説明

搬送装置及び記録装置

【課題】搬送経路を通過する記録媒体に対する搬送負荷を抑制することができる搬送装置及び記録品質の低下を抑制することができる記録装置を提供する。
【解決手段】搬送経路の上流側から下流側へと連続紙Sを搬送する搬送装置27において、搬送経路における記録媒体に対して記録が施される記録位置よりも下流側の位置に配置され、その位置を通過する記録媒体に対して記録媒体の一面側に位置する駆動ローラー及び他面側に位置する従動ローラーのうち少なくとも一方が当接して回転することにより、該記録媒体を搬送経路に沿って搬送する第1〜第3搬送ローラー対41〜43を備え、第1〜第3搬送ローラー対は、対になっている両ローラー間を連続紙が通過する際において、連続紙の搬送方向に沿う長さ寸法が第1搬送ローラー対41の配置された位置と該位置よりも上流側の記録位置との間の距離寸法よりも長尺である場合には、連続紙に対して非挟持状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば長尺用紙や単票紙などの記録媒体を搬送する搬送装置及び該装置を備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体に対して記録を施す記録装置のうちには、記録が施された記録媒体を排出口に向けて搬送する搬送装置を備えたものがある(例えば、特許文献1)。すなわち、この特許文献1に記載の搬送装置は、搬送経路の途中の記録位置で記録手段により記録が施された記録媒体を、搬送経路における記録位置よりも下流側の位置に配置された搬送ローラー対により挟持させた状態で、その搬送ローラー対を構成する両ローラーを回転させることにより搬送するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−193158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の搬送装置では、搬送方向に沿う長さ寸法が異なる複数種類の記録媒体が排出口に向けて搬送されるものの、それらの記録媒体の搬送方向に沿う長さ寸法に違いがあっても、搬送ローラー対は各記録媒体を該記録媒体の一面側及び他面側に各々位置するローラー同士で同様に挟持するようにしていた。すなわち、搬送ローラー対の両ローラー間を通過する各記録媒体には、搬送ローラー対の両ローラーが記録媒体を挟持することで搬送負荷が加わるようになっていた。そのため、その記録媒体の下流側部位が搬送ローラー対に挟持された状態にあるときに、その記録媒体の上流側部位が記録位置で未だ記録手段により記録を施されていると、その記録媒体の下流側部位での搬送負荷の発生に起因して、その記録媒体の上流側部位に対する記録の乱れなどが生じて、記録品質が低下する虞があった。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、搬送経路を通過する記録媒体に対する搬送負荷を抑制することができる搬送装置及び記録品質の低下を抑制することができる記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の搬送装置は、搬送経路の上流側から下流側へと記録媒体を搬送する搬送装置において、前記搬送経路における前記記録媒体に対して記録が施される記録位置よりも下流側の位置に配置されるとともに、その位置を通過する前記記録媒体に対して該記録媒体の一面側に位置するローラー及び他面側に位置するローラーのうち少なくとも一方が当接して回転することにより、該記録媒体を前記搬送経路に沿って搬送する搬送ローラー対を備え、該搬送ローラー対は、前記両ローラー間を前記記録媒体が通過する際において、該記録媒体の搬送方向に沿う長さ寸法が前記搬送ローラー対の配置された位置と該位置よりも上流側の前記記録位置との間の距離寸法よりも長尺である場合には、該長尺の記録媒体に対して前記両ローラーが非挟持状態となる。
【0007】
この構成によれば、搬送経路の途中における搬送ローラー対が配置された位置を通過する記録媒体が長尺の記録媒体である場合には、その記録媒体に対して搬送ローラー対が非挟持状態となる。すなわち、その記録媒体の搬送方向に沿う長さ寸法が、搬送ローラー対が配置された位置と該位置よりも上流側の記録位置との間の距離寸法よりも長尺の記録媒体であるときには、該長尺の記録媒体に対して搬送ローラー対が非挟持状態となることによって、搬送ローラー対が記録媒体に加える搬送負荷を挟持状態の場合よりも小さくする。したがって、搬送経路を通過する記録媒体に対する搬送負荷が抑制される結果、例えば長尺の記録媒体が搬送ローラー対の両ローラー間を通過するときに、その記録媒体における上流側部位に対して記録位置で記録が同時に施されるような場合にも、その記録品質の低下の抑制に貢献することができる。
【0008】
本発明の搬送装置において、前記搬送ローラー対は、前記両ローラーが前記非挟持状態となる場合、前記少なくとも一方のローラーが該ローラーの軸方向と直交する方向であって且つ前記搬送経路から離間する方向に移動する。
【0009】
この構成によれば、長尺の記録媒体に対して搬送ローラー対を非挟持状態とする場合には、少なくとも一方のローラーを軸方向と直交する方向であって且つ搬送経路から離間する方向に移動させるだけでよい。したがって、搬送負荷を抑制可能な搬送装置の構成を容易に実現できる。
【0010】
本発明の搬送装置において、前記搬送ローラー対は、前記記録媒体における一面側に当接して駆動回転する駆動ローラーと、該駆動ローラーの駆動回転に伴い搬送される前記記録媒体における他面側に当接して従動回転する従動ローラーとで構成されているとともに、該従動ローラーが前記長尺の記録媒体を搬送する場合に前記駆動ローラーから離間する方向に移動する。
【0011】
この構成によれば、駆動ローラーよりも従動ローラーの方が軸方向と交差する方向への移動が容易なので、長尺の記録媒体に対して非挟持状態となる搬送ローラー対を容易に構成することができる。したがって、そのように搬送される長尺の記録媒体に加わる搬送負荷を抑制可能な搬送装置を容易に実現できる。
【0012】
本発明の搬送装置において、前記従動ローラーのローラー面は、該ローラー面の摩擦係数が前記駆動ローラーにおけるローラー面の摩擦係数よりも高い部材により形成されている。
【0013】
この構成によれば、従動ローラーが駆動ローラーとの間に記録媒体を挟持した挟持状態においては、搬送される記録媒体に対して充分な搬送力を付与することができる。したがって、搬送装置は、長尺の記録媒体を搬送する際に該長尺の記録媒体に対して加わる搬送負荷を抑制する機能と、該長尺の記録媒体以外の他の記録媒体を搬送する際に該他の記録媒体に対して必要な搬送力を付与する機能とを両立することができる。
【0014】
また、上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、搬送経路の上流側から下流側へと搬送される記録媒体に対して記録を施す記録手段と、該記録手段により記録が施された前記記録媒体を搬送する上記構成の搬送装置と、を備えた。
【0015】
この構成によれば、記録装置において上記搬送装置の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態におけるプリンターの概略正面図。
【図2】プリンターが備える搬送装置の概略正断面図。
【図3】図2における3−3線矢視断面図。
【図4】第1移動機構の概略正面図であり、(a)は第1搬送ローラー対が挟持状態にある場合の概略正面図、(b)は第1搬送ローラー対が非挟持状態にある場合の概略正面図。
【図5】第2移動機構の概略側面図であり、(a)は第2搬送ローラー対が挟持状態にある場合の概略正面図、(b)は第2搬送ローラー対が非挟持状態にある場合の概略正面図。
【図6】第3移動機構の概略側面図であり、(a)は第3搬送ローラー対が挟持状態にある場合の概略正面図、(b)は第3搬送ローラー対が非挟持状態にある場合の概略正面図。
【図7】図2における7−7線矢視概略図。
【図8】図7における8−8線矢視概略断面図であり、(a)は、フラッパが長尺用位置にある状態を示す概略断面図、(b)はフラッパが短尺用位置にある状態を示す概略断面図。
【図9】図7における9−9線矢視概略図であり、(a)は、フラッパが長尺用位置にある場合の概略図、(b)はフラッパが短尺用位置にある場合の概略図。
【図10】カット紙を搬送する場合における搬送装置の概略正断面図。
【図11】連続紙を搬送する場合における搬送装置の概略正断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を記録装置の一種であるインクジェット式プリンター(以下、「プリンター」ともいう。)及び該プリンターが備える搬送装置に具体化した一実施形態を図1〜図11に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいう場合は、特に説明がない限り、各図中に矢印で示す「前後方向」、「上下方向」及び「左右方向」をいうものとする。また、この場合における「前後方向」は記録媒体の搬送方向と交差する幅方向に相当すると共に、「上下方向」は鉛直方向に相当し、「左右方向」はその右側から左側に向かう方向が記録媒体の搬送方向に相当する。
【0018】
図1に示すように、プリンター11は、略直方体状をなす本体ケース12を備えている。本体ケース12内における右側下方となる位置には、長尺状の連続紙Sを繰り出す繰り出し部13が設けられている。繰り出し部13には、連続紙Sの搬送方向と直交する幅方向(前後方向)に延びる巻き軸14が回転可能に設けられている。この巻き軸14には、長尺の記録媒体の一例である連続紙Sがあらかじめロール状に巻かれた状態で巻き軸14と一体回転可能に支持されている。すなわち、連続紙Sは、巻き軸14が回転することにより巻き軸14から繰り出されて搬送方向下流側(左側)に向かって搬送されるようになっている。
【0019】
巻き軸14の鉛直方向上方の位置には、巻き軸14と平行な態様で連続紙Sの幅方向(前後方向)に延びる中継ローラー15が回転可能に配置されている。そして、この中継ローラー15に巻き軸14から繰り出された連続紙Sを右側下方から巻き掛けることにより、連続紙Sは搬送方向下流側(左側)に向けて水平に搬送されるようになっている。
【0020】
また、中継ローラー15よりも搬送方向下流側(左側)の位置には、搬送される連続紙Sを支持可能な矩形状の支持部材16が配置されている。この支持部材16の上面である支持面16aは、中継ローラー15における外周面の頂部と同一の高さとなるように配置されている。そのため、中継ローラー15により搬送方向が水平左方向に変換された連続紙Sは、支持部材16の支持面16aに摺接しつつ搬送方向下流側となる左側に搬送される。
【0021】
支持部材16の上方であって且つ支持部材16の支持面16aと対向する位置には、搬送される連続紙Sに対して記録を施す記録部17が設けられている。記録部17は、駆動手段(図示略)によって連続紙Sの搬送方向と交差する主走査方向に往復移動可能なキャリッジ18と、このキャリッジ18の下面に支持された記録手段の一例としての記録ヘッド19とを備えている。記録ヘッド19の下面は、インクを噴射する複数のノズル(図示略)が開口する水平なノズル形成面になっている。そして、記録ヘッド19は、支持部材16の支持面16a上を摺動しつつ搬送方向下流側(左側)へと搬送される連続紙Sに対してインクを噴射することにより記録を施すようになっている。なお、連続紙Sが搬送される搬送経路上において、記録ヘッド19が配置された位置が、連続紙(記録媒体)Sに対して記録を施す記録位置となる。
【0022】
また、記録ヘッド19が配置された記録位置よりも搬送方向下流側(左側)の位置には、駆動ローラーと従動ローラーとからなるローラー対20が配置されている。このローラー対20は、駆動ローラーと従動ローラーとにより連続紙Sを挟持した状態で、駆動ローラーの駆動回転に基づき連続紙Sが搬送方向下流側(左側)へ移動するのに伴い従動ローラーが従動回転することで、両ローラー間に連続紙Sを挟持しつつ搬送方向下流側(左側)へ搬送するようになっている。
【0023】
また、ローラー対20よりも搬送方向下流側(左側)の位置には、連続紙Sを搬送方向と交差する幅方向(前後方向)に亘って切断可能なカッター21が配置されている。カッター21は、長尺状の連続紙Sを搬送方向に沿う長さ寸法が所定長さとなるカット紙CSに切断する。そして、連続紙Sは、このカッター21により所定長さのカット紙CSに切断された場合には、切断される毎に一枚ずつ搬送方向下流側(左側)へと搬送されることになる。
【0024】
カッター21よりも搬送方向下流側(左側)の位置には、カッター21による連続紙Sの切断によって形成されたカット紙CSのカール(巻きぐせ)を矯正する(デカールする)カール矯正部22が設けられている。カール矯正部22は、カット紙CSの一面側(図1では下面側)に当接する上流側ローラー23と、上流側ローラー23よりも搬送方向下流側でカット紙CSの一面側に当接する下流側ローラー24と、上流側ローラー23及び下流側ローラー24の間となる位置でカット紙CSの他面側(図1では上面側)に当接するデカールローラー25とを備えている。そして、デカールローラー25は、下流側ローラー24との間にカット紙CSを挟圧することで、カット紙CSのカールを矯正するようになっている。なお、本実施形態では、カール矯正部22は、例えば図10に示すような相対的に短尺のカット紙CSが搬送される場合にはカールの矯正を行うが、そのような短尺のカット紙CSよりも長尺のカット紙CS(図2参照)や連続紙S(図11参照)が搬送される場合にはカールの矯正を行わないようになっている。
【0025】
また、カール矯正部22よりも搬送方向下流側(左側)となる位置で本体ケース12の側壁には、本体ケース12内から本体ケース12外に連続紙S(具体的には、その搬送方向下流側の端部)及びカット紙CSを搬送するための搬送口(図示略)が開口形成されている。そして、そのような搬送口が形成された本体ケース12における左側壁12aの上部外面には、本体ケース12内から搬送口を通過して搬送された連続紙S及びカット紙CSを本体ケース12外へと排出するために搬送する搬送装置27が設けられている。この搬送装置27は、ユニット構成の装置全体が本体ケース12に対して着脱可能となっている。そして、搬送装置27は、連続紙S及びカット紙CSをそれぞれ異なる搬送経路によって搬送するとともに、それぞれ異なる排出口から排出するようになっている。
【0026】
次に、搬送装置27について図2〜図7に基づいて説明する。
図2に示すように、搬送装置27は、内部が中空状をなすケース31を備えている。ケース31における右側壁31aの下方には、本体ケース12側からローラー対20及びカール矯正部22を経由して搬送された連続紙S及びカット紙CSをケース31内へと搬入するための搬入口32が開口形成されている。また、ケース31における右側壁31aの上方(すなわち、搬入口32の鉛直方向上方)には、長尺のカット紙CSや連続紙Sをケース31内からケース31外へ排出するための長尺用排出口33が開口形成されている。そして、ケース31における左側壁31bの下方(すなわち、搬入口32の左側斜め上方)には短尺のカット紙CSをケース31内からケース31外へ排出するための短尺用排出口34が開口形成されている。
【0027】
ケース31内には、本体ケース12の搬送口及びケース31の搬入口32を通過してケース31内に連続紙S及びカット紙CSを導く導入部35と、この導入部35により導かれた連続紙Sを反転させながら上方位置の長尺用排出口33へと搬送するための反転搬送部36が設けられている。また、ケース31内には、導入部35により導かれたカット紙CSを記録が施された面が上を向いた状態で左斜め上方位置の短尺用排出口34へと搬送するための搬送部136が設けられている。
【0028】
導入部35は、ケース31に固定された略矩形板状の第1固定導入ガイド37及び第2固定導入ガイド38を備えている。第1固定導入ガイド37は、ケース31の底面31c側から左側上方に向かって(換言すると、搬送方向の下流側に向かって上り勾配となるように)傾斜している。また、第2固定導入ガイド38は、第1固定導入ガイド37の鉛直方向上方に配置されるとともに左側上方に向かって緩やかに傾斜している。そして、第1固定導入ガイド37の上面及び第2固定導入ガイド38の下面が、カット紙CSや連続紙Sを搬送する搬送経路面37a,38aとして機能することにより、第1固定導入ガイド37及び第2固定導入ガイド38の間に導入経路が形成されるようになっている。
【0029】
反転搬送部36は、長尺のカット紙CSや連続紙Sを反転させながら長尺用排出口33へと導く反転経路を形成する反転経路形成部材39と、反転経路内を長尺用排出口33に向けて搬送される長尺のカット紙CSや連続紙Sに搬送力を付与する第1〜第3搬送ローラー対41〜43とを備えている。
【0030】
反転経路形成部材39は、ケース31に固定された断面視略円弧状をなす板状の第1固定反転ガイド44及び第2固定反転ガイド45を備えている。第2固定反転ガイド45は、第1固定反転ガイド44の内周側となる位置に、該第1固定反転ガイド44の内周側の面(図2では右側面)との間にカット紙CS及び連続紙Sの厚さ寸法よりも若干広い間隔を隔てて第2固定反転ガイド45における外周側の面(図2では左側面)が対向するように配置されている。そして、第1固定反転ガイド44の右側面及び第2固定反転ガイド45の左側面が、カット紙CSや連続紙Sを搬送する搬送経路面44a,45aとして機能することにより、第1固定反転ガイド44及び第2固定反転ガイド45の間に、左側に向かって湾曲した反転経路が形成されるようになっている。
【0031】
また、第1固定反転ガイド44は、その搬送方向上流側の長さが第2固定反転ガイド45における搬送方向上流側の長さよりも短くなっている。すなわち、湾曲した反転経路に沿う搬送方向において、第1固定反転ガイド44は、その搬送方向上流側の端部が第2固定反転ガイド45における搬送方向上流側の端部よりも搬送方向下流側に位置するように、その搬送方向上流側の長さが短く形成されている。
【0032】
第1〜第3搬送ローラー対41〜43は、反転経路の上流側から下流側(図2における下側から上側)へと向かう長尺のカット紙CSや連続紙Sの搬送方向に沿って、第1搬送ローラー対41、第2搬送ローラー対42、第3搬送ローラー対43の順に配置されている。具体的には、第1搬送ローラー対41は反転経路形成部材39により形成された反転経路の上流端(すなわち、導入部35における搬送方向下流側の端部)の位置に配置されている。第3搬送ローラー対43は、反転経路の下流端(すなわち、長尺用排出口33の左側)の位置に配置されている。また、第2搬送ローラー対42は、反転経路の略中央(すなわち、第1及び第3搬送ローラー対41,43の左側であって第1及び第3搬送ローラー対41,43の間)の位置に配置されている。
【0033】
そして、反転搬送部36に搬送された長尺のカット紙CSや連続紙Sは、第1〜第3搬送ローラー対41〜43によって第1固定反転ガイド44及び第2固定反転ガイド45間に形成された反転経路を上流側から下流側(すなわち、図2では下側から上側)に向かって搬送される。そして、長尺のカット紙CSや連続紙Sは、記録が施された表面が下方を向いた状態で長尺用排出口33から本体ケース12の上面12bに向かって排出される。このように、搬送装置27において、導入経路と反転経路とにより長尺のカット紙CSや連続紙Sを搬送するための長尺用搬送経路が構成されている。
【0034】
搬送部136は、ケース31に固定された略矩形板状の第1固定搬送ガイド144と第2固定搬送ガイド145とを備えている。第1固定搬送ガイド144は、その搬送方向上流側の端部が反転搬送部36における第1固定反転ガイド44の搬送方向上流側の端部に近接した態様で、第1固定反転ガイド44の左側から短尺用排出口34に向かってほぼ水平となるように配置されている。また、第2固定搬送ガイド145は、第1固定搬送ガイド144の鉛直方向下方に配置されるとともに、その搬送方向上流側の端部が第1搬送ローラー対41に近接した態様で、第1搬送ローラー対41の左側から短尺用排出口34に向かって左側上方に緩やかに傾斜している。
【0035】
そして、第1固定搬送ガイド144の下面及び第2固定搬送ガイド145の上面が相対的に短尺のカット紙CSを搬送する搬送経路面として機能することにより、第1固定搬送ガイド144及び第2固定搬送ガイド145の間に短尺のカット紙CSを搬送する短尺用搬送経路が形成されるようになっている。そして、導入部35の導入経路を搬送されたカット紙CSは、第1搬送ローラー対41を通過した後、第1固定搬送ガイド144と第2固定搬送ガイド145との間に形成された搬送経路を上流側から下流側(すなわち、図2では右側から左側)に向かって搬送される。そして、短尺のカット紙CSは、記録が施された面が上を向いた状態で短尺用排出口34から搬送装置27外へと排出される。
【0036】
また、第1固定反転ガイド44及び第1固定搬送ガイド144の搬送方向上流側の端部と第1搬送ローラー対41との間の位置には、フラッパ46が配置されている。すなわち、このフラッパ46は、その位置で揺動(変位)することにより、その位置よりも搬送経路の下流側となる経路部分を、長尺のカット紙CSや連続紙Sを排出させるため長尺用搬送経路と、短尺のカット紙CSを排出させるための短尺用搬送経路との間で切り換えるようになっている。
【0037】
次に、第1〜第3搬送ローラー対41〜43について説明する。なお、第1〜第3搬送ローラー対41〜43は、何れも同様の構成を有しているので、第1搬送ローラー対41を例にして、以下にその構成を説明する。また、第1搬送ローラー対41の説明に用いる図3においては、第1固定導入ガイド37及び第2固定導入ガイド38の断面図示を省略している。
【0038】
図3に示すように、第1搬送ローラー対41は、連続紙S及びカット紙CSの搬送方向と交差する幅方向(前後方向)に延びる駆動軸41aと、この駆動軸41aに対して軸線方向に間隔をおいて一体回転可能に支持された複数(本実施形態では6つ)の駆動ローラー41bを備えている。駆動ローラー41bは、相対的に摩擦係数の低い、例えば金属材料などにより円筒状に形成されている。駆動軸41aは、搬送モーター47の出力軸と駆動伝達可能に接続されている。また、第1搬送ローラー対41は、前後方向に延びる回転軸41cに対して軸線方向に間隔をおいて回転可能に支持された複数(本実施形態では6つ)の従動ローラー41dを備えている。従動ローラー41dは、相対的に摩擦係数の高い、例えば硬質ゴムなどにより円筒状に形成されている。
【0039】
そして、第1搬送ローラー対41における複数の駆動ローラー41bと複数の従動ローラー41dは、駆動軸41a及び回転軸41cの軸方向において互いに連続紙S及びカット紙CSを挟んで対向するように配置されている。そして、駆動ローラー41bと従動ローラー41dとにより連続紙S及びカット紙CSを挟持した状態で駆動ローラー41bの駆動回転に伴って従動ローラー41dが従動回転することで連続紙S及びカット紙CSの搬送を行うようになっている。また、図2に示すように、第1搬送ローラー対41は、搬送経路の上流端において駆動ローラー41bの方が相対的に上側(すなわち、第2固定反転ガイド45側)に位置するとともに、従動ローラー41dの方が相対的に下側(すなわち、フラッパ46側)に位置するように配置されている。
【0040】
図2に示すように、第2搬送ローラー対42は、第1搬送ローラー対41と同様に、駆動軸42aに支持された低摩擦係数の金属材料からなる駆動ローラー42bと、回転軸42cに支持された高摩擦係数の硬質ゴムからなる従動ローラー42dとを備えている。そして、第2搬送ローラー対42は、長尺用搬送経路の略中央の位置において、駆動ローラー42bが水平方向の左側(すなわち、第1固定反転ガイド44側)に位置するとともに従動ローラー42dが水平方向の右側(すなわち、第2固定反転ガイド45側)に位置するように配置されている。
【0041】
第3搬送ローラー対43は、第1及び第2搬送ローラー対41,42と同様に、駆動軸43aに支持された低摩擦係数の金属材料からなる駆動ローラー43bと、回転軸43cに支持された高摩擦係数の硬質ゴムからなる従動ローラー43dとを備えている。そして、図2に示すように、第3搬送ローラー対43は、長尺用搬送経路の下流端において、駆動ローラー43bが鉛直方向の下側(すなわち、第2固定反転ガイド45側)に位置するとともに、従動ローラー43dが鉛直方向の上側(すなわち、第1固定反転ガイド44側)に位置するように配置されている。
【0042】
また、第1〜第3搬送ローラー対41〜43におけるそれぞれの駆動ローラー41b〜43bの摩擦係数は全て同じ値(一例としてμ1)になっている。また、第1〜第3搬送ローラー対41〜43におけるそれぞれの従動ローラー41d〜43dの摩擦係数は全て同じ値(一例としてμ2)になっている。そして、駆動ローラー41b〜43bの摩擦係数(μ1)は、従動ローラー41d〜43dの摩擦係数(μ2)よりも小さく(μ1<μ2)なっている。
【0043】
さらに、第1〜第3搬送ローラー対41〜43は、従動ローラー41d〜43dを対になっている相手側の駆動ローラー41b〜43bに対して接近及び離間する方向に移動させるための第1〜第3移動機構48〜50をそれぞれ備えている。すなわち、第1〜第3移動機構48〜50は、従動ローラー41d〜43dを各々の対になっている相手側の駆動ローラー41b〜43bに近接して連続紙S及びカット紙CSを挟持する挟持位置と、その相手側の駆動ローラー41b〜43bから離れて連続紙S及びカット紙CSを挟持しない離間位置との間で移動させる。
【0044】
図3に示すように、第1搬送ローラー対41における第1移動機構48は、回転軸41cの一端側(図3では右端側)に設けられている。図4(a)に示すように、第1移動機構48は、正面視略L字型に形成された板状の第1プレート51と、この第1プレート51に当接する板状の第1カム部材52とを備えている。また、第1カム部材52は、この第1カム部材52を駆動回転する第1カムモーター53の出力軸と動力伝達可能に接続されている。すなわち、第1カム部材52は第1カムモーター53の駆動に伴って回転軸52aを中心に回動するようになっている。
【0045】
第1プレート51は、左右方向に延びる水平部51aとこの水平部51aの左端側から鉛直方向上側に向かって延びる鉛直部51bとを備えている。水平部51aの右端側には回転軸41cが固定されている。また、鉛直部51bには、この鉛直部51bの右端から前側(すなわち、第1プレート51に対して垂直方向前側)に向かって突出した平板状の凸部51cが形成されている。そして、凸部51cに対して、第1カム部材52の外周面が左側から当接するようになっている。
【0046】
したがって、図4(a)に示す状態で第1カムモーター53が正方向に駆動されると、第1カム部材52が回転軸52aを中心に同図における時計回り方向に略90度回動される。すると、図4(b)に示すように、第1カム部材52の回動に伴い第1プレート51が、この第1プレート51の屈曲部分に設けられた回転軸51dを中心として同図における時計回り方向に回転されることによって、第1搬送ローラー対41における回転軸41c及び従動ローラー41dが左側下方に移動するようになっている。また、第1搬送ローラー対41における回転軸41c及び従動ローラー41dは、この従動ローラー41dのローラー面の一例である外周面が第1固定導入ガイド37の搬送経路面37aよりも下側に位置するように移動するようになっている(図11参照)。
【0047】
また、図4(b)に示す状態から第1カムモーター53が逆方向に駆動されると、第1カム部材52が回転軸52aを中心に同図における反時計回り方向に略90度回動される。すると、第1プレート51が回転軸51dを中心として同図における反時計回り方向に回転されて図4(a)に示す位置に戻るとともに、第1プレート51の回転に従って第1搬送ローラー対41における回転軸41c及び従動ローラー41dが右側上方に移動して図4(a)に示す位置に戻る。
【0048】
また、第2搬送ローラー対42における第2移動機構49は、第1移動機構48と同様に、回転軸42cの一端側に設けられている。図5(a)に示すように、第2移動機構49は、第1移動機構48と同様に、正面視略L字型の第2プレート54と、第2プレート54に当接する第2カム部材55とを備えている。また、第2カム部材55は第1カムモーター53の出力軸と動力伝達可能に接続されている。すなわち、第2カム部材55は第1カムモーター53の駆動に伴って回転軸55aを中心に回動するようになっている。
【0049】
第2プレート54は、左右方向に延びる水平部54aとこの水平部54aの左端側から鉛直方向上側に向かって延びる鉛直部54bとを備えている。水平部54aの右端側には、この水平部54aの下端から前側(すなわち、第2プレート54に対して垂直方向前側)に向かって突出した平板状の凸部54cが形成されている。また、鉛直部54bの上端側には、回転軸42cが固定されている。そして、凸部54cに対して、第2カム部材55の外周面が上側から当接するようになっている。
【0050】
したがって、図5(a)に示す状態で第1カムモーター53が正方向に駆動されると、第2カム部材55が回転軸55aを中心として同図における時計回り方向に略90度回動される。すると、図5(b)に示すように、第2カム部材55の回動に伴い第2プレート54が、この第2プレート54の屈曲部分に設けられた回転軸54dを中心として同図における時計回り方向に回転されることによって、第2搬送ローラー対42における従動ローラー42dが右側に移動するようになっている。また、第2搬送ローラー対42における回転軸42c及び従動ローラー42dは、この従動ローラー42dの外周面が第2固定反転ガイド45の搬送経路面45aよりも右側に位置するように移動するようになっている(図11参照)。
【0051】
また、図5(b)に示す状態から第1カムモーター53が逆方向に駆動されると、第2カム部材55が回転軸55aを中心に同図における反時計回り方向に略90度回動される。すると、第2プレート54が回転軸54dを中心として同図における反時計回り方向に回転されて図5(a)に示す位置に戻るとともに、第2プレート54の回転に従って第2搬送ローラー対42における回転軸42c及び従動ローラー42dが左側に移動して図5(a)に示す位置に戻る。
【0052】
また、第3搬送ローラー対43における第3移動機構50は、第1及び第2移動機構48,49と同様に、回転軸43cの一端側に設けられている。図6(a)に示すように、第3搬送ローラー対43における第3移動機構50は、第1移動機構48及び第2移動機構49と同様に、正面視略L字型の第3プレート56と、第3プレート56に当接する第3カム部材57とを備えている。また、第3カム部材57は第1カムモーター53の出力軸と動力伝達可能に接続されている。すなわち、第3カム部材57は第1カムモーター53の駆動に伴って回転軸57aを中心に回動するようになっている。
【0053】
第3プレート56は、左右方向において右側下方に向かって延びる水平部56aとこの水平部51aの左端側から左側下方に向かって延びる鉛直部56bとを備えている。水平部56aの右端側には回転軸43cが固定されている。また、鉛直部56bには、この鉛直部56bの右端から前側(すなわち、第3プレート56に対して垂直方向前側)に向かって突出した平板状の凸部56cが形成されている。そして、凸部56cに対して、第3カム部材57の外周面が左側から当接するようになっている。
【0054】
したがって、図6(a)に示す状態で第1カムモーター53が正方向に駆動されると、第3カム部材57が回転軸57aを回転中心として同図における反時計回り方向に略90度回動される。すると、図6(b)に示すように、第3カム部材57の回動に伴い第3プレート56が、第3プレート56の屈曲部分に設けられた回転軸56dを中心として同図における反時計回り方向に回転されることによって、第3搬送ローラー対43における従動ローラー43dが鉛直方向上方に移動するようになっている。また、第3搬送ローラー対43における回転軸43c及び従動ローラー43dは、この従動ローラー43dの外周面が第1固定反転ガイド44の搬送経路面44aよりも上側に位置するように移動するようになっている(図11参照)。
【0055】
また、図6(b)に示す状態から第1カムモーター53が逆方向に駆動されると、第3カム部材57が回転軸57aを中心に同図における時計回り方向に略90度回転する。すると、第3プレート56が回転軸56dを中心として同図における時計回り方向に回転されて図6(a)に示す位置に戻るとともに、第3プレート56の回転に従って第3搬送ローラー対43における回転軸43c及び従動ローラー43dが下側に移動して図6(a)に示す位置に戻る。
【0056】
次に、導入部35における第1及び第2固定導入ガイド37,38について図7及び図8に基づいて説明する。なお、図7では、同図において第1固定導入ガイド37の上方に位置する第2固定導入ガイド38及び第1固定反転ガイド44の上方に位置する第2固定反転ガイド45をそれぞれ一点鎖線での仮想線により図示している。
【0057】
図7及び図8(a)(b)に示すように、第1及び第2固定導入ガイド37,38における搬送方向下流側の端部には、その端部が櫛歯状をなすように連続紙S及びカット紙CSの搬送方向(左右方向)に沿った矩形状の凹部37b,38bが連続紙S及びカット紙CSの幅方向に間隔をおいた複数位置に切欠き形成されている。すなわち、第1固定導入ガイド37及び第2固定導入ガイド38の搬送方向下流側の端部において、第1搬送ローラー対41の駆動ローラー41b及び従動ローラー41dと連続紙S及びカット紙CSの幅方向で対応する複数位置には、駆動ローラー41b及び従動ローラー41dと同数(本実施形態では6つ)の凹部37b,38bが形成されている。換言すると、第1及び第2固定導入ガイド37,38における各々の搬送方向下流側の端部には、搬送方向下流側に向かって複数の矩形状の凸部37c,38cが連続紙S及びカット紙CSの幅方向で駆動ローラー41b及び従動ローラー41dが配置された領域を避けた複数(本実施形態では7つ)の位置に形成されている。
【0058】
そして、図8(a)に示すように、第1固定導入ガイド37におけるこれらの凸部37cは、第1搬送ローラー対41の従動ローラー41dと搬送方向(左右方向)に重なり合うように、回転軸41cの鉛直方向上方の位置まで延設している。また、第2固定導入ガイド38におけるこれらの凸部38cは、第1搬送ローラー対41の駆動ローラー41bと搬送方向(左右方向)に重なり合うように、駆動軸41aの鉛直方向下方の位置まで延設している。
【0059】
次に、連続紙S及びカット紙CSの搬送経路を切り換える経路切換部材の一例であるフラッパ46について図7及び図8に基づいて説明する。
図7及び図8(a)(b)に示すように、フラッパ46は、平面視略矩形板状の第1ガイド61と、この第1ガイド61の鉛直方向上方に重なるように配置された平面視略矩形板状の第2ガイド62とを備えている。第1ガイド61における連続紙S及びカット紙CSの搬送方向と交差する幅方向(前後方向)の長さは、第2ガイド62における幅方向の長さよりも短くなるように形成されている。また、第1ガイド61は、この第1ガイド61における連続紙S及びカット紙CSの搬送方向(左右方向)に沿った長さが、第2ガイド62における搬送方向(左右方向)の長さよりも大きくなるように形成されている。すなわち、第1ガイド61の搬送方向下流側の端部は、第2ガイド62の搬送方向下流側の端部よりも搬送方向下流側に向かって(左側に向かって)延出している。
【0060】
図8(a)に示すように、第2ガイド62は、その搬送方向上流側の端部が第1ガイド61における搬送方向上流側の端部に先端がそろえられた状態で接触している。また、第2ガイド62は、第1ガイド61に対して第2ガイド62における搬送方向下流側の端部が第1ガイド61における搬送方向下流側の端部との間に空間部ASを有した位置状態となるように配置されている。すなわち、第2ガイド62は、搬送方向下流側に向かうほど第1ガイド61との間隔、すなわち第1ガイド61との間に形成される空間部ASが大きくなるように、第1ガイド61に対して上側に向かって傾斜するように配置されている。そして、この第1ガイド61と第2ガイド62との間に形成された空間部ASに第1固定反転ガイド44及び第1固定搬送ガイド144における各々の搬送方向上流側の端部が挿入されて位置するようになっている。すなわち、第2ガイド62における搬送方向下流側の端部は、第1固定反転ガイド44における搬送方向上流側の端部に対して、垂直方向上側に位置することで、搬送経路に沿って搬送される連続紙Sの厚さ方向において上側から重なるように配置されている。また、第1ガイド61における搬送方向下流側の端部は、第1固定反転ガイド44における搬送方向上流側の端部に対して、垂直方向下側に位置することで、搬送経路に沿って搬送されるカット紙CSの厚さ方向において下側から重なるように配置されている。
【0061】
また、図7に示すように、第1ガイド61及び第2ガイド62における各々の搬送方向上流側の端部には、それらの端部が櫛歯状をなすように連続紙S及びカット紙CSの搬送方向(左右方向)に沿った矩形状の凹部61a,62aが連続紙S及びカット紙CSの幅方向に間隔をおいた複数位置にそれぞれ切欠き形成されている。すなわち、第1ガイド61及び第2ガイド62における各々の搬送方向上流側の端部において、第1搬送ローラー対41の駆動ローラー41b及び従動ローラー41dと連続紙S及びカット紙CSの幅方向で対応する複数位置には、駆動ローラー41b及び従動ローラー41dと同数(本実施形態では6つ)の凹部61a,62aがそれぞれ形成されている。換言すると、第1ガイド61及び第2ガイド62における各々の搬送方向上流側の端部には、搬送方向上流側に向かって複数の矩形状の凸部61b,62bが連続紙S及びカット紙CSの幅方向で駆動ローラー41b及び従動ローラー41dが配置された領域を避けた複数(本実施形態では7つ)の位置に形成されている。
【0062】
そして、図8(a)に示すように、これらの凸部61b,62bは、第1搬送ローラー対41の従動ローラー41dと搬送方向(左右方向)に重なり合うように、回転軸41cに近接する位置まで延設している。一方、第1ガイド61及び第2ガイド62における各々の搬送方向下流側の端部は、その連続紙S及びカット紙CSの搬送方向と交差する幅方向(左右方向)に沿って直線状に延びるように形成されている。
【0063】
また、図7及び図8(a)(b)に示すように、第2ガイド62は、この第2ガイド62の搬送方向下流側の位置において左側に向かって屈曲する正面視略L字状に形成された板状のアーム63の上端に支持されている。アーム63の左端側には、アーム63に対して垂直方向に突出して延びる2本の軸64a,64bの各々の一端側が、軸64aの方が軸64bよりもアーム63の屈曲部分から離間した位置となるように固定されている。そして、この2本の軸64a,64bの他端側には、フラッパ46を揺動させるための揺動機構65が設けられている。揺動機構65は、フラッパ46を、図8(a)に示すように第2ガイド62の上面が導入部35の第1固定導入ガイド37の搬送経路面(上面)37aよりも下方となる長尺用位置と、図8(b)に示すように第1ガイド61の下面が導入部35の第2固定導入ガイド38の搬送経路面(下面)38aよりも上方となる短尺用位置との間で揺動させる。
【0064】
図9(a)(b)に示すように、揺動機構65は、板状に形成されたプレート66と、このプレート66に当接するカム部材67とを備えている。また、カム部材67は、このカム部材67を駆動回転する第2カムモーター68の出力軸と駆動伝達可能に接続されている。すなわち、カム部材67は、第2カムモーターの駆動に伴って回転軸67aを中心に回動するようになっている。
【0065】
プレート66の略中央において鈍角に屈曲した屈曲部分には、一端側をアーム63に固定された軸64bの他端側が回転可能に支持されている。また、プレート66の左端側には、同じく一端側をアーム63に固定された軸64aの他端側が固定されている。また、プレート66において軸64bが支持されている屈曲部分よりも右側には、上端から後側(すなわち、プレート66に対して垂直方向後側)に向かって平板状の凸部66aが突出形成されている。そして、凸部66aに対して、カム部材67の外周面が下側から当接するようになっている。
【0066】
したがって、図9(a)に示す状態で第2カムモーター68が正方向に駆動されると、カム部材67が同図における時計回り方向に略90度回動される。すると、図9(b)に示すように、カム部材67の回動に伴いプレート66が軸64bを中心として同図における時計回り方向に回転されることによって、フラッパ46は、軸64bを回転中心として同図において時計回り方向に揺動して、フラッパ46の搬送方向上流側の端部が上方に移動する。図8(b)に示すように、短尺用位置に位置するフラッパ46の搬送方向上流側の端部は、第2固定導入ガイド38の搬送方向下流側の端部よりも鉛直方向上方に位置している。そして、フラッパ46は、反転搬送部36の搬送方向上流側において、反転経路への入り口を塞ぐようになっている(図10参照)。
【0067】
また、図9(b)に示す状態から第2カムモーター68が逆方向に駆動されると、カム部材67が回転軸67aを中心に同図における反時計回り方向に略90度回転する。すると、プレート66が軸64bを中心として同図における反時計回り方向に回転されて図9(a)に示す位置に戻るとともに、プレート66の回転に従ってフラッパ46が軸64bを中心として同図における反時計回り方向に揺動して、図9(a)に示す位置に戻る。図8(a)に示すように、長尺用位置に位置するフラッパ46の搬送方向上流側の端部は、第1固定導入ガイド37の搬送方向下流側の端部よりも鉛直方向下方に位置している。そして、フラッパ46は、搬送部136の搬送方向上流側において、搬送経路への入り口を塞ぐようになっている(図11参照)。
【0068】
次に、上記のように構成されたプリンター11の作用について、図10及び図11に従って説明する。
まず、記録が施された連続紙Sから相対的に短尺のカット紙CSが切断されて搬送される場合について説明する。なお、このとき、第1〜第3搬送ローラー対41〜43における各従動ローラー41d〜43dは挟持位置に位置しているとともに、フラッパ46は図8(b),図9(b)に示す短尺用位置に位置しているものとする。
【0069】
さて、例えばプリンター11において記録後に切断されて搬送される用紙として短尺のカット紙CSが選択されるとともに記録処理が開始されると、選択された情報に基づいて搬送装置27の第2カムモーター68が正転駆動される。すると、搬送装置27におけるフラッパ46が待機位置でもある長尺用位置から揺動位置でもある短尺用位置(図8(b)参照)に揺動(変位)する。なお、第1〜第3搬送ローラー対41〜43の各従動ローラー41d〜43dは挟持位置に位置したままである。そして、連続紙Sが繰り出し部13から繰り出されて搬送方向の上流側から下流側へと搬送される。続いて、連続紙Sが記録部17における記録ヘッド19の下方を通過するときに、記録ヘッド19から連続紙Sに対してインクが噴射されることにより、連続紙Sの表面に記録が施される。
【0070】
インクが付着した連続紙Sは、さらに下流側に搬送されてカッター21の下方を通過するときに、カッター21により相対的に短尺のカット紙CSに切断される。切断されたカット紙CSは、さらに下流側に搬送されてカール矯正部22を通過する。ここで、短尺のカット紙CSは、デカールローラー25から挟圧力を付与されることによりカールが矯正(デカール)される。そして、カット紙CSは搬送装置27へと搬送される。
【0071】
図10に示すように、カールが矯正されるとともに搬送装置27内に搬送された短尺のカット紙CSは、導入部35における第1固定導入ガイド37の搬送経路面37aに摺接しながら第1搬送ローラー対41へと搬送される。このとき、第1搬送ローラー対41の従動ローラー41dは挟持位置に位置している。そのため、第1搬送ローラー対41を通過するカット紙CSは、第1搬送ローラー対41に挟持された状態で、駆動ローラー41bの駆動回転に基づき連続紙Sが搬送方向下流側(左側)へ移動するのに伴い従動ローラー41dが従動回転することにより第1搬送ローラー対41から搬送力を付与される。そして、カット紙CSはさらに下流側へと搬送される。
【0072】
相対的に短尺のカット紙CSが搬送される場合には、フラッパ46は揺動位置でもある短尺用位置に位置しているため、反転搬送部36における反転経路への入り口は、その搬送経路の上流側の位置においてフラッパ46により塞がれている。そのため、第1搬送ローラー対41を通過した短尺のカット紙CSは、フラッパ46により反転搬送部36の反転経路内に搬入されることが抑制される。そして、短尺のカット紙CSは、記録が施された表面が、フラッパ46における第1ガイド61の下面に摺接しながら左側へと搬送される。すなわち、第1ガイド61は、その下面がカット紙CSを搬送する搬送経路面となる。
【0073】
第1ガイド61の下面を摺動する短尺のカット紙CSは、第1搬送ローラー対41から付与される搬送力により、記録が施された表面が第1ガイド61の下面に押し付けられながら搬送されることになる。そのため、この短尺のカット紙CSの記録が施された表面に対しては、第1ガイド61における搬送方向下流側の端部から力が加わることになる。ここで、仮に、第1ガイド61における搬送方向下流側の端部が櫛歯状に形成されている場合には、この櫛歯状の端部によって、カット紙CSの表面に施された記録が乱されるとともに、そのカット紙CSの表面に櫛歯状の端部の摺接した跡が形成される虞がある。
【0074】
しかし、本実施形態では、第1ガイド61における搬送方向下流側の端部は、カット紙CSの幅方向に沿って直線状に形成されている。そのため、第1ガイド61における搬送方向下流側の端部からの力が、この端部を通過するカット紙CSに対して幅方向に沿って均一にかかる。そして、第1ガイド61における搬送方向下流側の端部を通過するカット紙CSは、第1ガイド61に押し付けられながら搬送されても、表面に施された記録が乱されないとともに第1ガイド61における搬送方向下流側の端部に摺接した跡が形成されない。
【0075】
そして、第1ガイド61における搬送方向下流側の端部を通過した短尺のカット紙CSは、さらに下流側(図10では左側)へと搬送されて、搬送部136における第1固定搬送ガイド144の下面を摺動する。
【0076】
ここで、第1固定搬送ガイド144における搬送方向上流側の端部は、第1ガイド61における搬送方向下流側の端部に対してカット紙CSの厚さ方向(上下方向)で重なっているとともに、第1ガイド61における搬送方向下流側の端部よりも上側に位置している。すなわち、第1固定搬送ガイド144における搬送方向上流側の端部は、第1ガイド61における搬送方向下流側の端部との間に搬送方向への隙間を設けることなく配置されている。そして、カット紙CSは、その搬送方向における先端部(搬送方向下流側の端部)がフラッパ46の搬送方向下流側に隣接するように配置された第1固定搬送ガイド144の搬送方向上流側の端部に引っ掛けられることなく円滑に下流側へと搬送される。
【0077】
そして、この短尺のカット紙CSは、記録が施された表面が上を向いた状態で搬送方向下流側(図10では左側)に向かってさらに搬送された後、短尺用排出口34からケース31外へと排出される。
【0078】
次に、記録が施された連続紙S(長尺の記録媒体)から相対的に長尺のカット紙CSが切断されて搬送される場合について説明する。このとき、第1〜第3搬送ローラー対41〜43における各従動ローラー41d〜43dは挟持位置に位置しているとともに、フラッパ46は待機位置でもある長尺用位置に位置しているものとする。
【0079】
さて、例えばプリンター11において記録後に切断されて搬送される用紙として長尺のカット紙CSが選択されるとともに記録処理が開始されると、選択された情報に基づいて搬送装置27の第1カムモーター53が正転駆動される。すると、搬送装置27における第1〜第3搬送ローラー対41〜43の各従動ローラー41d〜43dが離間位置へと移動する。なお、フラッパ46は、待機位置でもある長尺用位置に位置したままである。そして、連続紙Sが繰り出し部13から繰り出されて搬送方向の上流側から下流側へと搬送される。続いて、連続紙Sが記録部17における記録ヘッド19の下方を通過するときに、記録ヘッド19から連続紙Sの表面に対してインクが噴射されることにより、連続紙Sの表面に記録が施される。
【0080】
連続紙Sは、その搬送方向における先端部(搬送方向下流側の端部)が記録ヘッド19の下方を通過した後においても、その連続紙Sの上流側部位に対する記録ヘッド19による記録が継続されながら、さらに下流側に搬送されて、その先端部がカッター21の下方を通過する。そして、カッター21を通過した連続紙Sの先端部はさらに搬送されてカール矯正部22を通過する。ここで、連続紙Sは、その上流側部位において記録ヘッド19による記録が継続しているため、デカールローラー25から挟圧力を付与されることはない。そして、連続紙Sはカールの矯正が行われずにカールした状態のまま搬送装置27へと搬送される。
【0081】
図11に示すように、上流側部位において記録ヘッド19による記録が継続している状態で先端部が搬送装置27内に搬送された連続紙Sは、導入部35における第2固定導入ガイド38における搬送経路面38aに摺接しながら第1搬送ローラー対41へと搬送される。そして、連続紙Sの先端部が第1搬送ローラー対41を通過するときに、連続紙Sは駆動ローラー41bに当接することにより駆動ローラー41bから搬送力を付与される。一方、第1搬送ローラー対41の従動ローラー41dは、その従動ローラー41dの外周面が第1固定導入ガイド37における搬送経路面37aよりも下方となる離間位置に位置している。そのため、第1搬送ローラー対41を通過する連続紙Sは、従動ローラー41dには当接しない。そして、上流側部位において記録ヘッド19による記録が継続している連続紙Sは、第1搬送ローラー対41の従動ローラー41dから搬送負荷を加えられることなく、さらに下流側へと搬送される。
【0082】
連続紙Sが搬送される場合には、フラッパ46は待機位置でもある長尺用位置に位置しているため、搬送部136における搬送経路への入り口は、その搬送経路の上流側の位置においてフラッパ46により塞がれている。そのため、第1搬送ローラー対41を通過した連続紙Sは、フラッパ46により搬送部136の短尺用搬送経路内に搬入されることが抑制される。そして、連続紙Sは、記録が施された表面が上を向いた状態でフラッパ46の第2ガイド62上へと搬送される。
【0083】
フラッパ46の第2ガイド62上に搬送された連続紙Sは、第2ガイド62の上面を摺動しながら、さらに下流側(図11では左斜め上方)へと搬送される。すなわち、第2ガイド62は、その上面が連続紙Sを搬送する搬送経路面となる。そして、連続紙Sは、フラッパ46における第2ガイド62の上面から第1固定反転ガイド44の搬送経路面44a上へと搬送される。
【0084】
ここで、第1固定反転ガイド44における搬送方向上流側の端部は、第2ガイド62における搬送方向下流側の端部に対して連続紙Sの厚さ方向(上下方向)で重なっているとともに、第2ガイド62における搬送方向下流側の端部よりも下側に位置している。すなわち、第1固定反転ガイド44における搬送方向上流側の端部は、第2ガイド62における搬送方向下流側の端部との間に搬送方向への隙間を設けることなく配置されている。そして、連続紙Sは、その先端部がフラッパ46の搬送方向下流側に隣接するように配置された第1固定反転ガイド44の搬送方向上流側の端部に引っ掛けられることなく円滑に第2ガイド62の上面から第1固定反転ガイド44の搬送経路面44a上へと搬送される。
【0085】
また、反転経路は屈曲が強いため、連続紙Sは、反転搬送部36において外周側(図11では左側)に位置するフラッパ46の第2ガイド62の上面及び第1固定反転ガイド44の搬送経路面44aに押し付けられながら搬送される。そのため、第2ガイド62の端部を通過する連続紙Sに対して、第2ガイド62における搬送方向下流側の端部から力が加わることになる。ここで、仮に、第2ガイド62における搬送方向下流側の端部が櫛歯状に形成されている場合には、連続紙Sの裏面に櫛歯状の端部の摺接した跡が形成される虞がある。
【0086】
しかし、本実施形態では、第2ガイド62における搬送方向下流側の端部は、連続紙Sの幅方向に沿って直線状に延びるように形成されている。そのため、第2ガイド62における搬送方向下流側の端部からの力が、この端部を通過する連続紙Sに対して幅方向に沿って均一にかかる。そして、第2ガイド62における搬送方向下流側の端部を通過する連続紙Sは、第2ガイド62に押し付けられながら搬送されても、第2ガイド62における搬送方向下流側の端部に摺接した跡が形成されることはない。
【0087】
続いて、連続紙Sは、第1固定反転ガイド44の搬送経路面44aを摺動しながら、さらに下流側へと搬送される。そして、連続紙Sは、第2搬送ローラー対42を通過するときに、第1固定反転ガイド44側に配置された駆動ローラー42bに当接することにより、駆動ローラー42bから搬送力を付与される。一方、第2搬送ローラー対42の従動ローラー42dは、その従動ローラー42dの外周面が第2固定反転ガイド45における搬送経路面45aよりも右側となる離間位置に位置している。そのため、第2搬送ローラー対42を通過する連続紙Sは、従動ローラー42dに当接しない。そして、上流側部位において記録ヘッド19による記録が継続している連続紙Sは、第1搬送ローラー対41の従動ローラー41dに加え、第2搬送ローラー対42の従動ローラー42dからも搬送負荷を加えられることなく、さらに下流側へと搬送される。
【0088】
搬送方向の先端部が第2搬送ローラー対42を通過するとともに第1固定反転ガイド44の搬送経路面44aを摺動しながら下流側へと搬送された連続紙Sは、反転されることにより記録が施された表面が下方を向く。すると、連続紙Sは、第3搬送ローラー対43の搬送方向上流側付近において重力を受けることにより第2固定反転ガイド45の搬送経路面45aを摺動するようになる。
【0089】
そして、連続紙Sは、第3搬送ローラー対43を通過するときに、第2固定反転ガイド45側に配置された駆動ローラー43bに当接することにより、駆動ローラー43bから搬送力を付与される。一方、第3搬送ローラー対43の従動ローラー43dは、その従動ローラー43dの外周面が第1固定反転ガイド44における搬送経路面44aよりも上側となる離間位置に位置している。そのため、第3搬送ローラー対43を通過する連続紙Sは、従動ローラー43dに当接しない。そして、上流側部位において記録ヘッド19による記録が継続している連続紙Sは、第1及び第2搬送ローラー対41,42の従動ローラー41d,42dに加え、第3搬送ローラー対43の従動ローラー43dからも搬送負荷を加えられることなく下流側へと搬送される。
【0090】
また、第1〜第3搬送ローラー対41〜43の各駆動ローラー41b〜43bは、相対的に摩擦係数の低い金属材料などにより形成されているため、連続紙Sに対して摩擦抵抗に基づき搬送力を付与するものの、その摩擦抵抗は極めて小さなものであり、搬送負荷は加えないようになっている。反転搬送部36を通過して裏表が反転された連続紙Sは、記録が施された表面が下側を向いた状態で長尺用排出口33から本体ケース12の上面12bに向かって排出される。
【0091】
また、上流側部位において記録ヘッド19による記録が終了した連続紙Sは、カッター21により切断されて相対的に長尺状のカット紙CSとなる。カッター21による連続紙Sの切断が行われると、搬送装置27の第1カムモーター53が逆転駆動されて第1〜第3搬送ローラー対41〜43の各従動ローラー41d〜43dが離間位置から挟持位置へと移動する。そして、長尺状のカット紙CSは、第1〜第3搬送ローラー対41〜43に挟持された状態となる(図2参照)。
【0092】
その後、長尺状のカット紙CSは、各駆動ローラー41b〜43bの駆動回転に基づき長尺状のカット紙CSが搬送方向下流側へ移動するのに伴い、対になっている相手側の各従動ローラー41d〜43dが従動回転することで第1〜第3搬送ローラー対41〜43から搬送力を付与される。そして、長尺状のカット紙CSは、そのカット紙CSの切断された後端部(搬送方向上流側の端部)が搬送装置27のケース31外に排出されるまで搬送される。
【0093】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)第1〜第3搬送ローラー対41〜43は、これら第1〜第3搬送ローラー対41〜43が配置された搬送経路内を長尺の記録媒体である連続紙Sが搬送される場合には、その連続紙Sに対して第1〜第3搬送ローラー対41〜43が非挟持状態となる。すなわち、第1搬送ローラー対41が配置された位置と該位置よりも上流側の記録位置との間の距離寸法よりも搬送方向に沿う長さ寸法が長尺の連続紙Sであるときには、該連続紙Sに対して第1〜第3搬送ローラー対41〜43が非挟持状態となることによって、第1〜第3搬送ローラー対41〜43が連続紙Sに加える搬送負荷を挟持状態の場合よりも小さくする。したがって、搬送経路を通過する連続紙Sに対する搬送負荷が抑制される。その結果、例えば連続紙Sが第1〜第3搬送ローラー対41〜43の各駆動ローラー41b〜43bと対になっている相手側の各従動ローラー41d〜43dとの間を通過するときに、その連続紙Sにおける上流側部位に対して記録位置で記録が同時に施されるような場合にも、その記録品質の低下の抑制に貢献することができる。
【0094】
(2)第1〜第3搬送ローラー対41〜43は、連続紙Sに対してこれら第1〜第3搬送ローラー対41〜43を非挟持状態とする場合には、各従動ローラー41d〜43dを各回転軸41c〜43cの軸方向と直交する方向であって且つ連続紙Sの搬送経路から離間する方向に移動させるだけでよい。したがって、搬送負荷を抑制可能な搬送装置27の構成を容易に実現できる。
【0095】
(3)第1〜第3搬送ローラー対41〜43においては、各駆動ローラー41b〜43bよりも、対になっている相手側の各従動ローラー41d〜43dの方が各回転軸41c〜43cの軸方向と交差する方向への移動が容易である。そのため、連続紙Sに対して非挟持状態となる第1〜第3搬送ローラー対41〜43を容易に構成することができる。したがって、そのように搬送される連続紙Sに加わる搬送負荷を抑制可能な搬送装置27を容易に実現できる。
【0096】
(4)第1〜第3搬送ローラー対41〜43の各従動ローラー41d〜43dは、対になっている相手側の各駆動ローラー41b〜43bよりも摩擦係数の高い材料により形成されている。そのため、各従動ローラー41d〜43dが対になっている相手側の各駆動ローラー41b〜43bとの間にカット紙CSを挟持した挟持状態においては、搬送されるカット紙CSに対して充分な搬送力を付与することができる。したがって、搬送装置27は、連続紙Sを搬送する際に該連続紙Sに対して加わる搬送負荷を抑制する機能と、カット紙CSを搬送する際に該カット紙CSに対して必要な搬送力を付与する機能とを両立することができる。
【0097】
(5)フラッパ46は、その搬送方向下流側の端部が、第1固定反転ガイド44及び第1固定搬送ガイド144の各搬送方向上流側の端部と、搬送される連続紙S及びカット紙CSの厚さ方向において重なるように配置されている。そのため、連続紙S及びカット紙CSの各搬送方向において隣接配置されるフラッパ46と第1固定反転ガイド44及び第1固定搬送ガイド144とを各搬送方向において両部材間に無駄な空間を設けることなく、各搬送経路に沿って配置することができる。したがって、搬送経路の途中にフラッパ46を変位自在に備えた場合でも、搬送方向における装置の大型化と連続紙S及びカット紙CSの搬送不良とを抑制することができる。
【0098】
(6)フラッパ46は、その搬送方向下流側の端部に、第1固定反転ガイド44及び第1固定搬送ガイド144の搬送方向上流側の端部を挿入可能とする空間部ASを有している。そのため、フラッパ46により切換位置で搬送方向を切り換えられた連続紙S及びカット紙CSを、フラッパ46の下流側に隣接配置された第1固定反転ガイド44及び第1固定搬送ガイド144の搬送方向上流側の端部に引っ掛けたりすることなく円滑に下流側へ搬送することができる。
【0099】
(7)板状をなす第1ガイド及び第2ガイドの搬送方向下流側の端部同士の間に、フラッパ46の下流側に隣接配置される第1固定反転ガイド44及び第1固定搬送ガイド144における各々の搬送方向上流側の端部を挿入可能とする空間部ASが形成されるように、両ガイドを一体化するという簡単な構成により、搬送装置27の大型化と連続紙S及びカット紙CSの搬送不良とを抑制することができる。
【0100】
(8)フラッパ46の第1ガイド61及び第2ガイド62における搬送方向下流側の各端部は、幅方向に沿って直線状に延びるように形成されている。そのため、連続紙S及びカット紙CSが第1ガイド61及び第2ガイド62における搬送方向下流側の端部に当接しながら搬送される場合、連続紙S及びカット紙CSに対しては、第1ガイド61及び第2ガイド62における各搬送方向下流側の端部からの力が連続紙S及びカット紙CSの搬送方向と交差する幅方向において均一にかかることになる。したがって、連続紙S及びカット紙CSにおける第1ガイド61及び第2ガイド62の搬送方向下流側の端部と摺接した面に摺接した跡が形成されることを抑制することができる。
【0101】
(9)第1搬送ローラー対41の従動ローラー41dは、離間位置に移動する場合には、従動ローラー41dの外周面が第1固定導入ガイド37における搬送経路面37aよりも下方となる位置に移動する。そのため、第1搬送ローラー対41を通過する連続紙Sは、従動ローラー41dには当接しない。したがって、第1搬送ローラー対41は、上流側部位において記録ヘッド19による記録が継続している連続紙Sを、第1搬送ローラー対41の従動ローラー41dから搬送負荷を加えることなく、さらに下流側へと搬送することができる。その結果、例えば連続紙Sが第1搬送ローラー対41の駆動ローラー41bと従動ローラー41dとの間を通過するときに、その連続紙Sにおける上流側部位に対して記録位置で記録が同時に施されるような場合にも、その記録品質の低下の抑制に貢献することができる。
【0102】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・記録媒体は連続紙Sやカット紙CSに限らず、例えば連続フィルムやカットフィルムなどであってもよい。また、短尺用排出口34から排出される記録媒体は搬送途中の連続紙Sを切断することにより形成されたカット紙CSに限らず、単票紙を用いてもよい。
【0103】
・第1〜第3搬送ローラー対41〜43の各駆動ローラー41b〜43b及び各従動ローラー41d〜43dは、各駆動軸41a〜43a及び各回転軸41c〜43cの軸線方向に複数に分割されたものに限らず、例えば各駆動軸41a〜43a及び各回転軸41c〜43cに沿って延びる長尺円筒状をなすものであってもよい。また、その場合には、第1固定導入ガイド37及び第2固定導入ガイド38における搬送方向下流側の端部及びフラッパ46における第1ガイド61及び第2ガイド62の搬送方向上流側の端部に各凸部37c,38c,61b,62bは設けられていなくてもよい。
【0104】
・第1〜第3搬送ローラー対41〜43における各駆動ローラー41b〜43bの各外周面は、これら各外周面の摩擦係数が対になっている相手側の各駆動ローラー41b〜43bにおける各外周面の摩擦係数よりも高い部材により形成されていなくてもよい。ただし、その場合には、第1〜第3搬送ローラー対41〜43における各駆動ローラー41b〜43b及び各従動ローラー41d〜43dのカット紙CSに対する挟持力が強くなっているなど、カット紙CSを挟持したときに各従動ローラー41d〜43dが空回りしないようになっていることが望ましい。
【0105】
・第1〜第3搬送ローラー対41〜43は、各従動ローラー41d〜43dが対になっている相手側の各駆動ローラー41b〜43bに対して離間移動するものに限らず、各駆動ローラー41b〜43bが対になっている相手側の各従動ローラー41d〜43dに対して離間移動してもよい。また、第1〜第3搬送ローラー対41〜43は、対になっている相手側のローラーのうち一方が他方に対して離間するものに限らず、両方のローラーが互いに離れる方向に離間移動してもよい。さらに、第1〜第3搬送ローラー対41〜43は、駆動ローラーと従動ローラーとにより対を形成しているものに限らず、駆動ローラー同士で対になっていてもよい。
【0106】
・第1〜第3搬送ローラー対41〜43の各従動ローラー41d〜43dは、各従動ローラー41d〜43dの外周面が、各従動ローラー41d〜43dが配置されている側に位置する第1固定導入ガイド37、第1固定反転ガイド44及び第2固定反転ガイド45の搬送経路面37a,44a及び45aよりも搬送経路に対して外側に位置するまで移動しなくてもよい。ただし、その場合には、各従動ローラー41d〜43dは、カット紙CSに対する摩擦係数が相対的に低い部材により形成されていることが望ましい。
【0107】
・第1〜第3搬送ローラー対41〜43の各従動ローラー41d〜43dは、全て一緒に(同じタイミングで)移動するものに限らず、例えば個別に移動するものであってもよい。
【0108】
・搬送装置27内に配置される搬送ローラー対は3つ以上であってもよい。また3つ以下であってもよい。
・第1固定導入ガイド37とフラッパ46との間に第1搬送ローラー対41を設けなくてもよい。その場合には、フラッパ46の搬送方向上流側の櫛歯状に形成された端部における複数の凸部61bが、第1及び第2固定導入ガイド37,38の櫛歯状に形成されている搬送方向下流側の各端部における複数の凹部37b,38bと噛み合うようになっていることが望ましい。このような場合には、連続紙S及びカット紙CSの搬送方向において隣接配置されるフラッパ46と下流側の第1固定反転ガイド44及び第1固定搬送ガイド144との間のみならず、そのフラッパ46と上流側の第1及び第2固定導入ガイド37,38との間においても、隣接する両部材間に無駄な空間を設けることがない。したがって、搬送経路の途中にフラッパ46を変位自在に備えた場合において、搬送方向における装置の大型化を更に一層抑制することができる。
【0109】
・フラッパ46は、2枚の板状の第1ガイド61及び第2ガイド62により形成されているものに限らず、例えば搬送方向下流側となる底辺部に断面視略矩形状や三角形状、円弧状などの凹部が搬送方向に沿って凹設された断面視略三角形状の角柱などであってもよい。
【0110】
・上記実施形態では、記録装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、記録装置はプリンターに限らず、FAX装置、コピー装置、あるいはこれら複数の機能を備えた複合機などに具体化してもよい。また、インクジェット式プリンターにおいても、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする記録装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる記録ヘッド等を備える各種の記録装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記記録装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、記録装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する記録装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する記録装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する記録装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する記録装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する記録装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する記録装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の記録装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0111】
CS…カット紙、S…長尺状の記録媒体の一例である連続紙、11…記録装置の一例であるプリンター、19…記録ヘッド、27…搬送装置、37…第1固定導入ガイド、38…第2固定導入ガイド、39…搬送経路形成部材の一例である反転経路形成部材、44…第1固定反転ガイド、45…第2固定反転ガイド、41…第1搬送ローラー対、41b…駆動ローラー、41d…従動ローラー、42…第2搬送ローラー、41b…駆動ローラー、42d…従動ローラー、43…第3搬送ローラー対、43b…駆動ローラー、43d…従動ローラー、46…経路切換部材の一例であるフラッパ、61…第1ガイド、62…第2ガイド、144…第1固定搬送ガイド、145…第2固定搬送ガイド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路の上流側から下流側へと記録媒体を搬送する搬送装置において、
前記搬送経路における前記記録媒体に対して記録が施される記録位置よりも下流側の位置に配置されるとともに、その位置を通過する前記記録媒体に対して該記録媒体の一面側に位置するローラー及び他面側に位置するローラーのうち少なくとも一方が当接して回転することにより、該記録媒体を前記搬送経路に沿って搬送する搬送ローラー対を備え、
該搬送ローラー対は、前記両ローラー間を前記記録媒体が通過する際において、該記録媒体の搬送方向に沿う長さ寸法が前記搬送ローラー対の配置された位置と該位置よりも上流側の前記記録位置との間の距離寸法よりも長尺である場合には、該長尺の記録媒体に対して前記両ローラーが非挟持状態となる
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記搬送ローラー対は、前記両ローラーが前記非挟持状態となる場合、前記少なくとも一方のローラーが該ローラーの軸方向と直交する方向であって且つ前記搬送経路から離間する方向に移動する
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送ローラー対は、前記記録媒体における一面側に当接して駆動回転する駆動ローラーと、該駆動ローラーの駆動回転に伴い搬送される前記記録媒体における他面側に当接して従動回転する従動ローラーとで構成されているとともに、該従動ローラーが前記長尺の記録媒体を搬送する場合に前記駆動ローラーから離間する方向に移動する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記従動ローラーのローラー面は、該ローラー面の摩擦係数が前記駆動ローラーにおけるローラー面の摩擦係数よりも高い部材により形成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
搬送経路の上流側から下流側へと搬送される記録媒体に対して記録を施す記録手段と、
該記録手段により記録が施された前記記録媒体を搬送する請求項1〜4のうち何れか一項に記載の搬送装置と、を備えた
ことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−46282(P2012−46282A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188278(P2010−188278)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】