説明

搬送装置、無菌充填システムおよび搬送方法

【課題】ガス噴流によって容器を搬送する際に、容器を破損させてしまうことなく安定して容器を搬送することを可能にする。
【解決手段】搬送装置30は、ガス噴流によって容器90を搬送する装置であって、前記容器90の搬送経路に沿って、搬送される容器90の側方を延びるサイドガイドレールと、前記サイドガイドレールの横方向に沿った位置を無段階調節する横方向位置調節手段52と、を備える。前記横方向位置調節手段52は、前記サイドガイドレールを横方向に駆動するモータを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス噴流によって容器を搬送する技術に係り、とりわけ、容器を破損してしまうことなく容器を安定して搬送することを可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス噴流によって、複数の容器を連続して搬送する技術が知られている。この搬送方法において搬送対象となるのは、典型的には、軽量で安定性が悪いことから載置状態での高速搬送に向かない容器、具体的には、飲料用の空のPETボトル等である。一例として、この搬送方法は、飲料等の液体内容物を容器に充填する充填システムにおいて、空の容器を搬送することに用いられ得る(例えば、特許文献1)。
【0003】
液体用の樹脂製容器は、通常、開口部の近傍に形成された周状突起物からなるつば部(ネックリングとも呼ぶ)を有している。特許文献1において、容器は、搬送経路に沿って延びるネックガイドレールによってつば部を下方から支持され、鉛直方向に沿って概ね起立した状態でガス噴流を受け、ネックガイドレール上を滑って搬送されていく。
【0004】
また、搬送される容器の両側方にサイドガイドレールがそれぞれ設けられ、搬送中における容器の振れ(傾斜)が規制されるようになっている。すなわち、容器は、サイドガイドレールによって姿勢を維持されながら、ガス噴流によって推し進められる。
【特許文献1】特許3328337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、昨今においては、購買意欲を刺激する上で、容器に充填される内容物だけでなく、容器のデサイン性も重要視されている。したがって、搬送装置には、種々の形状を有した容器が投入されるようになってきている。
【0006】
このため、搬送されるすべての種類の容器へ干渉しないように、一対のガイドレールを配置しなければならない。その一方で、すべての種類の容器に干渉し得ない位置へサイドガイドレールを配置すると、サイドガイドレールによってすべての種類の容器を安定して誘導することができなくなる。また、これにともなって、容器の搬送速度の変動が大きくなる。
【0007】
搬送中の容器の姿勢が安定しなくなると、ネックガイドレールに支持された容器が大きく振れてしまう。そして、容器は、ネックガイドレールまたはサイドガイドレールに傾斜した姿勢で挟まれ、その状態で停止してしまうこともある。この場合、この容器の姿勢を正さない限り、搬送装置による容器の搬送を再開することができない。すなわち、容器を安定して搬送することができないという不具合が生じている。何らかの処理工程間を接続する搬送装置には、通常、後工程に容器を絶えず安定して供給することが求められている。とりわけ、無菌充填システムにおいては、無菌充填装置の使用を開始する際に、無菌充填装置の無菌立ち上げ処理が必要となる。そして、この無菌立ち上げ処理は極めて煩雑であり、費用と時間とを要する。したがって、充填装置を停止させることがないよう、充填装置に容器を絶えず安定して供給することが強く求められている。
【0008】
また、容器を定速で搬送することができなくなると、搬送されている連続した二つの容器同士が搬送経路中で衝突することがある。容器同士が衝突すると、衝突した容器が、大きく振れてネックガイドレールまたはサイドガイドレールに挟まってしまうだけでなく、容器が破損してしまう(例えば、潰れてしまう)といった不具合も生じ得る。とりわけ、ネックガイドレールまたはサイドガイドレールに挟まって傾斜した状態の容器に後続の容器が衝突すると、容器の破損がきわめて生じやすくなる。
【0009】
昨今においては、コスト削減の観点からだけでなく環境問題への配慮という観点からも、容器の薄肉化が強く進められ、この結果、容器の破損が生じやすくなっている。とりわけ、無菌充填システムにおいては、内容物を容器とともに加熱殺菌する必要がない。したがって、無菌充填システムにより内容物を充填される容器は、内容物の温度が加熱殺菌後に低下することに起因した減圧変形に抗する剛性を付与されることなく、その形状を設計される。このような昨今の傾向の下、搬送中における容器の破損がますます問題化している。
【0010】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、ガス噴流によって容器を搬送する際に、容器を破損させてしまうことなく容器を安定して搬送することを可能にすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による搬送装置は、ガス噴流によって容器を搬送する搬送装置であって、前記容器の搬送経路に沿って、搬送される容器の側方を延びるサイドガイドレールと、前記サイドガイドレールの横方向に沿った位置を無段階調節する横方向位置調節手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明による搬送装置において、前記横方向位置調節手段は、前記サイドガイドレールを横方向に駆動するモータを有するようにしてもよい。
【0013】
また、本発明による搬送装置が、前記サイドガイドレールの高さ方向に沿った位置を無段階調節する高さ方向位置調節手段を、さらに備えるようにしてもよい。このような本発明による搬送装置において、前記高さ方向位置調節手段は、前記サイドガイドレールを高さ方向に駆動するモータを有するようにしてもよい。
【0014】
さらに、本発明による搬送装置が、前記横方向位置調節手段を制御する制御装置を、さらに備え、前記制御装置は、前記サイドガイドレールが搬送される容器に対応して予め設定された位置に配置されるよう、前記横方向位置調節手段を制御してもよい。あるいは、本発明による搬送装置が、前記横方向位置調節手段および前記高さ方向位置調節手段を制御する制御装置を、さらに備え、前記制御装置は、前記サイドガイドレールが搬送される容器に対応して予め設定された位置に配置されるよう、前記横方向位置調節手段および前記高さ方向位置調節手段を制御してもよい。これらの本発明による搬送装置において、前記搬送される容器に対応して予め設定された前記サイドガイドレールの位置は、容器の搬送経路に沿った位置に応じて異なるようにしてもよい。
【0015】
さらに、本発明による搬送装置が、周状突起物として形成されたつば部を有する容器をガス噴流によって搬送するように構成され、前記搬送経路に沿って延び、前記容器の前記つば部に下方から当接し前記容器を支持するネックガイドレールと、前記ネックガイドレールに支持された容器にガス噴流を吹くガス噴射機構と、をさらに備えるようにしてもよい。
【0016】
本発明による無菌充填システムは、上述したいずれかの本発明による搬送装置と、前記搬送装置によって搬送されてきた容器を殺菌する装置、殺菌された容器に内容物を充填する装置および内容物が充填された容器を密封する装置を含む無菌充填装置と、を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明による搬送方法は、ガス噴流によって容器を搬送する搬送方法であって、前記容器の搬送経路に沿って延びるサイドガイドレールを有する搬送装置の、前記サイドガイドレールの横方向に沿った位置を無段階に調節する工程と、前記サイドガイドレールの位置を調節された前記搬送装置に容器を供給する工程と、を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明による搬送方法の前記サイドガイドレールの位置を調節する工程において、前記サイドガイドレールの高さ方向に沿った位置も無段階に調節されるようにしてもよい。
【0019】
また、本発明による搬送方法において、前記容器は、前記搬送経路に沿って延びる前記搬送装置の前記ネックガイドレールにより周状突起物として形成されたつば部を下方から支持された状態で、搬送されるようにしてもよい。
【0020】
さらに、本発明による搬送方法の前記サイドガイドレールの位置を調節する工程において、前記サイドガイドレールは、搬送される容器に対応して予め設定された位置に配置されるようにしてもよい。このような本発明による搬送方法において、前記搬送される容器に対応して予め設定された位置は、搬送経路に沿った位置に応じて異なるようにしてもよい。
【0021】
さらに、本発明による搬送方法の前記サイドガイドレールの位置を調節する工程において、前記サイドガイドレールは、搬送される容器に対応して予め設定された位置に、モータを用いた駆動により自動的に位置決めされるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ガス噴流を用いた容器の搬送において、容器の破損を効果的に回避しながら、容器を安定して搬送することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態においては、飲料用のPETボトルとしての容器に殺菌済みの内容物(飲料)を無菌状態で充填するシステムに対し、本発明を適用した例を説明する。ただし、このようなシステムに限られず、種々の容器の搬送に対して本発明を適用することができる。
【0024】
図1乃至図4は本発明の一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は無菌充填システムの概略構成を示す平面図であり、図2は図1のII−II線に沿った断面図であり、図3は搬送装置を示す側面図であり、図4は図3のIV−IV線に沿った断面図である。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0025】
図1乃至図4に示すように、無菌充填システム10は、容器90を搬送する搬送装置30と、搬送装置30に接続された無菌充填装置70と、を備えている。図1に示す例において、無菌充填装置70は、搬送装置30によって搬送されてきた容器90を殺菌する殺菌装置72と、殺菌された容器90に内容物を充填する充填装置74と、内容物が充填された容器90を密封する密封装置76と、を含んでいる。
【0026】
殺菌装置72は、殺菌剤、例えば過酸化水素ミストによって、容器90の内外面を殺菌するようになっている。充填装置74では、殺菌済みの容器90内に殺菌済みの内容物が充填される。密封装置76では、内容物が充填された容器90が密封される。具体的には、殺菌済みのキャップ(蓋)が容器90に装着される。なお、無菌充填装置70のうち、殺菌済みの容器90が搬送される経路は、無菌状態に保たれている。なお、搬送装置30に接続される無菌充填装置70自体については、種々の既知な構成を採用することができる。したがって、無菌充填装置70についてのこれ以上の詳細な説明は、本明細書内では省略し、種々の先行文献(例えば、特許3342577号)を参照されたい。
【0027】
本実施の形態においては、図1に示すように、搬送装置30による容器90の搬送経路25の最上流側は、容器90を成形する容器成形装置22に接続されている。容器形成装置22は、樹脂製の予備成形物(いわゆる、プリフォーム)からブロー成型法によって所望の形状を有した容器90を成形するための装置である。成形装置22によって成形された種々の形状を有する容器90は、順次、搬送装置30に供給されていく。また、搬送経路25の途中に、容器90を検査する検査装置23が設けられている。検査装置23では、容器90に対する種々の検査が行われる。具体的な検査項目として、容器90の形状が挙げられる。これらの容器形成装置22および検査装置23については、種々の既知な構成を採用することができる。したがって、容器形成装置22および検査装置23についてのこれ以上の詳細な説明は、本明細書内では省略し、種々の先行文献を参照されたい。
【0028】
次に、搬送装置30の具体的な構成について説明していく。本実施の形態において、搬送装置30は、ガス噴流により、所定の搬送経路25に沿って容器90を搬送するように構成されている。
【0029】
上述したように本実施の形態においては、飲料用のPETボトルを搬送装置30による搬送対象の容器90とした例を説明する。このような容器90として、典型的には、図2や図3等に示すように、280ml〜2lの容量を有した周知の飲料用ボトルを挙げることができる。この容器90は、開口部(口部とも呼ばれる)91aを形成された頭部91と、頭部91から徐々に太さが太くなっていく首部92aを含む中間部(胴部)92と、中間部92の下方に設けられ開口部91aと向かい合う底部93と、を有している。容器90は長手方向を有している。開口部91aは、長手方向に沿った一側端部に形成されており、容器90の長手方向に直交する面上にその開口面を有している。図2に示すように、頭部91の開口部91aに隣接する位置には、キャップ(蓋)を固定するためのネジ91bが形成されている。また、図2に示すように、頭部91と中間部92の首部92aとの間に、容器90の長手方向に直交する方向へ向けて突出したつば部(ネックリングとも呼ばれる)95が形成されている。つば部95は、中間部92上を周状に延びている。そして、図2および図3に示すように、本実施の形態における搬送装置30は、周状突起物として形成されたつば部95を支持しながら、容器90を搬送するように構成されている。なお、理想的には、搬送時における容器90は、その長手方向が鉛直方向に沿うようにして宙吊り状態に支持される。
【0030】
具体的な構成として、図2および図3に示すように、搬送装置30は、容器90のつば部95に下方から当接する一対のネックガイドレール(単にガイドレール)40と、ガイドレール40を介して支持された容器90にガス噴流を吹き付けるガス噴射機構45と、を有している。図2に示すように、一対のネックガイドレール40は、容器90の首部92aを間に挟むようにして、平行に配置されている。そして、容器90のつば部95がこのネックガイドレール40上に載置され、つば部95がネックガイドレール40上を滑ることにより、容器90がネックガイドレール40に沿って移動する。したがって、このネックガイドレール40によって容器90の搬送経路25が実質的に画定される。言い換えると。ネックガイドレール40は、予め設計された搬送経路25に沿うようにして配置される。
【0031】
ガス噴射機構45は、図示しない送風機に接続されたエアダクト46を有している。エアダクト46は、例えば金属製のチャンネル材やアングル材等からなる支持部材27によって、床面から離間した空中に保持されている。エアダクト46内には、適切なフィルタ(例えばHEPAフィルタ)を介して清浄化された無菌エアが、図示しない送風機から送風される。この結果、エアダクト46の内部は、圧縮エアが貯められるチャンバとして機能するようになる。
【0032】
図2に示すように、エアダクト46の下面には、ネックガイドレール40が固定されている。そして、エアダクト46の下側外面には、容器90のつば部95および頭部91を収容する凹部47が形成されている。図2および図3に示すように、エアダクト46の凹部47に相当する位置には、複数の噴出口48が、容器90の搬送経路25に沿って、並べて形成されている。この噴出口48は斜め下方に延びており、エアダクト46の内部の圧縮エアを、容器90の搬送方向に沿うようにして凹部47内に噴出させるようになっている。このようにして形成されたエアダクト46の内部から凹部47内に向かうガス噴流によって、凹部47内に位置する容器90の頭部91が所定の搬送方向に向けて推し出され、容器90がネックガイドレール40上を摺動する。
【0033】
図2および図3に示すように、搬送装置30は、搬送経路25に沿って延び、搬送される容器90の両側方をそれぞれ延びる一対のサイドガイドレール35をさらに有している。図4に示すように、一対のサイドガイドレール35は、容器90の搬送経路25を間に挟むようにして、略平行に配置されている。なお、図3においては、片側(図3における手前側)のサイドガイドレール35、保持機構50の一部分が省略されている。
【0034】
また、搬送装置30は、横方向(実質的に水平方向)および高さ方向(実質的に鉛直方向)に移動可能に一対のサイドガイドレール35を保持する保持機構50をさらに有している。図2に示すように、保持機構50は、サイドガイドレール35の横方向に沿った位置を無段階調節する横方向位置調節手段52と、サイドガイドレール35の高さ方向に沿った位置を無段階調節する高さ方向位置調節手段54と、を含んでいる。高さ方向位置調節手段54は、対向する一対の支持部材27間に掛け渡されたベース材58上に支持されている。また、高さ方向位置調節手段54は、略U字状の外形形状を有する可動支持材59を高さ方向に移動可能に支持している。図2に示すように、U字状の可動支持材59は、容器90の搬送経路25の下方から、容器90の搬送経路25を間に挟むようにして搬送経路25の両側方へ延び上がっている。横方向位置調節手段52は、可動支持材59のU字の両端部分にそれぞれ取り付けられている。各横方向位置調節手段52は、容器90の搬送経路25側へ延び出している。そして、各横方向位置調節手段52は、搬送経路25側の端部において、横方向へ移動可能にサイドガイドレール35を支持している。
【0035】
なお、本件でいう「無段階に調節」とは、段階的に設定される複数の位置のいずれかの位置のみへ調節可能となっているのではなく、少なくとも所定の範囲内において任意の位置に調節可能となっていることを意味する。横方向位置調節手段52は、横方向に延びる直線の少なくとも一部分上において、サイドガイドレール35の配置位置を任意の位置へ調節することができる既知の種々な手段から構成され得る。同様に、高さ方向位置調節手段54は、高さ方向に延びる直線の少なくとも一部分上において、サイドガイドレール35の配置位置を任意の位置へ調節することができる既知の種々な手段から構成され得る。一例として、横方向位置調節手段52および高さ方向位置調節手段54が、サーボモータ等のモータ52a,54aにより、横方向または高さ方向に沿って軸部材を進退させる手段として構成され得る。このような調節手段52,54によれば、モータ52a,54aの駆動によって、サイドガイドレール35を横方向または高さ方向に無段階に精度良く位置決めすることができる。また、モータ52a,54aによる駆動機構を有した位置調節手段52,54は、極めて簡易に構成され得る。
【0036】
図2および図3に示すように、通常、サイドガイドレール35は、概ね鉛直方向に沿うようにして支持された容器90に対し側方から対面するように配置されている。すなわち、サイドガイドレール35は、容器90の中間部92に対して水平方向から対面する位置に配置される。このサイドガイドレール35によれば、容器90の中間部92に当接することにより、搬送される容器90が搬送方向に直交する方向へ振れること規制することができる。
【0037】
なお、一対のサイドガイドレール35の水平方向へ沿った配置間隔は、容器90の搬送を摩擦によって規制することがないよう、サイドガイドレール35が配置されている鉛直方向位置における容器90の最大水平方向幅よりも大きく設定されていることが好ましい。容器90が回転体形状を有していない場合、具体例として、容器の長手方向に直交する断面形状が略多角形形状(例えば、略四角形形状)である場合、一対のネックガイドレール40による容器90の支持状態によって、容器90の水平方向に沿った幅は変化する。そして、ここでいう容器90の最大水平方向幅とは、容器90の水平方向に沿った幅のうちの最大の幅を意味している。
【0038】
ところで、図に示すように、搬送装置30は、横方向位置調節手段52および高さ方向位置調節手段54にそれぞれ接続され、横方向位置調節手段52および高さ方向位置調節手段54を制御する制御装置60をさらに有している。この搬送装置30には種々の外形形状を有した容器90が送り込まれようになる。各容器90の外形形状毎に、サイドガイドレール35が配置されるべき最適な位置が、ネックガイドレール40に対する相対位置として、予め設定されている。予め設定されたネックガイドレール40に対するサイドガイドレール35の相対位置は、制御装置60または制御装置60によってアクセス可能な記憶装置(図示せず)に記憶されている、あるいは、都度制御装置60へ入力されるようになっている。制御装置60は、搬送される容器60の外形形状に対応して予め設定されたネックガイドレール40に対する相対位置にサイドガイドレール35が配置されるよう、横方向位置調節手段52および高さ方向位置調節手段54を動作させる。
【0039】
なお、本実施の形態において、ネックガイドレール40に対するサイドガイドレール35の相対位置は、搬送対象となる容器90の外形形状だけでなく、搬送経路25をも考慮して設定される。すなわち、本実施の形態においては、ネックガイドレール40に対するサイドガイドレール35の相対位置は、容器90の搬送経路25に沿った位置に応じ、異なるように設定されている。言い換えると、ネックガイドレール40に対するサイドガイドレール35の相対位置は、搬送経路の沿った各位置において同じにはなっていない。
【0040】
次に、このような搬送装置30を用いて容器90を搬送する方法について説明する。以下に、説明する搬送方法は、サイドガイドレール35の位置を調節する工程と、搬送装置30に容器90を順次供給する工程と、を含んでいる。以下、各工程の詳細について、説明する。
【0041】
まず、サイドガイドレール35の位置を調節する工程について説明する。制御装置60は、容器成形装置22から又は別の入力からの情報により、供給されるようになる容器90を特定する。次に、制御装置60は、供給される容器60の種類に対応して予め設定されたネックガイドレール40に対する相対位置へサイドガイドレール35が配置されるように、横方向位置調節手段52および高さ方向位置調節手段54を操作する。この結果、搬送経路25に沿った各位置において、サイドガイドレール35の配置位置が、横方向および高さ方向の両方向へ沿って無段階に調節される。このようにして、サイドガイドレール35が、搬送装置30によって搬送されるべき容器90の外形形状および搬送経路25の構成に応じて最適な位置へ、自動的に位置決めされるようになる。
【0042】
次に、搬送装置30に容器90を順次供給する工程について説明する。上述したように、また図1に示すように、搬送装置30の搬送経路25の最上流側は、容器成形装置22に接続されている。容器成形装置22には、容器90を成形するための予備成形物としてのプリフォームが供給される。容器成形装置22では、ブロー成型法によってプリフォームを加熱加圧し、プリフォームから所望の形状の容器90を成形する。成形された容器90は、順次、搬送装置30に供給されていく。
【0043】
搬送装置30に供給された容器90は、上述したようにエアダクト46の内部からエアダクト46の外部に位置する凹部47へ流れ込むガス噴流によって、ネックガイドレール40に沿って推し進められていく。このようにして、搬送装置30に供給された容器90が、搬送経路25に沿って順次搬送されていくようになる。
【0044】
上述したように、本実施の形態においては、搬送される容器90の種類(外形形状)に応じて、サイドガイドレール35の配置位置は無段階に調節されている。すなわち、サイドガイドレール35を段階的に設定された位置に配置するのではなく、搬送される容器90の外形形状に応じた最適な位置へサイドガイドレール35が位置決めされている。したがって、搬送される容器90の側方の最適位置に位置決めされたサイドガイドレール35により、搬送中における容器90の振れを効果的に規制することができ、搬送される容器90を所定の姿勢、具体的には概ね起立した状態に安定的に保つことが可能となる。
【0045】
このため、搬送中における容器90の振れに起因した、搬送経路25内での容器90の詰まりの発生を効果的に防止することができる。また、搬送時における容器90の姿勢が安定するため、搬送速度の変動を大幅に低減することができる。したがって、搬送経路25中において、連続する二つに容器90が高速度で衝突することを効果的に防止することができる。このため、連続する二つの容器90が衝突することに起因した、搬送経路25内での容器90の詰まりの発生を効果的に防止することができる。
【0046】
同時に、容器90同士が高速で衝突すること、あるいは、傾斜した容器90の角部に後続の容器90が衝突することによって生ずる、潰れ、へこみ、変形、割れ等の容器90の破損を効果的に回避することも可能となる。
【0047】
また、搬送装置30には、後工程に容器90を絶えず安定して供給することが求められている。このような事情から、搬送装置30自体に容器をストックさせる機能を持たせることを目的とし、搬送経路25を蛇行させる等して、搬送装置30の全長は長目に設計されている。そして、このような長目に設計された搬送装置30において、搬送経路25は、直線部分だけでなく、通常、曲がっている部分を含んでいる。また、搬送経路25は、上り勾配や下り勾配が付いている部分も含んでいる。
【0048】
このため、搬送経路25中には、容器90の移動速度が加速され容器90が高速で通過する部分と、容器90の移動速度が減速され容器90が低速で通過する部分と、が存在する。例えば、上り勾配が設けられている部分では、容器90の搬送速度は低速となる。下り勾配が設けられている部分や、長い直線部分では、容器90の搬送速度が高速となる。また、搬送経路中には、容器90の振れる方向が決まっている領域が存在する。例えば、搬送経路が容器90の搬送方向に沿って右側に曲がる部分では、容器90は搬送方向に向かって左側に振れる。さらに、搬送経路が曲がっている部分では、容器90の搬送速度が速いほど、容器90の振れが大きくなる。
【0049】
そして、本実施の形態によれば、搬送される容器90の形状に対応して予め設定されたネックガイドレール40に対するサイドガイドレール35の相対位置は、容器90の搬送経路25に沿った位置に応じて異なっている。すなわち、搬送経路25中の各位置における、容器90の振れの大きさや容器90の搬送速度等を考慮して、当該位置において最適な位置へサイドガイドレール35が配置されている。このため、サイドガイドレールにより、搬送中における容器90の振れをさらに効果的に規制することができ、搬送される容器90の姿勢をさらに安定的に保つことが可能となる。
【0050】
さらに、一対のサイドガイドレール35の間隔を調節することにより、容器90の搬送速度を調節することも可能となる。例えば、一対のサイドガイドレール35間の間隔を狭くすると、容器90がサイドガイドレール35と接触する確立が高くなる。そして、容器90がサイドガイドレール35と接触すると、容器90とサイドガイドレール35との摩擦により、容器90の搬送速度が減速するようになる。つまり、一対のサイドガイドレール35間の間隔を狭くすると、容器90の搬送速度を全体的に低下させることができる。逆に、一対のサイドガイドレール35間の間隔を広くすると、容器90の搬送速度を全体的に上昇させることができる。このようにして一対のサイドガイドレール35間の間隔を適宜調節することにより、搬送経路25内における搬送速度の変動をさらに低減することが可能となる。
【0051】
また、搬送装置30の設置上の誤差等が生じていることもある。具体的には、ネックガイドレール30の設置が好ましく直線状となっていないこともあり得る。本来、直線であるべき搬送経路25がわずかにでも蛇行していると、当該部分において、容器90が横方向(水平方向)に振れ、これにともなって、容器90の搬送速度が安定しないようになる。本実施の形態によれば、サイドガイドレール35の位置を調節することにより、設置誤差等を含んだ容器90の搬送経路25を補正することができる。これにより、搬送経路25内における搬送速度の変動や搬送中における容器90の振れを抑制し、容器90をさらに安定して搬送することが可能となる。
【0052】
このようにして、容器90を破損させてしまうことなく、容器90を安定して無菌充填装置70へ搬送することができる。無菌充填装置70では、絶えず安定して供給される容器90に対し、順次、内容物を充填していくことができる。無菌充填システム10においては、無菌充填装置70の使用を開始する際に、無菌充填装置70の無菌立ち上げ処理が必要となる。この無菌立ち上げ処理は極めて煩雑であり、費用と時間とを要する。本実施の形態によれば、以上のように容器90を安定して搬送し無菌充填装置70へ供給することができるため、煩雑で時間と費用とを要する無菌充填装置70の無菌立ち上げ処理を繰り返し行わなければならないという不都合を回避することができる。
【0053】
以上のように本実施の形態によれば、搬送される容器90の種類(外形形状)に応じて、サイドガイドレール35の配置位置を無段階に調節することができる。すなわち、搬送される容器90の外形形状に応じた最適な位置へサイドガイドレール35を位置決めすることができる。したがって、サイドガイドレール35により、搬送中における容器90の振れを効果的に規制することができ、搬送経路25内での容器90の詰まりの発生を効果的に防止することができる。また、搬送時における容器90の姿勢が安定するため、搬送速度の変動を大幅に低減することができる。したがって、連続する二つの容器90が高速度で衝突することに起因した、搬送経路25内での容器90の詰まりの発生を効果的に防止することができる。これにより、容器90同士が高速で衝突すること、あるいは、傾斜した容器90の角部に後続の容器90が衝突することによって生ずる、潰れ、へこみ、変形、割れ等の容器90の破損を効果的に回避することができる。
【0054】
また、このように容器90の外形形状によらず、搬送時における容器90の姿勢を安定させることができることから、デザイン性に富んだ形状の容器90を搬送する場合や、肉厚の薄い容器90を搬送する場合等にも、上述した実施の形態を好適に用いることができる。すなわち、密封された容器90とともに内容物を加熱殺菌する工程が省略され、バラエティに富んだ形状の容器90を処理し得る無菌充填システム10へ、上述した搬送装置30および搬送方法を極めて好適に適用することができる。
【0055】
さらに、本実施の形態によれば、容器90の種類に対応して、サイドガイドレール35のネックガイドレール40に対する相対位置が予め決定されている。そして、制御装置60は、搬送されるべき容器90の種類に応じて予め設定された位置へサイドガイドレール35を位置決めするよう、位置調節手段52,54を制御する。すなわち、搬送されるべき容器90の種類に応じて予め設定された適切な位置へサイドガードレール35を自動的に位置決めすることができる。これにより、搬送されるべき容器90の種類が変更された場合であっても、サイドガイドレール35の位置を迅速かつ容易に調節し、次に搬送されるべき種類の容器90を破損してしまうことなく安定して搬送することができるようになる。
【0056】
さらに、本実施の形態によれば、搬送される容器90の種類に対応して予め設定されたネックガイドレール40に対するサイドガイドレール35の相対位置は、容器90の搬送経路25に沿った位置に応じて異なっている。すなわち、搬送経路25中の各位置における、容器90の振れの大きさや容器90の搬送速度等を考慮して、当該位置において最適な位置へサイドガイドレール35が配置されるようにすることができる。このため、サイドガイドレール35により、搬送中における容器90の振れをさらに効果的に規制することができ、搬送される容器90の姿勢をさらに安定的に保つことが可能となる。
【0057】
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、変形の一例について説明する。
【0058】
例えば、上述した実施の形態において、容器90のつば部95がネックガイドレール40上に配置され、容器90が搬送装置30によって支持される例を示したが、これに限られない。そもそも搬送対象となる容器90は飲料用のボトルに限定されず、搬送装置30の構成も搬送対象となる容器90に応じて適宜変更することができる。
【0059】
また、上述した実施の形態において、サイドガイドレール35を位置決めすべき位置が、容器90の外形形状に基づいて設定される例を示したが、これに限られない。例えば、搬送されるべき容器90の外形形状だけでなく、肉厚等も考慮して、搬送されるべき容器90の種類毎にサイドガイドレール35を配置すべき位置を設定するようにしてもよい。
【0060】
さらに、上述した実施の形態において、サイドガイドレール35を配置すべき位置が、ネックガイドレール35に対する相対位置として設定されている例を示したが、これに限られない。例えば、サイドガイドレール35が位置決めされるべき位置は、その他の座標(例えば、搬送装置30のネックガイドレール以外の構成から特定される座標)を基準として、設定されるようにしてもよい。
【0061】
さらに、サイドガイドレール35が搬送経路25に沿ったすべての位置において、その配置位置を無段階に調節可能に支持されている必要はない。例えば、搬送経路25に沿った所定の範囲において、サイドガイドレール35が、その配置位置を段階的に調節可能に支持されていてもよい。また、搬送経路25に沿った所定の範囲において、サイドガイドレール35が移動不可能に支持されていてもよい。さらに、サイドガイドレール35の配置位置を無段階に調節可能な保持機構50と、サイドガイドレール35の配置位置を無段階に調節不可能な保持機構と、が容器90の搬送経路25にそって交互に配置されているようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、無菌充填システムの概略構成を示す平面図である。
【図2】図2は、図1に組み込まれた搬送装置を説明するための図であって、図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、図1に組み込まれた搬送装置を説明するための図であって、搬送装置を示す側面図である。
【図4】図4は、図1に組み込まれた搬送装置を説明するための図であって、図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10 無菌充填システム
20 搬送装置
22 容器成形装置
23 検査装置
25 搬送経路
30 搬送装置
35 サイドガイドレール
40 ネックガイドレール
45 ガス噴射機構
50 保持機構
52 横方向位置調節手段
52a モータ
54 高さ方向位置調節手段
54a モータ
58 ベース材
59 可動支持材
70 無菌充填装置
72 殺菌装置
74 充填装置
76 密封装置
90 容器
95 つば部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス噴流によって容器を搬送する搬送装置であって、
前記容器の搬送経路に沿って、搬送される容器の側方を延びるサイドガイドレールと、
前記サイドガイドレールの横方向に沿った位置を無段階調節する横方向位置調節手段と、を備える
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記横方向位置調節手段は、前記サイドガイドレールを横方向に駆動するモータを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記サイドガイドレールの高さ方向に沿った位置を無段階調節する高さ方向位置調節手段を、さらに備える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記高さ方向位置調節手段は、前記サイドガイドレールを高さ方向に駆動するモータを有する
ことを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記横方向位置調節手段を制御する制御装置を、さらに備え、
前記制御装置は、前記サイドガイドレールが搬送される容器に対応して予め設定された位置に配置されるよう、前記横方向位置調節手段を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記横方向位置調節手段および前記高さ方向位置調節手段を制御する制御装置を、さらに備え、
前記制御装置は、前記サイドガイドレールが搬送される容器に対応して予め設定された位置に配置されるよう、前記横方向位置調節手段および前記高さ方向位置調節手段を制御する
ことを特徴とする請求項3または4に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記搬送される容器に対応して予め設定された前記サイドガイドレールの位置は、容器の搬送経路に沿った位置に応じて異なる
ことを特徴とする請求項5または6に記載の搬送装置。
【請求項8】
周状突起物として形成されたつば部を有する容器をガス噴流によって搬送するように構成され、
前記搬送経路に沿って延び、前記容器の前記つば部に下方から当接し前記容器を支持するネックガイドレールと、
前記ネックガイドレールに支持された容器にガス噴流を吹くガス噴射機構と、をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載された搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送されてきた容器を殺菌する装置と、殺菌された容器に内容物を充填する装置と、内容物が充填された容器を密封する装置と、を含む無菌充填装置と、を備える
ことを特徴とする無菌充填システム。
【請求項10】
ガス噴流によって容器を搬送する搬送方法であって、
前記容器の搬送経路に沿って延びるサイドガイドレールを有する搬送装置の、前記サイドガイドレールの横方向に沿った位置を無段階に調節する工程と、
前記サイドガイドレールの位置を調節された前記搬送装置に容器を供給する工程と、を備える
ことを特徴とする搬送方法。
【請求項11】
前記サイドガイドレールの位置を調節する工程において、前記サイドガイドレールの高さ方向に沿った位置も無段階に調節される
ことを特徴とする請求項10に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記容器は、前記搬送経路に沿って延びる前記搬送装置の前記ネックガイドレールにより周状突起物として形成されたつば部を下方から支持された状態で、搬送される
ことを特徴とする請求項10または11に記載の搬送方法。
【請求項13】
前記サイドガイドレールの位置を調節する工程において、前記サイドガイドレールは、搬送される容器に対応して予め設定された位置に配置される
ことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載の搬送方法。
【請求項14】
前記搬送される容器に対応して予め設定された位置は、搬送経路に沿った位置に応じて異なる
ことを特徴とする請求項13に記載の搬送方法。
【請求項15】
前記サイドガイドレールの位置を調節する工程において、前記サイドガイドレールは、搬送される容器に対応して予め設定された位置に、モータを用いた駆動により自動的に位置決めされる
ことを特徴とする13または14に記載の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−83590(P2010−83590A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250827(P2008−250827)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】