説明

搬送装置及びこれを用いた検査装置

【課題】所定の搬送経路に沿って搬送対象物をその一端を保持して搬送したり他端を保持して搬送したりすることが可能、かつ搬送経路上において保持する端部を変更することが可能な搬送装置を提供する。
【解決手段】メインロータ装置10は、上方に向かって開口し、かつシリンジのノズル部が挿入される挿入穴を有し、挿入穴の底部には吸引ポンプと接続される吸引口が設けられている下部ホルダ20と、下部ホルダ20の上方に挿入穴と同軸になるように配置され、吸引ポンプと接続される吸引口が下端に開口するとともにシリンジの口部に挿入される円錐部を有し、かつ上下動自在に設けられた上部ヘッド30と、を備え、第1ディスク13及び第2ディスク14にて上部ヘッド30及び下部ホルダ20を互いに同軸のまま所定の搬送経路に沿って移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両方の端部にそれぞれ所定の処理を行う必要がある物品を搬送する搬送装置及びこれを用いた検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を吸引保持し、その状態で物品を搬送しつつ搬送中の物品に対して所定の処理を行う装置が知られている。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)製の容器、いわゆるペットボトルの予備成形品であるプリフォームの口部を吸着ヘッドで真空吸着して搬送する搬送装置を備え、その搬送装置で搬送されているプリフォームの胴部をカメラで撮影して検査する検査装置が知られている(特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2、3が存在する。
【0003】
【特許文献1】特開平11−100119号公報
【特許文献2】特開2003−177099号公報
【特許文献3】特開平7−311162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一端にフランジ部が設けられ、他端に注射針が挿入されるノズル部が設けられたシリンジに対しては、フランジ部の欠けや割れの有無を調べる検査及びノズル部の欠けや割れの有無を調べる検査が行われる。特許文献1の検査装置に設けられている搬送装置は、物品の一端を吸引保持して搬送するものである。そのため、シリンジのように両端部に対して検査を行うべき物品を検査する場合は2台の検査装置が必要となる。この場合、これら2台の検査装置を設置するために広い場所が必要になったり検査装置間でシリンジを反転させて受け渡す機構が必要になる。
【0005】
そこで、本発明は、所定の搬送経路に沿って搬送対象物をその一端を保持して搬送したり他端を保持して搬送したりすることが可能、かつ搬送経路上において保持する端部を変更することが可能な搬送装置及びこれを用いた検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の搬送装置は、一端(101a)に開口部(102)を有する搬送対象物(100)を前記一端を上にし、かつ他端(101b)を下にして搬送する搬送装置(10)において、上方に向かって開口し、かつ前記搬送対象物の他端が挿入される挿入穴(26)を有し、前記挿入穴の底部には吸引手段と接続される吸引口(26a)が設けられている下部ホルダ(20)と、前記下部ホルダの上方に前記挿入穴と同軸になるように配置され、前記吸引手段と接続される吸引口(31c)が下端(30a)に開口するとともに下方に向かうに従って漸次外径が小さくなるように形成されて前記搬送対象物の前記開口部に挿入される円錐部(31a)を有し、かつ上下動自在に設けられた上部ヘッド(30)と、前記上部ヘッド及び前記下部ホルダを互いに同軸のまま所定の搬送経路に沿って移動させる移動手段(13、14)と、を備えていることにより、上述した課題を解決する。
【0007】
本発明の搬送装置によれば、搬送対象物の開口部に円錐部を挿入した状態で吸引口から吸引を行うことにより上部ヘッドにて搬送対象物の一端を保持できる。また、搬送対象物の他端が挿入穴に挿入された状態で吸引口から吸引を行うことにより下部ホルダにて搬送対象物の他端を保持できる。そして、これら上部ヘッド及び下部ホルダが同軸のまま所定の搬送経路に沿って移動し、かつ上部ヘッドが上下動自在に設けられているので、搬送経路上で上部ヘッドと下部ホルダとの間で搬送対象物の受け渡しを行うことができる。そのため、本発明によれば、搬送対象物の一端を保持して搬送したり他端を保持して搬送したりできるとともに、搬送経路上において保持する端部を変更することができる。
【0008】
本発明の搬送装置の一形態においては、前記所定の搬送経路に前記搬送対象物が搬入される搬入位置(P1)において前記上部ヘッドの前記円錐部が搬入された搬送対象物の前記開口部に挿入されるように前記上部ヘッドを下方に移動させ、次に前記上部ヘッドを上方に移動させて前記上部ヘッドを移動後の高さに維持し、その後前記所定の搬送経路上に設定された受け渡し位置(P2)において前記上部ヘッドにて搬送している搬送対象物を前記下部ホルダに受け渡すべく前記上部ヘッドが下方に移動するように前記上部ヘッドの高さを変更する高さ変更手段(16、17)と、前記搬入位置において前記上部ヘッドの吸引口から空気の吸引が開始され、前記受け渡し位置において前記下部ホルダの吸引口からの空気の吸引が開始された後に前記上部ヘッドの吸引口からの空気の吸引が停止されるように前記上部ヘッドの吸引口及び前記下部ホルダの吸引口と前記吸引手段との接続及び遮断をそれぞれ切り替える切替手段(18、19)と、をさらに備えていてもよい。この場合、搬送対象物の一端がまず上部ヘッドの円錐部で吸引保持されるので、これにより搬送対象物のセンタリングを行うことができる。そのため、この吸引保持により上部ヘッド、下部ホルダ、及び搬送対象物を全て同軸に位置合わせすることができる。これにより、その後上部ヘッドから下部ホルダへの搬送対象物の受け渡しをスムーズに行うことができる。また、この場合、搬送対象物に対して上部ヘッド又は下部ホルダのいずれか一方から必ず吸引力を作用させているので、搬送対象物を上部ヘッド又は下部ホルダのいずれか一方で確実に吸引保持することができる。そのため、搬送対象物を確実に搬送することができる。
【0009】
本発明の搬送装置の一形態において、前記移動手段は、前記下部ホルダが上端に取り付けられた下部支持軸(22)を回転自在に支持するとともに、前記上部ヘッドが下端に取り付けられた上部支持軸(32)を回転自在かつ前記下部支持軸と同軸に支持してもよい。この場合、下部ホルダにて他端を吸引保持しつつ搬送対象物を回転させたり、上部ヘッドにて一端を吸引保持しつつ搬送対象物を回転させたりすることができる。
【0010】
この形態において、前記上部支持軸には、前記上部ヘッドを軸線回りに回転させる回転駆動力を伝達するための上部回転伝達部材(36)が設けられていてもよいし、前記下部支持軸には、前記下部ホルダを軸線回りに回転させる回転駆動力を伝達するための下部回転伝達部材(28)が設けられていてもよい。これらの場合、各支持軸を中心として上部ヘッド又は下部ホルダを外部からの回転駆動力で回転させることができる。
【0011】
本発明の搬送装置の一形態においては、前記搬送対象物がシリンジ(100)であり、前記一端にフランジ部(101a)が、前記他端に注射針が挿入されるノズル部(101b)がそれぞれ設定され、かつ前記ノズル部には前記シリンジの軸線と直交する方向に平坦なフラット部(105)が設けられ、前記下部ホルダの前記挿入穴には、前記挿入穴の中心線と直交する方向に平坦に形成され、かつ前記シリンジの前記フラット部を全周に亘って支持する支持部(26b)が設けられていてもよい。この場合、挿入穴の深さを浅くしてもシリンジを軸線に沿って立たせることができる。
【0012】
本発明は、上述した搬送装置(10)と、前記搬送装置の前記上部ヘッドに一端が吸引保持された搬送対象物の他端を撮像する第1撮像手段(4)と、前記搬送装置の前記下部ホルダに他端が吸引保持された搬送対象物の一端を撮像する第2撮像手段(5)と、を備え、前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段のそれぞれが撮像した搬送対象物の画像に基づいて所定の検査を実施する検査装置(1)として構成されてもよい。この場合、同じ検査装置で搬送対象物の一端及び他端の両方の検査を行うことができる。
【0013】
なお、以上の説明では本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したように、本発明によれば、上部ヘッドにて搬送対象物の一端を保持したり、下部ホルダにて搬送対象物の他端を保持しりすることができる。そのため、搬送対象物の一端を保持して搬送したり他端を保持して搬送したりすることができる。また、これら上部ヘッド及び下部ホルダが同軸のまま移動し、かつ上部ヘッドが上下動可能に設けられているので、搬送経路上において保持する端部を変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の一形態に係る検査装置の概略を示している。図1の検査装置1は、図2に一例を示したシリンジ100に対して検査を行うものである。このシリンジ100は、医療などに使用される周知のものである。図2に示したようにシリンジ100は、円筒形状の胴部101を備えている。胴部101の一端101aには開口部としての口部102が開口しており、その口部102の周囲には径方向外側に突出するフランジ103が設けられている。以降、この胴部101の一端をフランジ部101aと称することがある。一方、胴部101の他端101bには、注射針が挿入されるノズル104が設けられている。以降、この他端をノズル部101bと称することがある。この図に示したようにノズル部101bの外周には、シリンジ100の中心線CLと直交する方向に平坦なフラット部105が設けられている。
【0016】
検査装置1は、このシリンジ100を所定の搬送経路に沿って搬送しつつその搬送中のシリンジ100に対して種々の検査を行うものである。検査としては、例えばフランジ103の欠けや割れの有無を検査するフランジ外観検査、及びノズル104の欠けや割れの有無を検査するノズル外観検査などが行われる。検査装置1は、シリンジ100を所定の搬送経路に沿って搬送させるため搬送方向上流側から順に入口スターホイール式搬送装置2、メインロータ装置10、及び出口スターホイール式搬送装置3を備えている。入口スターホイール式搬送装置2は、スターホイール2aの外周に等間隔で設けられた複数のポケット(不図示)にシリンジ100を取り込み、そのシリンジ100の胴部101を側方から吸引保持して搬送する周知のものである。この際、シリンジ100は口部102が上を向き、ノズル104が下を向いた状態でスターホイール2aに支持される。出口スターホイール式搬送装置3も同様の搬送装置であり、スターホイール3aの外周に等間隔で設けられた複数のポケット(不図示)にシリンジ100を取り込み、そのシリンジ100の胴部101を側方から吸引保持して搬送する周知のものである。そのため、これらの搬送装置2、3についての詳細な説明は省略する。なお、出口スターホイール式搬送装置3から排出されたシリンジ100は下流の工程に搬送される。
【0017】
また、検査装置1は、メインロータ装置10にて搬送されているシリンジ100のノズル部101bを撮像する第1撮像手段としての複数の第1カメラ4と、メインロータ装置10にて搬送されているシリンジ100のフランジ部101aを撮像する第2撮像手段としての複数の第2カメラ5とを備えている。第1カメラ4は、図3に示したようにメインロータ装置10にて搬送されているシリンジ100のノズル部101bの像をミラー4aにて撮像部4bに導く周知のものである。第2カメラ5も同様にメインロータ装置10にて搬送されているシリンジ100のフランジ部101aの像をミラー5aにて撮像部5bに導く周知のものである。検査装置1にて実施される検査は、第1カメラ4及び第2カメラ5でシリンジ100のノズル部101b及びフランジ部101aを撮像し、得られた画像に基づいてシリンジ100のノズル104及びフランジ部103に欠けや割れなどの異常が無いか調べる周知の検査である。そのため、検査のための機構の詳細は説明を省略する。このように検査を行うことにより、メインロータ装置10が本発明の搬送装置に相当する。
【0018】
図4は、メインロータ装置10の断面を示した図である。メインロータ装置10は、下部ホルダ20又は上部ヘッド30にてシリンジ100のフランジ部101a又はノズル部101bを選択的に吸引保持し、これら下部ホルダ20又は上部ヘッド30で保持したシリンジ100を自転させつつ所定の搬送経路に沿って搬送するものである。そのため、シリンジ100が本発明の搬送対象物に相当する。この図に示したようにメインロータ装置10は、床Fに固定される架台11と、架台11に回転自在に支持される回転軸12とを備えている。回転軸12には、回転軸12と同軸に設けられて回転軸12と一体に回転する移動手段としての第1ディスク13及び第2ディスク14が設けられている。一方、架台11には、回転不能に固定される第3ディスク15が設けられている。
【0019】
メインロータ装置10は、第1ディスク13に支持される複数の下部ホルダ20と、第3ディスク15に支持部材16を介して支持される複数の上部ヘッド30とを備えている。これら下部ホルダ20と上部ヘッド30とは同数設けられる。第1ディスク13の外周には、上下方向に貫通する貫通孔13aが周方向に等間隔で全周に亘って設けられている。下部ホルダ20は、この貫通孔13aに回転自在に挿入されている。第2ディスク14には、第1ディスク13の各貫通孔13aの上方にそれぞれ同軸に形成された複数の貫通孔14aが設けられている。上部ヘッド30は、この貫通孔14aに上下動自在に挿入され、かつ支持部材16に回転自在に支持されている。このように上部ヘッド30が貫通孔14aに挿入されることにより、下部ホルダ20と上部ヘッド30とが同軸に配置される。支持部材16の側面にはローラ16aが設けられており、このローラ16aは第3ディスク15の外周に全周に亘って設けられたレール17上を走行する。レール17は、ローラ16aが走行する走行面17aを備えている。この走行面17aは、メインロータ装置10におけるシリンジ100の搬送位置に応じて上部ヘッド30が上下に移動するように形成されている。このように上部ヘッド30の高さを変更することにより、支持部材16及びレール17が本発明の高さ変更手段として機能する。
【0020】
また、メインロータ装置10は、下部ホルダ20によるシリンジ100の保持及びその保持の解除を切り替えるための下部切替弁18及び上部ヘッド30によるシリンジ100の保持及びその保持の解除を切り替えるための上部切替弁19を備えている。各下部ホルダ20と下部切替弁18とはチューブ18aでそれぞれ接続されている。また、各上部ヘッド30と上部切替弁19とはチューブ19aでそれぞれ接続されている。下部切替弁18は、吸引手段としての吸引ポンプ(不図示)と下部ホルダ20との間の空気吸引経路の途中に設けられ、下部ホルダ20でシリンジ100を吸引保持すべき区間において下部ホルダ20に吸引力が作用するように吸引ポンプと下部ホルダ20との接続及び遮断を切り替える周知のものである。上部切替弁19も同様に、不図示の吸引ポンプと上部ヘッド30との間の空気吸引経路の途中に設けられ、上部ヘッド30でシリンジ100を吸引保持すべき区間において上部ヘッド30に吸引力が作用するように吸引ポンプと上部ヘッド30との接続及び遮断を切り替える周知のものである。そのため、詳細な説明は省略する。このように吸引ポンプと下部ホルダ20及び上部ヘッド30との接続及び遮断を切り替えることにより、下部切替弁18及び上部切替弁19が本発明の切替手段として機能する。
【0021】
図5を参照して下部ホルダ20について説明する。なお、図5は、下部ホルダ20の軸線方向断面図である。この図に示したように、下部ホルダ20は、ホルダ本体21と、下部支持軸としての回転軸22と、ベース部23、下部ジョイント24とを備えている。ベース部23は、第1ディスク13の貫通孔13aに挿入され、回転不能に固定されている。回転軸22は、そのベース部23にベアリング25を介して軸線Ax回りに回転自在に支持されている。ホルダ本体21は、回転軸22の上端に設けられている。そのため、ホルダ21の上端が下部ホルダ20の上端20aになる。また、ホルダ本体21は、回転軸22と同軸に、かつ回転軸22と一体に回転するように回転軸22に設けられている。図6は、ホルダ本体21を拡大して示した図である。図6に示したようにホルダ本体21は、シリンジ100のノズル部101bが挿入される挿入穴26を備えている。挿入穴26は、その内径がシリンジ100の胴部101の外径とほぼ同じになるように形成されている。挿入穴26の上部は、上方に向かって漸次内径が大きくなっている。挿入穴26の底部には、吸引口26aが開口している。また、挿入穴26の底部の外周には、シリンジ100のフラット部105を受け止めるための支持部26bが設けられている。この支持部26bは、軸線Axと直交する方向に平坦に形成されている。これにより、挿入穴26にシリンジ100のノズル部101bが挿入された際にシリンジ100のフラット部105を全周に亘って支持部26bで支持することができる。
【0022】
図5に戻って、回転軸22の下端にはベアリング27を介して下部ジョイント24が設けられている。そのため、下部ジョイント24が回転軸22に対して相対回転可能に設けられている。回転軸22には、ベース部23と下部ジョイント24との間の位置に下部回転伝達部材としてのプーリ28が回転軸22と一体回転するように取り付けられている。プーリ28は、第1ディスク13の回転時にメインロータ装置10の周囲に設けられて走行しているベルト6(図1参照)と噛み合い、これにより回転駆動される。そして、このようにプーリ28が回転駆動されることにより、回転軸22が回転駆動される。図5に示したように下部ホルダ20は吸引路29を備えている。吸引路29は、回転軸22の内部をその軸線Axに沿って貫通している。吸引路29の上端は、挿入穴26の底部に開口して吸引口26aとなる。吸引路29の下端は、下部ジョイント24の内部に設けられた接続通路24aを介してチューブ18aと接続されている。
【0023】
次に図7を参照して上部ヘッド30について説明する。なお、図7は上部ヘッド30の軸線方向断面図である。上部ヘッド30は、ヘッド本体31と、上部支持軸としての回転軸32と、上部ジョイント33とを備えている。支持部材16には、回転軸32がベアリング34を介して軸線Ax回りに回転自在に支持されている。また、回転軸32が貫通孔14aに上下動自在に挿入されている。ヘッド本体31は、回転軸32の下端に設けられている。また、ヘッド本体31は、回転軸32と同軸に、かつ回転軸32と一体に回転するように回転軸32に設けられている。ヘッド本体31は、下方に向かうに従って漸次外径が小さくなる円錐部31aを備えている。ヘッド本体31の内部には、その軸線Axに沿って貫通通路31bが設けられている。そして、貫通通路31bの下端は、円錐部31aの下面に吸引口31cとして開口している。すなわち、吸引口31cは、上部ヘッド30の下端30aに開口している。回転軸32の上端には、上部ジョイント33が設けられている。上部ジョイント33は、回転軸32の上端に取り付けられる装着部33aと、その装着部33aに回転自在に設けられた接続部33bとを備えている。接続部33aは、固定部材35によって支持部材16に回転不能に固定されている。これにより、上部ジョイント33は、接続部33aが回転軸32に対して相対回転可能なように回転軸32に取り付けられている。
【0024】
回転軸32には、支持部材16と上部ジョイント33との間の位置に上部回転伝達部材としてのプーリ36が回転軸32と一体回転するように取り付けられている。プーリ36は、第2ディスク14の回転時にメインロータ装置10の周囲に設けられて走行しているベルト7(図1参照)と噛み合い、これにより回転駆動される。そして、このようにプーリ36が回転駆動されることにより、回転軸32が回転駆動される。図7に示したように上部ヘッド30は吸引路37を備えている。吸引路37は、回転軸32の内部をその軸線Axに沿って貫通している。吸引路37の下端はヘッド本体31の貫通通路31bと接続されている。一方、吸引路37の上端は、上部ジョイント33の内部に設けられた接続通路33cを介してチューブ19aと接続されている。
【0025】
この図に示したように第2ディスク14には、第2ディスク14の上面から上方に垂直に延びるガイド棒14bが設けられている。一方、支持部材16には上下方向に貫通するガイド孔16bが設けられおり、そのガイド孔16bにはスリーブ16cが設けられている。そして、支持部材16は、スリーブ16c内にガイド棒14bが挿入されるようにして第3ディスク15に支持されている。これにより、支持部材16をガイド棒14bに沿って上下方向に移動させることができる。
【0026】
図1及び図8を参照してメインロータ装置10によるシリンジ100の搬送方法について説明する。まず、図1を参照して搬送方法の概略を説明する。入口スターホイール式搬送装置2によって搬入位置P1に搬入されてきたシリンジ100は、まず上部ヘッド30で吸引保持される。次にシリンジ100は、上部ヘッド30に吸引保持されたまま第1搬送区間A1を搬送される。第1搬送区間A1を通過して受け渡し位置P2に到達するとシリンジ100は、上部ヘッド30から下部ホルダ20に受け渡される。そして、下部ホルダ20に吸引保持される。その後、シリンジ100は、下部ホルダ20に吸引保持されたまま第2搬送区間A2を搬送される。第2搬送区間A2を通過して搬出位置P3に到達するとシリンジ100は、下部ホルダ20から出口スターホイール式搬送装置3に搬出される。
【0027】
図8を参照して詳しく説明する。図8は、メインロータ装置10におけるシリンジ100の搬送状態を概略的に示している。図8では、右側に行くほど搬送方向下流側の搬送状態を示している。すなわち、メインロータ装置10では、ステップS1〜S7の順にシリンジ100の搬送状態が変化する。図8のステップS1は、搬入位置P1におけるシリンジ100、上部ヘッド30、及び下部ホルダ20の位置をそれぞれ概略的に示している。この図に示したように上部ヘッド30は、搬入位置P1において下端30aとシリンジ100の口部102との間が距離Δh1になる所定の下限位置まで下げられる。そして、上部切替弁19は、この状態において吸引口31cから空気の吸入が開始されるように吸引ポンプと吸引路37とを接続する。これによりシリンジ100が上部ヘッド30に吸い寄せられ、ステップS2に示したように上部ヘッド30に吸引保持される。この際、ステップS2に示したようにシリンジ100の口部102が上部ヘッド30の円錐部31aに当接するので、シリンジ100の重みによってシリンジ100のセンタリングを行うことができる。すなわち、シリンジ100、上部ヘッド30及び下部ホルダ20を互いに同軸にすることができる。
【0028】
その後、上部ヘッド30は、図8のステップS3に示したように所定の上限位置まで上げられる。図1に示したようにメインロータ装置10の外周のうち第1搬送区間A1に対応する部分には、ベルト7が配置されている。そのため、上部ヘッド30は、この第1搬送区間A1において回転駆動される。そして、これによりシリンジ100をフランジ部101aが保持された状態で自転させることができる。
【0029】
シリンジ100が受け渡し位置P2に到達すると、ステップS4に示したように上部ヘッド30が所定の下限位置まで下げられる。これにより、シリンジ100のノズル部101bと下部ホルダ20の上端20aとの間が距離Δh2となる。この状態において、まず下部ホルダ20の吸引口26aから空気の吸引が開始されるように下部切替弁18によって吸引路29と吸引ポンプとが接続される。その後、上部ヘッド30の吸引口31cからの空気の吸引が停止されるように上部切替弁19によって吸引路37と吸引ポンプとの接続が遮断される。これにより上部ヘッド30によるシリンジ100の吸引保持が解除されてシリンジ100が下部ホルダ20に受け渡される。シリンジ100は下部ホルダ20に吸い寄せられてそのノズル部101bが挿入穴26に嵌る。そして、ステップS5に示したようにシリンジ100を下部ホルダ20で吸引保持することができる。この際、シリンジ100のフラット部105が挿入穴26の支持部26bで支持されるので、シリンジ100を垂直に立たせることができる。このようにメインロータ装置10においては、シリンジ100に対して上部ヘッド30又は下部ホルダ20のいずれか一方から必ず吸引力を作用させる。そのため、シリンジ100を上部ヘッド30又は下部ホルダ20にて確実に吸引保持することができる。
【0030】
図1に示したようにメインロータ装置10の外周のうち第2搬送区間A2に対応する部分には、ベルト6が配置されている。そのため、下部ホルダ20、この第2搬送区間A2において回転駆動される。そして、これによりシリンジ100をノズル部101bが保持された状態で自転させることができる。
【0031】
その後、シリンジ100が搬出位置P3に到達する直前に下部切替弁18は下部ホルダ20の吸引口26aからの空気の吸引が停止されるように吸引路29と吸引ポンプとの接続を遮断する。これにより下部ホルダ20によるシリンジ100の吸引保持が解除される。続いて図示は省略したがシリンジ100は再度上部ヘッド30に吸引保持されて出口スターホイール式搬送装置3が保持することが可能な高さまで引き上げられる。そして、シリンジ100が搬送位置P3に到達すると、図8のステップS7に示したようにそのシリンジ100は出口スターホイール式搬送装置3に保持されてメインロータ装置10から搬出される。なお、出口スターホイール式搬送装置3にシリンジ100が搬出される際には上部ヘッド30による吸引保持が解除される。
【0032】
検査装置1においては、上述したようにこのようにメインロータ装置10で搬送されている間にシリンジ100の検査を行う。この際は、第1カメラ4は、第1搬送区間A1を搬送されているシリンジ100のノズル部101bを撮像する。第1搬送区間A1においては上部ヘッド30が回転駆動されるので、ノズル部101bの全周を第1カメラ4で撮像することができる。また、第2カメラ5は、第2搬送区間A2を搬送されているシリンジ100のフランジ部101aを撮像する。第2搬送区間A2においては、下部ホルダ20が回転駆動されるので、フランジ部101aの全周を第2カメラ5で撮像することができる。
【0033】
以上に説明したように、メインロータ装置10においては、シリンジ100のフランジ部101aを吸引保持して搬送できるとともに、シリンジ100のノズル部101bを吸引保持して搬送することができる。そして、搬送途中で吸引保持する端部を変更することができる。そのため、本形態の検査装置1では、所定の搬送経路に沿ってシリンジ100を搬送している間にノズル部101b及びフランジ部101aの両方をそれぞれ検査することができる。そのため、検査装置1の設置面積を低減したりコストを低減したりすることができる。
【0034】
下部ホルダ20の挿入穴26には、シリンジ100のフラット部105を支持する支持部26bが設けられているので、挿入穴26の深さが浅くてもシリンジ100を垂直に立たせることができる。
【0035】
なお、メインロータ装置10においてシリンジ100の各端部を吸着する順番は逆でもよい。すなわち、まず下部ホルダ20でシリンジ100のノズル部101bを吸引保持し、次に上部ヘッド30でシリンジ100のフランジ部101aを吸引保持してもよい。これらは、第1カメラ4及び第2カメラ5の配置位置に応じて適宜に設定してよい。
【0036】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施してよい。例えば、本発明の検査装置で検査される物品はシリンジに限定されない。例えばペットボトルの予備成型品であるプリフォームを検査してもよい。この他、一端と他端の両方に検査対象部がある種々の物品を検査してよい。本発明の搬送装置は、検査装置以外の装置に組み込まれてもよい。例えば、搬送中に物品の一端と他端の両方に所定の処理を行う装置に組み込んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一形態に係る検査装置の概略を示す図。
【図2】図1の検査装置で検査されるシリンジの一例を示す図。
【図3】メインロータ装置と第1カメラ及び第2カメラとの位置関係を概略的に示す図。
【図4】メインロータ装置の断面を示した図。
【図5】下部ホルダの軸線方向断面図。
【図6】ホルダ本体を拡大して示す図。
【図7】上部ヘッドの軸線方向断面図。
【図8】メインロータ装置におけるシリンジの搬送状態を概略的に示す図。
【符号の説明】
【0038】
1 検査装置
4 第1カメラ(第1撮像手段)
5 第2カメラ(第2撮像手段)
10 メインロータ装置(搬送装置)
13 第1ディスク(移動手段)
14 第2ディスク(移動手段)
16 支持部材(高さ変更手段)
17 レール(高さ変更手段)
18 下部切替弁(切替手段)
19 上部切替弁(切替手段)
20 下部ホルダ
22 回転軸(下部支持軸)
26 挿入穴
26a 吸引口
26b 支持部
28 プーリ(下部回転伝達部材)
30 上部ヘッド
30a 下端
31a 円錐部
31c 吸引口
32 回転軸(上部支持軸)
36 プーリ(上部回転伝達部材)
100 シリンジ
101a フランジ部(一端)
101b ノズル部(他端)
102 口部
105 フラット部
P1 搬入位置
P2 受け渡し位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を有する搬送対象物を前記一端を上にし、かつ他端を下にして搬送する搬送装置において、
上方に向かって開口し、かつ前記搬送対象物の他端が挿入される挿入穴を有し、前記挿入穴の底部には吸引手段と接続される吸引口が設けられている下部ホルダと、前記下部ホルダの上方に前記挿入穴と同軸になるように配置され、前記吸引手段と接続される吸引口が下端に開口するとともに下方に向かうに従って漸次外径が小さくなるように形成されて前記搬送対象物の前記開口部に挿入される円錐部を有し、かつ上下動自在に設けられた上部ヘッドと、前記上部ヘッド及び前記下部ホルダを互いに同軸のまま所定の搬送経路に沿って移動させる移動手段と、を備えていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記所定の搬送経路に前記搬送対象物が搬入される搬入位置において前記上部ヘッドの前記円錐部が搬入された搬送対象物の前記開口部に挿入されるように前記上部ヘッドを下方に移動させ、次に前記上部ヘッドを上方に移動させて前記上部ヘッドを移動後の高さに維持し、その後前記所定の搬送経路上に設定された受け渡し位置において前記上部ヘッドにて搬送している搬送対象物を前記下部ホルダに受け渡すべく前記上部ヘッドが下方に移動するように前記上部ヘッドの高さを変更する高さ変更手段と、
前記搬入位置において前記上部ヘッドの吸引口から空気の吸引が開始され、前記受け渡し位置において前記下部ホルダの吸引口からの空気の吸引が開始された後に前記上部ヘッドの吸引口からの空気の吸引が停止されるように前記上部ヘッドの吸引口及び前記下部ホルダの吸引口と前記吸引手段との接続及び遮断をそれぞれ切り替える切替手段と、をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記移動手段は、前記下部ホルダが上端に取り付けられた下部支持軸を回転自在に支持するとともに、前記上部ヘッドが下端に取り付けられた上部支持軸を回転自在かつ前記下部支持軸と同軸に支持することを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記上部支持軸には、前記上部ヘッドを軸線回りに回転させる回転駆動力を伝達するための上部回転伝達部材が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記下部支持軸には、前記下部ホルダを軸線回りに回転させる回転駆動力を伝達するための下部回転伝達部材が設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記搬送対象物がシリンジであり、前記一端にフランジ部が、前記他端に注射針が挿入されるノズル部がそれぞれ設定され、かつ前記ノズル部には前記シリンジの軸線と直交する方向に平坦なフラット部が設けられ、
前記下部ホルダの前記挿入穴には、前記挿入穴の中心線と直交する方向に平坦に形成され、かつ前記シリンジの前記フラット部を全周に亘って支持する支持部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の搬送装置と、前記搬送装置の前記上部ヘッドに一端が吸引保持された搬送対象物の他端を撮像する第1撮像手段と、前記搬送装置の前記下部ホルダに他端が吸引保持された搬送対象物の一端を撮像する第2撮像手段と、を備え、前記第1撮像手段及び前記第2撮像手段のそれぞれが撮像した搬送対象物の画像に基づいて所定の検査を実施することを特徴とする検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−155700(P2010−155700A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335105(P2008−335105)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(390014661)キリンテクノシステム株式会社 (126)
【Fターム(参考)】