説明

揺動式剪断装置

【課題】剪断刃を剪断装置本体に連結するクランプシリンダーロッドの折損を的確に防止することができる揺動式剪断装置を提供する。
【解決手段】剪断刃3(上剪断刃11)の鋼板進行方向8の前後の端部にそれぞれ隣接した位置に、剪断刃3(上剪断刃11)の鋼板進行前後方向への振れを防止するための振れ止め部材5が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚鋼板等を剪断するための揺動式剪断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、厚鋼板等を剪断する場合、揺動式剪断装置を用いる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
通常用いられている揺動式剪断装置を図3、図4に示す。図3は揺動式剪断装置の全体構成図(図3(a)は側面図、図3(b)は平面図)、図4は揺動式剪断装置の部分構成図である。
【0004】
図3、図4に示すように、通常の揺動式剪断装置20は、被剪断材(厚鋼板等)10を被剪断材進行方向(鋼板進行方向)8に向かって搬送する搬送テーブル13と、剪断装置本体1と、剪断装置本体1に内蔵された剪断刃ホルダー2と、剪断刃ホルダー2に保持された剪断刃3(上剪断刃11、下剪断刃12)を有している。なお、剪断刃3はクランプシリンダーロッド9によって剪断装置本体1に連結している。
【0005】
そして、ここでは、上剪断刃11が揺動機構(図示せず)によって上下に揺動し、下剪断刃12は固定されている。すなわち、上剪断刃11は揺動刃、下剪断刃12は固定刃となっている。
【0006】
なお、剪断刃3は揺動式剪断装置20の中央に位置しており、厚鋼板10の幅中央部を長手方向に剪断するので、作業員による剪断刃3の交換作業が困難であるため、剪断刃3の交換の際には剪断刃誘導取替装置を用いることになるので、剪断刃3にはそのための剪断刃誘導取替装置接続用穴6が設けられている。
【0007】
ちなみに、図4は上剪断刃11の部分を示しているが、下剪断刃12の部分も点対称で同様の構成となっている。
【0008】
そして、このような揺動式剪断装置20によって厚鋼板10を剪断する際には、図5に動作手順を示すように、剪断力を厚鋼板10の1点に集中させるために、剪断刃3(ここでは、上剪断刃11)を揺動させながら、水平方向からの角度をつけて剪断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭58−188116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のような従来の揺動式剪断装置20を用いて厚鋼板10を剪断する際には、剪断刃3につけた角度方向に剪断刃3をずらそうとする力が発生する。
【0011】
これに対して、図4に示すように、剪断刃3は剪断刃ホルダー2に対して2方向(鋼板幅方向15と剪断装置上下方向16)で接触して保持されているため、剪断時の振動により鋼板幅方向15と剪断装置上下方向16には振れ難いが、剪断刃ホルダー2に接触していない鋼板長手方向7(鋼板進行方向8の前方向と後方向)には振れやすい。
【0012】
その結果、剪断刃3につけた角度方向に発生する剪断刃3をずらそうとする力により、剪断刃3が鋼板進行前後方向7に振れて、剪断刃3を剪断装置本体1に連結するクランプシリンダーロッド9に過剰な負荷が掛かり、度々クランプシリンダーロッド9が折損するという事故が発生していた。
【0013】
クランプシリンダーロッド9の折損事故が発生すると、揺動式剪断装置20が使用できなくなり、それを復旧するまでに長時間を要して、生産への影響が非常に大きくなる。
【0014】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、剪断刃を剪断装置本体に連結するクランプシリンダーロッドの折損を的確に防止することができる揺動式剪断装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有している。
【0016】
[1]鋼板の揺動式剪断装置において、剪断刃の被剪断材進行方向の前後の端部にそれぞれ隣接した位置に、剪断刃の被剪断材進行前後方向への振れを防止するための振れ止め部材が設けられていることを特徴とする揺動式剪断装置。
【0017】
[2]前記振れ止め部材は、当該振れ止め部材に沿って剪断刃を組み入れる際に、その剪断刃を案内するテーパ部が設けられていることを特徴とする前記[1]に記載の揺動式剪断装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、剪断刃の被剪断材進行方向の前後の端部にそれぞれ隣接した位置に、剪断刃の被剪断材進行前後方向への振れを防止する振れ止め部材が設けられているので、剪断刃が鋼板進行前後方向に振れることが防止されて、クランプシリンダーロッドに過剰な負荷が掛かることが無くなり、クランプシリンダーロッドの折損が的確に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す図である。
【図3】従来の揺動式剪断装置の全体構成図である。
【図4】従来の揺動式剪断装置の部分構成図である。
【図5】揺動式剪断装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
本発明の一実施形態に係る揺動式剪断装置20Aの基本的構成は、前述の図3、図4に示したものと同様であり、被剪断材(厚鋼板)10を鋼板進行方向8に向かって搬送する搬送テーブル13と、剪断装置本体1と、剪断装置本体1に内蔵された剪断刃ホルダー2と、剪断刃ホルダー2に保持された剪断刃3(上剪断刃11、下剪断刃12)を有している。なお、剪断刃3はクランプシリンダーロッド9によって剪断装置本体1に連結している。そして、上剪断刃11は揺動機構(図示せず)によって鋼板進行方向8に揺動する揺動刃であり、下剪断刃12は固定刃となっている。また、剪断刃3には剪断刃誘導取替装置接続用穴6が設けられている。
【0022】
その上で、この実施形態に係る揺動式剪断装置20Aは、図1に部分構成図を示すように、剪断刃3(上剪断刃11)の鋼板進行方向8の前後の端部にそれぞれ隣接した位置に、剪断刃3(上剪断刃11)の鋼板進行前後方向への振れを防止するための振れ止め部材5が設けられている。
【0023】
そして、振れ止め部材5には、図1、図2に示すように、剪断刃誘導取替装置接続用穴6に剪断刃誘導取替装置4を接続して、振れ止め部材5に沿って剪断刃3(上剪断刃11)を剪断刃ホルダー2に組み入れる際に、剪断刃3(上剪断刃11)を案内するテーパ部14が設けられている。
【0024】
これによって、この実施形態に係る揺動式剪断装置20Aにおいては、振れ止め部材5を設置したことにより、剪断刃3(上剪断刃11)が鋼板進行前後方向7に振れることが防止されて、クランプシリンダーロッドに過剰な負荷が掛かることが無くなり、クランプシリンダーロッドの折損が的確に防止される。
【0025】
さらに、振れ止め部材5にテーパ部14を設けたことにより、剪断刃誘導取替装置4を用いて剪断刃3(上剪断刃11)の組み入れを行なう際に、テーパ部14に案内されながらスムーズに組み入れることができるので、剪断刃3(上剪断刃11)の位置決めを迅速に行なうことができる。
【0026】
なお、この実施形態においては、上剪断刃11が揺動刃であるので、上剪断刃11に対して振れ止め部材5を設置しているが、下剪断刃12が揺動刃である場合には、下剪断刃12に対して振れ止め部材5を設置すればよい。また、上剪断刃11と下剪断刃12の両方が揺動刃である場合には、上剪断刃11と下剪断刃12の両方に対して振れ止め部材5を設置すればよい。
【0027】
さらに、上剪断刃11と下剪断刃12のいずれかが固定刃の場合に、必要に応じて、固定刃に対して振れ止め部材5を設置してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 剪断装置本体
2 剪断刃ホルダー
3 剪断刃
4 剪断刃誘導取替装置
5 振れ止め部材
6 剪断刃誘導取替装置接続用穴
7 剪断刃の振れ方向(鋼板進行前後方向)
8 鋼板進行方向
9 クランプシリンダーロッド
10 厚鋼板
11 上剪断刃
12 下剪断刃
13 搬送テーブル
14 テーパ部
15 鋼板幅方向
16 剪断装置上下方向
20 揺動式剪断装置
20A 揺動式剪断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板の揺動式剪断装置において、剪断刃の被剪断材進行方向の前後の端部にそれぞれ隣接した位置に、剪断刃の被剪断材進行前後方向への振れを防止するための振れ止め部材が設けられていることを特徴とする揺動式剪断装置。
【請求項2】
前記振れ止め部材は、当該振れ止め部材に沿って剪断刃を組み入れる際に、その剪断刃を案内するテーパ部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の揺動式剪断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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