熱体が外装の外面上または側壁部の外面上に形成される技術の一例が開示されている。この方法は、ホット飲料の容器の断熱を与えるにはある程度は成功かもしれないが、外装を取り付ける技術は非常に高価になり、断熱を必要としない飲料に使用した場合は無駄になることがある。1枚の厚紙から容器の側壁を形成する代わりに、第2の厚紙または壁が二重の厚紙が必要になる。もちろん、このことは、紙をベースとするカップのいくつかの目的のうちの1つ、すなわち不必要な環境廃棄物を少なくするという目的に本質的にそぐわない。さらに、厚紙の第2の層または壁が二重の厚紙を使用すると、材料全体の量が増え、製品に関連する製造コストが増大する。
【特許文献1】米国特許第5,820,016号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故、製品の製造に関連する材料全体のコストを増大しないで、握り勝手が改善された一重壁の紙容器の提供が待望されている。本発明は、上記および他の問題を解決し、このタイプの従来の紙の容器が持っていなかったいくつかの利点および態様を提供するためのものである。本発明の特徴および利点については、以下の詳細な説明のところで詳しく説明するが、その説明は添付の図面を参照しながら行うことにする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ホット飲料またはコールド飲料を保持するための壁が一重の紙容器を提供する。この容器は、厚紙の1つの層からなる側壁部を有する。この容器は、またそれにより液体用容器が形成されるように側壁部に取り付けられている底壁部も有する。底壁部および側壁部の両方は、外面および内面を有する。容器は、また複数の非断熱性刻印パターンも含む。刻印パターンは、側壁部内に一体に形成され(エンボス、デボスまたはこれらの組合わせにより)、側壁部の内面および外面上で見ることができる。さらに、刻印パターンは、容器の側壁部上に凹凸のある握り面を形成するのに十分な深さを有する。
【0010】
本発明の他の態様によれば、上記複数の各刻印パターンは、側壁部の隣接するエンボスになっていない部分とほぼ同じ断熱値を有する。
【0011】
本発明のさらに他の態様によれば、刻印パターンは、それに接着している織り目加工された基材を有する複数のデボス面を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
下記の図面を参照しながら以下の説明を読めば、本発明の他の特徴および利点を理解することができるだろう。
【0013】
本発明を理解してもらうために、添付の図面を参照しながら本発明について以下に説明するが、これは単に例示としてのものに過ぎない。
【0014】
本発明は多くの異なる形態で実施することができるが、本発明の好ましい実施形態を図面に示し、以下に詳細に説明するが、この開示は、本発明の原理の一例であると見なすべきで、本発明の広範な態様を図の実施形態に限定するものではないという理解を前提にしたものである。例えば、ソーダ、水、ジュース、コーヒー、お茶等のようなホットまたはコールド液体飲料を含んでいる厚紙のカップだけ説明し、図示するが、ホットまたはコールド液体を保持するために使用する多くの異なるタイプの厚紙の容器の形にすることもできることを理解されたい。
【0015】
図1〜図10について詳細に説明すると、これらすべての図面は、側壁部12、底壁部14および外部に向かって曲がっているリム16を有する中空本体を備える液体が漏れない容器10を示す。側壁部12および底壁部14は、結合して液体用容器を形成する。図1〜図10に示すように、容器10は、好適には、ほぼ円錐台の形をしているカップであることが好ましい。しかし、飲料容器10は、本発明から逸脱することなしに、任意の幾何学的形状をとることができる。
【0016】
本発明によれば、容器10の側壁部12は、1つの層の厚紙からなる。底壁部14および側壁部12の両方は、外面および内面を有する。本発明の一実施形態によれば、容器10の側壁部12を形成している1つの層の厚紙は、175ポンド/連の厚紙からできている。厚紙は、容器10の所与の用途に適している任意の重量のものを使用することができるが、好適には、厚紙は50〜400ポンド/連の基礎重量を有するものであることが好ましい。本発明の一実施形態によれば、容器10は、好適には、Mead Westvaco社のカップ用製紙原料でできていることが好ましい。しかし、容器10は、容器10が使用される用途に適している任意の等級の厚紙から作ることができる。また、厚紙カップ用製紙原料は、再生または新厚紙用製紙原料で作ることもできる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、厚紙は、片面がポリエチレンでコーティングされた紙用製紙原料である。ポリエチレンでコーティングすると、通常、容器10内に保持されている液体が側壁部12を通して漏洩するのを最小限度に低減するバリヤができる。本発明の他の実施形態では、通常、コールド飲料容器用途の場合、両面がポリエチレンでコーティングされた紙用製紙原料が使用される。この実施形態の場合には、ポリエチレン・コーティングは、また、容器10の側壁部12上に凝結が形成するのを遅らせるのを助ける。本発明の場合には、また、漏洩および/または凝縮の形成を防止するために、容器10の底壁部14の片面および両面もポリエチレンでコーティングすることができる。もちろん、本発明の範囲から逸脱することなしに、消費者の飲料容器用に適しているポリエチレン以外のコーティングも、側壁部12および/または底壁部14上で使用することができる。例えば、コーティングを、ポリプロピレン、ポリエステル・テレフタレート、これらのポリマーの混合物、または水をベースとするアクリル乳液のような印刷プレスまたは抄紙機(paper machine)によるコーティングの厚紙上に押し出すことができる任意のタイプのポリマーで行うことができる。また、本発明は、コーティングしていない厚紙または他の適当な紙用製紙原料を使用することもできる。例えば、表面コーティングを必要としない予めしみ込ませた紙用製紙原料を本発明から逸脱することなしに使用することもできる。
【0018】
図1〜図10を見れば分かるように、容器10は、また、側壁部12の内面および外面上で見ることができる複数の非断熱性の刻印パターン18を含む。本発明によれば、刻印パターン18は、容器の側壁部12内に一体に形成され、容器10の側壁部12上に凹凸のある握り面を形成するのに十分な深さを有する。刻印パターン18は、容器10の側壁部12から外側に隆起している複数のデボス面であってもよい。別の方法としては、刻印パターン18は、容器10の側壁部12から内側に突き出している複数のエンボス面であってもよい。どちらの場合も、刻印パターン18は、容器10の側壁部12の地形学的面を変える織り目(texture)を形成する。好適には、エンボスまたはデボス・パターンを2.54cm(1インチ)の2/1000から2.54cm(1インチ)の50/1000(0.00508cm〜0.127cm(0.002〜0.050インチ))の範囲の深さに刻印することが好ましい。しかし、エンボスまたはデボスの深さは、従来の滑らかな側壁部を有する紙容器と比べて、本発明の容器10の握り勝手を改善する織り目加工された表面を形成するのに適している任意の深さにすることができる。
【0019】
図1〜図10を見れば分かるように、異なるパターンのエンボスまたはデボスを使用することができる。例えば、図1および図10は、複数の英数字識別マークからなるエンボス・パターン18の一例を示す。図1の場合には、識別マーク18は、垂直方向の反復パターンで配置されている。図10を見れば分かるように、エンボス・マーク18は、また、凹凸のある面を形成する単一レベルの織り目として配置することもできる。別の方法としては、図8および図9に示すように、刻印パターン18は、容器10の側壁部12上の外側に向けて隆起している複数のデボス・マーク18であってもよい。刻印パターン18は、識別マーク以外のパターンを含むこともできる。例えば、エンボスまたはデボス・パターン18は、図3〜図6に示すデザインであってもよいし、または滑らかな側壁部を有する紙容器と比較した場合、握り勝手を改善するのに適している任意の他のパターンであってもよい。例えば、パターンは、種々のスポーツ・チーム、大学、開催地、会社等のロゴであってもよい。
【0020】
刻印面が複数のデボス面により形成されている本発明の一実施形態の場合には、側壁部12の少なくともデボス領域は、織り目加工された基材でコーティングされる。好適には、基材は、熱可塑性エラストマー(TPE)であることが好ましい。しかし、基材は、側壁部12の厚紙のコーティングしていない面より摩擦係数が大きい任意の基材であってもよい。
【0021】
特定の実施形態について図示し、説明してきたが、本発明の精神から逸脱することなしに多くの修正を思い付くだろう。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってだけ制限される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による紙容器の斜視図である。
【図2】図1の2−2線に沿って切断した紙容器の断面図である。
【図3】本発明による紙容器のもう1つの実施形態の斜視図である。
【図4】図3の4−4線に沿って切断した紙容器の断面図である。
【図5】図3の紙容器の底面図である。
【図6】本発明による紙容器のもう1つの実施形態の斜視図である。
【図7】図6の6−6線に沿って切断した紙容器の断面図である。
【図8】本発明による紙容器のもう1つの実施形態の斜視図である。
【図9】図8の9−9線に沿って切断した紙容器の断面図である。
【図10】本発明による紙容器のもう1つの実施形態の斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
10 容器
12 側壁部
14 底壁部
16 リム
18 刻印パターン、識別マーク、エンボスマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料を保持するための壁が一重の紙容器であって、
外面と内面とを有し、1つの層の厚紙を有する側壁部と、
外面と内面とを有し、液体用容器を形成するために前記側壁部に取り付けられている底壁部と、
前記側壁部と一体に形成されていて、前記側壁部の内面および外面上で見ることができる複数の非断熱性刻印パターンを含み、
前記刻印パターンが前記容器の前記側壁部上に凹凸のある握り面を形成する十分な深さを有する壁が一重の紙容器。
【請求項2】
前記刻印パターンが、前記容器の前記側壁部から外側に隆起する複数のデボス面を形成している請求項1に記載の紙容器。
【請求項3】
前記デボス面が、前記厚紙の摩擦係数より大きい摩擦係数を有する、それに接着している織り目加工された基材を含む請求項2に記載の紙容器。
【請求項4】
前記デボス面に接着している前記織り目加工された基材が熱可塑性エラストマーである請求項3に記載の紙容器。
【請求項5】
前記刻印パターンが、前記容器の前記側壁部内に内側に向かって突き出ている複数のエンボス面を形成する請求項1に記載の紙容器。
【請求項6】
前記側壁部の前記内面がポリエチレンでコーティングされる請求項1に記載の紙容器。
【請求項7】
底壁部の前記内面がポリエチレンでコーティングされる請求項1に記載の紙容器。
【請求項8】
前記厚紙が50〜400ポンド/連の基礎重量を有する請求項1に記載の紙容器。
【請求項9】
前記刻印パターンの前記深さが0.005cm〜0.127cm(0.002インチ〜0.050インチ)の範囲内である請求項1に記載の紙容器。
【請求項10】
前記厚紙が再生厚紙製紙原料からなる請求項1に記載の紙容器。
【請求項11】
前記刻印パターンが複数の反復マークを有する請求項1に記載の紙容器。
【請求項12】
前記刻印パターンが、複数のエンボスおよびデボス面を形成し、前記エンボス面が前記容器の前記側壁部内に内側に突き出ていて、前記デボス面が前記容器の前記側壁部から外側に突き出ている請求項1に記載の紙容器。
【請求項13】
前記側壁部の前記外面および内面のうちの少なくとも一方が、ポリエチレンによりコーティングされる請求項1に記載の紙容器。
【請求項14】
飲料を保持するための壁が一重の紙容器であって、
外面と内面とを有し、1つの層の厚紙を有する側壁部と、
外面と内面とを有し、液体用容器を形成するために前記側壁部に取り付けられている底壁部と、
前記側壁部と一体に形成されていて、前記側壁部の前記内面および外面上で見ることができる複数の非断熱性刻印パターンを含み、
前記刻印パターンが、前記容器の前記側壁部上に凹凸のある握り面を形成する十分な深さを有し、前記複数の各刻印パターンが、前記側壁部の隣接するエンボスを行っていない部分とほぼ同じ断熱値を有する壁が一重の紙容器。
【請求項15】
前記刻印パターンが、前記容器の前記側壁部から外側に隆起している複数のデボス面を形成している請求項14に記載の紙容器。
【請求項16】
前記デボス面が、前記厚紙の摩擦係数より大きい摩擦係数を有する、それに接着している織り目加工された基材を含む請求項15に記載の紙容器。
【請求項17】
前記デボス面に接着している前記織り目加工された基材が熱可塑性エラストマーである請求項16に記載の紙容器。
【請求項18】
前記刻印パターンが、前記容器の前記側壁部内に内側に向かって突き出ている複数のエンボス面を形成する請求項14に記載の紙容器。
【請求項19】
前記刻印パターンが、複数のエンボスおよびデボス面を形成し、前記エンボス面が前記容器の前記側壁部内に内側に突き出ていて、前記デボス面が、前記容器の前記側壁部から外側に突き出ている請求項14に記載の紙容器。
【請求項20】
前記側壁部の前記外面および内面のうちの少なくとも一方が、ポリエチレンでコーティングされる請求項14に記載の紙容器。
【請求項21】
前記底壁部の前記外面および内面のうちの少なくとも一方が、ポリエチレンでコーティングされる請求項14に記載の紙容器。
【請求項22】
前記厚紙が、50〜400ポンド/連の基礎重量を有する請求項14に記載の紙容器。
【請求項23】
前記刻印パターンの前記深さが、0.005cm〜0.127cm(0.002インチ〜0.050インチ)の範囲内である請求項14に記載の紙容器。
【請求項24】
前記厚紙が、再生厚紙製紙原料および新厚紙製紙原料のうちの一方からなる請求項14に記載の紙容器。
【請求項25】
前記刻印パターンが複数の反復マークを有する請求項14に記載の紙容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−44799(P2006−44799A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199825(P2005−199825)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(504048054)ソロ カップ カンパニー (4)
【Fターム(参考)】