説明

搬送装置、記録装置及び制御方法

【課題】比較的安価な構成で、シート媒体の搬送異常を、その発生部位にかかわらず、より確実に検出すること。
【解決手段】本発明の搬送装置は、シート媒体を搬送する搬送手段と、前記シート媒体の搬送経路上の予め定めた計測位置において、搬送方向と交差する方向の前記シート媒体の変動量を計測する計測手段と、前記搬送手段が搬送動作中であって、前記計測手段により計測された前記変動量が予め定めた搬送中閾値未満である場合に、搬送異常が生じていると判定する判定手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート媒体の搬送異常の検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
紙等のシート媒体の搬送においては、紙詰まり(ジャム)に代表される搬送異常の検出が必要とされる。搬送異常が生じると、搬送の停滞を招く他、様々な問題を生じる場合がある。例えば、近年、様々なシート媒体を記録媒体として、これに画像を形成するために、熱源でインクやトナーを定着させる技術が用いられている。紙詰まりなどの搬送異常で熱源付近に記録媒体が滞留すると、記録媒体が熱変形を起こしたり、最悪、記録装置に障害を与えるといった不具合を生じる場合がある。このため、記録媒体の搬送異常を即座に検出する必要性が特に強い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3951858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録装置における記録媒体の搬送異常の検出方法については様々な方法が提案されている。例えば、記録媒体が所定の位置に存在するか否かをセンサで検出し、存在しない場合は搬送異常が生じていると判定するものがある。しかし、この方法であると、センサの検出位置から離れた部位で生じた紙詰まり等の搬送異常を検出できない場合がある。例えば、ロール紙のように記録媒体が長尺のものであって、センサの検出位置ではその存在が検出されているものの、搬送方向上流側で紙詰まりを起こしている場合にこの搬送異常を検出できない。
【0005】
別の検出方法として、特許文献1に記載のように、センサにより記録媒体とセンサとの距離を計測し、その距離が許容範囲外になった場合に搬送異常が生じていると判断するものがある。しかし、この方法もセンサの距離計測位置から離れた部位で生じた紙詰まり等の搬送異常を検出できない場合がある。例えば、紙詰まりの部位がセンサの距離計測位置から離れていて、距離計測位置では記録媒体の変形がほとんどない場合、計測結果が許容範囲内となって搬送異常が検出されない。
【0006】
更に別の検出方法として、記録媒体の裏面の微細な色変化をCCDなどのセンサで読み取り、記録媒体の搬送が正常であるかどうかを検出する方法がある。しかし、この方法ではコスト面で不利な場合が多い。
【0007】
本発明の目的は、比較的安価な構成で、シート媒体の搬送異常を、その発生部位にかかわらず、より確実に検出することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、シート媒体を搬送する搬送手段と、前記シート媒体の搬送経路上の予め定めた計測位置において、搬送方向と交差する方向の前記シート媒体の変動量を計測する計測手段と、前記搬送手段が搬送動作中であって、前記計測手段により計測された前記変動量が予め定めた搬送中閾値未満である場合に、搬送異常が生じていると判定する判定手段と、を備えたことを特徴とする搬送装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、比較的安価な構成で、シート媒体の搬送異常を、その発生部位にかかわらず、より確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る記録装置のブロック図。
【図2】上記記録装置の機構部分の説明図。
【図3】(a)乃至(c)は記録媒体の変動量の計測原理を示す説明図。
【図4】(a)は搬送制御例、(b)乃至(d)は計測ユニットの出力例を示す図。
【図5】上記記録装置のCPUが実行する処理例を示すフローチャート。
【図6】複数の計測ユニットの配置例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の一実施形態に係る記録装置1のブロック図、図2は記録装置1の機構部分の説明図であり、記録装置1を側面視した場合の機構部分の概要を示す。記録装置1は、不図示のホストコンピュータから画像データを受信し、シート媒体である記録媒体42にインクを吐出して、受信した画像データの画像を記録するインクジェットプリンタである。
【0012】
なお、「記録」には、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も含まれ、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。また、「記録媒体」には、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも含まれる。本実施形態の場合、記録媒体42は紙であり、その巻体48から引き出されて画像が記録されるロール紙である。
【0013】
記録装置1は記録ヘッドユニット30を備える。記録ヘッドユニット30は、主操作方向に延びるシャフト(不図示)上に移動可能に設けられる。記録ヘッドユニット30はCRモータ20を駆動源とするベルト伝動機構(不図示)により、記録媒体42上を主操作方向に往復移動する。
【0014】
記録ヘッドユニット30は記録ヘッド10とエンコーダセンサ11とを備え、また、インクタンク40が着脱自在に搭載される。記録ヘッド10は、インク滴を蓄えるインクタンク40に蓄えられたインク滴を記録媒体42に吐出するノズルを複数備える。エンコーダセンサ11は記録ヘッドユニット30の位置を検知する。
【0015】
記録装置1は制御回路基板31を備える。制御回路基板31は以下の構成を備える。CPU12は記憶部13に記憶されたプログラムを実行し、各種のセンサの検出結果等に基づき、記録装置1が備えるモータ等の制御を行う。CPU12と他のユニットはバス102を介して接続されており、このバス102を通してCPU12から各ユニットのレジスタにデータを設定することにより、CPU12が記録装置1の全てを制御する。
【0016】
記憶部13は、例えば、ROMなどの不揮発性メモリやRAMなどの揮発性のメモリで構成される。この記憶部13は、例えば、CPU12が動作するために必要なプログラムしている部分、通信制御回路16を通して送られてくる画像を一時的に蓄えておく画像バッファ、およびワーク領域を有する。また、バス102を用いて、CPU12の介在なしに記憶部13からヘッド制御回路14に画像データを転送するダイレクトメモリアクセス機能を実現することも可能である。
【0017】
制御回路15は、CRモータ20、LFモータ21の回転方向、回転速度を制御する。信号線103、104は、CRモータ20、LFモータ21と制御回路15とを接続する信号線で、それぞれモータの相に合った信号、または回転、停止信号を供給している。
【0018】
CRモータ20を回転させることによって、記録ヘッド10を記録媒体上の主走査方向に移動させることができる。LFモータ21は、記録媒体42を副走査方向に移動させるためのモータであり、LFモータ21を回転させることによって、インクを吐出すべき位置まで、記録媒体42を移動させることができる。
【0019】
LFモータ21は、一対のLFローラ43、47の一方と、一対の排出ローラ41、44の一方を回転駆動する。これらのローラで、記録媒体42の副走査方向(図の左右方向)の搬送と記録媒体42がプラテン46上で浮かないように、の記録媒体42をガイドしている。LFモータ21、LFローラ43、47及び排出ローラ41、44は、本実施形態において記憶媒体42を搬送する搬送機構を構成している。
【0020】
エンコーダセンサ22は、記録媒体42の移動距離・移動方向を計測するセンサであり、LFモータ21が回転すると、その回転量および回転方向に相当するパルスを出力する。信号線105にはエンコーダセンサ22の出力信号が伝搬する。
【0021】
センサ23は、記録媒体42がプラテン46上にあるか否かを検出するセンサであり、例えば、メカフラグとフォトインタラプタで構成される。センサ23の出力信号は信号線106を介して出力され、例えば、記録媒体42がある場合には、正論理、ない場合には負論理が出力される。プラテン46は、記録ヘッドユニット30が移動する範囲で、記録媒体42を水平に支持する。
【0022】
制御回路14は、記録ヘッド10を制御するヘッド制御回路である。制御回路14はインク吐出信号を記録ヘッド10へ出力する。インク吐出信号はエンコーダセンサ11、22の出力信号から計算される、記録ヘッド10の主走査方向、副走査方向の位置から特定される画像に対応する。
【0023】
信号線100は、ヘッド制御回路部14が作成する記録ヘッド10に具備する複数のノズルからインクを吐出するためのタイミングおよびインク吐出量の制御信号が伝搬する。信号線101はCRエンコーダセンサ11の出力信号が伝搬し、記録ヘッドユニット30の移動量と移動方向を2つの相のパルス信号で制御回路14に伝達する。通信制御回路16は、LAN、USB等に代表される通信を制御する回路で、信号線111を介して記録装置1のホストコンピュータから送信される画像データの通信制御を司るユニットである。画像データは、記憶部13に格納され、CPU12がインク色・形成すべき解像度など記録ヘッドに対応したデータに変換する。
【0024】
熱源17は、記録媒体42の搬送方向で記録ヘッドユニット30よりも下流側に設けられており、ハロゲンランプやセラミックヒータなどを用いた、輻射による加熱機器である。この熱源17を用いて、記録媒体42を加熱し、そこに吐出されたインクの水分を蒸発させ、記録媒体42にインクを定着させる。
【0025】
計測ユニット32は、搬送方向と交差する方向の記録媒体42の変動量を計測する。本実施形態では、記録媒体42は水平方向に搬送され、計測ユニット32は高さ方向の変動量を計測する。本実施形態の場合、計測ユニット32は、プラテン46及び熱源17よりも下流側で、排出ローラ41、42よりも上流側の位置に固定的に配置され、かつ、搬送される記録媒体42の下方に位置している。そして、計測ユニット32の上方の搬送経路上の位置を計測位置として記録媒体の42の変動量を計測する。
【0026】
本実施形態の場合、記録媒体42の変動量は、記録媒体42と計測ユニット32との距離の変化量であり、記録媒体42と計測ユニット32との距離に比例した信号を得られればよい。そのため、計測ユニット32の構成は比較的安価で簡易な構成とすることができる。本実施形態の場合、計測ユニット32は以下の構成を備えるが、記録媒体42と計測ユニット32との距離に比例した信号を得られれば他の構成でもよい。
【0027】
本実施形態の場合、計測ユニット32は、発光素子24と、受光素子25と、を備える。発光素子24は本実施形態の場合、LEDであり記録媒体42に光を照射する。受光素子25は本実施形態の場合、フォトトランジスタであり、発光素子24が記録媒体42に照射した光の反射光を受光する。このように発光素子24と受光素子25とから計測ユニット32を構成することで、より安価かつ簡易に記録媒体42の変動量を計測できる。
【0028】
発光素子24は、トランジスタ等からなるドライブ回路18により駆動される。CPU12が点灯命令を出力すると、制御回路15は信号線107を介してドライブ回路18を駆動し、ドライブ回路18は信号線109を介して発光素子247に適正な電流・電圧を供給する。
【0029】
受光素子25は、受光した光の光量に比例したアナログ信号を出力する。AD変換回路19は信号線110を介して受光素子25に接続されており、受光素子25が出力したアナログ信号の電圧値をデジタル値に変換する。AD変換回路19は信号線108を介して制御回路15に接続されており、CPU12は制御回路15から受光素子25の受光結果を読み取ることができる。
【0030】
記録媒体42と計測ユニット32との距離は、受光素子24が受光した光の光量に比例するため、その変化量が記録媒体42の高さの変動量である。図3(a)乃至(c)は記録媒体42の変動量の計測原理を示す説明図である。
【0031】
図3(a)は、記録媒体42が水平に保たれている図である。発光素子24が照射する光は、その光軸50を中心として線51から線52の範囲で拡散し、記録媒体42に領域56の範囲で投影されている。領域56に投影された光は線54から線55の範囲に反射される。軸53は受光素子25の感度が最も高くなる方向を示している。発光素子24から出た光は、光軸50上を進み、記録媒体42の反射点57で正反射し、光軸53上を進み、受光素子25で受光される。図3(a)の例は、受光素子25が受光する光量が最も多くなる例である。
【0032】
発光素子24と受光素子25とは、図3(a)に示すように、記録媒体42が水平に保たれているときに、発光素子24からの光の光軸と、受光素子25の軸53とが記録媒体42上で交わるように配置されることが好ましい。
【0033】
図3(b)は記録媒体42が浮き上がった状態、図3(c)は記録媒体42が傾いた状態を示す。図3(b)の例では、記録媒体42に領域60の範囲で光が投影され、線61から線63の範囲に反射される。軌跡62で示すように反射点64で反射した光が受光素子25で受光されている。図3(c)の例では、記録媒体42に領域69の範囲で光が投影され、線65から線67の範囲に反射される。軌跡68で示すように反射点69で反射した光が受光素子25で受光されている。
【0034】
図3の(a)の例と比べると、図3(b)や図3(c)の例では反射点64、69から受光素子25までの距離が長くなり、光量が下がる。この結果、記録媒体42の高さ方向の変動量を計測できる。
【0035】
記録媒体42が停止している場合、その高さ方向の変動量は略0となる。よって、記録媒体42を、制御上、搬送しているにも関わらず、その高さ方向の変動量が所定値(搬送中閾値)に満たない場合は、記録媒体42の搬送異常(例えば紙詰まり等)が生じていると判断できる。また、記録媒体42の搬送を、制御上、停止しているのにも関わらず、その高さ方向の変動量が所定値(停止中閾値)を超えている場合は、記録媒体42の搬送異常(例えば、記録ヘッド10の衝突)が生じていると判断できる。
【0036】
図4(a)は記録媒体42の搬送制御例、(b)乃至(d)は計測ユニット32の出力例を示す図である。
【0037】
図4の(a)は、時間経過をX軸にLFモータ21による記録媒体42の搬送速度を表す図である。時間t10から時間t11の間は、LFモータ21を用いて、記録媒体42を静止状態から加速させる加速制御を行っている。時間t11からt12では、記録媒体42の搬送速度を一定にする低速制御を行っている。時間t12からt13の間は、記録媒体42の搬送速度を減速させる減速制御を行っている。時間t13からt14の間は、記録媒体42の搬送を停止する制御中であり、この間に画像の記録を行う。時間t14以降はこれらの繰り返しである。
【0038】
図4(b)乃至(d)は、図4(a)と同じ時間経過で、記録媒体42の状態が異なる場合を想定した計測ユニット32の出力例(受光素子25の出力信号の電圧波形)である。これらの図には、上述した搬送中閾値、停止中閾値の例を符号70、71で示している。
【0039】
図4(b)は、正常に記録媒体42が搬送されている場合を想定している。時間t10からt11の間、および、時間t12からt13の間は、受光素子25の出力信号が搬送中閾値70よりも大きく変動し、時間t11からt12までは、変動は小さくなっているが、搬送中閾値70より大きく変動している。t13からt14の間のセンサ出力信号は、停止中閾値71よりも小さく、変動がほとんどない。
【0040】
図4(c)は、時間t10からt11の間で記録媒体42がジャムなどの搬送異常により停止してしまった場合を想定している。時間t10からt11の間では、搬送中閾値70よりも大きく変動しているが、時間t11以降の変動値は、搬送中閾値70より小さく、ほとんど変動がない。これにより搬送異常が発生していると判断できる。
【0041】
図4の(d)は、時間t13からt14の途中(画像記録途中)で記録媒体42に記録ヘッド10が接触するなどの搬送異常(紙の浮き上がり等)があった場合を想定している。記録媒体42の搬送中である時間t10からt13、及び、記録媒体42の搬送停止中である時間t13から途中の間は図4の(b)のように正常に出力信号が変動していたが、その後、停止中閾値71を超える変動が一時的に見られる。これにより搬送異常が発生していると判断できる。
【0042】
記録媒体42の高さ方向の変動量は、単位時間中の、受光素子25が出力した信号の電圧値と最大値と最小値との差を演算することで得ることができる。単位時間は、充分に記録媒体42の挙動が変化する程度の時間が好ましく、例えば、1秒である。
【0043】
計測ユニット30の計測結果は、計測ユニット30の周辺環境(周囲の構成部品までの距離など)や、記録媒体42の搬送経路と計測ユニット30との距離、発光素子24及び受光素子25の特性により、影響を受ける。よって、搬送中閾値70及び停止中閾値71は、製品出荷前のテストによって適宜設定することができる。
【0044】
また、計測ユニット30の計測結果は、記録媒体42の厚みや反射率、或いは、記録媒体42の搬送速度の影響も受ける。よって、搬送中閾値70及び停止中閾値71は、記録媒体42の種類や搬送速度によって異なる値としてもよい。この場合、記憶部13に記録媒体42の種類や搬送速度に応じた搬送中閾値70及び停止中閾値71の値をテーブル化して保存しておくことができる。記録媒体42の種類はユーザに指定させる。搬送速度に応じた搬送中閾値70及び停止中閾値71はある程度の幅を持った速度領域毎に設定しておき、制御上の目標搬送速度が属する速度領域に対応する値を使用することができる。
【0045】
記録媒体42の挙動は、その搬送機構の動作制御の内容に影響を受ける。例えば、図4(b)に示したように、搬送速度の加速中や減速中は記録媒体42の高さ方向の変動量が相対的に大きくなる一方、定速搬送中は相対的に小さくなる。そこで、搬送機構の動作制御と同期した、予め定められたタイミングで計測された、記録媒体42の高さ方向の変動量に基づき、搬送異常が生じているか否かを判定することが好ましい。
【0046】
例えば、搬送制御中においては、記録媒体42の挙動変化が大きい、加速中や減速中に計測タイミングを設定することができる。また、記録媒体42が計測ユニット32上に到達していない区間は計測タイミングとしない。搬送停止制御中においては、搬送停止直後においては記録媒体42の挙動が乱れやすい場合があるため、搬送停止直後を除いた計測タイミングを設定する。例えば、図4(a)において、時間t13から時間tmまでの区間は計測タイミングとしない。
【0047】
次に、係る構成からなる記録装置1の動作について図2を参照して説明する。巻体48から引き出された記録媒体42は、その下流にあるLFローラ43、47で副走査方向(図の左方向)に移動する。記録媒体42には、プラテン46上で記録ヘッド30が主走査方向に移動しながら、インクを吐出することで画像が記録される。記録媒体42が下流側に搬送される過程で熱源17により加熱される。これにより、インクが高温に熱せられ、インクの水分が乾燥し、色成分のみが記録媒体42に定着する。
【0048】
熱源17の下流には、計測ユニット32が配置されており、記録媒体の搬送に異常がないかが検知される。搬送異常の判定原理は上記のとおりであるので、搬送異常の発生部位が計測ユニット32の近傍で無くてもこれを検知でき、例えば、巻体48周辺で紙詰まりが起きた場合等、搬送異常の発生部位にかかわらず、これをより確実に検出できる。記録媒体42は、その後、排出ローラ41、44によって、記録装置1の外部へ排出される。
【0049】
次に、図5を参照してCPU12が実行する処理例について説明する。S1では記録媒体42の搬送条件を設定する。ここでは、例えば、記録媒体42の種類、印字モード、記録媒体42の搬送速度等を設定する。記録媒体42の種類は、記録装置1が備える操作部(不図示)を介してユーザが入力するようにしてもよい。或いは、ホストコンピュータ上でユーザが入力した記録媒体の種類の情報を受信して、特定するようにしもよい。搬送速度は、記録媒体42の種類、印字モードから設定することができる。
【0050】
S2では、搬送中閾値70及び停止中閾値71を設定する。搬送中閾値70及び停止中閾値71は、上記のとおり記録媒体42の種類、搬送速度に応じて設定することができる。この場合、S1の設定に対応した閾値を記憶部13から読みだすことになる。
【0051】
S3ではLFモータ21を駆動して搬送機構に搬送動作を行わせ、記録媒体42の搬送を開始する。S4では記録媒体42の高さ方向の変動量を計測する計測タイミングか否かを判定する。計測タイミングである場合はS5へ進み、計測タイミングでない場合はS8へ進む。S5では計測ユニット32により記録媒体42の高さ方向の変動量を計測し、搬送動作中であるので、該変動量とS2で設定した搬送中閾値70とを比較する。変動量が搬送中閾値未満である場合は搬送異常が生じていると判定し、そうでない場合は正常であると判定する。
【0052】
S6では、S5の判定結果が搬送異常である場合はS7へ進み、正常である場合はS8へ進む。S7では異常処理を行う。異常処理の内容としては、搬送停止、警報発動、熱源17の停止又はこれらの組み合わせを挙げることができる。熱源17を停止することで、記録媒体42が部分的に過度に加熱されることを防止できる。
【0053】
S8では記録媒体42が画像を記録する上で適切な位置まで搬送されたかどうかを判断する。搬送されている場合はS8へ進み、搬送されていない場合はS4へ戻る。S8ではLFモータ21を停止して記録媒体42の搬送を終了する。S10では記録媒体42への画像の記録を開始する。ここでは、記録ヘッドユニット30をCRモータ20を用いて、主走査方向に移動させながら、その位置に相当する画像のインクを吐出する。
【0054】
S11では記録媒体42の高さ方向の変動量を計測する計測タイミングか否かを判定する。計測タイミングである場合はS12へ進み、計測タイミングでない場合はS14へ進む。S12では計測ユニット32により記録媒体42の高さ方向の変動量を計測し、搬送動作停止中であるので、該変動量とS2で設定した停止中閾値71とを比較する。変動量が停止中閾値71を超える場合は搬送異常が生じていると判定し、そうでない場合は正常であると判定する。
【0055】
S13では、S12の判定結果が搬送異常である場合はS7へ進み、正常である場合はS14へ進む。S14では、一走査分の画像記録が終了したか否かを判定する。終了した場合はS15へ進み、終了していない場合はS11へ戻る。S15では全画像の記録が終了したか否かを判定する。該当する場合は一単位の処理が終了し、該当しない場合はS3へ戻って同様の処理を繰り返すことになる。
【0056】
<他の実施形態>
上記実施形態では、計測ユニット32を一つ設けたが複数設けることもできる。記録媒体42がジャムなどの障害を受けそうな複数個所に適宜検出用センサを設けることが、発生箇所の特定に有効である。例えば、記録媒体42のローラ進入口、記録媒体42が浮いたときに記録ヘッド10が記録媒体42と接触しそうなところなど、予想発生箇所のすぐ下流に検出用センサをつけることにより、すぐにより正確に発生箇所個所を検出することができる。また、計測ユニット32を複数設けて同様の判定を行うことで、特に、搬送停止中に、記録ヘッド10が記録媒体42に接触した場合に、その接触箇所の特定が容易化する。
【0057】
図6は、複数の計測ユニットの配置例を示しており、記録装置1を上から見た図である。計測ユニット32に加えて、計測ユニット80、81、82が記録ヘッド10が移動する領域上、または、その近くに、配置されている。計測ユニット80、81、82をこのように設けたことで、特に、検出用センサを複数設けることで、より正確に記録媒体の搬送の異常を検出することができる。記録ヘッド10が記録媒体42に接触した場合に、その接触箇所の特定が容易化する。
【0058】
なお、上記実施形態では、記録装置1としてインクジェットプリンタを想定したが、本発明はレーザプリンタ等、他の記録装置に適用可能である。また、複写機や通信システムを有するファクシミリ、さらに各種処理装置と複合的に組み合わせた産業用記録装置に適用可能な他、捺染装置やエッチングなどの加工装置にも適用可能である。更に、記録装置以外にも、シート媒体を搬送する各種搬送装置に広く適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート媒体を搬送する搬送手段と、
前記シート媒体の搬送経路上の予め定めた計測位置において、搬送方向と交差する方向の前記シート媒体の変動量を計測する計測手段と、
前記搬送手段が搬送動作中であって、前記計測手段により計測された前記変動量が予め定めた搬送中閾値未満である場合に、搬送異常が生じていると判定する判定手段と、
を備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記搬送手段が搬送動作停止中であって、前記計測手段により計測された前記変動量が予め定めた停止中閾値を超えている場合にも、搬送異常が生じていると判定することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記搬送手段の動作制御と同期した、予め定められたタイミングで前記計測手段が計測した前記変動量に基づき、搬送異常が生じているか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送中閾値が、前記シート媒体の種類によって異なることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記搬送中閾値が、前記シート媒体の搬送速度によって異なることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記判定手段が、搬送異常を生じていると判定した場合に、予め定めた異常処理を行う異常処理手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記計測手段が、
前記シート媒体に光を照射する発光素子と、
前記発光素子が前記シート媒体に照射した光の反射光を受光する受光素子と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項8】
請求項1に記載の搬送装置を備えた記録装置であって、
前記搬送手段は、前記シート媒体として画像が記録される記録媒体を搬送することを特徴とする記録装置。
【請求項9】
前記記録媒体に画像を記録する記録手段と、
前記記録媒体の搬送方向で前記記録手段よりも下流側に設けられ、前記記録媒体を加熱する加熱手段と、
前記判定手段が搬送異常を生じていると判定した場合に、前記加熱手段の加熱を停止する異常処理手段と、
を備えたことを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
搬送装置の制御方法であって、
前記搬送装置が、
シート媒体を搬送する搬送手段と、
前記シート媒体の搬送経路上の予め定めた計測位置において、搬送方向と交差する方向の前記シート媒体の変動量を計測する計測手段と、を備え、
前記制御方法は、
前記搬送手段に搬送動作を行わせる工程と、
前記搬送手段が搬送動作中であって、前記計測手段により計測された前記変動量が予め定めた搬送中閾値未満である場合に、搬送異常が生じていると判定する判定工程と、
を備えたことを特徴とする制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−35616(P2013−35616A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170448(P2011−170448)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】