搬送装置および画像形成装置
【課題】シート状媒体と搬送体の吸着面との間に生じる浮きを効果的に防止できる搬送装置、および前記搬送装置を備える画像形成装置の提供。
【解決手段】シート状媒体を吸着して搬送する搬送体52と、シート状媒体を吸着する搬送体52の吸着面522にシート状媒体を押圧すると共に、吸着面522の幅方向に複数箇所存在し、吸着面522の吸着力が弱い部分522Bを他の部分522Aよりも強く押圧する押圧体54と、を備える。前記押圧体54は、シート条媒体を幅方向に沿って複数箇所で押圧する大径部54Aを有し、搬送体52の吸着面への吸着力がその近傍よりも弱い部分である吸着孔非形成領域522Bにおけるシート状媒体の浮きを防止する。
【解決手段】シート状媒体を吸着して搬送する搬送体52と、シート状媒体を吸着する搬送体52の吸着面522にシート状媒体を押圧すると共に、吸着面522の幅方向に複数箇所存在し、吸着面522の吸着力が弱い部分522Bを他の部分522Aよりも強く押圧する押圧体54と、を備える。前記押圧体54は、シート条媒体を幅方向に沿って複数箇所で押圧する大径部54Aを有し、搬送体52の吸着面への吸着力がその近傍よりも弱い部分である吸着孔非形成領域522Bにおけるシート状媒体の浮きを防止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置および画像形成装置にかかり、特に、シート状媒体と搬送体の吸着面との間の浮きを効果的に防止できる搬送装置、および前記搬送装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置においては、印刷直後の用紙に、画像領域内におけるインクの濃淡に起因する変形が生じることがある。特にインキが水性インキであり、記録紙が汎用紙である画像形成装置においては、印刷直後における用紙の変形の問題が顕著である。
【0003】
前記画像形成装置において用紙の変形を防止する搬送装置としては、周方向に延在する吸引口が軸方向に複数設けられた胴と、前記胴の外周面に装着されるシート状部材と、を備え、前記シート状部材の外側の面が媒体を保持する媒体保持面とされた搬送ドラムがある(特許文献1)。この搬送ドラムにおいては、前記媒体保持面が、吸着孔が多数設けられた吸着孔形成領域と吸着孔が設けられていない吸着孔非形成領域とに区分されている。
【0004】
また、インクを吐出するノズルを形成してなる記録ヘッドと、記録媒体を支持する支持部材とを有し、前記記録媒体を一定方向に搬送させながら、前記記録ヘッドからインクを吐出して前記支持部材に支持された前記記録媒体に着弾させることにより画像を記録するインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドの前記記録媒体の搬送方向の上流側に、前記記録媒体を前記支持部材に対して押圧する押さえ部材を設けたインクジェット記録装置がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4478897号公報
【特許文献2】特開2005−29333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、媒体保持面に吸着孔形成領域と吸着孔非形成領域とを形成した搬送ドラムにおいては、用紙などの媒体の媒体保持面の吸着力が強い領域と弱い領域が生じるため、吸着力の弱い領域では用紙に浮きが生じる可能性がある。
【0007】
また、用紙の浮きを検知して押さえ部材によって浮きが生じた部分を押さえるのは、シングルパス印字で高速印刷を行う場合には適切ではない。
【0008】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、シート状媒体と搬送体の吸着面との間に生じる浮きを効果的に防止できる搬送装置、および前記搬送装置を備える画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、搬送装置に関し、シート状媒体を吸着して搬送する搬送体と、前記シート状媒体を吸着する前記搬送体の吸着面に前記シート状媒体を押圧すると共に、前記吸着面の幅方向に複数箇所存在する前記吸着面の他の部分よりも吸着力が弱い部分を他の部分よりも強く押圧する押圧体と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の搬送装置においては、前記吸着面における他の部分よりも吸着力の弱い部分が吸着面の幅方向に複数箇所存在する場合においても、前記吸着力の弱い部分は前記押圧体によって前記他の部分よりも強く押圧される。したがって、吸着面における吸着力が弱い部分においてシート状媒体と吸着面との間に浮きが生じることが防止される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の搬送装置において、前記押圧体が、前記搬送体の吸着面に接触して押圧する接触押圧体であり、搬送体に接近した強押圧部と搬送体から離れた弱押圧部とが設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の搬送装置においては、前記押圧体は、前記吸着面に接触することによって前記吸着面を機械的に押圧するから、前記押圧体が前記吸着面をたとえば空気圧や静電力などによって非機械的に押圧するものと比較して、吸着面における吸着力が弱い部分においてシート状媒体と吸着面との間に浮きが生じることがより確実に防止される。また、強押圧部は弱押圧部よりも搬送体に接近した構成とされているから、前記回転押圧体を前記搬送体の吸着面に押圧すると、前記強押圧部が前記弱押圧部よりも前記吸着面に強く押圧される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の搬送装置において、前記接触押圧体が、搬送体に接触しつつ回転する回転押圧体であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の搬送装置においては、押圧体は、搬送体に接触しつつ回転する回転押圧体であるから、搬送体によって吸着、搬送されるシート状媒体が押圧体との摩擦によって損傷することが効果的に防止される。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の搬送装置において、前記搬送体が軸線周りに回転する搬送ドラムであって、前記搬送ドラムの吸着面は、前記搬送ドラムの軸方向に沿って、吸着孔が多数形成された吸着孔形成領域と、吸着孔が形成されていない吸着孔非形成領域とに区分されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の搬送装置においては、吸着孔非形成領域の吸着力は吸着孔形成領域の吸着力よりも弱い。しかしながら、前記吸着孔非形成領域は、前記押圧体によって前記吸着孔形成領域よりも強く押圧されるから、前記吸着孔非形成領域において吸着面とシート状媒体との間に浮きが生じることが防止される。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の搬送装置において、前記押圧体が回転押圧体であって、前記回転押圧体の強押圧部は、前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域を押圧し、前記回転押圧体の弱押圧部は、前記搬送ドラムの吸着孔形成領域を押圧することを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の搬送装置においては、前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域は前記回転押圧体の強押圧部で、前記搬送ドラムの吸着孔形成領域は前記回転押圧体の弱押圧部で押圧されるから、前記吸着孔非形成領域は前記回転押圧体によって前記吸着孔形成領域よりも強く押圧される。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の搬送装置において、前記回転押圧体の強押圧部の幅が前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域の幅よりも大きいことを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の搬送装置においては、前記回転押圧体の強押圧部の幅が前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域の幅よりも大きいから、前記搬送ドラムにおける吸着孔非形成領域におけるシート状媒体の浮き上がりを確実に防止できる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の搬送装置において、前記回転押圧体の強押圧部の幅が前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域の幅よりも小さいことを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の搬送装置においては、前記回転押圧体の強押圧部の幅が前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域の幅よりも小さいから、より吸着力の大きな吸着孔形成領域においてシート状媒体が強押圧部によって押圧されることがない。したがって、吸着孔形成領域において回転押圧体によって過剰な力で押圧されることによるシート状媒体や吸着面の損傷を効果的に防止できる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項3〜7の何れか1項に記載の搬送装置において、前記回転押圧体が押圧ローラであり、前記押圧ローラには、前記回転押圧体における強押圧部である複数の大径部と、前記回転押圧体における弱押圧部であって前記大径部よりも小さな外径を有する小径部とが形成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項8に記載の搬送装置においては、前記大径部は前記小径部と比較して搬送体により接近しているから、前記押圧ローラを搬送体の吸着面に押圧すると、大径部が小径部よりも強く押圧される。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項3〜7の何れか1項に記載の搬送装置において、前記回転押圧体は押圧ベルトであり、前記押圧ベルトにおける前記シート状媒体を押圧する側の面には、前記押圧ベルトの回転方向に沿って複数の凸部が形成され、前記押圧ベルトにおける凸部が形成された部分が、前記回転押圧体における強押圧部とされ、前記押圧ベルトにおける凸部が形成されていない部分が、前記回転押圧体における弱押圧部とされていることを特徴とする。
【0026】
請求項9に記載の搬送装置においては、前記押圧ベルトの凸部は前記搬送体により接近しているから、前記押圧ベルトを前記搬送体の吸着面に押圧すると、前記凸部が形成された部分が、前記凸部が形成されていない部分よりも強く押圧される。
【0027】
請求項10に記載の発明は、請求項4〜7の何れか1項に記載の搬送装置において、前記搬送ドラムは、内側負圧部に通じる複数の吸引口を備え、この吸引口が外周面に周方向に沿って形成された胴と、前記胴の外周面に装着されるとともに、軸方向に延出され、且つ前記胴における吸引口に対向する絞り部を有する吸着溝が前記胴の周方向に複数設けられた中間シートと、前記中間シートの外側の面に装着されて前記吸着面を構成するとともに、前記吸着面における吸着孔形成領域に形成された吸着孔は前記吸着溝と連通し、前記吸着孔非形成領域は前記絞り部に対向する吸着シートと、を備えることを特徴とする。
【0028】
請求項10に記載された搬送装置においては、吸着溝における絞り部は、前記吸着シートにおける吸着孔非形成領域によって覆われて外気とは直接に連通していないから、前記吸着孔と前記吸着溝とによって形成される流路において圧力損失を生じさせる機能を有する。したがって、前記搬送ドラムの吸着面の一部の領域にしかシート状媒体が吸引されていないか、または前記吸着面にシート状媒体が全く吸引されていない場合においても吸着面へのシート状媒体の吸着力が大幅に低下するのが防止される。
【0029】
請求項11に記載の発明は、画像形成装置において、シート状媒体を吸着面に吸着して搬送する請求項1〜10の何れか1項に記載の搬送装置と、前記搬送装置によって搬送されるシート状媒体に液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、を備えることを特徴とする。
【0030】
請求項11に記載の画像形成装置においては、前記搬送装置の備える搬送体の吸着面において他の部分よりも吸着力の弱い部分は、押圧体によって前記他の部分よりも強く押圧されるから、前記吸着面における吸着力の弱い部分において前記吸着面とシート状媒体との間に浮きが生じることが防止される。
【0031】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の画像形成装置において、前記搬送装置として請求項2〜10の何れか1項に記載の搬送装置を備えるとともに、前記搬送装置でシート状媒体を搬送する際の押圧体の弱押圧部と前記シート状媒体との距離をd、前記液滴吐出ヘッドの液滴吐出面と前記シート状媒体との距離をTdとすると、式:0<d<Tdを満たすように前記距離dが設定されていることを特徴とする。
【0032】
請求項12に記載の画像形成装置においては、押圧体の弱押圧部とシート状媒体との距離dは0より大きいから、前記シート状媒体における前記押圧体の弱押圧部に対応する領域は前記押圧体によっては押圧されない非押圧領域となる。したがって、シート状媒体に凹凸がある場合においては、前記凹凸は前記非押圧領域に押しやられるから、前記押圧に起因する皴の発生が効果的に防止される。また、前記距離dは、前記液滴吐出ヘッドの液滴吐出面と前記シート状媒体との距離Tdよりも小さいから、前記シート状媒体と前記搬送体の吸着面との間に前記距離Td以上の大きさの浮きが生じた場合においても、前記浮きは、前記押圧体によって高さd以下に押さえ込まれるから、前記搬送装置で搬送されるシート状媒体が液滴吐出面に接触することが防止される。
【0033】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の画像形成装置において、前記搬送装置における押圧体は、請求項8に記載の押圧ローラ、または請求項10に記載の押圧ベルトであって、前記押圧ローラにおける大径部と小径部との間の段差の高さd、または前記押圧ベルトにおける凸部の高さdは、請求項12に記載の関係式を満たすように設定されていることを特徴とする。
【0034】
請求項13に記載の画像形成装置においては、段差の高さdは、押圧体の弱押圧部と前記シート状媒体との距離と言い換えることができる。したがって、段差の高さdと、前記液滴吐出ヘッドの液滴吐出面と前記シート状媒体との距離Tdとの間に、請求項12に記載したように、式:0<d<Tdの関係があれば、請求項12のところで述べたのと同様の理由によって、押圧体として押圧ローラまたは押圧ベルトを備える搬送装置において、シート状媒体の凹凸に起因する皴がシート状媒体に生じたり、シート状媒体が液滴吐出面に接触したりすることが防止される。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように本発明によれば、シート状媒体と搬送体の吸着面との間の浮きを効果的に防止できる搬送装置、および前記搬送装置を備える画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、実施形態1に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【図2】図2は、図1に示すインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、図1に示すインクジェット記録装置の画像記録部の備える画像記録ドラムの全体的な構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3に示す画像記録ドラムの内部の構成を示す分解斜視図である。
【図5】図5は、図3に示す画像記録ドラムの備えるドラム本体の構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、図3に示す画像記録ドラムの備える中間シートの展開図である。
【図7】図7は、図3に示す画像記録ドラムの吸着面に開口した吸引口と中間シートに設けられた吸着溝との位置関係を示す説明図である。
【図8】図8は、図1に示すインクジェット記録装置の画像記録部の備える用紙押さえローラの一例について画像記録ドラムとの位置関係を示す説明図である。
【図9】図9は、図1に示すインクジェット記録装置の画像記録部の備える用紙押さえローラの他の例について画像記録ドラムとの位置関係を示す説明図である。
【図10】図10は、実施形態2のインクジェット記録装置の画像記録部における用紙押さえベルトと画像記録ドラムとの関係を示す斜視図である。
【図11】図11(A)は、実施形態3のインクジェット記録装置の画像記録部における用紙押さえパッドと画像記録ドラムとを前記画像記録ドラムの端面から見た概略図であり、図11(B)は、前記用紙押さえパッドと画像記録ドラムとを、用紙搬送方向下流側から見た概略図である。
【図12】図12(A)は、実施形態4のインクジェット記録装置の画像記録部における用紙押さえノズルと画像記録ドラムとを前記画像記録ドラムの端面から見た概略図であり、図12(B)は、前記用紙押さえノズルと画像記録ドラムとを、用紙搬送方向下流側から見た概略図である。
【図13】図13は、比較例1で用いた用紙押さえローラ(押圧ローラ)の構成を示す概略図である。
【図14】図14は、比較例2で用いた用紙押さえローラ(押圧ローラ)の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(1)実施形態1
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0038】
《装置構成》
本発明の画像形成装置の一例であるインクジェット記録装置1は、用紙P(シート状媒体)に水性UVインク(水性媒体を使用したUV(紫外線)硬化型のインク)を用いてインクジェット方式で画像を記録するインクジェット記録装置であり、主として、シート状媒体の一例である用紙Pを給紙する給紙部12と、給紙部12から給紙された用紙Pの表面(画像記録面)に所定の処理液を付与する処理液付与部14と、処理液付与部14で処理液が付与された用紙Pの乾燥処理を行う処理液乾燥処理部16と、処理液乾燥処理部16で乾燥処理が施された用紙Pの表面に水性UVインクを用いてインクジェット方式で画像を記録する画像記録部18と、画像記録部18で画像が記録された用紙Pの乾燥処理を行うインク乾燥処理部20と、インク乾燥処理部20で乾燥処理された用紙PにUV照射処理(定着処理)を行って画像を定着させるUV照射処理部22と、UV照射処理部22でUV照射処理された用紙Pを排紙する排紙部24とで構成される。
【0039】
〈給紙部〉
給紙部12は、給紙台30に積載された用紙Pを1枚ずつ処理液付与部14に給紙する。給紙部12は、主として、給紙台30と、サッカー装置32と、給紙ローラ対34と、フィーダボード36と、前当て38と、給紙ドラム40とで構成される。
【0040】
用紙Pは、多数枚が積層された束の状態で給紙台30に載置される。給紙台30は、図示しない給紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。給紙台昇降装置は、給紙台30に積載された用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、束の最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、給紙台30を昇降させる。
【0041】
シート状媒体としての用紙Pは、特に限定されないが、一般のオフセット印刷などで使用される汎用の印刷用紙(いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする用紙)を用いることができる。本例では塗工紙が用いられる。塗工紙は、一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙などが好適に用いられる。
【0042】
給紙部12においては、給紙台30の上に積載された用紙Pは、サッカー装置32によって上から順に1枚ずつ引き上げられて、給紙ローラ対34に給紙される。給紙ローラ対34に給紙された用紙Pは、その給紙ローラ対34を構成する上下一対のローラ34A、34Bによって前方に送り出され、フィーダボード36の上に載置される。フィーダボード36の上に載置された用紙Pは、フィーダボード36の搬送面に設けられたテープフィーダ36Aによって搬送される。そして、その搬送過程でリテーナ36Bによってフィーダボード36の搬送面に押し付けられ、凹凸が矯正される。フィーダボード36によって搬送された用紙Pは、先端が前当て38に当接されることにより、傾きが矯正され、その後、給紙ドラム40に受け渡される。そして、その給紙ドラム40によって処理液付与部14へと搬送される。
【0043】
〈処理液付与部〉
処理液付与部14は、用紙Pの表面(画像記録面)に所定の処理液を付与する。この処理液付与部14は、主として、用紙Pを搬送する処理液付与ドラム42と、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの印刷面に所定の処理液を付与する処理液付与ユニット44とで構成される。
【0044】
なお、本例では、処理液をローラ塗布する構成としているが、処理液を付与する方法は、これに限定されるものではない。この他、インクジェットヘッドを用いて付与する構成やスプレーにより付与する構成を採用することもできる。
【0045】
処理液付与部14においては、給紙部12の給紙ドラム40から受け渡された用紙Pは、処理液付与ドラム42で受け取られる。処理液付与ドラム42は、用紙Pの先端をグリッパ42Aで把持して、回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けて搬送する。この搬送過程で塗布ローラ44Aが用紙Pの表面に押圧当接され、用紙Pの表面に処理液が塗布される。
【0046】
ここで、この用紙Pの表面に塗布する処理液は、後段の画像記録部18で用紙Pに打滴する水性UVインク中の色材を凝集させる機能を有する処理液が塗布される。このような処理液を用紙Pの表面に塗布して水性UVインクを打滴することにより、汎用の印刷用紙を用いた場合であっても、着弾干渉等を起こすことなく、高品位な印刷を行うことができる。
【0047】
〈処理液乾燥処理部〉
処理液乾燥処理部16は、表面に処理液が付与された用紙Pを乾燥処理する。この処理液乾燥処理部16は、主として、用紙Pを搬送する処理液乾燥処理ドラム46と、用紙搬送ガイド48と、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの印刷面に熱風を吹き当てて乾燥させる処理液乾燥処理ユニット50とで構成される。
【0048】
処理液乾燥処理部16においては、以上のように構成される。処理液付与部14の処理液付与ドラム42から受け渡された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46で受け取られる。処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの先端をグリッパ46Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。この際、処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの表面(処理液が塗布された面)を内側に向けて搬送する。用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される過程で処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置された処理液乾燥処理ユニット50から熱風が表面に吹き当てられて、乾燥処理される。すなわち、処理液中の溶媒成分が除去される。これにより、用紙Pの表面にインク凝集層が形成される。
【0049】
〈画像記録部〉
画像記録部18は、用紙Pの印刷面にC、M、Y、Kの各色のインク(水性UVインク)の液滴を打滴して、用紙Pの印刷面にカラー画像を描画する。この画像記録部18は、主として、用紙Pを搬送する搬送体の一例としての画像記録ドラム52と、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pを押圧して、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に密着させる押圧体の一例としての用紙押さえローラ54と、用紙PにC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kと、用紙Pに記録された画像を読み取るインラインセンサ58と、インクミストを捕捉するミストフィルタ60と、ドラム冷却ユニット62とで構成される。
【0050】
画像記録ドラム52は、処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取り、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。画像記録ドラム52の外周面上には、グリッパ52Aが備えられ、このグリッパ52Aによって用紙Pの先端が把持される。画像記録ドラム52は、このグリッパ52Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。また、画像記録ドラム52は、その周面に多数の吸着孔(図示せず)が所定のパターンで形成される。画像記録ドラム52の周面に巻き掛けられた用紙Pは、この吸着孔から吸引されることにより、画像記録ドラム52の周面に吸着保持されながら搬送される。これにより、高い平滑性をもって用紙Pを搬送することができる。
【0051】
なお、この吸着孔からの吸引は一定の範囲でのみ作用し、所定の吸引開始位置から所定の吸引終了位置との間で作用する。吸引開始位置は、用紙押さえローラ54の設置位置に設定され、吸引終了位置は、インラインセンサ58の設置位置の下流側に設定される(たとえば、インク乾燥処理部20に用紙を受け渡す位置に設定される。)。すなわち、少なくともインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの設置位置(画像記録位置)とインラインセンサ58の設置位置(画像読取位置)では、用紙Pが画像記録ドラム52の周面に吸着保持されるように設定される。
【0052】
なお、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に吸着保持させる機構は、上記の負圧による吸着方法に限らず、静電吸着による方法を採用することもできる。
【0053】
また、本例の画像記録ドラム52は、外周面上の2カ所にグリッパ52Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。画像記録ドラム52と処理液乾燥処理ドラム46は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
【0054】
用紙押さえローラ54は、画像記録ドラム52の用紙受取位置(処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取る位置)の近傍に配設される。この用紙押さえローラ54は、ゴムローラで構成され、画像記録ドラム52の周面に押圧当接させて設置される。処理液乾燥処理ドラム46から画像記録ドラム52受け渡された用紙Pは、この用紙押さえローラ54を通過することによりニップされ、画像記録ドラム52の周面に密着させられる。
【0055】
以下、本発明の搬送体(搬送ドラム)の一例としての画像記録ドラム52および本発明の押圧体(押圧ローラ)の一例としての用紙押さえローラ54の構成の詳細について説明する。
【0056】
図3〜図5に示すように、画像記録ドラム52は、軸心部に回転軸521が固着されており、この回転軸521が図1に示すインクジェット記録装置1に取り付けられた軸受53で支承されている。
【0057】
図3、図4、および図7に示すように、画像記録ドラム52の周面の吸着面522には、吸着孔520が多数開口した吸着孔形成領域522Aと吸着孔520が設けられていない吸着孔非形成領域522Bとが設けられている。吸着孔非形成領域522Bは、画像形成ドラム52の軸線方向中央部と軸線方向両端部とに1箇所ずつ、軸線方向中央部と軸線方向両端部との間にも1箇所ずつ、計5箇所、画像形成ドラム52の周方向に沿って設けられている。
【0058】
画像記録ドラム52の内側には、吸着孔520と連通するとともに、搬送ドラム52の回転軸521の内部を通って画像記録ドラム52の外側に位置する真空ポンプに連通する真空流路が形成されている。
【0059】
図4に示すように、画面記録ドラム52は、外側の面が吸着面522とされる吸着シート523と、吸着シート523の内側に設けられ、吸着孔形成領域522Aに開口した吸着孔520と連通する吸着溝525が設けられた中間シート524と、吸着シート523および中間シート524によって覆われるドラム本体526と、を有する。ドラム本体526は本発明の胴に相当する。
【0060】
以下、吸着シート523について説明する。
図4および図7に示すように、吸着シート523には、吸着孔形成領域522Aと吸着孔非形成領域522Bとが設けられ、吸着孔形成領域522Aには吸着孔520が多数形成されている。したがって、吸着シート523を中間シート524と重ねた状態において、図7に示すように吸着孔520は吸着溝525に連通する。吸着孔52の形状は、図7に示すように用紙Pの搬送方向(矢印F)に長い楕円であってもよく、真円であってもよい。また、六角形のような多角形であってもよい。吸着孔520の配置は図7に示すように隣接する周方向の位置が半ピッチずつずれた千鳥状が好ましい。また、吸着孔520の直径(多角形の場合は差渡し)は、必要とされる吸着力の大きさにもよるが、0.5mm〜2mm程度が好ましい。
【0061】
吸着シート523は、吸着圧力によってへこまない程度の剛性を有すると共に、ドラム本体526に巻回して密着させられるだけの柔軟性が必要である。したがって、吸着シート523の厚みは、材質によって変動するが0.1mm〜0.5mm程度が好ましい。
【0062】
以下、中間シート524について説明する。
図4および図6に示すように、吸着溝525は、画面記録ドラム52の軸線に対して平行に設けられているとともに、吸着溝525の一端または両端には、吸着溝525よりも狭幅であって本発明の流路制御部の一例である絞り部525Aが設けられている。絞り部525Aの幅は吸着溝525の幅の1/4以下とされている。
【0063】
絞り部525Aの幅は0.2mm〜3.0mmの範囲が好ましく、1.0mm〜2.0mmの範囲がより好ましい。また、絞り部525Aの軸方向の長さは2.0mm〜10.0mmの範囲が好ましい。
【0064】
中間シート524は、薄ければ薄いほど少ない負圧で高い吸着力を得られるが、中間シート524があまり薄いと、吸着孔520から吸引した紙粉、ごみ、インクなどの異物によって吸着溝525や絞り部525Aが閉塞しやすくなるから、中間シート524の厚みは0.05mm〜0.5mm程度が好ましい。
【0065】
一方、図6に示すように、吸着溝525は、複数の用紙Pのサイズに対応するように異なる長さのものの組み合わせとして形成されている。図6に示す例では、吸着溝525は、4種類の用紙幅に対応するように形成されている。吸着溝525のピッチは50mm以下が好ましい。
【0066】
図7に示すように、吸着シート523は、中間シート524に重ねた状態において、吸着孔形成領域522Aが吸着溝525を覆い、吸着孔非形成領域522Bが絞り部525Aを覆うように形成されている。したがって、吸着シート524と中間シート526とを重ねた状態において、吸着孔520は吸着溝525に連通すると共に、絞り部525Aは、吸着孔非形成領域522Bで覆われて外気には直接には連通しない。
【0067】
図5に示すように、ドラム本体526における絞り部525Aに対応する位置には、絞り部525Aに連通するとともに前記真空流路の一部を構成する吸引口258がドラム本体526の周方向に沿って軸方向に5個設けられている。図6および図7において、二点差線は吸引口528の位置を示す。なお、図7に示すように吸引口528の幅は絞り部525Aの幅の略1/2とされている。また、ドラム本体526には、中間シート524および吸着シート523を把持するためのグリッパ527が設けられ、ドラム本体526を挟んでグリッパ527の反対側には、グリッパ527で把持された中間シート524および吸着シート523に、ドラム本体526の周方向に沿って張力を付加する引張機構(図示せず。)が設けられている。
【0068】
画像記録ドラム52は以下の手順によって組み立てられる。
先ず、中間シート522の絞り部525Aの位置とドラム本体526の吸引口528の位置とを合わせて中間シート522をドラム本体526に巻きかけて固定する。次いで、吸着シート523の吸着孔非形成領域522Bが中間シート524の絞り部525Aに重なるように中間シート524を吸着シート523に重ね合わせ、固定する。
【0069】
画像記録ドラム52においては、吸着溝525は吸着孔520を介して外気に直接連通している一方、絞り部525Aは、吸着孔非形成領域522Bによって覆われて外気とは直接には連通していない。また、絞り部525Aの幅は吸着溝525の幅の1/4以下である。絞り部525Aは吸着溝525と吸着シート523とによって形成される流路において圧力損失を生じさせる機能を有する。したがって、画像吸着ドラム52の吸着孔形成領域522Aの一部の領域において用紙Pを吸着搬送する場合においては、吸着孔形成領域522Aにおける用紙Pが吸着されていない領域においても、絞り部525Aが、前記領域に存在する吸着孔520から真空系に外気を吸引する際の抵抗として作用する。これにより、吸着孔形成領域522Aに開口した吸着孔520から形成ドラム52の内部の真空流路に向かって外気が吸い込まれる流れに抵抗が生じるから、吸着面522の一部の領域にのみ用紙Pが吸着されているか、または吸着面522に用紙Pが全く吸着されていない場合においても、吸着面522への用紙Pの吸着力が大幅に低下するのを効果的に防止できる。
【0070】
一方、用紙押さえローラ54は、本発明の押圧ローラの一例であって、図1に示すように、押圧機構541によって画像記録ドラム52の吸着面522に押圧されるようになっており、図8に示すように、吸着面522における吸着孔非形成領域522Bに対応する位置に設けられた大径部54Aと、大径部54Aと同心であって大径部54Aよりも小さな外径を有する小径部54Bと、を有する。大径部54Aは、本発明における強押圧部の一例であり、小径部54Bは本発明における弱押圧部の一例である。ここで、前述のように、吸着孔非形成領域522Bは、画像形成ドラム52の軸線方向中央部と軸線方向両端部とに1箇所ずつ、軸線方向中央部と軸線方向両端部との間にも1箇所ずつ、計5箇所、画像形成ドラム52の周方向に沿って設けられているから、図8に示す例においては、大径部54Aもまた、用紙押さえローラ54の軸線方向中央部と軸線方向両端部とに1箇所ずつ、軸線方向中央部と軸線方向両端部との間にも1箇所ずつ、計5箇所、用紙押さえローラ54の周方向に沿って設けられている。したがって、用紙押さえローラ54を吸着面522に押圧したときに、吸着孔非形成領域522Bは大径部54Aで押圧され、吸着孔形成領域522Aは小径部522Bで押圧されるから、吸着孔非形成領域522Bは、用紙押さえローラ54によって吸着孔形成領域522Aよりもより強く押圧される。これにより、吸着孔非形成領域522Bにおける吸着面522からの用紙Pの浮き上がりを防止することができる。
【0071】
なお、図8に示す例では、大径部54Aの幅a1は、吸着孔非形成領域522Bの幅a2の2倍〜3倍とされている。これにより、吸着孔非形成領域522Bにおける吸着面522からの用紙Pの浮き上がりを更に確実に防止することができる。
【0072】
なお、図8に示す例において、大径部54Aの幅a1は、吸着孔非形成領域522Bの幅a2よりも小さくすることにより、吸着孔非形成領域522Bのみならず吸着孔形成領域522Aも用紙押さえローラ54の大径部54Aで押圧することによる吸着孔形成領域522Aに過大な力が作用することによる吸着孔形成領域522Aや用紙Pの損傷を防止できる。
【0073】
一方、用紙押さえローラ54においては、図9に示すように、大径部54Aのうち、用紙押さえローラ54の軸線方向中央部に位置するものは、他の大径部54Aよりも大きな幅とすることができる。但し、図9に示す例において、搬送しようとする用紙Pのうち、最も幅の大きなものの幅をLM、最も幅の小さなものの幅をLm、軸線方向中央部に位置する大径部54Aの幅をaとすると、幅aは、以下の式:
0.2LM≦a≦0.6Lm
を満たすことが好ましい。
【0074】
軸線方向中央部に位置する大径部54Aの幅aが上記の関係式を満たせば、最も幅の広い用紙Pにおいても、最も幅の狭い用紙Pにおいても、用紙Pの幅方向中央部に生じた凹凸が幅法王両端部に押しやられる。これにより、幅の広い用紙Pも幅の狭い用紙Pも矢印Fの方向に安定に搬送できる。
【0075】
また、図8および図9に示す例において、用紙押さえローラ54の大径部54Aと小径部54Bとの間の段差の高さをdとすると、段差の高さdは、画像記録ドラム52で用紙Pを搬送する際の用紙Pから弱押圧部たる小径部54Bまでの距離とも言い換えられる。
段差の高さdは、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kにおけるインク吐出面と画像記録ドラム52で搬送される用紙Pまでの距離をTdとすると、以下の式:
0<d<Td
を満たすように設定されている。
用紙押さえローラ54においてこのように段差の高さdを設定すると、用紙押さえローラ54と用紙Pとの距離dは0より大きいから、用紙Pにおける用紙押さえローラ54の小径部54Bに対応する領域は用紙押さえローラ54によっては押圧されない非押圧領域となる。したがって、用紙Pに凹凸がある場合においては、前記凹凸は前記非押圧領域に押しやられるから、前記押圧に起因する皴の発生が効果的に防止される。また、距離dは、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kのインク吐出面と用紙Pとの距離Tdよりも小さいから、用紙Pと画像記録ドラム52の吸着面522との間に距離Td以上の大きさの浮きが生じた場合においても、前記浮きは、用紙押さえローラ54によって高さd以下に押さえ込まれるから、用紙Pがインク吐出面に接触することが防止される。
【0076】
4台のインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔をもって配置される。このインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、用紙幅に対応したラインヘッドで構成され、ノズル面が画像記録ドラム52の周面に対向するように配置される。各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、ノズル面に形成されたノズル列から、画像記録ドラム52に向けてインクの液滴を吐出することにより、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに画像を記録する。
【0077】
なお、上記のように、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kから吐出させるインクは、水性UVインクが用いられる。水性UVインクは、打滴後に紫外線(UV)を照射することにより、硬化させることができる。
【0078】
インラインセンサ58は、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送方向に対して、最後尾のインクジェットヘッド56Kの下流側に設置され、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kで記録された画像を読み取る。このインラインセンサ58は、たとえば、ラインスキャナで構成され、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pからインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって記録された画像を読み取る。
【0079】
ミストフィルタ60は、最後尾のインクジェットヘッド56Kとインラインセンサ58との間に配設され、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉する。このように、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉することにより、インラインセンサ58へのインクミストの進入を防止でき、読み取り不良等の発生を防止できる。
【0080】
ドラム冷却ユニット62は、画像記録ドラム52に冷風を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。このドラム冷却ユニット62は、主として、エアコン(図示せず)と、そのエアコンから供給される冷気を画像記録ドラム52の周面に吹き当てるダクト62Aとで構成される。
【0081】
ここで、画像記録ドラム52を冷却する温度は、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度(特にノズル面の温度)との関係で定まり、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度よりも低い温度となるように冷却される。これにより、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに結露が生じるのを防止することができる。すなわち、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kよりも画像記録ドラム52の温度を低くすることにより、画像記録ドラム側に結露を誘発することができ、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに生じる結露(特にノズル面に生じる結露)を防止することができる。
【0082】
画像記録部18においては、処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から受け渡された用紙Pは、画像記録ドラム52で受け取られる。画像記録ドラム52は、用紙Pの先端をグリッパ52Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52に受け渡された用紙Pは、まず、用紙押さえローラ54を通過することにより、画像記録ドラム52の周面に密着される。これと同時に画像記録ドラム52の吸着穴から吸引されて、画像記録ドラム52の外周面上に吸着保持される。用紙Pは、この状態で搬送されて、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kを通過する。そして、その通過時に各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56KからC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が表面に打滴されて、表面にカラー画像が描画される。用紙Pの表面にはインク凝集層が形成されているので、フェザリングやブリーディング等を起こすことなく、高品位な画像を記録することができる。
【0083】
インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって画像が記録された用紙Pは、次いで、インラインセンサ58を通過する。そして、そのインラインセンサ58の通過時に表面に記録された画像が読み取られる。この記録画像の読み取りは必要に応じて行われ、読み取られた画像から吐出不良等の検査が行われる。読み取りを行う際は、画像記録ドラム52に吸着保持された状態で読み取りが行われるので、高精度に読み取りを行うことができる。また、画像記録直後に読み取りが行われるので、たとえば、吐出不良等の異常を直ちに検出することができ、その対応を迅速に行うことができる。これにより、無駄な記録を防止できるとともに、損紙の発生を最小限に抑えることができる。
【0084】
この後、用紙Pは、吸着が解除された後、インク乾燥処理部20へと受け渡される。
【0085】
〈インク乾燥処理部〉
インク乾燥処理部20は、画像記録後の用紙Pを乾燥処理し、用紙Pの表面に残存する液体成分を除去する。インク乾燥処理部20は、画像が記録された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pを乾燥処理するインク乾燥処理ユニット68とで構成される。
【0086】
チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22、排紙部24において共通して使用される用紙搬送機構であり、画像記録部18から受け渡された用紙Pを受け取って、排紙部24まで搬送する。
【0087】
チェーンガイドは、所定位置に配置されて、チェーングリッパ64の備えるチェーン64Cが所定の経路を走行するようにガイドする。チェーンガイドは、第1水平搬送経路70Aと、傾斜搬送経路70Bと、第2水平搬送経路70Cとで構成される。
【0088】
インク乾燥処理部20においては、画像記録部18の画像記録ドラム52から受け渡された用紙Pは、チェーングリッパ64で受け取られる。チェーングリッパ64は、用紙Pの先端をグリッパ64Dで把持して、平面状のガイドプレート72に沿わせて用紙Pを搬送する。チェーングリッパ64に受け渡された用紙Pは、まず、第1水平搬送経路70Aを搬送される。この第1水平搬送経路70Aを搬送される過程で用紙Pは、チェーングリッパ64の内部に設置されたインク乾燥処理ユニット68によって乾燥処理が施される。すなわち、表面(画像記録面)に熱風が吹き当てられて、乾燥処理が施される。この際、用紙Pは、バックテンション付与機構66によってバックテンションが付与されながら乾燥処理が施される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら乾燥処理することができる。
【0089】
〈UV照射処理部〉
UV照射処理部22は、水性UVインクを用いて記録された画像に紫外線(UV)を照射して、画像を定着させる。このUV照射処理部22は、主として、乾燥処理された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに紫外線を照射するUV照射ユニット74とで構成される。
【0090】
チェーングリッパ64とバックテンション付与機構66は、インク乾燥処理部20及び排紙部24と共に共通して使用される。
【0091】
UV照射処理部22においては、チェーングリッパ64に搬送されてインク乾燥処理部20で乾燥処理が施された用紙Pは、次いで、傾斜搬送経路70Bを搬送される。この傾斜搬送経路70Bを搬送される過程で用紙Pは、チェーングリッパ64の内部に設置されたUV照射ユニット74によりUV照射処理が施される。
【0092】
〈排紙部〉
排紙部24は、一連の画像記録処理が行われた用紙Pを回収する。この排紙部24は、主として、UV照射された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、用紙Pを積み重ねて回収する排紙台76とで構成される。
【0093】
上記のように、チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20及びUV照射処理部22と共に共通して使用される。チェーングリッパ64は、排紙台76の上で用紙Pを開放し、排紙台76の上に用紙Pをスタックさせる。
【0094】
排紙台76は、チェーングリッパ64から開放された用紙Pを積み重ねて回収する。この排紙台76には、用紙Pが整然と積み重ねられるように、用紙当て(前用紙当て、後用紙当て、横用紙当て等)が備えられる(図示せず)。
【0095】
また、排紙台76は、図示しない排紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。排紙台昇降装置は、排紙台76にスタックされる用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、排紙台76を昇降させる。
【0096】
〈制御部〉
図2に示すように、インクジェット記録装置1は、システムコントローラ100、通信部102、画像メモリ104、搬送制御部110、給紙制御部112、処理液付与制御部114、処理液乾燥制御部116、画像記録制御部118、インク乾燥制御部120、UV照射制御部122、排紙制御部124、操作部130、表示部132等が備えられる。
【0097】
システムコントローラ100は、インクジェット記録装置1の各部を統括制御する制御手段として機能するとともに、各種演算処理を行う演算手段として機能する。このシステムコントローラ100は、CPU、ROM、RAM等を備えており、所定の制御プログラムに従って動作する。ROMには、このシステムコントローラ100が、実行する制御プログラム、及び、制御に必要な各種データが格納される。
【0098】
通信部102は、所要の通信インターフェースを備え、その通信インターフェースと接続されたホストコンピュータとの間でデータの送受信を行う。
【0099】
画像メモリ104は、画像データを含む各種データの一時記憶手段として機能し、システムコントローラ100を通じてデータの読み書きが行われる。通信部102を介してホストコンピュータから取り込まれた画像データは、この画像メモリ104に格納される。
【0100】
搬送制御部110は、インクジェット記録装置1における用紙Pの搬送系を制御する。すなわち、給紙部12におけるテープフィーダ36A、前当て38、給紙ドラム40の駆動を制御するとともに、処理液付与部14における処理液付与ドラム42、処理液乾燥処理部16における処理液乾燥処理ドラム46、画像記録部18における画像記録ドラム52の駆動を制御する。また、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22及び排紙部24で共通して用いられるチェーングリッパ64及びバックテンション付与機構66の駆動を制御する。
【0101】
搬送制御部110は、システムコントローラ100からの指令に応じて、搬送系を制御し、給紙部12から排紙部24まで滞りなく用紙Pが搬送されるように制御する。
【0102】
給紙制御部112は、システムコントローラ100からの指令に応じて給紙部12を制御する。具体的には、サッカー装置32及び給紙台昇降機構等の駆動を制御して、給紙台30に積載された用紙Pが、重なることなく1枚ずつ順に給紙されるように制御する。
【0103】
処理液付与制御部114は、システムコントローラ100からの指令に応じて処理液付与部14を制御する。具体的には、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pに処理液が塗布されるように、処理液付与ユニット44の駆動を制御する。
【0104】
処理液乾燥制御部116は、システムコントローラ100からの指令に応じて処理液乾燥処理部16を制御する。具体的には、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pが乾燥処理されるように、処理液乾燥処理ユニット50の駆動を制御する。
【0105】
画像記録制御部118は、システムコントローラ100からの指令に応じて画像記録部18を制御する。具体的には、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに所定の画像が記録されるように、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの駆動を制御する。また、記録された画像が読み取られるように、インラインセンサ58の動作を制御する。
【0106】
インク乾燥制御部120は、システムコントローラ100からの指令に応じてインク乾燥処理部20を制御する。具体的には、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに熱風が送風されるようにインク乾燥処理ユニット68の駆動を制御する。
【0107】
UV照射制御部122は、システムコントローラ100からの指令に応じてUV照射処理部22を制御する。具体的には、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに紫外線が照射されるようにUV照射ユニット74の駆動を制御する。
【0108】
排紙制御部124は、システムコントローラ100からの指令に応じて排紙部24を制御する。具体的には、排紙台昇降機構等の駆動を制御して、排紙台76に用紙Pがスタックされるように制御する。
【0109】
操作部130は、所要の操作手段(たとえば、操作ボタンやキーボード、タッチパネル等)を備え、その操作手段から入力された操作情報をシステムコントローラ100に出力する。システムコントローラ100は、この操作部130から入力された操作情報に応じて各種処理を実行する。
【0110】
表示部132は、所要の表示装置(たとえば、LCDパネル等)を備え、システムコントローラ100からの指令に応じて所要の情報を表示装置に表示させる。
【0111】
上記のように、用紙に記録する画像データは、ホストコンピュータから通信部102を介してインクジェット記録装置1に取り込まれる。取り込まれた画像データは、画像メモリ104に格納される。
【0112】
システムコントローラ100は、この画像メモリ104に格納された画像データに所要の信号処理を施してドットデータを生成する。そして、生成したドットデータに従って画像記録部18の各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの駆動を制御し、その画像データが表す画像を用紙に記録する。
【0113】
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置1で使用するインクの各色のインク量データに変換する処理である(本例では、C、M、Y、Kの各色のインク量データに変換する。)。ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色のインク量データに対して誤差拡散等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。
【0114】
システムコントローラ100は、画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って各色のドットデータを生成する。そして、生成した各色のドットデータに従って、対応するインクジェットヘッドの駆動を制御することにより、画像データが表す画像を用紙に記録する。
【0115】
《作用》
以下、実施形態1のインクジェット記録装置1の作用について説明する。給紙部12から給紙され、処理液付与部14で処理液が付与され、処理液乾燥処理部16で乾燥処理が施された用紙Pは、処理液嵌挿処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から画像記録部18における画像記録ドラム52に受け渡される。画像記録部18においは、用紙Pは、画像記録ドラム52に吸着保持されると共に用紙押さえローラ54または用紙押さえベルト55で押圧された状態でインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに向かって搬送される。そして、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって表面にC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が打滴され、画像が記録される。
【0116】
画像記録部18で画像が記録された用紙Pは、インク乾燥処理部20に送られてインクが乾燥処理され、UV照射処理部22でUV照射されてインクが効果処理された後、排紙部24に排紙される。
【0117】
(2)実施形態2
実施形態2に係るインクジェット記録装置は、画像記録部18において用紙押さえローラ54に代えて用紙押さえベルト55を使用した以外は、図1に示す実施形態1のインクジェット記録装置1と同様の構成を有している。
【0118】
用紙押さえベルト55は、本発明の押圧ベルトの一例であり、図10に示すように、張架ローラ552と張架ローラ554とに張架されている。そして、用紙押さえベルト55は図1に示す押圧機構541によって画像記録ドラム22の吸着面522に押圧されている。そして、画像ドラム52が矢印Fで示す方向に回転すると、用紙押さえベルト55も従動回転する。
【0119】
図10に示すように、用紙押さえベルト55の外周面における吸着面522の吸着孔非形成領域522Bに対応する位置に、用紙押さえベルト55の周方向に沿って凸部55Aが5本形成されている。したがって、凸部55Aは、用紙押さえベルト55の幅方向中央部と幅方向両端部とに1箇所ずつ、幅方向中央部と幅方向両端部との間にも1箇所ずつ、計5箇所、用紙押さえベルト55の周方向に沿って設けられている。凸部55Aの高さdおよび幅a1については、実施形態1において図8および図9の用紙押さえローラ54の大径部54Aの幅a1、および大径部54Aと小径部54Bとの間の段差の高さdについて述べたとおりである。
【0120】
したがって、用紙押さえベルト55を吸着面522に押圧したときに、吸着孔非形成領域522Bはと粒55Aで押圧され、吸着孔形成領域522Aは小径部522Bで押圧されるから、吸着孔非形成領域522Bは、用紙押さえローラ54によって吸着孔形成領域522Aよりもより強く押圧される。これにより、吸着孔非形成領域522Bにおける吸着面522からの用紙Pの浮き上がりを防止することができる。
【0121】
また、用紙押さえローラ54と同様、用紙押さえベルト55においても、幅方向中央部に位置する凸部55Aの幅を、残り4本の凸部55Aの幅より大きくすることができる。この場合、幅方向中央部に位置する凸部55Aの幅aについては、搬送しようとする用紙Pのうち、最も幅の大きなものの幅をLM、最も幅の小さなものの幅をLmとすると、以下の式:
0.2LM≦a≦0.6Lm
を満たすことが好ましい。
【0122】
軸線方向中央部に位置する凸部55Aの幅aが上記の関係式を満たせば、最も幅の広い用紙Pにおいても、最も幅の狭い用紙Pにおいても、用紙Pの幅方向中央部に生じた凹凸が幅法王両端部に押しやられる。これにより、幅の広い用紙Pも幅の狭い用紙Pも矢印Fの方向に安定に搬送できる。
【0123】
また、用紙押さえベルト55の凸部55Aの高さをd、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kにおけるインク吐出面と画像記録ドラム52で吸着搬送される用紙Pとの距離をTdとすると、凸部の高さdは、以下の式:
0<d<Td
を満たすように設定されている。これにより、実施形態1のところで述べたのと同様の理由により、用紙Pに生じた凹凸に起因する皴の発生や用紙Pがインク吐出面に接触するトラブルの発生を避けることができる。
【0124】
(3)実施形態3
図11に示されるように、実施形態3に係るインクジェット記録装置3は、画像記録部18において、用紙押さえローラ54に代えて用紙押さえパッド57を使用した以外は、図1に示す実施形態1のインクジェット記録装置1と同様の構成を有している。用紙押さえパッド57は本発明の接触押圧体の一例である。
【0125】
図11(A)において矢印Aで示すように、用紙押さえパッド57は、画像記録ドラム52の吸着面522に押圧される。用紙押さえパッド57は本発明の接触押圧体の一例である。用紙押さえパッド57の吸着面522に当接する側の面は、フッ素樹脂や超高分子量ポリエチレン樹脂などの低摩擦材料で形成されている。図11(A)および図11(B)に示すように、用紙押さえパッド57の吸着孔非形成領域522Bに対応する位置には凸部57Aが形成されている。凸部55Aの高さおよびについては、実施形態1において図8および図9の用紙押さえローラ54の大径部54Aの幅a1、および大径部54Aと小径部54Bとの間の段差の高さdについて述べたとおりである。
【0126】
また、用紙押さえパッド57の凸部57Aの高さをd、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kにおけるインク吐出面と画像記録ドラム52で吸着搬送される用紙Pとの距離をTdとすると、凸部の高さdは、以下の式:
0<d<Td
を満たすように設定されている。これにより、実施形態1のところで述べたのと同様の理由により、用紙Pに生じた凹凸に起因する皴の発生や用紙Pがインク吐出面に接触するトラブルの発生を避けることができる。
【0127】
(4)実施形態4
図12に示されるように、実施形態4に係るインクジェット記録装置4は、画像記録部18において、用紙押さえローラ54に代えて用紙押さえノズル59を使用した以外は、図1に示すように実施形態1のインクジェット記録装置1と同様の構成を有している。
【0128】
図12(A)および図12(B)に示すように、用紙押さえノズル59は、画像記録ドラム52の軸方向に沿って設けられているとともに、吸着面522に向かって空気を噴き出す気流噴出孔59Aが用紙押さえノズル59の長手方向に沿って多数開口している。そして、吸着孔非形成領域522Bに相対する気流噴出孔59Aからは、吸着孔形成領域522Aに相対する気流噴出孔59Aよりも強い気流が噴出される。
【0129】
したがって、吸着孔非形成領域522Bは、気流噴出孔59Aから噴出する気流によって吸着孔形成領域522Aよりも強く押圧される。
【0130】
以上、本発明の搬送装置をインクジェット記録装置1〜4における画像記録部18に用いた例を示したが、本発明の搬送装置の用途は画像記録部18には限定されず、処理液付与部14、処理液乾燥処理部16のようにドラムで用紙Pを搬送する箇所にも使用される。また、画像形成ドラム52として用紙Pを真空圧で吸引することにより吸着面522に吸着させる形態について説明してきたが、画像形成ドラム52は、用紙Pを吸着面522に静電的に吸着するものであってもよい。
【実施例】
【0131】
(1)実施例1、2、比較例1、2
実施形態1に係るインクジェット記録装置1において、実施例1では図8に示す形態の用紙押さえローラ54を、実施例2では図9に示す形態の用紙押さえローラ54を用いた。また、比較例1では、軸線方向中央部のみに大径部54Aを形成した図13の形態の用紙押さえローラ54を用い、比較例2では、大径部を有しない円筒状の図14に示す用紙押さえローラ54を用いた。結果を表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
表1に示すように、実施例1では、通常画像およびインクの滴量が通常画像よりも多い強制画像においても用紙Pに皺が見られなかった。一方、実施例2では、強制画像では用紙Pに若干の皺が認められたものの、通常画像部では用紙Pに皺は見られなかった。
【0134】
これに対して比較例1では、通常画像において、用紙Pの中央部には皺は見られなかったものの、画像記録ドラム52の吸着孔非形成領域522Bに吸着された部分に小さな浮きが見られた。そして、比較例2では、通常画像においても用紙Pの中央部に皺の発生が見られた。
【0135】
したがって、図8および図9に示すように画像記録ドラム52の吸着孔非形成領域522Bに対応する部分に大径部54Aを形成した用紙押さえローラ54を用いることにより、用紙Pの皺の発生を効果的に防止することができることがわかる。
【符号の説明】
【0136】
1…インクジェット記録装置、12…給紙部、14…処理液付与部、16…処理液乾燥処理部、18…画像記録部、20…インク乾燥処理部、22…UV照射処理部、24…排紙部、30…給紙台、32…サッカー装置、34…給紙ローラ、36…フィーダボード、38…前当て、40…給紙ドラム、42…処理液付与ドラム、44…処理液付与ユニット、46…処理液乾燥処理ドラム、46A…グリッパ、48…用紙搬送ガイド、50…処理液乾燥処理ユニット、52…画像記録ドラム、54…用紙押さえローラ、54A…大径部、54B…小径部、55…用紙押さえベルト、55A…凸部、56C、56M、56Y、56K…インクジェットヘッド、57…用紙押さえパッド、57A…凸部、58…インラインセンサ、59…用紙押さえノズル、59A…気流噴出孔、60…ミストフィルタ、62…ドラム冷却ユニット、62A…ダクト、64…チェーングリッパ、64A…第1スプロケット、64B…第2スプロケット、64C…チェーン、64D…グリッパ、66…バックテンション付与機構、68…インク乾燥処理ユニット、74…UV照射ユニット、76…排紙台、100…システムコントローラ、522…吸着面、522A…吸着孔形成領域、522B…吸着孔非形成領域、523…吸着シート、524…中間シート、525…吸着溝、525A…絞り部、526…ドラム本体、528…吸引口、
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置および画像形成装置にかかり、特に、シート状媒体と搬送体の吸着面との間の浮きを効果的に防止できる搬送装置、および前記搬送装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置においては、印刷直後の用紙に、画像領域内におけるインクの濃淡に起因する変形が生じることがある。特にインキが水性インキであり、記録紙が汎用紙である画像形成装置においては、印刷直後における用紙の変形の問題が顕著である。
【0003】
前記画像形成装置において用紙の変形を防止する搬送装置としては、周方向に延在する吸引口が軸方向に複数設けられた胴と、前記胴の外周面に装着されるシート状部材と、を備え、前記シート状部材の外側の面が媒体を保持する媒体保持面とされた搬送ドラムがある(特許文献1)。この搬送ドラムにおいては、前記媒体保持面が、吸着孔が多数設けられた吸着孔形成領域と吸着孔が設けられていない吸着孔非形成領域とに区分されている。
【0004】
また、インクを吐出するノズルを形成してなる記録ヘッドと、記録媒体を支持する支持部材とを有し、前記記録媒体を一定方向に搬送させながら、前記記録ヘッドからインクを吐出して前記支持部材に支持された前記記録媒体に着弾させることにより画像を記録するインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドの前記記録媒体の搬送方向の上流側に、前記記録媒体を前記支持部材に対して押圧する押さえ部材を設けたインクジェット記録装置がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4478897号公報
【特許文献2】特開2005−29333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、媒体保持面に吸着孔形成領域と吸着孔非形成領域とを形成した搬送ドラムにおいては、用紙などの媒体の媒体保持面の吸着力が強い領域と弱い領域が生じるため、吸着力の弱い領域では用紙に浮きが生じる可能性がある。
【0007】
また、用紙の浮きを検知して押さえ部材によって浮きが生じた部分を押さえるのは、シングルパス印字で高速印刷を行う場合には適切ではない。
【0008】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、シート状媒体と搬送体の吸着面との間に生じる浮きを効果的に防止できる搬送装置、および前記搬送装置を備える画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、搬送装置に関し、シート状媒体を吸着して搬送する搬送体と、前記シート状媒体を吸着する前記搬送体の吸着面に前記シート状媒体を押圧すると共に、前記吸着面の幅方向に複数箇所存在する前記吸着面の他の部分よりも吸着力が弱い部分を他の部分よりも強く押圧する押圧体と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の搬送装置においては、前記吸着面における他の部分よりも吸着力の弱い部分が吸着面の幅方向に複数箇所存在する場合においても、前記吸着力の弱い部分は前記押圧体によって前記他の部分よりも強く押圧される。したがって、吸着面における吸着力が弱い部分においてシート状媒体と吸着面との間に浮きが生じることが防止される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の搬送装置において、前記押圧体が、前記搬送体の吸着面に接触して押圧する接触押圧体であり、搬送体に接近した強押圧部と搬送体から離れた弱押圧部とが設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の搬送装置においては、前記押圧体は、前記吸着面に接触することによって前記吸着面を機械的に押圧するから、前記押圧体が前記吸着面をたとえば空気圧や静電力などによって非機械的に押圧するものと比較して、吸着面における吸着力が弱い部分においてシート状媒体と吸着面との間に浮きが生じることがより確実に防止される。また、強押圧部は弱押圧部よりも搬送体に接近した構成とされているから、前記回転押圧体を前記搬送体の吸着面に押圧すると、前記強押圧部が前記弱押圧部よりも前記吸着面に強く押圧される。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の搬送装置において、前記接触押圧体が、搬送体に接触しつつ回転する回転押圧体であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の搬送装置においては、押圧体は、搬送体に接触しつつ回転する回転押圧体であるから、搬送体によって吸着、搬送されるシート状媒体が押圧体との摩擦によって損傷することが効果的に防止される。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の搬送装置において、前記搬送体が軸線周りに回転する搬送ドラムであって、前記搬送ドラムの吸着面は、前記搬送ドラムの軸方向に沿って、吸着孔が多数形成された吸着孔形成領域と、吸着孔が形成されていない吸着孔非形成領域とに区分されていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の搬送装置においては、吸着孔非形成領域の吸着力は吸着孔形成領域の吸着力よりも弱い。しかしながら、前記吸着孔非形成領域は、前記押圧体によって前記吸着孔形成領域よりも強く押圧されるから、前記吸着孔非形成領域において吸着面とシート状媒体との間に浮きが生じることが防止される。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の搬送装置において、前記押圧体が回転押圧体であって、前記回転押圧体の強押圧部は、前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域を押圧し、前記回転押圧体の弱押圧部は、前記搬送ドラムの吸着孔形成領域を押圧することを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の搬送装置においては、前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域は前記回転押圧体の強押圧部で、前記搬送ドラムの吸着孔形成領域は前記回転押圧体の弱押圧部で押圧されるから、前記吸着孔非形成領域は前記回転押圧体によって前記吸着孔形成領域よりも強く押圧される。
【0019】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の搬送装置において、前記回転押圧体の強押圧部の幅が前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域の幅よりも大きいことを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の搬送装置においては、前記回転押圧体の強押圧部の幅が前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域の幅よりも大きいから、前記搬送ドラムにおける吸着孔非形成領域におけるシート状媒体の浮き上がりを確実に防止できる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の搬送装置において、前記回転押圧体の強押圧部の幅が前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域の幅よりも小さいことを特徴とする。
【0022】
請求項7に記載の搬送装置においては、前記回転押圧体の強押圧部の幅が前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域の幅よりも小さいから、より吸着力の大きな吸着孔形成領域においてシート状媒体が強押圧部によって押圧されることがない。したがって、吸着孔形成領域において回転押圧体によって過剰な力で押圧されることによるシート状媒体や吸着面の損傷を効果的に防止できる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項3〜7の何れか1項に記載の搬送装置において、前記回転押圧体が押圧ローラであり、前記押圧ローラには、前記回転押圧体における強押圧部である複数の大径部と、前記回転押圧体における弱押圧部であって前記大径部よりも小さな外径を有する小径部とが形成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項8に記載の搬送装置においては、前記大径部は前記小径部と比較して搬送体により接近しているから、前記押圧ローラを搬送体の吸着面に押圧すると、大径部が小径部よりも強く押圧される。
【0025】
請求項9に記載の発明は、請求項3〜7の何れか1項に記載の搬送装置において、前記回転押圧体は押圧ベルトであり、前記押圧ベルトにおける前記シート状媒体を押圧する側の面には、前記押圧ベルトの回転方向に沿って複数の凸部が形成され、前記押圧ベルトにおける凸部が形成された部分が、前記回転押圧体における強押圧部とされ、前記押圧ベルトにおける凸部が形成されていない部分が、前記回転押圧体における弱押圧部とされていることを特徴とする。
【0026】
請求項9に記載の搬送装置においては、前記押圧ベルトの凸部は前記搬送体により接近しているから、前記押圧ベルトを前記搬送体の吸着面に押圧すると、前記凸部が形成された部分が、前記凸部が形成されていない部分よりも強く押圧される。
【0027】
請求項10に記載の発明は、請求項4〜7の何れか1項に記載の搬送装置において、前記搬送ドラムは、内側負圧部に通じる複数の吸引口を備え、この吸引口が外周面に周方向に沿って形成された胴と、前記胴の外周面に装着されるとともに、軸方向に延出され、且つ前記胴における吸引口に対向する絞り部を有する吸着溝が前記胴の周方向に複数設けられた中間シートと、前記中間シートの外側の面に装着されて前記吸着面を構成するとともに、前記吸着面における吸着孔形成領域に形成された吸着孔は前記吸着溝と連通し、前記吸着孔非形成領域は前記絞り部に対向する吸着シートと、を備えることを特徴とする。
【0028】
請求項10に記載された搬送装置においては、吸着溝における絞り部は、前記吸着シートにおける吸着孔非形成領域によって覆われて外気とは直接に連通していないから、前記吸着孔と前記吸着溝とによって形成される流路において圧力損失を生じさせる機能を有する。したがって、前記搬送ドラムの吸着面の一部の領域にしかシート状媒体が吸引されていないか、または前記吸着面にシート状媒体が全く吸引されていない場合においても吸着面へのシート状媒体の吸着力が大幅に低下するのが防止される。
【0029】
請求項11に記載の発明は、画像形成装置において、シート状媒体を吸着面に吸着して搬送する請求項1〜10の何れか1項に記載の搬送装置と、前記搬送装置によって搬送されるシート状媒体に液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、を備えることを特徴とする。
【0030】
請求項11に記載の画像形成装置においては、前記搬送装置の備える搬送体の吸着面において他の部分よりも吸着力の弱い部分は、押圧体によって前記他の部分よりも強く押圧されるから、前記吸着面における吸着力の弱い部分において前記吸着面とシート状媒体との間に浮きが生じることが防止される。
【0031】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の画像形成装置において、前記搬送装置として請求項2〜10の何れか1項に記載の搬送装置を備えるとともに、前記搬送装置でシート状媒体を搬送する際の押圧体の弱押圧部と前記シート状媒体との距離をd、前記液滴吐出ヘッドの液滴吐出面と前記シート状媒体との距離をTdとすると、式:0<d<Tdを満たすように前記距離dが設定されていることを特徴とする。
【0032】
請求項12に記載の画像形成装置においては、押圧体の弱押圧部とシート状媒体との距離dは0より大きいから、前記シート状媒体における前記押圧体の弱押圧部に対応する領域は前記押圧体によっては押圧されない非押圧領域となる。したがって、シート状媒体に凹凸がある場合においては、前記凹凸は前記非押圧領域に押しやられるから、前記押圧に起因する皴の発生が効果的に防止される。また、前記距離dは、前記液滴吐出ヘッドの液滴吐出面と前記シート状媒体との距離Tdよりも小さいから、前記シート状媒体と前記搬送体の吸着面との間に前記距離Td以上の大きさの浮きが生じた場合においても、前記浮きは、前記押圧体によって高さd以下に押さえ込まれるから、前記搬送装置で搬送されるシート状媒体が液滴吐出面に接触することが防止される。
【0033】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の画像形成装置において、前記搬送装置における押圧体は、請求項8に記載の押圧ローラ、または請求項10に記載の押圧ベルトであって、前記押圧ローラにおける大径部と小径部との間の段差の高さd、または前記押圧ベルトにおける凸部の高さdは、請求項12に記載の関係式を満たすように設定されていることを特徴とする。
【0034】
請求項13に記載の画像形成装置においては、段差の高さdは、押圧体の弱押圧部と前記シート状媒体との距離と言い換えることができる。したがって、段差の高さdと、前記液滴吐出ヘッドの液滴吐出面と前記シート状媒体との距離Tdとの間に、請求項12に記載したように、式:0<d<Tdの関係があれば、請求項12のところで述べたのと同様の理由によって、押圧体として押圧ローラまたは押圧ベルトを備える搬送装置において、シート状媒体の凹凸に起因する皴がシート状媒体に生じたり、シート状媒体が液滴吐出面に接触したりすることが防止される。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように本発明によれば、シート状媒体と搬送体の吸着面との間の浮きを効果的に防止できる搬送装置、および前記搬送装置を備える画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、実施形態1に係るインクジェット記録装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【図2】図2は、図1に示すインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、図1に示すインクジェット記録装置の画像記録部の備える画像記録ドラムの全体的な構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3に示す画像記録ドラムの内部の構成を示す分解斜視図である。
【図5】図5は、図3に示す画像記録ドラムの備えるドラム本体の構成を示す斜視図である。
【図6】図6は、図3に示す画像記録ドラムの備える中間シートの展開図である。
【図7】図7は、図3に示す画像記録ドラムの吸着面に開口した吸引口と中間シートに設けられた吸着溝との位置関係を示す説明図である。
【図8】図8は、図1に示すインクジェット記録装置の画像記録部の備える用紙押さえローラの一例について画像記録ドラムとの位置関係を示す説明図である。
【図9】図9は、図1に示すインクジェット記録装置の画像記録部の備える用紙押さえローラの他の例について画像記録ドラムとの位置関係を示す説明図である。
【図10】図10は、実施形態2のインクジェット記録装置の画像記録部における用紙押さえベルトと画像記録ドラムとの関係を示す斜視図である。
【図11】図11(A)は、実施形態3のインクジェット記録装置の画像記録部における用紙押さえパッドと画像記録ドラムとを前記画像記録ドラムの端面から見た概略図であり、図11(B)は、前記用紙押さえパッドと画像記録ドラムとを、用紙搬送方向下流側から見た概略図である。
【図12】図12(A)は、実施形態4のインクジェット記録装置の画像記録部における用紙押さえノズルと画像記録ドラムとを前記画像記録ドラムの端面から見た概略図であり、図12(B)は、前記用紙押さえノズルと画像記録ドラムとを、用紙搬送方向下流側から見た概略図である。
【図13】図13は、比較例1で用いた用紙押さえローラ(押圧ローラ)の構成を示す概略図である。
【図14】図14は、比較例2で用いた用紙押さえローラ(押圧ローラ)の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(1)実施形態1
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0038】
《装置構成》
本発明の画像形成装置の一例であるインクジェット記録装置1は、用紙P(シート状媒体)に水性UVインク(水性媒体を使用したUV(紫外線)硬化型のインク)を用いてインクジェット方式で画像を記録するインクジェット記録装置であり、主として、シート状媒体の一例である用紙Pを給紙する給紙部12と、給紙部12から給紙された用紙Pの表面(画像記録面)に所定の処理液を付与する処理液付与部14と、処理液付与部14で処理液が付与された用紙Pの乾燥処理を行う処理液乾燥処理部16と、処理液乾燥処理部16で乾燥処理が施された用紙Pの表面に水性UVインクを用いてインクジェット方式で画像を記録する画像記録部18と、画像記録部18で画像が記録された用紙Pの乾燥処理を行うインク乾燥処理部20と、インク乾燥処理部20で乾燥処理された用紙PにUV照射処理(定着処理)を行って画像を定着させるUV照射処理部22と、UV照射処理部22でUV照射処理された用紙Pを排紙する排紙部24とで構成される。
【0039】
〈給紙部〉
給紙部12は、給紙台30に積載された用紙Pを1枚ずつ処理液付与部14に給紙する。給紙部12は、主として、給紙台30と、サッカー装置32と、給紙ローラ対34と、フィーダボード36と、前当て38と、給紙ドラム40とで構成される。
【0040】
用紙Pは、多数枚が積層された束の状態で給紙台30に載置される。給紙台30は、図示しない給紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。給紙台昇降装置は、給紙台30に積載された用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、束の最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、給紙台30を昇降させる。
【0041】
シート状媒体としての用紙Pは、特に限定されないが、一般のオフセット印刷などで使用される汎用の印刷用紙(いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする用紙)を用いることができる。本例では塗工紙が用いられる。塗工紙は、一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、微塗工紙などが好適に用いられる。
【0042】
給紙部12においては、給紙台30の上に積載された用紙Pは、サッカー装置32によって上から順に1枚ずつ引き上げられて、給紙ローラ対34に給紙される。給紙ローラ対34に給紙された用紙Pは、その給紙ローラ対34を構成する上下一対のローラ34A、34Bによって前方に送り出され、フィーダボード36の上に載置される。フィーダボード36の上に載置された用紙Pは、フィーダボード36の搬送面に設けられたテープフィーダ36Aによって搬送される。そして、その搬送過程でリテーナ36Bによってフィーダボード36の搬送面に押し付けられ、凹凸が矯正される。フィーダボード36によって搬送された用紙Pは、先端が前当て38に当接されることにより、傾きが矯正され、その後、給紙ドラム40に受け渡される。そして、その給紙ドラム40によって処理液付与部14へと搬送される。
【0043】
〈処理液付与部〉
処理液付与部14は、用紙Pの表面(画像記録面)に所定の処理液を付与する。この処理液付与部14は、主として、用紙Pを搬送する処理液付与ドラム42と、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pの印刷面に所定の処理液を付与する処理液付与ユニット44とで構成される。
【0044】
なお、本例では、処理液をローラ塗布する構成としているが、処理液を付与する方法は、これに限定されるものではない。この他、インクジェットヘッドを用いて付与する構成やスプレーにより付与する構成を採用することもできる。
【0045】
処理液付与部14においては、給紙部12の給紙ドラム40から受け渡された用紙Pは、処理液付与ドラム42で受け取られる。処理液付与ドラム42は、用紙Pの先端をグリッパ42Aで把持して、回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けて搬送する。この搬送過程で塗布ローラ44Aが用紙Pの表面に押圧当接され、用紙Pの表面に処理液が塗布される。
【0046】
ここで、この用紙Pの表面に塗布する処理液は、後段の画像記録部18で用紙Pに打滴する水性UVインク中の色材を凝集させる機能を有する処理液が塗布される。このような処理液を用紙Pの表面に塗布して水性UVインクを打滴することにより、汎用の印刷用紙を用いた場合であっても、着弾干渉等を起こすことなく、高品位な印刷を行うことができる。
【0047】
〈処理液乾燥処理部〉
処理液乾燥処理部16は、表面に処理液が付与された用紙Pを乾燥処理する。この処理液乾燥処理部16は、主として、用紙Pを搬送する処理液乾燥処理ドラム46と、用紙搬送ガイド48と、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pの印刷面に熱風を吹き当てて乾燥させる処理液乾燥処理ユニット50とで構成される。
【0048】
処理液乾燥処理部16においては、以上のように構成される。処理液付与部14の処理液付与ドラム42から受け渡された用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46で受け取られる。処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの先端をグリッパ46Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。この際、処理液乾燥処理ドラム46は、用紙Pの表面(処理液が塗布された面)を内側に向けて搬送する。用紙Pは、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される過程で処理液乾燥処理ドラム46の内側に設置された処理液乾燥処理ユニット50から熱風が表面に吹き当てられて、乾燥処理される。すなわち、処理液中の溶媒成分が除去される。これにより、用紙Pの表面にインク凝集層が形成される。
【0049】
〈画像記録部〉
画像記録部18は、用紙Pの印刷面にC、M、Y、Kの各色のインク(水性UVインク)の液滴を打滴して、用紙Pの印刷面にカラー画像を描画する。この画像記録部18は、主として、用紙Pを搬送する搬送体の一例としての画像記録ドラム52と、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pを押圧して、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に密着させる押圧体の一例としての用紙押さえローラ54と、用紙PにC、M、Y、Kの各色のインク滴を吐出するインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kと、用紙Pに記録された画像を読み取るインラインセンサ58と、インクミストを捕捉するミストフィルタ60と、ドラム冷却ユニット62とで構成される。
【0050】
画像記録ドラム52は、処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取り、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52は、円筒状に形成され、図示しないモータに駆動されて回転する。画像記録ドラム52の外周面上には、グリッパ52Aが備えられ、このグリッパ52Aによって用紙Pの先端が把持される。画像記録ドラム52は、このグリッパ52Aによって用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pを周面に巻き掛けながら、インク乾燥処理部20へと用紙Pを搬送する。また、画像記録ドラム52は、その周面に多数の吸着孔(図示せず)が所定のパターンで形成される。画像記録ドラム52の周面に巻き掛けられた用紙Pは、この吸着孔から吸引されることにより、画像記録ドラム52の周面に吸着保持されながら搬送される。これにより、高い平滑性をもって用紙Pを搬送することができる。
【0051】
なお、この吸着孔からの吸引は一定の範囲でのみ作用し、所定の吸引開始位置から所定の吸引終了位置との間で作用する。吸引開始位置は、用紙押さえローラ54の設置位置に設定され、吸引終了位置は、インラインセンサ58の設置位置の下流側に設定される(たとえば、インク乾燥処理部20に用紙を受け渡す位置に設定される。)。すなわち、少なくともインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの設置位置(画像記録位置)とインラインセンサ58の設置位置(画像読取位置)では、用紙Pが画像記録ドラム52の周面に吸着保持されるように設定される。
【0052】
なお、用紙Pを画像記録ドラム52の周面に吸着保持させる機構は、上記の負圧による吸着方法に限らず、静電吸着による方法を採用することもできる。
【0053】
また、本例の画像記録ドラム52は、外周面上の2カ所にグリッパ52Aが配設され、1回の回転で2枚の用紙Pが搬送できるように構成されている。画像記録ドラム52と処理液乾燥処理ドラム46は、互いの用紙Pの受け取りと受け渡しのタイミングが合うように、回転が制御される。すなわち、同じ周速度となるように駆動されるとともに、互いのグリッパの位置が合うように駆動される。
【0054】
用紙押さえローラ54は、画像記録ドラム52の用紙受取位置(処理液乾燥処理ドラム46から用紙Pを受け取る位置)の近傍に配設される。この用紙押さえローラ54は、ゴムローラで構成され、画像記録ドラム52の周面に押圧当接させて設置される。処理液乾燥処理ドラム46から画像記録ドラム52受け渡された用紙Pは、この用紙押さえローラ54を通過することによりニップされ、画像記録ドラム52の周面に密着させられる。
【0055】
以下、本発明の搬送体(搬送ドラム)の一例としての画像記録ドラム52および本発明の押圧体(押圧ローラ)の一例としての用紙押さえローラ54の構成の詳細について説明する。
【0056】
図3〜図5に示すように、画像記録ドラム52は、軸心部に回転軸521が固着されており、この回転軸521が図1に示すインクジェット記録装置1に取り付けられた軸受53で支承されている。
【0057】
図3、図4、および図7に示すように、画像記録ドラム52の周面の吸着面522には、吸着孔520が多数開口した吸着孔形成領域522Aと吸着孔520が設けられていない吸着孔非形成領域522Bとが設けられている。吸着孔非形成領域522Bは、画像形成ドラム52の軸線方向中央部と軸線方向両端部とに1箇所ずつ、軸線方向中央部と軸線方向両端部との間にも1箇所ずつ、計5箇所、画像形成ドラム52の周方向に沿って設けられている。
【0058】
画像記録ドラム52の内側には、吸着孔520と連通するとともに、搬送ドラム52の回転軸521の内部を通って画像記録ドラム52の外側に位置する真空ポンプに連通する真空流路が形成されている。
【0059】
図4に示すように、画面記録ドラム52は、外側の面が吸着面522とされる吸着シート523と、吸着シート523の内側に設けられ、吸着孔形成領域522Aに開口した吸着孔520と連通する吸着溝525が設けられた中間シート524と、吸着シート523および中間シート524によって覆われるドラム本体526と、を有する。ドラム本体526は本発明の胴に相当する。
【0060】
以下、吸着シート523について説明する。
図4および図7に示すように、吸着シート523には、吸着孔形成領域522Aと吸着孔非形成領域522Bとが設けられ、吸着孔形成領域522Aには吸着孔520が多数形成されている。したがって、吸着シート523を中間シート524と重ねた状態において、図7に示すように吸着孔520は吸着溝525に連通する。吸着孔52の形状は、図7に示すように用紙Pの搬送方向(矢印F)に長い楕円であってもよく、真円であってもよい。また、六角形のような多角形であってもよい。吸着孔520の配置は図7に示すように隣接する周方向の位置が半ピッチずつずれた千鳥状が好ましい。また、吸着孔520の直径(多角形の場合は差渡し)は、必要とされる吸着力の大きさにもよるが、0.5mm〜2mm程度が好ましい。
【0061】
吸着シート523は、吸着圧力によってへこまない程度の剛性を有すると共に、ドラム本体526に巻回して密着させられるだけの柔軟性が必要である。したがって、吸着シート523の厚みは、材質によって変動するが0.1mm〜0.5mm程度が好ましい。
【0062】
以下、中間シート524について説明する。
図4および図6に示すように、吸着溝525は、画面記録ドラム52の軸線に対して平行に設けられているとともに、吸着溝525の一端または両端には、吸着溝525よりも狭幅であって本発明の流路制御部の一例である絞り部525Aが設けられている。絞り部525Aの幅は吸着溝525の幅の1/4以下とされている。
【0063】
絞り部525Aの幅は0.2mm〜3.0mmの範囲が好ましく、1.0mm〜2.0mmの範囲がより好ましい。また、絞り部525Aの軸方向の長さは2.0mm〜10.0mmの範囲が好ましい。
【0064】
中間シート524は、薄ければ薄いほど少ない負圧で高い吸着力を得られるが、中間シート524があまり薄いと、吸着孔520から吸引した紙粉、ごみ、インクなどの異物によって吸着溝525や絞り部525Aが閉塞しやすくなるから、中間シート524の厚みは0.05mm〜0.5mm程度が好ましい。
【0065】
一方、図6に示すように、吸着溝525は、複数の用紙Pのサイズに対応するように異なる長さのものの組み合わせとして形成されている。図6に示す例では、吸着溝525は、4種類の用紙幅に対応するように形成されている。吸着溝525のピッチは50mm以下が好ましい。
【0066】
図7に示すように、吸着シート523は、中間シート524に重ねた状態において、吸着孔形成領域522Aが吸着溝525を覆い、吸着孔非形成領域522Bが絞り部525Aを覆うように形成されている。したがって、吸着シート524と中間シート526とを重ねた状態において、吸着孔520は吸着溝525に連通すると共に、絞り部525Aは、吸着孔非形成領域522Bで覆われて外気には直接には連通しない。
【0067】
図5に示すように、ドラム本体526における絞り部525Aに対応する位置には、絞り部525Aに連通するとともに前記真空流路の一部を構成する吸引口258がドラム本体526の周方向に沿って軸方向に5個設けられている。図6および図7において、二点差線は吸引口528の位置を示す。なお、図7に示すように吸引口528の幅は絞り部525Aの幅の略1/2とされている。また、ドラム本体526には、中間シート524および吸着シート523を把持するためのグリッパ527が設けられ、ドラム本体526を挟んでグリッパ527の反対側には、グリッパ527で把持された中間シート524および吸着シート523に、ドラム本体526の周方向に沿って張力を付加する引張機構(図示せず。)が設けられている。
【0068】
画像記録ドラム52は以下の手順によって組み立てられる。
先ず、中間シート522の絞り部525Aの位置とドラム本体526の吸引口528の位置とを合わせて中間シート522をドラム本体526に巻きかけて固定する。次いで、吸着シート523の吸着孔非形成領域522Bが中間シート524の絞り部525Aに重なるように中間シート524を吸着シート523に重ね合わせ、固定する。
【0069】
画像記録ドラム52においては、吸着溝525は吸着孔520を介して外気に直接連通している一方、絞り部525Aは、吸着孔非形成領域522Bによって覆われて外気とは直接には連通していない。また、絞り部525Aの幅は吸着溝525の幅の1/4以下である。絞り部525Aは吸着溝525と吸着シート523とによって形成される流路において圧力損失を生じさせる機能を有する。したがって、画像吸着ドラム52の吸着孔形成領域522Aの一部の領域において用紙Pを吸着搬送する場合においては、吸着孔形成領域522Aにおける用紙Pが吸着されていない領域においても、絞り部525Aが、前記領域に存在する吸着孔520から真空系に外気を吸引する際の抵抗として作用する。これにより、吸着孔形成領域522Aに開口した吸着孔520から形成ドラム52の内部の真空流路に向かって外気が吸い込まれる流れに抵抗が生じるから、吸着面522の一部の領域にのみ用紙Pが吸着されているか、または吸着面522に用紙Pが全く吸着されていない場合においても、吸着面522への用紙Pの吸着力が大幅に低下するのを効果的に防止できる。
【0070】
一方、用紙押さえローラ54は、本発明の押圧ローラの一例であって、図1に示すように、押圧機構541によって画像記録ドラム52の吸着面522に押圧されるようになっており、図8に示すように、吸着面522における吸着孔非形成領域522Bに対応する位置に設けられた大径部54Aと、大径部54Aと同心であって大径部54Aよりも小さな外径を有する小径部54Bと、を有する。大径部54Aは、本発明における強押圧部の一例であり、小径部54Bは本発明における弱押圧部の一例である。ここで、前述のように、吸着孔非形成領域522Bは、画像形成ドラム52の軸線方向中央部と軸線方向両端部とに1箇所ずつ、軸線方向中央部と軸線方向両端部との間にも1箇所ずつ、計5箇所、画像形成ドラム52の周方向に沿って設けられているから、図8に示す例においては、大径部54Aもまた、用紙押さえローラ54の軸線方向中央部と軸線方向両端部とに1箇所ずつ、軸線方向中央部と軸線方向両端部との間にも1箇所ずつ、計5箇所、用紙押さえローラ54の周方向に沿って設けられている。したがって、用紙押さえローラ54を吸着面522に押圧したときに、吸着孔非形成領域522Bは大径部54Aで押圧され、吸着孔形成領域522Aは小径部522Bで押圧されるから、吸着孔非形成領域522Bは、用紙押さえローラ54によって吸着孔形成領域522Aよりもより強く押圧される。これにより、吸着孔非形成領域522Bにおける吸着面522からの用紙Pの浮き上がりを防止することができる。
【0071】
なお、図8に示す例では、大径部54Aの幅a1は、吸着孔非形成領域522Bの幅a2の2倍〜3倍とされている。これにより、吸着孔非形成領域522Bにおける吸着面522からの用紙Pの浮き上がりを更に確実に防止することができる。
【0072】
なお、図8に示す例において、大径部54Aの幅a1は、吸着孔非形成領域522Bの幅a2よりも小さくすることにより、吸着孔非形成領域522Bのみならず吸着孔形成領域522Aも用紙押さえローラ54の大径部54Aで押圧することによる吸着孔形成領域522Aに過大な力が作用することによる吸着孔形成領域522Aや用紙Pの損傷を防止できる。
【0073】
一方、用紙押さえローラ54においては、図9に示すように、大径部54Aのうち、用紙押さえローラ54の軸線方向中央部に位置するものは、他の大径部54Aよりも大きな幅とすることができる。但し、図9に示す例において、搬送しようとする用紙Pのうち、最も幅の大きなものの幅をLM、最も幅の小さなものの幅をLm、軸線方向中央部に位置する大径部54Aの幅をaとすると、幅aは、以下の式:
0.2LM≦a≦0.6Lm
を満たすことが好ましい。
【0074】
軸線方向中央部に位置する大径部54Aの幅aが上記の関係式を満たせば、最も幅の広い用紙Pにおいても、最も幅の狭い用紙Pにおいても、用紙Pの幅方向中央部に生じた凹凸が幅法王両端部に押しやられる。これにより、幅の広い用紙Pも幅の狭い用紙Pも矢印Fの方向に安定に搬送できる。
【0075】
また、図8および図9に示す例において、用紙押さえローラ54の大径部54Aと小径部54Bとの間の段差の高さをdとすると、段差の高さdは、画像記録ドラム52で用紙Pを搬送する際の用紙Pから弱押圧部たる小径部54Bまでの距離とも言い換えられる。
段差の高さdは、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kにおけるインク吐出面と画像記録ドラム52で搬送される用紙Pまでの距離をTdとすると、以下の式:
0<d<Td
を満たすように設定されている。
用紙押さえローラ54においてこのように段差の高さdを設定すると、用紙押さえローラ54と用紙Pとの距離dは0より大きいから、用紙Pにおける用紙押さえローラ54の小径部54Bに対応する領域は用紙押さえローラ54によっては押圧されない非押圧領域となる。したがって、用紙Pに凹凸がある場合においては、前記凹凸は前記非押圧領域に押しやられるから、前記押圧に起因する皴の発生が効果的に防止される。また、距離dは、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kのインク吐出面と用紙Pとの距離Tdよりも小さいから、用紙Pと画像記録ドラム52の吸着面522との間に距離Td以上の大きさの浮きが生じた場合においても、前記浮きは、用紙押さえローラ54によって高さd以下に押さえ込まれるから、用紙Pがインク吐出面に接触することが防止される。
【0076】
4台のインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔をもって配置される。このインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、用紙幅に対応したラインヘッドで構成され、ノズル面が画像記録ドラム52の周面に対向するように配置される。各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kは、ノズル面に形成されたノズル列から、画像記録ドラム52に向けてインクの液滴を吐出することにより、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに画像を記録する。
【0077】
なお、上記のように、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kから吐出させるインクは、水性UVインクが用いられる。水性UVインクは、打滴後に紫外線(UV)を照射することにより、硬化させることができる。
【0078】
インラインセンサ58は、画像記録ドラム52による用紙Pの搬送方向に対して、最後尾のインクジェットヘッド56Kの下流側に設置され、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kで記録された画像を読み取る。このインラインセンサ58は、たとえば、ラインスキャナで構成され、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pからインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって記録された画像を読み取る。
【0079】
ミストフィルタ60は、最後尾のインクジェットヘッド56Kとインラインセンサ58との間に配設され、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉する。このように、画像記録ドラム52の周辺の空気を吸引してインクミストを捕捉することにより、インラインセンサ58へのインクミストの進入を防止でき、読み取り不良等の発生を防止できる。
【0080】
ドラム冷却ユニット62は、画像記録ドラム52に冷風を吹き当てて、画像記録ドラム52を冷却する。このドラム冷却ユニット62は、主として、エアコン(図示せず)と、そのエアコンから供給される冷気を画像記録ドラム52の周面に吹き当てるダクト62Aとで構成される。
【0081】
ここで、画像記録ドラム52を冷却する温度は、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度(特にノズル面の温度)との関係で定まり、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの温度よりも低い温度となるように冷却される。これにより、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに結露が生じるのを防止することができる。すなわち、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kよりも画像記録ドラム52の温度を低くすることにより、画像記録ドラム側に結露を誘発することができ、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに生じる結露(特にノズル面に生じる結露)を防止することができる。
【0082】
画像記録部18においては、処理液乾燥処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から受け渡された用紙Pは、画像記録ドラム52で受け取られる。画像記録ドラム52は、用紙Pの先端をグリッパ52Aで把持して、回転することにより、用紙Pを搬送する。画像記録ドラム52に受け渡された用紙Pは、まず、用紙押さえローラ54を通過することにより、画像記録ドラム52の周面に密着される。これと同時に画像記録ドラム52の吸着穴から吸引されて、画像記録ドラム52の外周面上に吸着保持される。用紙Pは、この状態で搬送されて、各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kを通過する。そして、その通過時に各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56KからC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が表面に打滴されて、表面にカラー画像が描画される。用紙Pの表面にはインク凝集層が形成されているので、フェザリングやブリーディング等を起こすことなく、高品位な画像を記録することができる。
【0083】
インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって画像が記録された用紙Pは、次いで、インラインセンサ58を通過する。そして、そのインラインセンサ58の通過時に表面に記録された画像が読み取られる。この記録画像の読み取りは必要に応じて行われ、読み取られた画像から吐出不良等の検査が行われる。読み取りを行う際は、画像記録ドラム52に吸着保持された状態で読み取りが行われるので、高精度に読み取りを行うことができる。また、画像記録直後に読み取りが行われるので、たとえば、吐出不良等の異常を直ちに検出することができ、その対応を迅速に行うことができる。これにより、無駄な記録を防止できるとともに、損紙の発生を最小限に抑えることができる。
【0084】
この後、用紙Pは、吸着が解除された後、インク乾燥処理部20へと受け渡される。
【0085】
〈インク乾燥処理部〉
インク乾燥処理部20は、画像記録後の用紙Pを乾燥処理し、用紙Pの表面に残存する液体成分を除去する。インク乾燥処理部20は、画像が記録された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pを乾燥処理するインク乾燥処理ユニット68とで構成される。
【0086】
チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22、排紙部24において共通して使用される用紙搬送機構であり、画像記録部18から受け渡された用紙Pを受け取って、排紙部24まで搬送する。
【0087】
チェーンガイドは、所定位置に配置されて、チェーングリッパ64の備えるチェーン64Cが所定の経路を走行するようにガイドする。チェーンガイドは、第1水平搬送経路70Aと、傾斜搬送経路70Bと、第2水平搬送経路70Cとで構成される。
【0088】
インク乾燥処理部20においては、画像記録部18の画像記録ドラム52から受け渡された用紙Pは、チェーングリッパ64で受け取られる。チェーングリッパ64は、用紙Pの先端をグリッパ64Dで把持して、平面状のガイドプレート72に沿わせて用紙Pを搬送する。チェーングリッパ64に受け渡された用紙Pは、まず、第1水平搬送経路70Aを搬送される。この第1水平搬送経路70Aを搬送される過程で用紙Pは、チェーングリッパ64の内部に設置されたインク乾燥処理ユニット68によって乾燥処理が施される。すなわち、表面(画像記録面)に熱風が吹き当てられて、乾燥処理が施される。この際、用紙Pは、バックテンション付与機構66によってバックテンションが付与されながら乾燥処理が施される。これにより、用紙Pの変形を抑えながら乾燥処理することができる。
【0089】
〈UV照射処理部〉
UV照射処理部22は、水性UVインクを用いて記録された画像に紫外線(UV)を照射して、画像を定着させる。このUV照射処理部22は、主として、乾燥処理された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pにバックテンションを付与するバックテンション付与機構66と、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに紫外線を照射するUV照射ユニット74とで構成される。
【0090】
チェーングリッパ64とバックテンション付与機構66は、インク乾燥処理部20及び排紙部24と共に共通して使用される。
【0091】
UV照射処理部22においては、チェーングリッパ64に搬送されてインク乾燥処理部20で乾燥処理が施された用紙Pは、次いで、傾斜搬送経路70Bを搬送される。この傾斜搬送経路70Bを搬送される過程で用紙Pは、チェーングリッパ64の内部に設置されたUV照射ユニット74によりUV照射処理が施される。
【0092】
〈排紙部〉
排紙部24は、一連の画像記録処理が行われた用紙Pを回収する。この排紙部24は、主として、UV照射された用紙Pを搬送するチェーングリッパ64と、用紙Pを積み重ねて回収する排紙台76とで構成される。
【0093】
上記のように、チェーングリッパ64は、インク乾燥処理部20及びUV照射処理部22と共に共通して使用される。チェーングリッパ64は、排紙台76の上で用紙Pを開放し、排紙台76の上に用紙Pをスタックさせる。
【0094】
排紙台76は、チェーングリッパ64から開放された用紙Pを積み重ねて回収する。この排紙台76には、用紙Pが整然と積み重ねられるように、用紙当て(前用紙当て、後用紙当て、横用紙当て等)が備えられる(図示せず)。
【0095】
また、排紙台76は、図示しない排紙台昇降装置によって昇降可能に設けられる。排紙台昇降装置は、排紙台76にスタックされる用紙Pの増減に連動して、その駆動が制御され、最上位に位置する用紙Pが常に一定の高さに位置するように、排紙台76を昇降させる。
【0096】
〈制御部〉
図2に示すように、インクジェット記録装置1は、システムコントローラ100、通信部102、画像メモリ104、搬送制御部110、給紙制御部112、処理液付与制御部114、処理液乾燥制御部116、画像記録制御部118、インク乾燥制御部120、UV照射制御部122、排紙制御部124、操作部130、表示部132等が備えられる。
【0097】
システムコントローラ100は、インクジェット記録装置1の各部を統括制御する制御手段として機能するとともに、各種演算処理を行う演算手段として機能する。このシステムコントローラ100は、CPU、ROM、RAM等を備えており、所定の制御プログラムに従って動作する。ROMには、このシステムコントローラ100が、実行する制御プログラム、及び、制御に必要な各種データが格納される。
【0098】
通信部102は、所要の通信インターフェースを備え、その通信インターフェースと接続されたホストコンピュータとの間でデータの送受信を行う。
【0099】
画像メモリ104は、画像データを含む各種データの一時記憶手段として機能し、システムコントローラ100を通じてデータの読み書きが行われる。通信部102を介してホストコンピュータから取り込まれた画像データは、この画像メモリ104に格納される。
【0100】
搬送制御部110は、インクジェット記録装置1における用紙Pの搬送系を制御する。すなわち、給紙部12におけるテープフィーダ36A、前当て38、給紙ドラム40の駆動を制御するとともに、処理液付与部14における処理液付与ドラム42、処理液乾燥処理部16における処理液乾燥処理ドラム46、画像記録部18における画像記録ドラム52の駆動を制御する。また、インク乾燥処理部20、UV照射処理部22及び排紙部24で共通して用いられるチェーングリッパ64及びバックテンション付与機構66の駆動を制御する。
【0101】
搬送制御部110は、システムコントローラ100からの指令に応じて、搬送系を制御し、給紙部12から排紙部24まで滞りなく用紙Pが搬送されるように制御する。
【0102】
給紙制御部112は、システムコントローラ100からの指令に応じて給紙部12を制御する。具体的には、サッカー装置32及び給紙台昇降機構等の駆動を制御して、給紙台30に積載された用紙Pが、重なることなく1枚ずつ順に給紙されるように制御する。
【0103】
処理液付与制御部114は、システムコントローラ100からの指令に応じて処理液付与部14を制御する。具体的には、処理液付与ドラム42によって搬送される用紙Pに処理液が塗布されるように、処理液付与ユニット44の駆動を制御する。
【0104】
処理液乾燥制御部116は、システムコントローラ100からの指令に応じて処理液乾燥処理部16を制御する。具体的には、処理液乾燥処理ドラム46によって搬送される用紙Pが乾燥処理されるように、処理液乾燥処理ユニット50の駆動を制御する。
【0105】
画像記録制御部118は、システムコントローラ100からの指令に応じて画像記録部18を制御する。具体的には、画像記録ドラム52によって搬送される用紙Pに所定の画像が記録されるように、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの駆動を制御する。また、記録された画像が読み取られるように、インラインセンサ58の動作を制御する。
【0106】
インク乾燥制御部120は、システムコントローラ100からの指令に応じてインク乾燥処理部20を制御する。具体的には、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに熱風が送風されるようにインク乾燥処理ユニット68の駆動を制御する。
【0107】
UV照射制御部122は、システムコントローラ100からの指令に応じてUV照射処理部22を制御する。具体的には、チェーングリッパ64によって搬送される用紙Pに紫外線が照射されるようにUV照射ユニット74の駆動を制御する。
【0108】
排紙制御部124は、システムコントローラ100からの指令に応じて排紙部24を制御する。具体的には、排紙台昇降機構等の駆動を制御して、排紙台76に用紙Pがスタックされるように制御する。
【0109】
操作部130は、所要の操作手段(たとえば、操作ボタンやキーボード、タッチパネル等)を備え、その操作手段から入力された操作情報をシステムコントローラ100に出力する。システムコントローラ100は、この操作部130から入力された操作情報に応じて各種処理を実行する。
【0110】
表示部132は、所要の表示装置(たとえば、LCDパネル等)を備え、システムコントローラ100からの指令に応じて所要の情報を表示装置に表示させる。
【0111】
上記のように、用紙に記録する画像データは、ホストコンピュータから通信部102を介してインクジェット記録装置1に取り込まれる。取り込まれた画像データは、画像メモリ104に格納される。
【0112】
システムコントローラ100は、この画像メモリ104に格納された画像データに所要の信号処理を施してドットデータを生成する。そして、生成したドットデータに従って画像記録部18の各インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kの駆動を制御し、その画像データが表す画像を用紙に記録する。
【0113】
ドットデータは、一般に画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(たとえば、RGB8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置1で使用するインクの各色のインク量データに変換する処理である(本例では、C、M、Y、Kの各色のインク量データに変換する。)。ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色のインク量データに対して誤差拡散等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。
【0114】
システムコントローラ100は、画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って各色のドットデータを生成する。そして、生成した各色のドットデータに従って、対応するインクジェットヘッドの駆動を制御することにより、画像データが表す画像を用紙に記録する。
【0115】
《作用》
以下、実施形態1のインクジェット記録装置1の作用について説明する。給紙部12から給紙され、処理液付与部14で処理液が付与され、処理液乾燥処理部16で乾燥処理が施された用紙Pは、処理液嵌挿処理部16の処理液乾燥処理ドラム46から画像記録部18における画像記録ドラム52に受け渡される。画像記録部18においは、用紙Pは、画像記録ドラム52に吸着保持されると共に用紙押さえローラ54または用紙押さえベルト55で押圧された状態でインクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kに向かって搬送される。そして、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kによって表面にC、M、Y、Kの各色のインクの液滴が打滴され、画像が記録される。
【0116】
画像記録部18で画像が記録された用紙Pは、インク乾燥処理部20に送られてインクが乾燥処理され、UV照射処理部22でUV照射されてインクが効果処理された後、排紙部24に排紙される。
【0117】
(2)実施形態2
実施形態2に係るインクジェット記録装置は、画像記録部18において用紙押さえローラ54に代えて用紙押さえベルト55を使用した以外は、図1に示す実施形態1のインクジェット記録装置1と同様の構成を有している。
【0118】
用紙押さえベルト55は、本発明の押圧ベルトの一例であり、図10に示すように、張架ローラ552と張架ローラ554とに張架されている。そして、用紙押さえベルト55は図1に示す押圧機構541によって画像記録ドラム22の吸着面522に押圧されている。そして、画像ドラム52が矢印Fで示す方向に回転すると、用紙押さえベルト55も従動回転する。
【0119】
図10に示すように、用紙押さえベルト55の外周面における吸着面522の吸着孔非形成領域522Bに対応する位置に、用紙押さえベルト55の周方向に沿って凸部55Aが5本形成されている。したがって、凸部55Aは、用紙押さえベルト55の幅方向中央部と幅方向両端部とに1箇所ずつ、幅方向中央部と幅方向両端部との間にも1箇所ずつ、計5箇所、用紙押さえベルト55の周方向に沿って設けられている。凸部55Aの高さdおよび幅a1については、実施形態1において図8および図9の用紙押さえローラ54の大径部54Aの幅a1、および大径部54Aと小径部54Bとの間の段差の高さdについて述べたとおりである。
【0120】
したがって、用紙押さえベルト55を吸着面522に押圧したときに、吸着孔非形成領域522Bはと粒55Aで押圧され、吸着孔形成領域522Aは小径部522Bで押圧されるから、吸着孔非形成領域522Bは、用紙押さえローラ54によって吸着孔形成領域522Aよりもより強く押圧される。これにより、吸着孔非形成領域522Bにおける吸着面522からの用紙Pの浮き上がりを防止することができる。
【0121】
また、用紙押さえローラ54と同様、用紙押さえベルト55においても、幅方向中央部に位置する凸部55Aの幅を、残り4本の凸部55Aの幅より大きくすることができる。この場合、幅方向中央部に位置する凸部55Aの幅aについては、搬送しようとする用紙Pのうち、最も幅の大きなものの幅をLM、最も幅の小さなものの幅をLmとすると、以下の式:
0.2LM≦a≦0.6Lm
を満たすことが好ましい。
【0122】
軸線方向中央部に位置する凸部55Aの幅aが上記の関係式を満たせば、最も幅の広い用紙Pにおいても、最も幅の狭い用紙Pにおいても、用紙Pの幅方向中央部に生じた凹凸が幅法王両端部に押しやられる。これにより、幅の広い用紙Pも幅の狭い用紙Pも矢印Fの方向に安定に搬送できる。
【0123】
また、用紙押さえベルト55の凸部55Aの高さをd、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kにおけるインク吐出面と画像記録ドラム52で吸着搬送される用紙Pとの距離をTdとすると、凸部の高さdは、以下の式:
0<d<Td
を満たすように設定されている。これにより、実施形態1のところで述べたのと同様の理由により、用紙Pに生じた凹凸に起因する皴の発生や用紙Pがインク吐出面に接触するトラブルの発生を避けることができる。
【0124】
(3)実施形態3
図11に示されるように、実施形態3に係るインクジェット記録装置3は、画像記録部18において、用紙押さえローラ54に代えて用紙押さえパッド57を使用した以外は、図1に示す実施形態1のインクジェット記録装置1と同様の構成を有している。用紙押さえパッド57は本発明の接触押圧体の一例である。
【0125】
図11(A)において矢印Aで示すように、用紙押さえパッド57は、画像記録ドラム52の吸着面522に押圧される。用紙押さえパッド57は本発明の接触押圧体の一例である。用紙押さえパッド57の吸着面522に当接する側の面は、フッ素樹脂や超高分子量ポリエチレン樹脂などの低摩擦材料で形成されている。図11(A)および図11(B)に示すように、用紙押さえパッド57の吸着孔非形成領域522Bに対応する位置には凸部57Aが形成されている。凸部55Aの高さおよびについては、実施形態1において図8および図9の用紙押さえローラ54の大径部54Aの幅a1、および大径部54Aと小径部54Bとの間の段差の高さdについて述べたとおりである。
【0126】
また、用紙押さえパッド57の凸部57Aの高さをd、インクジェットヘッド56C、56M、56Y、56Kにおけるインク吐出面と画像記録ドラム52で吸着搬送される用紙Pとの距離をTdとすると、凸部の高さdは、以下の式:
0<d<Td
を満たすように設定されている。これにより、実施形態1のところで述べたのと同様の理由により、用紙Pに生じた凹凸に起因する皴の発生や用紙Pがインク吐出面に接触するトラブルの発生を避けることができる。
【0127】
(4)実施形態4
図12に示されるように、実施形態4に係るインクジェット記録装置4は、画像記録部18において、用紙押さえローラ54に代えて用紙押さえノズル59を使用した以外は、図1に示すように実施形態1のインクジェット記録装置1と同様の構成を有している。
【0128】
図12(A)および図12(B)に示すように、用紙押さえノズル59は、画像記録ドラム52の軸方向に沿って設けられているとともに、吸着面522に向かって空気を噴き出す気流噴出孔59Aが用紙押さえノズル59の長手方向に沿って多数開口している。そして、吸着孔非形成領域522Bに相対する気流噴出孔59Aからは、吸着孔形成領域522Aに相対する気流噴出孔59Aよりも強い気流が噴出される。
【0129】
したがって、吸着孔非形成領域522Bは、気流噴出孔59Aから噴出する気流によって吸着孔形成領域522Aよりも強く押圧される。
【0130】
以上、本発明の搬送装置をインクジェット記録装置1〜4における画像記録部18に用いた例を示したが、本発明の搬送装置の用途は画像記録部18には限定されず、処理液付与部14、処理液乾燥処理部16のようにドラムで用紙Pを搬送する箇所にも使用される。また、画像形成ドラム52として用紙Pを真空圧で吸引することにより吸着面522に吸着させる形態について説明してきたが、画像形成ドラム52は、用紙Pを吸着面522に静電的に吸着するものであってもよい。
【実施例】
【0131】
(1)実施例1、2、比較例1、2
実施形態1に係るインクジェット記録装置1において、実施例1では図8に示す形態の用紙押さえローラ54を、実施例2では図9に示す形態の用紙押さえローラ54を用いた。また、比較例1では、軸線方向中央部のみに大径部54Aを形成した図13の形態の用紙押さえローラ54を用い、比較例2では、大径部を有しない円筒状の図14に示す用紙押さえローラ54を用いた。結果を表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
表1に示すように、実施例1では、通常画像およびインクの滴量が通常画像よりも多い強制画像においても用紙Pに皺が見られなかった。一方、実施例2では、強制画像では用紙Pに若干の皺が認められたものの、通常画像部では用紙Pに皺は見られなかった。
【0134】
これに対して比較例1では、通常画像において、用紙Pの中央部には皺は見られなかったものの、画像記録ドラム52の吸着孔非形成領域522Bに吸着された部分に小さな浮きが見られた。そして、比較例2では、通常画像においても用紙Pの中央部に皺の発生が見られた。
【0135】
したがって、図8および図9に示すように画像記録ドラム52の吸着孔非形成領域522Bに対応する部分に大径部54Aを形成した用紙押さえローラ54を用いることにより、用紙Pの皺の発生を効果的に防止することができることがわかる。
【符号の説明】
【0136】
1…インクジェット記録装置、12…給紙部、14…処理液付与部、16…処理液乾燥処理部、18…画像記録部、20…インク乾燥処理部、22…UV照射処理部、24…排紙部、30…給紙台、32…サッカー装置、34…給紙ローラ、36…フィーダボード、38…前当て、40…給紙ドラム、42…処理液付与ドラム、44…処理液付与ユニット、46…処理液乾燥処理ドラム、46A…グリッパ、48…用紙搬送ガイド、50…処理液乾燥処理ユニット、52…画像記録ドラム、54…用紙押さえローラ、54A…大径部、54B…小径部、55…用紙押さえベルト、55A…凸部、56C、56M、56Y、56K…インクジェットヘッド、57…用紙押さえパッド、57A…凸部、58…インラインセンサ、59…用紙押さえノズル、59A…気流噴出孔、60…ミストフィルタ、62…ドラム冷却ユニット、62A…ダクト、64…チェーングリッパ、64A…第1スプロケット、64B…第2スプロケット、64C…チェーン、64D…グリッパ、66…バックテンション付与機構、68…インク乾燥処理ユニット、74…UV照射ユニット、76…排紙台、100…システムコントローラ、522…吸着面、522A…吸着孔形成領域、522B…吸着孔非形成領域、523…吸着シート、524…中間シート、525…吸着溝、525A…絞り部、526…ドラム本体、528…吸引口、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状媒体を吸着して搬送する搬送体と、
前記シート状媒体を吸着する前記搬送体の吸着面に前記シート状媒体を押圧すると共に、前記吸着面の幅方向に複数箇所存在する前記吸着面の他の部分よりも吸着力が弱い部分を前記他の部分よりも強く押圧する押圧体と、
を備える
搬送装置。
【請求項2】
前記押圧体は、前記搬送体の吸着面に接触して押圧する接触押圧体であり、搬送体に接近した強押圧部と搬送体から離れた弱押圧部とが設けられている請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記接触押圧体は、搬送体に接触しつつ回転する回転押圧体である請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送体は軸線周りに回転する搬送ドラムであって、
前記搬送ドラムの吸着面は、前記搬送ドラムの軸方向に沿って、吸着孔が多数形成された吸着孔形成領域と、吸着孔が形成されていない吸着孔非形成領域とに区分されている請求項1〜3の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記押圧体は回転押圧体であって、
前記回転押圧体の強押圧部は、前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域を押圧し、前記回転押圧体の弱押圧部は、前記搬送ドラムの吸着孔形成領域を押圧する
請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記回転押圧体の強押圧部の幅は、前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域の幅よりも大きい請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記回転押圧体の強押圧部の幅は、前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域の幅よりも小さい請求項5に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記回転押圧体は押圧ローラであり、
前記押圧ローラには、前記回転押圧体における強押圧部である複数の大径部と、前記回転押圧体における弱押圧部であって前記大径部よりも小さな外径を有する小径部とが形成されている
請求項3〜7の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記回転押圧体は押圧ベルトであり、
前記押圧ベルトにおける前記シート状媒体を押圧する側の面には、前記押圧ベルトの回転方向に沿って複数の凸部が形成され、
前記押圧ベルトにおける凸部が形成された部分が、前記回転押圧体における強押圧部とされ、前記押圧ベルトにおける凸部が形成されていない部分が、前記回転押圧体における弱押圧部とされている
請求項3〜7の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記搬送ドラムは、
内側負圧部に通じる複数の吸引口を備え、この吸引口が外周面に周方向に沿って形成された胴と、
前記胴の外周面に装着されるとともに、軸方向に延出され、且つ前記胴における吸引口に対向する絞り部を有する吸着溝が前記胴の周方向に複数設けられた中間シートと、
前記中間シートの外側の面に装着されて前記吸着面を構成するとともに、前記吸着面における吸着孔形成領域に形成された吸着孔は前記吸着溝と連通し、前記吸着孔非形成領域は前記絞り部に対向する吸着シートと、
を備える請求項4〜7の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項11】
シート状媒体を吸着面に吸着して搬送する請求項1〜10の何れか1項に記載の搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送されるシート状媒体に液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
を備える画像形成装置。
【請求項12】
前記搬送装置として請求項2〜10の何れか1項に記載の搬送装置を備えるとともに、
前記搬送装置でシート状媒体を搬送する際の押圧体の弱押圧部と前記シート状媒体との距離をd、前記液滴吐出ヘッドの液滴吐出面と前記シート状媒体との距離をTdとすると、式:
0<d<Td
を満たすように前記距離dが設定されている請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記搬送装置における押圧体は、請求項8に記載の押圧ローラ、または請求項10に記載の押圧ベルトであって、
前記押圧ローラにおける大径部と小径部との間の段差の高さd、または前記押圧ベルトにおける凸部の高さdは、請求項12に記載の関係式を満たすように設定されている請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項1】
シート状媒体を吸着して搬送する搬送体と、
前記シート状媒体を吸着する前記搬送体の吸着面に前記シート状媒体を押圧すると共に、前記吸着面の幅方向に複数箇所存在する前記吸着面の他の部分よりも吸着力が弱い部分を前記他の部分よりも強く押圧する押圧体と、
を備える
搬送装置。
【請求項2】
前記押圧体は、前記搬送体の吸着面に接触して押圧する接触押圧体であり、搬送体に接近した強押圧部と搬送体から離れた弱押圧部とが設けられている請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記接触押圧体は、搬送体に接触しつつ回転する回転押圧体である請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送体は軸線周りに回転する搬送ドラムであって、
前記搬送ドラムの吸着面は、前記搬送ドラムの軸方向に沿って、吸着孔が多数形成された吸着孔形成領域と、吸着孔が形成されていない吸着孔非形成領域とに区分されている請求項1〜3の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記押圧体は回転押圧体であって、
前記回転押圧体の強押圧部は、前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域を押圧し、前記回転押圧体の弱押圧部は、前記搬送ドラムの吸着孔形成領域を押圧する
請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記回転押圧体の強押圧部の幅は、前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域の幅よりも大きい請求項5に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記回転押圧体の強押圧部の幅は、前記搬送ドラムの吸着孔非形成領域の幅よりも小さい請求項5に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記回転押圧体は押圧ローラであり、
前記押圧ローラには、前記回転押圧体における強押圧部である複数の大径部と、前記回転押圧体における弱押圧部であって前記大径部よりも小さな外径を有する小径部とが形成されている
請求項3〜7の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記回転押圧体は押圧ベルトであり、
前記押圧ベルトにおける前記シート状媒体を押圧する側の面には、前記押圧ベルトの回転方向に沿って複数の凸部が形成され、
前記押圧ベルトにおける凸部が形成された部分が、前記回転押圧体における強押圧部とされ、前記押圧ベルトにおける凸部が形成されていない部分が、前記回転押圧体における弱押圧部とされている
請求項3〜7の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記搬送ドラムは、
内側負圧部に通じる複数の吸引口を備え、この吸引口が外周面に周方向に沿って形成された胴と、
前記胴の外周面に装着されるとともに、軸方向に延出され、且つ前記胴における吸引口に対向する絞り部を有する吸着溝が前記胴の周方向に複数設けられた中間シートと、
前記中間シートの外側の面に装着されて前記吸着面を構成するとともに、前記吸着面における吸着孔形成領域に形成された吸着孔は前記吸着溝と連通し、前記吸着孔非形成領域は前記絞り部に対向する吸着シートと、
を備える請求項4〜7の何れか1項に記載の搬送装置。
【請求項11】
シート状媒体を吸着面に吸着して搬送する請求項1〜10の何れか1項に記載の搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送されるシート状媒体に液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、
を備える画像形成装置。
【請求項12】
前記搬送装置として請求項2〜10の何れか1項に記載の搬送装置を備えるとともに、
前記搬送装置でシート状媒体を搬送する際の押圧体の弱押圧部と前記シート状媒体との距離をd、前記液滴吐出ヘッドの液滴吐出面と前記シート状媒体との距離をTdとすると、式:
0<d<Td
を満たすように前記距離dが設定されている請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記搬送装置における押圧体は、請求項8に記載の押圧ローラ、または請求項10に記載の押圧ベルトであって、
前記押圧ローラにおける大径部と小径部との間の段差の高さd、または前記押圧ベルトにおける凸部の高さdは、請求項12に記載の関係式を満たすように設定されている請求項12に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−49567(P2013−49567A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189551(P2011−189551)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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