説明

搬送装置

【課題】トラフを水平方向に往復異速駆動させることにより、物品を搬送する搬送装置において、搬送物品の落下排出時における衝撃を和らげるとともに、排出口に物品の噛み込みや物品の破片等の残存を生じないようにする。
【解決手段】トラフ2を往動時と復動時で速度が異なるように、略水平方向に往復異速駆動させることにより、物品を水平方向に搬送する搬送装置において、前記トラフ2は、物品搬送方向に延びる底板と、該底板の側端部に連結形成されて、前記物品搬送方向Bに、かつ、前記底板21の上面側に延びる側壁板22,23と、で形成されており、前記側壁板22が、前記物品搬送方向Bにおける一部区間において、前記底板21との連結部分を回動中心として外側下方に回動することにより、前記トラフ2の側壁22に搬送物品の排出口2bを開口させるゲート221になるとともに、前記排出口2bから排出される物品を下方に滑らせる傾斜板を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラフを水平方向に往復異速駆動させることにより、物品を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラフを往動時と復動時で駆動速度が異なるように、水平方向に往復異速駆動させることにより、物品を搬送する搬送装置では、トラフの底板に排出口が形成されており、この排出口に設けられて水平スライド開閉するゲートを作動させることにより、搬送物品を排出している(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【特許文献1】特開昭62−201708号公報
【特許文献2】特表2004−523443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の搬送装置では、ゲートの作動機構を設けるスペースを取るために、排出口(トラフの底板)の高さを下げることができず、落下排出時の衝撃で物品が破損するという問題がある。また、排出口とこれを下方から覆うように閉鎖するゲートとの間には当然ながら段差があり、しかもゲートは排出口に対してスライドする構造であるため、排出口とゲートの段差部分に物品の破片や粕が残存したり、ゲートと底板の隙間に物品が噛み込んだりするという不都合を生じていた。特に、搬送される物品がポテトチップスのような揚げ菓子である場合には、排出口の周辺に油汚れがこびり付いたり、残存した破片や粕に含まれる油が酸化して、商品の品質を低下させたりする不具合を生じる。
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑みて、トラフを水平方向に往復異速駆動させることにより、物品を搬送する搬送装置において、搬送物品の落下排出時における衝撃を和らげるとともに、排出口に物品の噛み込みや物品の破片等の残存を生じないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、トラフを往動時と復動時で速度が異なるように、略水平方向に往復異速駆動させることにより、物品を水平方向に搬送する搬送装置において、前記トラフは、物品搬送方向に延びる底板と、該底板の側端部に連結形成されて、前記物品搬送方向に、かつ、前記底板の上面側に延びる側壁板と、で形成されており、前記側壁板が、前記物品搬送方向における一部区間において、前記底板との連結部分を回動中心として外側下方に回動することにより、前記トラフの側壁に搬送物品の排出口を開口させるゲートになるとともに、前記排出口から排出される物品を下方に滑らせる傾斜板を形成することを特徴とする搬送装置を提供する。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の搬送装置において、前記トラフ内の搬送物品が前記排出口に向かって滑るように、前記底板が、前記物品搬送方向と直交する方向に傾斜させられていることを特徴とする搬送装置を提供する。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の搬送装置において、前記底板の傾斜角度と、前記傾斜板の傾斜角度が略同一であることを特徴とする搬送装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に記載の搬送装置によれば、以下の優れた効果を奏する。物品をトラフの底板から下方へ延びる傾斜板を介して落下させるため、トラフの底板に形成される排出口から直接落下させる場合よりも自由落下の落差が小さくなり、排出時における衝撃が和らげられて、物品の破損が防止される。また、トラフの底板に凹凸となる排出口を設けないため、清掃がし易く、雑菌等が繁殖する物品粕が溜まることがない。しかも、ゲートは回動開閉させられるため、水平スライド開閉する排出口のように搬送物品を噛み込むことがない。さらに、ゲートは底板との連結部分を回動中心として回動開閉するため、この連結部分にも段差が無く、物品粕が溜まりにくい。
【0009】
本発明の請求項2に記載の搬送装置によれば、請求項1に記載の搬送装置が奏する効果に加えて、以下の優れた効果を奏する。搬送物品が開放された排出口に向かって滑り落ちるように、前記底板が物品の搬送方向と直交する方向に傾斜させられているため、物品排出を速やかに行うことができる。しかも、傾斜板の下端をより下方に位置させることができるため、落下排出時に物品に加わる衝撃は一層和らげられる。
【0010】
本発明の請求項3に記載の搬送装置によれば、請求項2に記載の搬送装置が奏する効果に加えて、以下の優れた効果を奏する。傾斜板の傾斜角度が、底板の傾斜角度よりも緩やかに設定されていると、傾斜板と底板の連結部付近に物品の破片等が溜まる恐れがあり、逆に、傾斜板の傾斜角度が、底板の傾斜角度よりも急に設定されていると、傾斜板による落下衝撃の低減効果が小さくなるが、両角度を略同一に設定することで、これら二つの不都合を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る搬送装置を示す正面図、図2は、図1のX−X線断面図でトラフに搬送物品が載せられた状態を示す図、図3は、搬送装置に設けられるトラフの斜視図である。なお、トラフはその全長が大きいことから、図1及び図3では、トラフの延設方向の両端が省略されている。
【0012】
(搬送装置1)
搬送装置1は、図1乃至図3に示されるように、水平方向に延びて搬送物品が載せられる横断面コ字形のトラフ2と、トラフ2を支持して、往動時と復動時で駆動速度が異なるようにトラフ2を略水平方向(矢印A1及びA2方向)に往復異速駆動させるリンク機構3と、リンク機構3を駆動させる駆動手段4と、駆動手段4を制御する制御部5と、を備えてなり、前記往復異速駆動によって、トラフ2に載せられる搬送物品を水平方向(矢印B方向)に搬送する。
【0013】
(トラフ2)
トラフ2は、物品搬送方向に延び、かつ、物品搬送方向と直交する方向に傾斜する底板21と、底板21の両側端部に連結されて、物品搬送方向に、かつ、底板21の上面側に延びる二枚の側壁板22,23と、を有してなる。トラフ2は、リンク機構3によって、矢印A1で示される往動時には低速で、矢印A2で示される復動時には高速で略水平方向に往復異速駆動される。これにより、トラフ2に載せられた搬送物品は、トラフが低速で往動する際に、トラフ2と相対動きを生じることなく前進移動し、トラフ2が高速で復動する際に、トラフ2に対して相対的に滑ることで矢印B方向へ搬送される。底板21の傾斜方向の下端側に連結される側壁板22は、物品搬送方向における一部区間において、底板21との連結部分に設けられるヒンジ22aを中心に回動し、トラフ2の側壁2aに排出口2bを開口させるゲート221を形成する。
【0014】
ゲート221は、底板21の下面側に設けられる駆動シリンダ24,25の伸縮ロッド24a,25aとブラケット222を介して連結されており、図2に実線で示されるように、伸縮ロッド25a(24a)の伸長により排出口2bを閉鎖し、二点鎖線で示されるように、伸縮ロッド25a(24a)の短縮により、トラフ2の外側下方へ回動して排出口2bを開口する。トラフ2の底板21は、上述したように、排出口22aに向かってトラフ2内の搬送物品が滑るように傾斜させられているが、ゲート221は、外側下方に回動して排出口2bを開口した際に、排出口2bから排出される搬送物品をさらに下方へ連続的に滑らせて案内する傾斜板を形成する。底板21と傾斜板(ゲート221)は、傾斜角度が略同一に設定されており、段差なく滑らかに連続している。なお、排出口2bの両側には、傾斜板を滑り落ちてくる搬送物品が側方にこぼれないようにする案内ガード223,224が側壁板22からトラフ外側へ突出するように形成されている。
【0015】
(リンク機構3)
リンク機構3は、トラフ2を略水平方向に往復異速駆動させるための平行運動機構であって、梃子リンク31、補助リンク32を備えてなる。梃子リンク31と補助リンク32は、図1に示されるように、上端側に回動支持部31a,32aを、下端側に回動支持部31b,32bが設けられる棒状体であって、回動支持部31a,32aでトラフ2を受止支持し、回動支持部31b,32bが基台11の同じ高さ位置に受止支持されている。両リンク31,32は、リンク長さ(上下端の回動支持部間の距離)が同一で、かつ、相互に平行に設けられ、上端側が揺動することでトラフ2を略水平方向に平行移動させることができる。
【0016】
(駆動手段4)
駆動手段4は、連接リンク41、回転クランク42、原動機43、伝動装置44を有してなり、基台11に設けられてリンク機構3を往復異速駆動する。連接リンク41は、その一端を梃子リンク31の中途部に備えられる第三の回動支持部31cに連結され、他端を回転クランク42に設けられる回動支持部42aに連結される。回転クランク42は、原動機43により、プーリー及びベルトからなる伝動装置44を介して回転駆動させられる。原動機43は、梃子リンク31の揺動速度が、矢印A1で示される往動時に低速となり、矢印A2で示される復動時に高速となるように、制御部5で回転速度を制御されるサーボモーターであって、これによって、トラフ2が矢印A1及びA2方向に往復異速駆動させられる。
【0017】
(制御部5)
制御部5は、トラフ2に載せられた搬送物品の重量を検出することができる重量検出器(不図示)と接続されており、重量検出器からの出力信号に基づいてトラフ2上を搬送されている搬送物品の流量を検出することができる。さらに、制御部5は、原動機43の駆動速度で搬送物品の流量を制御し、排出口2bから排出される搬送物品の排出量を適宜調節する。
【0018】
(搬送装置1の特徴)
本実施形態に係る搬送装置1は、以下のような特徴を有する。第一に、トラフ2の側壁2aをなす側壁板22が、物品搬送方向における一部区間において、底板21との連結部分を中心に外側下方へ回動して、トラフ2の側壁2aに搬送物品の排出口2bを開口させるゲート221になるとともに、排出口2bから排出される物品を下方に滑らせる傾斜板を形成する、という特徴を有する。
【0019】
搬送物品をトラフ2の底板21から下方へ延びる傾斜板を介して落下させるため、搬送物品をトラフの底板自体に形成される排出口から直接落下させる従来の搬送装置よりも自由落下の落差が小さくなり、搬送物品に加わる衝撃が和らげられ、搬送物品の破損が防止される。また、底板21は、凹凸となる排出口が無く、図2に示されるように平坦に形成されているため、清掃がし易く、雑菌等が繁殖する物品粕が溜まる心配がない。しかも、ゲート221は回動開閉するため、水平スライド開閉する従来の排出口のように搬送物品を噛み込むことはない。さらに、ゲート221は底板21との連結部分を回動中心として回動開閉するため、排出口2b部分には段差が無く、物品粕が溜まりにくい。
【0020】
第二に、搬送装置1は、トラフ2内の搬送物品が排出口2bに向かって滑るように、底板21が、物品搬送方向と直交する方向に傾斜させられている、という特徴を有する。したがって、搬送物品が開放された排出口2bから自然に滑り落ちるようにして、物品排出を速やかに行うことができる。しかも、ゲート221で形成される傾斜板の下端をより下方に位置させることができるため、落下排出される搬送物品に加わる衝撃が一層和らげられて破損の心配が一層少なくなる。
【0021】
第三に、搬送装置1は、排出口2bが開口したときに、底板21の傾斜角度と、傾斜板(ゲート221)の傾斜角度が略同一である、という特徴を有する。傾斜板の傾斜角度が、底板21の傾斜角度よりも緩やかに設定されていると、傾斜板と底板21の連結部付近に物品の破片等が溜まる恐れがあり、逆に、傾斜板の傾斜角度が、底板21の傾斜角度よりも急に設定されていると、底板21に沿って滑り落ちてくる搬送物品が、排出口2bから傾斜板を介することなく直接落下して、傾斜板による落下衝撃の低減効果が得られなくなることがあるが、両角度を略同一に設定することで、これら二つの不都合を回避することができるものである。
【0022】
第四に、搬送装置1は、トラフ2を駆動するリンク機構3及び駆動手段4は、いわゆる梃子クランク機構で構成されているために、発生する振動はきわめて穏やかであり、トラフ2に載せられる物品の割れ欠け破損が少なく、また、ゲート開閉機構となる駆動シリンダ24,25に加わるダメージも少ないために装置故障が防止される。
【0023】
(上記実施形態の変形例)
上記実施形態では、トラフ2の往復異速駆動は、物品を搬送する方向に進む往動時に低速、物品の搬送方向と逆方向に戻る復動時に高速とするものとして説明したが、往動時に高速、復動時に低速とする往復異速駆動を採用しても良い。往動時の高速移動によって物品に搬送方向の慣性力を付与し、往動から復動への動作反転時に、搬送物品を慣性力でトラフ上を滑らせるようにして、水平方向に物品搬送する。また、上記実施形態では、トラフを水平方向に往復異速駆動させる手段として、梃子クランク機構による往復駆動方式を採用したが、駆動シリンダ24,25と同様の駆動シリンダを利用する等、他の駆動方式を採用することとしても良いことは勿論である。
【0024】
その他、本発明の搬送装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態に係る搬送装置を示す正面図。
【図2】図1のX−X線断面図で、トラフに搬送物品が載せられた状態を示す図。
【図3】搬送装置に設けられるトラフの斜視図。
【符号の説明】
【0026】
1 搬送装置
2 トラフ
2b 排出口
21 底板
22 側壁板
221 ゲート(傾斜板)
3 リンク機構
31 梃子リンク
32 補助リンク
4 駆動手段
41 連接リンク
42 回転クランク
43 原動機
44 伝動装置
5 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラフを往動時と復動時で速度が異なるように、略水平方向に往復異速駆動させることにより、物品を水平方向に搬送する搬送装置において、
前記トラフは、物品搬送方向に延びる底板と、該底板の側端部に連結形成されて、前記物品搬送方向に、かつ、前記底板の上面側に延びる側壁板と、で形成されており、
前記側壁板が、前記物品搬送方向における一部区間において、前記底板との連結部分を回動中心として外側下方に回動することにより、前記トラフの側壁に搬送物品の排出口を開口させるゲートになるとともに、前記排出口から排出される物品を下方に滑らせる傾斜板を形成することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送装置において、
前記トラフ内の搬送物品が前記排出口に向かって滑るように、前記底板が、前記物品搬送方向と直交する方向に傾斜させられていることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送装置において、
前記底板の傾斜角度と、前記傾斜板の傾斜角度が略同一であることを特徴とする搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−19075(P2008−19075A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−193719(P2006−193719)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】