説明

揺動玩具

【課題】揺動部材の揺動を滑らかに再現できる揺動玩具を提供する。
【解決手段】一対のアーム部材が揺動する揺動玩具である。一対のアーム部材を互いに可動的に連結し、一方のアーム部材に供給された回動駆動力を他方のアーム部材に伝達するように配置された連結手段を備える。一対のアーム部材のそれぞれの下端部には錘がある。一対のアーム部材の少なくとも一方から枝分かれし、その先端部が回動するように配置された枝アーム部材を有する。枝アーム部材の先端部には永久磁石がある。永久磁石と磁気的に相互に作用する電磁コイルがある。電磁コイルが励磁されていない状態で、一対のアーム部材は互いに重量バランスが均衡した中立位置にある。電磁コイルが永久磁石に断続的に磁気的に作用することで、一対のアーム部材は中立位置と付勢位置とを往復する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は揺動玩具に係わり、特に、机や家具上に置かれるに適したサイズからなり、ユーザは揺動部材が円滑に揺動する様子を鑑賞できる玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
永久磁石とコイルとを備え、コイルと永久磁石との間に働く磁力を用いて揺動部材を揺動させる機構が知られている。この種の機構を備える揺動玩具の従来例として次のものが存在する。
【0003】
特開2005−58417号公報には、花の模型体の保持体の下端に磁石を備える揺動体と磁石と向き合うコイルとを備えた動作玩具が記載されている。コイルが励磁されると、保持体は支軸を中心に反時計方向に回動し、コイルの励磁が無くなると時計方向に復帰回動して、コイルの励磁に併せて揺動体は連続的に左右に揺動する。
【0004】
また、特開2005−224638号公報には、ベース上に人形体を備え、人形体の頭部が胴部に対して左右に揺動する揺動玩具が記載されている。揺動玩具の内部には振り子が設置されている。この振り子は、胴部に支持された軸を中心に左右に揺動可能となっている。振り子は上側部分で頭部に固定され、一方、下側部分には永久磁石が付設されている。
【0005】
揺動玩具の内部には電磁コイルが設置されている。揺動玩具は明るい場所に置かれると、ソーラバッテリが蓄電され、その蓄電した電力によって時計用から電圧パルスが出力され、電磁コイルが励磁される。
【0006】
この場合、電磁コイルは極性を切り替え、その電磁力によって振り子が左右に揺動する。電磁コイルにおいて前記永久磁石に対峙する部分がN極となったりS極となったりし、この極性の切替えによって振り子は左右に動作する。
【0007】
さらにまた、特開2005−152514号公報には、植木鉢模型部分、土模型部分、そして、葉模型部分を有し、葉模型部分が揺動体として上下方向に揺動動作(羽ばたき動作)を暫し継続して行う揺動玩具が記載されている。
【0008】
各揺動部材の下端には磁石が取り付けられている。磁石は、その下側に設置される電磁コイルからの磁力が作用するような配置となっている。そして、電磁コイルを励磁することによる電磁コイルと磁石との間に働く斥力と、2つの揺動部材の磁石同士の間に働く斥力とによって各揺動部材は下方向に動作し、電磁コイルの非励磁状態では各揺動部材に働く重力によって、各揺動部材は上方向に動作する。電磁コイルと磁石との間に働く斥力を周期的に発生させるようにすれば、揺動部材は揺動動作を繰り返す。
【特許文献1】特開2005−58417号公報
【特許文献2】特開2005−224638号公報
【特許文献3】特開2005−152514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開2005−58417号公報記載の動作玩具では、コイルが励磁されると、保持体は支軸を中心に反時計方向に回動し、コイルの励磁が無くなると保持体下端の重量がそのまま保持体に加わって保持体が支軸を中心に時計方向に一気に復帰回動するため、揺動を滑らかに再現することができない。
【0010】
さらに、特開2005−224638号公報記載の揺動玩具は、電磁コイルの極性を切り替え、その電磁力によって振り子を左右に揺動させているために、揺動を滑らかに再現することができない。
【0011】
特開2005−152514号公報記載の揺動玩具は、前二者の従来玩具とは異なり、一対の揺動部材を揺動する構成を備えるが、各揺動部材について磁石と電磁コイルを備えているために、部品点数が増し構造が複雑になる弊害がある。
【0012】
さらに、各電磁コイルを励磁すると、揺動部材が軸を中心に下方向に回動し、次いで、電磁コイルを非励磁状態にすると、各揺動部材の下端の重力が直接揺動部材に加わり、揺動部材は軸を中心にして上方向に一気に復帰することになるために、揺動の過程における揺動体の速度が均一にならず揺動を滑らかに再現することができない。
【0013】
そこで、本発明は、揺動部材の揺動を滑らかに再現できる揺動玩具を提供することを目的とする。さらに、本発明は、一対の揺動部材を揺動する構成を備えるものの、部品点数の増加によって構成が複雑にならないようにした揺動玩具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は揺動玩具であって、開口部が上面に設けられ筐体と、前記開口部に互いに平行に並置された一対の軸部材と、前記軸部材を中心に、前記筐体の前記開口部が形成されている面に対して交差する仮想面に沿って互いに対称方向に回動可能に設けられ、前記軸部材から下方に位置する部分は前記筐体の内部に配置され、前記軸部材から上方に位置する部分は少なくともその一部が前記筐体から突出して配置された一対のアーム部材と、前記一対のアーム部材を互いに可動的に連結し、一方のアーム部材に供給された回動駆動力を他方のアーム部材に伝達するように配置された連結手段と、前記筐体内に配置された前記一対のアーム部材のそれぞれの下端部に取り付けられた錘と、前記一対のアーム部材のそれぞれの前記筐体から突出する部分に取り付けられた揺動体と、前記一対のアーム部材の少なくとも一方から枝分かれし、その先端部が前記仮想面に沿って回動するように配置された枝アーム部材と、前記枝アーム部材の前記先端部に取り付けられた永久磁石と、前記永久磁石と磁気的に相互に作用する位置にあり、かつ、前記永久磁石の移動を妨げない範囲の距離をおいて前記仮想面に沿って並置して配置された電磁コイルと、前記電磁コイルを励磁する電流を供給する電流源と、前記電磁コイルに供給する電流の流れを断続的に制御するスイッチ手段と、を備え、前記コイルが励磁されていない状態で、前記一対のアーム部材は互いに重量バランスが均衡した中立位置にあり、この状態から前記コイルを励磁すると、前記励磁されたコイルと前記永久磁石との間に働く磁力により前記先端部に供給される回動駆動力によって前記一対のアーム部材は前記仮想面に沿って互いに対称方向に回動して前記中立位置から変位した付勢位置をとるようになり、当該コイルの励磁を解除すると、前記一対のアーム部材は前記重量バランスが取れるように前記付勢位置から前記中立位置に復帰し、その結果、前記スイッチ手段の作動に応じて前記電磁コイルが前記永久磁石に断続的に磁気的に作用することで、前記一対のアーム部材は前記中立位置と前記付勢位置とを往復し、この往復に伴い前記揺動体が揺動する動きを形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、揺動部材の揺動を滑らかに再現できる揺動玩具を提供することができる。さらに、本発明によれば、一対の揺動部材を揺動する構成を備えるものの、部品点数の増加によって構成が複雑にならないようにした揺動玩具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明に係わる揺動玩具の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は揺動玩具の全体を示す斜視図である。この揺動玩具は、筐体10と、筐体10の上に置かれた昆虫様の模型体12とを備えている。
【0017】
この模型体12は蝶に似せてなり、胴部14と、胴部14の左右の一対の羽部材16A,16Bとを備えている。この一対の羽部材16A,16Bは蝶の羽の自然な羽ばたきを再現するための一対の揺動部材に相当する。
【0018】
筐体10内には、一対の羽部材16A,16Bが胴部14を中心にして、一点鎖線にて図示するように左右対称に上下に往復の回動をさせるための揺動装置(図2の40)が設けられている。揺動装置の詳細については後述する。なお、図2に示すような小物入れ20が筐体10内の余剰空間22に対して脱着できるようになっている。
【0019】
図3に示すように、筐体10は蓋体24と本体26とからなる。本体26の上面のほぼ中心には、図4にも示すように、矩形状の開口部28が形成され、この開口部には、一対の軸受30A,30Bを持ったブロック32が置かれている。
【0020】
このブロック32はその両端が本体26の平面26Aにビス34によって固定されている。ブロック32の下端32Aは本体26の底面に向かって開口部28から直角に延びており、さらに後述の揺動体を収容するための空間32Cを備える。
【0021】
さらに、ブロック32には当該ブロックを胴部14の長さ方向に切り欠いた凹部32Bを備え、後述のストッパのかぎ状部材102(図12)がこの凹部32Bを胴部14の長さ方向に進退できるようになっている。詳細については後述する。
【0022】
本体26の開口部28から本体内には、図3に示すように、揺動装置40が収容される。揺動装置の一対の軸部材42がブロック32の一対の軸受30A,30Bのそれぞれの上に載せられる(図4参照)。
【0023】
これにより、揺動装置40は、軸部材42を中心にして、本体26の平面に直角方向に定義される仮想面に沿って回動する。揺動装置の軸部材42から下方の部分は開口部28から本体26の内部に配置され、軸部材42から上の部分の少なくとも一部は突出部44となって本体26から蓋体24に向けて延びている。
【0024】
この突出部44は、揺動装置の蓋体24側の端部に一対となって存在する。蓋体24にはこの一対の突出部44がそれぞれ胴部14側に露出するように一対の矩形の小開口46が設けられている。この小開口46から露出するそれぞれの突出片には爪体48が装着され、この爪体48に羽部材16A,16Bの基端が固定される。
【0025】
ほぼ正方形状の蓋体24の本体26側の背面の四隅にはそれぞれ脚片50が設けられている。一方、本体の蓋体側の四隅にはそれぞれに丸穴52が形成されている。脚片50を対応する丸孔52に挿入して蓋体24を本体26に螺着することによって両者が固定される。
【0026】
本体26の表面には矩形のソーラセル54が設けられている。蓋体24にはこのパネルを露出するための矩形の開口56が存在する。符号58は本体の内部に固定された円形の電磁コイルである。ソーラセルを本体26の側面に設けても良い。
【0027】
次に、揺動装置の詳細について説明する。図5は揺動装置40の全体を表す斜視図であり、図6は揺動装置の部品構成を表す斜視図であり、そして、図7は揺動装置全体の組み立て状態を表す分解斜視図である。
【0028】
揺動装置は、主に、第1のスイングアーム60と第2のスイングアーム62とから構成されている。それぞれのスイングアームは略L型になっており、二つのスイングアームが互いに交差するように、かつ、胴部14の長さ方向に対して直角方向に組み合わされている。第1のスイングアーム60は第2のスイングアーム62より胴部14の尾側にある。図3を参照するとこのことが分かり易い。
【0029】
各スイングアームの既述の突出部44がある基端側とは他端側である先端は円形に膨らんでおり、この膨らみ部にボタン状の錘60A及び60Bがそれぞれ固定されている。
【0030】
また、各スイングアームの先端側には、スイングアームに直交する方向で、即ち、胴部14の長さ方向に沿って円筒形のボス部64が形成され、このボス部の中心を既述の軸部材42が胴部14の長さ方向に沿って貫通し、かつ、ボス部64の両端側のそれぞれにおいて軸部材42が僅かに露出している。この露出している、軸部材42の部分が既述の軸受30A,30Bに回転自在に支持されることになる。
【0031】
第1のスイングアーム60及び第2のスイングアーム62は、この軸部材を中心に本体26の開口部28が形成されている面に対して交差する仮想面に沿って互いに対象方向に回動する。
【0032】
第1のスイングアーム60のボス部64の近傍の下方位置より、先端側の錘60Aが存在する方向とは反対側に向けて短く枝アーム66が延びている。この枝アームの先端は円形に膨らんでおり、この膨らんだ部分にボタン状の永久磁石68が固定されている。
【0033】
揺動装置はさらに、略S字状の小パーツ68Aを備える。この小パーツの両端には、胴部14の長さ方向に沿ってその尾に向けて延びる小径の短軸70,72A(70Aは図6に表示)が存在する。第1のスイングアーム60の永久磁石68側の短軸は第1のスイングアームの小径孔74に嵌め込まれることによって、小パーツ68は第1のスイングアーム60に固定される。
【0034】
一方、小パーツの、第1のスイングアームの錘60A側の軸70は、第1のスイングアームに交わることなく、第1のスイングアームのL字の内側に露出している。これは図7を参照すると分かり易い。
【0035】
第2のスイングアーム62の基端側から錘60Bがある方向に小フランジ71が延びており、小フランジ71内にはほぼ楕円状の溝72が形成されている。
【0036】
第1のスイングアーム60と第2のスイングアーム62を組み合わせて、揺動装置が完成される。その組み立ては次のように行われる。先ず、小パーツ68を第1のスイングアーム60に既述のように固定する。
【0037】
次いで、図7に示すように、第1のスイングアーム60と第2のスイングアーム62とを、第1のスイングアーム60が胴部14の尾側になるように交差させ、その際、第2のスイングアームの小フランジ71の楕円状溝72に小パーツ68の短軸70を嵌入する。楕円状溝72と短軸70との組み合わせが、第1のスイングアーム60の回転駆動力を第2のスイングアーム62に伝達するための伝達手段の一形態となる。
【0038】
この結果、図5に示すような、第1のスイングアーム60と第2のスイングアーム62との組み合わせからなる揺動装置が得られる。この揺動装置では、第1のスイングアーム60の軸部材42と、第2のスイングアーム62の軸部材42が交わることなく互いに平行並置されており、図8に示すように、一対の軸部材42のそれぞれは互いに平行になって軸受30A,30B上に並置される。
【0039】
そして、軸部材42から上方に既述の突出片44が露出し、この露出部分に爪体48が係合されている。第1のスイングアーム60は自身の軸部材42を中心にして回動可能であり、第2のスイングアーム62も同様に自身の軸部材42を中心にして回動可能である。
【0040】
既述のように、第1のスイングアーム60と第2のスイングアーム62とは、第1のスイングアーム60に固定された小パーツの68の短軸70が第2のスイングアーム62の小フランジ71の楕円状の溝72に嵌入してなる連結手段によって連結されている。
【0041】
したがって、第1のスイングアーム60に加えられた、当該スイングアームを回動させる駆動力は連結構造を介して他方のスイングアーム62に伝達される。この結果、第1のスイングアーム60と第2のスイングアーム62とは回動方向は反対になるが、対称になって同じ周期で既述のとおりの仮想面に沿って回動する。
【0042】
また、連結構造によって、第1のスイングアーム60の磁石68と錘60A、そして、第2のスイングアーム62の錘62Bとが互いに影響し合って、第1のスイングアームと第2のスイングアームのそれぞれの軸部材42が軸受30A,30Bに置かれると、第1のスイングアームと第2のスイングアームとの間での重量バランスが均衡した状態になる。
【0043】
したがって、揺動装置の一方のスイングアームにこの均衡を崩す程度の駆動力を与えると、この駆動力が大きくなくても、二つのスイングアームを連動しながら回動させることができる。
【0044】
揺動装置に加えられる既述の駆動力は、第1のスイングアーム60の枝アーム66の先端にある永久磁石68に対してコイル58が発する磁界によって得られる(図5参照)。
【0045】
磁石68は軸部材42に直交する方向がその半径方向になるように枝アーム66の先端に固定されている。この円形磁石に対して胴部14の尾側に僅かに離れた位置にあり、永久磁石に対して磁気的に相互作用を及ぼすことができ、かつ、枝アーム66が第1のスイングアーム60の軸部材42を中心にして回動した際における永久磁石の移動を妨げないように、既述の円形コイル58が第1のスイングアーム60の支軸42に直交する方向を半径方向にして本体26に固定されている。
【0046】
図5に示されているように、磁石68とコイル58はその平面が互いに平行に向き合うようになっており、かつ、揺動装置の二つのスイングアームの重量バランスが取れた中立状態にある状態で、胴部の長さ方向にコイルと磁石とを見た際、図16の模式図に示すように、磁石68の中心68Tがコイル58の中心58Tより上方に位置するように、磁石68の本体に対する固定位置と、中立位置とが設定される。磁石68の中心68Tが、軸42を中心として回動する磁石68の中心58Tの軌跡160上に来るように、コイル58と磁石68との位置関係が設定される。
【0047】
磁石68とコイル58とがこのような関係にあるところの、揺動装置の一対のスイングアームがとる中立位置から、後述のスイッチ手段としての制御回路がコイル58を励磁すると磁界が永久磁石68に作用して、永久磁石68はコイル58に図5に示すように重なる位置まで移動しようとする。
【0048】
この際、第1のスイングアーム60がその軸部材42を中心にして、第2のスイングアーム62がある側から第1のスイングアーム60を見た際に、反時計回りに回動し、また、既述の連結手段を介して第2のスイングアーム62をその軸部材42を中心にして時計回りに回動させる。
【0049】
第1のスイングアーム60と第2のスイングアーム62との重量バランスが均衡して、両者が中立位置にある状態、即ち、コイル58が非励磁の状態では、これらスイングアームの基端部に固定される一対の羽部材16A,16Bは、蝶が羽を閉じている位置をとる。一方、コイル58が励磁状態では、第1のスイングアーム先端の突出部と、第2のスイングアーム先端の突出部からなる一対の突出部(図3の44,)が互いに離間するような位置関係(付勢位置)をとって蝶が羽を開いている状態をとるようになる。ちなみに、図1は蝶の羽が開いている状態を示している。
【0050】
羽部材の揺動を揺動装置における既述の重量バランスを利用して再現しているために、コイル58から発生する磁界強度はさほど強いものが要求されない。したがって、揺動を円滑に再現することができる。
【0051】
また、連結構造によって一対のスイングアームが互いに連結されているために、揺動のための駆動力を一方のスイングアームの側に与えればよい。既述の実施形態では、第1のスイングアーム60に対してのみコイルを設けている。第2のスイングアームに対してはコイルを設けることを省くことができるために、部品点数を省き揺動装置を駆動させる駆動機構の構成を簡略にできる。
【0052】
ここで、駆動機構は、既述のソーラセル54と、円形コイル58と、円形コイルの励磁を制御するスイッチ手段としての後述の制御回路と、から構成されている。制御回路は、コイル58に対して電流を断続的に供給する。
【0053】
電磁コイルは磁界の発生及びその解除を周期的に繰り返す。揺動装置の第1のスイングアームと第2のスイングアームとは、お互いの重量バランスが取れた中立位置と、磁界によって変位した付勢位置との間を往復する。後者の位置から前者への位置への復帰には、既述の重量バランスを利用しているために、羽部材の揺動がより円滑になる。
【0054】
図9(1)は揺動装置の第1のスイングアームと第2のスイングアームとの重量バランスが取れて両者が中立位置の状態にあることを示し、(2)は第1のスイングアームの永久磁石68に電磁コイル58からの磁界が加わって、両者が付勢位置にある状態を示している。
【0055】
揺動装置が中立位置と付勢位置とを往復する過程で、第1のスイングアーム60の小パーツ68の短軸70が第2のスイングアーム62の小フランジ71の溝72内で移動できるように、小フランジの溝72は短軸70より幅が広いトラック状を呈している。
【0056】
次に、揺動装置による揺動体の揺動を停止させるための手段について説明する。図10は本体26の底面を斜めから見た斜視図であり、既述の軸受30A,30Bを備える平面と、揺動装置40及び駆動機構の図示を省略している。
【0057】
符号100は停止手段としてのストッパである。図12はストッパを本体の平面の方から見た斜視図であり、図13はストッパをその背面から見た斜視図である。これらの図から分かるように、ストッパは矩形の板101の中心線の部分から薄型の略かぎ型の片102が直角に突出している。この突出片102が本体の上面側を向くように、本体の底面26B内側にストッパが配置されている。
【0058】
このストッパの板101の両端にはトラック状の溝104があり、各溝にベースの底面内側から直角に突出する小円柱106が嵌め込まれている。この結果、ストッパは溝104の長さに規制された状態で、本体内を胴部14の長さ方向に進退可能である。矩形の板101の背面にはその長手方向に沿った直方体状の小突起106があり、この小突起106がベース底面の矩形孔108からベース外に露出している。ユーザはこの小突起106を操作して、ストッパを既述のように進退させることができる。
【0059】
かぎ状の突出片102はテーパ面110を有しており、このテーパ面110が既述の揺動装置側に来るようにストッパ100が本体26の底面内側に置かれている。図11から図10に示すように、ストッパ100が揺動装置40側に移動されると、図14に示すように、このテーパ面110が揺動装置の第1又は第2のスイングアームの下端に当接して、電磁コイル58が励磁されてもスイングアームの回動が干渉される。
【0060】
この結果、羽部材16A,16Bの揺動が抑止される。一方、図10から図11に示すように、ストッパ100が揺動装置40から離間されると、テーパ面110とスイングアームとの干渉がなくなるために、スイングアームの回動が許されて、その結果羽部材の揺動が再開される。この実施形態ではテーパ面が第2のスイングアーム62の下端に当接して、揺動部材の揺動を抑止している。
【0061】
次に、スイッチ手段であって、電磁コイル58の励磁を断続的に行うための制御回路について説明する。図15は当該制御回路のブロック図である。この制御回路は、電磁コイル58(図15のL1)にソーラセル54(図15のBT1)で発生した電流を断続的に供給するものである。既述の付勢位置から中立位置への復帰には揺動装置の重量バランスを利用しているために、電磁コイルに供給される電流の極性を変える必要はない。
【0062】
図15において、電源BT1からコンデンサC1に一定量チャージされると、コンデンサC1の電位が上昇してトランジスタQ1がON状態となり電磁コイル(L1)へ電流が流れてコイルが励磁され、励磁された電磁コイルは永久磁石68を引き付けて、一対のスイングアームが既述の付勢位置をとるようになる。コンデンサC1から電荷の放出されると電位が下がりトランジスタQ1がOFF状態となり電磁コイル(L1)への電流供給がとまり永久磁石68が付勢位置から開放されて一対のスイングアームが既述の中立位置に復帰するようになる。以後、コンデンサC1の充放電の繰り返しによって、電磁コイルが永久磁石に断続的に磁気的に作用する。一対のアームはこれによって中立位置と付勢位置とを往復し、これに伴い羽部材が開閉する動きを再現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る揺動玩具の全体を示す斜視図である。
【図2】この揺動玩具が小物入れを備えていることを示す斜視図である。
【図3】本発明に係る揺動玩具の部品構成を示す斜視図である。
【図4】揺動装置の軸部材が揺動玩具本体の平面で軸受によって回転自在に支持されている様子を拡大して説明するための斜視図である。
【図5】揺動装置の全体を示す斜視図である。
【図6】揺動装置の構成部品を示す斜視図である。
【図7】揺動装置の分解組み立て斜視図である。
【図8】揺動装置の軸部材が揺動玩具本体の平面で軸受によって回転自在に支持されている様子を示す、揺動玩具本体の斜視図である。
【図9】(1)揺動装置の永久磁石が電磁コイルの励磁或いは非励磁状態によって位置を変更する様子を示した、揺動装置の全体斜視図であり、(1)は非励磁状態を示すものであり、(2)は励磁状態を示すものである。
【図10】揺動玩具本体の底面内側に揺動体の揺動を停止させるためのストッパが配置された状態を示す斜視図である。
【図11】揺動玩具本体の底面内側に揺動体の揺動を停止させるためのストッパが配置された状態を示す他の斜視図である。
【図12】ストッパを揺動玩具本体の上側から見た斜視図である。
【図13】ストッパをその底面側から見た斜視図である。
【図14】ストッパが揺動装置のスイングアームの端部に当接して、揺動装置の回動を停止させている状態に係る揺動装置本体内の様子を示す斜視図である。
【図15】電磁コイルを励磁するための制御回路のブロック図である。
【図16】電磁コイルと永久磁石との位置関係を示す摸式図である。
【符号の説明】
【0064】
10 揺動玩具を構成する筐体
12 揺動体(模型体)
16 揺動体(羽部材)
38A,38B 軸受
40 揺動装置
42 軸部材
54 開口部
58 電磁コイル
60 第1のスイングアーム
60A,60B 錘
62 第2のスイングアーム
70 小パーツ(連結手段)
68 永久磁石
100 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が上面に設けられ筐体と、
前記開口部に互いに平行に並置された一対の軸部材と、
前記軸部材を中心に、前記筐体の前記開口部が形成されている面に対して交差する仮想面に沿って互いに対称方向に回動可能に設けられ、前記軸部材から下方に位置する部分は前記筐体の内部に配置され、前記軸部材から上方に位置する部分は少なくともその一部が 前記筐体から突出して配置された一対のアーム部材と、
前記一対のアーム部材を互いに可動的に連結し、一方のアーム部材に供給された回動駆動力を他方のアーム部材に伝達するように配置された連結手段と、
前記筐体内に配置された前記一対のアーム部材のそれぞれの下端部に取り付けられた錘と、
前記一対のアーム部材のそれぞれの前記筐体から突出する部分に取り付けられた揺動体と、
前記一対のアーム部材の少なくとも一方から枝分かれし、その先端部が前記仮想面に沿って回動するように配置された枝アーム部材と、
前記枝アーム部材の前記先端部に取り付けられた永久磁石と、
前記永久磁石と磁気的に相互に作用する位置にあり、かつ、前記永久磁石の移動を妨げない範囲の距離をおいて前記仮想面に沿って並置して配置された電磁コイルと、
前記電磁コイルを励磁する電流を供給する電流源と、
前記電磁コイルに供給する電流の流れを断続的に制御するスイッチ手段と、
を備え、
前記コイルが励磁されていない状態で、前記一対のアーム部材は互いに重量バランスが均衡した中立位置にあり、
この状態から前記コイルを励磁すると、前記励磁されたコイルと前記永久磁石との間に働く磁力により前記先端部に供給される回動駆動力によって前記一対のアーム部材は前記仮想面に沿って互いに対称方向に回動して前記中立位置から変位した付勢位置をとるようになり、当該コイルの励磁を解除すると、前記一対のアーム部材は前記重量バランスが取れるように前記付勢位置から前記中立位置に復帰し、
その結果、前記スイッチ手段の作動に応じて前記電磁コイルが前記永久磁石に断続的に磁気的に作用することで、前記一対のアーム部材は前記中立位置と前記付勢位置とを往復し、この往復に伴い前記揺動体が揺動する動きを形成する揺動玩具。
【請求項2】
前記枝アーム部材は前記一対のアーム部材の一方にのみ設けられ、前記電磁コイルと前記永久磁石の間に断続的に働く磁力により駆動される前記枝アーム部材の前記先端部の断続的上下動の周期に同期して前記一対のアーム部材が同じ周期で互いに対称方向に回動する、請求項1記載の揺動玩具。
【請求項3】
前記開口部に設けられた一対の軸受をさらに備え、前記軸部材はそれぞれ対応するアーム部材の上端部に設けられ、前記軸部材をそれぞれ対応する前記軸受に回動自在に装着することで前記一対のアーム部材をそれぞれ前記軸部材を中心に回動可能に支持する、請求項1または2記載の揺動玩具。
【請求項4】
前記連結部材は、前記他方のアーム部材の上端部から横方向に突出して配置され細長開口を備えたフランジと、一端が前記一方のアーム部材の上端部に回動可能に配置され、他端が前記細長開口に沿って可動可能に配置された小パーツとによって構成され、前記一対のアーム部材が前記対称方向に回動する際、前記小パーツの前記他端が前記細長開口内で移動可能になっている請求項1乃至3の何れか1項記載の揺動玩具。
【請求項5】
前記一対のアーム部材が前記中立位置にあるとき、前記永久磁石が前記電磁コイルの上方に位置し、前記付勢位置にあるとき前記永久磁石が前記電磁コイルに重なる位置に来るように前記筐体内部に設けられている、請求項1乃至4の何れか1項記載の揺動玩具。
【請求項6】
前記電流源は、前記筐体の前記上面あるいはいずれかの側面に配置されたソーラセルである請求項1記載の揺動玩具。
【請求項7】
前記揺動部材は昆虫の羽を模して形成されてなる請求項1記載の揺動玩具。
【請求項8】
開口部が上面に設けられ筐体と、
前記開口部に互いに平行に並置された一対の軸部材と、
前記軸部材を回動軸として、上下方向に互いに対称に回動可能に設けられ、前記軸部材から下方に位置する部分は前記筐体の内部に配置され、前記軸部材から上方に位置する部分は少なくともその一部が前記筐体から突出して配置された一対のアーム部材と、
前記一対のアーム部材を互いに可動的に連結し、一方のアーム部材に供給された回動駆動力を他方のアーム部材に伝達するように配置された連結手段と、
前記筐体内に配置され前記一対のアーム部材のそれぞれの下端部に取り付けられた錘と、
前記アーム部材それぞれの前記筐体から突出する部分に取り付けられた昆虫の羽を模した一対の羽部材と、
前記一対のアーム部材のいずれか一方から枝分かれし、先端部が上下方向に回動するように配置された枝アーム部材と、
前記枝アーム部材の前記先端部に取り付けられた永久磁石と、
前記永久磁石と磁気的に相互に作用する位置にあり、かつ、前記永久磁石の移動を妨げない範囲の距離をおいて配置された電磁コイルと、
前記電磁コイルを励磁する電流を供給する電流源と、
前記電磁コイルに供給する電流の流れを断続的に制御するスイッチ手段と、
を備え、
前記コイルが励磁されていないときは、前記一対のアーム部材は互いに重量バランスが均衡した中立位置にあり、
前記コイルが励磁されたとき、前記励磁されたコイルと前記永久磁石との間に働く磁力により前記先端部に供給される回動駆動力によって前記一対のアーム部材は上下方向に互いに対称に回動して前記中立位置から変位し、当該コイルの励磁が解除されたとき、前記一対のアーム部材は前記重量バランスが取れるように前記変位位置から前記中立位置に復帰するように構成されてない、
前記スイッチ手段の作動に応じて前記電磁コイルが前記永久磁石に断続的に磁気的に作用することで、前記一対のアーム部材は前記中立位置と前記変位位置とを往復し、この往復に伴い前記羽部材が揺動する動きを演出する揺動玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−165549(P2009−165549A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−4708(P2008−4708)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【出願人】(599064214)株式会社セガ トイズ (32)
【出願人】(000132471)株式会社セガ (811)
【Fターム(参考)】