説明

揺動推進装置、双胴船及び魚型ロボット

【課題】電磁石の脱着により揺動する揺動体を介して魚形状の本体を素早く及び/又は大きく揺動させ水中で大きな推進力を得ることができる揺動推進装置を提供する。
【解決手段】電磁石の着脱により揺動する揺動体13a、13b、13cを介して本体11を左右に揺動させ水中で推進力を得る揺動推進装置1であって、体部21と尾ひれ部23とを有し、体部21の少なくとも一部が骨格を形成するフレームをゴム状弾性体からなる外皮29で覆い形成された魚形状の本体11と、体部21の短手方向中央に配置された、電磁石の着脱により左右に揺動する揺動体13a、13b、13cと、揺動体13a、13b、13cの動きを体部21に伝達する作用体15a、15b、15cと、を備え、揺動体13a、13b、13cの変位量をてこの原理を用いて拡大し、本体11を揺動体13a、13b、13cの変位量以上に変位させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁石で揺動する揺動体を用いて魚形状の本体を揺動させ水中で推進力を得る揺動推進装置、双胴船及び魚型ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶などの推進装置は、スクリュー型推進装置が主流であるが、一方では、高い性能が期待される揺動推進装置の開発が注目されている。揺動推進装置は、本体を揺動させ水を後方に押し出し推進する装置であり、船舶、魚型ロボットなどへの適用が検討されている。揺動推進装置は、スクリュー型推進装置に比べ高速で推進することができ、また、高いエネルギー効率が期待できることから種々の方式が検討されている。
【0003】
スクリュー型推進装置において推進速度を高めるためには、スクリューを高速で回転させる必要があるが、スクリューの回転速度を高めていくと、キャビテーションが起こり逆に推進力が低下する現象が起こる。また、スクリュー型推進装置は、魚などを傷つける問題があるが、揺動推進装置は、これらの問題を解決することができる。例えば、魚形状の本体内部の両側面、外皮付近に複数の電磁石を取り付け、電磁石を入り切りすることで複数の電磁石を脱着させ、本体を揺動させる電磁推進装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−18794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置では、電磁石が本体内部の両側面、外皮付近に取り付けられているため、電磁石の脱着により本体が揺動するときの変位量は、電磁石と電磁石との隙間である電磁石の変位量とほぼ同じである。また本体の変位速度も電磁石間の脱着時の変位速度とほぼ同一となる。揺動推進装置を高速で推進させるためには、本体が揺動するときの変位量及び変位速度を大きくし、大きな推進力を得る必要があるが、特許文献1に記載の装置では、構造上、本体が揺動するときの変位量が電磁石の変位量とほぼ同じとなり、本体をより大きく、素早く揺動させることが難しい。
【0006】
本発明の目的は、電磁石の脱着により揺動する揺動体を介して魚形状の本体を素早く及び/又は大きく揺動させ水中で大きな推進力を得ることができる揺動推進装置、揺動推進装置を備える双胴船及び魚型ロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電磁石の着脱により揺動する揺動体を介して本体を左右に揺動させ水中で推進力を得る揺動推進装置であって、体部と尾ひれ部とを有し、体部の少なくとも一部が骨格を形成するフレームをゴム状弾性体からなる外皮で覆い形成された魚形状の本体と、前記体部の短手方向中央に配置された、電磁石の着脱により左右に揺動する揺動体と、前記揺動体と前記フレームとに連結し、前記揺動体の動きを前記体部に伝達する作用体と、を備え、前記揺動体の変位量をてこの原理を用いて拡大し、前記本体を前記揺動体の変位量以上に変位させることを特徴とする揺動推進装置である。
【0008】
また本発明は、前記揺動推進装置において、前記揺動体は、左右一対のアームを有するU字型の作動部と該作動部に続く作動部に比較して長さの長いI型の受動部とを備え、前記作動部と前記受動部との境界近傍に装着された支持ピンを中心に左右に回動し、前記左右一対のアームの内側に吸着板が装着され、さらに前記左右一対のアームの間に前記吸着板が着脱する固定板が配置され、前記吸着板及び前記固定板のうち少なくともいずれか1方は電磁石であり、前記揺動体は、前記吸着板を固定板に着脱することで作動部を左右に揺動させ、さらにてこの原理でこの動きを受動部で拡大させることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記揺動推進装置において、前記固定板は、前記揺動体の受動部の両側に取付けられ、前記揺動体は、複数の揺動体からなり、1の揺動体の受動部がそれに続く後方の揺動体の左右一対のアームの間に入り込み、かつ1の揺動体の受動部とそれに続く後方の揺動体の作動部とが1の支持ピンで互いに回動自在に連結され、これらが長手方向に連なり多関節構造となっていることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記揺動推進装置において、前記揺動体は、前記体部の所定の位置に所定の個数が配置され、前記電磁石の着脱により本体をうなぎ、あじ又ははこふぐの泳ぎ様に揺動させることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記揺動推進装置において、前記フレームは、所定の間隔を有する1以上のリング状フレーム、前記リング状フレームの上部と連結する上部フレーム及び前記リング状フレームの下部と連結する下部フレームからなり、前記支持ピンは、前記上部フレームと下部フレームとに連結するように取付けられ、前記作用体は、棒状体又は板状体であり、前記作動部の左右一対のアームの外面とリング状フレームとを連結するように取付けられていることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記揺動推進装置において、前記フレーム及び作用体に代え、フレームは外周がリング状の板状体からなり骨格を形成し、前記揺動体を中央に置き揺動体と連結し作用体としても機能することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記揺動推進装置を左右に1つずつ備える双胴船であって、左右の揺動推進装置の揺動運動が互いに逆向きであることを特徴とする双胴船である。
【0014】
また本発明は、前記揺動推進装置を備えることを特徴とする魚型ロボットである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る揺動推進装置は、揺動体の変位量をてこの原理を用いて拡大し、魚形状の本体を揺動体の変位量以上に変位させる構造からなるので、本体を素早く及び/又は大きく揺動させることができ、水中で大きな推進力を得ることができる。また本発明に係る揺動推進装置は、電磁石の着脱により本体を揺動させるので構造が簡単で、かつアクチュエータを用いた方式に比べ応答の遅れが生じにくく、信頼性も高い。
【0016】
また本発明によれば、揺動体は作動部と作動部に続く作動部に比較して長さの長い受動部を備え、作動部を左右に揺動させ、さらにてこの原理でこの動きを受動部で拡大させるので、簡単な構造ながら大きな変位量、変位速度を得ることができ、これにより本体を素早く及び/又は大きく揺動させることができ、水中で大きな推進力を得ることができる。
【0017】
また本発明によれば、揺動体が複数の揺動体からなり、これらが長手方向に連なり多関節構造となっているため、本体をより大きく揺動させることが可能であり、大きな推進力を得ることができる。また個々の揺動体は、電磁石により独立した異なる揺動運動をさせることもできるため、揺動体の個数、各揺動体の動きを制御することでエネルギー効率の高い高速推進が達成できる。
【0018】
また本発明によれば、本体をうなぎ、あじ又ははこふぐの泳ぎ様に揺動させることができるので、目的に応じた泳ぎを選択することができる。
【0019】
また本発明によれば、フレーム構造により強度の高い骨格を形成することができ、揺動体は、本体の動きに係わらず、支持ピンを介して短手方向中央部に維持されるので、動きの再現性が高く、本体を大きく揺動させるときも目標の動きとすることができる。
【0020】
また本発明によれば、フレームは、外周がリング状の板状体からなり骨格を形成し、揺動体を中央に置き揺動体と連結し作用体としても機能するフレームであってもよく、このようなフレームを備える揺動推進装置も、揺動体は、本体の動きに係わらず、短手方向中央部に位置するので、動きの再現性が高く、本体を大きく揺動させるときも目標の動きとすることができる。
【0021】
本発明に係る双胴船は、前記揺動推進装置を左右に1つずつ備えるので、高速でエネルギー効率が高い推進力が得られる。また左右の揺動推進装置の揺動運動が互いに逆向きであるので、双胴船自身の揺動が抑えられ安定した運行ができる。
【0022】
本発明に係る魚型ロボットは、前記揺動推進装置を備えるので、泳ぎの速いまた種々の泳ぎ方を実現できる。また電磁石で揺動するため応答が速く、急旋回など機敏な動きを実現することができるので、海底及び海中構造物の調査、大型船の船底の検査などに利用される種々の魚型ロボットへの適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態としてのあじ様の泳ぎを模擬する揺動推進装置1の全体構成図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】図1の揺動推進装置1で使用する揺動体及びフレームの斜視図である。
【図3】図1の揺動推進装置1で使用する揺動体の構成を示す図であり、(a)は揺動体の斜視図、(b)は2つの揺動体を組み合わせた斜視図である。
【図4】図1の揺動推進装置1で使用する揺動体のてこの原理を説明するための図である。
【図5】図1の揺動推進装置1の動作の一例を説明するための図である。
【図6】本発明の第2実施形態としてのうなぎ様の泳ぎを模擬する揺動推進装置3の概略的構成を示す図である。
【図7】図6の揺動推進装置3で使用する揺動体の斜視図である。
【図8】図6の揺動推進装置3で使用するフレームの斜視図である。
【図9】本発明の第3実施形態としてのはこふぐ様の泳ぎを模擬する揺動推進装置5の概略的構成を示す図である。
【図10】本発明の第4実施形態としての双胴船100の概略的構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の第1実施形態としてのあじ様の泳ぎを模擬する揺動推進装置1の全体構成図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。図2は、揺動推進装置1で使用する揺動体及びフレームの斜視図である。図3は、揺動推進装置1で使用する揺動体の構成を示す図であり、(a)は揺動体の斜視図、(b)は2つの揺動体を組み合わせた斜視図である。図4は、揺動推進装置1で使用する揺動体のてこの原理を説明するための図である。図5は、揺動推進装置1の動作の一例を説明するための図である。なお図1(a)(b)では、フレームの図示を省略し、さらに図1(b)では作用体15の図示を省略している。
【0025】
揺動推進装置1は、あじ形状をした本体11を有し、本体11内に電磁石で左右に揺動する揺動体13(13a、13b、13c)が設置され、揺動体13の動きを作用体15(15a、15b、15c)を介して本体11に伝達し、本体11を左右に揺動させることで推進力を得る。揺動体13の動きは、本体11外部に置かれた制御装置17が行う。
【0026】
本体11は、図1に示すように体部21及び体部21の後端部に取り付けられた尾ひれ部23から構成され、体部21は、水中での抵抗を少なくするために流線形である。体部後方部27は、フレームがゴム状弾性体からなる外皮29で覆われ形成され、左右に揺動可能である。尾ひれ部23は、魚の尾ひれを模擬した構造で、樹脂、金属などの弾力性がある材料からなる。
【0027】
フレームは、図2に示すように長手方向に所定の間隔を有する複数のリング状フレーム31(31a、31b、31cは図示省略)、リング状フレーム31の上部、下部と連結する長手方向に配置された上部フレーム33、下部フレーム35からなり、リング状フレーム31が体部後方部27の横断面形状を決める。リング状フレーム31は、作用体15を介して揺動体13と連結するため、リング状フレーム31は、基本的に作用体15及び揺動体13と同数設けられる。またリング状フレーム31は、揺動体13の動きに合わせて外皮29を動かすため、外皮29を動かしても変形しない強度が必要であり、硬質プラスチック等を用いて形成することができる。上部フレーム33及び下部フレーム35は、複数のリング状フレーム31a、31bを長手方向に接続し、フレームを一体化させ強度の高い骨格を形成する。なお上部フレーム33及び下部フレーム35は、リング状フレーム31と一体となって左右に揺動する。
【0028】
揺動体13a、13b、13cは、図1、図5に示すように体部後方部27に3個、支持ピン43(43a、43b、43c)を介して回動自在に連結された多関節構造からなる。揺動体13a、13b、13cは、体部後方部27の形状に合わせ後方に向って小さくなっているが、各揺動体13a、13b、13cの構造は同一である。
【0029】
揺動体13aは、図3に示すように左右一対のアーム49aを有するU字型の作動部45aと作動部45aに続く作動部45aに比較して長さの長いI型の受動部47aとを有する。左右のアーム49aは、図4に示すように外面が平行であるが、内面は、先端方向に向け僅かに広がった扇形となっている。受動部47aの両面は平行である。左右一対のアーム49aの内面に、それぞれ磁性体からなる吸着板53aが設けられ、受動部47aの両側面には、後続の揺動体13bの作動部45bに設けられている吸着板53bと相対する位置にそれぞれ電磁石からなる固定板57aが設けられている。作動部45aと受動部47aの境界近傍には、支持ピン43aを挿入するための第1支持ピン孔61aが設けられ、受動部47aの後端部には、後続の揺動体13bを回動自在に連結するための第2支持ピン孔63aが設けられている。
【0030】
揺動体13aと揺動体13bとは、図3、図4に示すように揺動体13aの第2支持ピン孔63aと揺動体13bの第1支持ピン孔61bとに支持ピン43bが挿入され、揺動体13bのアーム49bの間に揺動体13aの受動部47aが入り込む形で回動自在に連結される。同様に揺動体13bと揺動体13cとは、揺動体13bの第2支持ピン孔63bと揺動体13cの第1支持ピン孔61cとに支持ピン43cが挿入され、揺動体13cのアーム49cの間に揺動体13bの受動部47bが入り込む形で回動自在に連結される。揺動体13aは、次の要領で本体11と連結する。体部前方部25の後端には保持体55が設けられ、保持体55の端部に揺動体13aを連結するための前方部支持ピン孔59が穿設され、揺動体13aは、揺動体13aの第1支持ピン孔61aと前方部支持ピン孔59とに支持ピン43aが挿入され、保持体55に回動自在に連結される。なお、保持体55には、揺動体13aの吸着板53aと相対する位置に電磁石からなる固定板56が取り付けられている。揺動体13cの受動部47cの後端には、尾ひれ部23が取り付けられている。
【0031】
各支持ピン43a、43b、43cは、上端が上部フレーム33に固定され、下端が下部フレーム35に固定されている。このため各支持ピン43a、43b、43cは、本体11が揺動しても常に中心軸線上に位置する。このため各支持ピン43a、43b、43cを中心に回動する揺動体13は、体部後方部27の短手方向の中心付近に保持されるので、体部後方部27を効率よく揺動させることができる。また体部後方部27を揺動させる動きの再現性が高く、体部後方部27を大きく揺動させるときも目標の動きとすることができる。
【0032】
作用体15(15a、15b、15c)は、図1及び図2に示すように揺動体13の揺動運動を体部後方部27に伝達するパイプ状の部材であり、左右に一対設けられている。左右一対の作用体は、それぞれ揺動体13の左右一対のアーム49の外面に固着され、他端がリング状フレーム31に固着されている。作用体15は、各揺動体13の左右一対のアーム49の外面に直交するように、また左右の作用体15は、水平に一直線上に配置されている。作用体15は、平面視において、揺動体13の左右一対のアーム49の先端付近に取り付けられている。例えば揺動体13bは吸着板53bを、揺動体13aの受動部47aの固定板57aに吸着することで揺動するが、揺動体13bは支持ピン43bを中心に回動し、アーム49bの内側は、先端に向って僅かに扇形に広がっているので、支持ピン43bから離れるほど作動部45bの変位量は大きくなる。この作動部45の変位量が本体11を揺動させる起源であり、体部後方部27を大きく変位させるために作用体15は、アーム49の先端付近に取り付けることが重要である。
【0033】
図4は、揺動体13のてこの原理を説明するための図である。揺動体13aの左側アーム49aの吸着板53aが保持体55の左側の固定板56に吸着し、揺動体13aが支持ピン43aを支点にして時計回りに回動し、同時に作用体15a、15bも回動し、作用体15a、15bが体部後方部27を移動させるときのてこの原理について説明する。
【0034】
揺動体13a及び作用体15aは、吸着板53aの取り付け位置から支持ピン43aまでの長さXに比べ、支持ピン43aから作用体15aの先端までの長さYが長くしてある。これによりてこの原理により作用体15aの先端の変位量及び変位速度を吸着板53aの変位量及び変位速度以上に拡大することができる。このように作用体15aを介在させることで、体部後方部27の変位量及び変位速度を大きくすることができる。
【0035】
同時に、受動部47aも支持ピン43aを支点にして回動し、さらに揺動体13bを介して作用体15bが回動する。そこで、吸着板53aの取り付け位置から支持ピン43aまでの長さXに比べ、支持ピン43aから揺動体13bに接続する作用体15bの先端までの長さZを長く取ることで、てこの原理により作用体15bの先端の変位量及び変位速度を吸着板53bの変位量及び変位速度以上に拡大することができる。支持ピン43aから作用体15bの先端までの長さZは、揺動体13aの受動部47aの長さに大きく依存する。このため本実施形態では、作動部45aに比較して受動部47aの長さを長くしている。なお、てこの原理は、左側の作用体15a、15bを対象に説明したが、右側の作用体15a、15bもてこの原理が同様に働く。
【0036】
揺動推進装置1は本体11外部に固定板56、57への通電、停電を制御する制御装置17を備える。制御装置17は、固定板56、57の通電量、通電のタイミングなどを制御し、これにより本体11を所定の要領で揺動させることができる。制御装置17は、例えばプログラムロジックコントローラ、コンピュータを使用することができる。なお、制御装置17は、体部21内に設置しても良い。
【0037】
図5を用いて揺動推進装置1の動作の一例を説明する。なお、図5ではフレームの図示を省略している。保持体55に取り付けられた右側の固定板56、揺動体13a、13bの右側の固定板57a、57bに通電し、左側の固定板56、57a、57bは通電しない状態にすると、右側のそれぞれの吸着板53a、53b、53cが右側の固定板56、57a、57bに引き付けられ密着する。この時、揺動体13a、13b、13cは、支持ピン43a、43b、43cを支点にして反時計回りに回動する。
【0038】
揺動体13aが回動すると、揺動体13aに接続する作用体15a及びリング状フレーム31a(図示省略)が一体的に回動し体部後方部27を右側に移動させる。また、同時に揺動体13aの受動部47aも右側に回動するため、支持ピン43bを介して揺動体13bも右側に傾く。揺動体13bは、右側に傾いた状態で、吸着板53bが固定板57aに密着するため揺動体13bの作動部45bは、支持ピン43bを軸にさらに右側に回動する。そのため、揺動体13bに接続する作用体15bは、体部後方部27をさらに大きく右側に移動させる。揺動体13cも同様である。最後方の揺動体13cの受動部47cには尾ひれ部23が接続されているため、尾ひれ部23も大きく右側に移動する。これにより体部後方部27は、後方になるに従い大きく右側に移動することになる。
【0039】
体部後方部27が最も大きく右側に移動した時点で、右側の固定板56、57a、57bへの通電を停止し、逆に左側の固定板56、57a、57bへ通電すると、体部後方部27及び尾ひれ部23は、逆に左側に大きく移動する。左右の固定板56、57a、57bへの通電を交互に繰り返すことで、体部後方部27及び尾ひれ部23が左右に撓うように揺動し、水中では水を後方に押し出すため揺動推進装置1は、大きな推進力を得ることができる。
【0040】
上記実施形態では、吸着板53を磁性体、固定板56、57を電磁石としたが、共に電磁石又は、吸着板53を電磁石、固定板56、57を磁性体又は永久磁石としてもよい。但し、固定板56、57を電磁石とし、吸着板53を磁性体又は永久磁石とする方が、電磁石が安定しているので故障が少なく、また作動部45の重量が軽いので、効率がよく迅速に揺動させることができる。なお吸着板53を矩形状で示し、固定板57を丸形状で示したが、共に矩形状又は丸形状でもよく特に形状は限定されない。
【0041】
上記のように揺動推進装置1は、揺動体13の変位量をてこの原理を用いて拡大し、魚形状の本体11を揺動体13の変位量以上に変位させる構造からなるので、本体11を素早くかつ大きく揺動させることができ、水中で大きな推進力を得ることができる。また揺動推進装置1は、電磁石の着脱により本体11を揺動させるので構造が簡単で製作し易く、アクチュエータを用いた方式に比べ応答の遅れが生じにくく、信頼性も高い。また揺動体13が複数、長手方向に連なった多関節構造であるので、後方に行くに従って本体11をより大きく変位させることが可能であり、大きな推進力を得ることができる。また個々の揺動体13は、電磁石の入り切りにより独立した異なる揺動運動をさせることもできるので各揺動体13の動きを制御することでエネルギー効率の高い高速推進が達成できる。
【0042】
本発明の揺動推進装置は、複数の揺動体を多関節に結合させ揺動させることができるため種々の魚の泳ぎを模擬することができる。図6は、本発明の第2実施形態としてのうなぎ様の泳ぎを模擬する揺動推進装置3の概略的構成を示す図であり、図7は、揺動推進装置3で使用する揺動体の斜視図、図8は、揺動推進装置3で使用するフレームの斜視図である。第1実施形態の揺動推進装置1と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。なお図6では、先頭の揺動体84の揺動に係わる固定板56及び吸着板53を図示し、2番目以降の揺動体84については、先頭の揺動体84と同様な構成であるため固定板57及び吸着板53の図示を省略した。
【0043】
揺動推進装置3は、体部82及び尾ひれ部23から構成されるうなぎ形をした本体80を有し、体部82内に電磁石で左右に揺動する揺動体84及び作用体としても機能するフレーム86が複数設置され、揺動体84の動きをフレーム86を介して体部82に伝達し、体部82及び尾ひれ部23を左右に揺動させることで推進力を得る。体部82は、先頭部分を除き、体部82ほぼ全体を揺動させるべく、体部82内ほぼ全体がフレーム86及びそれを覆う外皮29で形成されている。揺動体84の動きは、制御装置17が制御する。揺動推進装置3は、体部82の短手方向の幅が長手方向に対してほぼ同一であるため、同一構造の揺動体84が回動自在に連結された多関節構造である。
【0044】
各揺動体84は、同一構造であるため揺動体84の受動部47の末端は、上下が一部切り取られ段差が生じるように形成され、この部分に第2支持ピン孔63が設けられている。一方作動部45と受動部47の境界近傍は、他の揺動体84の受動部47の末端に嵌り込むように、中央部が切り取られ、ここに第1支持ピン孔61が穿設されている。そのため2つの揺動体84を支持ピン43で回動自在に連結したとき、2つの揺動体84の上下の面が面一となる。揺動体84の他の構成及び機能は、前記揺動体13の構成及び機能と同一であるので説明は省略する。
【0045】
フレーム86は、第1実施形態のフレームとは異なり、リング状の板状体からなる。フレーム86の外周が第1実施形態のリング状フレーム31に相当する。フレーム86は、揺動体84のアーム49に嵌め込むために中心部分が刳り貫かれ、ここに揺動体84のアーム49が嵌り込み、アーム49に固着されている。アーム49に対する取付位置は、第1実施形態の作用体15と同じである。このようなフレーム86は、外皮29を所定の形状に保持する機能の他、作用体としての機能も有する。フレーム86は、円盤状の板であり、その中心部に揺動体84が位置するので、揺動体84は、本体80が揺動しても本体80のほぼ中心部に位置することができる。支持ピン43は、フレーム86には連結されていない。フレーム86は、構造上強度が大きいので、水深が深く水圧が高い場所を調査する魚型ロボットなどに好適に使用することができる。なお、本実施形態では、フレーム86を使用する例を示したが、第1実施形態に示すフレームと作用体15を使用してもよいことは言うまでもない。
【0046】
揺動推進装置3の動作の一例を説明する。揺動推進装置3は、本体80を長手方向に対し交互に湾曲させ、水を後方に押し出し推進する装置である。固定板56及び先頭から3番目までの揺動体84の右側の固定板57に通電すると、相対する揺動体84の吸着板53が固定板56、57に密着し揺動体84は反時計回りに回動し、揺動体84に連結するフレーム86を介して体部82を右側に移動させる。その後、4番目から9番目の揺動体84の左側の固定板57に通電すると、相対する揺動体84の吸着板53が固定板57に密着し揺動体84は時計回りに回動し、揺動体84に連結するフレーム86を介して体部82を左側に移動させる。そのため、本体80は、S字形に湾曲する。次に、左右の固定板56、57への通電を逆にすると、本体80は、逆S字形に湾曲し揺動する。この動作を繰り返すことでうなぎ様の泳ぎを模擬することができる。
【0047】
図9は、本発明の第3実施形態としてのはこふぐ様の泳ぎを模擬する揺動推進装置5の概略的構成を示す図である。第1実施形態の揺動推進装置1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。以下、第1及び第2実施形態としての揺動推進装置1、3との相違点を中心に説明する。揺動推進装置5は、はこふぐ形をした本体90内に揺動体13が1つ設置され、尾ひれ部23を主に揺動させ、尾ひれ部23で水を後方に押し出し推進する。揺動推進装置5は構造が単純であるので、尾ひれ部23を高速で揺動させることが可能となり、高速移動が可能となる。
【0048】
上記のように揺動推進装置1、3、5の揺動体は、目的に応じた個数、大きさなどを選択でき、個々を独立に揺動させ、また多関節に接合することができるため、あじ、うなぎ、はこふぐなどの泳ぎを自由に選択し模擬することが可能であり適用範囲が広い。また揺動推進装置1、3、5は電磁石で揺動するため応答が速く、急旋回など機敏な動きが実現できる。さらに個々の揺動体が独立に揺動し、多関節構造を採用することで位置制御性も優れ、海底及び海中構造物の調査、大型船の船底の検査などに利用される種々の魚型ロボットへの適用が可能である。なお、上記揺動推進装置1、3、5において、体部21、82及び本体90のうち、揺動体が設置されていない先頭部分又は前方部分の構成、構造は特に限定されないので、必要に応じて空気室を設け、又は錘等設置すればバランスをとりやすくなる。
【0049】
図10は、本発明の第4実施形態としての双胴船100の概略的構成を示す図である。双胴船100は、船本体102の下方に板状の取付具104a、104bを介して左右それぞれに揺動推進装置1が取り付けられている。2台の揺動推進装置1は、海面106の下に位置し左右に揺動することで船本体102を推進させる。左右の揺動推進装置1は揺動方向が互いに逆向きに設定されており、これにより双胴船自身の揺動が抑えられ安定した運行ができる。揺動推進装置1を双胴船100に適用することで、エネルギー効率に優れかつ高い推進力が得られる。プロペラと異なり、イルカなどを傷つけることがなく、遊覧船等に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1、3、5 揺動推進装置
11、80、90 本体
13、13a、13b、13c 揺動体
15、15a、15b、15c 作用体
17 制御装置
21、82 体部
23 尾ひれ部
25 体部前方部
27 体部後方部
29 外皮
31、31a、31b、31c リング状フレーム
33 上部フレーム
35 下部フレーム
43、43a、43b、43c 支持ピン
45、45a、45b、45c 作動部
47、47a、47b、47c 受動部
49、49a、49b、49c アーム
53、53a、53b、53c 吸着板
55 保持体
56 固定板
57、57a、57b、57c 固定板
59 前方部支持ピン孔
61a、61b、61c 第1支持ピン孔
63a、63b 第2支持ピン孔
84 揺動体
86 フレーム
100 双胴船
102 船本体
104a、104b 取付具
106 海面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石の着脱により揺動する揺動体を介して本体を左右に揺動させ水中で推進力を得る揺動推進装置であって、
体部と尾ひれ部とを有し、体部の少なくとも一部が骨格を形成するフレームをゴム状弾性体からなる外皮で覆い形成された魚形状の本体と、
前記体部の短手方向中央に配置された、電磁石の着脱により左右に揺動する揺動体と、
前記揺動体と前記フレームとに連結し、前記揺動体の動きを前記体部に伝達する作用体と、を備え、
前記揺動体の変位量をてこの原理を用いて拡大し、前記本体を前記揺動体の変位量以上に変位させることを特徴とする揺動推進装置。
【請求項2】
前記揺動体は、左右一対のアームを有するU字型の作動部と該作動部に続く作動部に比較して長さの長いI型の受動部とを備え、前記作動部と前記受動部との境界近傍に装着された支持ピンを中心に左右に回動し、
前記左右一対のアームの内側に吸着板が装着され、
さらに前記左右一対のアームの間に前記吸着板が着脱する固定板が配置され、
前記吸着板及び前記固定板のうち少なくともいずれか1方は電磁石であり、
前記揺動体は、前記吸着板を固定板に着脱することで作動部を左右に揺動させ、さらにてこの原理でこの動きを受動部で拡大させることを特徴とする請求項1に記載の揺動推進装置。
【請求項3】
前記固定板は、前記揺動体の受動部の両側に取付けられ、
前記揺動体は、複数の揺動体からなり、1の揺動体の受動部がそれに続く後方の揺動体の左右一対のアームの間に入り込み、かつ1の揺動体の受動部とそれに続く後方の揺動体の作動部とが1の支持ピンで互いに回動自在に連結され、これらが長手方向に連なり多関節構造となっていることを特徴とする請求項2に記載の揺動推進装置。
【請求項4】
前記揺動体は、前記体部の所定の位置に所定の個数が配置され、
前記電磁石の着脱により本体をうなぎ、あじ又ははこふぐの泳ぎ様に揺動させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1に記載の揺動推進装置。
【請求項5】
前記フレームは、所定の間隔を有する1以上のリング状フレーム、前記リング状フレームの上部と連結する上部フレーム及び前記リング状フレームの下部と連結する下部フレームからなり、
前記支持ピンは、前記上部フレームと下部フレームとに連結するように取付けられ、
前記作用体は、棒状体又は板状体であり、前記作動部の左右一対のアームの外面とリング状フレームとを連結するように取付けられていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1に記載の揺動推進装置。
【請求項6】
前記フレーム及び作用体に代え、
フレームは外周がリング状の板状体からなり骨格を形成し、前記揺動体を中央に置き揺動体と連結し作用体としても機能することを特徴とする請求項1から4のいずれか1に記載の揺動推進装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1に記載の揺動推進装置を左右に1つずつ備える双胴船であって、
左右の揺動推進装置の揺動運動が互いに逆向きであることを特徴とする双胴船。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1に記載の揺動推進装置を備えることを特徴とする魚型ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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