説明

搗精基準の決定方法、搗精方法および搗精度計

【課題】搗精度のばらつきが少なく、高歩留り率でかつ最も美味な搗精ができ、また精米機の搗精度が最適搗精度にあるかを判定できる、搗精基準の決定方法および搗精方法ならびに搗精度計を提供する。
【解決手段】搗精基準の決定方法は、多数の搗精度が異なる同一原料玄米の精白米を加水加熱して炊飯米とする段階と、炊飯米の白度を一定の条件で測定する段階と、炊飯米の食味度を測定する段階と、炊飯米の白度の中から最も良好な食味度でかつ歩留り率の最も高い白度を選定し、それにて搗精度を決めるための基準白度を求める段階と、が備えられる。搗精方法は、精米機から抽出した精白米を加水加熱して炊飯米とし、炊飯米の白度が、基準白度となるように精米機の搗精度を調整する。搗精度計は、炊飯米サンプル生成部と、白度測定部と、測定した白度を搗精度として表示する表示制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玄米の搗精に係り、より詳細には、搗精度のばらつきが少なく、最も良好な食味でかつ歩留り率を向上させ、精米機の搗精度が適切かどうかを判定できる、搗精基準の決定方法、搗精方法および搗精度計に関する。
【背景技術】
【0002】
先に用語を定義する。搗精とは、精米機で玄米を精白することである。これに関連して予備搗精とは、精白米サンプルを得るために、少量の玄米を事前搗精することをいう。さらに、本格搗精とは、予備搗精後、所定の玄米を本格的に搗精することをいう。搗精度とは、精米機によって玄米粒から糠層などをどれだけ除去しているかの度合いをいう。また、最適搗精度とは、当該玄米を最も良好な食味に仕上げた上で最も高歩留り率の搗精度をいう。歩留り率とは、玄米の重量を100%として、搗精によって仕上がった白米重量が何%になったかをいう。糠を重さにして玄米の重量の10%を除去するなら、歩留り率は90%となる。精米業者にとっては、歩留り率が向上することは大きなメリットである。精白米の白度とは、例えば、(株)ケット社のC300(光源がタングステンランプ、受光器がフォトダイオード、反射率による測定)などの白度計で測定した白さのことである。基準白度とは、本発明によって設定される炊飯米の白度で、最適搗精度で搗精し、これを炊飯米とした時の白度をいう。食味とは、白米を炊飯して食べた時のおいしさのことである。
【0003】
糠層とは、玄米粒の表面を層状に覆っている薄茶色の層状の皮をいう。ただし、ほぼ白色の最深層の糠層と澱粉層の表層との境界は、色彩的にもまた内容的にも明確な区切りがないため、あいまいである。そのため、過搗精(または過精白)すなわち玄米の糠層より深部の澱粉層まで除去してしまうことが起こる。逆に、糠層が完全に除去しきれていない搗精不足も起こる。過搗精になると炊いた時に風味のないご飯になり、搗精不足になると糠臭いご飯になる。ちょうど頃合いの過搗精でもなく搗精不足でもない最適の搗精度に仕上がったものは、その米にとっては、炊いた時に最も美味なご飯になり、また歩留り率も高いものが得られる。
【0004】
玄米は、ほとんどが精米機によって米粒表面の糠層を除去し、深部の澱粉層を表面に露出させた白米に仕上げられて流通している。ところが、その作業を行なう搗精には大変な知識と経験を必要とする。これは、表面の糠層と深部の澱粉層には明確な区別がないので、糠層の除去度合いを適切に行なうには、長いキャリアをもつ米搗きの職人の勘でないとできないからである。特に近年ではこのような人が減少するところとなり、精米工場の運営にも支障が出ている。
【0005】
従って従来から、先人達は何らかの計器によって適切な搗精度が定められないかと種々の方法が試みられてきたが、今日に至るも、未だ、これに耐える計器が現出していない。それは、各米粒の糠層は厚みが一定ではないし、砕粒の発生率も一律ではないため、歩留り率も異なったものとなる。つまり重量で判定する歩留り率を基本に搗精度を定めることはできないし、また、白米の色すなわち胚乳(澱粉層)の素地の色も個々の米によって変わるので白米の白度を搗精度に置き換えることもできないからである。業界では止む無く、玄米の白度(18〜22度)に20を加えた白度(38〜42度)に仕上げるとよいとしているが、それほど単純なものではない。
【0006】
例えば、同一品種の米でも、田が隣り合っているだけで、適正な搗精度は異なり同じにはならない。また、同一の田で同一の玄米であっても、劣化した米は過精米とする必要があるし、一部の米は逆に搗精不足気味の方がよい場合がある。つまり、それぞれの玄米は、それぞれに最適な搗精度があり、その最適搗精度で仕上げることが求められている。これを果たすには、所定の玄米を小型精米機で搗精度を少しずつ変えて搗精を行ない、これによって得た多数の精白米サンプルを炊飯し、数人の食味鑑定士による試食を行ない、最も美味だったご飯の精白米サンプルの歩留り率か白度に合わせて搗精する以外にない。それも各玄米を搗精の度にしなければならない。しかし、そのようなことはあまりにも煩雑で、時間もかかるので実用上は不可能に近い。従って、市場には搗精度が不適正な精白米が出回っている所以である。なお、特許文献1には、精白米の白度測定について記載がある。特許文献2には、ご飯の白度を測定する方法が示されている。特許文献3には、ご飯の食味を保水膜の量で測定することが開示されている。しかし、それらは本件発明の目的とすることとは全く無関係のものである。
【特許文献1】特開平5−10883号公報
【特許文献2】2001−174412号公報
【特許文献3】特開平3−223672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、搗精度のばらつきが少なく、高歩留り率でかつ炊いた時に最も美味となる搗精方法と、その実現のために、精米機の搗精度が最適搗精度にあるかを判定できる、搗精基準の決定方法および搗精度計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による請求項1に記載の搗精基準の決定方法は、精米機で同一の原料玄米の搗精度を変えて搗精した多数の精白米サンプルを、それぞれ一定の条件で加水加熱して炊飯米サンプルとする段階と、前記各炊飯米サンプルの白度を一定の条件で測定する段階と、前記各炊飯米サンプルの食味度を測定する段階と、最も良好な食味度の前記各炊飯米サンプルの中から、歩留り率が最も高い搗精度の食味度を選定し、選定された食味度における炊飯米サンプルの白度を、精米機の搗精度を決めるための基準白度とする段階と、が備えられることを特徴とする。
【0009】
本発明による請求項2に記載の搗精方法は、精米機から排出した精白米を一定の条件で加水加熱して炊飯米とする段階と、前記炊飯米の白度を一定の条件で測定する段階と、前記測定した白度と、あらかじめ求めておいた最適搗精度の白度である基準白度とを比較する段階と、前記基準白度となるように精米機の搗精度を調整する段階と、が備えられること特徴とする。
【0010】
本発明による請求項3に記載の搗精度計は、精白米を一定の条件で加水加熱して炊飯米とする炊飯米生成部と、前記炊飯米の白度を一定の条件で測定する白度測定部と、前記白度測定部で測定した白度を前記精白米の搗精度として表示する表示制御部と、が備えられることを特徴とする。
【0011】
請求項4は、請求項3の前記表示制御部が、最も良好な食味度が得られてかつ歩留り率の高い搗精度が得られる基準白度を保持しており、前記基準白度と前記白度測定部で測定した白度との比較結果を表示することを特徴とする。
【0012】
本発明は次に示す第1〜3の発見に基くものである。
第1の発見は次のとおりである。玄米は白度が低いが、1分搗き、2分搗き、3分搗きと徐々に搗精度が上がるに従い白度も上昇する。このように搗精度と精白米の白度はおおまかには比例関係にある。しかし、厳密には比例しないのである。従って、市販されている精白米の状態になった時の白度はケット白度計では38〜42度であるが、精白米の白度の高かったものが、炊飯した時に白度が高いとは限らない。また、精白米の白度の低かったものが、炊飯した時に白度が低いとは限らない。それは搗精度と精白米の白度とは完全な比例関係ではないからであり、炊飯したご飯の白さを決定付けるのは、あくまでも搗精度、すなわち玄米の糠層をどれだけ除去しているかで決まるからである。このように玄米の糠層の除去度と、精白米の白度とは、おおまかには一致しても、完全には一致しないことは上述したとおりである。従って、精白米の白度によって正確な搗精度を把握することはできない。つまり、生米の白度と炊飯してご飯になった時の白度は、ある程度の比例関係にあるが、完全な比例関係ではない。それゆえ、精白米の白度によって、搗精度をおおまかに知ることはできても、正確に知ることは不可能である。しかし、本発明者が発見したことは、生米の状態では、その白度と搗精度は一致しないものの、精白米を一定の条件で炊飯したものでは、完全にα化したご飯だけでなく、米粒の表面がわずかにα化しただけの中途炊飯米(本明細書では、それらをまとめて「炊飯米」という)になった時には、その白度と搗精度が完全に比例関係にあることを発見した。
【0013】
第2の発見は次のとおりである。全ての米は玄米のままでは食味が良くなく、搗精度を高めてゆくと食味度も高くなる。しかし食味度がある程度高まると、そこからは搗精度が高まっても食味度は高まらない。さらに搗精度を高めると、ご飯の味が薄くてコクがなくなり食味が落ちてくる。従って、搗精度と食味度をグラフで表した食味度曲線は、搗精度が進むにしたがって、玄米の時を基点にして食味度は右肩上がりに上昇し、ある位置で水平となり、やがて下降する。ところが、本発明者は、食味度と炊飯米の白度との関係は、いかなる精白米の炊飯米も食味度曲線の上昇が止まった時の炊飯米の白度は、どれも同一白度になることを発見した。
【0014】
第3の発見は次のとおりである。本発明者は、いかなる玄米であっても、それを搗精して炊飯米になった時、炊飯米の白度が食味度曲線の上昇が止まった時の白度になるように搗精されている場合は、最も良好な食味でかつ高歩留り率であること、すなわちその米が最適搗精度で搗精されていることを発見した。
【発明の効果】
【0015】
本発明による請求項1に記載の搗精基準の決定方法によれば、同一の原料玄米を搗精した多数の搗精度の異なる炊飯米サンプルの中から、最も良好な食味度の中で歩留り率の最も高い炊飯米サンプルの白度を選定し、その白度を、搗精度を決めるための基準白度としたので、いかなる玄米も、炊飯米の白度がその基準白度となるように搗精すれば、搗精度のばらつきがなく、また最高歩留り率で仕上って居り、更に炊いた時に最も美味なご飯にできる。それを可能にしたのは、これまで、全く存在しなかった搗精基準が確立したからである。
【0016】
本発明による請求項2に記載の搗精方法によれば、その炊飯米は最も良好な食味度が得られてかつ歩留り率の高い搗精度が得られる基準白度が設定されているから、搗精度にばらつきがなく、過搗精や搗精不足を避けることができ、炊いた時に最も美味なご飯にできる。また過搗精がないので糠の量が減少し歩留り率が向上できる。また、過搗精がないので無駄なエネルギーも消費しない。このように、あらかじめ決めておいた基準白度を使用するので、これまで全く存在しなかった搗精基準が確立し、誰が搗精しても、またどのような品種の玄米でも、全て最適搗精度の精白米に仕上げることができる。
【0017】
本発明による請求項3に記載の搗精度計によれば、精白米を一定の条件で加水加熱して炊飯米とする炊飯米生成部と、前記炊飯米の白度を一定条件で測定する白度測定部と、前記測定で得た白度を精白米の搗精度として表示する表示制御部とを有する搗精度計になっているため、いかなる精白米でも、客観的に、且つ正確な搗精度を計数的に捉えることが史上始めて実現したのである。
【0018】
本発明による請求項4に記載の搗精度計によれば、測定で得た白度が最適搗精度の白度である基準白度と比較し、その結果を、前記精白米の最適搗精度の白度とともに表示するようにしたので、精白米が基準白度に仕上がるように精米機の搗精度を調整すれば、最適な搗精度の精白米を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明による搗精基準の決定方法、搗精方法および搗精度計について詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
図1は、本発明の基準白度を得るためのグラフである。横軸は玄米の搗精度とし、縦軸は、歩留り率、並びに炊飯米の白度、および炊飯米の食味度とした。横軸の搗精度は、精米機によって玄米粒の糠層をどれだけ除去しているかの度合いを示すものである。その搗精度の尺度は例えば、バッチ式の循環型精米機の精米時間を適用することができる。ここで歩留り率曲線1は、搗精が進めば、糠として米粒の表層や砕粒が除去されるので、歩留り率は、当初が100%で、搗精が進むにしたがって低下する。このようなグラフは、小型精米機などで、同一の米により搗精度が異なる多数の精白米サンプルを作り、これを一定条件で加水加熱して複数の炊飯米サンプルとし、それらの炊飯米サンプルの食味と白度を測定することで得ることができる。
【0021】
精白米は、β澱粉と呼ばれる硬くて安定した結晶状態にある。これに加水して加熱すると、α澱粉と呼ばれる糊化された状態となる。炊飯は、通常、白米に対し重さにして1.5倍程度の水を加え、例えば100℃で20分間加熱し、水分60〜65%を含むご飯に仕上げるものである。このような加水量、加熱温度、加熱時間に限られるものではないが、米粒の表面が吸水し、アルファー化していることが必要である。特に短時間に測定ができるようにするためには、完全な飯に炊き上げるのではなく、米粒の表面だけ吸水し、アルファー化しただけの、いわゆる半飯状のものでもよい。しかし、いずれの場合でも、多数の炊飯米サンプルを比較するので、同じ条件で加水加熱及び測定をする必要がある。
【0022】
図1に示すように、炊飯米サンプルの白度曲線2は、搗精が進めば、糠層が除去されるので白くなる。例えば平均的玄米の反射光量をゼロとし、平均的精白米の反射光量を40とすると炊飯米の反射光量は100前後に上昇する。これは、炊飯米は水分を多く含み澱粉がアルファー化するために膨張して白度を増すからであると考えられる。
【0023】
炊飯米サンプルの食味を測定するには飯の味に精通した多数の人による官能評価で測定してもよい。図1の食味度曲線3に示すように、精米が進んでいない低い搗精度の炊飯米は、糠臭さがあり食味度は低い値となる。精米が進むに従い糠臭が減り、口当りも良くなり食味度が上昇し、いわゆる右肩上がりとなる。しかし食味度曲線3は、ある程度まで上昇し、上昇を停めた位置Vpに達すると、水平部分を保った後、下降する。その水平部分が生じるのは、一般の精白米は、1粒ごとにも、また全体的にも、全て均等に表面が剥離されているのではなく、所謂斑剥離になっているため、適正な搗精度の精白米であっても、深層の糠の部分が若干残っているから、同曲線の水平部分の初期、即ち、水平部分の左の方は、若干糠臭はするものの、澱粉層の旨み層が厚く残っているために香りや甘みが強いことから美味に感じるのに対し、それより搗精が進み、同曲線の水平部の右の方は糠臭がないのはよいが、香りや甘みが前者より少なくなるから総合的には前者と変らず食味度曲線3が水平となるからである。ところが、それより更に搗精度が高まると澱粉層の表層にある旨み層が深く削られ、糠臭はなくとも香りや甘みがどんどん弱まるから同曲線が下降する所以である。
【0024】
そうすると食味度曲線3が最も高く、且つ水平となっている搗精度が、食味上、最もよい搗精度ということになるが、その中でも食味度曲線3が上昇を停めた位置Vpが、歩留り率が最も高い搗精度であり、そこが、最適な搗精度Tpと判定することができる。そこで最適な搗精度Tpにおける白度曲線2上の白度を基準白度Wpとする。例えば、基準白度Wpとなる精白米なら、そのご飯はおいしく、また歩留り率も高いから、最適の搗精度ということができる。
【0025】
ここで注目すべきは、いかなる精白米も加水過熱すれば、図1のような曲線となり、しかも精白米の時の白度は、それが最適搗精度に搗精されていたとしても、その時の白度はまちまちであるが、それらを炊飯米にすると、いかなる炊飯米といえども炊飯条件が同じであれば、Vpの時の白度Wpの高さ(白度)はどれも同じであることである。基準白度Wpは、コシヒカリ、ササニシキ、アキタコマチなど複数の品種の米でも、Vpが同じになることを試験により確認している。また、いかなる原料玄米の搗精も、搗精済みの精白米を炊飯米にした時、基準白度Wpになるように搗精すれば、それが最適搗精度のTpで仕上げたことになり、またその炊飯米を食べた時の食味曲線は自ずと最高歩留り率で、且つ最良の食味が引き出されているVpになっているのである。米によって食味度曲線3の高さは異なるとしても、炊飯条件が不変であればWpの高さと、Vpの左右の位置は全て同じであると云うことである。従って以後は、本発明の炊飯米の基準白度Wpを基準に用いて搗精度Tpの出し方を説明する。
【0026】
図2は、本発明による搗精基準の決定方法を示すフローチャートである。S101は、多数の搗精度が異なる精白米サンプルを予備搗精により作成し、一定の条件で加水加熱して炊飯米サンプルとする段階である。S102は、前記炊飯米サンプルの白度を一定条件で測定する段階である。S103は、前記炊飯米サンプルの食味度を官能試験などで測定する段階である。そして、S104は、最も良好な食味度の前記各炊飯米サンプルの中から、歩留り率が最も高い搗精度の食味度を選定し、選定された食味度における炊飯米サンプルの白度を、搗精基準を決めるための炊飯米の基準白度Wpとする段階である。このようにして求めた炊飯米の基準白度Wpが本格搗精における搗精基準となる。即ち、このプロセスを1度だけすれば、それ以後は、あらゆる精白米の炊飯米の白度が、前記基準白度Wpに合うように本格搗精すれば、それが最適の搗精度になるからである。
【0027】
図3は、本発明による本格搗精をする場合の搗精方法を示すフローチャートである。S201は、予備搗精により、精米機から排出した少量の精白米サンプルを一定の条件で加水加熱して炊飯米サンプルとする段階である。S202は、炊飯米サンプルの白度を一定条件で測定する段階である。S203は、測定した白度と、あらかじめ求めておいた最も良好な食味度の範囲内でかつ歩留り率の最も高い基準白度Wpとを比較する段階である。S204は、比較の結果に差がある場合、基準白度Wpとなるように精米機の搗精度を調整する段階である。このように、精米機の搗精度が適正かどうかを、従来のように歩留り率や、精白米の白度が一定になるようには調整せず、炊飯米の基準白度wpとなるように調整する。
【0028】
図4は、本発明による搗精度計の構成図である。図4に示すように、搗精度計30は、容器14に入った定量の精白米に定量の加水をした加水米11であり、これを定時間加熱16する炊飯部31、炊飯米17を容器14に入れたままで白度を測定できる白度測定部32、測定した白度を表示する表示部34、測定した白度が基準白度と比較して、どのくらい大きいか、等しいか、どのくらい小さいかを判定する表示制御部33を含んで構成される。
【0029】
白度測定部32は、図4に示すように、水平状の炊飯米に対して、左45度に位置する左光源(L)と上光源(U)から、青色、赤色の光を照射する。そして反射光を反対側の右45度に位置した受光素子(R)にて受光する。光の入射角度や反射角度、光の操作時間などは、一定の条件に保持して測定を行なうものとする。青色と赤色の光を照射するようにしたので、一色の光の照射に比較して、白度を正確に測定できる。表示制御部33で制御される表示部34には、測定した炊飯米の白度を表示する表示34a、測定した白度と基準白度との差をプラス、ゼロ、マイナス符号を付けて表示する差分表示34b、あらかじめ設定しておいた基準白度wpの表示34c、設定された加熱温度の表示34d、設定された加熱時間の表示34eなどが用意される。表示34a、34b、34cは、白度表示であるが、精米機で精米が適切なものかの搗精度として表示する。なお、容器14の搬送や加水などが自動化されることにより、一定条件で炊飯及び測定ができる手間のかからない搗精度計とすることができる。
【0030】
図5は、本発明による精米機の調整手順を示す説明図である。図1及び図5に示す基準白度wpを求めるまでの流れを説明する。先ず同一玄米を、少量ずつそれぞれ搗精度を変えて数件のサンプル精白米を搗精する。その場合、搗精度は搗精時間または負荷電流などによって搗精度をチェックしておく。そのようにして搗精度の異なる多数の精白米サンプルAS(1)〜AS(n)を作る。次に精白米サンプルAS(1)〜AS(n)を各容器14に入れてそれぞれ一定の条件で加水した加水米11、それを加熱16して、炊飯米サンプルBS(1)〜BS(n)を作る。仕上がった炊飯米サンプルBS(1)〜BS(n)を白度測定器18にかけ、各炊飯米17の白度曲線2を得る。また、炊飯米サンプルBS(1)〜BS(n)の食味度を官能試験して食味度曲線3を得る。食味度曲線の上昇が停まり、傾きがゼロになる時の白度曲線2のWpを基準白度とする。以上が基準白度Wpを設定するためのプロセスであるが、これは最初に1回だけ行なう。
【0031】
精米機13aによる本格搗精は、例えば次のように行なうことができる。まず予備搗精により、精米機13aの搗精度は、操作パネル12から精米機の精米時間、または圧力の掛け方などで1品または2品の少量のサンプル精白米に仕上げる。その搗精度は、Tp白度を見当つけて行なう。なお、2品の場合は若干搗精度を変えておく。その段階で精米機の運転を中断し、予備搗精による精白米を容器14に入れる。一定の条件で、加水米11を加熱16して炊飯米17を作る。続いて炊飯米17を白度測定器18にかけ、炊飯米17の白度と、基準白度Wpを比較する。その上で精米機を再運転して本格搗精を行なう。なお、その場合は、炊飯米17の白度が基準白度Wpより小さいなら、精米機13aの操作パネル12を操作して搗精度を上げる。炊飯米17の白度が基準白度Wpより大きいなら、操作パネル12を操作して搗精度を下げる。炊飯米17の白度が基準白度Wpに等しいなら、操作パネル12の設定はそのままで精米を続行する。他の精米機13bに対しても同様に、基準白度Wpに基く搗精度の調整を行なう。このようにして得た精白米は、食味も良好なものとなる。また高歩留り率にて搗精ができる。図5の下側に示す一点鎖線の部分が、図4の搗精度計30である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、歩留り率がよく美味な精白米にでき、且つ、省エネであり、また高歩留り率によってコストダウンが可能な搗精方法及び搗精度計として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による搗精に必要な炊飯米の基準白度を得るためのグラフである。横軸が玄米の搗精度で、縦軸が炊飯米の白度、炊飯米の食味度および歩留り率を表している。
【図2】本発明による搗精基準の決定方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明による搗精方法を示すフローチャートである。
【図4】本発明による搗精度計の構成図である。
【図5】本発明による精米機の調整手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 歩留り率曲線
2 炊飯米の白度曲線
3 炊飯米の食味度曲線
10 玄米
11 加水米
12 操作パネル
13a、13b 精米機
14 容器
16 加熱
17 炊飯米
18 白度測定器
19 食味度測定器
21 比較回路
30 搗精度計
31 炊飯部
32 白度測定部
33 表示制御部
34 表示部
34a 測定した白度の表示
34b 基準白度との差の表示
34c 基準白度の表示
34d 加熱温度の表示
34e 加熱時間の表示
Tp 最適な搗精度
Vp 食味度曲線が上昇を停めた位置
Wp 基準白度
AS(1)〜AS(n) 搗精度の異なる精白米サンプル
BS(1)〜BS(n) 炊飯米サンプル
S101〜S104 搗精基準の決定方法の各段階
S201〜S204 搗精方法の各段階

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精米機で同一の原料玄米の搗精度を変えて搗精した多数の精白米サンプルを、それぞれ一定の条件で加水加熱して炊飯米サンプルとする段階と、
前記各炊飯米サンプルの白度を一定の条件で測定する段階と、
前記各炊飯米サンプルの食味度を測定する段階と、
最も良好な食味度の前記各炊飯米サンプルの中から、歩留り率が最も高い搗精度の食味度を選定し、選定された食味度における炊飯米サンプルの白度を、精米機の搗精度を決めるための基準白度とする段階と、が備えられることを特徴とする搗精基準の決定方法。
【請求項2】
精米機から排出した精白米を一定の条件で加水加熱して炊飯米とする段階と、
前記炊飯米の白度を一定の条件で測定する段階と、
前記測定した白度と、あらかじめ求めておいた最も良好な食味度が得られてかつ歩留り率の高い搗精度が得られる基準白度とを比較する段階と、
前記基準白度となるように精米機の搗精度を調整する段階と、が備えられること特徴とする搗精方法。
【請求項3】
精白米を一定の条件で加水加熱して炊飯米とする炊飯米生成部と、
前記炊飯米の白度を一定の条件で測定する白度測定部と、
前記白度測定部で測定した白度を前記精白米の搗精度として表示する表示制御部と、が備えられることを特徴とする搗精度計。
【請求項4】
前記表示制御部は、最も良好な食味度が得られてかつ歩留り率の高い搗精度が得られる基準白度を保持しており、前記基準白度と前記白度測定部で測定した白度との比較結果を表示することを特徴とする請求項3に記載の搗精度計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−257980(P2009−257980A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108501(P2008−108501)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000151863)株式会社東洋精米機製作所 (11)
【Fターム(参考)】