説明

搬送用具管理装置

【課題】作業者の手間や装置コストを抑えつつ,懸垂式昇降装置による搬送に用いられる搬送物保持具(吊り具)の使用を的確に管理できること。
【解決手段】少なくとも昇降部20に吊り具10が引っ掛けられた状況を含む吊り上げ状況を自動的に検出し,その検出に応じて,吊り具10が備えるRFタグ11からその搬送物保持具の識別情報及びその累積使用実績情報を読み出し,その読出し情報に基づいて吊り具10の使用制限に関する状態判別及びその判別結果の通知を行い,また,前記累積使用実績情報と吊り具10の吊り上げ状況検出結果とに基づいて,RFタグ11内の累積使用実績情報を更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,鉤部(フック)を有する昇降部を懸垂材を介して昇降させる懸垂式昇降装置により,その昇降部に引っ掛けられた搬送物保持具及びこれに保持された搬送物を吊り上げ搬送する場合に,前記搬送物保持具の使用実績を管理する搬送用具管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場内等において,搬送物の搬送装置として,天井近くに配設されたレールに沿って走行する移動台車と,その移動台車からワイヤーロープ等の懸垂材により吊り下げられた昇降部(フックを有するもの)を昇降させる昇降装置とを備えた懸垂式昇降装置(いわゆるホイストやクレーン等)が利用されている。懸垂式昇降装置では,前記昇降装置が前記懸垂材の繰り出し量(巻き取り量)を調節することによって昇降部(フック)の昇降が行われる。また,昇降部には,搬送物を保持するワイヤーロープ等の吊り具(搬送物保持具)が引っ掛けられる。これにより,懸垂式昇降装置は,昇降部に引っ掛けられた搬送物保持具及びこれに保持された搬送物を吊り上げ搬送する。以上に示した懸垂式昇降装置及び吊り具を用いた物の搬送システムのことを,以下,懸垂昇降搬送システムという。
ところで,前記吊り具は,搬送物の荷重がかかることにより徐々に劣化するため,累積の使用回数や使用時間或いは累積の吊り上げ重量が限界を超えた状況で使用されると,搬送物の破損に加え,搬送物落下による事故につながる。そのため,前記懸垂昇降搬送システムにより物の搬送を行う場合に,前記吊り具について,その使用限界を超える前に適切な対処(使用禁止や修理など)を行うことが重要である。そこで,従来,前記吊り具それぞれに使用期限が設定され,使用期限を経過した前記吊り具が使用されないように管理されることが一般的である。前記使用期限は,例えば,予め前記吊り具それぞれに表記される。
【0003】
一方,特許文献1には,高圧ガスのボンベにICタグ(RFタグに相当)を付帯させ,ハンディーターミナルやボンベの保管場所に設置されたターミナルにより,前記ICタグに当該ボンベにおけるガスの充填回数等のデータの書込み,読出し及び読出し情報の出力を行うことにより,ボンベの流通管理を行う方法について示されている。
また,特許文献2には,リース対象となる測定装置が,使用状況(使用期限の経過や最大測定回数の経過)を監視し,その監視結果に応じて警告メッセージや使用不可メッセージを出力することについて示されている。
【特許文献1】特開2004−360851号公報
【特許文献2】特開平11−37836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,特許文献1に示される技術と同様に,管理対象物である搬送物保持部(前記吊り具)にRFタグを設け,ハンディーターミナルや前記搬送物保持具の保管場所に設置されたターミナルにより,RFタグに対する情報(搬送物保持具の使用実績情報)の読み書き及びその情報の出力を行う場合,作業者が,書き込み情報の認識及び入力,並びに出力情報(RFタグからの読出し情報)に基づく状況判断を行わねばならず,それが非常に手間であるという問題点があった。
また,特許文献2に示される技術と同様に,管理対象物である搬送物保持具それぞれに,使用状況の監視及び判断,並びに判断結果の出力を行う情報処理装置を付加した場合,その情報処理装置の数が多数必要となり,コスト的に実用化が難しいという問題点があった。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,作業者の手間や装置コスト(必要な構成機器の数)を抑えつつ,前記懸垂昇降搬送システムにおける搬送物保持具(前記吊り具に相当)の使用を的確に管理できる搬送用具管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明に係る搬送用具管理装置は,鉤部(フック)を有する昇降部を懸垂材を介して昇降させる懸垂式昇降装置により,前記昇降部に引っ掛けられた搬送物保持具(前記吊り具に相当)及びこれに保持された搬送物を吊り上げ搬送するシステム(前記懸垂昇降搬送システム)における,前記搬送物保持具の使用実績を管理する装置であり,次の(1)〜(7)に示す各構成要素を備えるものである。
(1)前記懸垂式昇降装置に設けられ,少なくとも前記昇降部に前記搬送物保持具が引っ掛けられた状況に関する第1の吊り上げ状況を含む前記搬送物保持具の吊り上げ状況を自動的に検出する吊り上げ状況検出手段。
(2)前記昇降部に設けられ,前記吊り上げ状況検出手段によって前記昇降部に前記搬送物保持具が引っ掛けられたことが検出された場合に,前記搬送物保持具が備えるRFタグからその搬送物保持具の識別情報を含むタグ記憶情報の無線読出しを自動的に行うタグ記憶情報読出し手段。
(3)前記タグ記憶情報読出し手段による情報の読み出しが行われる場合に,前記懸垂式昇降装置による前記搬送物保持具の累積の吊り上げ実績を表す累積使用実績情報とこれに対応する前記識別情報とが記憶された累積使用実績情報記憶手段から,前記タグ記憶情報読出し手段により読み出された前記識別情報に対応する前記累積使用実績情報を自動的に読み出す累積使用実績情報読出し手段。
(4)前記累積使用実績情報読出し手段による情報の読み出しが行われた場合に,その読出し情報と前記吊り上げ状況検出手段の検出結果とに基づいて,前記累積使用実績情報の更新情報を設定する累積使用実績情報更新設定手段。
(5)前記昇降部に設けられ,前記累積使用実績情報更新設定手段による設定情報を前記累積使用実績情報記憶手段に書き込む更新情報書込み手段。
(6)前記累積使用実績情報読出し手段による読出し情報又は前記累積使用実績情報更新設定手段による設定情報に基づいて,前記搬送物保持具の使用制限に関する状態判別を自動的に行う使用制限状態判別手段。
(7)前記使用制限状態判別手段による状態判別が行われた場合に,その判別結果を自動的に通知する判別結果通知手段。
例えば,前記吊り上げ状況検出手段が,前記タグ記憶情報読出し手段による情報読出しが可能なエリア内に前記RFタグが存在すること,及び前記昇降部に所定以上の荷重がかかったことの一方又は両方を検出することにより前記第1の吊り上げ状況を検出することが考えられる。
【0006】
本発明に係る搬送用具管理装置は,前記搬送物保持具の吊り上げ状況を自動検出し,その検出結果に応じて,前記搬送物保持具の使用実績情報の読出し及び更新と,その使用実績情報に基づく前記搬送物保持具の使用制限状態の判別及び判別結果の通知とを自動的に実行する。このため,前記搬送物保持具の管理のための特別な手間(情報入力作業の手間等)を必要としない。
また,前記懸垂昇降搬送システムにおいては,前記搬送物保持具は,必ず前記昇降部に引っ掛けられた状態で使用される(吊り上げられる)。これに対し,本発明に係る搬送用具管理装置においては,前記昇降部に設けられた前記タグ記憶情報読出し手段及び前記更新情報書込み手段(RFタグのリーダ・ライタ)を通じて,前記搬送物保持具に設けられたRFタグに対する情報の読み書きがなされるため,全ての前記搬送物保持具について漏れなく使用実績情報を管理できる。しかも,必要なRFタグのリーダ・ライタの数が少なくて済む。
また,前記搬送物保持具の管理に有効な使用実績情報,例えば,累積の吊り回数や累積の吊り上げ荷重,累積の吊り上げ時間等の情報は,後述するように,リーダ・ライタの情報読出し可能なエリア内にRFタグが存在することや,一般的な前記懸垂式昇降装置による吊り上げ荷重など,リーダ・ライタや前記懸垂式昇降装置が通常検出可能な情報に基づいて把握(算出)できる情報である。従って,前記懸垂式昇降装置に設けられた前記吊り上げ状況検出手段は,比較的簡易な構成により,前記搬送物保持具の吊り上げ状況を検出できる。
例えば,前記吊り上げ状況検出手段が,前記昇降部にかかる荷重に関する状況(第2の吊り上げ状況),及び前記昇降部による前記搬送物保持具の吊り上げ時間に関する状況(第3の吊り上げ状況)の一方又は両方をさらに検出することが考えられる。この場合,前記累積使用実績情報は,前記第1の吊り上げ状況に基づく前記搬送物保持具の累積吊り回数,前記第2の吊り上げ状況に基づく累積吊り荷重及び前記第3の吊り上げ状況に基づく累積吊り上げ時間のうちの一又は複数に関する情報である。従って,前記累積使用実績情報更新設定手段は,これら累積吊り回数,累積吊り荷重及び累積吊り上げ時間の3つのうちの一又は複数に関する情報についての更新情報を設定する。
【0007】
また,本発明において,前記使用制限状態判別手段が,前記搬送物保持具のさらなる使用が許容されないことを表す使用禁止状態を含む一又は複数の状態のいずれかであるか否かを判別することが考えられる。
ここで,前記使用禁止状態以外の状態としては,例えば,前記使用禁止状態に至る過程の途中段階の一又は複数の状態,例えば,使用の寿命が近い状態(代替の前記搬送物保持具の準備が必要な状態)や,使用の寿命が半分程度である状態などが考えられる。
また,本発明に係る搬送物保持具管理装置が,前記昇降部に引っ掛けられた前記搬送物保持具の状態が,前記使用制限状態判別手段により前記使用禁止状態であると判別された場合に,前記懸垂式昇降装置による前記搬送物保持具の吊り上げを開始させない制御を行う吊り上げ開始禁止手段をさらに備えることが考えられる。
これにより,使用禁止状態に至った前記搬送物保持具が,人為的ミスによって継続使用されることを確実に防止できる。
【0008】
また,本発明において,前記RFタグの記憶部が前記累積使用実績情報記憶手段を兼ね,前記タグ記憶情報読出し手段が前記累積使用実績情報を含む前記タグ記憶情報の無線読出しを行う前記累積使用実績情報読出し手段を兼ねることが考えられる。
これにより,前記累積使用実績情報記憶手段を,全ての前記搬送物保持具について前記識別情報と前記累積使用実績情報とが対応付けらて記憶されるデータベースとして別途用意する必要がなく,装置構成がシンプルとなる。
また,前記運搬物保持具ごとに使用制限の条件が異なり得る場合,本発明に係る搬送用具管理装置が,次の第1の構成又は第2の構成のいずれかを備えることが考えられる。
ここで,前記第1の構成は,本発明に係る搬送用具管理装置において,前記タグ記憶情報に,それを記憶する前記RFタグが設けられた前記搬送物保持具の使用制限に関する判別条件が含まれていることである。さらに,この第1の構成においては,前記使用制限状態判別手段が,前記タグ記憶情報読出し手段により読み出された前記判別条件と,前記累積使用実績情報読出し手段による読出し情報又は前記累積使用実績情報更新設定手段による設定情報とに基づいて,前記搬送物保持具の使用制限に関する状態判別を行う。
一方,前記第2の構成は,本発明に係る搬送用具管理装置が,前記搬送物保持具の使用制限に関する判別条件とこれに対応する前記識別情報とが記憶された使用制限判別条件記憶手段から,前記タグ記憶情報読出し手段により読み出された前記識別情報に対応する前記判別条件を読み出す判別条件読出し手段をさらに備えることである。この第2の構成においては,前記使用制限状態判別手段が,前記判別条件読出し手段により読み出された前記判別条件と,前記累積使用実績情報読出し手段による読出し情報又は前記累積使用実績情報更新設定手段による設定情報とに基づいて,前記搬送物保持具の使用制限に関する状態判別を行う。
本発明に係る搬送用具管理装置が,これら第1の構成又は第2の構成のいずれかを備えることにより,前記運搬物保持具ごとに使用制限の条件が異なる場合にも対応できる。
【0009】
また,前記タグ記憶情報に,それを記憶する前記RFタグが設けられた前記搬送物保持具の許容保持荷重の情報が含まれている場合に,本発明に係る搬送用具管理装置が,さらに次の(8)及び(9)に示す構成要素を備えることが考えられる。
(8)前記昇降部にかかる荷重を検出する荷重検出手段。
(9)前記タグ記憶情報読出し手段により読み出された前記許容保持荷重の情報と前記荷重検出手段による検出荷重との比較に基づいて,前記懸垂式昇降装置による前記昇降部の昇降を制限する昇降制限手段。
これにより,前記搬送物保持具それぞれの荷重仕様に応じて,許容荷重を超える搬送物が搬送されることを防止できる。
また,本発明において,前記使用制限状態判別手段は,前記昇降部とその昇降部以外の位置に設置されて前記タグ記憶情報読出し手段から情報を受信可能な情報処理装置との一方又は両方に設けられることが考えられる。
同様に,本発明において,前記判別結果通知手段が,前記昇降部と該昇降部以外の位置に設置されて前記使用制限状態判別手段から情報を受信可能な情報処理装置との一方又は両方に設けられることが考えられる。
また,本発明の他の実施形態に係る搬送用具管理装置が,前記搬送用具管理装置XにおけるステップS3〜S8(図3)に示した処理を実行する所定の携帯端末,或いは前記吊り具10の保管場所に設置された端末を備えることも考えられる。これにより,前記吊り具10が前記昇降部20により吊り上げられる状況以外の状況においても,その吊り具10の使用制限の状態を確認することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば,少数の前記昇降部に設けられた前記タグ記憶情報読出し手段及び前記更新情報書込み手段(RFタグのリーダ・ライタ)により,全ての前記搬送物保持具の使用実績情報が漏れなく自動的に管理される結果,作業者の手間や装置コスト(必要な構成機器の数)を抑えつつ,前記懸垂昇降搬送システムにおける前記搬送物保持具(前記吊り具に相当)の使用を的確に管理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は本発明の実施形態に係る搬送用具管理装置Xを備えた天井クレーンYの簡略図,図2は天井クレーンYの概略構成を表すブロック図,図3は搬送用具管理装置Xが実行するタグ情報管理処理の手順の一例を表すフローチャート,図4は搬送用具管理装置Xの応用例である搬送用具管理装置X’を備えた天井クレーンY’の概略構成を表すブロック図である。
【0012】
まず,図1に示す簡略図及び図2に示すブロック図を参照しつつ,本発明の実施形態に係る搬送用具管理装置X及びそれを備えた天井クレーンYの構成について説明する。なお,図1(a)は,天井クレーンYによって搬送物1及びそれを保持する吊り具10が吊り上げられる直前の状態,図1(b)は,天井クレーンYによって搬送物1及びそれを保持する吊り具10が吊り上げられた状態を表す。
天井クレーンYは,工場内等において使用される搬送物1の搬送装置であり,図1に示すように,天井近くに配設されたレールに沿って走行する移動台車50と,その移動台車50からワイヤーロープ等の懸垂材9により吊り下げられた昇降部20と,前記移動台車50に搭載され,前記昇降部20を昇降させる昇降装置40とを備えた懸垂式昇降装置の一例である。
前記昇降部20にはフック21(鉤部)が設けられており,天井クレーンYは,前記昇降部20のフック21に引っ掛けられた搬送物の保持具である吊り具10及びその吊り具10に保持された搬送物1を吊り上げ搬送する搬送システムの主要装置である。
また,搬送用具管理装置Xは,前記吊り具10の使用実績を管理する装置である。
【0013】
また,図2に示すように,昇降装置40は,巻取り装置41及びクレーン制御回路42を備え,また,搬送用具管理装置Xは,リーダ・ライタ31,タグ管理回路32,表示部33及びブザー34等を備えている。また,前記昇降部20には,搬送用具管理装置Xの他,荷重計22が設けられている。
前記荷重計22は,前記昇降部20のフック21にかかる荷重(重量)を測定するセンサである(前記第2の吊り上げ状況を検出する前記吊り上げ状況検出手段の一例)。この荷重計22による測定荷重の信号は,前記クレーン制御回路42と前記タグ管理回路32とに伝送される。なお,前記荷重計22は,搬送用具管理装置Xの構成要素の一部としても兼用されるものである。
前記巻取り装置41は,前記懸垂材9の繰り出し量(巻き取り量)を調節することによって前記昇降部20を昇降させる装置である。また,前記巻取り装置41は,前記懸垂材9の巻取り及び繰り出しを行う際に,前記昇降部22に設けられた荷重計22と昇降装置40に設けられたクレーン制御回路42とを接続する信号線(不図示)の巻取り及び繰り出しも行う。
前記クレーン制御回路42は,不図示の操作部を通じて入力される制御指令の信号に従って,前記巻取り装置41及び前記移動台車50の動作を制御する回路である。前記制御指令には,例えば,前記昇降部20の動作の制御指令であるアップ指令,ダウン指令及び昇降停止指令,また,前記移動台車50の動作の指令信号である順走行指令,逆走行指令及び停止指令等が含まれる。
また,前記クレーン制御回路42は,前記荷重計22からその測定荷重情報を取得し,不図示の表示装置や情報処理装置に対して測定荷重情報を出力する。さらに,前記クレーン制御回路42は,前記荷重計22から得た測定荷重情報の変動状況を検出し,その検出結果に基づいて前記昇降部20の揺れを抑える揺れ抑制制御等も行う。
【0014】
前記昇降部20に設けられた前記リーダ・ライタ31は,前記吊り具10に取り付けられたRFタグ11との間で無線通信を行うことにより,そのRFタグ11が備える記憶部(不図示)に記憶された情報の無線読出し及びその記憶部に対する情報の無線書込みを行うものである。
前記RFタグ11の記憶部には,当該天井クレーンYによる前記吊り具10の累積の吊り上げ実績を表す累積使用実績情報と,これに対応する識別情報であるIDコードと,当該RFタグ11が取り付けられた前記吊り具10の使用制限に関する判別条件の情報(以下,使用制限条件情報という)とが記憶される。ここで,前記IDコードは,前記吊り具10の識別情報(RFタグ11の識別情報といってもよい)である。また,前記RFタグ11の記憶情報のうち,前記IDコード及び前記使用制限条件情報は予め前記吊り具10ごとに定められた内容が記憶される情報である。一方,前記累積使用実績情報は,前記吊り具10ごとに予め定められた初期値が前記RFタグ11の記憶部に記憶され,その後,前記吊り具10の使用状況に応じて,前記タグ管理回路32及び前記リーダ・ライタ31によって更新される。
なお,前記RFタグ11の記憶部は,前記吊り具10を識別する前記IDコードの記憶手段であるとともに,前記累積使用実績情報とこれに対応する前記IDコードとが記憶された記憶手段(前記累積使用実績情報記憶手段)を兼ねるものである。
前記タグ管理回路32は,不図示のCPU及びそのCPUによって実行されるプログラムが記憶されたROM,時間を計時するクロック回路等を備え,前記リーダ・ライタ31を通じたRFタグ11に対する情報の読出し及び書込みを制御するとともに,そのRFタグ11の記憶情報に基づく各種の処理を実行するものである。このタグ管理回路32が実行する処理は,前記CPUが前記プログラムを実行することによって実現される。
前記表示部33及びブザー34は,前記タグ管理回路32からの出力信号に従って,それぞれ表示及び音による通知を行うものである。
【0015】
次に,図3に示すフローチャートを参照しつつ,搬送用具管理装置Xが実行するタグ情報管理処理の手順の一例について説明する。なお,以下に示すS1,S2,…は,処理手順(ステップ)の識別符号を表す。
搬送用具管理装置Xにおいて,前記リーダ・ライタ31が,当該リーダ・ライタ31による無線通信エリア12内(情報読出しが可能なエリア内)にRFタグ11が存在するか否かを検出する(S1)。例えば,前記リーダ・ライタ31は,常時或いは定期的に応答要求信号(無線信号)を出力し,その応答要求信号に対するRFタグ11からの応答信号を受信した場合に,無線通信エリア12ないにRFタグ11が存在すると判別する。
また,前記タグ管理回路32が,前記荷重計22による測定荷重が予め定められた設定荷重以上であるか否かを判別する(S2)。
ここで,前記リーダ・ライタ31及び前記タグ管理回路32は,無線通信エリア12内にRFタグ11が存在し,かつ,前記荷重計22による測定荷重が前記設定荷重以上である状況(以下,吊り上げ中の状況という)となるまでステップS1及びS2の処理を繰り返す。
【0016】
ところで,前記リーダ・ライタ31の無線通信エリア12は,前記昇降部20のフック21に前記吊り具10が引っ掛けられている状態において,その吊り具10に取り付けられたRFタグ11がその無線通信エリア12内に位置するように設定されている。また,前記フック21に対する前記吊り具10の引っ掛け状態が解除されることにより,前記昇降部20から前記吊り具10が離間した場合に,その吊り具10に取り付けられたRFタグ11が前記無線通信エリア12外に位置するようになる。
従って,前記リーダ・ライタ31(前記吊り上げ状況検出手段の一例)によるステップS1の処理は,前記無線通信エリア12内にRFタグ11が存在することを検出することにより,前記昇降部20に前記吊り具10が引っ掛けられたか否かの状況(前記第1の吊り上げ状況に相当)を検出する処理である。
また,ステップS2での判別基準となる前記設定荷重は,例えば,前記吊り具10の荷重とほぼ等しい値に設定されている。これにより,前記昇降部20のフック21に搬送物1を保持する前記吊り具10が引っ掛けられている状態では,前記荷重計22の測定荷重が前記設定荷重以上となり,その引っ掛けが解除されている状態では,前記荷重計22の測定荷重が前記設定荷重未満となる。
従って,前記タグ管理回路32(前記吊り上げ状況検出手段の一例)によるステップS2の処理は,前記昇降部20に所定以上の荷重がかかったことを検出することにより,前記昇降部20に前記吊り具10が引っ掛けられたか否かの状況(前記第1の吊り上げ状況に相当)を検出する処理である。
なお,本実施形態では,前記リーダ・ライタ31及び前記タグ管理回路32により,ステップS1及びS2の両方の処理結果のAND条件を判別することによって前記昇降部20に前記吊り具10が引っ掛けられたか否かの判別を行う例を示すが,ステップS1及びS2のいずれか一方の判別処理により,前記昇降部20に前記吊り具10が引っ掛けられたか否かの判別を行うことも考えられる。
【0017】
ステップS1,S2の処理により前記吊り上げ中の状況であると判別されると(即ち,前記吊り具10が前記昇降部20に引っ掛けられたことが検出された場合),前記昇降部20に設けられた前記リーダ・ライタ31が,前記タグ回路32からの制御指令に従って,前記吊り具10に取り付けられたRFタグ11からその記憶情報である前記IDコード,前記累積使用実績情報及び前記使用制限条件情報の無線読出しを自動的に実行する(S3,前記タグ記憶情報読出し手段及び前記累積使用実績情報読出し手段の一例)。このように,前記リーダ・ライタ31は,前記IDコード(識別情報)の読み出しを行う場合に,そのIDコードに対応する前記累積使用実績情報をRFタグ11から自動的に読み出す。
ここで,前記累積使用実績情報には,前記吊り上げ中の状況が検出されるごとに後述するステップS9においてカウントアップされる前記吊り具10の「累積吊り上げ回数」の情報と,前記荷重計22の測定荷重(前記昇降部20にかかる荷重)に基づいて積算される「累積吊り上げ荷重」の情報とが含まれる。前述したように,RFタグ11の記憶部には,予め前記累積使用実績情報の初期値(例えば,「累積吊り上げ回数」が0[回],「累積吊り上げ荷重」が0[kg・h])が記憶されており,その後,その値は,後述するステップS9〜S12の処理により随時更新される。その詳細については後述する。
また,前記使用制限条件情報には,「累積吊り上げ回数」のしきい値情報,及び「累積吊り上げ荷重」のしきい値情報とが含まれる。
【0018】
次に,前記タグ管理回路32は,ステップS3において前記リーダ・ライタ31により読み出された前記使用制限条件情報(前記判別条件の一例)と前記累積使用実績情報とに基づいて,前記吊り具10の使用制限に関する状態判別を行う(S4,前記使用制限状態判別手段の一例)。
具体的には,前記タグ管理回路32は,次の(a−1)又は(a−2)に示す条件のいずれかが成立した場合に,前記吊り具10が「使用禁止状態」であると判別し,それ以外の場合((a−1)及び(a−2)のいずれの条件も成立しない場合)であって,次の(b−1)又は(b−2)に示す条件のいずれかが成立した場合に,前記吊り具10が「使用注意状態」であると判別する。
(a−1)前記使用制限条件情報における「累積吊り上げ回数」が前記使用制限条件情報における第1の回数しきい値(上限回数)以上である場合。
(a−2)前記使用制限条件情報における「累積吊り上げ荷重」が前記使用制限条件情報における第1の累積荷重しきい値(上限荷重)以上である場合。
(b−1)前記使用制限条件情報における「累積吊り上げ回数」が前記使用制限条件情報における第2の回数しきい値(但し,前記第1の回数しきい値よりも小さい値)以上である場合。
(b−2)前記使用制限条件情報における「累積吊り上げ荷重」が前記使用制限条件情報における第2の累積荷重しきい値(但し,前記第2の累積荷重しきい値よりも小さい値)以上である場合。
ここで,「使用禁止状態」は,前記吊り具のさらなる使用が許容されないことを表す状態である。また,「使用注意状態」は,「使用禁止状態」に至る過程の途中段階の状態であり,例えば,使用の寿命が近いために代替の前記吊り具10の準備が必要な状態等である。なお,前記タグ管理回路32が,前記吊り具10の使用制限に関する状態として,以上に示した2つの状態を含む3段階以上の状態を判別することも考えられる。
このように,前記タグ管理回路32は,各RFタグ11が取り付けられた前記吊り具10ごとの使用制限の条件に関する前記使用制限条件情報を,そのRFタグ11から前記リーダ・ライタ31を通じて読み出し,読み出した前記使用制限条件情報に基づいて,前記吊り具10の使用制限に関する状態判別を行う。これにより,搬送用具管理装置Xは,前記吊り具10ごとに使用制限の条件が異なる場合にも適切に対応できる。
【0019】
次に,前記タグ管理回路32は,ステップS4での状態判別の結果に応じて,次の処理を切り替える(S5,S7)。
具体的には,前記タグ管理回路32は,前記吊り具10の状態が「使用禁止状態」であると判別した場合,「使用禁止状態」である旨を警報する通知を,前記表示部33及び前記ブザー34をれぞれを通じて行う(S6)。また,前記タグ管理回路32は,前記吊り具10の状態が「使用注意状態」であると判別した場合,「使用注意状態」である旨の通知を,前記表示部33及び前記ブザー34をれぞれを通じて行う(S8)。このように,前記タグ管理回路32は,ステップS4の状態判別処理が行われた場合に,その判別結果を自動的に通知する(S6,S8,前記判別結果通知手段の一例)。
これにより,使用限界を超えた前記吊り具10が継続使用されることを防止できる。また,前記吊り具10が使用限界に近い状態(「使用注意状態」)となった段階で代替の前記吊り具10を用意できるので,作業の効率化が図れる。
なお,前記タグ管理回路32は,前記吊り具10の状態が「使用禁止状態」でも「使用注意状態」でもないと判別した場合,処理をそのまま後述するステップS9へ移行させる。
【0020】
次に,前記タグ管理回路32は,ステップS9において(即ち,ステップS3においてRFタグ11から前記累積使用実績情報の読み出しが行われた場合),ステップS3で読み出された前記累積使用実績情報における「累積吊り上げ回数」に基づいて,前記累積使用実績情報における「累積吊り上げ回数」の更新値を設定する(S9,前記累積使用実績情報更新設定手段の一例)。具体的には,「累積吊り上げ回数」が1回分だけカウントアップされる。なお,このステップS9の処理は,ステップS1及びS2の処理によって前記吊り具10が前記吊り上げ中の状況であると検出されるごとに「累積吊り上げ回数」を1回分だけカウントアップする処理である。従って,ステップS9の処理は,ステップS3で読み出された前記累積使用実績情報における「累積吊り上げ回数」と,ステップS1及びS2で検出された前記吊り具10の吊り上げ状況とに基づいて「累積吊り上げ回数」の更新値を設定する処理である。
【0021】
さらに,前記タグ管理回路32は,ステップS1及びS2の処理によって前記吊り具10が前記吊り上げ中の状況であると判別された後,前記荷重計22による測定荷重が前記設定荷重未満であると判別する(S11)まで,ステップS3でRFタグ11から読み出された「累積吊り上げ荷重」[kg・h]と前記荷重計22による測定荷重とに基づいて,「累積吊り上げ荷重」の更新値を設定する処理を実行する(S10,前記累積使用実績情報更新設定手段の一例)。なお,前記荷重計22による測定荷重が前記設定荷重未満である状況は,前記吊り具10が前記昇降部20に引っ掛けられた状態が解除された状況(非吊り上げ中の状況)である。
例えば,前記タグ管理回路32は,前記吊り具10が前記吊り上げ中の状況であると判別された後,前記非吊り上げ中の状況となるまで,前記クロック回路により計時される一定時間ごとに前記荷重計22による測定荷重(前記第2の吊り上げ状況の一例)を順次積算するとともに,その積算値を測定荷重[kg]×時間[h]の単位に換算した値を「吊り上げ荷重加算値」[kg・h]として算出する。さらに,前記タグ管理回路32は,その「吊り上げ荷重加算値」を,ステップS3でRFタグ11から読み出された前記累積使用実績情報における「累積吊り上げ荷重」[kg・h]に加算して得られる値を,「累積吊り上げ荷重」の更新値として設定する。
なお,前記「吊り上げ荷重加算値」は,前記荷重計22による測定荷重そのものを用いて算出される場合の他,前記荷重計22による測定荷重を予め定められた粗い分解能の値に換算した値を用いて算出される場合等も考えられる。例えば,測定荷重を100kg未満の端数を丸めて得られる換算値を用いて,前記「吊り上げ荷重加算値」を算出すること等が考えられる。
そして,前記タグ管理回路32が,「累積吊り上げ荷重」の更新値設定を行っている間に,前記荷重計22による測定荷重が前記設定荷重未満となったことを検知すると,前記昇降部20に設けられた前記リーダ・ライタ31が,前記タグ管理回路32からの制御指令に従って,ステップS9及びS10において設定された前記累積使用実績情報の更新値をRFタグ11(前記累積使用実績情報記憶手段の一例)に書き込み(S12,前記更新情報書き込み手段の一例),その後,前述したステップS1へ処理が移行される。
【0022】
以上に示したように,搬送用具管理装置Xは,前記吊り具の吊り上げ状況を自動検出し(S1,S2,S10),その検出結果に応じて,前記吊り具10の累積使用実績情報の読出し(S3)及び更新(12)と,その累積使用実績情報に基づく前記吊り具10の使用制限状態の判別(S4)及び判別結果の通知(S6,S8)とを自動的に実行する。このため,前記吊り具10の管理のための特別な手間(情報入力作業の手間等)を必要としない。
また,搬送用具管理装置Xにおいては,前記昇降部20に設けられた前記リーダ・ライタ31により,全ての前記吊り具10の使用実績情報を漏れなく管理することができる。しかも,前記リーダ・ライタ31の数が少なくて済む。
また,前記吊り具10に関する「累積の吊り回数」や「累積の吊り上げ荷重」等の使用実績情報は,前記リーダ・ライタ31の無線通信エリア12内にRFタグ11が存在することや,前記荷重計22による測定荷重(吊り上げ荷重)など,リーダ・ライタ31や一般的な天井クレーンが通常検出可能な情報に基づいて把握(算出)できる情報である。従って,搬送用具管理装置Xを備えた懸垂式昇降装置(天井クレーン等)は,比較的簡易な構成によって前記吊り具10の吊り上げ状況を検出できる。
【0023】
以上に示した実施形態では,前記タグ管理回路32が,前記吊り具10が「吊り上げ中」の状況となるごとにカウントアップされる「累積吊り上げ回数」を,前記累積使用実績情報の一部として更新及び管理する例について示した。
一方,前述のステップS10(図3)において,前記タグ管理回路32が,前記クロック回路を通じて,前記昇降部20による前記吊り具10の吊り上げ時間(前記第3の吊り上げ状況に相当)を計時するとともに,その計時時間に基づいて,前記吊り具10の「累積吊り上げ時間」を前記累積使用実績情報の一部として算出及び更新することが考えられる。
さらに,前述のステップS4(図3)において,前記タグ管理回路32が,前記「累積吊り上げ回数」に基づく状態判別の代わりに,前記「累積吊り上げ時間」と前記吊り具10ごとに予め定められたしきい値との比較に基づいて,前記吊り具10の使用制限の状態判別を行うことが考えられる。
また,前述のステップS4において,前記タグ管理回路32が,前記「累積吊り上げ回数」,前記「累積吊り上げ荷重」及び前記「累積吊り上げ時間」のうちの2つ以上を集約した値(例えば,それらの情報を正規化した値の合計値等)と予め定められたしきい値との比較に基づいて,前記吊り具10の使用制限の状態判別を行うこと等も考えられる。
【0024】
また,前述の実施形態における前記累積使用実績情報は,いずれも前記吊り具10が使用されるにつれて値を加算する例を示した。
一方,予め前記累積使用実績情報の初期値として前記使用禁止状態に対応する上限値を設定しておき,ステップS9やS10において,前記タグ管理回路32が,前記吊り具10が使用されるにつれて前記累積使用実績情報(「累積吊り上げ回数」,「累積吊り上げ荷重」,「累積吊り上げ時間」等)の値を減算することも考えられる。この場合,前記タグ管理回路32は,前述のステップS4において,前記累積使用実績情報の値が予め定められたしきい値(例えば,ゼロ)以下となったか否かを判別することにより,前記吊り具10の使用制限の状態判別を行う。
また,前記荷重計22は,前記天井クレーンYにおける前記昇降部20以外の位置,例えば,前記移動台車50や前記昇降装置40等に設けられることも考えられる。この場合,荷重計22の測定荷重が,有線又は無線によりその荷重計22から前記タグ管理回路32に伝送される。
【0025】
また,前記タグ管理回路32が,ステップS4において,前記昇降部20に引っ掛けられた(吊り上げられた)前記吊り具10の状態が前記「使用禁止状態」であると判別した場合に,前記クレーン制御回路42に対し,前記懸垂材9の巻上げ禁止(即ち,前記吊り具10の吊り上げ禁止)の制御信号を出力することが考えられる(前記吊り上げ開始禁止手段の一例)。また,前記クレーン制御回路42は,前記タグ管理回路32から巻き上げ禁止の制御信号を受信した場合,不図示の操作部を通じて前記アップ指令(前記懸垂材9の巻き上げ指令)を受信した場合でも,その指令を無視して前記懸垂材9の巻上げを行わない。
これにより,「使用禁止状態」に至った前記吊り具10が,人為的ミスによって継続使用されることを確実に防止できる。
【0026】
また,前記RFタグ11の記憶部に,そのRFタグ11が取り付けられた吊り具10の許容保持荷重を表す上限荷重の情報が予め記憶され,搬送用具管理装置Xが,以下の処理を実行することが考えられる。
まず,前記リーダ・ライタ31が,前述したステップS3(図3参照)又はステップS2及びS3の間のステップにおいて,RFタグ11の記憶部から前記許容保持荷重の情報の無線読み出しを自動的に実行する。その後,前記タグ管理回路32が,リーダ・ライタ31により読み出された前記上限荷重の情報と,前記荷重計22による測定荷重(昇降部20にかかる荷重)とを随時比較し,その比較結果が予め定められた条件を満たす場合に,クレーン制御回路42に制御指令を送信することにより,巻取り装置41による昇降部20の昇降を制限する処理を実行する(前記昇降制限手段の一例)。
例えば,タグ管理回路32は,測定荷重が前記上限荷重に対して予め定められた第1の比率の範囲である(例えば,90%〜98%の範囲)である場合に,クレーン制御回路42に対し,巻取り装置41によるワイヤーロープの巻取り速度(昇降部20の吊り上げ速度)を予め定められた制限速度以下に制限させる。
さらに,タグ管理回路32は,測定荷重が前記上限荷重に対して予め定められた第2の比率の範囲である(例えば,98%以上の範囲)である場合に,クレーン制御回路42に対し,巻取り装置41によるワイヤーロープの巻取りを禁止(昇降部20の吊り上げを禁止)させる。また,タグ管理回路32は,測定荷重が前記第1の比率の範囲又は第2の比率の範囲である場合に,表示部33やブザー34を通じて警報通知を行う。もちろん,巻取り装置41による巻取り速度の制限と巻取り禁止とのいずれか一方のみの制御を行うことも考えられる。
これにより,吊り具10それぞれの荷重仕様(上限荷重)に応じて,許容荷重を超える搬送物が搬送されることを防止できる。
【0027】
次に,図4に示すブロック図を参照しつつ,前記搬送用具管理装置Xの応用例である搬送用具管理装置X’について説明する。なお,図4は,搬送用具管理装置X’を備えた天井クレーンY’の概略構成を表すブロック図である。
搬送用具管理装置X’は,図4に示すように,前記昇降部20に設けられる昇降部ユニットx1と前記昇降部20以外の位置に設置される情報処理装置x2とを備え,これら昇降部ユニットx1及び情報処理装置x2により,前記搬送用具管理装置Xが備える機能を分散して実現するものである。なお,図4に示す搬送用具管理装置X’において,図2に示す前記搬送用具管理装置Xと同じ構成要素については,同じ符号が付されている。
前記昇降部ユニットx1は,リーダ31’,タグ管理回路32’,前記表示部33,前記ブザー34及び通信インターフェース35を備えている。
ここで,前記リーダ31’は,前記吊り具10に取り付けられたRFタグ11から,その記憶部に記憶された情報を無線読出しするものである。
また,タグ管理回路32’は,前記タグ管理回路32と比較して,ハードウェアが同じであって実行するプログラムが一部異なるものである。
また,前記通信インターフェース35は,前記情報処理装置x2(計算機)との間で有線又は無線により通信を行う通信手段である。なお,前記情報処理装置x2も,前記昇降部ユニットx1側の前記通信インターフェース35に対応する通信インターフェースを備えていることはいうまでもない。
また,前記情報処理装置x2は,CPU及び記憶部(ハードディスク等)を備え,そのCPUが前記記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより,後述する各処理を実行する。
【0028】
搬送用具管理装置X’がアクセスるすRFタグ11(前記吊り具10に取り付けられたRFタグ)の記憶部には,前記IDコードのみが記憶されているものとする。
また,前記情報処理装置x2の記憶部には,前記昇降部20による吊り上げ対象となり得る全ての前記吊り具10に対応する前記IDコードと,そのIDコードそれぞれに対応する前記累積使用実績情報及び前記使用制限条件情報とが対応付けられたデータベースが記憶されている(前記累積使用実績情報記憶手段及び前記使用制限判別条件記憶手段の一例)。なお,初期状態では,そのデータベースにおいて,前記累積使用実績情報として所定の初期値が設定されている。
そして,前記情報処理装置x2は,前記タグ管理回路32’から受信する前記IDコードに基づいて前記データベースを検索し,そのIDコードに対応する前記累積使用実績情報及び前記使用制限条件情報を読み出すデータベース検索機能を備えている。
【0029】
以下,図3に示すフローチャートを参照しつつ,搬送用具管理装置X’が,前記搬送用具管理装置Xと異なる部分についてのみ説明する。
搬送用具管理装置X’では,ステップS3において,前記リーダ31’によって前記RFタグ11の記憶情報(前記IDコード)が読み出される。
また,ステップS3でRFタグ11から読み出された前記IDコードが,前記タグ管理回路32’により,前記通信インターフェース35を通じて前記情報処理装置x2に伝送される。
そして,前記情報処理装置x2(のCPU)は,前記タグ管理回路32’から前記IDコード(前記RFタグ11から読み出されたIDコード)を受信すると,前記データベース検索機能により,そのIDコードに対応する前記累積使用実績情報及び前記使用制限条件情報を読み出す(前記判別条件読出し手段の一例)。
さらに,前記情報処理装置x2(のCPU)は,ステップS4において,前記データベースから読み出した前記累積使用実績情報及び前記使用制限条件情報に基づいて,前記搬送具管理装置Xにおける前記タグ管理回路32の処理と同様に,前記吊り具10の使用制限状態の判別を実行し,その判別結果を前記タグ管理回路32’に送信する。これにより,前記タグ管理回路32’は,前記情報処理装置x2から受信した前記吊り具10の使用制限状態の判別結果に基づいて,前述したステップS5〜S8の処理を実行する。
【0030】
また,前記タグ管理回路32’は,前記RFタグ11から読み出されたIDコードに対応する前記累積使用実績情報を前記情報処理装置x2から取得し,その取得情報に基づいて,前述したステップS9〜S11の処理を実行する。
また,ステップS12において,前記タグ管理回路32’が,前記累積使用実績情報の更新値及び前記IDコードを前記情報処理装置x2に送信し,さらに,その更新値及びIDコードを受信した前記情報処理装置x2が,その受信情報に基づいて前記データベース内の情報を更新する(データを書き換える)。
以上に示した搬送用具管理装置X’においては,前記搬送用具管理装置Xに比べ,前記昇降部20に設けられる前記タグ管理回路32’の機能が簡素となる。従って,前記昇降部20が複数存在する場合に,搬送用具管理装置X’が,複数の前記昇降部20それぞれに設けられた複数の前記昇降部ユニットx1と,その複数の昇降部ユニットx1それぞれと通信可能な前記情報処理装置x2とを備えることにより,装置(システム)全体として冗長部の少ない簡素な構成となる。
【0031】
また,図4に示す搬送用具管理装置X’において,前記昇降部ユニットx1側の前記タグ管理回路32’と前記情報処理装置x2との役割分担(機能分担)は,以上に示した他にも各種考えられる。
例えば,前記昇降部20に設けられた前記タグ管理回路32’とその他の位置に配置された前記情報処理装置x2のCPUとの両方が,ステップS4の処理(前記吊り具10の使用制限状態判別)を実行することが考えられる。
また,前記情報処理装置x2が,ステップS5〜S8の処理を,前記タグ管理回路32’と並行して,或いは前記タグ管理回路の代わりに実行することにより,その情報処理装置x2が備える表示部やスピーカを通じて前記吊り具10の状態の通知を行うことも考えられる(前記判別結果通知手段の一例)。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は,懸垂式昇降装置(天井クレーンやホイスト等)の昇降部に引っ掛けられた搬送物保持具及びこれに保持された搬送物を吊り上げ搬送するシステムにおいて,前記搬送物保持具の使用実績を管理する搬送用具管理装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係る搬送用具管理装置Xを備えた天井クレーンYの簡略図。
【図2】天井クレーンYの概略構成を表すブロック図。
【図3】搬送用具管理装置Xが実行するタグ情報管理処理の手順の一例を表すフローチャート。
【図4】搬送用具管理装置Xの応用例である搬送用具管理装置X’を備えた天井クレーンY’の概略構成を表すブロック図。
【符号の説明】
【0034】
X,X’ :搬送用具管理装置
1 :搬送物
10:吊り具(搬送物保持具)
11:RFタグ
12:無線通信エリア
20:昇降部
21:フック
22:荷重計
31:リーダ・ライタ
31’:リーダ
32,32’:タグ管理回路
33:表示部
34:ブザー
35:通信インターフェース
40:昇降装置
41:巻取り装置
42:クレーン制御回路
50:移動台車
S1,S2,…:処理手順(ステップ)
x1:昇降部ユニット
x2:情報処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉤部を有する昇降部を懸垂材を介して昇降させる懸垂式昇降装置により,前記昇降部に引っ掛けられた搬送物保持具及びこれに保持された搬送物を吊り上げ搬送するシステムにおける,前記搬送物保持具の使用実績を管理する搬送用具管理装置であって,
前記懸垂式昇降装置に設けられ,少なくとも前記昇降部に前記搬送物保持具が引っ掛けられた状況に関する第1の吊り上げ状況を含む前記搬送物保持具の吊り上げ状況を自動的に検出する吊り上げ状況検出手段と,
前記昇降部に設けられ,前記吊り上げ状況検出手段によって前記昇降部に前記搬送物保持具が引っ掛けられたことが検出された場合に,前記搬送物保持具が備えるRFタグから該搬送物保持具の識別情報を含むタグ記憶情報の無線読出しを自動的に行うタグ記憶情報読出し手段と,
前記タグ記憶情報読出し手段による情報の読み出しが行われる場合に,前記懸垂式昇降装置による前記搬送物保持具の累積の吊り上げ実績を表す累積使用実績情報とこれに対応する前記識別情報とが記憶された累積使用実績情報記憶手段から,前記タグ記憶情報読出し手段により読み出された前記識別情報に対応する前記累積使用実績情報を自動的に読み出す累積使用実績情報読出し手段と,
前記累積使用実績情報読出し手段による情報の読み出しが行われた場合に,その読出し情報と前記吊り上げ状況検出手段の検出結果とに基づいて,前記累積使用実績情報の更新情報を設定する累積使用実績情報更新設定手段と,
前記昇降部に設けられ,前記累積使用実績情報更新設定手段による設定情報を前記累積使用実績情報記憶手段に書き込む更新情報書き込み手段と,
前記累積使用実績情報読出し手段による読出し情報又は前記累積使用実績情報更新設定手段による設定情報に基づいて,前記搬送物保持具の使用制限に関する状態判別を自動的に行う使用制限状態判別手段と,
前記使用制限状態判別手段による状態判別が行われた場合に,その判別結果を自動的に通知する判別結果通知手段と,
を具備してなることを特徴とする搬送用具管理装置。
【請求項2】
前記吊り上げ状況検出手段が,前記タグ記憶情報読出し手段による情報読出しが可能なエリア内に前記RFタグが存在すること,及び前記昇降部に所定以上の荷重がかかったことの一方又は両方を検出することにより前記第1の吊り上げ状況を検出してなる請求項1に記載の搬送用具管理装置。
【請求項3】
前記吊り上げ状況検出手段が,前記昇降部にかかる荷重に関する第2の吊り上げ状況及び前記昇降部による前記搬送物保持具の吊り上げ時間に関する第3の吊り上げ状況の一方又は両方をさらに検出するものであり,
前記累積使用実績情報が,前記第1の吊り上げ状況に基づく前記搬送物保持具の累積吊り上げ回数,前記第2の吊り上げ状況に基づく累積吊り上げ荷重及び前記第3の吊り上げ状況に基づく累積吊り上げ時間のうちの一又は複数に関する情報である請求項1又は2のいずれかに記載の搬送用具管理装置。
【請求項4】
前記使用制限状態判別手段が,前記搬送物保持具のさらなる使用が許容されないことを表す使用禁止状態を含む一又は複数の状態のいずれかであるか否かを判別してなる請求項1〜3のいずれかに記載の搬送用具管理装置。
【請求項5】
前記昇降部に引っ掛けられた前記搬送物保持具の状態が,前記使用制限状態判別手段により前記使用禁止状態であると判別された場合に,前記懸垂式昇降装置による前記搬送物保持具の吊り上げを開始させない制御を行う吊り上げ開始禁止手段を具備してなる請求項4に記載の搬送用具管理装置。
【請求項6】
前記RFタグの記憶部が前記累積使用実績情報記憶手段を兼ね,前記タグ記憶情報読出し手段が前記累積使用実績情報を含む前記タグ記憶情報の無線読出しを行う前記累積使用実績情報読出し手段を兼ねてなる請求項1〜5のいずれかに記載の搬送用具管理装置。
【請求項7】
前記タグ記憶情報に,それを記憶する前記RFタグが設けられた前記搬送物保持具の使用制限に関する判別条件が含まれており,
前記使用制限状態判別手段が,前記タグ記憶情報読出し手段により読み出された前記判別条件と,前記累積使用実績情報読出し手段による読出し情報又は前記累積使用実績情報更新設定手段による設定情報とに基づいて,前記搬送物保持具の使用制限に関する状態判別を行ってなる請求項1〜6のいずれかに記載の搬送用具管理装置。
【請求項8】
前記搬送物保持具の使用制限に関する判別条件とこれに対応する前記識別情報とが記憶された使用制限判別条件記憶手段から,前記タグ記憶情報読出し手段により読み出された前記識別情報に対応する前記判別条件を読み出す判別条件読出し手段を具備し,
前記使用制限状態判別手段が,前記判別条件読出し手段により読み出された前記判別条件と,前記累積使用実績情報読出し手段による読出し情報又は前記累積使用実績情報更新設定手段による設定情報とに基づいて,前記搬送物保持具の使用制限に関する状態判別を行ってなる請求項1〜6のいずれかに記載の搬送用具管理装置。
【請求項9】
前記タグ記憶情報に,それを記憶する前記RFタグが設けられた前記搬送物保持具の許容保持荷重の情報が含まれており,
前記昇降部にかかる荷重を検出する荷重検出手段と,
前記タグ記憶情報読出し手段により読み出された前記許容保持荷重の情報と前記荷重検出手段による検出荷重との比較に基づいて,前記懸垂式昇降装置による前記昇降部の昇降を制限する昇降制限手段と,
を具備してなる請求項1〜8のいずれかに記載の搬送用具管理装置。
【請求項10】
前記使用制限状態判別手段が,前記昇降部と該昇降部以外の位置に設置されて前記タグ記憶情報読出し手段から情報を受信可能な情報処理装置との一方又は両方に設けられてなる請求項1〜9のいずれかに記載の搬送用具管理装置。
【請求項11】
前記判別結果通知手段が,前記昇降部と該昇降部以外の位置に設置されて前記使用制限状態判別手段から情報を受信可能な情報処理装置との一方又は両方に設けられてなる請求項1〜10のいずれかに記載の搬送用具管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−308238(P2008−308238A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154637(P2007−154637)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)