説明

搬送用ベルト及びその製造方法

【課題】工数が掛からず、接着部分の剥離や破壊を防ぐ為のバフ掛け工程を省略でき、さらに桟加工部の接着力をより向上させ得ることができる搬送用ベルトを提供する。
【解決手段】帯状の無端ベルトに走行ガイド3を有する搬送用ベルト1であって、該搬送用ベルト1の走行ガイド3を有する側の表面は帆布5で覆われ、該帆布5のベルト長手方向の繊維が、少なくとも走行ガイド5との接合部は短繊維のみからなる搬送用ベルトである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送の目的に使用されるガイド付き樹脂製搬送用ベルトに関し、詳しくはエラストマー層と、該エラストマー層の裏面に設けられた帆布と、該帆布の裏面に形成された走行ガイドとを有する搬送用ベルト及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、搬送用途に用いられるエラストマー製搬送用ベルトでは、プーリにクラウンを設けることにより、ベルトがプーリ表面から左右へ逸脱することを防止し、安定な走行を得るようにしている。しかし、プーリにクラウンを設けるだけではベルトの走行位置を常に一定に保つことは難しく、ベルトの張力やプーリ軸の固定位置等を熟練者によって微妙に調整することが必要であった。
【0003】
そこで、図1に示すように、搬送用ベルト1の裏面(プーリ側面に)、断面V形、矩形などの走行ガイド3を走行方向に1条又は2条設け、ベルトの支持テーブルやプーリ外周面に溝部を形成し、走行ガイドが溝に嵌りこむことにより、一定の走行位置を維持する方法も提案されている。
【0004】
しかし、裏面をテーブルにより支持される搬送用ベルト1では、テーブルとの摩擦を低減する為裏面に帆布5が用いられており、走行ガイド3はベルトの成形後、裏面の帆布5表面に貼り付け加工する必要があった。
【0005】
従来の裏面帆布に走行ガイドを接着する方法には次のような問題点があった。
【0006】
裏面帆布5に走行ガイド3を貼り付け加工する為、一般的には接着剤7が使用されるが、接着剤7による貼り付けには、接着剤塗布量、貼り合せ接合、加圧、加熱など種々の微妙な調整を要する工程を経る必要があり、作業者が手加工で行う場合はもちろん、機械により連続貼り合せを行う場合でも、安定な接着力を得ることが難しく、一部分でも接着強度が不十分な箇所があると、予期しない早期のガイド剥がれの原因となることがある。
【0007】
一般的な搬送用ベルト1の場合、裏面帆布5には引張強度、耐摩耗性、寸法安定性を得るため、密な織り組織のポリエステル繊維による織布が用いられており、走行ガイドは帆布の極表面層とのみ接着されているにすぎず、ベルトは最終的に走行ガイド剥がれにより寿命を制限されることが多い。
【0008】
こういったことを解決するために、特許文献1においては帆布の走行ガイドを形成する部分に樹脂の通過が可能な通孔が形成されることが記載されている。しかし、所定幅寸法において全ての経糸の一部又は全部を取り除く当方法は、ベルトの引張強度の低下を引き起こす。
【0009】
【特許文献1】特許第3474153号
【0010】
そこで、ベルト引張強度の低下を来たさない為にも、通常は帆布として、マルチフィラメント或いはモノフィラメントを使用し、帆布面をバフ掛けし、帆布表面を多少荒して毛羽立ちがある状態にした後、接着剤を塗布し、そこへ走行ガイドを熱溶着していた。
【0011】
上記の方法では、バフ掛けという工程を設けなければならず、余分な時間が掛かっていた。バフ掛け工程を無くす為に、特許文献2では後で接着する部分の面に加硫ゴムとの剥離が容易な帆布を埋設し加硫し、加硫後接着時に埋設帆布を引き剥がすというものである。
【0012】
【特許文献2】特開平9‐85850号
【0013】
しかし、当該方法においても、結局は剥がす為の帆布をベルト中に埋設し、加硫後その帆布を剥がすといった余分な工程を必要としていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、本発明の目的は、工数が掛からず、接着部分の剥離や破壊を防ぐ為のバフ掛け工程を省略でき、さらに走行ガイドの接着力をより向上させ得ることができる搬送用ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、帯状の無端ベルトに走行ガイドを有する搬送用ベルトであって、該搬送用ベルトの走行ガイドを有する側の表面は帆布で覆われ、該帆布のベルト長手方向の繊維が、少なくとも該走行ガイドとの接合部は短繊維のみからなる搬送用ベルトにある。
【0016】
請求項2に記載の発明は、帯状の無端ベルトに走行ガイドを有する搬送用ベルトの製造方法であって、該搬送用ベルトの走行ガイドを有する側の表面は帆布で覆われ、該帆布のベルト長手方向の繊維が短繊維のみからなり、該帆布に熱溶着によってエラストマー製又は樹脂製の走行ガイドを溶着する工程のみで搬送用ベルトに走行ガイドを接合する搬送用ベルトの製造方法にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、帯状の無端ベルトに走行ガイドを有する搬送用ベルトであって、該搬送用ベルトの走行ガイドを有する側の表面は帆布で覆われ、該帆布のベルト長手方向の繊維が、少なくとも該走行ガイドとの接合部は短繊維のみからなる搬送用ベルトであることから、短繊維が毛羽立ち、アンカー効果を起こし、強固に接着するので、バフ掛け工程が不要となる。
【0018】
請求項2の発明によると、帯状の無端ベルトに走行ガイドを有する搬送用ベルトの製造方法であって、該搬送用ベルトの走行ガイドを有する側の表面は帆布で覆われ、該帆布のベルト長手方向の繊維が短繊維のみからなり、該帆布に熱溶着によってエラストマー又は樹脂製の走行ガイドを溶着する工程のみで搬送用ベルトに走行ガイドを接合する搬送用ベルトの製造方法であることから、短繊維の毛羽立ちによるアンカー効果により熱溶着のみでV形状桟を熱溶着工程のみで溶着しても帆布とV形状桟との間で強固な接着力が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は搬送用ベルト1を構成する帆布5が1プライの場合を示す。図1に示すように、本発明の搬送用ベルト1は、エラストマー層9と、該エラストマー層9の裏面に設けられた帆布5と、該帆布5の裏面に形成された走行ガイド3とを有している。
【0020】
帆布5は図2のように、経糸11(ベルト1の長手方向の糸)と緯糸13(ベルト1の幅方向の糸)とを織って形成されており、少なくとも走行ガイドを接着する部分の帆布の経糸に短繊維を使用している。
【0021】
前記短繊維は、前記帆布の経糸全てに適用することもできるし、又経糸、緯糸ともに短繊維で形成することもできる。
【0022】
走行ガイド3は、エラストマー層9と同じか同種のエラストマーにて断面V字形、矩形状等に形成するのが良く、上記エラストマーによって走行ガイド3が樹脂層に融着又は一体化される。走行ガイドを融着するには、図3に示すように、別部材の走行ガイドを帆布5の裏面側に当接させた状態でライスター15にて加熱加圧すればよい。
【0023】
このようにすることにより、走行ガイドは樹脂によってエラストマー層9と融着し、ベルトの全長に渡って走行ガイドが帆布5から剥がれることはない。
【0024】
ここで、走行ガイド3の材質はJISA硬度が70〜86度のポリウレタンが好適に使用される。接着剤はポリウレタン系の接着剤であり、桟付け加工方法は、熱溶着工法(ライスター工法)である。
【実施例1】
【0025】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。ポリエステル製の帆布で経糸は短繊維を使用した。そして、JISA硬度として70度のポリウレタンエラストマー製V形状桟を走行ガイドとして準備し、ライスター熱溶着工法にて420°Cで1,200mm/minの速度で溶着した。バフ工程は省略した。
【0026】
次に、参考例として、実施例1の熱溶着をする前に、V形状桟を溶着する部分の帆布をバフ掛けした。その後接着剤を塗布し、実施例1と同じくV形状桟をライスター熱溶着した。
【0027】
又、従来例として、経糸、緯糸共に短繊維を含まない帆布を用い、V形状桟を溶着する部分の帆布をバフ掛けした。その後バフ掛けした部分に接着剤を塗布し、実施例1と同じくV形状桟をライスター熱溶着した。
【0028】
さらに比較例として、従来例でバフ掛け工程を省略してバフ掛けをすることなしにライスター熱溶着工法にて熱溶着した。実施例、従来例、比較例の結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1の結果からもわかるように、経糸に短繊維を使用した帆布を使った場合、バフ掛けの有無にかかわらず、接着力は同等であるが、短繊維を使用しなかった帆布を用いて、さらにバフ掛けも省略した比較例は極端に接着力が低下していることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の搬送用ベルトの断面図である。
【図2】図1で示す搬送用ベルトに使用する布の要部平面図である。
【図3】本発明の走行ガイドを加過溶着の方法を示した概略図である。
【符号の説明】
【0032】
1 搬送用ベルト
3 走行ガイド
5 布
7 接着剤
9 エラストマー層
11経糸
13緯糸
15ライスター
17金型
19熱風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の無端ベルトに走行ガイドを有する搬送用ベルトであって、該搬送用ベルトの走行ガイドを有する側の表面は帆布で覆われ、該帆布のベルト長手方向の繊維が、少なくとも該走行ガイドとの接合部は短繊維のみからなることを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項2】
帯状の無端ベルトに走行ガイドを有する搬送用ベルトの製造方法であって、該搬送用ベルトの走行ガイドを有する側の表面は帆布で覆われ、該帆布のベルト長手方向の繊維が短繊維のみからなり、該帆布に熱溶着によってエラストマー又は樹脂製の走行ガイドを溶着する工程のみで搬送用ベルトに走行ガイドを接合することを特徴とする搬送用ベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−96533(P2006−96533A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285815(P2004−285815)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】