説明

揺動継手式チェーンのためのリンク

本発明は、揺動継手式チェーン(1)のためのリンク(2)であって、リンク(2)は、1つのリンク開口部(6)を画定する2つの長辺部(11,12)と2つの垂直辺部(9,10)とを含んでいる形式のものに関し、リンクチェーン内における予め規定された向きの容易なチェックが、長辺部の少なくとも1つに窪み(13,14)を設け、かつリンク(2)の外周に少なくとも1つの突起(16)を設けることによって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動継手式チェーンのためのリンクであって、この場合にリンクは、1つのリンク開口部を画定する2つの長辺部と2つの垂直辺部とを含んでいる形式のものに関する。更に本発明は、上記リンクを備えるリンクチェーン、並びにリンクチェーン内におけるリンクの予め規定された向きを調べるための方法に関する。
【0002】
揺動継手式チェーンのためのリンクは多くの場合に対称的には構成されておらず、したがってリンクを所定の方向に向けて組み立てる必要がある。このために従来技術においては、リンクは1つの長辺部に1つ若しくは複数の突起を有しており、該突起に基づきリンクは組立時にリンクチェーン内において所定の方向に向けて組み立てられている。長辺部に設けられる突起を省略したいという新たな要求があり、それというのは長辺部の突起は、例えば振動減少のためにガイドレールを用いる場合に、ガイドレールに対して摩耗を発生させてしまうからである。
【0003】
上記点に鑑み、本発明の課題は、リンクを例えばリンクチェーン内に組み込む場合に、長辺部の突起を省略して、リンクの向きを推測することができる幾何学形状のマークを有する、リンクチェーンのためのリンクを提供することである。
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の構成によれば、長辺部の少なくとも1つに窪みが設けられており、かつリンクの外周に少なくとも1つの突起が設けられている。
【0005】
突起は、有利には長辺部から垂直辺部へ移行する領域に配置されている。突起のこのような配置は、リンクチェーン内のリンクの突起が、リンクチェーンの直線状に伸ばされた状態でリンクチェーンの表面から突出しておらず、リンクチェーンを例えば案内薄板若しくは類似の部材に沿って案内する際に、該案内薄板と突起が接触しないようにする場合に行われる。
【0006】
突起は、有利にはリンクの平面視で見えるようになっている。リンクの平面視で見えるようになっている突起は、リンクをリンクチェーン内に組み込んだ後に光学的にチェックすることができる。このようなチェックは、例えばコンピュータ制御のカメラ機構を用いて行われ、この場合に窪みと突起との組み合わせが検出され、その結果、リンクを正確な向きでリンクチェーン内に組み込んだか否かが識別されるようになっている。
【0007】
突起及び窪みは、リンク平面に対して平行な1つの平面内における少なくとも1つの視線方向で見えるようになっている。この場合にリンク平面は、リンク表面に対して平行に延びる、つまり揺動継手の軸線に対して垂直に延びる平面を意味する。有利には、リンクは複数の窪みを含んでいる。
【0008】
リンクは、追加的に別の少なくとも1つの突起を含んでいてよい。該追加的な別の突起は、有利には上述の突起と同じ垂直辺部に配置されているが、別の実施の形態によれば、別の垂直辺部に配置されていてもよいものである。上記追加的な別の突起は、例えばストッパー突起である。
【0009】
前述の課題は、本発明に係る上記リンクを含むリンクチェーンによっても解決される。更に、前述の課題は、リンクチェーン内におけるリンクの予め規定された向きを調べるための本発明に係る方法によっても解決され、この場合にリンクは少なくとも1つの窪み及び少なくとも1つの突起を含んでおり、予め規定された向きは、窪み及び突起を見ることができるようになっていることにより確認される。
【0010】
次に、本発明を図示の実施の形態に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】リンクチェーンの一部分の平面図である。
【図2】本発明に係るリンクの各実施の形態を示す図である。
【0012】
図1は、二リンク組式のリンクチェーン1の一部分の平面を示している。図1に基づき、リンクチェーンの基本的な構造及び本発明に係る実施の形態に用いられる構成部分を説明する。図1に示してある二リンク組式のリンクチェーンに用いられる本発明に係るリンクは、三リンク組式のリンクチェーンにも同様に用いられるものである。リンクチェーン1は、複数のリンク2及び対向リンク2′を含んでいる。リンク2と対向リンク2′とは互いに交互に配置されていて、継手としてのヒンジピン3に結合されている。結果として、1つのリンクの両方の端部は、ヒンジピンによって1つ若しくは複数の対向リンクに結合されており、1つの対向リンクの両方の端部は、ヒンジピンによって1つ若しくは複数のリンクに結合されている。ヒンジピン3は2つの構成部分から成っており、1つの構成部分である短い揺動片5はリンク2に配設されていて、別の構成部分として対向リンク2′に配設された長い揺動片5′に沿って転動するようになっている。クレードルピンとも称される揺動片5,5′は、それぞれ、相互の転動若しくは滑動を可能にする横断面揺動形状を有している。両方の横断面揺動形状は互いに同じであってもよく、或いは互いに異なっていてもよい。リンク2と対向リンク2′とは、二重矢印Lで表されているチェーン走行方向Lに対して横方向に積層されており、このような構成により、チェーン走行方向Lに対して横方向に配置された隣接の2つのヒンジピン3間には、オーバーラップして配置された対向リンクが位置しており、逆に、チェーン走行方向Lに対して横方向に位置する隣接の2つの対向リンク間には、リングが各対向リンクとそれぞれオーバーラップして配置されている。リンク2を上述のように配置して成る各リンクセット4は、セット毎にそれぞれ1つのチェーンリンクを構成しており、同様に、対向リンク2′から成る各リンクセット(対向リンクセット)4′は、セット毎にそれぞれ1つのチェーンリンクを構成している。リンク2及び対向リンク2′は、図示の実施の形態では同一の構成部分である。リンク2と対向リンク2′とは配置によってのみ異なっている。したがって、以下の説明においてリンク2についてのみ説明する。それというのは、リンクは、各種類のリンクセットにおける配置を除いて対向リンクと同一であるからである。リンクチェーンの両側は、それぞれカバーリンク7を備えている。カバーリンクは、図示の実施の形態ではそれぞれチェーンリンク4にのみ配置されており、つまり第2の各チェーンリンクのみがカバーリンク7を有している。カバーリンク7はそれぞれ揺動片5′に固く結合されている。このために、揺動片はカバーリンクの図示省略の受容開口部内に差し込まれて、締まり嵌めされ、つまりカバーリンクに圧着されている。リンク2は、カバーリンク7と同じくチェーンリンク4に配設されていて、揺動片5と結合され、若しくは該揺動片に支えられているのに対して、カバーリンクは隣接のチェーンリンク4の揺動片5′に固く圧着されている。揺動片5はカバーリンク7を貫通していない。図1には、各1つのリンク2、及び該リンクの両側に配置されたカバーリンク7から成る積層体と各2つの対向リンク2′から成る積層体が示されているのに対して、任意の種々の数のリンク2若しくは対向リンク2′から成る積層体も可能である。
【0013】
図2はa)〜d)に本発明に係るリンク2の実施の形態を示している。リンク2は、ほぼ平らなプレートから成っており、該プレート内にリンク開口部6が形成されている。リンク開口部6は3つの領域を有し、つまり、1つのヒンジピンの受容のための領域6a、別のヒンジピンの受容のための領域6b、及びこれらの領域間に配置されていてリンクチェーンの組立状態で空間として残される領域6cを有している。リンク開口部6の領域6aは、支持面8aを有しており、同様にリンク開口部6の領域6bは、支持面8bを有している。支持面8a,8bは、揺動片5,5′の支え若しくは結合のために用いられている。リンク2は2つの垂直辺部9,10並びに2つの長辺部11,12を含んでおり、垂直辺部及び長辺部は、互いにつながっている。両方の長辺部11,12には、窪み13,14が形成されている。窪み13,14は互いに異なる深さy、幅x及び輪郭を有していてよいものの、互いに同じ深さy、幅x及び輪郭を有していてもよい。図2a〜図2dに示す実施の形態において、窪み13,14はそれぞれ中心軸線15上に設けられているものの、長辺部11若しくは12に複数の窪み13若しくは14を設けることも可能であり、或いは窪み13,14は、中心軸線15上に設けられるのではなく、中心軸線から離して設けられていてよいものである。リンク2は1つの突起16を有しており、該突起は、垂直な辺部10から長辺部11へ移行する領域に配置されている。この場合に、突起16は、該突起が、リンク2の長辺部11,12を包絡する互いに平行な2つの直線17のうちの1つの直線17を超えないように形成されている。このような構成により、リンク2の長辺部11が平らな平面に沿って摺動する場合に、該平面に突起16が接触しないような作用効果が得られる。突起16はさらに、該突起がリンクチェーン1の湾曲案内に際して隣接のリンク2と接触しないように配置されている。さらに追加的な構成として、突起16は、該突起がリンクチェーン1の組み立てられた状態で外部から見えるように配置されている。このような条件は、垂直辺部10から長辺部11へ移行する領域に突起16を配置する場合に満たされる。突起16を、垂直辺部から長辺部へ移行する別の任意の領域に配置することも可能である。突起16は、リンク2の平面視で見ることができ、特に突起は、リンク2をリンクチェーン1として組み立てた状態で見えるようになっている。リンク2は、図2b及び図2dの実施の形態に示してあるように、追加的に別の突起17を有していてよく、かつ図2dの実施の形態に示してあるように、リンクチェーン1のリンク間の屈曲角を制限するためのストッパー突起18を有していてよい。
【符号の説明】
【0014】
1 リンクチェーン、 2 リンク、 2′ 対向リンク、 3 ヒンジピン、 4,4′ リンクセット、 5,5′ 揺動片、 6 リンク開口部、 7 カバーリンク、 9,10 垂直辺部、 11,12 長手方向辺部、 13,14 窪み、 15 中心軸線、 16,17 突起、 18 ストッパー突起、 L チェーン走行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動継手式チェーン(1)のためのリンク(2)であって、該リンク(2)は、1つのリンク開口部(6)を画定する2つの長辺部(11,12)と2つの垂直辺部(9,10)とを含んでいる形式のものにおいて、前記長辺部(11,12)の少なくとも1つに窪み(13,14)が設けられており、かつ前記リンク(2)の外周に少なくとも1つの突起(16)が設けられていることを特徴とする、揺動継手式チェーンのためのリンク。
【請求項2】
前記突起(16)は、前記長辺部(11,12)から前記垂直辺部(9,10)へ移行する領域に配置されている請求項1に記載のリンク。
【請求項3】
前記突起(16)は、前記リンク(2)の平面視で見えるようになっている請求項1又は2に記載のリンク。
【請求項4】
前記突起(16)及び前記窪み(13,14)は、リンク平面に対して平行な1つの平面内における少なくとも1つの視線方向で見えるようになっている請求項3に記載のリンク。
【請求項5】
前記リンクは複数の窪み(13,14)を含んでいる請求項1から4のいずれか1項に記載のリンク。
【請求項6】
前記リンクは別の突起(17,18)を含んでいる請求項1から5のいずれか1項に記載のリンク。
【請求項7】
前記別の突起(17,18)は、前記突起(16)と同じ垂直辺部に配置されている請求項6に記載のリンク。
【請求項8】
前記別の突起は、ストッパー突起(18)である請求項7に記載のリンク。
【請求項9】
リンクチェーン(1)において、該リンクチェーンは、請求項1から8のいずれか1項に記載のリンク(2)を含んでいることを特徴とするリンクチェーン。
【請求項10】
リンクチェーン内におけるリンクの予め規定された向きを調べるための方法において、前記リンクは少なくとも1つの窪み(13,14)及び少なくとも1つの突起(16)を含んでおり、前記予め規定された向きは、前記窪み(13,14)及び突起(16)を見ることができるようになっていることにより認識されることを特徴とする、リンクの予め規定された向きを調べるための方法。

【図1】
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【図2a−2d】
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【公表番号】特表2011−506881(P2011−506881A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538324(P2010−538324)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/DE2008/002021
【国際公開番号】WO2009/076931
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany