説明

搬送用パレット

【課題】コスト高や生産性低下を伴うことなく、段積み時のパレットの落ち込みを防止することができる搬送用パレットを提供すること。
【解決手段】本発明の搬送用パレット11は、パレット本体12、複数の仕切壁22,23、複数の収容凹部24を備える。パレット本体12は外周部にフレーム部21を有する。仕切壁22,23は、パレット本体12の表面13にてフレーム部21の内側領域に縦横に設けられる。収容凹部24は、仕切壁22,23で区画され、板状物1を個別に収容可能である。仕切壁23の側面26の複数箇所には、隣接するパレット11の裏面14側を支持して落ち込みを防止する受け部31が形成される。受け部31が形成された箇所を通るパレット本体12の断面は、裏面14側から表面13側に行くほど幅狭な形状を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状物を収容した状態で複数枚段積みすることが可能な搬送用パレットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電池等に代表される電気部品の製造現場においては、板状部品を多数収容してさらにこれを複数枚段積みした状態で搬送、保管等するためのパレットがよく使用されている。通常この種の搬送用パレットは、1枚の熱軟化性フィルムを原料とし、金型を用いて真空成形することにより作製される。また、この種の搬送用パレットは、薄くて軽量であることから、複数枚段積みしても場所を取らないという利点がある。
【0003】
従来の搬送用パレットについて簡単に説明する。搬送用パレットを構成するパレット本体は、外周部にフレーム部を有している。パレット本体の表面においてフレーム部の内側領域には、縦横に設けられた複数の仕切壁が配設されている。これら複数の仕切壁は、複数の収容凹部を区画形成している。そして、複数枚の板状部品は、複数の収容凹部の底部に各々載置されることで、個別に収容可能となっている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−335339号公報
【特許文献2】特開2003−335340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のパレットは、そもそも薄い熱軟化性フィルムを原料として用いた真空成形により作製されたものであるため、強度が比較的弱く、変形が起こりやすい。このため、パレットを段積みした場合には、上側のパレットが深く落ち込んでしまう。その結果、パレットを製造設備に設置する際や板状部品を収容する際に、1枚ずつ引き剥がす手間が生じてしまい、作業が非常に煩雑になる。また、段積み時において収容凹部に板状部品が収容されていると、上側のパレットの裏面側が板状部品の上面に接触することがある。この場合、板状部品がダメージを受け、外観や特性を損なうおそれがある。
【0006】
従来このような問題を解決するためには、例えば、フレーム部における異なる位置に段差状のガイド部を設けた搬送用パレットを2種類作製し、これらを交互に段積みするといった対策が考えられる。しかしながら、この場合には2種類の金型が必要になり、製造コストが2倍高くついてしまう。
【0007】
また、あらかじめガイド部の位置をずらして設けておき、1枚おきに180°回転させて段積みするという対策も一応考えられる。しかしながら、この場合には作業者に対する負担が大きくなって生産性を低下させるばかりか、段積み時に重ね間違いが起こる可能性もある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、コスト高や生産性低下を伴うことなく、段積み時のパレットの落ち込みを防止することができる搬送用パレットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段[1]〜[6]を以下に列挙する。
【0010】
[1]金型を用いて熱軟化性フィルムを真空成形することにより作製されたシート状成形体であり、板状物を収容した状態で複数枚段積みすることが可能な搬送用パレットであって、表面及び裏面を有し、外周部にフレーム部を有するパレット本体と、前記パレット本体の前記表面において前記フレーム部の内側領域に縦横に設けられた複数の仕切壁と、前記複数の仕切壁によって区画され、前記板状物を底部に載置して個別に収容可能な複数の収容凹部とを備え、前記複数の仕切壁の側面における複数箇所には、隣接するパレットの裏面側を支持して落ち込みを防止する受け部が形成され、前記受け部が形成された箇所を通る前記パレット本体の断面は、前記裏面側から前記表面側に行くほど幅狭な形状を有していることを特徴とする搬送用パレット。
【0011】
従って、手段1に記載の発明によると、受け部が形成された箇所を通るパレット本体の断面は裏面側から表面側に行くほど幅狭な形状を有しているので、受け部は底部が収容凹部の外側方向に張り出した状態となっている。ゆえに、上側に位置するパレットの受け部の底部裏面側が、その下側に位置する別のパレットの受け部の上部に支持可能となる。その結果、段積み時におけるパレットの落ち込みが防止される。
【0012】
[2]前記複数の仕切壁のうちの一部のものは、分断箇所を挟んで対峙する一対の断崖部を有し、前記一対の断崖部のうちの少なくとも一方の側面には、前記受け部が形成されていることを特徴とする手段1に記載の搬送用パレット。
【0013】
手段2に記載の発明によると、分断箇所を挟んで対峙する一対の断崖部は比較的強度が高いため、その側面に受け部を形成することで、変形しにくい受け部とすることができる。なお、複数の仕切壁の全てが分断されているわけではなく、残りのものについては連続的に形成されているため、パレットの強度が維持される。
【0014】
[3]前記複数の仕切壁のうちの一部のものには、分断箇所を挟んで対峙する一対の断崖部が形成され、前記一対の断崖部における両方の側面には、それぞれ前記受け部が形成されていることを特徴とする手段1に記載の搬送用パレット。
【0015】
従って、手段3に記載の発明によると、分断箇所を挟んで対峙する一対の断崖部は比較的強度が高いため、その側面に受け部を形成することで、変形しにくい受け部とすることができる。なお、複数の仕切壁の全てが分断されているわけではなく、残りのものについては連続的に形成されているため、パレットの強度が維持される。また、一対の断崖部における両方の側面に受け部を形成した結果、上側に位置するパレットの受け部の底部裏面側が安定的に支持可能となり、横方向のずれに強くなる。よって、段積み時におけるパレットの落ち込みをより確実に防止することができる。
【0016】
[4]前記フレーム部の内側領域において縦方向に延びる複数の第1仕切壁と、前記フレーム部の内側領域において横方向に延びかつ前記第1仕切壁よりも幅広な複数の第2仕切壁とを備え、前記第2仕切壁のうちの一部のものが、前記一対の断崖部を有していることを特徴とする手段2または3に記載の搬送用パレット。
【0017】
従って、手段4に記載の発明によると、相対的に幅狭な第1仕切壁に比べて、相対的に幅広な第2仕切壁のほうが、受け部を形成可能なスペースが大きい。このため、大きめの受け部を形成することが可能となり、パレットの裏面側をより安定的に支持することができる。
【0018】
[5]前記一対の断崖部間に位置する前記分断箇所に対応して、前記収容凹部の前記底部よりも深い凹所が設けられていることを特徴とする手段2乃至4のいずれか1項に記載の搬送用パレット。
【0019】
従って、手段5に記載の発明によると、収容凹部の底部において分断箇所に対応した箇所に凹所を設けることで、底部に凹凸ができ、その部分が補強される。よって、第2仕切壁に分断箇所を設けたことによる強度低下を最小限に留めることができる。また、パレットの裏面側においては凹所の裏面側に凸部ができるため、段積み時にこの凸部が一対の断崖部間に嵌合した状態となる。よって、段積みされたパレット同士が横ずれしにくくなる。
【0020】
[6]前記底部を基準とした前記凹所の深さは、前記受け部の高さから前記板状物の厚さを減じた値よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする手段5に記載の搬送用パレット。
【0021】
従って、手段6に記載の発明によると、収容凹部に板状物を収容した状態で段積みしたときでも、パレットの裏面側にできる凸部が板状物に接触しなくなる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳述したように、手段1〜6に記載の発明によると、コスト高や生産性低下を伴うことなく、段積み時のパレットの落ち込みを防止することができる搬送用パレットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を具体化した一実施形態における搬送用パレットを示す平面図。
【図2】(a)は上記実施形態の搬送用パレットの要部拡大平面図、(b)は(a)のA−A線における概略断面図、(c)は(a)のB−B線における概略断面図。
【図3】図2(a)のC−C線における概略断面図。
【図4】上記実施形態において段積み時におけるパレットの様子を示す要部拡大断面図。
【図5】別の実施形態において段積み時におけるパレットの様子を示す要部拡大断面図。
【図6】別の実施形態において段積み時におけるパレットの様子を示す要部拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の搬送用パレットを具体化した実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0025】
図1等に示されるように、本実施形態の搬送用パレット11は、板状物である平面視正方形状の平板電池1を多数収容することができ、この状態で複数枚段積みして搬送、保管等するための器具である。この搬送用パレット11は、金型を用いて熱軟化性フィルムを真空成形することにより作製されたシート状成形体である。
【0026】
熱軟化性フィルムとしては、例えば軟質のポリエチレンフィルムや軟質のポリ塩化ビニルフィルムなどといった汎用の樹脂フィルムが用いられる。成形原料となる熱軟化性フィルムの厚さは特に限定されず材料に応じて適宜変更することが可能であるが、例えば1.2mm以下の厚さであることが好ましく、0.5mm以上1.0mm以下の厚さであることがより好ましい。フィルムの厚さが厚すぎると、成形時に必要な樹脂量が多くなる結果、製造コスト増につながるおそれがある。逆にフィルムの厚さが薄すぎると、搬送用パレット11に十分な強度を付与しにくくなるおそれがある。
【0027】
図1に示されるように、搬送用パレット11を構成するパレット本体12は、平面視で長方形状を呈している。パレット本体12の外周部には、その全周にわたってリブ状のフレーム部21が形成されている。フレーム部21における複数箇所(図1では6箇所)には、段差状のガイド部15が設けられている。これらガイド部15は、段積みされた搬送用パレット11同士を互いに引き剥がす際に指を入れる場所として通常利用される。
【0028】
パレット本体12の表面13においてフレーム部21の内側領域には、縦横に設けられた複数の仕切壁22,23が設けられている。第1仕切壁22は表面13側に凸のリブ状をなしており、パレット本体12の縦方向(図1では上下方向)に延びている。本実施形態では、第1仕切壁22は11本設けられており、互いに等間隔を隔てて配置されている。これら第1仕切壁22の上面には、1つおきに補強用の小リブ27が突設されている。なお、11本存在する第1仕切壁22はいずれも分断箇所32を有しておらず、連続的に形成されている。第2仕切壁23は表面13側に凸のリブ状をなしており、パレット本体12の横方向(図1では左右方向)に延びている。本実施形態では、第2仕切壁23は5本設けられており、互いに等間隔を隔てて配置されている。これら5本の第2仕切壁23のうち、パレット中央部を通っている1本については、その上面に補強用の小リブ27が突設されている。第2仕切壁23の幅は第1仕切壁22の幅よりも1.5倍〜2倍程度大きくなっている。
【0029】
互いに直交する複数の第1仕切壁22及び複数の第2仕切壁23は、フレーム部21の内部領域を複数の収容凹部24に区画している。本実施形態では、矩形状をなす収容凹部24が、縦方向に6個、横方向に12個(合計72個)形成される。そして、このような収容凹部24は底部25を有しており、その底部25には平板電池1が水平に載置可能となっている(図2参照)。その結果、複数の平板電池1が複数の収容凹部24に個別に収容できるようになっている。
【0030】
図1〜図3に示されるように、この搬送用パレット11の場合、5本ある第2仕切壁23のうち、パレット中央部を通っている1本を除く4本については、複数の分断箇所32が設けられている。その結果、この分断箇所32を挟んで一対の断崖部33が対峙するような状態で形成されている。そして、これら一対の断崖部33における両方の側面26には、それぞれ受け部31が形成されている。従って、一対の受け部31同士も分断箇所32を挟んで対峙している。
【0031】
図2(b)は、第2仕切壁23において一対の受け部31が形成された箇所を通るパレット本体12の断面を示している。この断面においてパレット本体12は、裏面14側から表面13側に行くほど幅狭な形状を有している。別の言い方をすると、上記断面の部分は逆台形状となっており、金型の抜き方向(図2(b)では上型を抜く上方向)に逆テーパー形状となっている。成形品であるパレット本体12にいわゆる「アンダーカット」が入っていると把握してもよい。なお、表面13を基準としたとき、受け部31におけるテーパー部分の傾斜角度は3°〜15°程度に設定される。傾斜角度が小さすぎると、受け部31の底部が小面積になってしまい、段積み時のパレット11の落ち込みを確実に防止することが困難になるおそれがある。また、傾斜角度が大きすぎると、逆テーパー形状がきつくなりすぎて、金型の型抜き性を悪化させるおそれがある。
【0032】
受け部31は底部を有しており、その底部は収容凹部32の外側方向に0.5mm〜1.5mm程度張り出している。底部は平面視で略三日月状を呈している。なお、図2(c)は第2仕切壁23における受け部31をその正面側(つまり分断箇所32の側)から見たものである。これによると、受け部31は正面視で半楕円形状となっており、その半楕円形の円弧は表面13側に向いている。よって、受け部31は正面視で裏面14側から表面13側に行くほど幅狭の形状を呈していることがわかる。
【0033】
収容凹部24の底部25において分断箇所32に対応する位置には、当該底部25よりも深い凹所34が複数設けられている。図2(a)等に示されるように、これら凹所34は搬送用パレット11の縦方向に長い矩形状であり、その長辺は第2仕切壁23の幅の2倍〜3倍程度の長さを有している。なお、図2(b)等に示されるように、パレット11において凹所34に対応する箇所の裏面14側は、凸部14aとなっている。本実施形態の場合、底部25を基準とした凹所34の深さd1は、受け部31の高さh1から平板電池1の厚さh2を減じた値よりも小さくなるように設定されている(図4参照)。
【0034】
図4には、搬送用パレット11を段積みした状態が示されている。このとき、上側に位置するパレット11の受け部31の底部裏面側が、その下側に位置する別のパレット11の受け部31の上部(言い換えると断崖部33の上面先端)に支持される。その結果、上側のパレット11が下側のパレット11に落ち込まない状態で位置決めされるとともに、凸部14aが平板電池1の上面に対して非接触の状態を維持する。また、パレット11の裏面14側の凸部14aが一対の断崖部33間に嵌合することで、パレット11同士が横ずれしにくい状態となる。
【0035】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0036】
(1)本実施形態の搬送用パレット11では、上記のように複数の仕切壁23の側面26における複数箇所に、落ち込み防止用の受け部31を形成している。また、受け部31が形成された箇所を通るパレット本体12の断面を、裏面13側から表面14側に行くほど幅狭な逆テーパー形状としている。従って、段積み時において上側に位置するパレット11の受け部31の底部裏面側が、その下側に位置する別のパレット11の受け部31の上部に支持可能となる。その結果、段積み時におけるパレット11の落ち込みを防止することができる。
【0037】
従って、段積みされたパレット11を困難なく簡単に段バラシすることができ、従来のものに比べて生産性が向上する。また、収容凹部24に平板電池1を収容した状態で段積みしたとしても、上側のパレット11の裏面14側が平板電池1の上面に接触しない。よって、平板電池1が段積みによるダメージを受けなくなり、外観や特性の低下を未然に防ぐことができる。
【0038】
さらに、本実施形態によれば、ガイド部15を落ち込み防止用の構造物として機能させなくてもよくなる。このため、フレーム部21における異なる位置にガイド部15を設けた搬送用パレットを2種類作製し、これらを交互に段積みするといった従来の対策を講じる必要がなくなる。よって、2種類の金型を必要とせず基本的に1種類で足りることとなるため、製造コスト高を防ぐことができる。また、あらかじめガイド部15の位置をずらして設けておき、1枚おきに180°回転させて段積みするという従来の対策を講じる必要もなくなる。よって、段積み時にパレット11の方向性を気遣う必要がなくなり、作業者に対する負担が軽減され、生産性の低下を防ぐことができる。
【0039】
以上述べたように、本実施形態の搬送用パレット11によると、コスト高や生産性低下を伴うことなく、段積み時のパレット11の落ち込みを防止することができる。
【0040】
(2)本実施形態の搬送用パレット11では、複数の第2仕切壁23のうちの一部のものに、分断箇所32を挟んで対峙する一対の断崖部33を形成している。そして、これら一対の断崖部33における両方の側面26に、それぞれ受け部31を形成している。一対の断崖部33は形状的にみて比較的強度が高いため、その側面26に受け部31を形成することで、変形しにくい受け部31とすることができる。なお、複数の第2仕切壁23の全てが分断されているわけではなく、残りの第2仕切壁23及び第1仕切壁22の全てについては、パレット本体12の縦横方向に連続的に形成されている。そのため、パレット11の強度を維持することができる。また、一対の断崖部33における両方の側面26に受け部31を形成した結果、上側に位置するパレット11の受け部31の底部裏面側が安定的に支持可能となり、横方向のずれに強くなる。よって、段積み時におけるパレット11の落ち込みをより確実に防止することができる。さらに、本実施形態では、第1仕切壁22よりも幅広な第2仕切壁23の側面26に一対の断崖部33を設けている。ゆえに、第1仕切壁22の側面26を受け部形成用スペースとする場合に比べて、大きなスペースを確保することができる。このため、比較的大きめの受け部31を形成することが可能となり、パレット11の裏面14側をより安定的に支持することができる。
【0041】
(3)本実施形態の搬送用パレット11では、一対の断崖部33間に位置する分断箇所32に対応して、収容凹部24の底部25よりも深い凹所34を設けているため、底部25に凹凸ができ、その部分が補強される。よって、第2仕切壁23に分断箇所32を設けたことによる強度低下を最小限に留めることができる。また、パレット11の裏面14側においては凹所34の裏面14側に凸部14aができる。そして、段積み時にこの凸部14aが一対の断崖部33間に嵌合した状態となる。よって、段積みされたパレット11同士が横ずれしにくくなり、パレット11の落ち込みをより確実に防止することができる。しかも、この構成を採用することで、金型の型抜き性を向上することが可能となる。加えて、上記のような位置に凹所34を設けておくと、治具や作業者の指などをその凹所34に入れて平板電池1を取り出すことができる点で有利である。
【0042】
(4)本実施形態の搬送用パレット11では、底部25を基準とした凹所34の深さd1が、受け部31の高さh1から平板電池1の厚さh2を減じた値よりも小さくなるように設定している。従って、収容凹部24に平板電池1を収容した状態で段積みしたときでも、パレット11の裏面14にできる凸部14aと平板電池1との間に所定の空間が確保される。よって、凸部14aが平板電池1に接触しなくなり、平板電池1がダメージを受けて外観や特性を損なうといった心配がなくなる。このため、平板電池1の品質を把持しつつ搬送、保管等を行うことができる。
【0043】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0044】
・上記実施形態では一対の断崖部33間に位置する分断箇所32に対応して凹所34を設けたが、底部25において分断箇所32ではない位置に凹所34を形成して、底部25のさらなる補強を図ってもよい。また、凹所34は必須構成ではないことから、図5に示す別の実施形態の搬送用パレット11Aのように凹所34を省略した構成としてもよい。
【0045】
・上記実施形態では第2補強部23に一対の断崖部33を設け、そこに一対の受け部31を互いに対峙するように設けている。このような構成に代えて、一対あるもののうち、いずれか片方の断崖部33のみに受け部31に設けるようにしてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、第2仕切壁23に一対の断崖部33を設けてその側面26に受け部31を設けたが、受け部31の設置位置はこの位置のみに限定されない。例えば、図6に示す別の実施形態の搬送用パレット11Bのように、第1仕切壁23の側面26にも同様の構造の受け部31を設けてもよい。また、第2仕切壁23ではなく第1仕切壁22に一対の断崖部33を設けてその側面26に受け部31を設けてもよい。
【0047】
・上記実施形態では、平板電池1を搬送用パレット11の被収容物としたが、平板電池1以外の板状物を被収容物としてもよい。このような板状物としては、例えば、平板状のリチウムイオンキャパシタや平板状のリチウムイオン二次電池などの電気化学デバイスがある。また、このような電気化学デバイスのほか、平板状の電子部品(ICチップ、チップトランジスタ、チップ抵抗、チップコンデンサ、チップコイルなど)や、回路基板などを被収容物としてもよい。また、上記実施形態では平面視で正方形状のものを被収容物としたが、特にこれに限定されない。
【0048】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0049】
(1)手段1乃至6のいずれか1項において、前記板状物は平板状の電気化学デバイスであること。
【0050】
(2)手段1乃至6のいずれか1項において、前記板状物は平板状の電池であること。
【0051】
(3)手段1乃至6のいずれか1項において、段積み時に前記板状物と前記凹所の裏面側にできる凸部とが非接触状態となること。
【0052】
(4)手段1乃至6のいずれか1項において、成形原料となる前記熱軟化性フィルムは、厚さが0.5mm以上1.0mm以下であること。
【0053】
(5)手段3乃至6のいずれか1項において、前記一対の受け部が形成された箇所を通る前記パレット本体の断面は、前記金型に対する逆テーパー形状となっていること。
【0054】
(6)手段2乃至6のいずれか1項において、前記受け部を前記分断箇所の側から見たときの形状は、前記表面側に円弧を向けた半楕円形状であること。
【符号の説明】
【0055】
1…板状物としての平板電池
11,11A,11B,11C…搬送用パレット
12…パレット本体
13…表面
14…裏面
21…フレーム部
22…第1仕切壁
23…第2仕切壁
25…底部
26…(仕切壁の)側面
31…受け部
32…分断箇所
33…断崖部
34…凹所
d1…凹所の深さ
h1…受け部の高さ
d2…板状物の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型を用いて熱軟化性フィルムを真空成形することにより作製されたシート状成形体であり、板状物を収容した状態で複数枚段積みすることが可能な搬送用パレットであって、
表面及び裏面を有し、外周部にフレーム部を有するパレット本体と、
前記パレット本体の前記表面において前記フレーム部の内側領域に縦横に設けられた複数の仕切壁と、
前記複数の仕切壁によって区画され、前記板状物を底部に載置して個別に収容可能な複数の収容凹部と
を備え、
前記複数の仕切壁の側面における複数箇所には、隣接するパレットの裏面側を支持して落ち込みを防止する受け部が形成され、前記受け部が形成された箇所を通る前記パレット本体の断面は、前記裏面側から前記表面側に行くほど幅狭な形状を有している
ことを特徴とする搬送用パレット。
【請求項2】
前記複数の仕切壁のうちの一部のものは、分断箇所を挟んで対峙する一対の断崖部を有し、前記一対の断崖部のうちの少なくとも一方の側面には、前記受け部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送用パレット。
【請求項3】
前記複数の仕切壁のうちの一部のものには、分断箇所を挟んで対峙する一対の断崖部が形成され、前記一対の断崖部における両方の側面には、それぞれ前記受け部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送用パレット。
【請求項4】
前記フレーム部の内側領域において縦方向に延びる複数の第1仕切壁と、前記フレーム部の内側領域において横方向に延びかつ前記第1仕切壁よりも幅広な複数の第2仕切壁とを備え、前記第2仕切壁のうちの一部のものが、前記一対の断崖部を有していることを特徴とする請求項2または3に記載の搬送用パレット。
【請求項5】
前記一対の断崖部間に位置する前記分断箇所に対応して、前記収容凹部の前記底部よりも深い凹所が設けられていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の搬送用パレット。
【請求項6】
前記底部を基準とした前記凹所の深さは、前記受け部の高さから前記板状物の厚さを減じた値よりも小さくなるように設定されていることを特徴とする請求項5に記載の搬送用パレット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−206746(P2012−206746A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73751(P2011−73751)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000177081)FDK鳥取株式会社 (28)
【出願人】(593162497)マルユー包装株式会社 (1)
【Fターム(参考)】