説明

揺動型運動装置

【課題】使用者の安定性をより高めることができる鐙を備えたものとする。
【解決手段】使用者が着座して乗るシート2と、該シートに揺動運動を行わせる駆動部3と、上記シートの両側から夫々吊り下げられている鐙7とを備える。上記鐙は上記シートの中央位置から150mm以上前方側に配置している。鐙に足を掛ける時、足をより前方側に位置させることができるために、シートの前傾が大である時も使用者は前のめり状態になることなくシートに乗っていることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者が着座したシートを揺動させて使用者に乗馬を模した運動負荷を付与する揺動型運動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗馬を模した運動負荷を使用者に付与する揺動型運動装置は、子供から老人まで利用可能な手軽な運動器具として、当初のリハビリ目的の医療施設から一般家庭へと普及してきている。この揺動型運動装置の典型的な従来技術として、特許文献1,2がある。
【0003】
特許文献1は6軸パラレルメカニズムなどを用いて、一連の滑らかな揺動パターンを実現するようにした腰痛予防訓練装置を示したものであり、特許文献2はモータとリンクとで前後揺動及び左右揺動を実現するようにしたものである。
【0004】
このような揺動型運動装置では、乗馬時と同様に、シートから鐙を吊り下げて該鐙に足を載せることができるようにして、乗馬姿勢をとりやすくすると同時に、揺動運動をシートに行わせた時に使用者がシートからずり落ちる虞を少なくしているのであるが、従来の鐙は乗馬姿勢の維持という観点から、シートの前後方向中央位置(着座時のヒップポイントとなる位置)から前方側に100mmほどのところに鐙を位置させていた。
【0005】
しかし、より効果的なバランス訓練という点からシートの前後方向角度を変更することができるようにした場合、上記鐙の位置ではシートを前傾させた状態で揺動運動を行わせる時、使用者が前後バランスをとりきれずに前のめりな危険な状態となることがある。
【0006】
また、シートを揺動させるための機構部を上部に納めた本体は、上方ほど後方側に後退した傾きを持つものとして形成されることが多いが、シートを揺動させた時、使用者の足を載せた鐙が本体側面に当たってしまい、鐙の動きに制限が加えられてしまう上に、本体や鐙に傷がついてしまう。
【特許文献1】特許第3394890号明細書
【特許文献2】特開2001−286578号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、使用者の安定性をより高めることができる鐙を備えた揺動型運動装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明に係る揺動型運動装置は、使用者が着座して乗るシートと、該シートに揺動運動を行わせる駆動部と、上記シートの両側から夫々吊り下げられている鐙とを備えた揺動型運動装置において、上記鐙は上記シートの中央位置から150mm以上前方側に配置していることに特徴を有している。鐙に足を掛ける時、足をより前方側に位置させることができるために、シートの前傾が大である時も使用者は前のめり状態になることなくシートに乗っていることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、鐙の位置を通常よりも前方側に配しているために、シートが前傾状態である時にも、使用者は鐙にかけた足で踏ん張ることができて、前のめり状態になってしまう虞を低減することができるものであり、これに伴って、シートの前傾をより高めた状態での揺動運動を行わせることも安全性を損なうことなくできる。また、鐙を前方側に配したために、鐙が本体に当たる虞も少なくなるために、より快適な状態で運動を行うことができると共に、本体や鐙が傷つくことも少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明すると、図1〜図3に示す揺動型運動装置は、使用者が座るシート2を前後左右に揺動させることで、シート2に座った使用者にバランス訓練となる運動を行わせるもので、馬の背や鞍を模した形状となっているとともに上面が座面となっている上記シート2と、上部内に上記シート2の揺動駆動を行う駆動部3を納めた本体1とからなり、上記シート2の前端側には半円弧状で両端がシート2に前後に回動自在に連結された手綱6が配されているとともに、操作パネル8が設けられており、またシート2の前寄り両側からは夫々鐙7,7が吊り下げられている。
【0011】
上記本体1は、図5に示すように、四隅に接地脚15を備えたベースフレーム11と、ベースフレーム11のほぼ中央部から斜め後方に向けて立ち上がる支柱12と、支柱12に対して支柱12の長手方向にスライド自在に取り付けられる支持フレーム13と、支持フレーム13の上記スライドを電動で行う電動スライドユニット14とを備えたもので、ベースフレーム11の上面を覆うベースカバー16、支柱12の周囲を覆うカバー17、支持フレーム13の外周を覆う主カバー18等で外面が覆われている。
【0012】
一方、シート2は図6に示すように、シート枠20と、シート枠20の上面に取り付けられる座面21と、シート枠20の下方側に連結されるカバー22、シート枠20の左右に取り付けられる保護カバー23,23、操作パネル8の周囲を覆うパネルカバー24等で構成されている。
【0013】
前記鐙7は、上記シート枠20側面の鐙取付部200に固定される固定片71と、固定片71から吊り下げられた連結片72と、連結片72から吊り下げられた足掛け片70とからなるもので、上記保護カバー23は連結片72の固定片71への連結軸部の外側方を覆ってシート2に座った使用者の膝部分が連結軸部に当たってしまうことを防ぐ。
【0014】
次に駆動部3について説明する。この駆動部3は、図7〜図10に示すように、箱形に形成された可動フレーム30内に、モータ31とこのモータ31の回転を2つの出力軸32,33に伝えるギア群34とを配置するとともに、可動フレーム30の上方に位置する可動プレート40を2種のリンクプレート41,42で可動フレーム30に連結したもので、上記可動フレーム30は、その前後の端面の軸受け部300,300が本体1における前記支持フレーム13に図5に示す軸130,130で軸回りに回動自在に連結されることで、本体1に取り付けられる。
【0015】
ここで、可動プレート40の後端側に連結されるリンクプレート41は、可動フレーム30の後部側の側面に軸301で連結されたものであるのに対して、リンクプレート42は可動フレーム30内に配されて軸302によって可動フレーム30に一端側が支持されている回動プレート39の他端側に軸303によって支持されており、また、リンクプレート42は可動プレート40の前端側に伸縮アクチュエータ45を介して連結されている。
【0016】
そして、回転駆動される2つの出力軸32,33のうちの出力軸32は、可動フレーム30の外側面側に偏心部を位置させているとともに、この偏心部がリンク35によって支持フレーム13に連結されている。
【0017】
他方の出力軸33は、可動フレーム30の外側面側に2つの偏心部33a,33bを位置させており、偏心量が小さい偏心部33aは上記リンクプレート42に連結され、偏心量が大きい偏心部33bは一端をリンクプレート41に連結した連結リンク36に連結されている。
【0018】
上記2つの出力軸32,33のうち、リンク35で支持フレーム13に連結されている出力軸32の偏心部の回転は、可動フレーム30を軸130(図9中の前後に傾いた前後軸A)の軸回りに往復回動させる。
【0019】
また、他方の出力軸33の偏心部33aの偏心回転はリンクプレート42と伸縮アクチュエータ45とを介して可動プレート40の前端側を前後及び上下に揺らし、偏心部33bの偏心回転は連結リンク36とリンクプレート41とを介して可動プレート40の後端側を主として前後に揺らす。この時、リンクプレート41と可動プレート40との連結軸40aの前後の揺れの軌跡をT1、上記伸縮アクチュエータ45と可動プレート40との連結軸40bの前後の揺れの軌跡をT2とする時、図9に示すように、両者のストロークは同じであるものの、上下成分が両軌跡T1,T2で異なるように設定されている。ちなみに上記軌跡T1はほぼ前後に動くだけのものとなっているが、上記軌跡T2はリンクプレート42における軸303が軸40bよりも後方にずれた位置にあるために、前後に加えて上下に動く成分が多くなっている。しかも、可動プレート40の前端側の揺動駆動のための構成部品中に回動プレート39があってリンクプレート42の回動支点となる軸303の位置を回動プレート39が上下させるために、軌跡T2は往路と帰路とで上下にずれたルートをとるものとなっている。
【0020】
ここにおいて、前記シート2は、出力軸32,33の回転に伴って前後左右に揺動駆動されることになる上記可動プレート40上にシート枠20が固定されるものであり、このために可動プレート40と共にシート2も前後左右の揺動を行うのであるが、左右の揺動の1サイクルの間に前後の揺動が2サイクル行われるように出力軸32,33の回転数を設定していることから、シート2の座面21における左右方向中央で且つ前後方向において最も低くなっている中央点21aは、上記前後左右の揺動によって、図4(a)に示すように平面視で8の字を描くものとなっている。また、軌跡T1,T2の違いにより、図4(b)に示すように、上記中央点21aは前方へ沈み込み、浮き上がりながら後方に戻るという軌跡を描く。
【0021】
しかも前述のようにシート2の後端側の軌跡T1は上下動成分が少ない前後動であり、シート2の前端側の軌跡T2は上下動成分が多い前後動となっていることから、シート2の上下の動きは後方側を支点として前端側が上下することで行われており、シート2に座った時にシート2の中央点にほぼ一致するところに重心を位置させる使用者は、自身よりも後方に位置するシート2の後端側を支点として前端側が上下する上記シート2の動きをより的確に感ずるものとなる。
【0022】
また、図4はシート2の中央点の動きを所定時間間隔でプロットしたものであり、このために点の間隔が大であるところは速度が大、小さい間隔から大きな間隔に短時間に変化するところは加速度が大であることを示している。つまり、図4に示すものでは、前方への移動時の加速度が後退時の加速度よりも大となっている。これはシート2に座ってシート2の動きを受ける使用者にしてみれば、前に進んでいるという感覚を受けるものであり、このために実際の乗馬をしている感覚を得られるものである。
【0023】
さらに、左右の揺動は可動プレート40及び座面21とほぼ平行な水平軸の軸回りにではなく、前側が後ろ側よりも下がった前後軸Aの軸回りになされることから、可動プレート40は前側も後ろ側も左右の揺動を同じ角度範囲で行うものの、上記前後軸Aからの距離は後ろ側よりも前側が長くなっているために、可動プレート40の前端側の左右移動ストロークが後端側の左右移動ストロークよりも大きくなっている。このために前後方向の揺動(ピッチ)と左右方向の揺動(ロール)が合成されて平面視で8の字となっている動きは、図4(a)に示すように、前方側での左右移動幅が後方側での左右移動幅よりも大きくなっている上に、前方斜め移動はシート2の前端側が斜め前方に捻れながらずれ動くというヨー成分を含んだものとなっている。
【0024】
従って使用者がシート2に座ってシート2の上記動きを受ける時、使用者は上記ピッチ及びロールに加えてヨーの動きにも対応しなくてはバランスを保つことができないものであり、これ故にバランス訓練という点において、より有効なものとなっている。
【0025】
駆動部3における伸縮アクチュエータ45は、シート2の前後傾斜角を変更するために設けたもので、この伸縮アクチュエータ45は、後述する操作パネル8に対する操作によって伸縮して前傾姿勢と水平姿勢と後傾姿勢とを切り換えられるようにするほか、上記の前後左右の揺動に連動する伸縮を行わせることで、上下動成分を増大させたり減少させたりするものであってもよい。
【0026】
また、シート2の前後傾斜角を変更したならば、シート2を揺動させた時の使用者の各筋肉(腹筋・背筋・太もも前部筋肉・太もも後部筋肉)にかかる負荷も変化する。この変化を使用者が明確に把握することができるようにするために、ここでは後述するように操作パネル8に各筋肉への負荷具合を表示することができるようにしている。なお、上記負荷具合は、シート2の前後傾斜角の違いとモータ31の速度の違いで各筋肉の筋電位がどのように変化するかのデータをとり、このデータを基に決定している。
【0027】
ところで、使用者がシート2に座ってシート2の上記の動きを受ける時、使用者はその足先を鐙7にかけることで、また、手綱6を握ることで、より安全に揺動運動を受けることができるが、上記鐙7は、その連結片72への足掛け片70の連結点を上下に調節することができるようにしていることから、使用者の体格や好みに合わせた高さに鐙7をセットすることができる。
【0028】
また、上記連結片72は弾性材で形成して左右に撓み自在としているとともに、連結片72の外側面に連結される足掛け片70は図3中の右側の鐙7で示すように外側ほど高くなる傾斜αを持つ底片を持つものとして、外側にオフセットすることで足掛け片70に足を掛けやすくしてある。そして鐙7の足掛け片70に足先を掛けたならば、図3中の左側の鐙7に示すように、弾性を有する連結片72が撓んで足掛け片70が内側へ入り込むとともに足掛け片70の底片が水平の状態となる。鐙7に足先を載せた時、足首や膝に無理な力がかかわらず、良い姿勢を維持することができる。
【0029】
ところで、この揺動型運動装置においては、前述のようにシート2を前傾状態にして揺動させることができるようになっているが、シート2の中央点21aから鐙までの距離Lが100mm程度であると、シート2を水平状態で前後左右に揺動させる時には問題とならなかったものの、シート2を前傾状態にして揺動させる時、シート2上でバランスを保つことが難しくなると同時に、バランスを保てなくなると、使用者の体は前のめりになってしまうとともに、この状態に耐えることも鐙7に載せた足の前後位置の関係で難しくなる。
【0030】
このために、図示例の揺動型運動装置では、上記シート2の中央点21aから鐙2までの距離Lを200mmとしてある。このために、シート2が前傾状態にある時にも、使用者は鐙7に載せた足を自身の前方位置に確実に保持することができるために、前のめりになった状態でもその体勢を維持してシート2上に乗っていることができる。
【0031】
また、駆動部3を上部に納めている本体1と鐙7との間の距離も大きくとることができるために、鐙7が本体1に当たって鐙7に載せた足の動きが制限されてしまったり、本体1を傷つけてしまったりする虞も少なくなっている。
【0032】
なお、上記距離Lは、シート2の最大前傾角度の値にもよるが、前傾状態に移行させることができるものであれば、150mm以上とするのが好ましい。また、距離Lをあまり長くするとシート2を後傾させた状態で揺動させる時に問題となるために、250mm以下であることが好ましい。
【0033】
図11はシート2の前端部に配した操作パネル8を示している。図中80は電源スイッチ、81は前述の電動スライドユニット14を作動させることでシート2の高さを調整する高さ調整スイッチ、82は伸縮アクチュエータ45を作動させることでシート2の傾斜角度を調整するための角度調整スイッチ、83は駆動部3のモータ31の回転速度を変更することで揺動速度を調整する速度調整スイッチ、84は使用者の体重値入力用のアップダウンスイッチ、85は揺動動作を初心者向きのものに抑えるための動作モード選択スイッチ、86は揺動動作による運動強度を切り換えるための動作モード切換スイッチ、87は運動対象を切り換えるための運動対象切替スイッチ、88は液晶パネルで構成されたディスプレーである。運動対象切替スイッチ87を操作した時、伸縮アクチュエータ45によってシート2の前後傾斜角がそれぞれに適した状態に切り換えられる。
【0034】
上記ディスプレー88は、シート2の傾斜状態の表示、速度調整状態の表示、動作時間の表示、運動強度の表示などのほか、算出した運動量(消費カロリー)の表示、伸縮アクチュエータ45の伸縮によるシート2の前後傾斜の姿勢変化により、人体の腹筋・背筋・太もも前部・太もも後部のどの筋肉に対してどのような値の負荷がかかるようになるかの表示等を行う。なお、上記運動量はシート2に設けた加速度センサの出力もしくは予め設定してある値と動作時間と入力された体重値とを基に算出している。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すもので、(a)(b)は同上の平面図と右側面図である。
【図2】同上の斜視図である。
【図3】同上の正面図である。
【図4】(a)(b)は同上の動作説明図である。
【図5】同上の本体部の分解斜視図である。
【図6】同上のシートの分解斜視図である。
【図7】同上の駆動部の分解斜視図である。
【図8】同上の駆動部の斜視図である。
【図9】同上の駆動部の側面図である。
【図10】同上の駆動部の分解斜視図である。
【図11】同上の操作パネルの正面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 本体
2 シート
3 駆動部
7 鐙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座して乗るシートと、該シートに揺動運動を行わせる駆動部と、上記シートの両側から夫々吊り下げられている鐙とを備えた揺動型運動装置において、上記鐙は上記シートの中央位置から150mm以上前方側に配置していることを特徴とする揺動型運動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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