説明

搬送装置および記録装置

【課題】擦傷の発生を抑制できる搬送装置及び記録装置を提供することを目的とする。
【解決手段】一方の駆動ローラーが駆動し他方の従動ローラーが従動するローラー対を有して連続紙を搬送する搬送部を有するプリンターであって、駆動ローラーと共に駆動する駆動ギア28bと、駆動ギア28bと噛合することにより駆動力を伝達し従動ローラーを従動させる従動ギア31bと、駆動ローラーと従動ローラーとが協働して連続紙を挟持する第1の位置関係を有すると共に駆動ギア28bと従動ギア31bとが噛合して駆動力が伝達される第1モードと、駆動ローラーと従動ローラーとが上記第1の位置関係よりも離間する第2の位置関係を有する共に駆動ギア28bと従動ギア31bとの噛合が解除され駆動力が非伝達となる第2モードと、を切り替える切替装置と、を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置および記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ローラー対で用紙を搬送する搬送装置を備えるレーザープリンターが開示されている。この装置においては、搬送方向上流側と下流側との用紙搬送の速度差により用紙にたるみが生じ、当該たるみが画像読取部や画像形成部等において影響を与えて画質品質を低下させてしまうことを抑制するべく、当該ローラー対の下流側に位置する他の搬送手段によって搬送を開始された時点以降は、モーターから駆動ローラーへの電力供給を瞬時にカットし、駆動ローラーと従動ローラーとを共に連れ回り状態とする構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3140153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、画像等を記録した用紙の記録面に対する擦傷の発生による画像品質の低下が懸念される。
例えば、従来技術においては、ローラー対を連れ回り状態とさせているので、記録面側のローラーの周面で、記録面を擦ってしまう場合がある。また、ローラー対が圧接しているニップ状態を解除しないので、モーターからの電力供給をカットするときの瞬間的な負荷変動により、記録面とローラーの周面との間に摩擦が生じ、同様に記録面を擦ってしまう場合がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、擦傷の発生を抑制できる搬送装置及び記録装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、一方の第1ローラーが駆動し他方の第2ローラーが従動するローラー対を有して記録媒体を搬送する搬送装置であって、上記第1ローラーと共に駆動する第1ギアと、上記第1ギアと噛合することにより駆動力を伝達し上記第2ローラーを従動させる第2ギアと、上記第1ローラーと上記第2ローラーとが協働して上記記録媒体を挟持する第1の位置関係を有すると共に上記第1ギアと上記第2ギアとが噛合して駆動力が伝達される第1モードと、上記第1ローラーと上記第2ローラーとが上記第1の位置関係よりも離間する第2の位置関係を有する共に上記第1ギアと上記第2ギアとの噛合が解除され駆動力が非伝達となる第2モードと、を切り替える切替装置と、を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明は、第1モードと第2モードとを切り替える。第1モードのときは、第1ギアと第2ギアとが噛合し駆動力が伝達され、第1ローラーと第2ローラーとが記録媒体を挟持可能な位置関係を保ちながら同期して駆動するため両者の回転速度の差が殆どなくなることから、当該ローラー対で挟持される記録媒体に対する擦傷の発生が抑制される。一方、第2モードのときは、第1ローラーと第2ローラーとが離間してニップ状態が解除され、また、第1ギアと第2ギアとの噛合が解除されて駆動力が非伝達となるので、第2ローラーが第1ローラーに連れ回ることがなくなるため、記録媒体に対する擦傷の発生が抑制される。
【0007】
また、本発明においては、上記第2モードのときの上記第1ギアと上記第2ギアとの中心間距離は、上記第1ギアの歯先円半径と上記第2ギアの歯先円半径との合計よりも大きいという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、第2モードのときに、第1ギアと第2ギアとの歯先同士の接触を確実に回避して駆動力を非伝達とすることができる。
【0008】
また、本発明においては、上記第1ギア及び上記第2ギアの少なくともいずれか一方の歯先は、鋭角に形成されているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、第2モードから第1モードに切り替えるとき、第1ギアの歯先と第2ギアの歯先とが衝突してしまうことを抑制することができる。
【0009】
また、本発明においては、上記第2ローラーが移動することにより上記第2の位置関係が形成され、上記第1ローラーの摩擦係数が、上記第2ローラーの摩擦係数より小さいという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、第2モードのときに、第2ローラーは駆動しないが、第1ローラーが駆動している場合でも、第1ローラーの摩擦係数が小さいので、他の搬送手段による弊害となり難くすることができる。
【0010】
また、本発明においては、上記切替装置は、上記第2ローラーを上記第1ローラーに向けて付勢すると共に上記第2ギアを第1ギアに向けて付勢する付勢部材と、上記第2ローラーと上記第2ギアとを共に上記付勢に抗して移動させるカム機構と、を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、付勢されている第2ローラー及び第2ギアを共にカム機構で付勢に抗して移動させることにより第1モードから第2モードへ切り替えることができ、また、第2モードから第1モードへの切り替えは付勢部材の付勢により行うことができる。
【0011】
また、本発明においては、記録媒体に対し流体を噴射する記録ヘッドと、上記記録媒体を搬送する搬送装置と、を有する記録装置であって、上記搬送装置として、先に記載の搬送装置を有するという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、擦傷の発生を抑制して、画像品質の低下を抑制することができる。
【0012】
また、本発明においては、上記記録媒体を切断する切断装置を有し、上記切断する位置よりも上記記録媒体の搬送方向下流側に、上記ローラー対が配置されているという構成を採用する。
このような構成を採用することによって、本発明では、たるみを抑制して、記録媒体の切断精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態におけるプリンターを示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態における第2の搬送部を示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるカム機構を示す図である。
【図4】本発明の実施形態における第1の位置関係のときの駆動ギア及び従動ギアと、第2の位置関係のときの駆動ギア及び従動ギアとを示す図である。
【図5】本発明の実施形態における第2の搬送部のローラー対の両方が第2モードのときのプリンターを示す構成図である。
【図6】本発明の実施形態における第2の搬送部のローラー対の両方が第2モードのときのカム機構を示す図である。
【図7】本発明の実施形態における第2の搬送部のローラー対の一方が第1モードで他方が第2モードのときのプリンターを示す構成図である。
【図8】本発明の実施形態における第2の搬送部のローラー対の一方が第1モードで他方が第2モードのときのカム機構を示す図である。
【図9】本発明の別実施形態における駆動ギア及び従動ギアの少なくともいずれか一方の歯先を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るヒーターユニット及び記録装置の実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
本実施形態では、記録装置として、インクジェット式プリンター(以下、単にプリンターと称する)について例示する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態におけるプリンター10を示す構成図である。
プリンター10は、連続紙(記録媒体)11を搬送する搬送部(搬送装置)12と、連続紙11に対してインク(流体)を噴射して画像や文字等を記録する記録部13と、記録部13を経た連続紙11を切断する切断部(切断装置)14と、を有する。
【0016】
搬送部12は、連続紙11を繰り出す繰り出しローラー15を有する。繰り出しローラー15には、連続紙11が予めロール状に巻かれたロール体が装着され、このロール体は、繰り出しローラー15と一体回転する構成となっている。
記録部13は、繰り出しローラー15から繰り出された連続紙11を支持する支持板16を有する。支持板16の支持面16aは、繰り出しローラー15よりも高い位置に配置されている。
【0017】
搬送部12は、繰り出しローラー15と支持板16との間を中継する中継ローラー17を有する。中継ローラー17は、その周面の頂点が支持面16aと略同一の高さに位置するように配置されている。
記録部13は、連続紙11の搬送方向と直交する水平方向(以下、幅方向と称する:図1の紙面垂直方向)に往復移動可能なキャリッジ18を有する。キャリッジ18には、記録ヘッド19が搭載されている。記録ヘッド19は、キャリッジ18によって幅方向に走査しつつ支持面16aに支持された連続紙11に向かってインクを噴射し、画像や文字等を記録する所謂シリアル型インクジェットヘッドである。
【0018】
搬送部12は、記録部13よりも搬送方向下流側に、ローラー対21,22,23を有する。ローラー対21,22,23は、モーター24,25,26に対して駆動力伝達可能に連結された駆動ローラー(第1ローラー)27,28,29と、当該駆動ローラー27,28,29に対して連続紙11を挟んで対向するように配置された従動ローラー(第2ローラー)30,31,32とが、対をなすようにしてそれぞれ構成されている。
【0019】
ローラー対21,22,23は、駆動ローラー27,28,29と従動ローラー30,31,32との間で連続紙11を挟持し、駆動ローラー27,28,29が回転駆動することで、連続紙11に対して搬送方向下流側に向かう搬送力を付与する構成となっている。ローラー対21,22,23は、従動ローラー30,31,32の回転軸30a,31a,32aが付勢部材33,34,35によって、駆動ローラー27,28,29に近接する方向に付勢されることにより、駆動ローラー27,28,29と従動ローラー30,31,32との間で連続紙11を挟持する構成となっている。
【0020】
駆動ローラー27,28,29は、所定硬度の樹脂ローラーから形成されている。一方、従動ローラー30,31,32は、所定強度より硬度が小さいスポンジローラーから形成されている。また、駆動ローラー27,28,29の周面の摩擦係数は、従動ローラー30,31,32の摩擦係数より小さい構成となっている。また、回転軸27a,28a,29a及び回転軸30a,31a,32aには、それぞれ後述するギアが設けられておいり、搬送力を付与する場合は、対となったギアが噛合し、ローラー対21,22,23は、同期回転する構成となっている。
【0021】
切断部14は、ローラー対21とローラー対22との間に設けられている。切断部14は、幅方向に延在する不図示のガイド軸に沿って幅方向に往復移動可能なキャリッジ38を有する。キャリッジ38には、カッター39が固定されている。切断部14は、キャリッジ38を幅方向に連続紙11を横切るように移動させることにより、カッター39によって連続紙11の幅方向全域を切断し、切断位置を挟んだ上流側の部分と下流側の部分とを切り離す構成となっている。
【0022】
なお、切断位置より搬送方向上流側に位置するローラー対21を、第1の搬送部40と称する。また、切断位置より搬送方向下流側に位置するローラー対22,23を、第2の搬送部41と称する。第2の搬送部41は、切り離された連続紙11の下流側の部分を、搬送方向下流に向かって搬送し、排紙トレイ42に排紙する構成となっている。
【0023】
第2の搬送部41には、連続紙11の存在の有無を検出するセンサー43,44が設けられている。センサー43は、ローラー対22より下流側であって、ローラー対22の直近の位置に設けられている。センサー44は、ローラー対23より下流側であって、ローラー対23の直近の位置に設けられている。センサー43,44は、制御装置45と電気的に接続されている。制御装置45は、センサー43,44から出力される検出信号に基づいて、連続紙11の先端部(搬送方向下流側の端部)の搬送位置を検出することが可能な構成となっている。
【0024】
第1の搬送部40を構成するローラー対21は、駆動ローラー27と従動ローラー30との位置関係が変位不能に構成されている。したがって、ローラー対21は、連続紙11に対して常に挟持力を作用させる構成となっている。
一方、第2の搬送部41を構成するローラー対22,23は、駆動ローラー28,29と従動ローラー31,32との位置関係が変位可能に構成されている。これにより、第2の搬送部41を構成するローラー対22,23は、連続紙11に対して挟持力を作用させる状態と、連続紙11に対して挟持力を作用させない状態との間で相互に切り替え可能となっている。
【0025】
図2は、本発明の実施形態における第2の搬送部41を示す平面図である。
図2に示すように、従動ローラー31,32の回転軸31a,32aの両端部は、本体に固定された一対の本体フレーム11aの凹部11a1,11a2に配置されている。凹部11a1,11a2は、回転軸31a,32aに対応した幅で鉛直下方に所定深さで形成され、回転軸31a,32aの鉛直方向の移動をガイドする構成となっている。また、従動ローラー31,32の回転軸31a,32aの端部には、従動ギア(第2ギア)31b,32bが一体的に設けられている。
【0026】
一対の本体フレーム11aの幅方向外側には、カム機構46,47が対をなすように設けられている。一対のカム機構46,47は、互いに同一の構成を有し、一体で移動する構成となっている。そのため、以下の説明においては、一方のカム機構46の構成について、図3を参照して説明する。
【0027】
図3は、本発明の実施形態におけるカム機構46を示す図である。
図3に示すように、カム機構46は、略矩形板状をなすカム板48を有する。カム板48は、搬送方向に沿って配置され、また、不図示のガイドピン等に支持されて搬送方向に沿って移動自在な構成となっている。カム板48は、第2の搬送部41を構成するローラー対22,23の従動ローラー31,32の回転軸31a,32aを共に下方から支持する構成となっている。
【0028】
カム板48の上面48aは、回転軸31a,32aに対する当接面となっている。上面48aには、凹部49,50が搬送方向において間隔をあけて形成されている。凹部49,50は、底面49a,50aから上方に向かうほど搬送方向における開口幅が漸次拡大するテーパー形状を有する。凹部49,50のうち、搬送方向下流側に位置する凹部50の搬送方向における開口幅は、搬送方向上流側に位置する凹部49の搬送方向における開口幅よりも、相対的に大きくなるように形成されている。
【0029】
カム板48の底面には、搬送方向に沿ってラック51が形成されている。ラック51には、幅方向に延びる軸周りに回転自在なピニオン52が噛合している。ピニオン52は、移動モーター53とその駆動力を伝達可能に連結されている。移動モーター53は、制御装置45によって、正逆方向の回転及び回転量が制御される構成となっている。
【0030】
カム板48が移動し、底面49a,50aに、回転軸31a,32aが位置しているときは、駆動ローラー28,29の周面と従動ローラー31,32の周面とが圧接して、駆動ローラー28,29と従動ローラー31,32とが協働して連続紙11を挟持する第1の位置関係(図1参照)を有する。
また、カム板48が移動し、上面48aに、回転軸31a,32aが位置しているときは、駆動ローラー28,29の周面と従動ローラー31,32の周面との圧接が解除され、駆動ローラー28,29と従動ローラー31,32とが上記第1の位置関係よりも離間する第2の位置関係(後述する図5参照)を有する。
【0031】
図4は、本発明の実施形態における第1の位置関係のときの駆動ギア28b及び従動ギア31bと、第2の位置関係のときの駆動ギア28b及び従動ギア31bとを示す図である。
なお、駆動ローラー29の回転軸29aの端部には、同じ構成の駆動ギア29bが一体的に設けられているが、重複説明を避けるため、駆動ローラー28の駆動ギア28bと従動ローラー31の従動ギア31bとの関係についてのみ説明する。
【0032】
図4に示すように、駆動ローラー28の回転軸28aの端部には、駆動ギア(第1ギア)28bが一体的に設けられている。駆動ギア28bは、駆動ローラー28と共に駆動する構成となっている。駆動ギア28bの歯形状は、従動ローラー31の回転軸31aの端部に一体的に設けられた従動ギア31bの歯形状と略同一のインボリュート形状となっている。また、駆動ギア28b及び従動ギア31bの歯先は、鋭角に形成されており、歯先面積を小さくし、変位方向(鉛直方向)における歯先の衝突を低減させる構成となっている。
【0033】
図4(a)に示す第1の位置関係のときは、駆動ギア28bと従動ギア31bとが噛合して、駆動力が従動ローラー31に伝達される構成となっている。
図4(b)に示す第2の位置関係のときは、駆動ギア28bと従動ギア31bとの噛合が解除され、駆動力が従動ローラー31に非伝達となる構成となっている。
なお、第2の位置関係のときは、駆動ギア28bと従動ギア31bとの中心間距離L1は、駆動ギア28bの歯先円半径l1と従動ギア31bの歯先円半径l2との合計よりも大きくなるように設定している。換言すると、従動ギア31bの離間量が、駆動ギア28bと従動ギア31bとの噛合い量(有効歯たけ)より大きくなるように設定している。
【0034】
上述のように、カム機構46,47及び付勢部材34,35は、駆動ローラー28(29)と従動ローラー31(32)とが協働して連続紙11を挟持する第1の位置関係を有すると共に駆動ギア28b(29b)と従動ギア31b(32b)とが噛合して駆動力が伝達される第1モードと、駆動ローラー28(29)と従動ローラー31(32)とが上記第1の位置関係よりも離間する第2の位置関係を有する共に駆動ギア28b(29b)と従動ギア31b(32b)との噛合が解除され駆動力が非伝達となる第2モードと、を切り替える切替装置54(図3参照)を構成する。
【0035】
続いて、上記のように構成されたプリンター10の動作及び作用について図5〜図8を追加参照しつつ、特に、カッター39が連続紙11を切断することにより、連続紙11からカット紙が切り出される際に着目して説明する。
先ず、制御装置45は、第1の搬送部40におけるローラー対21の駆動ローラー27をモーター24によって回転駆動させる。そうすると、ローラー対21は、連続紙11を挟持した状態で、連続紙11に対し搬送方向下流側に向かう搬送力を付与する。これにより、連続紙11の先端部は、カッター39の配置位置を越えて、第2の搬送部41の配設位置に進入する。
【0036】
このとき、第2の搬送部41では、図5に示すように、ローラー対22,23を共に第2モードに切り替える。より詳しくは、図6に示すように、制御装置45は、移動モーター53によってカム板48を移動させる。カム板48が移動すると、回転軸31a,32aが、傾斜に沿って凹部49,50から脱出し、上面48aに乗り上げる。そうすると、駆動ローラー28,29の周面と従動ローラー31,32の周面との圧接が解除され、図5に示すように、駆動ローラー28,29と従動ローラー31,32とが離間する第2の位置関係を有する。また、図4(b)に示すように、駆動ギア28b,29bと従動ギア31b,32bとの噛合が解除され駆動力が非伝達となる。
【0037】
すなわち、連続紙11には、第1の搬送部40におけるローラー対21によって挟持され搬送方向下流側に向かう搬送力が付与される一方で、第2の搬送部41におけるローラー対22,23によって挟持されず搬送方向下流側に向かう搬送力が付与されることはない。換言すると、連続紙11には、切断位置を挟んだ両側において、複数箇所で挟持された状態で搬送力が付与されることはない。したがって、第1の搬送部40の挟持部位と第2の搬送部41の挟持部位との間において、搬送速度の差が生じても、連続紙11がこれらの挟持部位の間で搬送方向に引き伸ばされるような張力を受けたり、連続紙11がこれらの挟持部位の間でたるんでしまうことを回避させることができる。
【0038】
また、第2の搬送部41を第2モードとしているので、従動ローラー31,32が鉛直方向上側に駆動ローラー28,29から離間することによりニップ状態が解除され、また、駆動ギア28b,29bと従動ギア31b,32bとの噛合が解除されて駆動力が非伝達となるので、従動ローラー31,32が駆動ローラー28,29に連れ回ることがなくなるため、連続紙11に対する擦傷の発生が抑制される。さらに、第2モードのとき図4(b)に示すように、駆動ギア28bと従動ギア31bとの中心間距離L1は、駆動ギア28bの歯先円半径l1と従動ギア31bの歯先円半径l2との合計よりも大きくなるように設定しているので、駆動ギア28b,29bと従動ギア31b,32bとの歯先同士の接触を確実に回避して駆動力を非伝達とすることができ、連れ回りが確実になくなる。なお、第2モードのときに、従動ローラー31,32は駆動しないが、駆動ローラー28,29が駆動しているので、第1の搬送部40により搬送される連続紙11が駆動している駆動ローラー28,29に支持される状況が考えられる。このような場合でも、駆動ローラー28,29は摩擦係数が小さい樹脂ローラーからなるので、第1の搬送部40による搬送の弊害となり難くなっている。
【0039】
続いて、第2の搬送部41の配設位置に進入してきた連続紙11のカットするべき長さが短い場合、制御装置45は、第2の搬送部41に設けられた2つのセンサー43,44のうち、搬送方向上流側のセンサー43が連続紙11の先端部を検出した時点で、モーター24の駆動を停止させ、第1の搬送部40における搬送力の付与を停止させる。そして、第2の搬送部41において、図1に示すように、ローラー対22,23を共に第1モードに切り替える。
【0040】
より詳しくは、図3に示すように、制御装置45は、移動モーター53によってカム板48を移動させる。カム板48が移動すると、回転軸31a,32aは、付勢部材34,35によって下方に付勢されているので、上面48aから傾斜に沿って凹部49,50に没入し、底面49a,50aに位置する。そうすると、駆動ローラー28,29の周面と従動ローラー31,32の周面とが圧接し、図1に示すように、駆動ローラー28,29と従動ローラー31,32とが協働して連続紙11を挟持する第1の位置関係を有する。また、図4(a)に示すように、駆動ギア28b,29bと従動ギア31b,32bとが噛合する。このとき、駆動ギア28b,29bと従動ギア31b,32bとの歯先を鋭角としているので、噛合する際のギアの衝突を低減させることができる。
【0041】
次に、制御装置45は、第1の搬送部40のローラー対21及び第2の搬送部41のローラー対22で連続紙11を挟持した状態で、これらの挟持部位の間でカッター39を幅方向に移動させ、連続紙11を切断する。挟持部位の間では、たるみや引っ張りが低減されているので切断精度を高めることができる。
【0042】
その後、制御装置45は、第2の搬送部41におけるローラー対22,23のモーター25,26を駆動させる。第1モードのときは、駆動ギア28b,29bと従動ギア31b,32bとが噛合し駆動力が伝達され、駆動ローラー28,29と従動ローラー31,32とが第1の位置関係を保ちながら同期して駆動するため両者の回転速度の差が殆どなくなることから、ローラー対22,23で挟持される連続紙11に対する擦傷の発生が抑制される。この第2の搬送部41における搬送により、切り離されたカット紙は、排紙トレイ42に排紙されることとなる。
【0043】
他方、第2の搬送部41の配設位置に進入してきた連続紙11のカットするべき長さが長い場合、制御装置45は、第2の搬送部41に設けられた2つのセンサー43,44のうち、搬送方向下流側のセンサー44が連続紙11の先端部を検出した時点で、モーター24の駆動を停止させ、第1の搬送部40における搬送力の付与を停止させる。そして、第2の搬送部41において、図7に示すように、ローラー対22を第2のモードに、ローラー対23を第1モードに切り替える。
【0044】
より詳しくは、図8に示すように、制御装置45は、移動モーター53によってカム板48を移動させ、回転軸31aを上面48aに位置させ、回転軸32aを底面50aに位置させる。これにより、ローラー対22を第2のモードに、ローラー対23を第1モードに切り替えて、連続紙11の先端部をローラー対23で挟持することができる。この場合も同様に、挟持部位の間では、たるみや引っ張りが低減されるので切断精度を高めることができる。
【0045】
したがって、上述した本実施形態によれば、一方の駆動ローラー28(29)が駆動し他方の従動ローラー31(32)が従動するローラー対22(23)を有して連続紙11を搬送する搬送部12を有するプリンター10であって、駆動ローラー28(29)と共に駆動する駆動ギア28b(29b)と、駆動ギア28b(29b)と噛合することにより駆動力を伝達し従動ローラー31(32)を従動させる従動ギア31b(32b)と、駆動ローラー28(29)と従動ローラー31(32)とが協働して連続紙11を挟持する第1の位置関係を有すると共に駆動ギア28b(29b)と従動ギア31b(32b)とが噛合して駆動力が伝達される第1モードと、駆動ローラー28(29)と従動ローラー31(32)とが上記第1の位置関係よりも離間する第2の位置関係を有する共に駆動ギア28b(29b)と従動ギア31b(32b)との噛合が解除され駆動力が非伝達となる第2モードと、を切り替える切替装置54と、を有するという構成を採用することによって、第1モードのときは、駆動ギア28b(29b)と従動ギア31b(32b)とが噛合し駆動力が伝達され、駆動ローラー28(29)と従動ローラー31(32)とが連続紙11を挟持可能な位置関係を保ちながら同期して駆動するため両者の回転速度の差が殆どなくなることから、当該ローラー対22(23)で挟持される連続紙11に対する擦傷の発生が抑制され、一方、第2モードのときは、駆動ローラー28(29)と従動ローラー31(32)とが離間してニップ状態が解除され、また、駆動ギア28b(29b)と従動ギア31b(32b)との噛合が解除されて駆動力が非伝達となるので、従動ローラー31(32)が駆動ローラー28(29)に連れ回ることがなくなるため、連続紙11に対する擦傷の発生が抑制される。
したがって、本実施形態では、連続紙11の記録面の擦傷の発生を抑制でき、また、連続紙11のたるみや引っ張りを抑制して切断精度を高めることができる。
【0046】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態において、駆動ギア及び従動ギアの歯先面積が大きい場合は、図9に示すような歯先形状60を駆動ギア及び従動ギアの少なくともいずれか一方に採用することができる。
当該歯先形状60は、歯先の両角を所定角度で切り欠いて形成した傾斜面61A,61Bを有している。この構成によれば、歯先を先細りにし、歯先面積を小さくして、第2モードから第1モードへの切り替えの際のギア同士の衝突をより確実に回避させることができる。
また、歯の強度が確保できれば、転位させることにより歯先面積を小さくしても良い。
【0048】
また、上記実施形態においては、記録装置がプリンター10である場合を例にして説明したが、プリンターに限られず、複写機及びファクシミリ等の装置であってもよい。
【0049】
また、記録装置としては、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする記録装置を採用してもよい。本発明は、例えば微小量の液滴を吐出させる記録ヘッド等を備える各種の記録装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記記録装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、記録装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。また、記録装置の具体例としては、上記実施形態で説明したような用紙がロール状に巻かれたロール紙を収容体に備えた装置に限られない。例えば、可撓性を有する基板や金属板、あるいはプラスチックシートや布など、長尺状の記録媒体がロール状に巻かれているものを収容体に備えた装置であれば、いずれも記録装置として採用することができる。さらに、収容体に備えられた長尺状の記録媒体は、例えば葛折状になっているなどのように必ずしもロール状に巻かれていなくてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…プリンター(記録装置)、11…連続紙(記録媒体)、12…搬送部(搬送装置)、14…切断部(切断装置)、19…記録ヘッド、22,23…ローラー対、28,29…駆動ローラー(第1ローラー)、28b,29b…駆動ギア(第1ギア)、31,32…従動ローラー(第2ローラー)、31b,32b…従動ギア(第2ギア)、34,35…付勢部材、46,47…カム機構、54…切替装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の第1ローラーが駆動し他方の第2ローラーが従動するローラー対を有して記録媒体を搬送する搬送装置であって、
前記第1ローラーと共に駆動する第1ギアと、
前記第1ギアと噛合することにより駆動力を伝達し前記第2ローラーを従動させる第2ギアと、
前記第1ローラーと前記第2ローラーとが協働して前記記録媒体を挟持する第1の位置関係を有すると共に前記第1ギアと前記第2ギアとが噛合して駆動力が伝達される第1モードと、前記第1ローラーと前記第2ローラーとが前記第1の位置関係よりも離間する第2の位置関係を有する共に前記第1ギアと前記第2ギアとの噛合が解除され駆動力が非伝達となる第2モードと、を切り替える切替装置と、を有することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記第2モードのときの前記第1ギアと前記第2ギアとの中心間距離は、前記第1ギアの歯先円半径と前記第2ギアの歯先円半径との合計よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第1ギア及び前記第2ギアの少なくともいずれか一方の歯先は、鋭角に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記第2ローラーが移動することにより前記第2の位置関係が形成され、
前記第1ローラーの摩擦係数が、前記第2ローラーの摩擦係数より小さいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記切替装置は、
前記第2ローラーを前記第1ローラーに向けて付勢すると共に前記第2ギアを第1ギアに向けて付勢する付勢部材と、
前記第2ローラーと前記第2ギアとを共に前記付勢に抗して移動させるカム機構と、を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
記録媒体に対し流体を噴射する記録ヘッドと、前記記録媒体を搬送する搬送装置と、を有する記録装置であって、
前記搬送装置として、請求項1〜5のいずれか一項に記載の搬送装置を有することを特徴とする記録装置。
【請求項7】
前記記録媒体を切断する切断装置を有し、
前記切断する位置よりも前記記録媒体の搬送方向下流側に、前記ローラー対が配置されていることを特徴とする請求項6に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−106417(P2012−106417A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257200(P2010−257200)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】