説明

搬送装置、液体噴射装置及び搬送方法

【課題】搬送物に付着した粉塵が搬送物の搬送途中に飛散するのを抑制することができる搬送装置、液体噴射装置及び搬送方法を提供する。
【解決手段】プリンター11は、搬送経路に沿って用紙P1を搬送する搬送装置15を備える。搬送装置15は、搬送経路上における用紙P1が搬送される途中で他部材と接触する位置に、用紙P1の端縁よりも外側にはみ出すように用紙P1と重ねて配置されるカバー部材29を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば用紙などの搬送物を搬送する搬送装置及び該搬送装置を備えたインクジェット式プリンターなどの液体噴射装置並びに搬送物の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体噴射装置の一種であるプリンター(インクジェット式記録装置)には、用紙(搬送物)を搬送する搬送機構部(搬送装置)と、ノズルから噴射したインク(液体)を用紙に付着させることで記録を行う記録ヘッドとを備えたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1のプリンターは、記録ヘッドと対向する位置に設けられて用紙を支持しつつ案内する搬送用金属ガイドと、記録ヘッドの下面に設けられた金属製のノズルプレートと搬送用金属ガイドとの間に電圧を印加する電源とを備えている。そして、記録ヘッドと搬送用金属ガイドとの間に電圧を印加して、用紙の近傍に浮遊する紙粉等(粉塵)を搬送用金属ガイドに接する用紙に静電力で付着させるようにしている。すなわち、紙粉等が飛散して記録ヘッドに付着すると、ノズルの目詰まりが生じて記録品質が低下してしまうため、静電力によって紙粉等が記録ヘッドの方に飛散しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−220695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうしたノズルの目詰まりを招く紙粉等は、用紙製造時の裁断によって生じるものであり、用紙の端部に付着していることが多い。そのため、搬送される用紙の端部が用紙搬送途中に搬送用金属ガイドなどに接触すると、その衝撃で用紙の端部に付着していた紙粉等が周囲に飛び散ってしまうことがある。そして、特に用紙を高速で搬送する場合などには、紙粉等が勢いよく飛散するために、静電力によって紙粉等を十分に引き寄せることができないという問題がある。
【0006】
なお、こうした問題は、ノズルから液体を噴射するプリンターに限らず、搬送物の搬送経路沿いに粉塵の付着を抑制すべき機器などが配置されている場合にも共通して生じうる。また、搬送物も用紙に限らず、例えば布や金属、木材等を搬送する場合においても、裁断によって端縁に粉状の切りくず等が付着している場合などには、同様の問題を生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、搬送物に付着した粉塵が搬送物の搬送途中に飛散するのを抑制することができる搬送装置、液体噴射装置及び搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の搬送装置は、搬送経路に沿って搬送物を搬送する搬送装置であって、前記搬送経路上における前記搬送物が搬送される途中で他部材と接触する位置に、前記搬送物の端縁よりも外側にはみ出すように前記搬送物と重ねて配置されるカバー部材を備える。
【0009】
この構成によれば、搬送物が搬送経路上において他部材と接触して衝撃を受けた場合にも、カバー部材によって搬送物に付着した粉塵の飛散を抑制することができる。したがって、搬送物に付着した粉塵が搬送物の搬送途中に飛散するのを抑制することができる。
【0010】
本発明の搬送装置は、前記カバー部材を前記搬送物の端縁に沿うように重ねた状態で前記搬送経路に沿って移動させる移動機構をさらに備える。
この構成によれば、移動機構がカバー部材を移動させるので、搬送物が搬送経路上において複数の他部材に接触する場合にも、その接触の都度、搬送物に付着した粉塵の飛散を抑制することができる。
【0011】
本発明の搬送装置において、前記移動機構は、前記カバー部材を前記搬送物の搬送方向における上流側から下流側に向けて前記搬送物の搬送時に往路移動させるとともに、往路移動した前記カバー部材を前記搬送方向の下流側から上流側に向けて復路移動させる。
【0012】
この構成によれば、移動機構がカバー部材を搬送物の搬送方向に沿って往復移動させることで、カバー部材を繰り返し使用することができる。
本発明の搬送装置は、前記搬送経路において前記搬送物を支持する支持部材をさらに備え、前記カバー部材は前記搬送物の搬送方向における下流端が前記搬送物の前記搬送方向における下流側の端縁よりも外側にはみ出す態様で前記支持部材と前記搬送物との間に配置され、前記移動機構は、前記カバー部材が前記搬送経路上の前記他部材に対して前記搬送物よりも先に接触するように前記カバー部材を移動させる。
【0013】
この構成によれば、カバー部材が搬送経路上の他部材に対して搬送物よりも先に接触するので、搬送物が搬送経路上の他部材に接触する際の衝撃を緩和することができる。これにより、搬送物に付着した粉塵が接触の衝撃で飛散するのを抑制することができる。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、上記搬送装置と、前記搬送物に液体を噴射するためのノズルが設けられた記録ヘッドとを備えた液体噴射装置であって、前記カバー部材は搬送される前記搬送物と前記記録ヘッドとの間に配置される。
【0015】
この構成によれば、カバー部材は搬送物と記録ヘッドとの間に配置されるので、搬送物に付着した粉塵が飛散した場合にも、粉塵が記録ヘッドに付着するのを抑制することができる。したがって、ノズルに粉塵が付着して記録品質が低下するのを抑制することができる。
【0016】
本発明の液体噴射装置において、前記カバー部材には前記搬送物に対する液体の噴射範囲に対応する位置に開口部が形成されている。
この構成によれば、カバー部材には搬送物に対する液体の噴射範囲に対応する位置に開口部が形成されているので、ノズルから噴射された液体がカバー部材に付着するのを抑制することができる。
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の液体噴射装置は、上記搬送装置と、前記搬送物に液体を噴射するためのノズルが設けられた記録ヘッドとを備えた液体噴射装置であって、前記カバー部材は、前記搬送物と前記記録ヘッドとの間において、前記搬送物の搬送方向と交差する幅方向における端部を覆うように配置されている。
【0018】
この構成によれば、カバー部材は搬送物と記録ヘッドとの間において搬送物の幅方向における端部を覆うように配置されているので、搬送物が搬送に伴って振動する場合にも、飛散した粉塵がノズルに付着するのを抑制することができる。
【0019】
上記目的を達成するために、本発明の搬送方法は、搬送経路に沿って搬送物を搬送する搬送工程と、前記搬送物が前記搬送経路上で他部材と接触する位置において、前記搬送物の端縁よりも外側にはみ出すように前記搬送物と重ねて配置されるようにカバー部材を移動させる移動工程とを備える。
【0020】
この構成によれば、搬送物が搬送経路上で他部材と接触して衝撃を受けた場合にも、カバー部材によって搬送する搬送物に付着した粉塵の飛散を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかる搬送装置を備える液体噴射装置の第1実施形態としてのプリンターの概略構成を示す断面図。
【図2】図1における2−2線矢視断面図。
【図3】本発明にかかる搬送装置を備える液体噴射装置の第2実施形態としてのプリンターの概略構成を示す断面図。
【図4】図3における4−4線矢視断面図。
【図5】第2実施形態のプリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図6】本発明にかかる搬送装置を備える液体噴射装置の第3実施形態としてのプリンターの概略構成を示す側面図。
【図7】第3実施形態のプリンターにおけるラインヘッドの下面図。
【図8】第3実施形態のプリンターにおいて用いられるカバー部材の斜視図。
【図9】本発明にかかる搬送装置を備える液体噴射装置の第4実施形態としてのプリンターの概略構成を示す側面図。
【図10】図9における10−10線矢視断面図。
【図11】第4実施形態のプリンターの電気的構成を示すブロック図。
【図12】本発明にかかる搬送装置を備える液体噴射装置の第5実施形態としてのプリンターの概略構成を示す側面図。
【図13】第5実施形態の搬送装置が備える移動機構の上面図。
【図14】本発明にかかる搬送装置を備える液体噴射装置の第6実施形態としてのプリンターの概略構成を示す側面図。
【図15】第5実施形態のプリンターにおいて用いられるカバー部材を示す上面図。
【図16】別の実施形態のカバー部材を示す斜視図。
【図17】別の実施形態のカバー部材を示す斜視図。
【図18】別の実施形態のカバー部材を示す斜視図。
【図19】別の実施形態のカバー部材を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明にかかる搬送装置及び液体噴射装置をそれぞれ用紙の搬送装置及びインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」と略す場合もある)に具体化した実施形態について説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は各図中に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。なお、図面中の上方向、右方向及び前方向を示す矢印において、「○」の中に「・」が記載されたもの(矢の先端を前から見た図)は紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたもの(矢の羽根を後ろから見た図)は紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
【0023】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態のプリンター11(11A)は、略四角箱状の本体ケース12を備えている。本体ケース12の背面側には、搬送物の一例としての用紙P1をセットする給紙部13と、給紙部13にセットされた用紙P1を本体ケース12内に給送する給紙ローラー14とが設けられている。また、本体ケース12の前面側には、用紙P1を本体ケース12の外側へ排紙するための排紙口12aが設けられている。
【0024】
本体ケース12内には、給紙部13に支持された用紙P1を本体ケース12の背面側から前面側に向けて搬送方向X(本実施形態では前後方向)に延びる搬送経路に沿って搬送する搬送装置15(15A)が設けられている。搬送装置15Aは、給紙ローラー14及び搬送ローラー対16,17を構成要素として備えている。
【0025】
搬送装置15Aは、搬送方向Xにおいて給紙ローラー14と搬送ローラー対16との間となる位置に、反射型の光学式センサーである検出センサー18を備えている。そして、搬送装置15Aは、検出センサー18が用紙P1の先端(搬送方向Xにおける下流端)を検出すると、所定量の紙送りを行って用紙P1の頭出しを行うようになっている。なお、頭出しとは、用紙P1を記録開始位置まで搬送するとともに記録開始位置において一端停止させる印刷準備動作のことをいう。
【0026】
図2に示すように、搬送装置15Aは、搬送方向Xにおいて搬送ローラー対16と搬送ローラー対17との間に設けられた支持部材19を備えている。なお、支持部材19の上面側には、搬送経路において用紙P1を支持するリブ20が搬送方向Xに延びるように突設されている。なお、給紙ローラー14及び搬送ローラー対16,17は搬送方向Xと交差する幅方向Y(本実施形態では左右方向)に並ぶように複数設けられている。また、リブ20は幅方向Yに並ぶように複数設けられている。
【0027】
本体ケース12内において、左右の側壁間には、幅方向Yに延びるガイド軸21が架設されている。また、ガイド軸21には、幅方向Yに往復移動可能な状態でキャリッジ22が支持されている。キャリッジ22は、図示しないキャリッジモーターの駆動によって幅方向Yに往復移動するようになっている。
【0028】
キャリッジ22の下面側には、インクジェット式の記録ヘッド23が設けられている。記録ヘッド23の支持部材19と対向する下面側となるノズル形成面23aには、用紙P1に液体の一例としてのインクを噴射するための複数のノズル24が搬送方向Xに沿って並ぶように設けられている。搬送方向Xに沿って並ぶ複数のノズル24はノズル列Nを構成している。また、記録ヘッド23には、液体の一例としてのインクの色数(液体の種類数)に対応する複数のノズル列Nが幅方向Yに並ぶように設けられている。
【0029】
そして、記録ヘッド23は、頭出しされて支持部材19上に位置する用紙P1の表面側に向けてノズル24からインクを噴射することで、用紙P1に記録(印刷)を施すようになっている。すなわち、プリンター11Aは、キャリッジ22を幅方向Yに往復移動させながら記録ヘッド23からインクを噴射する印字動作と、用紙P1を所定の搬送量で搬送する紙送り動作とを交互に繰り返すことで用紙P1に記録を施すシリアル方式のプリンターとなっている。
【0030】
本体ケース12内において、キャリッジ22の移動範囲の右端側の領域には、記録ヘッド23のメンテナンス処理を行うためのメンテナンスユニット25が設けられている。メンテナンスユニット25は、記録ヘッド23のノズル形成面23aをキャッピングするための有底箱状のキャップ26と、ノズル形成面23aをワイピングするためのワイパー27とを備えている。
【0031】
キャップ26は、ノズル24の乾燥を防止するためのキャッピングに用いられる他、記録ヘッド23内のインクをノズル24から吸引することで、気泡や増粘したインクなどを排出させる吸引クリーニングを実行する際に用いられる。そのため、キャップ26の底面には吸引口26aが形成されているとともに、キャップ26の下方には吸引口26aを通じてキャップ26内を吸引するための吸引ポンプ28が設けられている。また、ワイパー27によってノズル形成面23aを払拭することで、ノズル形成面23aに付着した紙粉やインク等を除去するようになっている。
【0032】
搬送装置15Aは、用紙P1が他部材(搬送ローラー対16,17や支持部材19)と接触する位置において、用紙P1の端縁よりも外側にはみ出すように用紙P1と重ねて配置されるシート状のカバー部材29(29A)を用紙P1とともに移動させるようになっている。すなわち、本実施形態においては、給紙ローラー14及び搬送ローラー対16,17がカバー部材29Aを用紙P1の端縁に沿うように重ねた状態で搬送経路に沿って移動させる移動機構30(30A)として機能する。
【0033】
カバー部材29Aは、用紙P1の4辺を上側から覆うように搬送方向X及び幅方向Yの長さが用紙P1よりも一回り大きく形成されている。また、カバー部材29Aには、用紙P1に対するインクの噴射範囲(印刷範囲)と対応する位置に開口部31が形成されている。
【0034】
次に、プリンター11Aにおける用紙P1の搬送処理及びカバー部材29Aの移動処理について説明する。
プリンター11Aにおいては、用紙P1が給紙部13とカバー部材29Aとの間に配置されるように用紙P1及びカバー部材29Aが給紙部13にセットされる。このとき、カバー部材29Aは、用紙P1の4辺の端縁よりも外側にはみ出すように用紙P1と重ねて配置される。
【0035】
そして、この状態で給紙ローラー14の回転が開始されると、用紙P1及びカバー部材29Aが搬送経路に沿って搬送方向Xに搬送される(搬送工程)。用紙P1は、その搬送過程で搬送ローラー対16によって挟持されるとともに頭出しによって支持部材19上に載置される。用紙P1の頭出しが完了すると、支持部材19上において、用紙P1への記録処理と用紙P1の搬送とが交互に行われる。そして、用紙P1への記録処理が終了すると、用紙P1及びカバー部材29Aは搬送ローラー対16,17によって搬送方向Xの下流側に搬送され、排紙口12aから排紙される。
【0036】
移動機構30A(搬送装置15A)は、用紙P1が搬送経路上で他部材(搬送ローラー対16,17や支持部材19)と接触する位置において、用紙P1の端縁よりも外側にはみ出すように用紙P1と重ねて配置されるようにカバー部材29Aを移動させる(移動工程)。これにより、カバー部材29Aは、搬送経路上における用紙P1が搬送される途中で他部材(搬送ローラー対16,17や支持部材19)と接触する位置において、用紙P1の端縁よりも外側にはみ出すように用紙P1と重ねて配置される。
【0037】
次に、プリンター11A及び搬送装置15Aの作用について説明する。
所定サイズにカットされた用紙P1は、用紙製造時の裁断で生じた紙粉などの粉塵が切断部となる端部に付着していることが多い。そのため、用紙P1が他部材(例えば搬送ローラー対16,17や支持部材19など)に接触する際の衝撃や搬送に伴う振動で、用紙P1に付着していた紙粉等がその周囲に飛び散ることがある。なお、紙粉とは、用紙P1を構成する繊維質のかけらや含有物質・塗装物質の粉などをいう。例えば、用紙P1には、白さを出す顔料としての炭酸カルシウムや光沢を出すためのカオリンなどが含有されていたり塗布されていたりすることがある。
【0038】
そして、このうちの炭酸カルシウムが紙粉となった場合、団粒構造を有する一次粒子の場合は100マイクロメートル程度の粒子径であるが、団粒構造がくずれた二次粒子の場合は5〜10マイクロメートル程度の粒子径となる。これに対して、ノズル24は直径約20マイクロメートル程度であるので、微細な炭酸カルシウムの粒子はノズル24内に入り込むことができる。そして、炭酸カルシウムがノズル24内に侵入してインクに混ざると、インクの粘度が著しく増し、メンテナンス処理によっても解消しにくい重度の目詰まりを招く虞がある。また、ノズル24よりも粒子径の大きい粉塵であっても、ノズル24付近に付着すると、ノズル24から噴射されるインク滴の飛行方向が変化して、用紙P1に対する着弾位置がずれてしまうことがある。
【0039】
特に、用紙P1が支持部材19のリブ20に接触するときには、記録ヘッド23が直近に位置しているために、飛散した紙粉等がノズル24内に進入したり、ノズル24付近に付着したりする虞がある。その点、プリンター11Aにおいては、用紙P1の先端が搬送ローラー対16,17や支持部材19に接触したり、搬送に伴って支持部材19上で振動するときにも、カバー部材29Aは記録ヘッド23と用紙P1との間に配置されている。そして、カバー部材29Aが用紙P1の四辺の端縁を覆っているので、飛散した紙粉等の記録ヘッド23への付着が抑制される。
【0040】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)用紙P1が搬送経路上において他部材と接触して衝撃を受けた場合にも、カバー部材29によって用紙P1に付着した粉塵の飛散を抑制することができる。したがって、用紙P1に付着した粉塵が用紙P1の搬送途中に飛散するのを抑制することができる。
【0041】
(2)移動機構30がカバー部材29を移動させるので、用紙P1が搬送経路上において複数の他部材に接触する場合にも、その接触の都度、用紙P1に付着した粉塵の飛散を抑制することができる。
【0042】
(3)カバー部材29は用紙P1と記録ヘッド23との間に配置されるので、用紙P1に付着した粉塵が飛散した場合にも、粉塵が記録ヘッド23に付着するのを抑制することができる。したがって、ノズル24に粉塵が付着して記録品質が低下するのを抑制することができる。
【0043】
(4)カバー部材29には用紙P1に対するインクの噴射範囲に対応する位置に開口部31が形成されているので、ノズル24から噴射されたインクがカバー部材29に付着するのを抑制することができる。
【0044】
(5)搬送装置15によって搬送される用紙P1が搬送経路上で他部材と接触して衝撃を受けた場合にも、カバー部材29によって搬送する用紙P1に付着した粉塵の飛散を抑制することができる。
【0045】
(6)カバー部材29を移動させるために専用の移動機構30を備える必要がないので、搬送装置15やプリンター11の部品点数を増加させたり構成を複雑化させたりすることがない。
【0046】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図3に示すように、本実施形態のプリンター11(11B)は、第1実施形態と同様の支持部材19、キャリッジ22、記録ヘッド23及びメンテナンスユニット25を備えるシリアル方式のプリンターである。ただし、プリンター11Bの搬送装置15(15B)は、搬送経路にそって用紙P1を搬送する搬送装置15Aの構成に加えて、カバー部材29(29B)を用紙P1の端縁に沿うように重ねた状態で搬送経路に沿って移動させる移動機構30(30B)を備えている。移動機構30Bは、給紙部13の下方にシート状のカバー部材29(29B)をセットするための給送部32と、カバー部材29Bを給送するための給送ローラー33と、搬送ローラー対16,17を構成要素として備えている。
【0047】
カバー部材29Bは、図4に示すように、用紙P1と重ねて配置された場合に用紙P1の4辺の端縁よりも外側にはみ出すように、搬送方向X及び幅方向Yの長さが用紙P1よりも一回り大きく形成されている。
【0048】
次に、プリンター11Bの電気的構成について説明する。
図5に示すように、プリンター11Bは、用紙P1の搬送処理や記録処理を制御するための制御装置100を備えている。制御装置100は、コンピューター101と、ヘッド駆動回路102と、モーター駆動回路103,104とを備えている。コンピューター101は、バス105を介して、ヘッド駆動回路102及びモーター駆動回路103,104に電気的に接続されている。
【0049】
ヘッド駆動回路102は記録ヘッド23と電気的に構成されているとともに、モーター駆動回路103はキャリッジ22を移動させるためのキャリッジモーター34と電気的に接続されている。また、モーター駆動回路104は給紙ローラー14、搬送ローラー対16,17及び給送ローラー33を回転させるための搬送モーター35と電気的に接続されている。さらに、搬送装置15Bは搬送モーター35の出力先を切り換えるための動力伝達切替装置36と、搬送モーター35の回転方向や回転量を検出するためのロータリーエンコーダー37とを備えている。
【0050】
検出センサー18は図示しない光源部と受光部とを有して、制御装置100と電気的に接続されている。そして、検出センサー18は、光源部が下方に向けて出射した光の反射光を受光部が受光して、反射光の強さに応じた電気信号を制御装置100に出力するようになっている。
【0051】
コンピューター101は、ASIC110(Application Specific IC(特定用途向けIC))、CPU111、ROM112及びRAM113を備えている。ROM112には、各種制御プログラム及び各種データなどが記憶されている。RAM113には、CPU111によって実行されるプログラムデータや、CPU111による演算結果及び処理結果である各種データなどが一時記憶される。
【0052】
コンピューター101は、CPU111がROM112等に記憶されたプログラムを実行することで、各種の制御を行う。例えば、コンピューター101は、ヘッド駆動回路102を介して記録ヘッド23を制御するとともに、モーター駆動回路103,104を介してそれぞれキャリッジモーター34及び搬送モーター35を制御する。なお、コンピューター101は、ロータリーエンコーダー37からの検出信号及び検出センサー18の検出結果に基づいて搬送モーター35を制御する。
【0053】
次に、プリンター11Bにおける用紙P1の搬送処理及びカバー部材29Bの移動処理について説明する。
プリンター11Bにおいては、用紙P1が給紙部13にセットされるとともにカバー部材29Bが給送部32にセットされた状態で、コンピューター101が搬送モーター35を駆動して、まず給送ローラー33の回転を開始させる。これにより、給送部32にセットされたカバー部材29Bが搬送方向Xの下流側に向けて移動を開始する。
【0054】
次に、検出センサー18がカバー部材29Bの先端を検出すると、コンピューター101が動力伝達切替装置36を制御して搬送モーター35の動力を給紙ローラー14に接続させ、給紙ローラー14の回転を開始させる。すると、給紙部13にセットされた用紙P1は、搬送経路に沿って搬送方向Xの下流側に向けて搬送される(搬送工程)。そして、用紙P1は、搬送の過程でカバー部材29Bと重ねられるとともにカバー部材29Bに支持された状態で搬送ローラー対16に挟持された後、支持部材19上に搬送される。
【0055】
すなわち、移動機構30Bは、用紙P1が搬送経路上で他部材(搬送ローラー対16,17や支持部材19)と接触する位置において、用紙P1の端縁よりも外側にはみ出すように用紙P1と重ねて配置されるようにカバー部材29Bを移動させる(移動工程)。これにより、カバー部材29Bは、搬送経路上における用紙P1が搬送される途中で他部材(搬送ローラー対16,17や支持部材19)と接触する位置において、用紙P1の端縁よりも外側にはみ出すように用紙P1と重ねて配置される。
【0056】
また、移動機構30Bは、カバー部材29Bが搬送経路上の他部材(搬送ローラー対16,17や支持部材19)に対して用紙P1よりも先に接触するようにカバー部材29Bを移動させる。そして、カバー部材29Bは、搬送方向Xにおける下流端が用紙P1の搬送方向Xにおける下流側の端縁よりも外側(前側となる先端側)にはみ出す態様で、支持部材19と用紙P1との間に配置される。
【0057】
支持部材19上においては、用紙P1の搬送処理と用紙P1への記録処理とが交互に行われ、用紙P1への記録処理が終了すると、用紙P1及びカバー部材29Bは搬送ローラー対16,17によって搬送方向Xの下流側に搬送され、排紙口12aから排紙される。
【0058】
次に、プリンター11B及び搬送装置15Bの作用について説明する。
プリンター11Bにおいては、搬送経路上において用紙P1の下方にカバー部材29Bが配置され、カバー部材29Bが用紙P1の端縁よりも外側にはみ出すように用紙P1を支持した状態で用紙P1とともに搬送される。これにより、カバー部材29が用紙P1より先に他部材(搬送ローラー対16や支持部材19)に接触することになる。そのため、用紙P1が搬送ローラー対16や支持部材19に接触する際の衝撃が緩和され、用紙P1の端部に付着している紙粉等の飛散が抑制される。
【0059】
上記実施形態によれば、上記(1),(2),(5)と同様の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(7)カバー部材29が搬送経路上の他部材に対して用紙P1よりも先に接触するので、用紙P1が搬送経路上の他部材に接触する際の衝撃を緩和することができる。これにより、用紙P1に付着した粉塵が接触の衝撃で飛散するのを抑制することができる。
【0060】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図6に示すように、本実施形態のプリンター11(11C)は、インクの色毎に複数(本実施形態では4つ)のラインヘッド40を備えている。図7に示すように、各ラインヘッド40の下面側には、それぞれ複数(本実施形態では8つ)の記録ヘッド41が設けられている。
【0061】
各記録ヘッド41の下面からなるノズル形成面41aには、用紙P1にインクを噴射するためのノズル24が複数設けられている。また、各記録ヘッド41のノズル形成面41aには、幅方向Yに沿って並ぶ複数のノズル24によって構成されるノズル列Nが各2列形成されている。各記録ヘッド41において、2列のノズル列Nは、幅方向Yに沿う配置間隔が1/2画素ずつずれるように、ノズル24が互い違いに配列されている。
【0062】
各ラインヘッド40において、複数の記録ヘッド41は幅方向Yに沿って延びる2列のラインを形成するとともにノズル列Nの幅方向Yにおける端部に位置するノズル24が搬送方向Xにおいて重なるように、千鳥状に配置されている。すなわち、プリンター11Cは、ラインヘッド40を固定したままでも用紙最大幅範囲の印字が可能なラインヘッド方式のプリンターである。
【0063】
図6に示すように、プリンター11Cは、搬送経路に沿って用紙P1を搬送する搬送装置15(15C)を備えている。搬送装置15Cは、搬送ローラー対42,43,44,45と、各ラインヘッド40の下方に位置するとともに搬送経路において用紙P1を支持する複数の支持部材19とを備えている。なお、本実施形態においては、搬送ローラー対42,43,44,45がカバー部材29(29C)を用紙P1の端縁に沿うように重ねた状態で搬送経路に沿って移動させる移動機構30(30C)として機能する。
【0064】
支持部材19の上面側には、用紙P1を支持するリブ20が搬送方向Xに延びるように突設されている。なお、リブ20は搬送方向Xと交差する用紙P1の幅方向Yに並ぶように複数設けられている。
【0065】
図8に示すように、カバー部材29Cは、搬送方向X及び幅方向Yの長さが用紙P1よりも一回り大きく形成されて用紙P1を支持する下カバー47(47C)と、用紙P1の幅方向Yにおける両端部及び後端部(搬送方向Xにおける上流側の端部)を上側から覆う上カバー48(48C)とを備えている。また、カバー部材29Cは、下カバー47の先端(搬送方向Xにおける下流端)から上側に折り換えされた折り返し部49(49C)を備えた封筒形状をなしている。そして、折り返し部49Cを折り返して上カバー48Cの上に重ねると、上カバー48C及び折り返し部49Cによって開口部31が形成されるようになっている。カバー部材29Cにおいて、開口部31は用紙P1に対するインクの噴射範囲に対応する位置に形成されている。
【0066】
次に、プリンター11Cにおける用紙P1の搬送処理及びカバー部材29Cの移動処理について説明する。
カバー部材29Cは、下カバー47Cと上カバー48Cとの間に用紙P1を差し入れられるとともに、折り返し部49Cが上カバー48Cの上に折り返されることで、用紙P1の4辺の端縁よりも外側にはみ出すように用紙P1と重ねて配置される。そして、プリンター11Cにおいては、搬送装置15Cが封筒形状のカバー部材29Cに収容された状態の用紙P1を搬送経路に沿って搬送する(搬送工程)。
【0067】
そして、図6に示すように、移動機構30C(搬送装置15C)はカバー部材29Cが搬送経路上の他部材(搬送ローラー対42,43,44,45や各支持部材19)に対して用紙P1よりも先に接触するように、用紙P1とともにカバー部材29Cを搬送経路に沿って移動させる。同時に、移動機構30Cは、用紙P1が搬送経路上で他部材(搬送ローラー対42,43,44,45や各支持部材19)と接触する位置において、用紙P1の端縁よりも外側にはみ出すように用紙P1と重ねて配置されるようにカバー部材29Cを移動させる(移動工程)。これにより、カバー部材29Cは、搬送経路上における用紙P1が搬送される途中で他部材(搬送ローラー対42,43,44,45や各支持部材19)と接触する位置において、用紙P1の端縁よりも外側にはみ出すように用紙P1と重ねて配置される。また、用紙P1が搬送される途中で、カバー部材29Cの下カバー47Cは用紙P1の搬送方向Xにおける下流端が用紙P1の搬送方向Xにおける下流側の端縁よりも外側にはみ出す態様で、各支持部材19と用紙P1との間に配置される。さらに、カバー部材29Cの上カバー48C及び折り返し部49Cは、支持部材19上において用紙P1と記録ヘッド41との間に配置される。
【0068】
次に、プリンター11C及び搬送装置15Cの作用について説明する。
ラインヘッド方式のプリンター11Cにおいては、シリアル方式のプリンターと比較して、メンテナンスユニット(図示略)を配置するスペースを確保したり、記録ヘッド41をメンテナンスのために移動させたりするのが難しい。また、搬送装置15Cは複数の支持部材19を備えるので、用紙P1の先端が各支持部材19に接触する都度、用紙P1に付着した紙粉等が飛散する虞がある。その点、カバー部材29Cは用紙P1の4辺を両面側から覆った状態で用紙P1とともに搬送されるので、紙粉等が飛散して記録ヘッド41に付着するのを抑制することができる。
【0069】
上記実施形態によれば、上記(1)〜(7)と同様の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(8)カバー部材29は下カバー47に加えて上カバー48及び折り返し部49を備えるので、用紙P1からの離間を抑制しつつ、用紙P1とともに移動させることができる。
【0070】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図9に示すように、本実施形態のプリンター11(11D)は、第3実施形態と同様のラインヘッド方式のプリンターであるが、1つのラインヘッド40に異なるインク色に対応する4つの記録ヘッド41が搬送方向Xに並ぶように設けられている点が第3実施形態と異なる。
【0071】
各記録ヘッド41には、用紙P1の最大幅に亘ってインクを噴射することができるように幅方向Yに並ぶ複数のノズル(図示略)が設けられている。なお、図9には、用紙最大幅範囲の印字が可能な長尺状の記録ヘッド41を図示しているが、第3実施形態のように複数の記録ヘッド41を幅方向Yに沿って複数配置するようにしてもよい。
【0072】
プリンター11Dは、搬送経路に沿って用紙P1を搬送する搬送装置15(15D)を備えている。搬送装置15Dは、用紙P1を給紙する給紙ローラー対50と、搬送方向Xにおいて給紙ローラー対50の下流側に配置されたベルト搬送装置51とを備えている。ベルト搬送装置51は、搬送ローラー52と、従動ローラー53と、テンションローラー54と、各ローラー52〜54に巻きかけられた無端状の搬送ベルト55と、搬送ベルト55越しに用紙P1を支持する支持部材19とを備えている。テンションローラー54は、図示しない付勢部材によって下方に向けて付勢されている。また、搬送ベルト55には複数の貫通孔(図示略)が形成されている。そして、搬送ローラー52が図9における時計方向に回転することで搬送ベルト55が周回移動され、用紙P1が搬送方向Xに搬送されるようになっている。
【0073】
支持部材19は搬送方向Xにおいて搬送ローラー52と従動ローラー53との間に配置されている。また、支持部材19の上面側には複数の貫通孔(図示略)が形成されているとともに、支持部材19において貫通孔の下方には吸引機構19aが内蔵されている。そして、吸引機構19aは、搬送ベルト55及び支持部材19に形成された各貫通孔を通じて搬送ベルト55上の用紙P1に吸引力を及ぼすことで、用紙P1を搬送ベルト55の上面側に吸着するようになっている。
【0074】
搬送装置15Dは、無端状のカバー部材29(29D)を用紙P1の幅方向Yにおける端縁に沿うように重ねた状態で搬送経路に沿って移動させる移動機構30(30D)を備えている。なお、図9においては、用紙P1とカバー部材29が上下に離間した状態を図示しているが、用紙P1の上面に対して接触する程度に近接する位置にカバー部材29Dを配置してもよい。
【0075】
移動機構30Dは、正逆両方向に回転可能な駆動ローラー57と、2つの従動ローラー58,59と、図示しない付勢部材によって上方又は前方に向けて付勢されたテンションローラー60とを備えている。なお、駆動ローラー57と従動ローラー58とは上下方向に並ぶように配置されているとともに、テンションローラー60と従動ローラー59とは上下方向に並ぶように配置されている。また、ローラー57,58は搬送ローラー52よりも搬送方向Xの上流側に配置されているとともに、ローラー59,60は従動ローラー53よりも搬送方向Xの下流側に配置されている。
【0076】
カバー部材29Dはラインヘッド40及び記録ヘッド41を囲むように各ローラー57〜60に巻きかけられているとともに、テンションローラー60によって適度に張設されている。これにより、カバー部材29Dは、搬送ベルト55と記録ヘッド41との間に配置されている。
【0077】
そして、用紙P1の搬送時に駆動ローラー57が図9における反時計方向(正方向)に回転することで、カバー部材29Dの搬送ベルト55と対向する部分が搬送方向Xの上流側から下流側に向けて往路移動されるようになっている。また、駆動ローラー57が図9における時計方向(逆方向)に回転することで、往路移動したカバー部材29Dの搬送ベルト55と対向する部分が搬送方向Xの下流側から上流側に向けて復路移動されるようになっている。
【0078】
図10に示すように、カバー部材29Dには、用紙P1に対するインクの噴射範囲(印刷範囲)と対応する位置にサイズの異なる複数の開口部31が形成されている。なお、図10においては、開口部31等を明示するために、ラインヘッド40を二点鎖線で図示している。各開口部31は、プリンター11Dで使用される異なる用紙サイズに応じて搬送方向X及び幅方向Yにおけるサイズが規定されている。また、カバー部材29Dには周方向における基準位置となるホーム位置HPが設定されている。なお、本実施形態においては、一つの開口部31の搬送方向Xにおける一端がホーム位置HPとなっている。
【0079】
図9に示すように、搬送装置15Dは、搬送方向Xにおいて給紙ローラー対50と移動機構30Dとの間となる位置に、用紙P1の先端(搬送方向Xにおける下流端)を検出するための反射型の光学式センサーである検出センサー61を備えている。また、搬送装置15Dは、搬送方向Xにおいて従動ローラー58と記録ヘッド41との間となる位置に、カバー部材29Dの開口部31の位置を検出するための反射型の光学式センサーである検出センサー62を備えている。
【0080】
次に、プリンター11Dの電気的構成について説明する。
図11に示すように、プリンター11Dは、用紙P1の搬送処理や記録処理を制御するための制御装置100を備えている。制御装置100は、コンピューター101と、ヘッド駆動回路102と、モーター駆動回路103,104とを備えている。コンピューター101は、バス105を介して、ヘッド駆動回路102及びモーター駆動回路103,104に電気的に接続されている。
【0081】
検出センサー61,62は図示しない光源部と受光部とを有して、制御装置100と電気的に接続されている。そして、検出センサー61,62は、光源部が下方に向けて出射した光の反射光を受光部が受光して、反射光の強さに応じた電気信号を制御装置100に出力するようになっている。具体的には、検出センサー61は、用紙P1が反射対象となったときに第1の閾値よりも大きいON値を出力する一方、用紙P1が反射対象となっていないときに第1の閾値以下となるOFF値を出力する。また、検出センサー62は、カバー部材29Dが反射対象となったときに第2の閾値よりも大きいON値を出力する一方、カバー部材29Dが反射対象となっていないときに第2の閾値以下となるOFF値を出力する。
【0082】
搬送装置15Dは、搬送装置15Dの給紙ローラー対50及び搬送ローラー52を回転させるための搬送モーター106と、搬送モーター106の回転方向や回転量を検出するためのロータリーエンコーダー107とを備えている。また、移動機構30Dは、駆動ローラー57を回転させるための駆動モーター108と、駆動モーター108の回転方向や回転量を検出するためのロータリーエンコーダー109とを備えている。
【0083】
コンピューター101は、ASIC110(Application Specific IC(特定用途向けIC))、CPU111、ROM112及びRAM113を備えている。ROM112には、各種制御プログラム及び各種データなどが記憶されている。RAM113には、CPU111によって実行されるプログラムデータや、CPU111による演算結果及び処理結果である各種データなどが一時記憶される。
【0084】
コンピューター101は、CPU111がROM112等に記憶されたプログラムを実行することで、各種の制御を行う。例えば、コンピューター101は、ヘッド駆動回路102を介して記録ヘッド41を制御するとともに、モーター駆動回路103,104を介してそれぞれ搬送モーター106及び駆動モーター108を制御する。なお、コンピューター101は、ロータリーエンコーダー107からの検出信号に基づいて搬送モーター106を制御する。また、コンピューター101は、ロータリーエンコーダー109からの検出信号及び検出センサー61,62の検出結果に基づいて駆動モーター108を制御する。
【0085】
次に、プリンター11Dにおける用紙P1の搬送処理及びカバー部材29Dの移動処理について説明する。
コンピューター101のROM112には、検出センサー62がホーム位置HPを検出してから各開口部31の搬送方向Xにおける端部を検出するまでの駆動モーター108の回転方向及び回転量が記憶されている。そして、コンピューター101は、印刷データとともに印刷対象となる用紙P1の指定サイズを受信すると、ROM112から用紙P1の指定サイズと対応する大きさの開口部31について、駆動モーター108の回転量を読み出す。
【0086】
また、コンピューター101は用紙P1の搬送が開始される前に駆動ローラー57を正方向に駆動させ、検出センサー62の出力値に基づいてホーム位置HPを検出する。そして、読み出した回転量で駆動モーター108を回転させた後、駆動ローラー57の駆動を停止させる。
【0087】
その後、給紙ローラー対50によって用紙P1が給紙されると、ベルト搬送装置51は搬送経路に沿って用紙P1を搬送する(搬送工程)。そして、検出センサー61が用紙P1の先端を検出すると、所定のタイミングでコンピューター101が駆動ローラー57を正方向に駆動させる。すると、移動機構30Dは、用紙P1に対するインクの噴射範囲(印刷範囲)と対応する位置にカバー部材29Dの開口部31が配置されるように、用紙P1の搬送に合わせてカバー部材29Dを往路移動させる。
【0088】
すなわち、移動機構30Dは、用紙P1が搬送経路上で他部材(搬送ベルト55や支持部材19)と接触する位置において、用紙P1の端縁よりも外側にはみ出すように用紙P1と重ねて配置されるようにカバー部材29Dを移動させる(移動工程)。これにより、カバー部材29Dは、搬送経路上における用紙P1が搬送される途中で他部材(搬送ベルト55や支持部材19)と接触する位置において、用紙P1の端縁よりも外側にはみ出すように用紙P1と重ねて配置される。
【0089】
なお、同じ指定サイズで複数の用紙P1に対して連続的に記録処理が行われる場合には、用紙P1が搬送される合間に、コンピューター101が駆動ローラー57を逆方向に駆動する。すなわち、移動機構30Dは搬送方向Xにおける上流側から下流側に向けて往路移動したカバー部材29Dの開口部31を搬送方向Xの下流側から上流側に向けて復路移動させる。そして、次の用紙P1の搬送が開始されると、再び駆動ローラー57を正方向に駆動させて、用紙P1の搬送速度と同じ速度でカバー部材29Dを往路移動させる。
【0090】
次に、プリンター11D及び搬送装置15Dの作用について説明する。
プリンター11Dにおいては、用紙P1が搬送ベルト55に接触するときや、用紙P1が支持部材19に接触して振動する場合などに、用紙P1の端部に付着した紙粉等が記録ヘッド41側へ向けて飛散する虞がある。その点、カバー部材29Dは用紙P1が搬送される場合に用紙P1と記録ヘッド41との間に配置されるので、紙粉等が飛散して記録ヘッド41に付着するのを抑制することができる。
【0091】
上記実施形態によれば、上記(1)〜(5)と同様の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(9)移動機構30がカバー部材29を用紙P1の搬送方向Xに沿って往復移動させることで、カバー部材29を繰り返し使用することができる。
【0092】
(10)カバー部材29は異なる用紙サイズに応じた複数の開口部31を有するので、用紙P1のサイズが変更された場合にも、交換等することなく使用することができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。
【0093】
図12に示すように、本実施形態のプリンター11(11E)は、第4実施形態と同様のラインヘッド40を備えたラインヘッド方式のプリンターである。また、本実施形態の搬送装置15(15E)は、搬送経路に沿って用紙P1を搬送するために第4実施形態と同様の給紙ローラー対50及びベルト搬送装置51並びに検出センサー61,62を備えている。また、搬送装置15Eは、長尺状のカバー部材29(29E)を用紙P1の幅方向Yにおける端縁に沿うように重ねた状態で搬送経路に沿って移動させる移動機構30(30E)を備えている。
【0094】
移動機構30Eは、搬送方向Xにおいて搬送ローラー52の上流側に設けられた巻き出しローラー63と、搬送方向Xにおいて従動ローラー53の下流側に設けられた巻き取りローラー64とを備えている。なお、巻き出しローラー63及び巻き取りローラー64は正逆両方向に回転可能となっている。また、移動機構30Eは、カバー部材29を記録ヘッド41と用紙P1との間で用紙P1に対して平行に移動させるための従動ローラー65,66を備えている。
【0095】
カバー部材29Eは、使用前の状態においては、一端側が巻き出しローラー63にロール状に巻き重ねられるとともに、他端側が巻き取りローラー64に固定された状態で、従動ローラー65,66に下方から巻きかけられている。これにより、カバー部材29Eは、搬送ベルト55と記録ヘッド41との間に配置されている。
【0096】
そして、用紙P1の搬送時に巻き出しローラー63及び巻き取りローラー64が図12における反時計方向(正方向)に回転することで、カバー部材29Eの搬送ベルト55と対向する部分が搬送方向Xの上流側から下流側に向けて往路移動されるようになっている。また、巻き出しローラー63及び巻き取りローラー64が図12における時計方向(逆方向)に回転することで、往路移動したカバー部材29Eの搬送ベルト55と対向する部分が搬送方向Xの下流側から上流側に向けて復路移動されるようになっている。
【0097】
図13に示すように、カバー部材29Eには、用紙P1に対するインクの噴射範囲(印刷範囲)と対応する位置に同じ大きさの開口部31が搬送方向Xに沿って複数形成されている。なお、図11においては、開口部31等を明示するために、ラインヘッド40を二点鎖線で図示している。
【0098】
図12に示すように、用紙P1の先端(搬送方向Xにおける下流端)を検出するための検出センサー61は、搬送方向Xにおいて給紙ローラー対50と移動機構30Dとの間となる位置に配置されている。また、カバー部材29Dの開口部31の位置を検出するための検出センサー62は、搬送方向Xにおいて従動ローラー65と記録ヘッド41との間となる位置に配置されている。
【0099】
次に、プリンター11Eの電気的構成について説明する。
プリンター11Eは、第4実施形態と同様の制御装置100を備えている。ただし、プリンター11Eにおいては、駆動モーター108が移動機構30Eの巻き出しローラー63及び巻き取りローラー64を回転させる点が第4実施形態と異なっている。そして、コンピューター101は、ロータリーエンコーダー109からの検出信号及び検出センサー61,62の検出結果に基づいて駆動モーター108を制御する。
【0100】
次に、プリンター11Eにおける用紙P1の搬送処理及びカバー部材29Dの移動処理について説明する。
プリンター11Eにおいては、用紙P1の搬送が開始される前にコンピューター101が巻き出しローラー63及び巻き取りローラー64を正方向に回転させ、検出センサー62の出力値に基づいて、開口部31が搬送方向Xにおいて記録ヘッド41の上流側に配置されるようにカバー部材29Dを往路移動させた後に停止させる。
【0101】
そして、給紙ローラー対50によって用紙P1が給紙されると、ベルト搬送装置51は搬送経路に沿って用紙P1を搬送する(搬送工程)。そして、検出センサー61が用紙P1の先端を検出すると、所定のタイミングでコンピューター101が巻き出しローラー63及び巻き取りローラー64を正方向に回転させる。すると、移動機構30Eは、用紙P1に対するインクの噴射範囲(印刷範囲)と対応する位置にカバー部材29Eの開口部31が配置されるように、用紙P1の搬送に合わせてカバー部材29Eを移動させる。
【0102】
すなわち、移動機構30Eは、用紙P1が搬送経路上で他部材(搬送ベルト55や支持部材19)と接触する位置において、用紙P1の端縁よりも外側にはみ出すように用紙P1と重ねて配置されるようにカバー部材29Eを往路移動させる(移動工程)。これにより、カバー部材29Eは、搬送経路上における用紙P1が搬送される途中で他部材(搬送ベルト55や支持部材19)と接触する位置において、用紙P1の端縁よりも外側にはみ出すように用紙P1と重ねて配置される。
【0103】
なお、カバー部材29Eが往路移動されて全ての開口部31が搬送方向Xにおいて記録ヘッド41の下流側に移動されると、コンピューター101が巻き出しローラー63及び巻き取りローラー64を逆方向に回転させる。そして、全ての開口部31が搬送方向Xにおいて記録ヘッド41の上流側に移動されると、コンピューター101が巻き出しローラー63及び巻き取りローラー64の回転を停止させる。すなわち、移動機構30Eはカバー部材29Eを復路移動させることで、巻き取りローラー64に巻き取られたカバー部材29Eを巻き出しローラー63に巻き戻す。
【0104】
次に、プリンター11E及び搬送装置15Eの作用について説明する。
プリンター11Eにおいては、用紙P1が搬送ベルト55に接触するときや、用紙P1が支持部材19に接触して振動する場合などに、用紙P1の端部に付着した紙粉等が記録ヘッド41側へ向けて飛散する虞がある。その点、カバー部材29Eは用紙P1が搬送される場合に用紙P1と記録ヘッド41との間に配置されるので、紙粉等が飛散して記録ヘッド41に付着するのを抑制することができる。
【0105】
なお、ラインヘッド40の上側には、インクを供給するためのインク供給機構(図示略)やラインヘッド40を支持するための部材(図示略)などが配置されることがあるが、移動機構30Eの構成部材はラインヘッド40の上方に配置されない。そのため、ラインヘッド40等の配置を変更することなく、移動機構30Eを配置することができる。
【0106】
上記実施形態によれば、上記(1)〜(5),(9)と同様の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(11)カバー部材29をロール状に巻着した状態とすることで、移動機構30から取り外した場合にも、カバー部材29の保管に大きなスペースをとったり、カバー部材29を折り曲げたりする必要がない。
【0107】
(12)用紙P1のサイズに応じて開口部31の大きさが異なる複数のカバー部材29を使用する場合にも、ロール状のカバー部材29を巻き出しローラー63及び巻き取りローラー64に対して着脱可能に取り付けることで、カバー部材29の交換を容易に行うことができる。
【0108】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。
図14に示すように、本実施形態のプリンター11(11F)は、直方体状の本体ケース70を備えている。本体ケース70内における上下方向の中央部よりもやや上寄りの位置には、本体ケース70内を上下に区画する平板状の基台71が設けられている。
【0109】
本体ケース70内には、搬送物の一例としての長尺状の用紙P2(ロール紙)を搬送経路に沿って搬送する搬送装置15(15F)が収容されている。基台71上には、搬送装置15Fを構成する支持部材19が配置されている。また、支持部材19の上面側には、搬送方向Xに延びるリブ20が幅方向Yに沿って並ぶように複数突設されている。
【0110】
本体ケース70内において支持部材19の左右両側には、搬送方向Xに延びるガイドレール72(図14では点線で示す)が対をなすように設けられている。ガイドレール72の上面は支持部材19のリブ20よりも高くなっている。両ガイドレール72の上面には、矩形状のキャリッジ73が図示しない駆動機構の駆動に基づき両ガイドレール72に沿って搬送方向Xに沿って往復移動可能な状態で支持されている。
【0111】
キャリッジ73の下面側には、記録ヘッド74が支持されている。また、記録ヘッド74には、用紙P2の最大幅に亘ってインクを噴射することができるように幅方向Yに並ぶ複数のノズル24が形成されている。なお、図14には、用紙最大幅範囲の印字が可能な長尺状の記録ヘッド74を図示しているが、第3実施形態のように複数の記録ヘッド41を幅方向Yに沿って複数配置するようにしてもよい。
【0112】
搬送装置15Fは、幅方向Yに延びる巻き出し軸75、ローラー76〜79及び巻き取り軸80を備えている。用紙P2は、使用前の状態においては、一端側が巻き出し軸75にロール状に巻き重ねられるとともに他端側が巻き取り軸80に固定された状態で、ローラー76〜79に巻きかけられている。そして、用紙P2は、巻き出し軸75及び巻き取り軸80が図14における反時計方向に回転することで、支持部材19のリブ20に摺接しつつ搬送方向Xに搬送されるようになっている。
【0113】
支持部材19上の一定範囲は記録領域とされており、この記録領域単位で用紙P2は間欠的に搬送されるようになっている。そして、この記録領域単位での間欠搬送によって支持部材19上に停止された状態の用紙P2に対して、キャリッジ73とともに搬送方向Xに移動する記録ヘッド74からインクが噴射されることで、用紙P2に対して記録処理が施されるようになっている。すなわち、プリンター11Fは、用紙P2の搬送方向Xに沿う搬送処理と、キャリッジ73の搬送方向Xに沿う移動とともに行われる記録処理とが交互に行われるラテラル方式のプリンターである。
【0114】
基台71上には、搬送方向Xにおけるローラー77の上流側及びローラー78の下流側に、搬送方向Xが長手方向となる2本の帯状のカバー部材29(29F)を保持するための保持機構81がそれぞれ設けられている。各保持機構81は本体部82と、幅方向Yに離間して並ぶ2つの固定部材83,84とを備えている。
【0115】
図15に示すように、各カバー部材29Fは、用紙P2と記録ヘッド74との間において、用紙P2の搬送方向Xと交差する幅方向Yにおける端部を覆うように配置されている。なお、各保持機構81の本体部82には、それぞれ幅方向Yに延びる挿通孔82aが形成されている。そして、搬送方向Xに並ぶ2つの固定部材83によって、一方(右方)のカバー部材29Fの搬送方向Xにおける両端が2つの本体部82に対して固定されている。また、搬送方向Xに並ぶ2つの固定部材84によって、他方(左方)のカバー部材29Fの搬送方向Xにおける両端が2つの本体部82に対して固定されている。
【0116】
固定部材83,84は挿通孔82aに挿通された状態で各本体部82に対して任意の位置で固定可能であるとともに、挿通孔82aに沿ってスライド移動可能となっている。したがって、用紙P2の幅方向Yにおける長さ(幅)が変化する場合には、固定部材83,84とともに各カバー部材29Fを幅方向Yに移動させるようになっている。
【0117】
次に、プリンター11F及び搬送装置15Fの作用について説明する。
ラテラル方式のプリンター11Fにおいては、支持部材19上に停止された用紙P2に対して記録を行い、その後に用紙P2の搬送が行われる。ただし、用紙P2の搬送時に記録ヘッド74が支持部材19の上方に配置されていたり、用紙P2の搬送時にキャリッジ73が搬送方向Xの上流側に向けて移動することがある。すると、用紙P2は搬送される途中で他部材(支持部材19)に摺動することで振動し、その端部に付着している紙粉等が飛散することがある。
【0118】
その点、本実施形態においては、用紙P2が搬送される途中で他部材(支持部材19)と接触する位置に、両カバー部材29Fが用紙P2の幅方向Yにおける端縁よりも外側にはみ出すように用紙P2と重ねて配置されている。そのため、用紙P2を搬送する際に飛散した紙粉等が記録ヘッド74の方に飛散してノズル24に付着するのを抑制することができる。
【0119】
上記実施形態によれば、上記(1)と同様の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(13)カバー部材29は用紙P2と記録ヘッド74との間において用紙P2の幅方向Yにおける端部を覆うように配置されているので、用紙P2が搬送に伴って振動する場合にも、飛散した粉塵がノズル24に付着するのを抑制することができる。
【0120】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・例えばプリンター11A,11Cなど、カバー部材29専用の移動機構30を備えない搬送装置15で用紙P1(単票)を搬送する場合には、図16に示すようなカバー部材29(29G)を用いてもよい。すなわち、カバー部材29Gは、搬送方向X及び幅方向Yの長さが用紙P1よりも一回り大きく形成されて用紙P1の4辺を上側からカバーする上カバー48(48G)と、上カバー48Gの先端側から下側に折り返される折り返し部49(49G)とを備えている。なお、上カバー48Gには、インクの噴射範囲(印刷範囲)と対応する位置に開口部31が形成されている。この構成によれば、カバー部材29Gの上カバー48Gと折り返し部49Gとの間に挟み込むことで、用紙P1との離間を抑制しつつ、搬送装置15によってカバー部材29Gを移動させることができる。
【0121】
・例えばプリンター11A,11Cなど、カバー部材29専用の移動機構30を備えない搬送装置15で用紙P1(単票)を搬送する場合には、図17に示すようなカバー部材29(29H)を用いてもよい。すなわち、カバー部材29Hは、搬送方向X及び幅方向Yの長さが用紙P1よりも一回り大きく形成されて用紙P1を支持する下カバー47(47H)と、用紙P1の幅方向Yにおける両辺及び搬送方向Xにおける下流側の一辺を上側から覆う上カバー48(48H)とを備えている。この構成によれば、カバー部材29Hの下カバー47Hと上カバー48Hとの間に差し入れることで、用紙P1との離間を抑制しつつ、搬送装置15によってカバー部材29Gを移動させることができる。
【0122】
・例えばプリンター11A,11Cなど、カバー部材29専用の移動機構30を備えない搬送装置15で用紙P1(単票)を搬送する場合には、図18に示すようなカバー部材29(29J)を用いてもよい。すなわち、カバー部材29Jは、搬送方向X及び幅方向Yの長さが用紙P1よりも一回り大きく形成されて用紙P1の下面側を支持する下カバー47(47J)と、下カバー47Jの先端側から上側に折り返された折り返し部49(49J)とを備えている。この構成によれば、カバー部材29Jの下カバー47Jと折り返し部49Jとの間に挟み込むことで、用紙P1との離間を抑制しつつ、搬送装置15によってカバー部材29Gを移動させることができる。
【0123】
・例えばプリンター11A,11Cなど、カバー部材29専用の移動機構30を備えない搬送装置15で用紙P1(単票)を搬送する場合には、図19に示すようなカバー部材29(29K)を用いてもよい。すなわち、カバー部材29Kは、用紙P1の下面側を支持する任意の大きさの下カバー47(47K)と、下カバー47の先端側から上側に折り返された折り返し部49(49K)とを備えている。この構成によれば、カバー部材29Kの下カバー47Kと折り返し部49Kとの間に挟み込むことで、用紙P1との離間を抑制しつつ、搬送装置15によってカバー部材29Kを移動させることができる。また、サイズ(搬送方向X及び幅方向Yにおける長さ)の異なる用紙P1を搬送する場合にも、1つのカバー部材29Kを共通して使用することができるので、用紙P1のサイズ別にカバー部材29を備える必要がない。
【0124】
・第1実施形態において、カバー部材29Aを用紙P1と反射率が異なる素材や色にしておくこともできる。この構成によれば、検出センサー18でまずカバー部材29Aの先端(搬送方向Xの下流端)を検出した後に用紙P1を検出することで、用紙P1の先端がカバー部材29Aで覆われていることを確認することができる。
【0125】
・第1実施形態において、カバー部材29Aを光の透過率の高い材料から構成してもよい。この場合には、カバー部材29Aが用紙P1の先端を覆っていても検出センサー18によって用紙P1の先端を検出することができるので、カバー部材29Aの有無に関わらず用紙P1の先端を検出することができる。
【0126】
・第1実施形態において、検出センサー18は用紙P1の下側に配置してもよい。この構成によれば、検出センサー18によってカバー部材29Aの先端と用紙P1の先端をそれぞれ検出することができるので、カバー部材29Aによって覆われた用紙P1の先端部分の搬送方向Xにおける長さを正確に検知することができる。
【0127】
・第1実施形態において、幅方向Yに並ぶ複数の給紙ローラー14のうち、カバー部材29Aに当接する位置に設けられた2つの給紙ローラー14を他の給紙ローラー14よりも先に回転させ始めるようにしてもよい。この構成によれば、用紙P1の先端よりも確実に先端側がはみ出すように、カバー部材29Aを用紙P1の搬送に先行して移動させることができる。
【0128】
・第1実施形態又は第2実施形態において、カバー部材29を用紙P1と分離して搬送方向Xの上流側に返送する返送機構を備えてもよい。この構成によれば、カバー部材29を手動で給紙部13又は給送部32にセットし直すことなく、繰り返し使用することができる。
【0129】
・第2実施形態において、カバー部材29Bは搬送方向X及び幅方向Yの長さが用紙P1よりも小さく形成されていてもよい。
・第4実施形態において、カバー部材29Dに同じサイズの開口部31を複数設けて駆動ローラー57を一定方向に回転させるようにしてもよい。
【0130】
・第5実施形態において、カバー部材29Eに異なるサイズの開口部31を設けもよい。
・用紙P1(単票)とともに用いられるカバー部材29は、用紙P1と重ね合わされた場合に用紙P1が滑らないように、例えば表面の摩擦係数が大きい硬質のゴムや、表面粗度の高いプラスチックフィルムなどで形成することができる。
【0131】
・カバー部材29を帯電性を有する素材で構成してもよい。この構成によれば、用紙P1を静電力で吸着して用紙P1との分離を抑制することができるとともに、用紙P1,P2に付着した紙粉等をカバー部材29に吸着することができる。
【0132】
・シリアル方式やラインヘッド方式など、ラテラル方式以外のプリンターにおいても、ロール紙などの長尺状の用紙P2に対して記録処理を施す場合には、保持機構81によって保持されるカバー部材29Fを用いることができる。
【0133】
・搬送経路上で用紙P1,P2と接触する部材は支持部材19など搬送装置15の構成部材に限らない。例えば、搬送経路において用紙P1,P2の幅方向Yにおける端部などを案内する案内部材を設けている場合には、該案内部材と接触する位置にカバー部材29を配置してもよい。
【0134】
・用紙P1は水平方向に搬送されるものに限らず、水平方向と交差する方向に搬送されるようにしてもよい。また、支持部材19は、円筒形状など、板状でない形状のものを採用してもよいし、リブ20も搬送方向Xにおける長さを短くするなど、任意の形状に変更することができる。
【0135】
・搬送物は用紙に限らず、金属やプラスチックフィルム、木材、布など、任意の素材から構成することができる。また、粉塵は、裁断で生じた切りくずに限らず、搬送途中の加工処理等で付着するものであってもよい。
【0136】
・液体噴射装置はプリンターに限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数機能を備えた複合機等であってもよい。
・液体噴射装置として、インク以外の他の液体の微小量の液滴を噴射したり吐出したりする液体噴射ヘッド等を備える液体噴射装置を採用してもよい。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。
【符号の説明】
【0137】
11,11A,11B,11C,11D,11E,11F…液体噴射装置の一例としてのプリンター、15,15A,15B,15C,15D,15E,15F…搬送装置、19…支持部材、23,41,74…記録ヘッド、24…ノズル、29,29A,29B,29C,29D,29E,29F,29G,29H,29J,29K…カバー部材、30,30A,30B,30C,30D,30E…移動機構、31…開口部、P1,P2…搬送物の一例としての用紙、X…搬送方向、Y…幅方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿って搬送物を搬送する搬送装置であって、
前記搬送経路上における前記搬送物が搬送される途中で他部材と接触する位置に、前記搬送物の端縁よりも外側にはみ出すように前記搬送物と重ねて配置されるカバー部材を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記カバー部材を前記搬送物の端縁に沿うように重ねた状態で前記搬送経路に沿って移動させる移動機構をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記カバー部材を前記搬送物の搬送方向における上流側から下流側に向けて前記搬送物の搬送時に往路移動させるとともに、往路移動した前記カバー部材を前記搬送方向の下流側から上流側に向けて復路移動させることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送経路において前記搬送物を支持する支持部材をさらに備え、
前記カバー部材は前記搬送物の搬送方向における下流端が前記搬送物の前記搬送方向における下流側の端縁よりも外側にはみ出す態様で前記支持部材と前記搬送物との間に配置され、
前記移動機構は、前記カバー部材が前記搬送経路上の前記他部材に対して前記搬送物よりも先に接触するように前記カバー部材を移動させることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の搬送装置と、
前記搬送物に液体を噴射するためのノズルが設けられた記録ヘッドとを備えた液体噴射装置であって、
前記カバー部材は搬送される前記搬送物と前記記録ヘッドとの間に配置されることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項6】
前記カバー部材には前記搬送物に対する液体の噴射範囲に対応する位置に開口部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
請求項1に記載の搬送装置と、
前記搬送物に液体を噴射するためのノズルが設けられた記録ヘッドとを備えた液体噴射装置であって、
前記カバー部材は、前記搬送物と前記記録ヘッドとの間において、前記搬送物の搬送方向と交差する幅方向における端部を覆うように配置されていることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項8】
搬送経路に沿って搬送物を搬送する搬送工程と、
前記搬送物が前記搬送経路上で他部材と接触する位置において、前記搬送物の端縁よりも外側にはみ出すように前記搬送物と重ねて配置されるようにカバー部材を移動させる移動工程とを備えることを特徴とする搬送方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−86943(P2012−86943A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235194(P2010−235194)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】