説明

損傷した創傷治癒組成物および治療

治療を必要とする対象における、慢性創傷、治癒が遅延している創傷、治癒が不完全な創傷、および離開創を含めた、予測される速度で治癒しない創傷を治療する1または複数のギャップジャンクション調節剤を含む方法、化合物、組成物、キット、および製品。一実施形態において、本発明は、慢性創傷を有する対象を治療する方法であって、有効量のギャップジャンクション調節剤を含む組成物の創傷への投与を含む方法を対象とする。コネキシン43ギャップジャンクション調節剤が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギャップジャンクションならびに創傷および創傷治癒、特に、治癒が遅延している創傷、治癒が不完全な創傷、慢性創傷、および離開創など、予測される速度で治癒しない創傷に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
以下は、本発明の理解に有用でありうる情報を含む。このことは、本明細書に記載される情報が、本明細書に記載または特許請求されている発明に対する先行技術であるか、もしくはこれに関連していることを認めるものでも、明示的にもしくは暗黙に言及される刊行物もしくは文書が先行技術であることを認めるものでもない。
【0003】
ヒトおよび他の哺乳動物において、創傷は、細胞イベントおよび生化学的イベントの組織化された複雑なカスケードを誘発し、この結果、大半の場合において創傷の治癒がもたらされる。理想的に治癒した創傷とは、細胞レベル、組織レベル、器官レベル、および生物レベルにおける正常な解剖学的構造、機能、および外見が回復しているものである。外傷、微生物、または外来物質のいずれにより誘発されたものでも、創傷の治癒は、炎症、上皮形成、新脈管形成、およびマトリックス沈着を含めたいくつものオーバーラップした段階を包含する複雑な過程により進行する。通常、これらの過程により、創傷の完成(mature wound)およびある程度の瘢痕形成がもたらされる。炎症および修復は、規定の経過に沿って生じることが大半であるが、この過程の感度は、例えば、調節サイトカインおよび増殖因子の複合ネットワークを含む、各種の創傷治癒分調節因子の均衡に依存する。
【0004】
ギャップジャンクションは、直接的な細胞間情報伝達(cell−cell communication)を促進する細胞膜構造である。ギャップジャンクションチャネルは、各々が6つずつのコネキシンサブユニットからなる2つのコネクソン(ヘミチャネル)から形成される。各6量体コネクソンは、向い側の膜内のコネクソンとドッキングして、単一のギャップジャンクションを形成する。ギャップジャンクションチャネルは、全身において見出される。例えば、角膜上皮などの組織は、6〜8層の細胞層を有するが、異なる層では異なるギャップジャンクションチャネルを発現することが報告されており、基底層ではコネキシン43を有し、基底層から中翼細胞層ではコネキシン26を有する。一般に、コネキシンは1つのタンパク質ファミリーであり、通常、それらの分子量により命名されるか、または系統発生に基づき、アルファ、ベータ、およびガンマのサブクラスに分類されている。ヒトで少なくとも20種のアイソフォームが、また、マウスで少なくとも19種のアイソフォームが同定されている。特徴的なパターンのコネキシンタンパク質発現を有する様々な組織および細胞型が報告されており、角膜などの組織は、傷害または移植後において、コネキシンタンパク質の発現パターンを変化させることが示されている(Quiら(2003年)、Current Biology、第13巻、1967〜1703頁; Brander ら(2004年)、J. Invest Dermatol.、第122巻、1310〜20頁)。
【0005】
異常なコネキシン機能は、特定の疾患状態(例えば、心疾患)と関連し得ることが報告されている(A. C. de Carvalhoら、J Cardiovasc Electrophysiol、1994年、第5巻、686頁)。ある種のコネキシンタンパク質では、ギャップジャンクションを介した細胞間情報伝達レベルに影響を及ぼしうる外因性物質の追加により、代謝回転特性および輸送特性の変化が誘導されうる(Darrowら(1995年)、Circ Res、第76巻、381頁; Lin(2001年)、J Cell Biol、第154巻、第4号、815頁)。ウイルス性疾患、真菌性疾患、および代謝性疾患に関係する遺伝子の発現調節について、アンチセンス技術もまた報告されている。例えば、特許文献1(HIVに対するオリゴヌクレオチド阻害剤)、特許文献2(単純ヘルペスウイルスのVmw65 mRNAにハイブリダイズし、複製を阻害するオリゴマー)を参照されたい。また、BeckerおよびGreenへの特許文献3(コネキシンに対するアンチセンスヌクレオチドを含む製剤)も参照されたい。ギャップジャンクションおよびヘミチャネルに対するペプチド阻害剤もまた報告されている。例えば、Berthoudら、Am J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol.、第279巻、L619〜L622頁(2000年); Evans, W.H.およびBoitano, S.、Biochem. Soc. Trans.、第29巻、606〜612頁;ならびにDe Vriese A.S. ら、Kidney Int.、第61巻、177〜185頁(2001年)を参照されたい。また、BeckerおよびGreen、特許文献4(「Anti−connexin compounds and methods of use」)も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,166,195号明細書
【特許文献2】米国特許第5,004,810号明細書
【特許文献3】米国特許第7,098,190号明細書
【特許文献4】国際公開第2006/134494号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
創傷治癒過程の基礎をなす原理に対する理解の進展にもかかわらず、治癒が遅延している創傷、治癒が不完全な創傷、および慢性創傷など、予測される速度で治癒しない創傷を含む創傷治療に適する治療選択肢に対する必要は、依然としてほとんど満たされていない。本出願では、このような治療組成物および治療が記載および特許請求される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
簡単な要旨
本明細書で記載および特許請求される発明は、この「簡単な要旨」において説明または記載または言及される属性および実施形態を含むがこれらに限定されない多くの属性および実施形態を有する。それは包括的であることが意図されるものでなく、本明細書で記載および特許請求される発明は、限定ではなくて例示だけを目的として組み入れられているこの「簡単な要旨」に限定されるものでも、「簡単な要旨」において特定される特徴または実施形態により限定されるものでもない。
【0009】
本開示の態様および実施形態は一般に、治癒が遅い創傷、治癒が遅延している創傷、治癒が不完全な創傷、離開創、および慢性創傷など、予測される速度で治癒しない創傷について対象を治療する方法であって、ギャップジャンクション調節剤を含む組成物または製剤を創傷に投与するステップを含む方法に関する。コネキシン43ギャップジャンクション調節剤が好ましい。
【0010】
一実施形態において、本発明は、慢性創傷を有する対象を治療する方法であって、有効量のギャップジャンクション調節剤を含む組成物の創傷への投与を含む方法を対象とする。コネキシン43ギャップジャンクション調節剤が好ましい。一実施形態において、慢性創傷は褥瘡である。一実施形態において、慢性創傷は褥瘡性潰瘍である。別の実施形態において、慢性創傷は動脈性潰瘍である。別の実施形態において、慢性創傷は静脈性潰瘍である。別の実施形態において、慢性創傷は静脈鬱血性潰瘍である。別の実施形態において、慢性創傷は血管炎性潰瘍である。さらに別の実施形態において、慢性創傷は、糖尿病性足部潰瘍など糖尿病性潰瘍である。さらなる実施形態において、慢性創傷は外傷性潰瘍または熱傷潰瘍である。別の実施形態において、慢性創傷は感染性潰瘍であり、別の実施形態において、慢性創傷は壊疽性膿皮症と関連する潰瘍形成を特徴とする。またさらなる実施形態において、慢性創傷は混合潰瘍である。一実施形態において、創傷は持続性上皮欠損である。
【0011】
一実施形態において、本発明は、離開創を有する対象を治療する方法に関し、有効量のギャップジャンクション調節剤、好ましくは、コネキシン43ギャップジャンクション調節剤を含む組成物をこの創傷へ投与する工程を含む。
【0012】
一実施形態において、対象は哺乳動物である。別の実施形態において、対象はヒトである。別の実施形態において、対象は糖尿病を有するヒトである。一実施形態において、対象は1型糖尿病を有するヒトである。別の実施形態において、対象は2型糖尿病を有するヒトである。
【0013】
別の実施形態において、哺乳動物は競技動物またはペット動物である。一態様において、競技動物はウマまたはイヌである。別の態様において、ペット動物はイヌまたはネコである。
【0014】
一実施形態において、本発明は、治癒が遅延している創傷を有する対象を治療する方法に関し、有効量のギャップジャンクション調節剤を含む組成物をこの創傷へ投与する工程を含む。別の実施形態において、本発明は、治癒が不完全な創傷を有する対象を治療する方法に関し、有効量のギャップジャンクション調節剤を含む組成物をこの創傷へ投与する工程を含む。コネキシン43ギャップジャンクション調節剤が好ましい。
【0015】
さらなる態様により、ある持続時間にわたるある量のギャップジャンクション調節剤の創傷への持続投与が提供される。さらにこの態様により、治癒が遅延している創傷、治癒障害の創傷、および慢性創傷を含む、予測される速度で治癒しない創傷の創傷治癒が促進される。一実施形態において、創傷は、糖尿病性潰瘍、糖尿病性足部潰瘍、血管炎性潰瘍、静脈性潰瘍、静脈鬱血性潰瘍、動脈性潰瘍、褥瘡、褥瘡性潰瘍、感染性潰瘍、外傷誘導性潰瘍、熱傷潰瘍、壊疽性膿皮症と関連する潰瘍形成、または1もしくは複数の潰瘍の混合である。本発明には、反復適用が含まれる。創傷閉鎖の進行が見られるまでの反復適用の後、創傷治癒が再び停滞するかまたは遅延している場合における反復適用(または複数回の反復適用)を行うことが好ましい。
【0016】
本発明の他の態様により、創傷の再上皮形成および/または肉芽組織の形成が促進される。
【0017】
さらなる態様において、本発明は、治癒が遅延している創傷または治癒が不完全な創傷または慢性創傷を含む、予測される速度で治癒しない創傷を有する対象における創傷治癒を促進する方法であって、抗コネキシン43ペプチドおよび抗コネキシン31.1ペプチドの投与を含む方法を提供する。本発明には、反復適用が含まれる。
【0018】
本発明の代替的な態様は、皮膚創傷の再上皮形成を促進する方法であって、例えば、治癒が遅延している創傷または治癒が不完全な創傷または慢性創傷を含む、予測される速度で治癒しない創傷を有する対象に、再上皮形成を促進するのに有効な量でギャップジャンクション調節剤、例えば、抗コネキシンペプチドを投与するステップを含む方法を対象とする。抗コネキシンペプチドは、コネキシン26、コネキシン30、コネキシン31.1およびコネキシン43から選択されたコネキシンを標的としうる。ここでは、コネキシン43が好ましい標的である。
【0019】
追加のさらなる態様において、本発明は、例えば、治癒が遅延している創傷または治癒が不完全な創傷または慢性創傷を含む、予測される速度で治癒しない創傷を有する対象における創傷治癒を促進する方法であって、上皮基底細胞の分裂および増殖を調節するのに有効なギャップジャンクション調節剤の持続投与を含む方法を提供する。追加のさらなる態様において、本発明は、例えば、治癒が遅延している創傷または治癒が不完全な創傷または慢性創傷を含む、予測される速度で治癒しない創傷を有する対象における創傷治癒を促進する方法であって、外層におけるケラチン分泌を調節するのに有効なギャップジャンクション調節剤の持続投与を含む方法を提供する。一実施形態において、上皮基底細胞の分裂および増殖を調節するのに有効なギャップジャンクション調節剤、例えば、抗コネキシンペプチドは、抗コネキシン26ペプチドもしくは抗コネキシン43ペプチドまたはこれらの混合物である。代替的な実施形態により、外層のケラチン化を調節するのに投与されるギャップジャンクション調節剤、例えば、抗コネキシンペプチドは、抗コネキシン31.1ペプチドである。本発明には、反復適用が含まれる。
【0020】
別の態様により、本発明は、予測される速度で治癒しない創傷(治癒が遅延している創傷、治癒が不完全な創傷、および慢性創傷を含む)を有する対象における創傷治癒または創傷閉鎖の速度を増大させる方法であって、対象に有効量のギャップジャンクション調節剤を投与するステップを含む方法を提供する。
【0021】
一態様において、ギャップジャンクション調節剤は、ギャップジャンクションチャネルを隔てた細胞間連絡分子の流動を全体的または部分的に阻止または低減する。一態様において、ギャップジャンクション調節剤は、ギャップジャンクションを全体的または部分的に閉鎖することにより、細胞間連絡を阻害する。別の態様において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルの結合によるギャップジャンクションの形成を全体的または部分的に阻止または低減する。別の態様において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの全体的または部分的な閉鎖を誘導する。さらに別の態様において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルの開口を、全体的または部分的に遮断または阻害する。一態様において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの開口を、全体的または部分的に低減させるかまたは阻止する。一態様において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの活性または機能を阻止または低減する。本明細書で説明されるコネキシン43ギャップジャンクションおよびコネキシン43ヘミチャネルを調節するコネキシン43ギャップジャンクション調節剤が好ましい。
【0022】
一態様において、本発明は、1または複数のギャップジャンクション調節剤を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤をさらに含むことが好ましい。例えば、本発明は、(a)治療有効量の薬学的に許容されるコネキシン43ギャップジャンクション調節剤と、(b)薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む医薬組成物を含む。
【0023】
本発明はまた、包帯材、包帯、マトリックス、および被覆と組み合わせたギャップジャンクション調節剤の使用にも関する。一態様において、本発明は、ギャップジャンクション調節剤、好ましくは、コネキシン43ギャップジャンクション調節剤を含む合成または天然の創傷治癒マトリックスを含む。ある実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、コネキシン43ギャップジャンクション調節剤、例えば、抗コネキシン43ペプチドまたは抗コネキシン43ペプチド模倣剤である。
【0024】
これらはまた、例えば、治癒が完了するかまたは望ましい形となるまで毎週1回の反復適用における、単独での、または包帯材、包帯、マトリックス、および被覆と組み合わせてのギャップジャンクション調節剤の使用にも関する。
【0025】
一態様において、ギャップジャンクション調節剤はペプチド化合物である。一態様において、ペプチド化合物は、ペプチド模倣剤、ペプチド模倣剤、抗体、またはこの抗原結合フラグメントである。一態様において、抗原結合フラグメントは、F(v)、Fab、Fab’、またはF(ab’)による抗コネキシン43抗体フラグメントである。一態様において、抗体はキメラ抗体またはヒト化抗体である。一態様において、抗体フラグメントは、キメラ抗体フラグメントまたはヒト化抗体フラグメントである。別の態様において、ギャップジャンクション調節剤は、ギャップジャンクションリン酸化誘導剤、好ましくはコネキシン43ギャップジャンクションリン酸化化合物ある。
【0026】
本発明の一態様において、ギャップジャンクション調節剤は、局所投与用に処方される。本発明の一態様において、ギャップジャンクション調節剤は、ゲルとして処方される。さらに別の態様において、ギャップジャンクション調節剤は、徐放または持続放出用に処方される。本発明には、ギャップジャンクション調節剤の反復適用が含まれる。コネキシン43ギャップジャンクション調節剤が好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
治癒が遅い創傷、治癒が遅延している創傷、治癒が不完全な創傷、離開創、および慢性創傷を含む、予測される速度で治癒しない創傷は、結果として感染症をもたらすことが多く、切断術または死亡をもたらしうる。創傷治癒においては、ギャップジャンクションを通る細胞間連絡が中枢的な役割を果たす。本明細書で説明されるかまたは言及される化合物を含む特定の化合物の使用により、細胞連絡を遮断するか、阻害するか、または変化させることが可能であり、これにより、治癒が遅い創傷、治癒が遅延している創傷、治癒が不完全な創傷、離開創、および慢性創傷を含む、予測される速度で治癒しない創傷の閉鎖および治癒が促進される。すべての適用について、コネキシン43ギャップジャンクション調節剤が好ましい。
【0028】
定義
本明細書で用いられる「障害」とは、創傷治癒を促進し、かつ/または瘢痕形成を軽減する薬剤から利益を得る任意の障害、疾患、または状態である。例えば、神経障害性、虚血性、および微小血管性の病態;骨領域全体[尾骨(仙骨)、股関節(転子骨)、臀部(坐骨)、または足のかかと]にわたる圧迫;再灌流による傷害;ならびに弁逆流による病因と関連する状態および関連の状態と関連する創傷関連の異常が含まれる。
【0029】
本明細書で用いられる「対象」とは、ヒト;イヌ、ウマ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシなどの家畜動物および農場動物、ならびに動物園動物、競技動物、およびペット動物を含む任意の哺乳動物を指す。本明細書で好ましい哺乳動物は、成人、小児、および老齢者を含むヒトである。
【0030】
本明細書で用いられる「予防」とは、全体的もしくは部分的な予防、または改善もしくは抑制を意味する。
【0031】
本明細書で用いられる「治療」という用語は、治療的処置および予防的(prophylacticまたはpreventative)措置の両方を指す。
【0032】
本発明の化合物または組成物に関して本明細書で用いられる「治療有効量」とは、所望の生物学的結果、薬学的結果、または治療結果を誘導するのに十分な量を指す。その結果は、疾患もしくは障害もしくは状態の徴候、症状、もしくは原因の緩和、または生物学的系の他の任意の望ましい変化でありうる。本発明において、結果は、創傷治癒および創傷閉鎖の速度を含む、創傷治癒の全体的または部分的な促進および/または改善を伴う。他の利益は、腫脹、炎症、および/または瘢痕形成の全体的または部分的な軽減を含む。
【0033】
本明細書で用いられる「同時に」が、本発明の1または複数のギャップジャンクション調節剤(例えば、ペプチドまたは遮断薬)を共時的に投与することを意味するように用いられるのに対し、「組み合わせて」という用語は、同時にまたは物理的に混合してではないにせよ、それらの両方を治療的な作用に用いられる時間枠内で「逐次的に」投与することを意味するように用いられる。したがって、「逐次的に」投与することにより、1または複数のギャップジャンクション調節剤が有効量で共時的に存在する限りにおいて、1つの薬剤を、他の薬剤の投与後数分(例えば、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30分)、または約数時間、数日、数週間、もしくは数カ月以内に投与することが可能となりうる。成分の投与における時間の遅延は、それらの成分の正確な性質、それらの間における相互作用、およびそれら各々の半減期に応じて変化する。
【0034】
「ペプチド模倣剤」および「模倣剤」という用語は、それらが模倣するタンパク質領域と同じ構造的特徴および機能的特徴を実質的に有しうる天然化合物および合成化合物が含まれる。コネキシンの場合、これらは、例えば、コネクソン間結合および細胞間のチャネル形成、ならびに/またはヘミチャネルコネキシンの細胞外ループに関与する、向かい合うコネキシンの細胞外ループを模倣しうる。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「ペプチド類似体」とは、鋳型のペプチドの特性に類似する特性を有する化合物を指し、それらは非ペプチド薬剤でありうる。ペプチドベースの化合物を含む「ペプチド模倣剤」(また、「模倣ペプチド」としても公知)はまた、ペプチド類似体などの非ペプチドベースの化合物も含む。治療的に有用なペプチドに対して構造的に類似するペプチド模倣剤を用いて、同等であるかまたは増強された治療効果または予防効果をもたらすことができる。一般に、ペプチド模倣剤は、パラダイムポリペプチド(すなわち、生物学的または薬理学的な機能または活性を有するポリペプチド)と構造上または機能上の模倣物(例えば、同一または類似)であるが、また、場合によって、例えば、−CH2NH−、−CH2S−、−CH2−CH2−、−CH=CH−(シスおよびトランス)、−COCH2−、−CH(OH)CH2−、および−CH2SO−からなる群から選択される結合により置換される1または複数のペプチド結合も有しうる。模倣剤は、天然のアミノ酸、合成化学化合物、非天然のアミノ酸類似体だけから構成されたものであっても、部分的に天然のペプチドアミノ酸と部分的に非天然のアミノ酸類似体からなるキメラ分子であってもよい。任意量の天然アミノ酸に対する保存的置換もまた実質的に模倣剤の活性を変化させない限りにおいて、模倣剤はまたこのような置換も含みうる。コネキシンの場合、これらは、例えば、コネクソン間結合および細胞間のチャネル形成に関与する、向かい合うコネキシンの細胞外ループを模倣しうる。例えば、コネクソンの結合によるギャップジャンクションを介する細胞間連絡の形成に対する阻害、またはコネクソンの開口による細胞質の細胞外環境への曝露に対する阻害など、コネクソンの生物学的な作用または活性を下方調節することが可能な場合、例えば、模倣組成物は、ギャップジャンクション調節剤として有用でありうる。ペプチド模倣剤は、本明細書に記載のペプチド模倣剤のほか、現在公知の場合であれ将来的に開発される場合であれ、当技術分野において公知でありうるペプチド模倣剤を包含する。
【0036】
一般に、本明細書においてその各形態において用いられるギャップジャンクション活性の「調節剤」および「調節」という用語は、ギャップジャンクションまたはヘミチャネルの発現または作用または活性に対する全体的または部分的な阻害を指し、ギャップジャンクション調節剤として機能しうる。
【0037】
本明細書中で使用される場合、「タンパク質」という用語は、1つのアミノ酸(またはアミノ酸残基)のアルファ炭素に結合したカルボン酸基のカルボキシル炭素原子が、隣接するアミノ酸のアルファ炭素に結合したアミノ基のアミノ窒素原子に共有結合する場合に生じるペプチド結合により連結される、2つ以上の個々のアミノ酸(天然の場合であれ非天然の場合であれ)による任意のポリマーを指す。これらのペプチド結合、およびこれらを含む原子(すなわち、アルファ炭素原子、カルボキシルの炭素原子(およびこれらの置換基の酸素原子)、およびアミノの窒素原子(およびこれらの置換基の水素原子))は、タンパク質の「ポリペプチド骨格」を形成する。加えて、本明細書で用いられる「タンパク質」という用語は、「ポリペプチド」および「ペプチド」(本明細書では、場合によって、互換的に用いられうる)という用語を含む形で理解される。同様に、本明細書では、タンパク質のフラグメント、類似体、誘導体、および変異体も「タンパク質」と称し、別段に示されない限り、「タンパク質」であるとみなされるものとする。タンパク質の「フラグメント」という用語は、タンパク質のすべてのアミノ酸残基よりも少数のアミノ酸残基を含むポリペプチドを指す。タンパク質の「ドメイン」もまたフラグメントであり、多くの場合、活性または機能を付与することが必要とされる、タンパク質のアミノ酸残基を含む。
【0038】
「創傷包帯材」という用語は、創傷に対する局所適用のための包帯材を指し、全身投与に適する組成物を除外する。例えば、1または複数のギャップジャンクション調節剤は、創傷接触材料(例えば、織られた布材料または不織の布材料)の固体シート中または固体シート上に分散させることもでき、ポリウレタン発泡体などの発泡体層中またはポリウレタンヒドロゲル、ポリアクリル酸ヒドロゲル、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、アルギネート、および/もしくはヒアルロン酸ヒドロゲルなどのヒドロゲル中、例えば、ゲルまたは軟膏中に分散させることもできる。一部の実施形態において、1または複数のギャップジャンクション調節剤は、創傷中への有効成分の持続的な放出をもたらす生体分解性のシート材料、例えば、凍結乾燥コラーゲンシート、凍結乾燥したコラーゲン/アルギネート混合物(Johnson & Johnson Medical Limited社から登録商標FIBRACOLの下に入手可能)、または凍結乾燥コラーゲン/酸化再生セルロース(Johnson & Johnson Medical Limited社から登録商標PROMOGRANの下に入手可能)の中またはこの上に分散される。
【0039】
本明細書で用いられる「創傷促進マトリックス」は、例えば、コラーゲン、無細胞マトリックス、架橋生体足場分子、組織ベースの生体改変構造フレームワーク、生体加工による生体装具、また例えば、創傷治癒の促進に有用な細胞の浸潤および増殖に適する血管グラフトなど、他の植え込み構造物など、合成または天然のマトリックスを含む。さらなる適切な生体マトリックス材料は、抗原性および免疫原性を軽減する化学修飾したコラーゲン組織を含みうる。他の適切な例は、創傷包帯材用のコラーゲンシート、抗原を含まないかまたは抗原を低減した無細胞マトリックス(Wilson GJら、Trans Am Soc Artif Intern、1990年、第36巻、340〜343頁)、または異種移植材料に対する抗原反応を軽減するように改変された他の生体マトリックスを含む。創傷治癒を促進するのに有用な他のマトリックスは、例えば、不溶性のコラーゲンおよびエラスチンを含む加工済みのウシ心膜タンパク質(Courtman DWら、J Biomed Mater Res、1994年、第28巻、655〜666頁)、および宿主細胞の移動が組織再生を加速させるための天然の微小環境をもたらすのに有用でありうる他の無細胞組織(Maloneら、J Vasc Surg、1984年、第1巻、181〜91頁)を含みうる。本発明は、本明細書に記載される1または複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤(抗コネキシン43ペプチドおよび抗コネキシン43ペプチド模倣剤)を含む合成または天然のマトリックスを意図する。
【0040】
本明細書で用いられる「創傷」という用語は、例えば、治癒が遅延しているかまたは困難な創傷、および慢性創傷を含めた、任意の組織に対する傷害を含む。創傷の例は、開放創傷および閉鎖創傷の両方を含みうる。「創傷」という用語はまた、例えば、異なる形で誘発され(例えば、長期間の横臥静養に由来する褥瘡、および外傷により誘導される創傷)、また多様な特性を有する、皮膚および皮下組織に対する傷害も含みうる。創傷は、創傷の深さに応じて、i)グレードI:上皮に限局される創傷;ii)グレードII:真皮内に拡張する創傷;iii)グレードIII:皮下組織内に拡張する創傷;およびiv)グレードIV(または全層創傷):骨が露出する創傷(例えば、転子または仙骨などの骨圧点)の4つのグレードのうちの1つに分類することができる。
【0041】
「部分層創傷」という用語は、グレードI〜IIIを包含する創傷を指し、部分層創傷の例は、褥瘡、静脈鬱血性潰瘍、および糖尿病性潰瘍を含む。本発明は、治癒が遅延している創傷、治癒が不完全な創傷、および慢性創傷を含む、予測される速度で治癒しない種類のすべての創傷の治療を意図する。
【0042】
「ある/予測される速度で治癒しない創傷」とは、任意の組織に対する傷害を意味し、治癒が遅延しているかまたは困難な創傷(治癒が遅延しているかまたは不完全な創傷を含む)、および慢性創傷を含む。予測される速度で治癒しない創傷の例は、糖尿病性潰瘍、糖尿病性足部潰瘍、血管性潰瘍、動脈性潰瘍、静脈性潰瘍、静脈鬱血性潰瘍、熱傷潰瘍、感染性潰瘍、外傷誘導性潰瘍、褥瘡、褥瘡性潰瘍、壊疽性膿皮症と関連する潰瘍形成、および混合潰瘍などの潰瘍を含む。予測される速度で治癒しない他の創傷は、離開創を含む。
【0043】
本明細書で用いられる、治癒が遅延しているかまたは困難な創傷は、例えば、1)炎症期の持続、2)細胞外マトリックスの形成遅延、および/または3)上皮形成速度の低下を少なくとも部分的に特徴とする創傷を含みうる。
【0044】
「慢性創傷」という用語は、治癒しなかった創傷を指す。例えば、3か月以内に治癒しない創傷は、慢性であると考えられる。慢性創傷は、例えば、褥瘡、糖尿病性潰瘍、糖尿病性足部潰瘍、静脈性潰瘍、静脈鬱血性潰瘍、動脈性潰瘍、血管性潰瘍、熱傷潰瘍、外傷誘導性潰瘍、感染性潰瘍、混合潰瘍、および壊疽性膿皮症を含む。慢性創傷は、完全動脈遮断または部分動脈遮断から生じる潰瘍形成を含む動脈性潰瘍でありうる。慢性創傷は、静脈弁の機能不全および関連する血管疾患から生じる潰瘍形成を含む静脈性潰瘍または静脈鬱血性潰瘍でありうる。一部の実施形態において、慢性創傷を治療する方法は、慢性創傷が、以下の褥瘡のAHCPR病期:病期1、病期2、病期3、および/または病期4のうちの1つまたは複数を特徴とする場合に提供される。
【0045】
本明細書で用いられる慢性創傷はまた、例えば、1)創傷炎症の慢性自己永続状態、2)創傷細胞外マトリックスの欠損および欠陥、3)(老化)創傷細胞(例えば、線維芽細胞)の応答不十分、4)細胞外マトリックス生成の制約、ならびに/または5)必要な細胞外マトリックスの組織化の欠如および移動のための足場の欠如に部分的に起因する再上皮形成不全を少なくとも部分的に特徴とする創傷も含みうる。慢性創傷はまた、1)炎症およびタンパク質分解活性の持続による、例えば、糖尿病性潰瘍、褥瘡(褥瘡性潰瘍)、静脈性潰瘍、および動脈性潰瘍を含む潰瘍性病変の惹起、2)罹患領域におけるマトリックスの進行性沈着、3)修復時間の長期化、4)創傷収縮の低減、5)再上皮形成の遅延、ならびに6)肉芽組織の肥厚も特徴とする。
【0046】
例示的な慢性創傷は、「褥瘡」を含みうる。例示的な褥瘡は、例えば、病期1を含む、AHCPR(米国保健福祉省、健康管理政策研究局)ガイドラインに基づく創傷分類の全4病期を含みうる。病期1の褥瘡は、身体上で隣接するかまたは反対側の領域と比較したその指標が、以下:皮膚温度(温熱または低温)、組織の硬さ(しまった感じかまたはゆるい感じ)、および/または感覚(疼痛、刺激)のうちの1つまたは複数における変化を含みうる、圧力と関連する無傷皮膚の観察可能な変化である。潰瘍は、わずかに色素沈着した皮膚における、明確な持続性の発赤領域として現れる一方、皮膚の色調がより暗色の場合、潰瘍は、持続性の赤色、青色、または紫色を伴って現れうる。病期1の潰瘍は、無傷皮膚の消退しない発赤、および皮膚潰瘍形成の前兆となる病変を含みうる。皮膚が暗色化している個体においては、皮膚の変色、温熱、浮腫、硬結、硬化もまた、病期1の潰瘍形成の指標でありうる。病期2:病期2の潰瘍形成は、表皮、真皮、またはこれらの両方に及ぶ部分層皮膚喪失を特徴としうる。潰瘍は表面的であり、臨床的には表皮剥離、水膨れ、または表層的な陥没として現れる。病期3:病期3の潰瘍形成は、基層の筋膜を貫通しないがこれへと拡張しうる、皮下組織に対する損傷またはこの壊死を伴う全層皮膚喪失を特徴としうる。潰瘍は、臨床的には、隣接組織を蝕む場合であれ、そうでない場合であれ、深い陥没として現れる。病期4:病期4の潰瘍形成は、筋肉、骨、または支持構造(例えば、腱、関節被膜)に対する広範な破壊、組織壊死、または損傷を伴う全層皮膚喪失を特徴としうる。一部の実施形態において、慢性創傷を治療する方法は、慢性創傷が、以下の褥瘡のAHCPR病期:病期1、病期2、病期3、および/または病期4のうちの1つまたは複数を特徴とする場合に提供される。
【0047】
例示的な慢性創傷は、「褥瘡性潰瘍」を含みうる。例示的な褥瘡性潰瘍は、虚血をもたらす骨の突出部上において、圧力が長期間にわたり軽減されないことの結果として生じうる。創傷は、麻痺患者、意識喪失患者、または重度の衰弱患者など、自ら体位を変えて体重の負荷を除去することができない患者において生じる傾向がある。米国保健福祉省により定義される通り、主要な防止措置は、危険性の高い患者の同定;頻繁な評価;および定期的な体位変換、適切な圧力除去横臥、防湿バリア、および十分な栄養状態などの予防措置を含む。治療選択肢は、例えば、圧力の除去、手術による創面切除および酵素的創面切除、湿潤創傷の治療、および細菌負荷の抑制を含みうる。一部の実施形態では、虚血をもたらす骨の突出部上において、圧力が長期間にわたり軽減されないことの結果として生じる褥瘡性潰瘍または同潰瘍形成を特徴とする慢性創傷を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、虚血をもたらす骨の突出部上において、圧力が長期間にわたり軽減されないことの結果として生じる褥瘡性潰瘍または同潰瘍形成を特徴とする慢性創傷を治療する方法が提供される。
【0048】
例示的な慢性創傷は、「動脈性潰瘍」を含みうる。慢性動脈性潰瘍とは一般に、動脈硬化性および高血圧性の心血管疾患を伴う潰瘍形成であると理解される。これらは、有痛で、境界が明瞭であり、下肢側部およびつま先において見出されることが多い。動脈性潰瘍は、組織の壊死および/または潰瘍形成をもたらしうる完全動脈遮断または部分動脈遮断を特徴とする潰瘍を含みうる。動脈性潰瘍の徴候は、例えば、下肢の無脈;有痛の潰瘍形成;極めて限局性であることが通常な、小型の点状潰瘍;低温皮膚または寒冷皮膚;毛細血管復帰時間の遅延(つま先の端部を軽く押して放し、約3秒間以内につま先に正常な色彩が戻るものとする);皮膚の萎縮外見(例えば、光沢、薄化、乾燥);ならびに指および足の体毛喪失を含みうる。
【0049】
例示的な慢性創傷は、「静脈性潰瘍」を含みうる。例示的な静脈性潰瘍は、下肢が罹患する最も一般的な種類の潰瘍を含む場合があり、静脈弁の機能不全を特徴としうる。正常な静脈は、血液の逆流を防止する弁を有する。これらの弁が不全化すると、静脈血の逆流により、静脈鬱血が引き起こされる。赤血球からヘモグロビンが逸失して血管外腔へと漏出し、これにより、一般に言及される褐色の変色が引き起こされる。静脈性潰瘍を取り巻く皮膚の経皮酸素圧が低下することが示されており、これにより、領域の正常な血管形成を妨げる力が存在することが示唆される。リンパ液のドレナージおよび流動もまた、これらの潰瘍において役割を果たす。静脈性潰瘍は、内果近傍に現れる場合があり、通常、下肢の浮腫形成および硬結との組合せで生じ、浅く、それほど有痛でない場合があり、罹患部位からの滲出物の分泌を伴って現れる場合がある。一部の実施形態では、完全動脈遮断または部分動脈遮断に起因する動脈性潰瘍または同潰瘍形成を特徴とする慢性創傷を治療する方法が提供される。
【0050】
例示的な慢性創傷は、「静脈鬱血性潰瘍」を含みうる。鬱血性潰瘍とは、静脈機能不全と関連する病変であり、より一般的には内果全体に現れ、通常、圧痕性浮腫、静脈瘤、斑点状の色素沈着、紅斑、ならびに触知不能の点状出血および紫斑を伴う。鬱血性皮膚炎および鬱血性潰瘍は一般に、有痛ではなくて掻痒性である。例示的な静脈鬱血性潰瘍は、局所的低酸素症を結果としてもたらす下肢の慢性受動性静脈鬱血を特徴としうる。これらの創傷の1つの可能な発症機構は、厚い血管周囲のフィブリンカフを超える組織内への酸素拡散が妨害されることを含む。別の機構は、血管周囲組織内への高分子の漏出により、皮膚の完全性を維持するのに必要とされる成長因子が捕捉されることである。加えて、静脈鬱血により高分子である白血球の流動が遅くなり、白血球が毛細血管を閉塞させ、活性化し、血管内皮を損傷して潰瘍形成に対する素因を与える。一部の実施形態では、静脈弁の機能不全および関連する血管疾患に起因する静脈性潰瘍または同潰瘍形成を特徴とする慢性創傷を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、下肢の慢性受動性静脈鬱血および/または結果として生じる局所的低酸素症に起因する静脈鬱血性潰瘍または同潰瘍形成を特徴とする慢性創傷を治療する方法が提供される。
【0051】
例示的な慢性創傷は、「糖尿病性潰瘍」を含みうる。糖尿病患者は、神経学的合併症および血管合併症の両方に起因する足部潰瘍形成を含む潰瘍形成に罹患しやすい傾向がある。末梢の神経障害は、足部および/または脚部における感覚の変化または感覚の完全な喪失を引き起こしうる。神経障害が進行した糖尿病患者は、とがったもの/まるいものを区別するすべての能力を失う。神経障害を有する患者では、足部に対する任意の切開または外傷が、数日間または数週間にわたって完全に知覚されないままの場合がある。神経障害を有する患者の場合、実際には潰瘍が現れてかなりの時間が経過していても、潰瘍が「今現れた」と知覚することがまれではない。神経障害患者の場合、グルコースの厳密な制御により疾患の進行が遅くなることが示されている。感覚低下の結果として、シャルコー足部変形もまた生じうる。自らの足部において「正常な」感覚を有する者は、足部領域上にある圧力が大きすぎる場合、これを自然に感知する能力を有する。それが同定されると、われわれの身体は、この圧迫を緩和するように体位を本能的に変える。神経障害が進行した患者は、持続的な圧迫を感知するこの能力を失い、結果として、例えば、足底部の潰瘍形成をもたらす組織の虚血および壊死が生じうる。加えて、足部骨における微小骨折が感知および治療されずにおかれると、結果として、変形、慢性腫脹、およびさらなる骨の突出が生じうる。微小血管疾患は、これもまた潰瘍形成ももたらしうる、糖尿病の著明な合併症の1つである。一部の実施形態では、糖尿病の神経学的合併症および血管合併症の両方に起因する糖尿病性足部潰瘍および/または同潰瘍形成を特徴とする慢性創傷を治療する方法が提供される。
【0052】
例示的な慢性創傷は、「外傷性潰瘍」を含みうる。例示的な外傷性潰瘍の形成は、身体に対する外傷性傷害の結果として生じうる。これらの傷害は、例えば、動脈系、静脈系、またはリンパ系に対する損傷;骨格の骨構造に対する変化;組織層(表皮、真皮、皮下軟組織、筋肉、または骨)の喪失;身体部分または臓器に対する損傷および身体部分または臓器の喪失を含む。一部の実施形態では、身体に対する外傷性傷害と関連する潰瘍形成を特徴とする慢性創傷を治療する方法が提供される。
【0053】
例示的な慢性創傷は、例えば、第1度熱傷(すなわち、皮膚表面の発赤領域);第2度熱傷(水膨れ液を除去した後で自然治癒しうる水膨れの傷害部位);第3度熱傷(皮膚全層に及ぶ熱傷で、通常、創傷治癒には手術による介入を要する);熱湯熱傷(熱湯、熱湯熱傷を引き起こすグリースまたはラジエータ液により生じうる);火炎熱傷(火炎により生じる場合があり、通常、深部熱傷である);化学熱傷(酸およびアルカリにより生じる場合があり、通常、深部熱傷である);電気熱傷(家庭周辺の低電圧または業務地における高電圧);爆発閃光熱傷(通常は表面的な傷害);および接触熱傷(通常、深部熱傷であり、マフラーテールパイプ、高温のアイロン、およびストーブにより生じうる)を含む熱傷の結果として生じる潰瘍形成を含む「熱傷潰瘍」を含みうる。一部の実施形態では、身体に対する熱傷と関連する潰瘍形成を特徴とする慢性創傷を治療する方法が提供される。
【0054】
例示的な慢性創傷は、「血管炎性潰瘍」を含みうる。血管炎性潰瘍もまた、下肢において生じ、有痛で境界が明瞭な病変であり、病変は、触知可能な紫斑および出血性水泡と関連しうる。膠原病、敗血症、および各種の血液学的障害(例えば、血小板減少症、異タンパク血症)が、この重度で急性の状態の原因となりうる。
【0055】
例示的な慢性創傷は、壊疽性膿皮症を含みうる。壊疽性膿皮症は、単独または複数で圧痛の激しい下肢部の潰瘍として生じる。暗赤色〜紫色の穿掘性辺縁部により、化膿性の中央部欠損が取り囲まれる。生検では、血管炎が明らかとならないことが典型的である。患者の半数において、それは、潰瘍性大腸炎、限局性回腸炎、または白血病などの全身疾患と関連する。一部の実施形態では、壊疽性膿皮症と関連する潰瘍形成を特徴とする慢性創傷を治療する方法が提供される。
【0056】
例示的な慢性創傷は、角膜潰瘍または無痛性潰瘍を含む、眼潰瘍を含みうる。また、目の持続性上皮欠損も含まれる。これらはヒトにおいて生じる場合があり、また、競技動物(ウマなど)およびペット動物(イヌを含む)においても生じる場合がある。
【0057】
例示的な慢性創傷は、感染性潰瘍を含みうる。感染性潰瘍は、各種生物の直接的接種の後に生じ、著明な限局性リンパ節肥大と関連しうる。Mycobacteria感染、炭疽病、ジフテリア、ブラストミセス症、スポロトリクム症、野兎病、および猫引っかき熱が例である。第1期梅毒の生殖器潰瘍は、清浄、堅固な基底を伴う無圧痛性であることが典型的である。軟性下疳および鼠径部肉芽腫の生殖器潰瘍は、ぼろぼろに汚れていっそうひどい病変となる傾向がある。一部の実施形態では、感染症と関連する潰瘍形成を特徴とする慢性創傷を治療する方法が提供される。
【0058】
本明細書で用いられる「離開創」という用語は、破裂または裂開した、通常は手術による創傷である創傷を指す。一部の実施形態では、離開を特徴とする、予測される速度では治癒しない創傷を治療する方法が提供される。
【0059】
ギャップジャンクション調節剤
本明細書で説明される一部の薬剤は、細胞内へ、また細胞からの分子の輸送を調節するかまたはこれに影響を及ぼす(例えば、遮断するかまたは阻害する)ことが可能である。したがって、本明細書で説明される一部のギャップジャンクション調節剤は、細胞連絡(例えば、細胞間)を調節する。一部のギャップジャンクション調節剤は、細胞質とペリプラズム腔または細胞外腔との間における分子の移送を調節するかまたはこれに影響を及ぼす。このような薬剤は一般に、細胞質と細胞外腔または組織との間における小分子の交換に個別に関与しうるヘミチャネル(コネクソンとも呼ばれる)を標的とする。したがって、本明細書で提供される化合物は、細胞間(ギャップジャンクションを介する)または細胞と細胞外腔もしくは組織との間(ヘミチャネルを介する)における結合を直接的または間接的に低減させることが可能であり、細胞から細胞外腔内への分子の輸送の調節は、本発明の一部の化合物および実施形態の範囲内にある。
【0060】
本発明の実施形態では、ギャップジャンクションまたはヘミチャネルを通る分子の通過(例えば、輸送)に対する所望の阻害を誘発することが可能な任意の分子を用いることができる。ギャップジャンクションまたはヘミチャネルを通る分子の通過を調節する化合物はまた、特定の実施形態(例えば、細胞質から細胞外腔内への分子の通過を調節する実施形態)においても提供される。このような化合物は、ギャップジャンクションの結合解除を伴う場合であれ、伴わない場合であれ、ギャップジャンクションまたはヘミチャネルを通る分子の通過を調節しうる。このような化合物は、例えば、全体的または部分的にギャップジャンクションまたはヘミチャネルの機能または活性を遮断しうる、例えば、結合タンパク質、ポリペプチド、および他の有機化合物を含む。
【0061】
一部のギャップジャンクション阻害剤は、Evans, W.H.およびBoitano, S.、Biochem. Soc. Trans.、29巻、606〜612頁(2001年)において列挙されている。ギャップジャンクションおよびヘミチャネルに対するペプチド阻害剤(ペプチド模倣剤を含む)が報告されている。例えば、Berthoud, V.M.ら、Am J. Physiol. Lung Cell Mol. Physiol.、279巻、619〜622頁(2000年); De Vrieseら、Kidney Int.、61巻、177〜185頁(2001年);Boitano S.およびEvans W.、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、279:L623〜L630頁(2000年)を参照されたい。
【0062】
本明細書で用いられる「ギャップジャンクション調節剤」とは、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの活性、機能、または形成を全体的または部分的に阻止するか、低減させるか、または調節する薬剤または化合物を広く含みうる。一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの機能を全体的または部分的に阻止または低減する。一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの全体的または部分的な閉鎖を誘導する。他の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションを全体的または部分的に遮断する。一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの開口を、全体的または部分的に低減させるかまたは阻止する。一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤によるギャップジャンクションまたはヘミチャネルの前記遮断または閉鎖は、細胞外腔またはペリプラズム腔へ、また細胞外腔またはペリプラズム腔からの開口チャネルを通る低分子の流動を阻止または低減することにより、細胞外ヘミチャネル連絡を低減させることも可能であり、これを阻害することも可能である。ここでは、ヘミチャネルおよび/またはギャップジャンクションの開口を遮断するペプチド模倣剤およびギャップジャンクションリン酸化化合物が好ましい。
【0063】
一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの活性または機能を阻止するか、低減させるか、または変化させる。本明細書で用いられるギャップジャンクションの活性または機能の調節は、ギャップジャンクションの閉鎖、ヘミチャネルの閉鎖、ならびに/またはギャップジャンクションおよび/もしくはヘミチャネルを通る分子もしくはイオンの通過を含みうる。
【0064】
ある別の態様において、ギャップジャンクション調節剤は、例えば、脂肪族アルコール;オクタノール;ヘプタノール;麻酔剤(例えば、ハロタン)、エトレン(ethrane)、フルオタン、プロポフォール、およびチオペンタール;アナンダミド;アリールアミノベンゾアート(FFA:親油性であるフルフェナム酸および類似の誘導体);カルベンオキソロン;カルコン(2’5’−ジヒドロキシカルコン);CHF(クロロヒドロキシフラノン);CMCF(3−クロロ−4−(クロロメチル)−5−ヒドロキシ−2(5H)−フラノン);デキサメタゾン;ドキソルビシン(および他のアントラキノン誘導体);エイコサノイドであるトロンボキサンA(2)(TXA(2))模倣剤;NO(一酸化窒素);脂肪酸(例えば、アラキドン酸、オレイン酸、およびリポキシゲナーゼ代謝物);フェナム酸(フルフェナム酸(FFA)、ニフルミン酸(NFA)、およびメクロフェナム酸(MFA));ゲニステイン;グリチルレチン酸(GA):18a−グリチルレチン酸および18−β−グリチルレチン酸、ならびにこれらの誘導体;リンダン;リゾホスファチジン酸;メフロキン;メナジオン;2−メチル−1,4−ナフトキノン、ビタミンK(3);ナフェノピン;オカダ酸;オレアミド;オレイン酸;PH、細胞間酸化によるゲーティング、例えば、酸化剤;多価不飽和脂肪酸;脂肪酸GJIC阻害剤(例えば、オレイン酸およびアラキドン酸);キニジン;キニーネ;オールトランスレチノイン酸;およびタモキシフェンを含みうる。
【0065】
例示的なギャップジャンクション調節剤は、限定なしに述べると、ポリペプチド(例えば、ペプチド模倣剤、抗体、これらの結合フラグメント、および合成構築物)、および他のギャップジャンクション遮断剤、およびギャップジャンクションタンパク質リン酸化剤を含みうる。ギャップジャンクションを閉鎖するのに用いられる例示的な化合物(例えば、コネキシン43のチロシン残基をリン酸化する)は、Jensenらによる米国特許第7,153,822号、米国特許第7,250,397号、および分類された特許公報において報告されている。例示的なペプチドおよびペプチド模倣剤は、Greenら、WO2006134494において報告されている。また、Gourdieら、WO2006069181;およびGriffithら、WO2003032964も参照されたい。
【0066】
本明細書で用いられる「ギャップジャンクションリン酸化剤」は、ギャップジャンクションまたはヘミチャネルの閉鎖、また、したがって、ギャップジャンクションの調節を誘導するために、コネキシンのアミノ酸残基上においてリン酸化を誘導することが可能な薬剤または化合物を含みうる。例示的なリン酸化部位は、コネキシンタンパク質上における1もしくは複数のチロシン残基、セリン残基、またはトレオニン残基を含む。一部の実施形態において、リン酸化の調節は、1または複数のコネキシンタンパク質上における1または複数の残基上において生じうる。例示的なギャップジャンクションリン酸化剤は当技術分野において周知であり、例えば、c−Srcチロシンキナーゼまたは他のGタンパク質結合受容体アゴニストを含みうる。Giepmans B(2001年)、J. Biol. Chem.、276巻、11号、8544〜8549頁を参照されたい。一実施形態において、1または複数のこれらの残基上におけるリン酸化の調節は、特に、ヘミチャネルの閉鎖を介して、ヘミチャネルの機能に影響を及ぼす。別の実施形態において、1または複数のこれらの残基上におけるリン酸化の調節は、特に、ギャップジャンクションの閉鎖を介して、ギャップジャンクションの機能に影響を及ぼす。コネキシン43ギャップジャンクションおよびコネキシン43ヘミチャネルの閉鎖を標的とするギャップジャンクションリン酸化剤が好ましい。
【0067】
結合タンパク質(例えば、抗体、抗体フラグメントなど)、ペプチド、ペプチド模倣剤、およびペプチド模倣剤を含むポリペプチド化合物が、適切なギャップジャンクション調節剤である。
【0068】
結合タンパク質は、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、およびFvフラグメント;単鎖抗体;単鎖Fv;また例えば、特定の抗体または他の結合分子と接触する抗原決定基(すなわち、一般にエピトープと称する分子の部分)に結合可能な結合ドメイン、ヒンジ、CH2ドメインおよびCH3ドメイン、組換え抗体、ならびに抗体フラグメントを含む単鎖結合分子などの単鎖結合分子を含む)を含む。抗体、抗体フラグメントなどを含むこれらの結合タンパク質は、キメラの場合もあり、ヒト化される場合もあり、他の形でこれらが投与される対象における免疫原性を低減させる場合もあり、また、合成する場合もあり、組換えにより作製する場合もあり、発現ライブラリー内において作製する場合もある。本明細書で言及され、かつ/または当技術分野においてより詳細に説明される結合分子など、当技術分野において公知であるかまたは将来的に発見される任意の結合分子が意図される。例えば、結合タンパク質は、抗体などだけではなく、リガンド、受容体、ペプチド模倣剤、または標的(例えば、コネキシン、コネクソン、ギャップジャンクション、または関連する分子)に結合する他の結合フラグメントもしくは分子(例えば、ファージディスプレイにより作製される)も含む。
【0069】
結合分子は一般に、結合特異性を含むがこれに限定されない所望の特異性、および所望の親和性を有する。親和性は、例えば、約10−1以上、約10−1以上、約10−1以上、約10−1のKaでありうる。約10−1以上、約1010−1以上、約1011−1以上、および約1012−1以上の親和性など、約10−1をさらに超える親和性が適する。本発明による結合タンパク質の親和性は、従来の技法、例えば、Scatchardら、1949年、Ann. N.Y. Acad. Sci.、第51巻、660頁により説明される技法を用いて容易に決定することができる。
【0070】
本発明は、ギャップジャンクションおよびヘミチャネルを調節するペプチド(ペプチド模倣剤および複数のペプチド模倣剤が含まれる)の使用を含む。ヒドロパシープロットから得られるデータを用いることにより、コネキシンは、4つの膜貫通領域および2つの短い細胞外ループを含有すると仮定されている。コネキシンの第1および第2の細胞外領域の配置は、分離されたギャップジャンクション上における対応するエピトープの免疫学的局在決定に用いられる抗ペプチド抗体の作製報告によりさらに特徴づけられた(Goodenough D.A.、J Cell Biol、第107巻、1817〜1824頁(1988年); Meyer R.A.、J Cell Biol、第119巻、179〜189頁(1992年))。
【0071】
ペプチドまたはこれらの変異体は、例えば、固相ペプチド合成法によっても、酵素触媒ペプチド合成によっても、組換えDNA法を援用しても、in vitroで合成することができる。固相ペプチド合成法は確立されて広く用いられている方法であり、以下:Stewartら(1969年)、「Solid Phase Peptide Synthesis」、W. H. Freeman Co.、San Francisco; Merrifield(1963年)、J. Am. Chem. Soc.、85巻、2149頁; Meienhofer、「Hormonal Proteins and Peptides」、C.H. Li編、2巻(Academic Press、1973年)、48〜267頁; ならびにBavaayおよびMerrifield、「The Peptides」、E. GrossおよびF. Meienhofer編、2巻(Academic Press、1980年)、3〜285頁などの参考文献中において説明されている。これらのペプチドは、免疫親和性カラムまたはイオン交換カラム上における画分化;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカまたはDEAEなどの陰イオン交換樹脂上におけるクロマトグラフィ;等電点電気泳動;SDS−PAGE;硫酸アンモニウム沈殿;例えば、Sephadex G−75を用いるゲル濾過;リガンド親和性クロマトグラフィ;または非極性溶媒もしくは非極性/極性溶媒の混合物からの結晶化もしくは沈殿によりさらに精製することができる。結晶化または沈殿による精製が好ましい。
【0072】
隣接する2つの細胞が寄与するヘミチャネルの細胞外ドメインが互いに「結合」して、完全なギャップジャンクションチャネルが形成される。これらの細胞外ドメインの相互作用に干渉する試薬は、細胞間連絡または細胞外環境に対するヘミチャネルの開口を損なわせ得る。
【0073】
ギャップジャンクション調節剤は、コネキシン(例えば、コネキシン45、43、26、30、31.1、および37)の膜貫通領域(例えば、第1〜第4)に対応するアミノ酸配列を含むペプチドを含む。コネキシン43の膜貫通領域の一部に対応するアミノ酸配列を含むペプチドを含むギャップジャンクション調節剤が、本発明における使用に好ましい。
【0074】
ギャップジャンクション調節剤は、コネキシン45の膜貫通ドメインの一部に対応するアミノ酸配列を含むペプチドを含みうる。ギャップジャンクション調節剤は、配列番号1の約5〜20の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号1の約8〜15の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、または配列番号1の約11〜13の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドを含む。他の実施形態は、配列番号1の少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、または少なくとも約30の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドであるギャップジャンクション調節剤を対象とする。本明細書で提供される一部のギャップジャンクション調節剤では、配列番号1の位置46〜75および199〜228にあるアミノ酸に対応するコネキシン45の細胞外ドメインを用いて、特定のペプチド配列を開発することができる。本明細書に記載の一部のペプチドは、配列番号1の位置46〜75および199〜228にある領域に対応するアミノ酸配列を有する。ペプチドは、配列番号1のこれらの部分と同一のアミノ酸配列を有する必要はなく、ペプチドが結合活性または機能活性を保持するような保存的アミノ酸変化を作製することができる。代替的に、ペプチドは、細胞外ドメイン以外のコネキシンタンパク質の領域(例えば、位置46〜75および199〜228に対応しない配列番号1の部分)も標的としうる。
【0075】
また、適切なギャップジャンクション調節剤は、コネキシン43の膜貫通領域の一部に対応するアミノ酸配列を含むペプチドも含み得る。ギャップジャンクション調節剤は、配列番号2の約5〜20の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号2の約8〜15の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチド、または配列番号2の約11〜13の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドを含む。他のギャップジャンクション調節剤は、配列番号2の少なくとも約5、少なくとも約6、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約10、少なくとも約11、少なくとも約12、少なくとも約13、少なくとも約14、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約25、または少なくとも約30の連続アミノ酸を含むアミノ酸配列を有するペプチドを含む。他のギャップジャンクション調節剤は、配列番号2の位置37〜76および178〜208にあるアミノ酸に対応するコネキシン43の細胞外ドメインを含む。ギャップジャンクション調節剤は、配列番号2の位置37〜76および178〜208にある領域に対応するアミノ酸配列を有する、本明細書に記載のペプチドを含む。ペプチドは、配列番号2のこれらの部分と同一のアミノ酸配列を有する必要はなく、ペプチドが結合活性または機能活性を保持するような保存的アミノ酸変化を作製することができる。代替的に、ペプチドは、細胞外ドメイン以外のコネキシンタンパク質の領域(例えば、位置37〜76および178〜208に対応しない配列番号2の部分)も標的としうる。
【0076】
他のギャップジャンクション調節剤は、カルボキシ末端ポリペプチドを含む。
【0077】
【化1】

【0078】
【化2】

【0079】
【化3】

ギャップジャンクション調節ペプチドは、ペプチドが機能的に活性なギャップジャンクション調節化合物であるような保存的アミノ酸置換を伴う、コネキシンの細胞外ドメインの一部に対応する配列を含みうる。例示的な保存的アミノ酸置換は、例えば、別の非極性アミノ酸による非極性アミノ酸の置換、別の芳香族アミノ酸による芳香族アミノ酸の置換、別の脂肪族アミノ酸による脂肪族アミノ酸の置換、別の極性アミノ酸による極性アミノ酸の置換、別の酸性アミノ酸による酸性アミノ酸の置換、別の塩基性アミノ酸による塩基性アミノ酸の置換、および別のイオン性アミノ酸によるイオン性アミノ酸の置換を含む。
【0080】
コネキシン43を標的とする例示的なペプチドを、以下の表1に示す。M1、2、3、および4は、それぞれ、コネキシン43タンパク質の第1〜第4の膜貫通領域を指す。E2は、それぞれ、第1および第2の細胞外ループを指す。
【0081】
表1:細胞間連絡に対するペプチド阻害剤(cx43)
【0082】
【表1】

表2は、ヘミチャネル機能またはギャップジャンクション機能を阻害するのに用いられる、さらなる例示的なコネキシンペプチドについて記載する。他の実施形態では、ペプチドまたはこれらのフラグメントに対して保存的なアミノ酸変化が作製される。
【0083】
表2:細胞間連絡に対するさらなるペプチド阻害剤(cx32、cx43)
【0084】
【表2】

表3は、本明細書で説明されるペプチド阻害剤を開発するのに用いられるコネキシンファミリーメンバーの細胞外ループについて記載する。表4に記載されるペプチドおよびこれらのフラグメントは、一部の非限定的な実施形態においてペプチド阻害剤として用いられる。他の非限定的な実施形態では、この表中のペプチドの約8〜約15、または約11〜約13の連続アミノ酸を含むペプチドが、本発明のペプチド阻害剤である。ペプチドまたはこれらのフラグメントには、保存的なアミノ酸変化を作製することができる。Boitano S.およびEvans W.、Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol、279巻、623〜630頁(2000年)を参照されたい。
【0085】
表3:各コネキシンファミリーメンバーの細胞外ループ
【0086】
【表3−1】

【0087】
【表3−2】

異なるコネキシンアイソタイプのE2ドメイン配列を表3に示す。配列番号7のペプチドの最後の4アミノ酸が第4膜ドメインの一部であることに注意されたい。
【0088】
表4は、ペプチドによるギャップジャンクション調節剤を開発するのに用いうるコネキシンファミリーメンバーの細胞外ドメインについて記載する。表4に記載されるペプチドおよびこれらのフラグメントもまた、ペプチドによるギャップジャンクション調節剤として用いることができる。このようなペプチドは、この表4中のペプチド配列の約8〜約15、または約11〜約13の連続アミノ酸を含みうる。ペプチドまたはこれらのフラグメントには、保存的なアミノ酸変化を作製することができる。
【0089】
表4:細胞外ドメイン
【0090】
【表4−1】

【0091】
【表4−2】

表5は、コネキシン40の細胞外ループ(E1およびE2)に関して示されるコネキシン40に対するペプチド阻害剤について記載する。太字のアミノ酸は、コネキシン40の膜貫通領域を対象とする。
【0092】
表5:Cx40ペプチド阻害剤
【0093】
【表5】

表6は、コネキシン45の細胞外ループ(E1およびE2)に関して示されるコネキシン45に対するペプチド阻害剤について記載する。太字のアミノ酸は、コネキシン45の膜貫通領域を対象とする。
【0094】
表6:Cx45ペプチド阻害剤
【0095】
【表6】

一部の実施形態では、一部のペプチド阻害剤が、ギャップジャンクションに対する所望の遮断なしに、ヘミチャネルを遮断することが好ましい。特定の理論または機構に拘束されることを望まないが、一部のペプチド模倣剤(例えば、VCYDKSFPISHVR(配列番号11))はまた、ギャップジャンクションの結合解除を引き起こすことなくヘミチャネルを遮断するとも考えられている。ペプチドSRGGEKNVFIV(配列番号95)は、対照配列として用いることができる(DeVrieseら、Kidney Internat.、第61巻、177〜185頁(2002年))。コネキシン45に対するペプチド阻害剤の例は、YVCSRLPCHP(配列番号96)、QVHPFYVCSRL(配列番号97)、FEVGFLIGQYFLY(配列番号98)、GQYFLYGFQVHP(配列番号99)、GFQVHPFYVCSR(配列番号100)、AVGGESIYYDEQ(配列番号101)、YDEQSKFVCNTE(配列番号102)、NTEQPGCENVCY(配列番号103)、CYDAFAPLSHVR(配列番号104)、FAPLSHVRFWVF(配列番号105)およびLIGQY(配列番号106)、QVHPF(配列番号107)、YVCSR(配列番号108)、SRLPC(配列番号109)、LPCHP(配列番号110)およびGESIY(配列番号111)、YDEQSK(配列番号112)、SKFVCN(配列番号113)、TEQPGCEN(配列番号114)、VCYDAFAP(配列番号115)、LSHVRFWVFQ(配列番号116)である。ペプチドは、SRL、PCH、LCP、CHP、IYY、SKF、QPC、VCY、APL、HVRを含む3アミノ酸長だけの場合もあり、例えば、LIQYFLYGFQVHPF(配列番号117)、VHPFYCSRLPCHP(配列番号118)、VGGESIYYDEQSKFVCNTEQPG(配列番号119)、TEQPGCENVCYDAFAPLSHVRF(配列番号120)、AFAPLSHVRFWVFQ(配列番号121)など、より長い場合もある。
【0096】
例示的なペプチドはまた、例えば、コネキシンタンパク質、VCYDQAFPISHIR(配列番号:122)、VCYDKSFPISHVR(配列番号:123)、SRPTEKTIFII(配列番号:124)、SRPTEKNVFIV(配列番号:125)、RVDCFLSRPTEK(配列番号:126)、PVNCYVSRPTEK(配列番号:127)、IVDCYVSRPTEK(配列番号:128)、SRPTEKT(配列番号:129)、VCYDQAFPISHIR(配列番号:130)、VCYDKSFPISHVRI(配列番号:131)、SRPTEKTIFII(配列番号:132)、SRPTEKNVFIV(配列番号:133)、RVDCFLSRPTEK(配列番号:134)、PVNCYVSRPTEK(配列番号:135)、およびIVDCYVSRPTEK(配列番号:136)、SRPTEKT(配列番号:137)のギャップ26および27の細胞外ループ部分の1または複数に対して相同的な合成ペプチドを含む、GriffithによるWO2003032964において報告されるペプチドも含みうる。
【0097】
本明細書では、相同性および相同体について論じる。このようなポリヌクレオチドは、例えば、少なくとも約15、少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約100以上の連続ポリヌクレオチドの領域にわたって、対象の配列と少なくとも約70%の相同性、好ましくは少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、または少なくとも約99%の相同性を有することが典型的である。
【0098】
相同性は、当技術分野における任意の方法に基づいて計算することができる。例えば、UWGCGパッケージでは、相同性を計算するのに用いうるBESTFITプログラム(例えば、そのデフォルト設定で用いられる)が提供される(Devereuxら(1984年)、Nucleic Acids Research、12巻、387〜395頁)。PILEUPアルゴリズムおよびBLASTアルゴリズムは、例えば、Altschul S. F.(1993年)、J Mol Evol、36巻、290〜300頁; Altschul, S, Fら(1990年)、J Mol Biol、215巻、403〜10頁において説明される通り、相同性を計算するか、または配列を整列するのに用いることができる(それらのデフォルト設定における場合が典型的である)。
【0099】
BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、米国立バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)により公開されている。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中における同じ長さのワードにより整列する場合、ある正の値の閾値スコアTにマッチするかまたはこれを満たすクエリー配列中における長さWの短いワードを同定することによる、高スコアリング配列対(HSP)の同定を伴う。Tを、近傍ワードスコア閾値(Altschulら、前出)と称する。これらの初期近傍ワードヒットは、それらを含有するHSPを見出す検索を開始するための契機として作用する。ワードヒットは、累積のアライメントスコアが増大しうる限りにおいて、各配列に沿って両方向に延長される。各方向におけるワードヒットの延長は、累積アライメントスコアが、達成されたその最大値から量Xだけ低減する場合;累積スコアが、1または複数の負のスコアの残基アライメントの累積により、ゼロ以下に低減する場合;またはいずれかの配列の端部に到達する場合に停止される。
【0100】
BLASTアルゴリズムのパラメータW、T、およびXにより、整列の感度および速度が決定される。BLASTプログラムでは、ワード長(W=11)、BLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffおよびHenikoff(1992年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻、10915〜10919頁を参照されたい)によるアラインメント(B=50)、期待値(E=10)、M=5、N=4、および両方の鎖の比較が、デフォルトのパラメータとして用いられる。
【0101】
BLASTアルゴリズムでは、2つの配列間における類似性に対する統計学的解析が実施される。例えば、KarlinおよびAltschul(1993年)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90巻、5873〜5787頁を参照されたい。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの尺度は、2つのアミノ酸配列の間におけるマッチが偶然に生じる確率を示す、最小合計確率(P(N))である。例えば、第2の配列に対して第1の配列を比較した場合の最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、また最も好ましくは約0.001未満である場合、ある配列は別の配列に対して類似すると考えられる。
【0102】
相同配列は、少なくとも約2、5、10、15、20以上(または約2、5、10、15、20だけ)の変異(置換、欠失、または挿入でありうる)により対象配列と異なることが典型的である。これらの変異は、相同性の計算との関連で、上述の領域のいずれかにわたって測定することができる。
【0103】
相同配列は、バックグラウンドを著明に上回るレベルで、元の配列に選択的にハイブリダイズすることが典型的である。選択的なハイブリダイゼーションは、中程度〜高度に厳密な条件を用いて達成することが典型的である。しかし、このようなハイブリダイゼーションは、当技術分野(Sambrookら(1989年)、「Molecular Cloning: A Laboratory Manual」を参照されたい)において公知の任意の適切な条件下で実施することができる。
【0104】
ギャップジャンクション改変剤:他の抗コネキシン剤
ギャップジャンクション調節剤は、ギャップジャンクションおよび/またはヘミチャネルを閉鎖もしくは遮断するか、またはギャップジャンクションを介する細胞間情報伝達を別の形で防止するかもしくは低下させるか、またはヘミチャネルを介する細胞外環境への細胞の情報伝達を別の形で防止するかもしくは低下させる薬剤を含む。これらは、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの活性、機能、または形成を、全体的または部分的に防止するか、低下させるか、または阻害する薬剤または化合物を含む。
【0105】
一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの全体的または部分的な閉鎖を誘導する。他の実施形態において、ギャップジャンクション改変剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションを、全体的または部分的に遮断する。一部の実施形態において、ギャップジャンクション改変剤は、ヘミチャネルまたはギャップジャンクションの開口を、全体的または部分的に低下させるかまたは防止する。
【0106】
一部の実施形態において、ギャップジャンクション改変剤によるギャップジャンクションまたはヘミチャネルの前記遮断または閉鎖は、細胞外腔またはペリプラズム腔への開口チャネルを介する低分子の流動を防止するかまたは低下させることにより、、また細胞外腔またはペリプラズム腔からの開口チャネルを介する低分子の流動を防止するかまたは低下させることにより、細胞外ヘミチャネル情報伝達を低下させることも可能であり、これを阻害することも可能である。
【0107】
ヘミチャネルまたはギャップジャンクションを閉鎖するのに用いられるギャップジャンクション改変剤(例えば、コネキシン43のチロシン残基をリン酸化する)は、Jensenらへの米国特許第7,153,822号、米国特許第7,250,397号、および分類された特許公報において報告されている。例えば、ZO−1タンパク質の結合を阻害すると言われるコネキシンカルボキシ末端ポリペプチドに関しては、Gourdieら、WO2006069181もまた参照されたい。Gourdieら、WO2006069181は、このようなペプチドを含む製剤の使用について説明している。
【0108】
本明細書で用いられる「ギャップジャンクションリン酸化剤」は、ギャップジャンクションまたはヘミチャネルの閉鎖を誘導するために、コネキシンのアミノ酸残基上においてリン酸化を誘導することが可能な薬剤または化合物を含みうる。例示的なリン酸化部位は、コネキシンタンパク質上における1つもしくは複数のチロシン残基、セリン残基、またはトレオニン残基を含む。一部の実施形態において、リン酸化の調節は、1または複数のコネキシンタンパク質上における1つまたは複数の残基上において生じうる。例示的なギャップジャンクションリン酸化剤は当技術分野において周知であり、例えば、c−Srcチロシンキナーゼまたは他のGタンパク質共役受容体アゴニストを含みうる。Giepmans B, J. Biol. Chem.、第276巻、第11号、8544〜8549頁、2001年3月16日を参照されたい。一実施形態において、1つまたは複数のこれらの残基上におけるリン酸化の調節は、特に、ヘミチャネルの閉鎖によって、ヘミチャネルの機能に影響を及ぼす。別の実施形態において、1つまたは複数のこれらの残基上におけるリン酸化の調節は、特に、ギャップジャンクションの閉鎖によって、ギャップジャンクションの機能に影響を及ぼす。コネキシン43ギャップジャンクションおよびコネキシン43ヘミチャネルの閉鎖を標的とするギャップジャンクションリン酸化剤が好ましい。
【0109】
さらに他の抗コネキシン剤は、コネキシンカルボキシ末端ポリペプチドを含む。Gourdieら、WO2006/069181を参照されたい。
【0110】
ある別の態様において、ギャップジャンクション改変剤は、例えば、脂肪族アルコール;オクタノール;ヘプタノール;麻酔剤(例えば、ハロタン)、エトレン、フルオタン、プロポフォール、およびチオペンタール;アナンダミド;アリールアミノベンゾアート(FFA:親油性であるフルフェナム酸および類似の誘導体);カルベンオキソロン;カルコン(2’,5’−ジヒドロキシカルコン);CHF(クロロヒドロキシフラノン);CMCF(3−クロロ−4−(クロロメチル)−5−ヒドロキシ−2(5H)−フラノン);デキサメタゾン;ドキソルビシン(および他のアントラキノン誘導体);エイコサノイドであるトロンボキサンA(2)(TXA(2))模倣剤;NO(一酸化窒素);脂肪酸(例えば、アラキドン酸、オレイン酸、およびリポキシゲナーゼ代謝物);フェナム酸(フルフェナム酸(FFA)、ニフルミン酸(NFA)、およびメクロフェナム酸(MFA));ゲニステイン;グリチルレチン酸(GA):18a−グリチルレチン酸および18−β−グリチルレチン酸、ならびにこれらの誘導体;リンダン;リゾホスファチジン酸;メフロキン;メナジオン;2−メチル−1,4−ナフトキノン、ビタミンK(3);ナフェノピン;オカダ酸;オレアミド;オレイン酸;PH、細胞内酸性化によるゲーティング、例えば、酸性化剤;多価不飽和脂肪酸;脂肪酸GJIC阻害剤(例えば、オレイン酸およびアラキドン酸);キニジン;キニーネ;全 トランス−レチノイン酸;およびタモキシフェンを含みうる。
【0111】
用量、製剤、および投与
本発明のギャップジャンクション調節剤(本明細書で論じられる製剤の形態における場合が典型的)は、本明細書で言及される創傷のいずれかを有する対象など、治療を必要とする対象に投与することができる。こうして、対象の創傷を改善することができる。したがって、ギャップジャンクション調節剤および製剤は、治療による対象の身体の処置に用いることができる。これらは、本明細書で言及される創傷のいずれかを治療する医薬の製造において用いることができる。
【0112】
したがって、本発明により、細胞間連絡および/またはヘミチャネル連絡を一過性におよび部位特異的な形で下方調節しうる製剤が提供される。ギャップジャンクション調節剤は、所望の最終濃度を与える薬学的に許容される担体により処方されると好都合でありうる。
【0113】
ギャップジャンクション調節剤は、実質的に単離形態で存在しうる。生成物は、生成物の意図される目的に干渉しない担体または希釈剤と混合することができ、これをなおも実質的に単離状態にあるとみなしうることが理解される。本発明の生成物はまた、実質的に精製形態の場合もあり、この場合、生成物は一般に、ペプチド(または他のギャップジャンクション調節剤)の、または調製物の乾燥質量の、約80%、85%、または90%、例えば、少なくとも約95%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%を含む。
【0114】
意図される投与の経路に応じて、本発明の医薬品、医薬組成物、組合せ調製物、および薬剤は、例えば、溶液、懸濁液、点滴、軟膏剤(salves)、クリーム、ゲル、泡沫、スプレー、軟膏(ointment)、エマルジョン、ローション、ペイント、持続放出製剤、または粉末の形態をとる可能性があり、(1または複数の)有効成分の0.1%〜約1%、(1または複数の)有効成分の約1%〜約50%、(1または複数の)有効成分の約2%〜約60%、(1または複数の)有効成分の約2%〜約70%、または(1または複数の)有効成分の約90%までを含有することが典型的である。他の適切な製剤は、プロニックゲルベースの製剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)ベースの製剤、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(hyroxypropylmethylcellulose)(HPMC)ベースの製剤を含む。プルロニックゲルを含む適切な製剤は、例えば、約10〜約15パーセント、適切には約12パーセントを含む。他の有用な製剤は、徐放調製物または遅延放出調製物を含む。
【0115】
ゲルまたはゼリーは、ゼラチン、トラガカント、またはセルロース誘導体を含むがこれらに限定されない適切なゲル化剤を用いて作製することができ、保湿剤、皮膚軟化剤、および防腐剤としてグリセロールを含みうる。軟膏は、脂肪基剤、蝋基剤、または合成基剤中に組み込まれた有効成分からなる半固体調製物である。適切なクリームの例は、油中水エマルジョンおよび水中油エマルジョンを含むがこれらに限定されない。油中水クリームは、セチルアルコールまたはセトステアリルアルコールなどの脂肪族アルコールによる乳化剤および乳化蝋と類似するがこれらに限定されない特性を有する適切な乳化剤を用いて調合することができる。水中油クリームは、セトマクロゴール乳化蝋などの乳化剤を用いて調合することができる。適切な特性は、エマルジョンの粘稠度を変化させる能力、および広範なpHにわたる物理および化学の両面における安定性を含む。水溶性または混和性のクリーム基剤は、防腐剤系を含有する場合があり、また、許容される生理学的なpHを維持するように緩衝化することもできる。
【0116】
泡沫調製物は、不活性の噴霧剤を用いる適切なアプリケーターにより、加圧エアゾールキャニスターから送達するように調合することができる。泡沫基剤の製剤に適する賦形剤は、プロピレングリコール、乳化蝋、セチルアルコール、およびステアリン酸グリセリルを含むがこれらに限定されない。潜在的な防腐剤は、メチルパラベンおよびプロピルパラベンを含む。
【0117】
本発明のギャップジャンクション調節剤を薬学的に許容される担体または希釈剤と組合せて、医薬組成物を作製することが好ましい。適切な担体および希釈剤は、等張性の食塩液、例えば、リン酸塩緩衝化食塩液を含む。適切な希釈剤および賦形剤はまた、例えば、水、食塩液、デキストロース、グリセロールなど、およびこれらの組合せ物も含む。加えて、所望の場合、保湿剤または乳化剤、安定化剤またはph緩衝剤などの物質もまた存在しうる。
【0118】
「薬学的に許容される担体」という用語は、組成物を投与される個体に有害な抗体の生成をそれ自体では誘導せず、不適切な毒性なしに投与しうる任意の薬学的な担体を指す。適切な担体は、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、およびアミノ酸コポリマーなどの大型でゆっくりと代謝される高分子でありうる。
【0119】
例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などのような鉱酸塩、および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸塩など、薬学的に許容される塩もまた存在しうる。
【0120】
適切な担体物質は、局所投与用のクリーム、ローション、スプレー、泡沫、ゲル、エマルジョン、ローション、またはペイントのための基剤として一般に用いられる任意の担体またはビヒクルを含む。例は、乳化剤、炭化水素による基剤を含む不活性担体、乳化基剤、非毒性溶媒、または水溶性の基剤を含む。特に適切な例は、プルロニック、HPMC、CMC、および他のセルロース基剤の成分、ラノリン、硬質パラフィン、液体パラフィン、軟質黄色パラフィン、または軟質白色パラフィン、白色蜜蝋、黄色蜜蝋、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、ジメチコーン、乳化蝋、ミリスチン酸イソプロピル、微晶質蝋、オレイルアルコール、およびステアリルアルコールを含む。
【0121】
薬学的に許容される担体またはビヒクルは、ゲルであることが好ましく、非イオン性ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーゲル、例えば、プルロニックゲル、好ましくはPluronic F−127(BASF Corp.)であることが適切である。このゲルは、低温では液体であるが、生理学的温度では急速に固まり、これにより、ODN成分の放出が適応部位またはその部位にすぐの近接部位に限定されるので特に好ましい。
【0122】
カゼイン、ゼラチン、アルブミン、膠、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、またはポリビニルアルコールなどの補助剤もまた、本発明の製剤中に組み入れることができる。
【0123】
他の適切な製剤は、プロニックゲル基剤の製剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)基剤の製剤、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)基剤の製剤を含む。組成物は、局所投与、点滴投与、非経口投与、筋肉内投与、皮下投与、または経皮投与を含む、任意の所望の送達形態に応じて調合することができる。他の有用な製剤は、徐放調製物または遅延放出調製物を含む。
【0124】
所与の対象または創傷に対して有効な用量は、日常的な実験または当技術分野において公知であるかもしくは将来的に開発される他の方法により決定することができる。例えば、ある範囲の用量値を調合するために、細胞培養アッセイおよび動物試験を用いることができる。このような化合物の用量は、集団の少なくとも50%に対して治療的に有効な用量内にあり、このレベルにおいてほとんどまたはまったく毒性を示さないことが好ましい。
【0125】
本発明の方法および組成物において用いられる各ギャップジャンクション調節剤の有効用量は、多数の因子(用いられる1または複数の特定のギャップジャンクション調節剤、投与方式、投与頻度、治療される創傷、治療される創傷の重症度、投与経路、治療される患者部分集団の要件、またはその患者の異なる要件が、その患者に特異的な年齢、性別、体重、対象の治療創傷に起因しうる個々の患者の要件が挙げられる)に応じて異なりうる。
【0126】
患者にギャップジャンクション調節剤が投与される場合の用量は、患者の年齢、体重、および全般的な創傷、治療される創傷、ならびに投与される特定のギャップジャンクション調節剤など、各種の因子に依存する。
【0127】
適切な用量は対象の体重kg当たりのギャップジャンクション調節剤の量に基づく場合があり、これは、約0.01〜約40mg/体重kgなど、約0.001〜約100mg/体重kgを含む。しかし、適切な用量は、約0.01〜約0.050mg/体重kgなど、約0.001〜約0.1mg/体重kgでありうる。
【0128】
適切な用量は、約0.01〜約0.1mg/体重kgなど、約0.001〜約0.1mg/体重kgでありうる。しかし、適切な用量は、約0.001〜約0.050mg/体重kgを含む、約0.001〜約0.25mg/体重kgでありうる。代替的に、例えば、一部の実施形態において、各対象化合物の用量は一般に、体重kg当たり約1ng〜約1マイクログラム、体重kg当たり約1ng〜約0.1マイクログラム、体重kg当たり約1ng〜約10ng、体重kg当たり約10ng〜約0.1マイクログラム、体重kg当たり約0.1マイクログラム〜約1マイクログラム、体重kg当たり約20ng〜約100ng、体重kg当たり約0.001mg〜約100mg、体重kg当たり約0.01mg〜約10mg、または体重kg当たり約0.1mg〜約1mgの範囲である。一部の実施形態において、各対象化合物の用量は一般に、約0.001mg〜約0.01mg、体重kg当たり約0.01mg〜約0.1mg、体重kg当たり約0.1mg〜約1mg、または体重kg当たり約1mg〜約10mgの範囲である。複数種のギャップジャンクション調節剤を用いる場合、各ギャップジャンクション調節剤の用量は、他の用量と同じ範囲である必要はない。
【0129】
適用当たり約1〜100、200、300、400、500マイクログラム、および最大1ミリグラムの用量が適切である。ギャップジャンクション調節剤の投与量は、例えば、約1、約2、約3、約4、または約5マイクログラム、約5〜約10マイクログラム、約10〜約15マイクログラム、約15〜約20マイクログラム、約20〜約30マイクログラム、約30〜約40マイクログラム、約40〜約50マイクログラム、約50〜約75マイクログラム、約75〜約100マイクログラム、約100マイクログラム〜約250マイクログラム、および250マイクログラム〜約500マイクログラムを含む。0.5〜約1.0ミリグラム以上の投与量もまた提供される。
【0130】
代替的に、本発明の組成物中における各ギャップジャンクション調節剤の用量は、それが適用される領域のサイズ、長さ、深さ、面積、または容積に対する組成物の濃度を基準として決定することができる。例えば、一部の局所適用において、医薬組成物の用量は、医薬組成物の質量(例えば、グラム)または適用領域の長さ、深さ、面積、もしくは容積当たりの医薬組成物の濃度(例えば、μg/ul)に基づいて計算することができる。したがって、他の有用な用量は、創傷サイズの平方センチメートル当たり約1〜約10マイクログラムの範囲にある。一部の用量は、創傷サイズの平方センチメートル当たり約1〜2、約1〜5、約2〜4、約5〜7、および約8〜10マイクログラムである。他の有用な用量は、創傷サイズの平方センチメートル当たり約10マイクログラムを超え、創傷サイズの平方センチメートル当たり約15マイクログラム、創傷サイズの平方センチメートル当たり約20マイクログラム、創傷サイズの平方センチメートル当たり約25マイクログラム、創傷サイズの平方センチメートル当たり約30マイクログラム、創傷サイズの平方センチメートル当たり約35マイクログラム、創傷サイズの平方センチメートル当たり約40マイクログラム、創傷サイズの平方センチメートル当たり約50マイクログラム、および創傷サイズの平方センチメートル当たり約100〜約150マイクログラムを含む。他の用量は、平方センチメートル当たり約150〜200マイクログラム、平方センチメートル当たり約200〜250マイクログラム、平方センチメートル当たり約250〜300マイクログラム、平方センチメートル当たり約300〜350マイクログラム、平方センチメートル当たり約350〜400マイクログラム、および平方センチメートル当たり約400〜500マイクログラムを含む。さらに他の用量は、平方センチメートル当たり500〜1000マイクログラムの範囲の用量を含む。他の用量は、平方センチメートル当たり1〜10ミリグラムでありうる。持続放出製剤は、抗コネキシンペプチドおよび抗コネキシンペプチド模倣剤に特に適切でありうる。
【0131】
一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤組成物は、治療部位において、かつ/または治療部位に隣接して、約0.01マイクロモル濃度(μM)または0.05μM〜約200μM、または最大300μM、または最大1000μM、または最大2000μM、または最大3200μM以上の最終濃度、およびこれらの用量数値内にある任意の用量および用量範囲で適用することができる。抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤の組成物を含むギャップジャンクション調節剤は約0.05μM〜約100μMの最終濃度で適用されることが好ましく、ギャップジャンクション調節剤組成物は約1.0μM〜約50μMの最終濃度で適用されることがより好ましく、ギャップジャンクション調節剤組成物は約5〜10μM〜約30〜50μMの最終濃度で適用されることがより好ましい。加えて、混合されたギャップジャンクション調節剤組成物は約8μM〜約20μMの最終濃度で適用され、また代替的に、ギャップジャンクション調節剤組成物は約10μM〜約20μMの最終濃度、または約10〜約15μMの最終濃度で適用される。他の一部の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、約10μMの最終濃度で適用される。他の実施形態において、抗コネキシン剤は、約20μM、30μM、40μM、50μM、60μM、70μM、80μM、90μM、100μM、10〜200μM、200〜300μM、300〜400μM、400〜500μM、500〜600μM、600〜700μM、700〜800μM、800〜900μM、900〜1000、または1000〜1500μM、もしくは1500μM〜2000μM、もしくは2000μM〜3000μM以上の最終濃度、またはこれらの範囲内の任意の用量で適用される。
【0132】
さらに別の実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、約1〜15μMの最終濃度で適用される。
【0133】
ギャップジャンクション調節剤の投与量は、例えば、約0.1〜1、1〜2、2〜3、3〜4、または4〜5マイクログラム(μg)、約5〜約10μg、約10〜約15μg、約15〜約20μg、約20〜約30μg、約30〜約40μg、約40〜約50μg、約50〜約75μg、約75〜約100μg、約100μg〜約250μg、および250μg〜約500μgを含む。上記で言及した通り、0.5〜約1.0ミリグラム以上の投与量もまた提供される。
【0134】
投与容量は治療される部位のサイズに依存し、例えば、約25〜100μL〜約100〜200μL、約200〜500μL〜約500〜1000μLの範囲でありうる。より大きな治療部位には、ミリリットル用量もまた適切である。
【0135】
上記組成物は、投与後少なくとも約0.5〜1時間、少なくとも約1〜2時間、少なくとも約2〜4時間、少なくとも約4〜6時間、少なくとも約6〜8時間、少なくとも約8〜10時間、少なくとも約12時間、または少なくとも約24時間にわたって上記コネキシンタンパク質の発現を下方調節するか、またはギャップジャンクションの形成もしくはコネクソンの開口を調節するのに十分な量で投与されると好都合である。
【0136】
本発明の組成物および方法における各ギャップジャンクション調節剤の用量はまた、それが適用される領域のサイズ、長さ、深さ、面積、または体積に対する組成物の濃度を基準として決定することもできる。例えば、一部の局所適用および他の適用、例えば、点滴において、医薬組成物の用量は、医薬組成物の質量(例えば、マイクログラム)または適用領域の長さ、深さ、面積、もしくは体積当たりの医薬組成物の濃度(例えば、μg/ul)に基づいて計算することができる。
【0137】
複数種のギャップジャンクション調節剤を組み合わせて用いることにより、異なる成分の効果の発生および持続が補完的となりうるため、任意の個々の成分に対して必要とされる用量を低減することができる。このような組合せ療法において、異なる活性薬剤は、共に送達することもでき、個別に送達することもでき、また、同時に送達することもでき、1日のうちの異なる時点において送達することもできる。
【0138】
用量は、単一の適用で投与することもでき、適用を分割して投与することもできる。用量は、一度に投与することもでき、適用を反復することもできる。約毎週1回、または創傷治癒が停滞するかもしくは遅れると考えられうる場合に反復適用を行うことが典型的である。用量は、1〜7日間以上の間隔で適用することができる。例えば、毎週、もしくは隔週、もしくは毎月、または他の頻度、例えば、創傷治癒が遅れるかもしくは停滞する場合および時点において反復適用を行うことができる。代替的に、一部の眼科使用など一部の適応の場合、最高1時間ごとのより高頻度の投与を用いることができる。
【0139】
1または複数のギャップジャンクション調節剤を、同じ経路または異なる経路を介して投与することができる。1または複数のギャップジャンクション調節剤は、固体支持体(包帯材および他のマトリックスなど)および医薬製剤(ゲル、混合物、懸濁液、および軟膏など)を用いる局所投与を含むがこれらに限定されない局所投与(末梢投与または部位への直接投与)により送達されることが好ましい。一実施形態において、固体支持体は、生体適合膜または治療部位内への挿入を含む。別の実施形態において、固体支持体は、包帯材またはマトリックスを含む。本発明の一実施形態において、固体支持体組成物は、1または複数のギャップジャンクション調節剤が、アルギン酸塩、コラーゲン、または合成の生体吸収性ポリマーのマトリックスなどの徐放固体マトリックス中に分散される、徐放の固体支持体組成物でありうる。固体支持体組成物は、無菌であるかまたは低バイオバーデンであることが好ましい。一実施形態では、1つ以上のギャップジャンクション調節剤を含む洗浄液を用いることができる。
【0140】
製剤のギャップジャンクション調節剤成分を、ある時間、場合によって、約1〜2時間、約2〜4時間、約4〜6時間、約6〜8、または約24時間以上にわたり送達することは、一部の整形外科治療、またはより重度の傷害もしくは創傷、または慢性創傷もしくは治癒が遅延している創傷において特に有利でありうる。場合によって、細胞喪失は、手術部位をはるかに超えて、周囲の細胞にまで拡大しうる。このような喪失は、元の手術から24時間以内に生じる可能性があり、ギャップジャンクションによる細胞間連絡を介する。したがって、例えば、コネキシン発現の下方調節、またはコネクソン開口の遮断のための(1または複数の)ギャップジャンクション調節剤の投与により、細胞間連絡、またはコネクソン調節の場合には細胞外腔内への喪失が調節され、さらなる細胞の喪失もしくは傷害または傷害の帰結が最小化される。
【0141】
下方調節が誘導される部位および所望される治療効果の両方に送達時間が依存する一方で、約1〜2時間、約2〜4時間、約4〜6時間、約6〜8時間、または約24時間以上にわたる連続送達または徐放送達がもたらされる。本発明によれば、これは、ギャップジャンクション調節剤を、薬学的に許容される担体または媒体と併せた製剤中に組み入れることにより達成される。
【0142】
ある態様により、ギャップジャンクション調節剤は、局所投与(治療される部位において投与)することができる。一態様では、ギャップジャンクション調節剤を薬学的に許容される担体または希釈剤と混合して、医薬組成物を作製することが好ましい。適切な担体および希釈剤は、等張性の生理食塩液、例えば、リン酸緩衝生理食塩液を含む。別の態様において、組成物は、筋肉内投与、皮下投与、または経皮投与用に処方することができる。
【0143】
本明細書で説明される投与経路および用量は、任意の特定の患者および創傷に対する用量の指針だけのものとして意図される。
【0144】
包帯材およびマトリックス
一態様において、ギャップジャンクション調節剤は、包帯材またはマトリックスの形態で提供される。一部の実施形態では、本発明のギャップジャンクション調節剤が直接的な適用のための液体組成物、半固体組成物、もしくは固体組成物の形態で提供されるか、あるいは組成物が包帯材ガーゼもしくはマトリックスなどの固体接触層の表面へと適用されるか、またはこの中へと組み込まれる。包帯材組成物は、例えば、流体またはゲルの形態で提供することができる。1または複数のギャップジャンクション調節剤は、局所適用のための従来の医薬賦形剤と組合せて提供することができる。適切な担体は、プルロニックゲル、ポロキサマーゲル、セルロース誘導体(ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびこれらの混合物を含む)を含有するヒドロゲル;ならびにポリアクリル酸を含有するヒドロゲル(Carbopols)を含む。適切な担体はまた、局所医薬調製物に用いられるクリーム/軟膏、例えば、セトマクロゴール乳化軟膏に基づくクリームも含む。上記の担体は、アルギン酸塩(増粘剤または刺激剤として)、ベンジルアルコールなどの防腐剤、リン酸水素二ナトリウム/リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整のための緩衝液、塩化ナトリウムなどの浸透圧を調整するための薬剤、およびEDTAなどの安定化剤を含みうる。
【0145】
一実施形態において、1もしくは複数の抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤、例えば、抗コネキシン43ペプチドまたは抗コネキシン43ペプチド模倣剤は、天然または合成のマトリックス上において投与される。
【0146】
適切な包帯材またはマトリックスは、例えば、1または複数のギャップジャンクション調節剤を伴う以下のものを含みうる。コネキシン43ギャップジャンクション調節剤が好ましい。
【0147】
1)吸収材:適切な吸収材は、例えば、セルロース、木綿、またはレーヨンなどの高度に吸収性の繊維層と組み合わせた、例えば、半接着質または非接着層をもたらしうる、例えば、吸収性包帯材を含みうる。代替的に、吸収材は、主要な(primary)包帯材または補助的な(secondary)包帯材として用いることができる。
【0148】
2)アルギン酸塩:適切なアルギン酸塩は、例えば、天然の多糖繊維または海藻に由来するキセロゲルからなる不織パッド、非接着パッド、およびリボンである包帯材を含む。適切なアルギン酸塩包帯材は、例えば、滲出物との接触の場合イオン交換過程を介して湿潤ゲルを形成しうる。一部の実施形態において、アルギン酸塩包帯材は、やわらかく快適であり、不規則的な形状をした領域上での填塞、陥入、または適合が容易であるように設計される。一部の実施形態において、アルギン酸塩包帯材は、第2の包帯材と共に用いることができる。
【0149】
3)抗菌包帯材:適切な抗菌包帯材は、例えば、例えば銀およびポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)などの生体活性薬剤の送達を促進して、これが必要であるかまたは望ましい場所で、感染に対する効力を維持しうる包帯材を含みうる。一部の実施形態において、適切な抗菌包帯材は、例えば、スポンジ、浸透化織りガーゼ、フィルム包帯材、吸収性製品、アイランド包帯材、ナイロン繊維、非接着バリア、または材料の組合せとして入手可能でありうる。
【0150】
4)生体物質および生合成物質:適した生体物質包帯材または生合成物質包帯材は、例えば、天然供給源に由来するゲル、溶液、または半透性シートを含みうる。一部の実施形態において、ゲルまたは溶液は、治療部位に適用され、バリア保護のための包帯材により被覆される。別の実施形態では、膜として作用する可能性があり、単回の適用後においてその場に残存するシートをin situで配置する。
【0151】
5)コラーゲン:適切なコラーゲン包帯材は、例えば、ウシ、ブタ、もしくは鳥類の供給源、または他の天然の供給源もしくはドナーに由来する、例えば、ゲル、パッド、粒子、ペースト、粉末、シート、または溶液を含みうる。一部の実施形態において、コラーゲン包帯材は、治療部位における滲出物と相互作用してゲルを形成しうる。一部の実施形態において、コラーゲン包帯材は、補助的な包帯材と組み合わせて用いることができる。
【0152】
6)複合材料:適切な複合材料包帯材は、例えば、物理的に異なる成分を単一の生成物へと混合して、例えば、細菌バリア、吸収、および接着など複数の機能を提供する包帯材を含みうる。一部の実施形態において、複合材料包帯材は、例えば、複数の層からなり、半接着パッドまたは非接着パッドを組み込む。一部の実施形態において、複合材料はまた、例えば、接着性の輪郭を有する不織布製テープまたは透明フィルムも含む。他の一部の実施形態において、複合材料包帯材は、例えば、主要な包帯材としても補助的な包帯材としても機能することが可能であり、さらに別の実施形態において、包帯材は、局所医薬組成物と組み合わせて用いることができる。
【0153】
7)接触層:適切な接触層包帯材は、例えば、ある領域上に配置されて、例えば、治療部位に適用された他の薬剤または包帯材との直接的な接触から組織を保護する、薄型の非接着シートを含みうる。一部の実施形態において、接触層は、治療部位領域の形状に調和するように配置することができ、また多孔性であるため、透過する滲出物を、上部の補助的な包帯材に吸収させることができる。さらに別の実施形態において、接触層包帯材は、局所医薬組成物と組み合わせて用いることができる。
【0154】
8)弾性包帯:適切な弾性包帯は、例えば、伸縮して身体の外形に調和する包帯材を含みうる。一部の実施形態において、繊維成分は、例えば、木綿、ポリエステル、レーヨン、またはナイロンを含みうる。他の一部の実施形態において、弾性包帯は、例えば、第2層としてのまたは補助的包帯材としての吸収をもたらし、被覆をその場に保持するか、圧力を加えるか、または治療部位にクッションを与えることができる。さらに別の実施形態において、接触層包帯材は、局所医薬組成物と組み合わせて用いることができる。
【0155】
9)発泡体:適切な発泡体包帯材は、例えば、流体の保持が可能な小さな開放セルを有する、発泡ポリマー溶液(ポリウレタンを含む)のシートおよび他の形状を含みうる。例示的な発泡体は、例えば、他の材料と組み合わせて浸透化または層状化することができる。一部の実施形態では、発泡体の厚さおよび組成に基づいて吸収能を調製することができる。他の一部の実施形態において、治療部位と接触する領域は、取り外しを容易とするために非接着性でありうる。さらに別の実施形態において、発泡体は、接着性の輪郭および/または抗感染性バリアとして働きうる透明のフィルムコーティングと組み合わせて用いることができる。
【0156】
10)ガーゼおよび不織包帯材:適切なガーゼ包帯材および織地包帯材は、例えば、吸収性の程度が多様な乾燥織地スポンジまたは吸収性の程度が多様な乾燥不織スポンジおよび吸収性の程度が多様な乾燥織地ラップまたは吸収性の程度が多様な乾燥不織ラップを含みうる。例示的な繊維組成物は、例えば、木綿、ポリエステル、レーヨンを含みうる。一部の実施形態において、ガーゼおよび不織包帯材は、バルクにおいて滅菌の場合であれ非滅菌の場合であれ、また、接着性の輪郭を伴う場合であれ伴わない場合であれ入手可能でありうる。例示的なガーゼ包帯材および不織包帯材は、各種の治療部位を消毒、パッキング、被覆に用いることができる。
【0157】
11)親水コロイド:適切な親水コロイド包帯材は、例えば、ゼラチン、ペクチン、またはカルボキシメチルセルロースからなるウェハー、粉末、またはペーストを含みうる。一部の実施形態において、ウェハーは自己接着性であり、接着性の輪郭を伴う場合であれ伴わない場合であれ入手可能であり、また多種多様な形状およびサイズで入手可能である。例示的なハイドロコロイドは、外形合わせを必要とする領域において有用である。一部の実施形態において、粉末およびペーストの親水コロイドは、第2の包帯材と組み合わせて用いることができる。
【0158】
12)ヒドロゲル(アモルファス):適切なアモルファスヒドロゲル包帯材は、例えば、水分を与え、湿潤性の治癒環境を維持し、治療部位に水分を補給するように設計された、水、ポリマー、および不定形の他の成分による製剤を含みうる。一部の実施形態において、ヒドロゲルは、補助的な包帯材カバーと組み合わせて用いることができる。
【0159】
13)ヒドロゲル:浸透化包帯材:適切な浸透化ヒドロゲル包帯材は、例えば、アモルファスヒドロゲルに浸したガーゼおよび不織スポンジ、ロープ、ならびにストリップを含みうる。アモルファスヒドロゲルは、例えば、乾燥治療部位に水分を与え、湿潤性の治癒環境を維持するように設計された、水、ポリマー、および不定形の他の成分による製剤を含みうる。
【0160】
14)ヒドロゲルシート:適切なヒドロゲルシートは、例えば、水中において不溶性であり、膨潤により水溶液と相互作用する、架橋された親水性ポリマーの三次元ネットワークを含みうる。例示的なヒドロゲルは、高度に適合性でありそして透過性であり、それらの組成に応じて、広範な量のドレナージを吸収できる。一部の実施形態において、ヒドロゲルは、治療部位に対して非接着性であるか、または取り外しが容易であるように処置される。
【0161】
15)浸透化包帯材:適切な浸透化包帯材は、例えば、溶液、エマルジョン、油、ゲル、または例えば、食塩液、油、亜鉛塩、ワセリン、ゼロフォーム(xeroform)、およびスカーレットレッド(scarlet red)のほか、本明細書に記載の化合物を含む、他の一部の薬学的に活性な化合物もしくは担体薬剤に浸したガーゼおよび不織スポンジ、ロープ、ならびにストリップを含みうる。
【0162】
16)シリコンゲルシート:適切なシリコンゲルシート包帯材は、例えば、メッシュまたは布により補強されるかまたはこれに結合した架橋ポリマーからなる軟質カバーを含みうる。
【0163】
17)溶液:適切な液体包帯材は、例えば、細胞外マトリックス中に見出される多タンパク質物質および他のエレメントの混合物を含みうる。一部の実施形態では、デブリドマンおよび洗浄の後において例示的な溶液を治療部位に適用し、次いで、吸収性包帯材または非接着性パッドにより被覆することができる。
【0164】
18)透明フィルム:適切な透明フィルム包帯材は、片面が接着剤によりコーティングされる、多様な厚さのポリマー膜を含みうる。一部の実施形態において、透明フィルムは液体、水、および細菌に対しては不透過性であるが、水蒸気および大気中の気体に対しては透過性である。一部の実施形態では、透明性により、治療部位が視覚化される。
【0165】
19)充填剤:適切な充填剤包帯材は、例えば、ビーズ、クリーム、発泡体、ゲル、軟膏、パッド、ペースト、クッション(pillow)、粉末、ストランド、または他の調合物を含みうる。一部の実施形態において、充填剤は非接着性であり、経時放出型抗菌剤を含みうる。例示的な充填剤は、湿潤環境の維持、滲出物の管理、また、例えば、部分層創傷および全層創傷、感染創傷、排液性創傷、およびパッキングを要する深部創傷の治療に有用でありうる。
【0166】
本明細書で言及または説明される疾患、障害、および/または状態を有するか、またはこれらを有することが疑われる対象を治療する方法のいずれかでは、本明細書で説明される用量、剤形、製剤、および/または組成物のいずれかが投与されうる。
【0167】
ペプチドおよび他のギャップジャンクション調節組成物
本発明は、ギャップジャンクション調節化合物(ペプチド模倣剤を含む)を含む医薬組成物に関する。組成物は、例えば、慢性創傷、また本明細書で説明される他の創傷を含む、治癒が遅延しているかまたは困難な創傷の治癒を増強または促進するのに有用である。同様に、他の組織損傷の場合、本発明の方法および組成物は、創傷治癒過程の促進および炎症の軽減の両方において有効である。したがって、本発明の製剤および組成物は、慢性創傷および治癒の遅い創傷、ならびに本明細書で説明される他の創傷の治療において明らかな利益をもたらす。
【0168】
一部の実施形態において、本発明の組成物は、有効量の1または複数のギャップジャンクション調節剤を含む。一実施形態において、組成物は、1つのコネキシンだけに関連するギャップジャンクションを標的とするギャップジャンクション調節剤を含有する。このギャップジャンクションは、コネキシン43タンパク質と関連することが最も好ましい。
【0169】
代替的に、組成物は、複数種のコネキシンタンパク質と関連するギャップジャンクションを標的とする1または複数のギャップジャンクション調節剤を含みうる。調節物質が対象とする1種のコネキシンタンパク質は、コネキシン43であることが好ましい。調節物質が対象とする他のギャップジャンクションは、例えば、コネキシン26、30、30.3、31.1、32、36、37、40、40.1、44.6、45、および46と関連するギャップジャンクションを含みうる。
【0170】
他の実施形態において、本発明の組成物は、(a)有効量の1または複数のギャップジャンクション調節剤と、(b)薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む。一態様において、本発明は、(a)1または複数のポリペプチドと、(b)薬学的に許容される担体または希釈剤とを提供する。好ましい実施形態において、ポリペプチドは、コネキシン26、31.1、32、37、40、43、もしくは45のペプチド模倣剤またはこの相同体である。他の実施形態において、ポリペプチドは、コネキシン30、30.3、36、40.1、44.6、45、もしくは46のペプチド模倣剤またはこの相同体である。
【0171】
一態様において、本発明は、(a)1または複数の結合タンパク質と、(b)薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む医薬組成物を提供する。一実施形態において、結合タンパク質は抗体である。好ましい実施形態において、結合タンパク質は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント、単鎖抗体、単鎖Fv、単鎖結合分子である。一実施形態において、結合タンパク質、例えば、抗体は、コネキシンポリペプチド、好ましくは、コネキシン26、コネキシン30、コネキシン31.1、コネキシン32、コネキシン37、コネキシン40、もしくはコネキシン45のポリペプチドまたはこの任意の部分に特異的に結合する。好ましい一実施形態において、結合タンパク質、例えば、抗体は、コネキシン43ポリペプチドまたはこの任意の部分に特異的に結合する。一実施形態において、結合タンパク質はコネキシンポリペプチドに特異的に結合し、約10−1以上、約10−1以上、約10−1以上、約10−1の親和性を有する。約10−1、約1010−1、約1011−1、および約1012−1以上の親和性など、約10−1をさらに超える親和性が適する。
【0172】
別の態様において、医薬組成物は、(a)1または複数の結合タンパク質と、(b)薬学的に許容される担体または希釈剤とを含み、結合タンパク質はペプチド阻害剤である。一実施形態において、ペプチド阻害剤は、コネキシン26、コネキシン30、コネキシン31.1、コネキシン32、コネキシン37、コネキシン40、またはコネキシン45の膜貫通領域に対応するアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態において、ペプチド阻害剤は、コネキシン43の膜貫通領域に対応するアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、ペプチド阻害剤は、配列番号1に記載の約5〜20の連続アミノ酸を含む。別の実施形態において、ペプチド阻害剤は、配列番号2に記載の約5〜20の連続アミノ酸を含む。別の実施形態において、ペプチド阻害剤は、配列番号2の位置37〜76および178〜208にある領域に対応するアミノ酸配列を含む。別の実施形態において、ペプチド阻害剤は、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、または配列番号26に記載の約5〜20の連続アミノ酸を含む。別の実施形態において、ペプチド阻害剤は、配列番号27〜54に記載の約8〜約11の連続アミノ酸を含む。別の実施形態において、ペプチド阻害剤は、配列番号18、19、または55〜68に記載の約8〜約15の連続アミノ酸を含む。さらに別の実施形態において、ペプチド阻害剤は、1または複数の保存的アミノ酸変化を有する。
【0173】
治療
本発明は、各種の疾患、障害、および創傷を全体的または部分的に治療および/または予防する方法を含み、例えば、予測される速度で治癒しない創傷を治療する方法を含む。これらは、治癒が遅延しているかまたは困難な創傷(治癒が遅延しているかまたは不完全な創傷を含む)、および慢性創傷を含む。予測される速度で治癒しない創傷の例は、糖尿病性潰瘍、血管炎性潰瘍、動脈性潰瘍、静脈性潰瘍、静脈鬱血性潰瘍、熱傷潰瘍、感染性潰瘍、外傷誘導性潰瘍、褥瘡、および褥瘡性潰瘍を含む。予測される速度で治癒しない他の創傷は、離開創を含む。
【0174】
本発明はまた、(a)創傷炎症の慢性自己永続状態、(b)創傷細胞外マトリックスの欠損および欠陥、(c)(老化)創傷細胞(例えば、線維芽細胞)の応答不十分、細胞外マトリックス生成の制約、(d)必要な細胞外マトリックスの組織化の欠如および移動のための足場の欠如に部分的に起因する再上皮形成不全、(e)炎症およびタンパク質分解活性の遷延による、例えば、糖尿病性潰瘍、褥瘡(褥瘡性潰瘍)、静脈性潰瘍、および動脈性潰瘍を含む潰瘍性病変の惹起、(f)罹患領域におけるマトリックスの進行性沈着、(g)修復時間の長期化、(h)創傷収縮の低減、(i)再上皮形成の遅延、ならびに/または(j)肉芽組織の肥厚を全体的または部分的に特徴とする慢性創傷を、全体的または部分的に治療および/または予防する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを投与するステップを含む方法も含む。
【0175】
本発明はまた、(a)炎症期の遷延、(b)細胞外マトリックスの形成遅延、および/または(c)上皮形成速度の低減を全体的または部分的に特徴とする、治癒が遅延しているかまたは困難な創傷を、全体的または部分的に治療および/または予防する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを投与するステップを含む方法も含む。
【0176】
本発明はまた、動脈性潰瘍または潰瘍形成を全体的または部分的に治療および/または予防する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む組成物を投与するステップを含む方法も含む。一実施形態において、動脈性潰瘍または潰瘍形成は、完全または部分的な動脈遮断により引き起こされる。
【0177】
本発明はまた、静脈性潰瘍または潰瘍形成を全体的または部分的に治療および/または予防する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む組成物を投与するステップを含む方法も含む。一実施形態において、静脈性潰瘍または潰瘍形成は、静脈弁の機能不全および関連する血管疾患により引き起こされる。
【0178】
本発明はまた、静脈鬱血性潰瘍または潰瘍形成を全体的または部分的に治療および/または予防する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む組成物を投与するステップを含む方法も含む。一実施形態において、静脈鬱血性潰瘍または潰瘍形成は、下肢の慢性受動性静脈鬱血および/または結果として生じる局所的低酸素症により引き起こされる。
【0179】
本発明はまた、糖尿病性足部潰瘍または潰瘍形成を含む糖尿病性潰瘍を全体的または部分的に治療および/または予防する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む組成物を投与するステップを含む方法も含む。一実施形態において、糖尿病性足部潰瘍または潰瘍形成は、糖尿病の神経学的合併症および/または血管合併症により引き起こされる。
【0180】
本発明はまた、外傷性潰瘍または潰瘍形成を全体的または部分的に治療および/または予防する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む組成物を投与するステップを含む方法も含む。一実施形態において、外傷性潰瘍または潰瘍形成は、身体に対する外傷性傷害と関連する。
【0181】
本発明はまた、熱傷潰瘍または潰瘍形成を全体的または部分的に治療および/または予防する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む組成物を投与するステップを含む方法も含む。一実施形態において、熱傷潰瘍または潰瘍形成は、身体に対する熱傷傷害と関連する。
【0182】
本発明はまた、褥瘡性潰瘍または潰瘍形成を全体的または部分的に治療および/または予防する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む組成物を投与するステップを含む方法も含む。
【0183】
本発明はまた、感染性潰瘍または潰瘍形成を全体的または部分的に治療および/または予防する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む組成物を投与するステップを含む方法も含む。
【0184】
本発明はまた、壊疽性膿皮症を全体的または部分的に治療および/または予防する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む組成物を投与するステップを含む方法も含む。
【0185】
本発明はまた、離開創を全体的または部分的に治療および/または予防する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む組成物を投与するステップを含む方法も含む。
【0186】
本発明はまた、持続性上皮欠損を全体的または部分的に治療および/または予防する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む組成物を投与するステップを含む方法も含む。
【0187】
本発明はまた、褥瘡または潰瘍形成を全体的または部分的に治療および/または予防する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤と、薬学的に許容される担体または希釈剤とを含む組成物を投与するステップを含む方法も含む。一部の実施形態において、前記褥瘡または潰瘍形成は、AHCPR病期1、病期2、病期3、および/または病期4の潰瘍または潰瘍形成である。
【0188】
またさらなる実施形態において、本発明は、患者における創傷治癒を促進する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤を含む組成物を、前記創傷部位にあり、かつ/または同部位にすぐ隣接するギャップジャンクションまたはヘミチャネルを閉鎖するのに有効な量において、予測される速度で治癒しない創傷に投与するステップを含む方法を提供する。
【0189】
さらなる実施形態において、本発明は、患者における炎症を軽減する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤を含む組成物を、前記創傷部位にあり、かつ/または同部位にすぐ隣接するギャップジャンクションまたはヘミチャネルを閉鎖するのに有効な量において、予測される速度で治癒しない創傷に投与するステップを含む方法を提供する。
【0190】
またさらなる実施形態において、本発明は、患者における創傷治癒を促進する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤を含む組成物を、前記創傷部位にあり、かつ/または同部位にすぐ隣接するギャップジャンクションまたはヘミチャネルを遮断するのに有効な量において、予測される速度で治癒しない創傷に投与するステップを含む方法を提供する。
【0191】
さらなる実施形態において、本発明は、患者における炎症を軽減する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤を含む組成物を、前記創傷部位にあり、かつ/または同部位にすぐ隣接するギャップジャンクションまたはヘミチャネルを遮断するのに有効な量において、予測される速度で治癒しない創傷に投与するステップを含む方法を提供する。
【0192】
またさらなる実施形態において、本発明は、患者における創傷治癒を促進する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤を含む組成物を、前記創傷部位にあり、かつ/または同部位にすぐ隣接するギャップジャンクションまたはヘミチャネルの活性を全体的または部分的に阻止または低減するのに有効な量において、予測される速度で治癒しない創傷に投与するステップを含む方法を提供する。
【0193】
さらなる実施形態において、本発明は、患者における炎症を軽減する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤を含む組成物を、前記創傷部位にあり、かつ/または同部位にすぐ隣接するギャップジャンクションまたはヘミチャネルの活性を全体的または部分的に阻止または低減するのに有効な量において、予測される速度で治癒しない創傷に投与するステップを含む方法を提供する。
【0194】
またさらなる実施形態において、本発明は、患者における創傷治癒を促進する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤を含む組成物を、前記創傷部位にあり、かつ/または同部位にすぐ隣接するギャップジャンクションまたはヘミチャネルの開口を全体的または部分的に阻止または低減するのに有効な量において、予測される速度で治癒しない創傷に投与するステップを含む方法を提供する。
【0195】
さらなる実施形態において、本発明は、患者における炎症を軽減する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤を含む組成物を、前記創傷部位にあり、かつ/または同部位にすぐ隣接するギャップジャンクションまたはヘミチャネルの開口を全体的または部分的に阻止または低減するのに有効な量において、予測される速度で治癒しない創傷に投与するステップを含む方法を提供する。
【0196】
またさらなる実施形態において、本発明は、患者における創傷治癒を促進する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤を含む組成物を、前記創傷部位にあり、かつ/または同部位にすぐ隣接する細胞外のヘミチャネル連絡を全体的または部分的に阻止または低減するのに有効な量において、予測される速度で治癒しない創傷に投与するステップを含む方法を提供する。
【0197】
さらなる実施形態において、本発明は、患者における炎症を軽減する方法であって、1または複数のギャップジャンクション調節剤を含む組成物を、前記創傷部位にあり、かつ/または同部位にすぐ隣接する細胞外のヘミチャネル連絡を全体的または部分的に阻止または低減するのに有効な量において、予測される速度で治癒しない創傷に投与するステップを含む方法を提供する。
【0198】
一態様により、ギャップジャンクション調節剤は、再上皮形成の促進を介して上皮基底細胞の分裂および増殖を調節することにより、創傷治癒を促進する。
【0199】
一態様において、本発明は、対象における創傷治癒を促進または改善する方法であって、上皮基底細胞の分裂および増殖を調節するのに有効な量における1または複数のギャップジャンクション調節剤の投与を含む方法を対象とする。一実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、上皮基底細胞の分裂および増殖を調節するのに有効な抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤である。一実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、コネキシン26ギャップジャンクション調節剤、コネキシン43ギャップジャンクション調節剤、またはこれらの混合物である。
【0200】
一態様において、本発明は、創傷治癒を促進または改善する方法であって、外層におけるケラチン分泌を調節するのに有効な量における1または複数のギャップジャンクション調節剤の投与を含む方法を対象とする。一実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、外層におけるケラチン分泌を調節するのに有効な抗コネキシンペプチドまたは抗コネキシンペプチド模倣剤である。一実施形態において、ギャップジャンクション調節剤は、コネキシン43ギャップジャンクション調節剤、コネキシン31.1ギャップジャンクション調節剤、またはこれらの混合物である。
【0201】
キットおよび製品
一態様において、本発明は、予測される速度で治癒しない創傷を治療するためのキットを提供する。
【0202】
キットは、本明細書で説明される1または複数の組成物を含みうる。例えば、キットは、有効量の1または複数のギャップジャンクション調節剤を含む組成物を含みうる。一実施形態において、キットは、有効量の1または複数のポリペプチドを含む組成物を含む。一実施形態において、キットは、有効量の1または複数のポリペプチド相同体を含む組成物を含む。一実施形態において、キットは、有効量の1または複数のコネキシンリン酸化化合物を含む組成物を含む。
【0203】
別の態様において、本発明は、有効量の1または複数のギャップジャンクション調節剤を含有する容器と、予測される速度で治癒しない創傷を有する対象を治療するための使用を含む使用のための指示書とを含む製品を含む。
【0204】
したがって、本発明により、それにより細胞間連絡および/またはヘミチャネルの連絡、結合、もしくは開口が、一過性におよび部位特異的な形で下方調節されうる方法、組成物、形態、製剤、キット、および製品が提供される。したがって、製剤は、療法および他の治療において適用される。
【0205】
ここで、例示だけを目的として提示されるものであり、本発明の範囲に対する限定を構成するものではないと理解される以下の実施例を参照して、本発明の各態様について記載する。
【実施例】
【0206】
(実施例1)
ペプチドの親和性結合アッセイ
プルダウンアッセイを使用してタンパク質−ペプチド相互作用を確認することができる。このアッセイでは、試験ギャップジャンクション調節剤(例えば、ペプチド)を、セルロース、アガロースまたはニッケルビーズへの付着を介してタンパク質結合パートナーを捕捉および「プルダウン」するために使用されるタンパク質反応性または融合タグすなわち、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)でタグ付けする。SDS−PAGEローディングバッファーまたは代替として競合的な分析物の溶出を利用した複合体の溶出に続いて、SDS−PAGEゲル上に流してウェスタン解析検出法を使用することによって、複合体を可視化する。当技術分野において公知の結合アッセイを行う方法は、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Protein−Protein Interactions:A Molecular Cloning Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、37〜57頁(2002年)のEinarson, M.B. and Orlinick, J.R.、「Identification of Protein−Protein Interactions with Glutathione S−Transferase Fusion Proteins」;Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、18.55〜18.59頁(2001年)のEinarson, M.B.、「Detection of Protein−Protein Interactions Using the GST Fusion Protein Pulldown Technique」;およびProtein−Protein Interactions, Methods and Applications, Methods in Molecular Biology、261号、Fu, H.編、Humana Press、Totowa、N.J.、175〜186頁(2004年)のVikis, H.G. and Guan, K.L.、「Glutathione−S−Transferase−Fusion Based Assays for Studying Protein−Protein Interactions」において記述されている。
【0207】
タンパク質および試験ペプチドの相互作用および親和性を、リアルタイムでこれらの相互作用の測定を可能にする表面プラズモン共鳴技術(BIAcoreによって利用可能)を使用して評価する。このアプローチは、低親和性タンパク質相互作用を検出するという利点を有する。表面プラズモン共鳴は、生物特異的表面で分子の溶液濃度の変化を測定するために使用される光学現象による。このシグナルは、全内部反射条件下で薄い金属フィルムにおいて発生する。このシグナルは、表面と接触している溶液の屈折率によって決定する。生物特異的相互作用が起こる場合、溶液中の分子は屈折率の変化を示し、したがって測定可能なシグナルを生じさせる。
【0208】
典型的には、タンパク質を、いくつかの可能な方法のうちの1つによってカルボキシメチルデキストラン−金表面上に固定する。相互作用する対象のペプチドをこの表面上に注入し、結合動態をリアルタイムで測定する。当技術分野において公知の結合アッセイを行う方法は、Schuck, P.、「Reliable determination of binding affinity and kinetics using surface plasmon resonance biosensors」、Currrent Opinion in Biotechnology、8巻(4号):498〜502頁(1997年);およびZhang, X.、Oglesbee, M. 「Use of surface plasmon resonance for the measurement of low affinity binding interactions between HSP72 and measles virus nucleocapsid protein.」Biological Procedures Online.5巻(1号):170〜181頁(2003年)において記述されている。
【0209】
(実施例2)
機能アッセイ
機能アッセイを使用して、試験ギャップジャンクション調節ペプチド模倣体がギャップジャンクションまたはヘミチャネルの穴を遮断できるかどうかを判定することができる。HeLaヒト子宮頸癌細胞株を、Cx43、Cx45、または対象とする別の特定のコネキシンで安定にトランスフェクトする。細胞を、コネキシンヘミチャネルを活性化することが示されている(Braet, K.ら、「Pharmacological sensitivity of ATP release triggered by photoliberation of inositol−1,4,5−trisphosphate and zero extracellular calcium in brain endothelial cells」、Journal of Cellular Physiology、197巻(2号):205〜213頁(2003年);DeVries, S.H. and E.A. Schwartz、「Hemi−gap−junction channels in solitary horizontal cells of the catfish retina」、Journal of Physiology 445:201〜230頁(1992年);およびLi, H.ら、「Properties and regulation of gap junctional hemichannels in the plasma membranes of cultured cells」、Journal of Cell Biology 134巻(4号):1019〜1030頁(1996年)を参照されたい)無カルシウム溶液(1mMのEGTAを含有するHBSS−HEPES)中でインキュベートする。細胞を、1mMのEGTAおよび2mMのヨウ化プロピジウムを含有するHBSS−HEPES溶液中で30分間インキュベートする。ヨウ化プロピジウムは、膜不透過性であるが、その低分子量のためにギャップジャンクション/ヘミチャネルから入ることができる蛍光色素である。ヨウ化プロピジウムの取り込みは、蛍光顕微鏡検査法を使用して測定される。細胞をペプチド模倣体の存在下でヨウ化プロピジウムとインキュベートし、これらが色素取り込みを妨害することができるかどうかを判定する。
【0210】
(実施例3)
ペプチド模倣体の設計および試験
ペプチド模倣体は、コネクソン連結過程に関与すると考えられている(Footeら、J Cell Biol 140巻(5号):1187〜97頁、(1998年))コネキシン43細胞外ループ領域と同じアミノ酸配列を有するように設計することができる。いくつかのペプチドは、増強された機能阻害を示しうるアルファヘリックス膜貫通サブユニットの外側部分にマッチするアミノ酸を含む。これらのペプチドのすべてが、細胞外ループ領域におけるコネキシン配列の保存のために必ずしもコネキシン特異的というわけではない。
【0211】
ペプチドまたはそれらの変種は、例えば、Stewartら、Solid Phase Peptide Synthesis、W. H. Freeman Co.、San Francisco(1969年);Merrifield, J、Am. Chem. Soc.、85巻 2149頁(1963年); Meienhofer、「Hormonal Proteins and Peptides」C.H. Li編、2巻(Academic Press、1973年)、48〜267頁;およびBavaay and Merrifield、「The Peptides」E. Gross and F. Meienhofer編、2巻(Academic Press、1980年)3〜285頁に記述されている固相ペプチド合成法によって、in vitroで合成することができる。これらのペプチドは、免疫親和性またはイオン交換カラムにおける分画;エタノール沈殿;逆相HPLC;シリカによる、またはDEAEなどのアニオン交換樹脂によるクロマトグラフィ;クロマトフォーカシング;SDS−PAGE;硫安沈殿;例えば、Sephadex G−75を使用したゲル濾過;リガンド親和性クロマトグラフィ;または非極性溶媒もしくは非極性/極性溶媒混合物からの結晶化もしくは沈殿によってさらに精製することができる。
【0212】
試験ペプチドを使用して、2つの機能試験を行うことができる。これらの機能試験は、(i)脊髄切片中の細胞による色素(Lucifer Yellow)取り込みの遮断、および(ii)脊髄分節の浮腫の予防(陽性対照としてコネキシン43特異的アンチセンスodnを使用して)であった。ペプチドは、Sigma−Genosys(Australia)によって合成する。
【0213】
脊髄切片中の細胞による色素(Lucifer Yellow)取り込みの遮断。
【0214】
Lucifer Yellowは、小さな水溶性の、固定可能な、ギャップジャンクションチャネルを介して細胞から細胞へ通過することができるが細胞膜は通過できない色素である。細胞外培地へのLucifer Yellowの添加は、開いているギャップジャンクション/ヘミチャネルの存在を確認することを可能にする。色素は細胞の細胞質において見えるようになり、これは開いているチャネルを表す。
【0215】
Wistar p7ラットに二酸化炭素で麻酔をかけ、ただちに断頭する。脊髄を切除し、pH7.4の冷ハンクス平衡塩溶液(HBSS)に移す。余分の枝神経および靭帯を除去し、脊髄を手動の組織チョッパーに移し、一連の500ミクロンの薄さの切片をカットする。切片により引き起こされる損傷は、切片全体においてコネキシン43の上方制御を誘導し(ギャップジャンクションを介する傍観者効果により増幅される)、コネキシンヘミチャネルの発現をもたらす。切片を、24ウェルプレートの直径3cmのMilliporeインサート上に置き、ペプチド模倣体の存在下で培地中で培養する。すべての試験した9個のペプチドの最終濃度は、500マイクロモルであった。対照は、ペプチド添加なし、またはいくつかのペプチドは、これらの化合物中に再溶解されうる場合は1%エタノール含有もしくは1%DMSO添加(ペプチドは凍結乾燥されて与えられる)であった。
【0216】
切片を37℃で4時間インキュベートし、次いで1ml当たり2.5mgのLucifer Yellowを各ウェルに30分間加える(暗所で)。次いで組織をPBS中で2回すすぎ、さらに10分の洗浄を3回行い、切片を4%パラホルムアルデヒドで固定する。次いでこれらを、Leica TCS4Dレーザー走査型共焦点顕微鏡を使用して観察し、細胞中への色素取り込みがあるかどうかを評価する。各試料中への色素取り込みの量によって有効性を測定する。
【0217】
脊髄における浮腫の予防
「Formulations Comprising Antisense Nucleotides to Connexins」という表題のBecker, D. and Green. C.のWO2000/44409の実施例1に記述されている系を使用して、培養された脊髄分節に対する試験ペプチドの効果を検査し、これらの腫脹を阻止する能力を試験する。
【0218】
DMSOを対照として使用する。5mm長の脊髄分節を、HBSS中で24ウェルプレートの別々のウェル中に置く。Superglueの小液滴を使用して、分節をウェルの底部に保持する。HBSSを除去し、500マイクロモルの試験ペプチド(最終濃度)を培地に加える(培地のみまたはDMSO対照にはペプチドを加えない)。プレートを24時間インキュベートし、培地を除去し、組織をブアン固定液で24時間固定する。分析は、分節の切断端の腫脹面積と比較した脊髄分節の総面積を計算するための、Image Jを用いた上方からの脊髄分節の撮影を含む。腫脹(浮腫)は、腫脹%を与える(培養面積−元の面積÷元の面積)として計算する。p=0.05での有意性のカットオフ値で、Single factor Analysis of Varianceを使用して統計的有意性を決定する。
【0219】
脊髄分節における浮腫を阻止するために最も有効な試験ペプチド濃度の決定は、用量反応曲線を使用して同じプロトコールを使用して行う。1つの例示的な用量反応曲線は、5、10、50 250および500マイクロモルで使用されるペプチドの最終濃度で決定される。
【0220】
(実施例4)
本明細書に開示されている方法および組成物を使用して、慢性創傷(例えば、血管性潰瘍)を有するヒト対象を治療する。
【0221】
糖尿病、または末梢血管もしくは動脈基礎疾患を有するヒト対象は、まず、閉鎖していない足の創傷から生じる合併症を呈する。創傷を、適当な1つまたは複数の用量の抗コネキシンペプチドSRPTEKTIFII(配列番号7)、例えば、100〜500マイクログラムで処置する。深さ約3〜4mmで約7cm×5cm(約35cm)の創傷の大きさに基づいて、プルロニックゲル中の2mLの20μMの配列番号7製剤(例えば、総用量約200〜400μg)を投与する(別の適切な投与される投薬量は、創傷の大きさに従って当業者が容易に決定することができる)。
【0222】
創傷部位に包帯をして7日間保護する。7日目に創傷の包帯を取り、創傷治癒結果を評価する。
【0223】
必要または所望に応じて上記で概説した処置を繰り返す(適切な投薬量で)。この処置の後、創傷および創傷の外観を評価する。2週間、1カ月および/または2カ月で患者を再度評価し、創傷(減少があれば)を再度評価する。
【0224】
(実施例5)
本明細書に開示されている方法および組成物を使用して、慢性静脈脚潰瘍を有するヒト対象を治療する。
【0225】
ヒト試験対象を、潰瘍の大きさならびに最小および最大潰瘍面積(例えば、2cmおよび50cm)に従って群に分ける。患者の安静時足関節上腕ドップラー動脈血圧比をベースラインとして測定する(例えば、0.80以上)。
【0226】
全ての患者に圧迫包帯をする。追跡することによって潰瘍の面積を測定し、プルロニックゲル製剤中の試験抗コネキシンペプチドSRPTEKTIFII(配列番号7)の適当な投薬量、例えば、100〜500マイクログラムを投与する。
【0227】
試験製剤を創傷表面に適用する間、診察用長椅子に横になり、圧迫包帯を適用する前の15分間そこにいるよう患者に求める。
【0228】
7日目に創傷の包帯を取り、創傷治癒結果を評価する。創傷液および血液試料を、バイオアッセイを使用して関連する創傷治癒バイオマーカーについて分析する。
【0229】
上記で概説した処置を繰り返す(適切な投薬量で)。この処置の後、創傷および創傷の外観を評価する。創傷閉鎖まで、この過程を毎週もしくは隔週、または治癒の状態を考慮して適切なように繰り返す。
【0230】
(実施例6)
以下を使用して、糖尿病性および別の慢性潰瘍の治癒速度の促進における、例示的な製剤の逐次投与の治療効果を判定する。
【0231】
有効性の主要エンドポイントは、12〜20週間以内で完全な創傷閉鎖を達成する患者の割合である。副次エンドポイントには、100%閉鎖までの時間、80%閉鎖までの時間、50%閉鎖までの時間、ならびに3、5、10、15、および20週におけるベースラインの創傷の大きさからの変化の割合としての創傷閉鎖量が含まれる。Kaplan−Meier生存分析技法を用いて、イベント発生までの時間エンドポイントを検査する。
【0232】
全ての患者は、最初の壊死組織切除(sharp debridement)、創傷洗浄、創傷包帯、および創傷圧力軽減からなる標準的な糖尿病性(または別の)潰瘍治療のレジメンを受ける。最初の壊死組織切除および創傷洗浄によって潰瘍を処置する。プルロニックゲル製剤中の100〜500マイクログラムの抗コネキシンペプチドSRPTEKTIFII(配列番号7)を投与する。創傷に、粘着防止包帯および圧迫包帯をまく。
【0233】
どちらが早いとしても12〜20週までまたは創傷閉鎖まで、週に2回、創傷を評価する。患者が臨床感染を発症した場合、または創傷状態が著しく悪化した場合は、患者を試験から排除する。各創傷評価時に(週に2回)、創傷面積の測定のために創傷周囲をトレースし、デジタルカメラで創傷を撮影する。患者登録時、ならびに5、10、15、および20週で、血液化学および血液学試験を行う。基礎的な骨組成に対する作用を試験するために、X線評価を5週間ごとに実施してもよい。
【0234】
(実施例7)
抗コネキシン剤は、好都合には、本発明の方法による投与に適する形態に処方される。
【0235】
適当な製剤は、以下の処方剤の混合物を含む。1つまたは複数の個々の抗コネキシン剤の量は、予定される特定の用途に依存するはずである。
【0236】
【表7】

本明細書において参照されたかまたは言及されたすべての特許、出版物、科学論文、ウェブサイトならびに他の文書および資料は、本発明が属する技術分野の当業者の技術水準を示すものであり、これらの参照文書および資料はそれぞれ、個別にその全体が参照により組み込まれたか、またはその全体が本明細書に記載された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。出願人は、任意の上記の特許、出版物、科学論文、ウェブサイト、電子的に利用可能な情報、および別の参照資料または文書の、任意のおよびすべての資料および情報を本明細書に物理的に組み込む権利を保有する。
【0237】
本明細書に記載されている具体的な方法および組成物は、好ましい実施形態を代表するものであり、それらは例示的であって本発明の範囲を限定するものではない。別の目的、態様、および実施形態が、本明細書を考慮すれば当業者には思いつくはずであり、本特許請求の範囲によって定義されている通り本発明の精神に包含される。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、様々な置換および変更を本明細書に開示されている本発明に対して行ってもよいことが、当業者には容易に明らかとなるはずである。例示的に本明細書に適当に記載されている本発明は、本明細書において不可欠であると特に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、あるいは1つまたは複数の限定の不在下で実施されてもよい。したがって、例えば、本発明の実施形態または実施例において、本明細書におけるそれぞれの場合において、「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」のいずれかの用語は、本明細書中の他の2つの用語のいずれかと置き換えてもよい。また、「含む(comprising)」、「含んでいる(including)」、「含有している」などの用語は、包括的であって限定ではないと読み取るべきである。例示的に本明細書に記載されている方法およびプロセスは、異なる順序の工程で適当に実施されてもよく、必ずしも本明細書または本特許請求の範囲に示された工程の順序に制限されない。本明細書および添付の特許請求の範囲においても使用されているように、単数形「a」「an」および「the」は、文脈上別途明確に指示のない限り複数形への言及を含む。いかなる場合においても、本特許は、本明細書に特に開示されている具体的な実施例または実施形態または方法に限定されると解釈されるものではない。いかなる場合においても、本特許は、そのような陳述が、出願人による答弁書において明確に認められた限定または制限がなければ、特許商標庁のいかなる審査官またはいかなる別の当局者もしくは関係者によってなされたいかなる陳述によっても限定されると解釈されるものではない。
【0238】
採用されている用語および表現は、説明であって限定するものではない用語として使用され、このような用語および表現の使用において、示されているおよび説明されている特徴のいかなる均等物またはその一部も除外する意図はないが、請求されている本発明の範囲内で様々な変更形態が可能であることが認識される。したがって、本発明を、好ましい実施形態および任意選択の特徴によって具体的に開示してきたが、本明細書に開示されている概念の変更形態および変形形態が当業者によって用いられてもよいこと、およびこのような変更形態および変形形態が、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であるとみなされることが理解されるはずである。
【0239】
本発明が、本明細書において広く一般的に記載された。一般的開示に含まれるそれぞれのより狭い種(species)および亜属集団(subgeneric grouping)もまた、本発明の一部を形成する。これは、削除された材料が本明細書で具体的に挙げられているか否かに関係なく、その属の任意対象を除くという条件または否定的な限定を伴う本発明の一般的記載を含む。
【0240】
別の実施形態は以下の特許請求の範囲内である。加えて、本発明の特徴または態様がマーカッシュ(Markush)グループに関して記載される場合、当業者は、本発明がマーカッシュグループの任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループに関してもそれによって記載されることを認識するはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性創傷を有する対象を治療する方法であって、有効量のコネキシン43ギャップジャンクション調節剤を含む組成物の前記創傷への投与を含む方法。
【請求項2】
前記慢性創傷が褥瘡である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記慢性創傷が褥瘡性潰瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記慢性創傷が動脈性潰瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記慢性創傷が静脈性潰瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記慢性創傷が静脈鬱血性潰瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記慢性創傷が糖尿病性足部潰瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記慢性創傷が外傷性潰瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記慢性創傷が熱傷潰瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
予測される速度で治癒しない創傷を有する対象を治療する方法であって、有効量のコネキシン43ギャップジャンクション調節剤の前記創傷への投与を含む方法。
【請求項11】
前記創傷が、治癒が遅延している創傷または治癒が不完全な創傷である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
離開創を有する対象を治療する方法であって、有効量のコネキシン43ギャップジャンクション調節剤を含む組成物の前記創傷への投与を含む方法。
【請求項13】
前記ギャップジャンクション調節剤が、ギャップジャンクションを通る分子の流動を全体的または部分的に妨害または低減する、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ギャップジャンクション調節剤が、ヘミチャネルを通る分子の流動を全体的または部分的に妨害または低減する、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ギャップジャンクション調節剤が、ギャップジャンクションを全体的または部分的に閉鎖する、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記ギャップジャンクション調節剤が、ヘミチャネルを全体的または部分的に閉鎖する、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記ギャップジャンクション調節剤が、ギャップジャンクションを全体的または部分的に遮断する、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ギャップジャンクション調節剤が、ヘミチャネルを全体的または部分的に遮断する、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記ギャップジャンクション調節剤が、ギャップジャンクションの全体的または部分的な閉鎖を誘導する、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記ギャップジャンクション調節剤が、ヘミチャネルの全体的または部分的な閉鎖を誘導する、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記ギャップジャンクション調節剤が、ギャップジャンクションの開口を全体的または部分的に低減または妨害する、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記ギャップジャンクション調節剤が、ヘミチャネルの開口を全体的または部分的に低減または妨害する、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記ギャップジャンクション調節剤が、ギャップジャンクションの活性または機能を妨害または低減する、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記ギャップジャンクション調節剤が、ヘミチャネルの活性または機能を妨害または低減する、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記ギャップジャンクション調節剤がペプチド化合物である、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記ペプチド化合物がペプチド模倣剤である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ギャップジャンクション調節剤が、抗体または抗体の抗原結合フラグメントである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗原結合フラグメントが、F(v)、Fab、Fab’、またはF(ab’)抗コネキシン43抗体フラグメントである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記抗体が、キメラ抗体またはヒト化抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体フラグメントが、キメラ抗体フラグメントまたはヒト化抗体フラグメントである、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記ギャップジャンクション調節剤が、ギャップジャンクションリン酸化誘導剤である、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記ギャップジャンクション調節剤が、局所投与用に処方される、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記ギャップジャンクション調節剤が、ゲルとして処方される、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記対象がヒトである、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記対象が非ヒト動物である、請求項1、10、または12のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記非ヒト動物が競技動物である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記競技動物がウマである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記競技動物がイヌである、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記非ヒト動物がペット動物である、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記ペット動物がイヌである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ペット動物がネコである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記慢性創傷が持続性上皮欠損である、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2011−506446(P2011−506446A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−537970(P2010−537970)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/013655
【国際公開番号】WO2009/075881
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(509135588)コーダ セラピューティクス, インコーポレイテッド (16)
【Fターム(参考)】