説明

搬送システムおよび搬送ローラ

【課題】ローラ材料に関わらず、搬送性能を向上させることが可能な搬送システム、またこれに適した搬送ローラを提供する。
【解決手段】平面体を搬送する搬送部を備えた装置に組み込まれる搬送システム1は、搬送部に回転駆動可能に設けられるシャフト2と、シャフト2が筒内を貫通する筒状体30および筒状体30の外周面に接して形成されたゴム弾性体33を有し、かつシャフト2の回転駆動力が伝達される搬送ローラ3とを備えている。搬送ローラ3を構成する要素のうち、ゴム弾性体33と接する筒状体30を、シャフト2の軸方向に沿って移動可能に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送システムおよび搬送ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な分野において、紙やフィルム、シート等の平面体を搬送するため、搬送ローラを用いた搬送システムが使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、回転駆動されるシャフトに給紙用の搬送ローラを取り付け、この搬送ローラを回転させることによって用紙を給紙する技術が開示されている。同文献にも記載されるように、搬送ローラは、シャフトの略中央部に固定されて使用されるのが通常である。
【0004】
また、上記搬送ローラの材料は、搬送する紙等の平面体との摩擦係数が高いことが望まれる。そのため、一般に、ゴム弾性を有する合成ゴムやエラストマー等の成分の配合を調整することにより、必要な摩擦係数を確保することが行われている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4449648号公報
【特許文献2】特開2008−37524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の平面体を搬送する搬送システムは、未だ問題を有している。
すなわち、上述したように紙等の平面体の搬送性能を満足させるためには、ローラ表面の摩擦係数を確保する必要がある。また、長期にわたって摩擦係数を維持し、搬送ローラの交換頻度を抑制しようとする場合には、耐摩耗性に優れたローラ材料を選定する必要がある。
【0007】
一般に、高い摩擦係数を確保するためには、ローラの低硬度化を図ることが有効であることが多い。しかし、ローラの低硬度化を図ると、ローラが軟らかくなって耐摩耗性が低下するという問題がある。また、低硬度化のためにオイル等の柔軟剤をローラに添加した場合には、ローラ表面に染み出した柔軟剤が、紙等の平面体を汚染するおそれがある。
【0008】
さらに、搬送ローラの製造バラつきにより、ローラ径には軸方向のテーパが生じる場合がある。この場合には、搬送時に紙等の平面体が搬送方向と略垂直な方向へ移動するといった横ずれが発生しやすくなる。また、この種の横ずれは、平面体の外形バラつきなどによっても生じうる。
【0009】
従来知られる搬送システムは、回転駆動するシャフトに搬送ローラが固定されているため、この状態で紙等の平面体に横ずれが発生すると、平面体の横ずれに起因して搬送方向の摩擦力が低下する。そのため、ローラ材料を調整したとしてもその効果が十分に発揮されず、搬送システムの搬送性能が低く留まってしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、ローラ材料に関わらず、搬送性能を向上させることが可能な搬送システムを提供することにある。また、上記搬送システムに適した搬送ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、平面体を搬送する搬送部を備えた装置に組み込まれる搬送システムであって、
上記搬送部に回転駆動可能に設けられるシャフトと、
該シャフトが筒内を貫通する筒状体および該筒状体の外周面に接して形成されたゴム弾性体を有し、かつ上記シャフトの回転駆動力が伝達される搬送ローラとを備え、
上記ゴム弾性体と接する筒状体が、上記シャフトの軸方向に沿って移動可能に構成されていることを特徴とする搬送システムにある(請求項1)。
【0012】
本発明の他の態様は、平面体を搬送する搬送部を備えた装置に組み込まれる搬送システムに用いられる搬送ローラであって、
上記搬送部に回転駆動可能に設けられるシャフトを筒内に貫通させるための筒状体と、
該筒状体の外周面に接して形成されたゴム弾性体と、
上記ゴム弾性体と接する筒状体の端部に一端が固定されたスプリングとを有することを特徴とする搬送ローラにある(請求項11)。
【0013】
本発明のさらに他の態様は、平面体を搬送する搬送部を備えた装置に組み込まれる搬送システムに用いられる搬送ローラであって、
上記搬送部に回転駆動可能に設けられるシャフトを筒内に貫通させるための筒状体と、
該筒状体の外周面に接して形成されたゴム弾性体とを有し、
上記筒状体は、上記シャフトを筒内に貫通させるための第1筒状体と、該第1筒状体の外周に設けられ、外周面にて上記ゴム弾性体と接する第2筒状体とを備え、
上記第1筒状体は、表面に軸方向に沿って突条または溝部を有しており、
上記第2筒状体は、筒内面に上記第1筒状体の突条または溝部に対応して形成された溝部または突条を有しており、
上記第1筒状体の突条または溝部に、上記第2筒状体の溝部または突条が嵌合されていることを特徴とする搬送ローラにある(請求項12)。
【発明の効果】
【0014】
上記搬送システムは、上述の構成を有するシャフトおよび搬送ローラを備え、搬送ローラを構成する要素のうち、ゴム弾性体と接する筒状体が、シャフトの軸方向に沿って移動可能に構成されている。つまり、従来の搬送システムは、シャフトに搬送ローラが固定されているが、上記搬送システムは、敢えて積極的に、シャフトの軸方向に沿って搬送ローラを構成する要素のうち、ゴム弾性体と接する筒状体が移動可能とされている。そのため、紙等の平面体が横ずれを起こした場合に、平面体の横ずれに合わせてゴム弾性体と接する筒状体も軸方向(平面体の横ずれ方向と同じ側の軸方向)に移動する。それ故、搬送ローラにおける搬送方向の摩擦力が平面体の横ずれによって低下し難く、搬送方向の摩擦力を十分に確保することができる。
【0015】
したがって、上記搬送システムによれば、ローラ材料に関わらず、搬送性能を向上させることができる。
【0016】
また、上記搬送ローラ(他の態様)は、上述の構成を有し、特に、ゴム弾性体と接する筒状体の端部にスプリングの一端が一体化されている。そのため、上記搬送システムが、ゴム弾性体と接する筒状体およびスプリングを用いている場合に、この搬送ローラを適用したときには、ゴム弾性体と接する筒状体とスプリングとを別々にシャフトに取り付けなくても済む利点がある。特に、上記搬送システムにおけるシャフトへの搬送ローラの組み付け時やメンテナンス時における搬送ローラの交換時に有用である。
【0017】
また、上記搬送ローラ(さらに他の態様)は、上述した構成を有し、特に、第1筒状体の突条または溝部に、第2筒状体の溝部または突条が嵌合されている。そのため、上記搬送システムにこの搬送ローラを適用した場合において、平面体が横ずれを起こしたときには、第1筒状体の突条または溝部に沿って、ゴム弾性体と接する第2筒状体を軸方向(平面体の横ずれと同じ側の軸方向)に移動させることができる。それ故、上記搬送システムに好適である。加えて、シャフトの表面に軸方向に沿って突条または溝部を形成する必要がないので、従来のシャフトを流用しやすい利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】画像形成装置の紙送り部を模式的に示した説明図である。
【図2】実施例1に係る搬送システムを模式的に示した説明図である。
【図3】図2のA−Aで切断した際の断面図である。
【図4】図2のB−Bで切断した際の断面図である。
【図5】実施例2に係る搬送システムおよび搬送ローラを模式的に示した説明図である。
【図6】実施例2に係る搬送システムおよび搬送ローラの変形例を模式的に示した説明図である。
【図7】実施例2に係る搬送システムおよび搬送ローラの他の変形例を模式的に示した説明図である。
【図8】実施例3に係る搬送システムおよび搬送ローラの軸方向に沿った断面構造を模式的に示した説明図である。
【図9】図8のA−Aで切断した際の断面図である。
【図10】実施例4に係る搬送システムおよび搬送ローラを模式的に示した説明図である。
【図11】図10のA−Aで切断した際の断面図である。
【図12】図10のB−Bで切断した際の断面図である。
【図13】実施例5に係る搬送システムおよび搬送ローラを模式的に示した説明図である。
【図14】実施例6に係る搬送システムおよび搬送ローラを模式的に示した説明図である。
【図15】図14のA−Aで切断した際の断面図である。
【図16】図14のB−Bで切断した際の断面図である。
【図17】実施例6に係る搬送システムおよび搬送ローラの軸方向に沿った断面構造を模式的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(上記搬送システムに共通する説明)
上記搬送システムについて説明する。搬送システムは、平面体を搬送する搬送部を備えた装置に組み込まれるシステムである。平面体としては、具体的には、例えば、紙、フィルム、シートなどを例示することができる。この種の平面体を搬送する搬送部は、複数の平面体を一枚ずつ搬送可能に構成されていてもよいし、連続する平面体を搬送可能に構成されていてもよい。好ましくは、前者である。前者の場合、複数の平面体が堆積されてなる堆積物から平面体が供給されることが多く、平面体の横ずれが生じやすい。このような場合であっても、搬送方向の摩擦力を確保しやすいので、上記搬送システムの効果を十分に発揮することができるからである。
【0020】
平面体を搬送する搬送部を備えた装置としては、具体的には、例えば、プリンター、ファクシミリ、複写機、複合機、印刷機等の画像形成装置、現像機器、スキャナ、発券機、現金自動預け払い機(ATM)などを例示することができる。また、画像形成装置における紙送り機構に上記搬送システムを適用する場合、搬送システムは、具体的には、例えば、用紙トレイから用紙を送り出すピックアップ部(搬送ローラをピックアップローラとして使用)、ピックアップ部に隣接して用紙トレイから送り出された用紙の重送を防止するフィード部(搬送ローラをフィードローラとして使用)やリタード部(搬送ローラをリタードローラとして使用)、その他の用紙搬送経路等に適用することが可能である。
【0021】
搬送システムは、シャフトと搬送ローラとを備えている。搬送システムを構成するシャフトは、搬送部に回転駆動可能に設けられるものである。搬送部にシャフトを回転可能に設ける方法としては、例えば、シャフトの両端部を回転可能に支持するなどの方法を例示することができる。また、シャフトは、装置に設けられた駆動源に接続されることによって回転可能とされていてもよいし、駆動源に接続されずに回転可能とされていてもよい。例えば、上述のピックアップ部やフィード部に搬送システムを適用する場合、シャフトは、駆動源に接続されることによって回転可能とすることができる。また、上述のリタード部に搬送システムを適用する場合、シャフトは、駆動源に接続されることによって回転可能としてもよいし、駆動源に接続されずに回転可能とすることもできる。なお、前者の場合には、用紙の搬送方向と逆回転の駆動源に接続することができる。
【0022】
シャフトの構造としては、中実体、中空体のいずれの構造であっても採用することができる。強度、コストなどの観点から、好ましくは中実体であるとよい。また、シャフトの材料としては、具体的には、例えば、鉄、アルミ等の金属材料、アセタール樹脂、ABS等のプラスチック材料などを例示することができる。
【0023】
搬送システムを構成する搬送ローラは、シャフト上に1または2以上設けることができる。搬送ローラは、筒状体とゴム弾性体とを有している。筒状体は、好ましくは円筒状に形成することができる。搬送システムにおいては、筒状体の筒内にシャフトが貫通している。筒状体の材料としては、具体的には、例えば、アセタール樹脂、ABS等のプラスチック材料などを例示することができる。また、筒状体の軸方向の長さは、搬送する平面体の幅、シャフトに設ける搬送ローラの個数等を考慮して適宜選択することができる。筒状体の軸方向の長さは、具体的には、例えば、5mm〜400mmとすることができる。
【0024】
ゴム弾性体は、筒状体の外周面に接して形成されている。つまり、ゴム弾性体も、筒状に形成されており、この筒内に筒状体が貫通している。ゴム弾性体は、一つの部材から構成されていてもよいし、二つ以上の部材の組合せから構成することもできる。
【0025】
ゴム弾性体の材料としては、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴムなどを例示することができる。ゴム弾性体の厚みは、具体的には、例えば、1mm〜30mmとすることができる。ゴム弾性体の軸方向の長さは、好ましくは、筒状体の軸方向の長さと略同一か、若干短い長さとすることができる。
【0026】
また、ゴム弾性体の表面には、シボ加工、ローレット加工、溝加工等の表面加工が必要に応じて適宜施されていてもよい。ゴム弾性体の表面にシボ加工等が施されている場合には、長期にわたって搬送性能を確保しやすくなる。特に、上記装置が画像形成装置である場合には、平面体である紙から生じる紙粉がローラ表面の凹部に捕捉されやすくなり、紙粉による摩擦力の低下が抑制され、上記効果と相まって長期にわたって搬送性能を確保するのに有利である。
【0027】
搬送ローラは、例えば、筒状体の筒外径よりも小さな筒内径を有する筒状のゴム弾性体を作製し、このゴム弾性体の筒内に筒状体を圧入するなどして作製することができる。
【0028】
搬送ローラには、シャフトの回転駆動力が伝達される。回転駆動力の伝達方法は、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、シャフト表面に設けた1または2以上のピン部と、筒状体に設けた上記ピン部が嵌合可能な嵌合部とによって、シャフトの回転駆動力を筒状体に伝達することができる。また、シャフト表面に設けた1または2以上の突部または溝部と、筒状体の筒内面に設けた1または2以上の溝部または突部とを嵌合させることにより、シャフトの回転駆動力を筒状体に伝達することもできる。なお、搬送ローラは、過大な回転トルクが作用した場合に、この回転トルクを遮断することができるようにトルクリミッターに接続されていてもよい。
【0029】
ここで、搬送システムにおいて、搬送ローラを構成する要素のうち、ゴム弾性体と接する筒状体は、シャフトの軸方向に沿って移動可能に構成されている。ゴム弾性体と接する筒状体は、例えば、シャフトの途中、好ましくはシャフトの略中央部から、少なくとも一方側の端部にかけて移動可能とすることができる。なお、搬送システムが搬送ローラを1つ有する場合には、シャフトの略中央部をゴム弾性体と接する筒状体の初期設定位置とすることができる。
【0030】
(第1実施形態の搬送システムの説明)
上記搬送システムにおいて、シャフトは、表面に軸方向に沿って突条または溝部を有しており、筒状体は、筒内面にシャフトの突条または溝部に対応して形成された溝部または突条を有しており、シャフトの突条または溝部に、筒状体の溝部または突条が嵌合されている構成を採用することができる(請求項2)。
【0031】
なお、上記「筒状体は、筒内面にシャフトの突条または溝部に対応して形成された溝部または突条を有している」とは、シャフトが軸方向に沿う突条を有する場合、筒状体の筒内面におけるシャフトの突条位置と重なる位置に筒状体側の溝部が形成されていることを意味する。また、シャフトが軸方向に沿う溝部を有する場合、筒状体の筒内面におけるシャフトの溝部位置と重なる位置に筒状体側の突条が形成されていることを意味する。
【0032】
この場合には、シャフトの突条または溝部、筒状体の溝部または突条を介して、シャフトの回転駆動力を搬送ローラに伝達することができる。また、シャフトの突条に溝部が嵌合する筒状体、または、シャフトの溝部に突部が嵌合する筒状体は、シャフトの突条または溝部に沿って軸方向に移動することができる。つまり、この場合には、シャフトからの回転駆動力の伝達と、ゴム弾性体に接する筒状体のシャフト軸方向への移動とを同時に行うことができる。また、筒状体の外径を従来とほぼ同じ外径に維持しやすいため、ゴム弾性体に接する筒状体がシャフト軸方向に可動する場合であっても、搬送ローラの外径が過度に大きくなり難い利点がある。
【0033】
上記において、シャフト表面と筒状体の筒内面との間は、僅かな隙間が形成されていてもよいし、隙間がなく、シャフト表面と筒状体の筒内面とが摺動可能とされていてもよい。
【0034】
上記搬送システムには、ゴム弾性体と接する筒状体が回転によってシャフト上の初期設定位置から軸方向片側に移動した場合に、移動した筒状体を初期設定位置方向に再び戻すように筒状体の位置を補正する位置補正機構を設けることができる(請求項3)。
【0035】
この場合には、ゴム弾性体と接する筒状体が回転によってシャフト上の初期設定位置から軸方向片側に移動しても、搬送ローラの回転停止後には、位置補正機構により、初期設定位置またはその周辺に上記移動した筒状体が再び戻される。そのため、ゴム弾性体と接する筒状体がシャフトの軸方向片側に片寄ったままとなり難く、ゴム弾性体と接する筒状体を、長期にわたって安定して初期設定位置またはその周辺に存在させやすくなる。それ故、平面体の安定した搬送を確保しやすくなる。
【0036】
上記初期設定位置は、ゴム弾性体と接する筒状体が設計上最初に配置されるシャフト上の位置であり、用いる搬送ローラの個数等を考慮して決定することができる。例えば、搬送システムが搬送ローラを1つ有する場合、上記初期設定位置は、シャフトの略中央部とすることができる。また、搬送システムが搬送ローラを2つ有する場合、上記初期設定位置は、シャフトの略中央部から一方のシャフト端部側へ一定距離離れた位置、および、シャフトの略中央部から他方のシャフト端部側へ上記一定距離と等距離離れた位置とすることができる。
【0037】
なお、位置補正機構は、搬送ローラの回転停止後、移動した筒状体を初期設定位置方向に戻すことができればよく、必ずしも初期設定位置と全く同じ位置に筒状体を戻すことが要求されるものではない。搬送ローラが再び回転すれば、その回転によって再度軸方向に筒状体が移動しうるため、厳密に初期設定位置と同じ位置に戻す意味が少ないからである。
【0038】
上記位置補正機構は、ゴム弾性体と接する筒状体の可動範囲外に設けられ、ゴム弾性体と接する筒状体の移動を規制するための移動規制体と、ゴム弾性体と接する筒状体の端部と移動規制体との間に設けられ、シャフトが内部を貫通するスプリングと、を含んで構成することができる。この際、スプリングのバネ定数は、ゴム弾性体と接する筒状体の軸方向への移動を許容しつつ、かつ、移動した筒状体を移動方向と反対方向へ戻すことが可能な範囲内に設定される(請求項4)。なお、上記スプリングは、搬送ローラの回転時におけるゴム弾性体と接する筒状体の軸方向への移動を規制するためのものではない。
【0039】
この場合、平面体が横ずれを起こした際には、ゴム弾性体と接する筒状体が回転によってシャフト上の初期設定位置から軸方向片側に移動する。そして、筒状体と移動規制体との間にあるスプリングが圧縮される。搬送ローラの回転停止後には、スプリングが圧縮されて生じた弾発力により、移動した筒状体が移動方向と反対方向へ押し戻され、上記初期設定位置またはその周辺に筒状体が再配置される。そのため、ゴム弾性体と接する筒状体が、シャフトの軸方向片側に片寄ったままとなり難い。それ故、平面体の安定した搬送を長期にわたって確保しやすくなる。さらに、ゴム弾性体と接する筒状体がシャフトの端部方向へ移動した場合であっても、移動規制体によってそれ以上端部方向へ移動することができなくなる。そのため、ゴム弾性体と接する筒状体がシャフトから脱落するのを防止しやすくなり、搬送性能の維持にも寄与しやすくなる。
【0040】
移動規制体は、ゴム弾性体と接する筒状体の可動範囲外の片側シャフト上だけに設けられていてもよいし、ゴム弾性体と接する筒状体の可動範囲外の両側シャフト上に設けられていてもよい。後者の場合には、ゴム弾性体と接する筒状体がシャフト軸方向に沿っていずれのシャフト端部方向へ移動した場合であっても、ゴム弾性体と接する筒状体の脱落を防止することができる。そのため、搬送性能の維持にいっそう寄与しやすくなる。
【0041】
移動規制体としては、例えば、外周縁の一部から中心部方向にかけて、シャフトを嵌め込むための開口部を有する略環状部材(例えば、側面視で略「C」字状、略「e」字状等)などを例示することができる。また、移動規制体の材料としては、各種プラスチックや金属材料等を用いることができる。また、移動規制体は、シャフトの所定位置表面に形成した周方向の溝部に嵌合させて取り付けることができる。この場合には、移動規制体自身のシャフト軸方向の位置ずれを抑制しやすくなる。
【0042】
スプリングは、ゴム弾性体と接する筒状体の端部と移動規制体との間に設けられておればよい。したがって、例えば、搬送ローラを1つ有し、かつ、ゴム弾性体と接する筒状体の可動範囲外の両側シャフト上に移動規制体がそれぞれ設けられている場合には、筒状体の両端部とそれぞれの移動規制体との間にスプリングを設けることができる。また、例えば、搬送ローラを2つ有し、かつ、ゴム弾性体と接する筒状体の可動範囲外の両側シャフト上に移動規制体が設けられている場合には、一方の搬送ローラにおける筒状体の外側端部と、これと同側の移動規制体との間、および/または、他方の搬送ローラにおける筒状体の外側端部と、これと同側の移動規制体との間にスプリングを設けることができる。さらに、一方の搬送ローラにおける筒状体の内側端部と他方の搬送ローラにおける筒状体の内側端部との間に1または2以上のスプリングを設けることもできる。
【0043】
スプリングの最伸長時の長さ(自然長)は、ゴム弾性体と接する筒状体が初期設定位置にあるときにおける、筒状体の端部と移動規制体との間の距離と略同一に設定することができる。この場合には、ゴム弾性体と接する筒状体が、初期設定位置から軸方向片側に移動しやすくなる。また、搬送ローラの回転停止後には、ゴム弾性体と接する筒状体が、スプリングの弾発力によって押し戻されて初期設定位置に戻りやすくなる。それ故、平面体の安定した搬送をいっそう確保しやすくなる。
【0044】
スプリングのバネ定数は、ゴム弾性体と接する筒状体の大きさ等にもよるが、例えば、700N/m以下の範囲とすることができる。
【0045】
スプリングは、ゴム弾性体と接する筒状体に端部が固定されていてもよいし、移動規制体に端部が固定されていてもよい。あるいは、ゴム弾性体と接する筒状体および移動規制体の双方に端部が固定されていなくてもよい。好ましくは、ゴム弾性体と接する筒状体の端部にスプリングの一端が固定されているとよい。この際、スプリングと筒状体とは、同軸となるように固定されていることが好ましい。この場合には、スプリング付の搬送ローラをシャフトに一度に挿通することができる。それ故、搬送システムの組み立てが容易になる。また、メンテナンス時における搬送ローラの取り換えも容易になる。なお、筒状体にスプリングを固定する方法としては、例えば、筒状体内にスプリングの一端を埋め込んだり、筒状体の端部とスプリングの一端とを接着剤等により接着したりすることができる。
【0046】
上記搬送システムは、スプリングを用いた位置補正機構以外にも、他の位置補正機構を採用することもできる。すなわち、他の位置補正機構は、シャフトの一部に設けられた磁石と、筒状体に設けられた磁石とを含んで構成することができる。この際、両磁石間に作用する磁力は、筒状体の軸方向への移動を許容しつつ、かつ、移動した筒状体を移動方向と反対方向へ引き寄せることが可能な範囲内に設定される(請求項5)。
【0047】
この場合には、ゴム弾性体と接する筒状体が回転によってシャフト上の初期設定位置から軸方向片側に移動しても、搬送ローラの回転停止後には、両磁石間に作用する磁力により、移動した筒状体が移動方向と反対方向へ引き寄せられる。そして、シャフトの一部に設けられた磁石の位置(初期設定位置)またはその周辺に筒状体が再配置される。そのため、ゴム弾性体と接する筒状体が、シャフトの軸方向片側に片寄ったままとなり難い。それ故、平面体の安定した搬送を長期にわたって確保しやすくなる。
【0048】
上記搬送システムにおいて、シャフトに設けられる磁石の位置は、上記初期設定位置とすることができ、用いる搬送ローラの個数等を考慮して決定することができる。例えば、搬送システムが搬送ローラを1つ有する場合、上記磁石の位置は、シャフトの略中央部とすることができる。また、搬送システムが搬送ローラを2つ有する場合、上記磁石の位置は、シャフトの略中央部から一方のシャフト端部側へ一定距離離れた位置、および、シャフトの略中央部から他方のシャフト端部側へ上記一定距離と等距離離れた位置とすることができる。
【0049】
シャフトに磁石を設ける方法としては、シャフトの内部に磁石を埋め込んだり、シャフトの外周に磁石を嵌め込んだりするなどの方法を例示することができる。また、シャフトや筒状体に接着剤や両面テープ等によって磁石を貼り付けることもできる。この際、シャフトの一部に配置する磁石と搬送ローラの筒状体に配置する磁石とは、互いに引き合うように配置することになる。
【0050】
(第2実施形態の搬送システムの説明)
上記搬送システムにおいて、筒状体は、シャフトが筒内を貫通する第1筒状体と、第1筒状体の外周に設けられ、外周面にてゴム弾性体と接する第2筒状体とを備え、第1筒状体は、シャフトの軸方向に沿って移動しないように取り付けられるとともに、表面に軸方向に沿って突条または溝部を有しており、第2筒状体は、筒内面に第1筒状体の突条または溝部に対応して形成された溝部または突条を有しており、第1筒状体の突条または溝部に、第2筒状体の溝部または突条が嵌合されている構成を採用することができる(請求項6)。
【0051】
なお、上記「第2筒状体は、筒内面に第1筒状体の突条または溝部に対応して形成された溝部または突条を有している」とは、第1筒状体が軸方向に沿う突条を有する場合、第2筒状体の筒内面における第1筒状体の突条位置と重なる位置に第2筒状体側の溝部が形成されていることを意味する。また、第1筒状体が軸方向に沿う溝部を有する場合、第2筒状体の筒内面における第1筒状体の溝部位置と重なる位置に第2筒状体側の突条が形成されていることを意味する。
【0052】
この場合には、シャフトの軸方向に沿って移動しないように取り付けられた第1筒状体、第1筒状体の突条または溝部、第2筒状体の溝部または突条を介して、シャフトの回転駆動力を搬送ローラに伝達することができる。また、第1筒状体の突条に溝部が嵌合する第2筒状体、または、第1筒状体の溝部に突部が嵌合する第2筒状体は、第1筒状体の突条または溝部に沿って軸方向に移動することができる。また、第2筒状体を軸方向に可動させるための突条や溝部をシャフトに形成する必要がない。そのため、シャフト構造を簡略化することができる。特に、シャフトが金属材料であり、第1筒状体および第2筒状体がプラスチックからなる場合には、上記嵌合構造を比較的簡単に形成しやすいことから低コスト化にも寄与しやすくなる。
【0053】
上記において、第1筒状体表面と第2筒状体の筒内面との間は、わずかな隙間が形成されていてもよいし、隙間がなく、第1筒状体表面と第2筒状体の筒内面とが摺動可能とされていてもよい。
【0054】
なお、シャフトの回転駆動力を第1筒状体に伝達する方法は、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、シャフト表面に設けた1または2以上のピン部と、第1筒状体に設けた上記ピン部が嵌合可能な嵌合部とによって、シャフトの回転駆動力を第1筒状体に伝達することができる。また、シャフト表面に設けた1または2以上の突部または溝部と、第1筒状体の筒内面に設けた1または2以上の溝部または突部とを嵌合させることによって、シャフトの回転駆動力を第1筒状体に伝達することができる。
【0055】
上記搬送システムには、ゴム弾性体と接する第2筒状体が回転によってシャフト上の初期設定位置から軸方向片側に移動した場合に、移動した第2筒状体を初期設定位置方向に再び戻すように第2筒状体の位置を補正する位置補正機構を設けることができる(請求項7)。
【0056】
この場合には、ゴム弾性体と接する第2筒状体が回転によってシャフト上の初期設定位置から軸方向片側に移動しても、搬送ローラの回転停止後には、位置補正機構により、初期設定位置またはその周辺に上記移動した第2筒状体が再び戻される。そのため、ゴム弾性体と接する第2筒状体がシャフトの軸方向片側に片寄ったままとなり難く、ゴム弾性体と接する第2筒状体を、長期にわたって安定して初期設定位置またはその周辺に存在させやすくなる。それ故、平面体の安定した搬送を確保しやすくなる。
【0057】
上記初期設定位置は、ゴム弾性体と接する第2筒状体が設計上最初に配置されるシャフト上の位置であり、用いる搬送ローラの個数等を考慮して決定することができる。例えば、搬送システムが搬送ローラを1つ有する場合、上記初期設定位置は、シャフトの略中央部とすることができる。また、搬送システムが搬送ローラを2つ有する場合、上記初期設定位置は、シャフトの略中央部から一方のシャフト端部側へ一定距離離れた位置、および、シャフトの略中央部から他方のシャフト端部側へ上記一定距離と等距離離れた位置とすることができる。
【0058】
なお、上記位置補正機構は、搬送ローラの回転停止後、移動した第2筒状体を初期設定位置方向に戻すことができればよく、必ずしも初期設定位置と全く同じ位置に第2筒状体を戻すことが要求されるものではない。搬送ローラが再び回転すれば、その回転によって再度軸方向に第2筒状体が移動しうるため、厳密に初期設定位置と同じ位置に戻す意味が少ないからである。
【0059】
上記位置補正機構は、ゴム弾性体と接する第2筒状体の可動範囲外に設けられ、ゴム弾性体と接する第2筒状体の移動を規制するための移動規制体と、ゴム弾性体と接する第2筒状体の端部と移動規制体との間に設けられ、シャフトが内部を貫通するスプリングと、を含んで構成することができる。この際、スプリングのバネ定数は、ゴム弾性体と接する第2筒状体の軸方向への移動を許容しつつ、かつ、移動した第2筒状体を移動方向と反対方向へ戻すことが可能な範囲内に設定される(請求項8)。なお、上記スプリングは、搬送ローラの回転時におけるゴム弾性体と接する第2筒状体の軸方向への移動を規制するためのものではない。
【0060】
この場合、平面体が横ずれを起こした際には、ゴム弾性体と接する第2筒状体が回転によってシャフト上の初期設定位置から軸方向片側に移動する。そして、第2筒状体と移動規制体との間にあるスプリングが圧縮される。搬送ローラの回転停止後には、スプリングが圧縮されて生じた弾発力により、移動した第2筒状体が移動方向と反対方向へ押し戻され、上記初期設定位置またはその周辺に第2筒状体が再配置される。そのため、ゴム弾性体と接する第2筒状体が、シャフトの軸方向片側に片寄ったままとなり難い。それ故、平面体の安定した搬送を長期にわたって確保しやすくなる。さらに、ゴム弾性体と接する第2筒状体がシャフトの端部方向へ移動した場合であっても、移動規制体によってそれ以上端部方向へ移動することができなくなる。そのため、ゴム弾性体と接する第2筒状体がシャフトから脱落するのを防止しやすくなり、搬送性能の維持にも寄与しやすくなる。
【0061】
移動規制体は、ゴム弾性体と接する第2筒状体の可動範囲外の片側シャフト上だけに設けられていてもよいし、ゴム弾性体と接する第2筒状体の可動範囲外の両側シャフト上に設けられていてもよい。後者の場合には、ゴム弾性体と接する第2筒状体がシャフト軸方向に沿っていずれのシャフト端部方向へ移動した場合であっても、ゴム弾性体と接する第2筒状体の脱落を防止することができる。そのため、搬送性能の維持にいっそう寄与しやすくなる。さらには、移動規制体は、第1筒状体の片側または両側の端部に一体化されていてもよいし、着脱自在に設けられていてもよい。
【0062】
移動規制体としては、例えば、外周縁の一部から中心部方向にかけて、シャフトを嵌め込むための開口部を有する略環状部材(例えば、側面視で略「C」字状、略「e」字状等)などを例示することができる。この場合、移動規制体は、シャフトの所定位置表面に形成した周方向の溝部に嵌合させて取り付けることができる。また、移動規制体を第1筒状体と一体化する場合には、例えば、第1筒状体の端部に径方向外側に突出する突出部を設け、これを移動規制体とすることもできる。この場合、上記突出部からなる移動規制体は、好ましくは、フランジ状に形成することができる。また、上記突出部からなる移動規制体は、径方向外側に突出する1または2以上の突出片から形成することもできる。これら移動規制体の材料としては、各種プラスチックや金属材料等を用いることができる。
【0063】
スプリングは、ゴム弾性体と接する第2筒状体の端部と移動規制体との間に設けられておればよい。したがって、例えば、搬送ローラを1つ有し、かつ、ゴム弾性体と接する第2筒状体の可動範囲外の両側に移動規制体がそれぞれ設けられている場合には、第2筒状体の両端部とそれぞれの移動規制体との間にスプリングを設けることができる。また、例えば、搬送ローラを2つ有し、かつ、ゴム弾性体と接する第2筒状体の可動範囲外の両側に移動規制体が設けられている場合には、一方の搬送ローラにおける第2筒状体の外側端部と、これと同側の移動規制体との間、および/または、他方の搬送ローラにおける第2筒状体の外側端部と、これと同側の移動規制体との間にスプリングを設けることができる。さらに、一方の搬送ローラにおける第2筒状体の内側端部と他方の搬送ローラにおける第2筒状体の内側端部との間に1または2以上のスプリングを設けることもできる。
【0064】
スプリングの最伸長時の長さ(自然長)は、ゴム弾性体と接する第2筒状体が初期設定位置にあるときにおける、第2筒状体の端部と移動規制体との間の距離と略同一に設定することができる。この場合には、ゴム弾性体と接する第2筒状体が、初期設定位置から軸方向片側に移動しやすくなる。また、搬送ローラの回転停止後には、ゴム弾性体と接する第2筒状体が、スプリングの弾発力によって押し戻されて初期設定位置に戻りやすくなる。それ故、平面体の安定した搬送をいっそう確保しやすくなる。
【0065】
スプリングの弾発力は、ゴム弾性体と接する第2筒状体の大きさ等にもよるが、例えば、700N/m以下の範囲とすることができる。
【0066】
スプリングは、ゴム弾性体と接する第2筒状体に端部が固定されていてもよいし、移動規制体に端部が固定されていてもよい。あるいは、ゴム弾性体と接する第2筒状体および移動規制体の双方に端部が固定されていなくてもよい。好ましくは、ゴム弾性体と接する第2筒状体の端部にスプリングの一端が固定されているとよい。この際、スプリングと第2筒状体とは、同軸となるように固定されていることが好ましい。なお、第2筒状体にスプリングを固定する方法としては、例えば、第2筒状体内にスプリングの一端を埋め込んだり、第2筒状体の端部とスプリングの一端とを接着剤等により接着したりすることができる。
【0067】
上記搬送システムは、スプリングを外部に用いた上記位置補正機構以外にも、スプリングを内部に用いた他の位置補正機構を採用することもできる。すなわち、他の位置補正機構は、第1筒状体の片側端部と、片側端部と同側における第2筒状体の片側端部に形成された筒内径方向に突出する突出部と、片側端部と突出部との間に設けられ、シャフトが内部を貫通するスプリングとを含んで構成することができる。この際、スプリングのバネ定数は、ゴム弾性体と接する第2筒状体の軸方向への移動を許容しつつ、かつ、移動した第2筒状体を移動方向と反対方向へ戻すことが可能な範囲内に設定される(請求項9)。この際、スプリングは、第1筒状体の片側端部および第2筒状体の突出部に両端が固定されていることが好ましい。
【0068】
この場合、平面体が横ずれを起こした際には、ゴム弾性体と接する第2筒状体が回転によってシャフト上の初期設定位置から軸方向片側に移動する。そして、第1筒状体と第2筒状体の突出部との間にあるスプリングが弾性変形する。搬送ローラの回転停止後には、スプリングが弾性変形して生じた弾発力により、移動した第2筒状体が移動方向と反対方向へ戻され、上記初期設定位置またはその周辺に第2筒状体が再配置される。そのため、ゴム弾性体と接する第2筒状体が、シャフトの軸方向片側に片寄ったままとなり難い。それ故、平面体の安定した搬送を長期にわたって確保しやすくなる。
【0069】
上記搬送システムは、スプリングを用いた上記位置補正機構以外にも、さらに別の位置補正機構を採用することもできる。すなわち、さらに別の位置補正機構は、第1筒状体に設けられた磁石と、第2筒状体に設けられた磁石とを含んで構成することができる。この際、両磁石間に作用する磁力は、第2筒状体の軸方向への移動を許容しつつ、かつ、移動した第2筒状体を移動方向と反対方向へ引き寄せることが可能な範囲内に設定される(請求項10)。
【0070】
この場合には、ゴム弾性体と接する第2筒状体が回転によってシャフト上の初期設定位置から軸方向片側に移動しても、搬送ローラの回転停止後には、両磁石間に作用する磁力により、移動した第2筒状体が移動方向と反対方向へ引き寄せられる。そして、第1筒状体に設けられた磁石の位置(初期設定位置)またはその周辺に第2筒状体が再配置される。そのため、ゴム弾性体と接する第2筒状体が、シャフトの軸方向片側に片寄ったままとなり難い。それ故、平面体の安定した搬送を長期にわたって確保しやすくなる。
【0071】
第1筒状体および第2筒状体に磁石を設ける方法としては、第1筒状体、第2筒状体の内部に磁石を埋め込んだり、第1筒状体、第2筒状体の外周面に磁石を嵌め込んだりするなどの方法を例示することができる。また、第1筒状体、第2筒状体に接着剤や両面テープ等によって磁石を貼り付けることもできる。この際、第1筒状体に配置する磁石と第2筒状体に配置する磁石とは、互いに引き合うように配置することになる。
【0072】
(上記搬送ローラの説明)
上記搬送ローラにおいて、第1筒状体の少なくとも一方の端部に、径方向外側に突出し、ゴム弾性体と接する第2筒状体の移動を規制する移動規制体が形成されており、ゴム弾性体と接する第2筒状体の端部と上記移動規制体との間にスプリングが設けられている構成を採用することができる(請求項13)。
【0073】
この場合には、シャフト上に移動規制体を取り付けなくても、第2筒状体の位置補正を行うことができる。また、この搬送ローラを用いれば、搬送システムの組み立てやメンテナンス時における搬送ローラの取り換えが容易になる。
【0074】
上記搬送ローラにおいて、第2筒状体の片側端部に筒内径方向に突出する突出部が形成されており、第2筒状体の突出部と、この突出部と同側における第1筒状体の片側端部との間にスプリングが設けられている構成を採用することができる(請求項14)。
【0075】
この場合には、シャフト上に移動規制体を取り付けなくても、第2筒状体の位置補正を行うことができる。また、この搬送ローラを用いれば、搬送システムの組み立てやメンテナンス時における搬送ローラの取り換えが容易になる。
【0076】
上記搬送ローラの構成については、上記搬送システムの説明の記載を適宜準用することができるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【実施例】
【0077】
実施例に係る搬送システムおよび搬送ローラについて、図面を用いて具体的に説明する。なお、以下では、画像形成装置の紙送り機構に搬送システムを適用した例を示す。
【0078】
(実施例1)
実施例1に係る搬送システムの概略構成を図1〜図4を用いて説明する。
本例の搬送システムは、図1に示すように、用紙82を送るための紙送り部8を備えた画像形成装置に組み込まれるシステムである。画像形成装置の紙送り部8は、用紙トレイ81上に堆積された複数の用紙82からなる用紙堆積物83から用紙82を送り出すピックアップ部Pと、ピックアップ部Pの下流側に互いに対向して設けられ、ピックアップ部Pから送られた用紙82の重送を防止するフィード部Fおよびリタード部Rとを有している。ピックアップ部Pは、図示しない駆動源に接続されるとともに回転駆動可能に設けられたシャフト2と、シャフト2の回転駆動力が伝達されるピックアップローラ3Pとを有している。フィード部Fは、図示しない駆動源に接続されるとともに回転駆動可能に設けられたシャフト2と、シャフト2の回転駆動力が伝達されるフィードローラ3Fとを有している。リタード部Rは、図示しない駆動源に接続されるとともに回転駆動可能に設けられたシャフト2と、シャフト2の回転駆動力が伝達されるリタードローラ3Rとを有している。本例の搬送システムは、画像形成装置の紙送り部8におけるフィード部Fに適用するものであるが、リタード部Rやピックアップ部Pに適用することも可能である。なお、図1では、フィード部Fおよびリタード部Rの下流における用紙搬送経路上に一対の搬送ローラ3Tが示されている。
【0079】
図2〜図4に示すように、本例の搬送システム1は、画像形成装置の紙送り部8の一部を構成するフィード部Fに回転駆動可能に設けられるシャフト2と、シャフト2の回転駆動力が伝達されるフィードローラ3Fとを備えている。フィードローラ3Fは、シャフト2が筒内を貫通する筒状体30と、筒状体30の外周面に接して形成されたゴム弾性体33とから構成されている。本例の搬送システム1では、フィードローラ3Fを構成する要素のうち、ゴム弾性体33と接する筒状体30が、シャフト2の軸方向に沿って移動可能に構成されている。つまり、本例では、フィードローラ3F自身が、シャフト2の軸方向に沿って移動可能に構成されている。以下、詳細に説明する。
【0080】
シャフト2は、SUS等から形成された中実の円柱部22と、円柱部22の表面に軸方向に沿って形成された突条21とを有している。基本的に、この突条21の形成範囲が、ゴム弾性体33と接する筒状体30の可動範囲とされる。本例では、突条21の長手方向の長さは、円柱部20の長手方向の長さ(シャフト2の全長)よりも短く形成されている。したがって、シャフト2の両端部側には、突条21が形成されていない部分が一定範囲で残されている。本例では、この突条21の非形成範囲が、ゴム弾性体33と接する筒状体30の可動範囲外とされる。
【0081】
筒状体30は、アセタール樹脂等から円筒状に形成されており、筒内面には、筒内を貫通するシャフト2の突条21に対応して溝部302が形成されている。より具体的には、筒状体30は、突条21が形成されているシャフト2の部位における外形に沿った筒内面を有している。筒内面のうち、シャフト2の突条21の位置と重なる位置に形成された凹部が、筒状体30の溝部302とされる。なお、シャフト2表面と筒状体30の筒内面との間には、僅かな隙間C1が設けられている。
【0082】
ゴム弾性体33は、EPDM等のゴムを主成分とするゴム材料から円筒状に形成されており、表面にはシボ加工が施されている。ゴム弾性体33の筒内径は、筒状体30の筒外径よりも僅かに小さく形成されている。本例のフィードローラ3Fは、ゴム弾性体33の筒内に筒状体30が圧入されている。
【0083】
さらに、本例では、シャフト2上における突条21よりも外側、つまり、突条21の端面とシャフト2端面との間におけるシャフト2表面上に、ゴム弾性体33と接する筒状体30の移動を規制するための移動規制体35がそれぞれ設けられている。
【0084】
移動規制体35は、具体的には、金属等を用いて、外周縁の一部から中心部方向にかけて開口部351を有する略環状(側面視で略「C」字状)に形成されている。移動規制体35の開口部351には、内方に突出する突片352が3箇所形成されている。一方、シャフト2表面における突条21の端面とシャフト2端面との間には、周方向にわたって環状溝22が形成されている。そして、シャフト2の環状溝22の部分に、移動規制体35の開口部351が嵌め込まれている。具体的には、移動規制体35の開口部351に形成された突片352がシャフト2表面に形成された環状溝22に嵌合されている。これにより、移動規制体35は、軸方向に位置ずれが生じないようにされている。
【0085】
本例の搬送システム1は、シャフト2の長手方向にわたって形成された突条21に、筒状体30の筒内面に形成された溝部302が嵌合されている。そのため、シャフト2が回転駆動されると、シャフト2の突条21、筒状体30の溝部302を介して、シャフト2の回転駆動力が筒状体30に伝達される。これによりゴム弾性体33と接する筒状体30は回転することができる。また、用紙搬送時に用紙82が横ずれを起こした場合には、用紙82の横ずれに合わせてゴム弾性体33と接する筒状体30がシャフト2の突条21に案内され、用紙82の横ずれ方向と同じ側の軸方向に移動する。それ故、フィードローラ3Fにおける搬送方向の摩擦力が用紙82の横ずれによって低下し難く、搬送方向の摩擦力を十分に確保することができる。したがって、本例の搬送システム1は、ローラ材料に関わらず、搬送性能を向上させることができる。
【0086】
また、用紙82の横ずれによりゴム弾性体33と接する筒状体30がシャフト2の端部方向へ移動した場合であっても、移動規制体35によってそれ以上シャフト2の端部方向へ、ゴム弾性体33と接する筒状体30が移動するのを規制することができる。そのため、ゴム弾性体33と接する筒状体30がシャフト2から脱落するのを防止することができ、搬送性能の維持に寄与することができる。
【0087】
(実施例2)
実施例2に係る搬送システムおよび搬送ローラの概略構成を図5を用いて説明する。
本例の搬送システム1は、画像形成装置の紙送り部8におけるリタード部Rに適用するものである。図5に示すように、本例の搬送システム1は、画像形成装置の紙送り部8の一部を構成するリタード部Rに回転駆動可能に設けられるシャフト2と、シャフト2の回転駆動力が伝達されるリタードローラ3Rとを備えている。基本的な構成については、実施例1と同様である。
【0088】
但し、本例の搬送システム1は、リタードローラ3Rを構成する要素のうち、ゴム弾性体33と接する筒状体30が回転によってシャフト2上の初期設定位置から軸方向片側に移動した場合に、移動した筒状体30を初期設定位置方向に再び戻すように筒状体30の位置を補正する位置補正機構が設けられている。なお、本例における初期設定位置とは、シャフト2の長手方向中央部とリタードローラ3Rの長手方向中央部とがほぼ一致する位置である。
【0089】
本例の搬送システム1における位置補正機構は、ゴム弾性体33と接する筒状体30の可動範囲外に設けられた上述の移動規制体35と、ゴム弾性体33と接する筒状体30の端部と移動規制体35との間に設けられ、シャフト2が内部を貫通するスプリング36とから構成されている。本例では、この構成を達成するため、以下に説明する本例のリタードローラ3Rを用いている。
【0090】
すなわち、本例のリタードローラ3Rは、画像形成装置の紙送り部8の一部を構成するリタード部Rに回転駆動可能に設けられるシャフト2を筒内に貫通させるための筒状体30と、筒状体30の外周面に接して形成されたゴム弾性体33と、ゴム弾性体33と接する筒状体30の端部に一端が固定されたスプリング36とを有している。なお、筒状体30およびゴム弾性体33の構成については、実施例1にて上述した通りである。
【0091】
本例では、筒状体30の一方の端部にスプリング36の一端が固定されており、筒状体30の他方の端部に上記とは別のスプリング36の一端が固定された例を示している。スプリング36は、インサート成形等によって、筒状体30と同軸となるようにその一端が筒状体30の端部内に埋め込まれ、筒状体30と一体化されている。そして、この本例のリタードローラ3Rの筒状体30の筒内およびスプリング36内部にシャフト2を貫通させることにより、本例の搬送システム1が構成されている。なお、両スプリング36における筒状体30側と反対側の端部は、移動規制体35の内側面にほぼ当接している。
【0092】
ここで、スプリング36の最伸長時の長さ(自然長)は、ゴム弾性体33と接する筒状体30がシャフト2上の初期設定位置にあるときにおける、筒状体30の端部と移動規制体35との間の距離と略同一に設定されている。また、スプリング36のバネ定数は、ゴム弾性体33と接する筒状体30の回転による軸方向への移動を許容しつつ、かつ、リタードローラ3Rの回転停止後には、移動した筒状体30を移動方向と反対方向へ押し戻すことができる範囲内に設定されている。
【0093】
本例のリタードローラ3Rを用いた本例の搬送システム1によれば、用紙搬送時に用紙82が横ずれを起こした場合、用紙82の横ずれに合わせてゴム弾性体33と接する筒状体30がシャフト2の突条21に案内され、用紙82の横ずれ方向と同じ側の軸方向に移動するとともに、移動側に存在するスプリング36が圧縮される。この際、スプリング36のバネ定数は、上記の通りに設定されているため、ゴム弾性体33と接する筒状体30の回転による軸方向への移動は許容される。また、リタードローラ3Rの回転停止後には、スプリング36が圧縮されて生じた弾発力により、移動した筒状体30が移動方向と反対方向、つまり、初期設定位置方向へ押し戻される。ここで、本例では、スプリング36の最伸長時の長さ(自然長)は、ゴム弾性体33と接する筒状体30がシャフト2上の初期設定位置にあるときにおける筒状体30の端部と移動規制体35との間の距離に合わせてある。そのため、ゴム弾性体33と接する筒状体30は、スプリング36の弾発力によって、ほぼ初期設定位置と等しい位置まで押し戻されて再配置される。
【0094】
そのため、本例の搬送システム1によれば、ゴム弾性体33と接する筒状体30が、シャフト2の軸方向のいずれか一方に片寄ったままで存在するといった状態を減らすことができる。本例のリタードローラ3Rによれば、本例の搬送システム1におけるリタードローラ3Rの組み付け時やメンテナンス時におけるリタードローラ3Rの交換時に、ゴム弾性体33と接する筒状体30とスプリング36とを別々にシャフト2に取り付けなくても済む。そのため、搬送システム1の組み付け性やメンテナンス性を向上させることができる。なお、その他の作用効果は実施例1と同様である。
【0095】
本例では、搬送システム1がリタードローラ3Rを1つ有し、かつ、リタードローラ3Rにおける筒状体30の両端部にそれぞれスプリング36が設けられている例を示した。これ以外にも、図6に示すように、搬送システム1がリタードローラ3Rを2つ有し、リタードローラ3Rにおける筒状体30の片方の端部にスプリング36の一端が設けられている構成を採用することもできる。この際、各リタードローラ3Rの初期設定位置は、シャフト2の長手方向中央部からそれぞれの端部側へ等距離離れた位置とリタードローラ3Rの長手方向中央部とがほぼ一致する位置とすることができる。この場合にも、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。但し、図6の場合には、ゴム弾性体33と接する筒状体30がシャフト2中央部側へ移動した場合には、リタードローラ3Rの回転停止後に、ゴム弾性体33と接する筒状体30が初期設定位置に戻らない。しかし、シャフト2の片側端部にゴム弾性体33と接する筒状体30が存在するわけではないので、搬送性能にそれほど問題をきたすことはない。
【0096】
また、図7に示すように、搬送システム1がリタードローラ3Rを2つ有し、リタードローラ3Rにおける筒状体30の両端部にそれぞれスプリング36の一端が設けられている構成を採用することもできる。この場合、シャフト2の長手方向中央部に別の移動規制体35’を設け、この中央部に設けた移動規制体35’とシャフト2の端部側における移動規制体35との間に、スプリング36を2つ有するリタードローラ3Rを配置すればよい。さらには、上記中央部に移動規制体35’を設けず、2つのリタードローラ3Rの間に、1または2以上のスプリングを配置してもよい。これらの場合も、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0097】
(実施例3)
実施例3に係る搬送システムおよび搬送ローラの概略構成を図8〜図9を用いて説明する。
本例の搬送システム1は、画像形成装置の紙送り部8におけるフィード部Fに適用するものである。図8〜図9に示すように、本例の搬送システム1は、画像形成装置の紙送り部9の一部を構成するフィード部Fに回転駆動可能に設けられるシャフト2と、シャフト2の回転駆動力が伝達される本例のフィードローラ3Fとを備えている。基本的な構成については、実施例1と同様である。
【0098】
但し、本例の搬送システム1は、本例のフィードローラ3Fを構成する要素のうち、ゴム弾性体33と接する筒状体30が回転によってシャフト2上の初期設定位置から軸方向片側に移動した場合に、移動した筒状体30を初期設定位置方向に再び戻すように筒状体30の位置を補正する位置補正機構が設けられている。なお、本例における初期設定位置とは、シャフト2の長手方向中央部とフィードローラ3Fの長手方向中央部とがほぼ一致する位置である。また、本例では、シャフト2の両端部側にそれぞれ移動規制体35を設けていない例を示しているが、実施例1と同様に移動規制体35を設けることも可能である。また、シャフト2は、アセタール樹脂等のプラスチックから形成されている。
【0099】
本例の搬送システム1における位置補正機構は、シャフト2の一部に設けられた磁石37aと、筒状体30に設けられた磁石37bとから構成されている。両磁石37a、37b間に作用する磁力は、筒状体30の軸方向への移動を許容しつつ、かつ、移動した筒状体30を移動方向と反対方向へ引き寄せることが可能な範囲内に設定されている。シャフト2側の磁石37aは、略円筒状に形成されており、シャフト2の長手方向中央部におけるシャフト2の突条21を除く部位に、N極が表面に位置するように固定されている。一方、筒状体30側の磁石37bは、図9に示すように、略半円筒状に形成されており、S極がシャフト2表面側に位置するように、筒状体30の長手方向中央部における筒状体30表面に嵌め込まれて固定されている。
【0100】
本例のフィードローラ3Fを用いた本例の搬送システム1によれば、用紙搬送時に用紙82が横ずれを起こした場合、用紙82の横ずれに合わせてゴム弾性体33と接する筒状体30がシャフト2の突条21に案内され、用紙82の横ずれ方向と同じ側の軸方向に移動する。この際、両磁石37a、37b間に作用する磁力は、上記の通りに設定されているため、ゴム弾性体33と接する筒状体30の回転による軸方向への移動は許容される。また、フィードローラ3Fの回転停止後には、両磁石37a、37b間に作用する磁力により、移動した筒状体30が移動方向と反対方向、つまり、初期設定位置方向へ引き戻され、ほぼ初期設定位置と等しい位置に再配置される。そのため、本例の搬送システム1によれば、ゴム弾性体33と接する筒状体30が、シャフト2の軸方向のいずれか一方に片寄ったままで存在するといった状態を減らすことができる。なお、その他の作用効果は実施例1と同様である。
【0101】
(実施例4)
実施例4に係る搬送システムおよび搬送ローラの概略構成を図10〜図12を用いて説明する。
本例の搬送システム1は、画像形成装置の紙送り部8におけるピックアップ部Pに適用するものである。図10〜図12に示すように、本例の搬送システム1は、画像形成装置の紙送り部8の一部を構成するピックアップ部Pに回転駆動可能に設けられるシャフト2と、シャフト2の回転駆動力が伝達される本例のピックアップローラ3Pとを備えている。ピックアップローラ3Pは、シャフト2が筒内を貫通する筒状体30と、筒状体30の外周面に接して形成されたゴム弾性体33とから構成されている。ここで、本例では、筒状体30は、後述するように、第1筒状体31、第1筒状体31の外周に設けられた第2筒状体32の2つの部材から構成されており、第2筒状体32の外周面に接してゴム弾性体33が形成されている。本例の搬送システム1では、本例のピックアップローラ3Pを構成する要素のうち、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32が、シャフト2の軸方向に沿って移動可能に構成されている。以下、詳細に説明する。
【0102】
シャフト2は、SUS等から形成された中実の円柱部20と、円柱部20の表面の一方の端部寄りに軸方向と垂直な方向に対向して立設された一対のピン部23とを有している。なお、本例は、実施例1〜実施例3とは異なり、シャフト2自身は長手方向に沿った突条21を有していない。
【0103】
筒状体30は、アセタール樹脂等から略円筒状に形成されており、シャフト2が筒内を貫通する第1筒状体31と、第1筒状体31の外周に設けられ、外周面にてゴム弾性体33と接する第2筒状体32とを備えている。つまり、本例では、筒状体30が、2つの部材から構成されている点で、実施例1〜実施例3とは異なっている。また、第1筒状体31は、シャフト2の軸方向に沿って移動しないようにシャフト2に取り付けられている。具体的には、本例では、シャフト2表面の周方向に形成した環状溝(不図示)に、第1筒状体31の筒内面に設けた嵌合突起(不図示)が嵌合されている。なお、第1筒状体31のシャフト2への取付方法は、これに限定されるものではない。
【0104】
第1筒状体31は、筒表面に軸方向に沿って形成された突条311を有している。本例では、突条311の長手方向の長さは、第1筒状体31の長手方向の長さとほぼ同じ長さとされている。基本的には、この突条311の形成範囲が、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32の可動範囲とされる。なお、第1筒状体31の長手方向の長さは、第2筒状体32の長手方向の長さよりも長く、かつ、シャフト2の長手方向の長さよりは短くされている。
【0105】
第1筒状体31の両端部には、径方向外側に突出し、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32の移動を規制するための移動規制体35が形成されている。この移動規制体35は、第1筒状体31の外径(但し、突条311が形成された部分を除く)よりも外径の大きなフランジ状に形成されている。なお、本例では、第1筒状体31の一方の端部における移動規制体35は、第1筒状体31と一体形成されている。第1筒状体31の他方の端部における移動規制体35は、第2筒状体32の筒内に第1筒状体31を貫通させた後、第1筒状体31に後付けすることにより形成されている。第1筒状体31の一方の端部における移動規制体35の外側面には、シャフト2に形成された一対のピン部23の外形に沿った嵌合溝353が形成されている。そしてこの嵌合溝353に一対のピン部23が嵌合されている。
【0106】
なお、本例では、第1筒状体31の両端部に移動規制体35が設けられているが、移動規制体35を有さない構成や、第1筒状体31の片側端部に移動規制体35が設けられている構成も採用可能である。これら場合、第1筒状体31の一方の端面における肉厚の範囲内に、ピン部23が嵌合する嵌合溝353を形成することができる。また、移動規制体35は、第1筒状体31の両端部に着脱自在に設けることも可能である。
【0107】
第2筒状体32は、筒内面に、筒内を貫通する第1筒状体31の突条311に対応して溝部322が形成されている。より具体的には、第2筒状体32は、突条311が形成されている第1筒状体31の外形に沿った筒内面を有している。筒内面のうち、第1筒状体31の突条311の位置と重なる位置に形成された凹部が第2筒状体32の溝部322とされる。なお、第1筒状体31の筒表面と第2筒状体32の筒内面との間には、僅かな隙間C2が設けられている。
【0108】
ゴム弾性体33は、EPDM等のゴムを主成分とするゴム材料から円筒状に形成されており、表面にはシボ加工が施されている。ゴム弾性体33の筒内径は、第2筒状体32の筒外径よりも僅かに小さく形成されている。本例のピックアップローラ3Pは、ゴム弾性体33の筒内に第2筒状体32が圧入されるとともに、この第2筒状体32の筒内に第1筒状体31が貫通している。
【0109】
本例のピックアップローラ3Pを用いた本例の搬送システム1は、シャフト2の表面に軸方向に移動しないように取り付けられた第1筒状体31の突条311に、第2筒状体32の筒内面に形成された溝部322が嵌合されている。また、本例の搬送システム1では、第1筒状体31の一方の端部における移動規制体35の外側面に形成された嵌合溝353に、シャフト2のピン部23が嵌合されている。そのため、シャフト2が回転駆動されると、シャフト2のピン部23、第1筒状体31の突条311、第2筒状体32の溝部322を介して、シャフト2の回転駆動力が第2筒状体32に伝達される。これによりゴム弾性体33と接する第2筒状体32は回転することができる。また、用紙搬送時に用紙82が横ずれを起こした場合には、用紙82の横ずれに合わせてゴム弾性体33と接する第2筒状体32が第1筒状体31の突条311に案内され、用紙82の横ずれ方向と同じ側の軸方向に移動する。それ故、ピックアップローラ3Pにおける搬送方向の摩擦力が用紙82の横ずれによって低下し難く、搬送方向の摩擦力を十分に確保することができる。したがって、本例の搬送システム1は、ローラ材料に関わらず、搬送性能を向上させることができる。加えて、実施例1〜実施例3のように、シャフト2の表面に軸方向に沿って突条21を形成する必要がないので、従来のシャフトを流用しやすい利点もある。
【0110】
また、用紙82の横ずれによりゴム弾性体33と接する第2筒状体32がシャフト2の端部方向へ移動した場合であっても、第1筒状体31に形成された移動規制体35によってそれ以上シャフト2の端部方向へ、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32が移動するのを規制することができる。そのため、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32がシャフト2から脱落するのを防止することができ、搬送性能の維持に寄与することができる。
【0111】
(実施例5)
実施例5に係る搬送システムおよび搬送ローラの概略構成を図13を用いて説明する。
本例の搬送システム1は、画像形成装置の紙送り部8におけるフィード部Fに適用するものである。図13に示すように、本例の搬送システム1は、画像形成装置の紙送り部8の一部を構成するフィード部Fに回転駆動可能に設けられるシャフト2と、シャフト2の回転駆動力が伝達される本例のフィードローラ3Fとを備えている。基本的な構成は、実施例4と同様である。
【0112】
但し、本例の搬送システム1は、本例のフィードローラ3Fを構成する要素のうち、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32が回転によってシャフト2上の初期設定位置から軸方向片側に移動した場合に、移動した第2筒状体32を初期設定位置方向に再び戻すように第2筒状体32の位置を補正する位置補正機構が設けられている。なお、本例における初期設定位置とは、シャフト2の長手方向中央部とフィードローラ3Fの長手方向中央部とがほぼ一致する位置である。
【0113】
本例の搬送システム1における位置補正機構は、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32の可動範囲外に設けられた上述の移動規制体35と、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32の端部と移動規制体35との間に設けられ、第2筒状体32が内部を貫通するスプリング36とから構成されている。本例では、この構成を達成するため、以下に説明する本例のフィードローラ3Fを用いている。
【0114】
すなわち、本例のフィードローラ3Fは、上述した実施例4のピックアップローラ3Pと基本的に同様の構成であるが、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32の端部と第1筒状体31の端部に形成された移動規制35体との間に、第2筒状体32が内部を貫通するスプリング36が設けられている点で大きく異なっている。
【0115】
本例では、第2筒状32体の両端部にそれぞれスプリング36の一端が固定された例を示している。スプリング36は、インサート成形等によって、第2筒状体32と同軸となるようにその一端が第2筒状体32の端部内に埋め込まれることにより、第2筒状体32と一体化されている。なお、両スプリング36における第2筒状体32側と反対側の端部は、移動規制体35の内側面にほぼ当接している。
【0116】
ここで、スプリング36の最伸長時の長さ(自然長)は、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32がシャフト2上の初期設定位置にあるときにおける、第2筒状体32の端部と移動規制体36との間の距離と略同一に設定されている。また、スプリング36のバネ定数は、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32の回転による軸方向への移動を許容しつつ、かつ、フィードローラ3Fの回転停止後には、移動した第2筒状体32を移動方向と反対方向へ押し戻すことができる範囲内に設定されている。
【0117】
本例のフィードローラ3Fを用いた本例の搬送システム1によれば、用紙搬送時に用紙82が横ずれを起こした場合、用紙82の横ずれに合わせてゴム弾性体33と接する第2筒状32体が第1筒状体31の突条311に案内され、用紙82の横ずれ方向と同じ側の軸方向に移動するとともに、移動側に存在するスプリング36が圧縮される。この際、スプリング36のバネ定数は、上記の通りに設定されているため、ゴム弾性33体と接する第2筒状体32の回転による軸方向への移動は許容される。また、フィードローラ3Fの回転停止後には、スプリング36が圧縮されて生じた弾発力により、移動した第2筒状体32が移動方向と反対方向、つまり、初期設定位置方向へ押し戻される。ここで、本例では、スプリング36の最伸長時の長さ(自然長)が、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32がシャフト2上の初期設定位置にあるときの第2筒状体32の端部と移動規制体35との間の距離に合わせてある。そのため、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32は、スプリング36の弾発力によって、ほぼ初期設定位置と等しい位置まで押し戻されて再配置される。
【0118】
そのため、本例の搬送システム1およびフィードローラ3Fによれば、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32が、シャフト2の軸方向のいずれか一方に片寄ったままで存在するといった状態を減らすことができる。さらに、本例のフィードローラ3Fによれば、本例の搬送システム1におけるフィードローラ2Fの組み付け時やメンテナンス時におけるフィードローラ3Fの交換時に、フィードローラ3Fとスプリング36とを別々にシャフト2に取り付けなくても済む。そのため、搬送システム1の組み付け性やメンテナンス性を向上させることができる。なお、その他の作用効果は実施例4と同様である。
【0119】
(実施例6)
実施例6に係る搬送システムおよび搬送ローラの概略構成を図14〜図17を用いて説明する。
本例の搬送システム1は、画像形成装置の紙送り部8におけるリタード部Rに適用するものである。図14に示すように、本例の搬送システム1は、画像形成装置の紙送り部8の一部を構成するリタード部Rに回転駆動可能に設けられるシャフト2と、シャフト2の回転駆動力が伝達される本例のリタードローラ3Rとを備えている。リタードローラ3Rは、シャフト2が筒内を貫通する筒状体30と、筒状体30の外周面に接して形成されたゴム弾性体33とから構成されている。ここで、本例では、筒状体30は、実施例4と同様に、第1筒状体31、第1筒状体31の外周に設けられた第2筒状体32の2つの部材から構成されており、第2筒状体32の外周面に接してゴム弾性体33が形成されている。本例の搬送システム1では、本例のリタードローラ3Rを構成する要素のうち、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32が、シャフト2の軸方向に沿って移動可能に構成されている。以下、詳細に説明する。
【0120】
シャフト2、ゴム弾性体33については、実施例4と同様であるので説明を省略する。筒状体30を構成する第1筒状体31については、第1筒状体31の長手方向の長さが、第2筒状体32の長手方向の長さとほぼ同じとされている点、第1筒状体31の他方の端部に移動規制体35が形成されていない点で、実施例4と異なっている。なお、本例では、第1筒状体31の一方の端部に形成されている移動規制体35の内側から突条311の長さの2倍未満、好ましくは1.5倍以下の範囲が、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32の可動範囲とされる。つまり、本例では、第1筒状体31の突条311に第2筒状体32の溝部322が嵌合された状態を維持できる範囲が、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32の可動範囲とされる。
【0121】
筒状体30を構成する第2筒状体32については、第2筒状体32の片側端部(第1筒状体31における移動規制35体の形成側と反対側)に筒内径方向に突出する突出部312を有している点で、実施例4と異なっている。本例において、突出部312は、第2筒状体32の筒内径方向に突出するフランジ状に形成されている。この突出部312は、第2筒状体32の片側端部から筒内径方向に突出する1または2以上の突出片から形成することもできる。また、突出部312は、第2筒状体32の片側端部側における筒内周面から筒内径方向に突出させることもできる。
【0122】
また、本例の搬送システム1は、リタードローラ3Rを構成する要素のうち、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32が回転によってシャフト2上の初期設定位置から軸方向片側に移動した場合に、移動した第2筒状体32を初期設定位置方向に再び戻すように第2筒状体32の位置を補正する位置補正機構が設けられている。なお、本例における初期設定位置とは、シャフト2の長手方向中央部とリタードローラ3Rの長手方向中央部とがほぼ一致する位置である。
【0123】
本例の搬送システム1における位置補正機構は、第1筒状体31の片側端部と、この片側端部と同側における第2筒状体32の突出部312と、片側端部と突出部312の間に設けられ、シャフト2が内部を貫通するスプリング36とから構成されている。本例の搬送システム1では、この構成を達成するため、本例のリタードロー3Rを用いている。本例のリタードローラ3Rでは、第2筒状体32の突出部312と、この突出部312と同側における第1筒状体31の片側端部との間にスプリング36が設けられている。なお、スプリング36の一方の端部は、第1筒状体311の片側端部に固定されている。また、スプリング36の他方の端部は、第2筒状体32の突出部312に固定されている。
【0124】
ここで、スプリング36の最伸長時の長さ(自然長)は、ゴム弾性体44と接する第2筒状体32がシャフト2上の初期設定位置にあるときにおける、第1筒状体31の片側端部と第2筒状体32の突出部312との間の距離と略同一に設定されている。また、スプリング36のバネ定数は、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32の回転による軸方向への移動を許容しつつ、かつ、リタードローラ3Rの回転停止後には、移動した第2筒状体32を移動方向と反対方向へ押し戻すことができる範囲内に設定されている。
【0125】
本例のリタードローラ3Rを用いた本例の搬送システム1によれば、用紙搬送時に用紙82が横ずれを起こした場合、用紙82の横ずれに合わせてゴム弾性体33と接する第2筒状体32がシャフト2の突条311に案内され、用紙82の横ずれ方向と同じ側の軸方向に移動するとともに、移動側に存在するスプリング36が弾性変形(圧縮変形または引張変形)する。この際、スプリング36のバネ定数は、上記の通りに設定されているため、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32の回転による軸方向への移動は許容される。また、リタードローラ3Rの回転停止後には、スプリング36が弾性変形して生じた弾発力により、移動した第2筒状体32が移動方向と反対方向、つまり、初期設定位置方向へ戻される。ここで、本例では、スプリング36の最伸長時の長さ(自然長)が、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32がシャフト2上の初期設定位置にあるときにおける、第1筒状体31の片側端部と第2筒状体32の突出部312との間の距離に合わせてある。そのため、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32は、スプリング36の弾発力によって、ほぼ初期設定位置と等しい位置まで戻されて再配置される。
【0126】
そのため、本例の搬送システム1によれば、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32が、シャフト2の軸方向のいずれか一方に片寄ったままで存在するといった状態を減らすことができる。本例のリタードローラ3Rによれば、本例の搬送システム1におけるリタードローラ3Rの組み付け時やメンテナンス時におけるリタードローラ3Rの交換時に、ゴム弾性体33と接する第2筒状体32、第1筒状体31およびスプリング36を別々にシャフト2に取り付けなくても済む。そのため、搬送システム1の組み付け性やメンテナンス性を向上させることができる。なお、その他の作用効果は実施例4と同様である。
【0127】
(実験例)
以下、実施例2に係る搬送システムおよび搬送ローラの構成を用いて、ローラ材料に関わらず、搬送性能を向上させることが可能であることを確認するため、ローラ試料を作製して評価試験を行った。なお、作製したローラ試料において、シャフトは、長さ110mm、直径6mm(突条部位は除く)のSUS製とした。突条は、長さ50mm、断面:縦1mm×横2mmとした。筒状体は、ポリアセタール製であり、軸方向の長さは30mm、筒内径は直径6mm、筒外径は直径16mmとした。ゴム弾性体は、軸方向の長さが24mmであり、筒内径が直径16mm、筒外径が直径25mmとした。この際、ゴム弾性体の材質には、EPDM、ウレタンゴム、シリコーンゴムのいずれかを用いた。スプリングには、バネ定数が500N/m、自然長が10mmのものを用いた。スプリングの一端は、接着剤によって筒状体の端部に接着した。なお、比較のため、ゴム弾性体が軸方向へ全く可動しないようにシャフトに固定したローラ試料もあわせて作製した。
【0128】
<耐久性評価>
作製した各種ローラ試料を、カラープリンター(京セラ(株)製、「KM−8030」)のフィード部に組み込み、300,000枚の通紙を行った。なお、通紙に供する用紙には、INTERNATIONAL PAPER社製「REY」を用いた。
【0129】
フィード部にて給紙不具合が全く発生しなかった場合を「A」、給紙不具合が5回未満で発生した場合を「B」、給紙不具合が5回以上10回未満で発生した場合を「C」、給紙不具合が10回以上30回未満で発生した場合を「D」、給紙不具合が30回以上発生した場合を「E」と判定した。
【0130】
<通紙性評価>
作製した各種ローラ試料を、カラープリンター(京セラ(株)製、「KM−8030」)のリタード部に組み込み、300,000枚の通紙を行った。なお、通紙に供する用紙には、INTERNATIONAL PAPER社製「REY」を用いた。
【0131】
リタード部にて用紙通過不具合が全く発生しなかった場合を「A」、用紙通過不具合が5回未満で発生した場合を「B」、用紙通過不具合が5回以上10回未満で発生した場合を「C」、用紙通過不具合が10回以上30回未満で発生した場合を「D」、用紙通過不具合が30回以上発生した場合を「E」と判定した。
【0132】
上記実験結果を、まとめて表1に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
表1に示されるように、搬送ローラを構成する要素のうち、ゴム弾性体と接する筒状体が、シャフトの軸方向に沿って移動可能に構成されている場合には、ローラ材料に関わらず、搬送性能を向上させることができることが確認された。また、実験後にローラ試料1〜3を調査したところ、いずれも筒状体が初期設定位置の周辺に配置されていることが確認された。
【0135】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0136】
1 搬送システム
2 シャフト
20 円柱部
21 突条
22 環状溝
23 ピン部
3P ピックアップローラ
3F フィードローラ
3R リタードローラ
3T 搬送ローラ
30 筒状体
302 溝部
31 第1筒状体
311 突条
312 突出部
32 第2筒状体
322 溝部
33 ゴム弾性体
35 移動規制体
351 開口部
352 突片
353 嵌合溝
36 スプリング
37a、b 磁石
P ピックアップ部
F フィード部
R リタード部
8 紙送り部
81 用紙トレイ
82 用紙
83 用紙堆積部
C1、C2 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面体を搬送する搬送部を備えた装置に組み込まれる搬送システムであって、
上記搬送部に回転駆動可能に設けられるシャフトと、
該シャフトが筒内を貫通する筒状体および該筒状体の外周面に接して形成されたゴム弾性体を有し、かつ上記シャフトの回転駆動力が伝達される搬送ローラとを備え、
上記ゴム弾性体と接する筒状体が、上記シャフトの軸方向に沿って移動可能に構成されていることを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送システムにおいて、
上記シャフトは、表面に軸方向に沿って突条または溝部を有しており、
上記筒状体は、筒内面に上記シャフトの突条または溝部に対応して形成された溝部または突条を有しており、
上記シャフトの突条または溝部に、上記筒状体の溝部または突条が嵌合されていることを特徴とする搬送システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の搬送システムにおいて、
上記ゴム弾性体と接する筒状体が回転によって上記シャフト上の初期設定位置から軸方向片側に移動した場合に、上記移動した筒状体を初期設定位置方向に再び戻すように筒状体の位置を補正する位置補正機構が設けられていることを特徴とする搬送システム。
【請求項4】
請求項3に記載の搬送システムにおいて、
上記位置補正機構は、
上記ゴム弾性体と接する筒状体の可動範囲外に設けられ、上記ゴム弾性体と接する筒状体の移動を規制するための移動規制体と、
上記ゴム弾性体と接する筒状体の端部と上記移動規制体との間に設けられ、上記シャフトが内部を貫通するスプリングと、を含んで構成されており、
上記スプリングのバネ定数は、上記ゴム弾性体と接する筒状体の軸方向への移動を許容しつつ、かつ、上記移動した筒状体を移動方向と反対方向へ戻すことが可能な範囲内に設定されていることを特徴とする搬送システム。
【請求項5】
請求項3に記載の搬送システムにおいて、
上記位置補正機構は、
上記シャフトの一部に設けられた磁石と、上記筒状体に設けられた磁石とを含んで構成されており、
上記両磁石間に作用する磁力は、上記筒状体の軸方向への移動を許容しつつ、かつ、上記移動した筒状体を移動方向と反対方向へ引き寄せることが可能な範囲内に設定されていることを特徴とする搬送システム。
【請求項6】
請求項1に記載の搬送システムにおいて、
上記筒状体は、上記シャフトが筒内を貫通する第1筒状体と、該第1筒状体の外周に設けられ、外周面にて上記ゴム弾性体と接する第2筒状体とを備え、
上記第1筒状体は、上記シャフトの軸方向に沿って移動しないように取り付けられるとともに、表面に軸方向に沿って突条または溝部を有しており、
上記第2筒状体は、筒内面に上記第1筒状体の突条または溝部に対応して形成された溝部または突条を有しており、
上記第1筒状体の突条または溝部に、上記第2筒状体の溝部または突条が嵌合されていることを特徴とする搬送システム。
【請求項7】
請求項6に記載の搬送システムにおいて、
上記ゴム弾性体と接する第2筒状体が回転によって上記シャフト上の初期設定位置から軸方向片側に移動した場合に、上記移動した第2筒状体を初期設定位置方向に再び戻すように第2筒状体の位置を補正する位置補正機構が設けられていることを特徴とする搬送システム。
【請求項8】
請求項7に記載の搬送システムにおいて、
上記位置補正機構は、
上記ゴム弾性体と接する第2筒状体の可動範囲外に設けられ、上記ゴム弾性体と接する第2筒状体の移動を規制するための移動規制体と、
上記ゴム弾性体と接する第2筒状体の端部と上記移動規制体との間に設けられ、上記シャフトが内部を貫通するスプリングと、を含んで構成されており、
上記スプリングのバネ定数は、上記ゴム弾性体と接する第2筒状体の軸方向への移動を許容しつつ、かつ、上記移動した第2筒状体を移動方向と反対方向へ戻すことが可能な範囲内に設定されていることを特徴とする搬送システム。
【請求項9】
請求項7に記載の搬送システムにおいて、
上記位置補正機構は、
上記第1筒状体の片側端部と、該片側端部と同側における上記第2筒状体の片側端部に形成された筒内径方向に突出する突出部と、上記片側端部と上記突出部との間に設けられ、上記シャフトが内部を貫通するスプリングと、を含んで構成されており、
上記スプリングのバネ定数は、上記ゴム弾性体と接する第2筒状体の軸方向への移動を許容しつつ、かつ、上記移動した第2筒状体を移動方向と反対方向へ戻すことが可能な範囲内に設定されていることを特徴とする搬送システム。
【請求項10】
請求項7に記載の搬送システムにおいて、
上記位置補正機構は、
上記第1筒状体に設けられた磁石と、上記第2筒状体に設けられた磁石とを含んで構成されており、
上記両磁石間に作用する磁力は、上記第2筒状体の軸方向への移動を許容しつつ、かつ、上記移動した第2筒状体を移動方向と反対方向へ引き寄せることが可能な範囲内に設定されていることを特徴とする搬送システム。
【請求項11】
平面体を搬送する搬送部を備えた装置に組み込まれる搬送システムに用いられる搬送ローラであって、
上記搬送部に回転駆動可能に設けられるシャフトを筒内に貫通させるための筒状体と、
該筒状体の外周面に接して形成されたゴム弾性体と、
上記ゴム弾性体と接する筒状体の端部に一端が固定されたスプリングとを有することを特徴とする搬送ローラ。
【請求項12】
平面体を搬送する搬送部を備えた装置に組み込まれる搬送システムに用いられる搬送ローラであって、
上記搬送部に回転駆動可能に設けられるシャフトを筒内に貫通させるための筒状体と、
該筒状体の外周面に接して形成されたゴム弾性体とを有し、
上記筒状体は、上記シャフトを筒内に貫通させるための第1筒状体と、該第1筒状体の外周に設けられ、外周面にて上記ゴム弾性体と接する第2筒状体とを備え、
上記第1筒状体は、表面に軸方向に沿って突条または溝部を有しており、
上記第2筒状体は、筒内面に上記第1筒状体の突条または溝部に対応して形成された溝部または突条を有しており、
上記第1筒状体の突条または溝部に、上記第2筒状体の溝部または突条が嵌合されていることを特徴とする搬送ローラ。
【請求項13】
請求項12に記載の搬送ローラにおいて、
上記第1筒状体の少なくとも一方の端部に、径方向外側に突出し、上記ゴム弾性体と接する第2筒状体の移動を規制する移動規制体が形成されており、
上記ゴム弾性体と接する第2筒状体の端部と上記移動規制体との間にスプリングが設けられていることを特徴とする搬送ローラ。
【請求項14】
請求項12に記載の搬送ローラにおいて、
上記第2筒状体の片側端部に筒内径方向に突出する突出部が形成されており、
該第2筒状体の突出部と、該突出部と同側における上記第1筒状体の片側端部との間にスプリングが設けられていることを特徴とする搬送ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−95540(P2013−95540A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238381(P2011−238381)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】