説明

揮発性液体散布装置

【課題】使用時に手間をかけず、揮発性液体を揮発可能な状態に速やかにセッティングすること。
【解決手段】揮発性液体Wが充填された容器2と、容器の口部に装着された有底筒状の挿入筒3と、下方移動可能に挿入筒内に収容され、先端部に底部21を穿刺する第1の穿刺部34が設けられた可動体4と、揮発性液体を容器外まで吸い上げた後に揮発させる吸上げ芯5と、第1の穿刺部に形成され、底部を穿刺した際に揮発性液体を流通させて吸上げ芯に到達させる流路35と、を備えている揮発性液体散布装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性液体を大気中に散布する揮発性液体散布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香剤や消臭剤等の揮発性液体を大気中に散布する装置は、様々なものが提供されているが、その基本的構成は容器内に充填された揮発性液体を吸上げ芯で吸い上げ、この吸い上げた揮発性液体を容器外で揮発させて大気中に散布する構成とされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平06−38996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、揮発性液体は、大気中に触れたままにしておくと揮発が進行してしまうため、使用前の段階では、揮発性液体を収容する容器の口部をキャップやシール等で蓋をしておく構成が一般的である。
そのため、使用する際には、口部からキャップやシール等を取り外す手間が必要であった。特に、容器の上部には、揮発性液体の揮発成分を散布する散布孔が形成されたカバー体が着脱可能に固定される場合が多い。この場合には、キャップやシール等を取り外した後、カバー体を装着するといった手順となり、余計に手間のかかるものであった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、使用時に手間をかけず、揮発性液体を揮発可能な状態に速やかにセッティングすることができる揮発性液体散布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
(1)本発明に係る揮発性液体散布装置は、揮発性液体を大気中に散布する揮発性液体散布装置であって、前記揮発性液体が充填された容器と、前記容器の口部に装着されると共に、口部内から容器の内部に差し込まれた有底筒状の挿入筒と、下方移動可能に突出するように前記挿入筒内に収容され、挿入筒の底部側に位置する先端部に該底部を穿刺する第1の穿刺部が設けられた可動体と、前記可動体に保持され、前記揮発性液体を前記容器外まで吸い上げた後に揮発させる柱状の吸上げ芯と、前記第1の穿刺部に形成され、該第1の穿刺部が前記底部を穿刺した際に前記揮発性液体を流通させて前記吸上げ芯に到達させる流路と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明に係る揮発性液体散布装置においては、使用前の段階では、口部に装着された挿入筒の底部が閉じている。そのため、容器内に充填されている揮発性液体が、容器外の大気に触れることがない。従って、使用前の段階で、揮発性液体が揮発しないようになっている。
【0008】
一方、使用する場合には、可動体の基端部を押し下げる。すると、可動体及び該可動体に保持されている吸上げ芯は、共に挿入筒内を下方移動する。そして、下方移動した結果、可動体の先端部に設けられた第1の穿刺部が挿入筒の底部を穿刺する。これにより、第1の穿刺部は、挿入筒の底部を突き抜け、容器の内部に侵入する。すると、容器内に充填されている揮発性液体は、流路を通って吸上げ芯に到達した後、この吸上げ芯によって上方に吸い上げられ、容器外にて大気に触れることで揮発する。そして、揮発した成分は、装置の周囲に散布される。
【0009】
このように、可動体を下方移動させることで、揮発性液体を揮発させ、大気中に散布することができる。特に、従来のように口部からキャップやシール等を取り外すような手間がかかるものとは異なり、可動体を下方移動させるだけの簡便な操作で、手間をかけずに揮発性液体を揮発可能な状態に速やかにセッティングすることができる。従って、非常に使い易く、利便性に優れている。
【0010】
(2)本発明に係る揮発性液体散布装置は、上記本発明の揮発性液体散布装置において、前記可動体には、下方移動によって前記第1の穿刺部が前記底部を穿刺した際に、前記挿入筒の一部を穿刺して前記容器の外部から内部に空気を流通させる第2の穿刺部が連結されていることを特徴とする。
【0011】
この発明に係る揮発性液体散布装置においては、可動体を下方移動させて第1の穿刺部を挿入筒の底部に穿刺した際、第2の穿刺部が挿入筒の一部を同様に穿刺する。これにより、容器の外部から内部に空気を流通させることができ、吸い上げられた揮発性液体の分だけ空気置換を好適に行うことができる。従って、容器内が負圧になることを防止でき、揮発性液体の吸い上げを良好に促すことができる。
【0012】
(3)本発明に係る揮発性液体散布装置は、上記本発明の揮発性液体散布装置において、前記可動体の基端部には、押し下げ部材が固定されていることを特徴とする。
【0013】
この発明に係る揮発性液体散布装置においては、可動体の基端部に押し下げ部材が固定されているので、押し下げ時に力を伝え易く、挿入筒の底部を第1の穿刺部により容易に穿刺することができる。従って、より速やかに揮発性液体を揮発可能な状態にセッティングすることができる。
【0014】
(4)本発明に係る揮発性液体散布装置は、上記本発明の揮発性液体散布装置において、前記容器又は前記挿入筒に固定され、前記口部の上部を覆う有頂筒状に形成されると共に、その頂壁部に散布孔が形成されたカバー体を備え、前記押し下げ部材が、前記可動体の下方移動前、前記散布孔を塞ぐ位置に配設されていると共に、該位置で破断可能な弱化部によって支持されていることを特徴とする。
【0015】
この発明に係る揮発性液体散布装置においては、使用前の段階では、押し下げ部材が散布孔を塞ぐ位置に配設され、この位置で弱化部によって支持されているので、不意に或いは誤って可動体が下方移動し難い。従って、揮発性液体を無駄に揮発させてしまうことを防止することができる。
一方、使用時には、弱化部を破断しながら押し下げ部材を押し下げ、可動体を下方移動させる。特に、弱化部は容易に破断可能であるので、手間をかけることなく直ちに可動体を下方移動させることができる。また、可動体が下方移動することで散布孔が開放される。従って、散布孔を通じてカバー体の内側で揮発した揮発性液体の成分を装置の外部に確実に散布することができる。
【0016】
(5)本発明に係る揮発性液体散布装置は、上記本発明の揮発性液体散布装置において、前記挿入筒の底部には、弱化部が形成されていることを特徴とする。
【0017】
この発明に係る揮発性液体散布装置においては、第1の穿刺部を挿入筒の底部に穿刺した際に、底部は弱化部を基点として開口し易い。従って、第1の穿刺部をより容易に穿刺して、底部を突き破ることができる。よって、より速やかに揮発性液体を揮発可能な状態にセッティングすることができる。
【0018】
(6)本発明に係る揮発性液体散布装置は、上記本発明の揮発性液体散布装置において、前記可動体の基端部には、前記吸上げ芯に接触し、該吸上げ芯によって吸い上げられた前記揮発性液体が含浸される含浸プレートが固定されていることを特徴とする。
【0019】
この発明に係る揮発性液体散布装置においては、吸上げ芯によって吸い上げた揮発性液体を、容器外にて含浸プレートに含浸させることができる。この際、含浸された揮発性液体は、含浸プレートの全体に拡がるのでより大気に触れ易くなる。つまり、含浸プレートの表面積が大きいので、揮発性液体をより広範囲で大気に触れさせることができる。従って、揮発性液体をより効率良く揮発させることができ、散布性能を高めることができる。
【0020】
(7)本発明に係る揮発性液体散布装置は、上記本発明の揮発性液体散布装置において、前記挿入筒が、前記口部の内周面に当接する当接筒を有し、前記当接筒の内周面には、前記可動体の下方移動をガイドするガイドリブが前記容器軸回りに複数設けられていることを特徴とする。
【0021】
この発明に係る揮発性液体散布装置においては、挿入筒の当接筒の外周面が口部の内周面に当接しているので、口部に装着された挿入筒のがたつきを抑え、装着時のさらなる安定化を図ることができる。よって、挿入筒内で可動体を滑らかに下方移動させることができる。
また、ガイドリブによって可動体の下方移動がガイドされているので、下方移動時に可動体にがたつき等が生じ難い。従って、挿入筒の底部に確実に第1の穿刺部を穿刺させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る揮発性液体散布装置によれば、使用時に可動体を下方移動させるだけの簡便な操作で、手間をかけずに揮発性液体を揮発可能な状態に速やかにセッティングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る揮発性液体散布装置の実施形態を示す図であって、全体の外観斜視図である。
【図2】図1に示す揮発性液体散布装置の縦断面図である。
【図3】図2に示す断面矢視A−A図である。
【図4】図2に示可動体の斜視図である。
【図5】図4に示す可動体に吸上げ芯を保持させた状態を示す図である。
【図6】図2に示す断面矢視B−B図である。
【図7】図2に示す状態から、可動体を下方移動させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る揮発性液体散布装置の実施形態について、図1から図7を参照して説明する。
本実施形態の揮発性液体散布装置1は、図1及び図2に示すように、揮発性液体Wを大気中に散布する装置であって、容器2と、挿入筒3と、可動体4と、吸上げ芯5と、外装カバー(カバー体)6と、を備えている。
【0025】
なお、図1は、揮発性液体散布装置1の外観斜視図である。図2は、揮発性液体散布装置1の縦断面図である。また、各構成品のそれぞれの中心軸は、共通軸上に位置している。本実施形態では、この共通軸を容器軸Oといい、この容器軸Oに直交する方向を径方向、容器軸Oを中心に周回する方向を周方向とする。また、揮発性液体Wとしては、例えば、芳香剤、消臭剤や殺虫剤等である。
【0026】
容器2は、底部10、胴部11、肩部12及び口部13を有する有底筒状に形成されており、内部に揮発性液体Wが充填されている。口部13の外周面には、挿入筒3の雌ねじ部20aが螺合される雄ねじ部13aが形成されている。
また、本実施形態の容器2は、胴部11が平面視長方形状に形成されている。また、肩部12と口部13との連設部分には、胴部11の長手方向(矢印L1方向)に沿いながら径方向外方に向けて突出する突起部14が容器軸Oを挟んで対向するように設けられている。この突起部14は、挿入筒3を口部13に螺合によって装着させる際に、該挿入筒3の回転量を規制すると共に周方向への位置決めをさせる役割を果している。
【0027】
挿入筒3は、有底筒状に形成された部材であり、容器2の口部13に装着されると共に、一部が口部13内から容器2の底部10に向かって容器2の内部に差し込まれている。
詳細に説明すると、挿入筒3は、口部13の周囲を囲み、雄ねじ部13aに螺合される雌ねじ部20aが内周面に形成された円筒状の外筒20と、該外筒20の径方向内側に配設され、底部21によって下端部が遮蔽された円筒状の内筒22と、外筒20の上端部と内筒22の上端部とを連設する連設部23と、外筒20の下端部から容器2の肩部12に沿って径方向外方に延在したフランジ部24と、フランジ部24の外周縁から容器軸Oに沿って上方に折曲された平面視長方形状の周壁筒25と、を備えている。
【0028】
そして、外筒20の雌ねじ部20aを口部13に形成された雄ねじ部13aに螺合することにより、挿入筒3を容器2の口部13に装着可能とされている。フランジ部24の下面には、装着時に容器2側の突起部14に当接する突起部25が容器軸Oを挟んで対向するように設けられている。
これにより、挿入筒3は、装着時に回転量が規制されると共に周方向に位置決めされるようになっている。特に、回転量が規制されることで、挿入筒3は容器2の肩部12に接触しないようになっている。また、周方向に位置決めされることで、平面視長方形状の周壁筒25の長手方向と、平面視長方形状の容器2の胴部11の長手方向とが一致するようになっている。
【0029】
内筒22は、挿入筒3の装着時に、口部13内から容器2の内部に差し込まれる筒部材であり、口部13から容器2の底部10に向かって延在するように形成されており、下端部が容器2の底部10近くに位置するように設計されている。そして、この下端部には、上述した底部21が連設されている。これにより、容器2の内部に差し込まれた内筒22内に揮発性液体Wが侵入しないようになっている。
ここで、本実施形態の底部21には、容器軸O回りに環状に形成された環状溝26が形成されている。この環状溝26は、他の部分よりも剛性が弱い弱化部として機能するので、底部21がこの環状溝26を基点に開口し易いように設計されている。
【0030】
ところで、内筒22の上端部には、下端部側よりも大径に形成され、口部13の内周面に当接する円筒状の当接筒27が設けられている。これにより、挿入筒3のがたつきを抑えることができ、挿入筒3の安定化を図ることができる。また、容器2を過度に傾けてしまったとしても、当接筒27と口部13との間から揮発性液体Wが漏れない構造となっている。
また、この当接筒27の内周面には、図3に示すように、後述する可動体4の下方移動をガイドするガイドリブ28が容器軸O回りに複数形成されている。なお、図3は、図2に示すA−A線に沿った断面図である。
【0031】
本実施形態のガイドリブ28は、当接筒27の内周面から容器2の胴部11の短手方向(矢印L2方向)に延在するように形成されており、容器軸Oを挟んで対向し、且つ、胴部11の長手方向(矢印L1方向)に平行に並ぶように合計6つ形成されている。但し、ガイドリブ28の数や位置は、この場合に限定されるものではなく、自由に設計して構わない。
【0032】
周壁筒25は、図1及び図2に示すように、容器2の胴部11と略同じ外径サイズに形成されている。また、周壁筒25の径方向内側には、間隔を開けて周壁筒25に対向する内壁筒29がフランジ部24上に立設するように設けられている。これにより、周壁筒25と内壁筒29との間には、環状の隙間Sが確保されている。
【0033】
可動体4は、図2に示すように、下方移動可能で且つ基端部が容器2外に突出するように挿入筒3内に収容された部材である。
詳細に説明すると、本実施形態の可動体4は、図2及び図4に示すように、容器軸Oに沿って長尺に形成されたロッド部30と、ロッド部30の基端部に取り付けられた押し下げプレート(押し下げ部材)31と、を備えている。
なお、図4は、可動体4の斜視図である。また、図を見易くするために、押し下げプレート31を透過した状態を図示している。
【0034】
ロッド部30は、先端部から基端部に亘って直線状に2つのスリット溝32が形成された円筒状に形成されており、円形状の端壁部33によって先端部が塞がれている。なお、スリット溝32は、軸線を挟んで対向するように形成されている。
端壁部33の下面の略中心には、挿入筒3の底部21に向かって突出し、可動体4の下方移動時に底部21を穿刺する穿刺部(第1の穿刺部)34が設けられている。この穿刺部34は、底部21を穿刺した際に、該底部21を突き抜け、容器2の内部に侵入する役割を果している。この際、端壁部33は、穿刺されていない底部21の上面に当接するようになっている。
【0035】
また、穿刺部34の略中心には、底部21を穿刺した際に揮発性液体Wを毛細管現象等により吸い上げ可能な微小直径の流路35が容器軸Oに沿って形成されている。これにより、穿刺部34だけが容器2の内部に侵入しても、揮発性液体Wを確実に吸上げ芯5に到達させることができるようになっている。また、端壁部33の上面の略中心には、上方に突起した凸部33aが形成されており、この凸部33aの先端まで流路35が形成されている。この凸部33aにより、流路35は吸上げ芯5の内部に押し込まれた状態になるので、揮発性液体Wは吸上げ芯5によって吸い上げられ易くなっている。
【0036】
また、ロッド部30の基端部は、容器2外に突出していると共に、端部に押し下げプレート31が一体的に取り付けられている。この押し下げプレート31は、容器軸Oに対して垂直な平面に沿って延在したプレートであり、平面視円形状に形成されている。押し下げプレート31の下面の略中心には、三角状(円錐状)に突起したリブ31aが形成されている。
【0037】
また、ロッド部30の基端部には、周方向に沿って切り欠かれた2つの切欠部36が容器軸Oを挟んで対向するように形成されている。更に、ロッド部30の基端部には、容器2の胴部11の長手方向(矢印L1方向)に沿って径方向外方に延在する2つのサイドプレート37が容器軸Oを挟んで対向するように取り付けられている。このうち一方のサイドプレート37の下端部には、下方に向かって突出し、下方移動によって穿刺部34が挿入筒3の底部21を穿刺した際に、挿入筒3の一部(具体的には、当接筒27の下端部に連設された環状のフランジ部27a)を穿刺して、容器2の外部から内部に空気を流通させる穿刺部(第2の穿刺部)38が形成されている。つまり、この穿刺部38は、サイドプレート37を介して可動体4のロッド部30に連結されている。
この穿刺部38の外表面には、先端部から基端部に亘って直線状の溝部38aが形成されており、この溝部38aを通じて空気を容器2の内部に確実に流通させ、容器2内の空気置換を行うことが可能とされている。
【0038】
なお、穿刺部38によって穿刺されるフランジ部27aには、穿刺部38の軸回りに環状に形成された環状溝27bが形成されている。この環状溝27bは、他の部分よりも剛性が弱い弱化部として機能するものであり、フランジ部27aがこの環状溝27bを基点に開口し易いように設計されている。これにより、穿刺部34と同様に、この穿刺部38に関しても容易にフランジ部27aを穿刺することができるようになっている。
しかも、本実施形態では、容器軸Oを挟んで対向するように環状溝27bが形成されている。そのため、可動体4をセットする際に、穿刺部38の位置合わせが不要となる。従って、組み立て易くなり、製造効率を高めることができる。但し、環状溝27bは、少なくとも1箇所にあれば十分である。
【0039】
このように構成された可動体4には、図2及び図5に示すように、吸上げ芯5が保持されている。なお、図5は、吸上げ芯5を保持した状態の可動体4の斜視図である、
この吸上げ芯5は、不織布等によりロッド部30と同程度の長さの長尺な円柱状に形成されており、揮発性液体Wを容器2外まで吸い上げた後に揮発させる役割を担っている。
本実施形態では、スリット溝32を利用してロッド部30内に押し込まれることで、該ロッド部30に吸上げ芯5が保持されている。この際、吸上げ芯5の基端部は、押し下げプレート31に接触した状態となっている。よって、吸上げ芯5の一部は、切欠部36を介して露出するようになっている。しかも、押し下げプレート31に形成されたリブ31aによって、吸上げ芯5の基端部は径方向外方に若干膨らみ、切欠部36からロッド部30の外側に飛び出るように力が加わった状態となっている。
【0040】
また、可動体4の基端部には、図2に示すように、吸上げ芯5に接触し、この吸上げ芯5によって吸い上げられた揮発性液体Wが含浸される含浸プレート40が固定されている。この含浸プレート40は、吸上げ芯5と同様の材料により平面視長方形状に形成された含浸体であり、切欠部36によって現れたロッド部30の端面36aと、押し下げプレート31との間で挟まれることで固定されている。
具体的には、図6に示すように、含浸プレート40の中心部に形成されたスリット40aに、吸上げ芯5を保持した可動体4を差し込むことで、基端部に固定されるようになっている。なお、図6は、図2に示すB−B線に沿った断面図である。
【0041】
特に、上述したように、吸上げ芯5の一部が切欠部36を介して露出しているので、この露出した部分と含浸プレート40とが確実に接触するようになっている。しかも、リブ31aによって、切欠部36からロッド部30の外側に飛び出るように吸上げ芯5に力が加わっているので、含浸プレート40に対して密に接触するようになっている。
【0042】
外装カバー6は、図1及び図2に示すように、周壁部50と頂壁部51とによって有頂筒状に形成された部材であり、挿入筒3及び容器2の口部13を上方から覆っている。
詳細に説明すると、周壁部50は平面視長方形状に形成されており、挿入筒3の周壁筒25と内壁筒29との間に形成された隙間Sに下端部が嵌り込んで嵌合固定されている。つまり、本実施形態の外装カバー6は、挿入筒3に固定されている。
【0043】
頂壁部51は、周壁部50の上端部に連設されており、揮発性液体Wが揮発した成分を外装カバー6の外側に放出し、散布させる散布孔52が形成されている。本実施形態の散布孔52は、頂壁部51の略中心に形成され、平面視円形状とされている。
また、本実施形態の外装カバー6には、上記散布孔52に加え、揮発性液体Wが揮発した成分を外装カバー6の外側に放出させるための補助散布孔54が形成されている。この補助散布孔54は、容器軸Oを中心に略90度毎に4つ形成されており、頂壁部51から周壁部50に亘って径方向に沿うスリット状に形成されている。この補助散布孔54によって、揮発性液体Wが揮発した成分を効率良く散布させることができるようになっている。なお、補助散布孔54は、必須なものではなく散布孔52のみでも構わない。また、補助散布孔54を設ける場合には、その形状や数を外装カバー6の形状やサイズ等に応じて自由に設計して構わない。
【0044】
ここで、可動体4の基端部に固定された押し下げプレート31は、下方移動前の段階では、散布孔52を塞ぐように配設されている。そして、押し下げプレート31と散布孔52とは、破断容易な弱化部(薄肉の弱化線や複数の連結片等)53によって接続されている。つまり、押し下げプレート31は、弱化部53によって散布孔52を塞ぐ位置で支持された状態となっている。これにより、弱化部53を破断させない限り、可動体4の下方移動が規制されるようになっている。
【0045】
次に、このように構成された揮発性液体散布装置1を使用して、揮発性液体Wを大気中に散布させる場合について説明する。
はじめに、使用前の状態について簡単に説明する。
使用前の段階では、図2に示すように、有底筒状の挿入筒3によって容器2の口部13が塞がれているうえ、挿入筒3の底部21が閉じている。そのため、容器2内に充填されている揮発性液体Wが容器2外の大気に触れることがない。従って、使用前の段階で、揮発性液体Wが揮発しないようになっている。
また、押し下げプレート31が散布孔52を塞いだ状態で弱化部53によって支持されているので、不意に或いは誤って可動体4が下方移動してしまうことを防止することができる。
【0046】
続いて、使用する場合について説明する。
まず、図7に示すように、弱化部53を破断させながら押し下げプレート31を押し下げる。この際、押し下げプレート31は、破断容易な弱化部53で支持されているだけであるので、容易に押し下げを行うことができる。なお、押し下げプレート31の押し下げによって、散布孔52が開放された状態となる。
押し下げプレート31が押し下げられると、可動体4及び該可動体4に保持されている吸上げ芯5は、共に挿入筒3内を下方移動する。そして、下方移動した結果、可動体4の先端部に設けられた穿刺部34が挿入筒3の底部21を穿刺する。これにより、穿刺部34は、挿入筒3の底部21を突き抜け、容器2の内部に侵入する。すると、容器2内に充填されている揮発性液体Wは、毛細管現象等により流路35内を流れ、吸上げ芯5に到達する。
【0047】
すると、揮発性液体Wは、吸上げ芯5によって上方に吸い上げられた後、容器2外にて大気に触れることで揮発する。そして、揮発した成分は、外装カバー6の散布孔52を通じて揮発性液体散布装置1の周囲に散布される。
【0048】
このように、可動体4を下方移動させることで、揮発性液体Wを揮発させ、大気中に散布させることができる。特に、従来のように口部13からキャップやシール等を取り外すような手間がかかるものとは異なり、可動体4を下方移動させるだけの簡単な操作で、手間をかけずに揮発性液体Wを揮発可能な状態に速やかにセッティングすることができる。従って、非常に使い易く、利便性に優れている。
【0049】
また、可動体4を下方移動させて穿刺部34を挿入筒3の底部21に穿刺した際、サイドプレート37を介して可動体4に連結されている穿刺部38が、挿入筒3の一部を同様に穿刺する。つまり、穿刺部38が、フランジ部27aを穿刺する。この際、環状溝27bを基点としてフランジ部27aは開口し易く設計されているので、穿刺部38によってフランジ部27aを容易に穿刺することができる。
これにより、溝部38aを介して容器2の外部から内部に空気を流通させることができる。これにより、吸い上げられた揮発性液体Wの分だけ空気置換を好適に行うことができる。従って、容器2内が負圧になることを防止することができ、揮発性液体Wの吸い上げを良好に促すことができる。
【0050】
また、本実施形態の揮発性液体散布装置1によれば、以下の作用効果を奏することもできる。
まず、挿入筒3の底部21には、環状溝26が形成されているので、穿刺部34を底部21に穿刺した際に環状溝26を基点として底部21が開口し易い。従って、穿刺部34をより容易に穿刺して、底部21を突き破ることができる。よって、より速やかに揮発性液体Wを揮発可能な状態にセッティングすることができる。
また、ガイドリブ28によって可動体4の下方移動がガイドされているので、下方移動時にがたつき等が生じ難い。従って、挿入筒3の底部21を確実に穿刺部34により穿刺することができる。
【0051】
また、可動体4の基端部には含浸プレート40が固定されているので、吸上げ芯5によって吸い上げた揮発性液体Wを、容器2外にて含浸プレート40に含浸させることができる。特に含浸プレート40に含浸された揮発性液体Wは、含浸プレート40の全体に拡がるので、より大気に触れ易くなる。つまり、含浸プレート40の表面積が大きいので揮発性液体Wをより広範囲で大気に触れさせることができる。従って、揮発性液体Wを効率良く揮発させることができ、散布性能を高めることができる。
【0052】
また、可動体4を下方移動させた際、端壁部33及び/或いはサイドプレート37の下端面が、挿入筒3の底部21及び/或いは当接筒27の下端面であるフランジ部27aに当接するので、可動体4の下方移動量を制限することができる。従って、穿刺部34が過度に下降することがない。
更に、挿入筒3の当接筒27の外周面が口部13の内周面に当接しているので、口部13に装着された挿入筒3のがたつきを抑え、挿入筒3の安定化を図ることができる。よって、この挿入筒3内にて可動体4を滑らかに下方移動させることができる。
【0053】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0054】
例えば、上記実施形態では、容器2の胴部11、挿入筒3の周壁筒25、外装カバー6の周壁部50をそれぞれ平面視長方形状に形成したが、この形状に限定されるものではなく、それぞれ平面視円形状に形成しても良い。
【0055】
また、上記実施形態では、ロッド部30にスリット溝32を形成したが、スリット溝32がない円筒状に形成しても構わない。少なくとも、吸上げ芯5を保持でき、挿入筒3内に収容された状態で下方移動可能な形状であれば良い。
また、外装カバー6の頂壁部51に平面視円形の散布孔52を形成したが、円形に限られず、楕円形状や多角形状であっても構わない。この場合には、散布孔52の形状に合わせて押し下げプレート31の形状を変更すれば良い。
【0056】
押し下げプレート31と散布孔52とを、破断容易な弱化部53によって接続した構成としたが、弱化部53ではなく、押し下げプレート31と散布孔52とを離脱可能に嵌合させる構成としても構わない。例えば、押し下げプレート31の外周面に凹部(或いは凸部)を形成し、散布孔53の内周面に凹部(或いは凸部)が離脱可能に嵌合する凸部(或いは凹部)を形成する。こうすることで、使用前の段階では、散布孔53を塞いだ状態で押し下げプレート31を固定することができると共に、使用時の段階では容易に押し下げプレート31を押し下げることができる。
【符号の説明】
【0057】
W…揮発性液体
1…揮発性液体散布装置
2…容器
3…挿入筒
4…可動体
5…吸上げ芯
6…外装カバー(カバー体)
10…容器の底部
13…容器の口部
21…挿入筒の底部
27…挿入筒の当接筒
28…ガイドリブ
31…押し下げ部材(押し下げプレート)
34…穿刺部(第1の穿刺部)
35…流路
38…穿刺部(第2の穿刺部)
40…含浸プレート
51…カバー体の頂壁部
52…散布孔
53…弱化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性液体を大気中に散布する揮発性液体散布装置であって、
前記揮発性液体が充填された容器と、
前記容器の口部に装着されると共に、口部内から容器の内部に差し込まれた有底筒状の挿入筒と、
下方移動可能に前記挿入筒内に収容され、挿入筒の底部側に位置する先端部に該底部を穿刺する第1の穿刺部が設けられた可動体と、
前記可動体に保持され、前記揮発性液体を前記容器外まで吸い上げた後に揮発させる柱状の吸上げ芯と、
前記第1の穿刺部に形成され、該第1の穿刺部が前記底部を穿刺した際に前記揮発性液体を流通させて前記吸上げ芯に到達させる流路と、を備えていることを特徴とする揮発性液体散布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の揮発性液体散布装置において、
前記可動体には、下方移動によって前記第1の穿刺部が前記底部を穿刺した際に、前記挿入筒の一部を穿刺して前記容器の外部から内部に空気を流通させる第2の穿刺部が連結されていることを特徴とする揮発性液体散布装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の揮発性液体散布装置において、
前記可動体の基端部には、押し下げ部材が固定されていることを特徴とする揮発性液体散布装置。
【請求項4】
請求項3に記載の揮発性液体散布装置において、
前記容器又は前記挿入筒に固定され、前記口部の上部を覆う有頂筒状に形成されると共に、その頂壁部に散布孔が形成されたカバー体を備え、
前記押し下げ部材は、前記可動体の下方移動前、前記散布孔を塞ぐ位置に配設されていると共に、該位置で破断可能な弱化部によって支持されていることを特徴とする揮発性液体散布装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の揮発性液体散布装置において、
前記挿入筒の底部には、弱化部が形成されていることを特徴とする揮発性液体散布装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の揮発性液体散布装置において、
前記可動体の基端部には、前記吸上げ芯に接触し、該吸上げ芯によって吸い上げられた前記揮発性液体が含浸される含浸プレートが固定されていることを特徴とする揮発性液体散布装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の揮発性液体散布装置において、
前記挿入筒は、前記口部の内周面に当接する当接筒を有し、
前記当接筒の内周面には、前記可動体の下方移動をガイドするガイドリブが前記容器軸回りに複数設けられていることを特徴とする揮発性液体散布装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−259544(P2010−259544A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111460(P2009−111460)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】