説明

搬送装置

【課題】 軌道式であってもクリーン性に関する要求を満足することができ、しかも走行方向に関する傾きを生ずることの無い搬送装置を提供する。
【解決手段】 本発明による搬送装置は、走行経路に沿って敷設された一対のレール2A、2B上を走行する搬送装置であり、前記一対のレールの一方2Aの上を走行する駆動輪20と、前記一対のレールの他方2Bに、走行方向に間隔をおいて装着され、前記駆動輪による当該搬送装置の走行をガイドする2つのLMガイドブロック30A、30Bとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送装置に関し、特にフィルムコータ機やラミネータ機等の生産機に原反ロールを搬送、供給するのに適したロール体搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム用コーター機やラミネータ機等の生産機(以下、生産機と呼ぶ)へ、フィルムロールのような原反ロールを搬送、供給する場合、搬送装置として無人走行式の搬送台車、特にAGV(Automated Guided Vehicle)が使用されている。AGVは、原反ロールの巻き取り場所や保管場所において原反ロールを受け取り、軌道あるいは無軌道の走行路を走行して生産機における保持手段、例えばチャッキング装置に移載する。
【0003】
図4を参照して、上記のAGVの一例を無軌道式の場合について説明する。この種のAGV100の搬送対象となる原反ロール200は、ロール本体の中心に中空のコア210を有し、コア210はロール本体の両端から突出する突出部210−1を有する。
【0004】
AGV100は、原反ロール200を保持するためのコア受けブロック110と、原反ロール200の受け渡しに際してコア受けブロック110を昇降させるための油圧式のリフター機構120とを備えるほか、ここでは操舵輪と従動輪を有して無軌道の走行路上を自動走行する機能を有する。コア受けブロック110は、原反ロール200におけるコア210の両側の突出部210−1を受けるための2つのコア受け部110−1を有する。
【0005】
両側においてチャッキング装置300で保持されている原反ロール200を受け取る場合の動作について説明する。
【0006】
AGV100は、自動走行機能により原反ロール200のほぼ直下域にて停止することができる。2つのコア受け部110−1がコア210の2つの突出部210−1のほぼ真下にくるように調整する位置調整機構を有する場合もあるが、詳しい説明は省略する。
【0007】
図4(a)は、上記のようにして2つのコア受け部110−1がコア210の2つの突出部210−1のほぼ真下にあるように位置決めされた状態を示している。この状態からリフター機構120によりコア受けブロック110が上昇するように駆動される。この上昇は油圧が低圧の状態で行われる。図示していないが、リフター機構120の油圧回路には、コア受け部110−1が突出部210−1に接触して反力を受けると”ON”となる圧力スイッチが設けられている。圧力スイッチが”ON”になると、コア受けブロック110の上昇駆動は停止される(図4b)。続いて、リフター機構120の油圧が低圧から高圧に切り替えられ、コア受けブロック110で原反ロール200を受け取り可能な状態になる。原反ロール200を受け取り可能な状態になったことがチャッキング装置300側の制御装置に報知されると、チャッキング装置300による原反ロール200の保持が解除され、原反ロール200はコア受けブロック110に渡される。続いて、図4(c)に示すように、リフター機構120によりコア受けブロック110は所定の高さ位置まで下降するように駆動される。
【0008】
なお、互いに対向し合うように設置されている2つのチャッキング装置300に、コア受けブロック110に載せた原反ロール200を渡す場合には、前述した説明とは逆の順、図4(c)、図4(b)、図4(a)の順で渡し動作が行われる。つまり、AGV100は、自動走行機能により、搭載している原反ロール200の2つの突出部210−1が2つのチャッキング装置300の直下域に位置した状態で停止する。2つのチャッキング装置300は互いに接近、離反する方向に可動であり、2つの突出部210−1の端部の間隔より少し大きい間隔で待機状態にある。AGV100は走行停止後、コア受けブロック110を所定の高さ位置、つまりチャッキング装置300の高さ位置まで上昇させる。続いて、原反ロール200を渡すことが可能な状態になったことがチャッキング装置300側の制御装置に報知されると、2つのチャッキング装置300は所定量だけ互いに近づく方向に駆動される。これによりチャッキング装置300の保持部が突出部210−1の中空部内に進入し、原反ロール200を保持可能な状態となる。原反ロール200の保持がAGV100側に報知されるとコア受けブロック110が下降される。
【0009】
なお、AGV100の制御装置とチャッキング装置300側の制御装置との間の上記のような情報のやり取りは、無線、光空間伝送等にて行われる。
【0010】
図5(a)、図5(b)はチャッキング装置300の保持部の例を示す。図5(a)はテーパーチャックと呼ばれる例を示し、保持部301の形状が断面台形の先細形状となっている。一方、図5(b)は、メカチャックと呼ばれる例を示し、保持部301の形状が突出部210−1の半径より1.5〜2mm程度小さい半径の円柱状となっている。
【0011】
いずれにしても、無軌道式のAGV100の場合、操舵輪、駆動輪のタイヤのたわみや磨耗により、コア受け部110−1の位置、特に上下方向の位置に誤差が生じやすいので、このような誤差をカバーする何らかの位置調整手段が必要となっている。
【0012】
一方、AGVを軌道式とした場合には、上記のような上下方向の位置誤差に関する問題を解消することができるが、軌道式では別の問題がある。
【0013】
図6(a)、図6(b)は、軌道式のAGVにおけるレールと車輪との関係を2つの例について示している。
【0014】
図6(a)は、床500に2本のレール600を、それらの上面が床500の面と面一になるように埋設している。車輪700には脱輪を防ぐための鍔710が必要であり、床500には鍔710を受け入れる溝500aが設けられている。また、走行を円滑にするために、レール600の内側側面と鍔710との間には隙間G1が必要となる。
【0015】
図6(b)は、図6(a)と同様、床500に2本のレール600を、それらの上面が床500の面と面一になるように埋設しているが、車輪の鍔を無くすために、一方の車輪800の側にレール600の両側面に沿うようにガイドローラ810を組み付けている。床500における一方のレール600の両側にはガイドローラ810を受け入れるための溝500bが設けられている。この例でも、走行を円滑にするために、レール600の側面とガイドローラ810との間には隙間G2が必要となる。
【0016】
ところが、図6(a)の例では、レール600と車輪700との間の擦れあいにより金属粉が発生するので、クリーン性を要求される環境下での使用には適していない。また、上下方向に関する誤差は生じにくいものの、隙間G1があることにより、走行方向に関して傾きが生じやすい。走行方向に関する傾きというのは、図7に示すように平面図で見た場合、AGVに搭載している原反ロール200を2つのチャッキング装置300に渡す際に、2つのチャッキング装置300を結ぶ線分に対して原反ロール200のコア210の中心軸が平行にならないことである。勿論、このような状態では、原反ロール200を2つのチャッキング装置300に渡すことはできないので、このような傾きを修正するための何らかの修正手段が必要となる。
【0017】
一方、図6(b)の例では、車輪800が鍔を持たない分だけ金属粉の発生は抑制されるが、2つのガイドローラ810を収容するために、図6(a)の溝500aに比べて幅の大きな2つの溝500bが必要となり、作業者の歩行において安全面での問題がある。また、図6(b)の例でも、図7で説明した問題点、つまり2つのチャッキング装置300を結ぶ線分に対して原反ロール200のコア210の中心軸が平行にならないという問題がある。
【0018】
更に、油圧式のリフター機構を採用した場合には、漏れ油が周囲を汚染するというクリーン性の面で問題がある。
【0019】
なお、この種の搬送装置の位置決めに関連する技術として、例えば特許文献1には、コイル搬送台車の位置検出装置に関することが開示されている。この位置検出装置においては、コイル搬送台車を正確に位置決めするために、測距ユニットが備えられる。
【0020】
【特許文献1】特開2002−66631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の課題は、軌道式であってもクリーン性に関する要求を満足することができ、しかも走行方向に関する傾きを生ずることの無い搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明による搬送装置は、走行経路に沿って敷設された一対のレール上を走行する搬送装置であり、前記一対のレールの一方の上を走行する駆動輪と、前記一対のレールの他方に、走行方向に間隔をおいて装着され、前記駆動輪による当該搬送装置の走行をガイドする2つのLMガイドブロックとを備えたことを特徴とする。
【0023】
なお、前記2つのLMガイドブロックはそれぞれ、前記一対のレールの他方に装着されたLMガイドと、該LMガイドと搬送装置本体とを連結する連結部とを有し、2つの前記連結部はそれぞれ、同心でかつ前記他方のレールの延在方向と同じ方向に延在するピンにより該ピンを中心に回動可能にされていることが望ましい。
【0024】
また、前記駆動輪は該搬送装置の両サイドのうちの一方の中間部に設けられ、前記2つのLMガイドブロックは前記両サイドのうちの他方であって走行方向に関して前後に設けられることが望ましい。
【0025】
本発明による搬送装置は、中心にコアを持つロール体であって前記コアが該ロール体の両端から突出した突出部を有するロール体を、互いに対向し合うように設置された前記ロール体の突出部の保持手段との間で受け渡しを行うためのロール体搬送装置として適用されることが望ましい。この場合、前記2つの連結部を結ぶ前記同心の線分と、2つの前記保持手段を結ぶ線分とが直角になるようにされる。
【発明の効果】
【0026】
本発明による搬送装置は、レールに走行方向に間隔をおいて装着された2つのLMガイドブロックによって走行のガイドを行うようにしており、LMガイドブロックはレールに対してがたつきを生ずることが無いので軌道式のAGVにおいて問題となっていた、走行方向に関する傾きの発生を無くすことができる。
【0027】
また、LMガイドブロックにより走行のガイドを行うので、駆動輪は鍔を持つ必要が無く、鍔とレールとの擦れあいに起因する金属粉の発生を無くすことができ、クリーン性を要求される環境下での使用に適した搬送装置とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1〜図3を参照して、本発明による搬送装置の実施形態について説明する。本実施形態における搬送装置は、原反ロールの搬送装置として適用する場合、以下の点を除いて図4で説明したAGV100と同じ構成でも良い。
【0029】
1)リフター機構を油圧式から電動式に替えた。
この場合、電動式のリフター機構により上昇したコア受けがコア210の突出部210−1に接したことを、例えばコア受けにタッチセンサーを設けることで検出する。
【0030】
2)AGVの走行系を無軌道式から軌道式に替えた。
このため、図1では、軌道式AGVの走行系及び軌道側の構成のみを示し、リフター機構及びこれより上の構成は図示を省略している。特に、図1(a)はAGVの走行系の平面図、図1(b)は走行系及びレール(軌道)を含む床の構成を正面側から見た図、図1(c)は走行系及びレール(軌道)を側面側から見た図、図1(d)は走行系と原反コアにおけるコア210及びチャッキング装置300との位置的関係を説明するための図である。
【0031】
AGVが走行する床1には2本のレール(LMガイドレール)2A、2Bが敷設されるが、一方のレール2Aは、その上面が床1と面一になるように埋設される。他方のレール2Bは、レール2Aに比べて十分に幅が狭く、床1に設けられた溝1a内に収容されている。
【0032】
AGVの走行系は、リフター機構とその上側の構成要素が搭載される支持台10の両側のうち、一方の側の中間部付近に設けられた駆動輪20と、他方の側に走行方向に間隔をおいて、ここでは前後の2箇所に設けられた2つのLM(Linear Motion)ガイドブロック30A、30Bとを有する。
【0033】
駆動輪20は金属製であり、図示しないモータにより回転駆動されてレール2Aの上を走行する。
【0034】
ガイドブロック30A、30Bは駆動輪20によるAGVの走行をガイドするためのものであり、まったく同じ構成であるので、図2、図3をも参照してガイドブロック30Aについてのみ説明する。ガイドブロック30Aは、レール2Bに装着されたLMガイド31Aと、このLMガイド31Aと支持台10とを取付板32Aを介して連結している連結部35Aとを有する。特に、連結部35Aは、図3において、ピン36Aによりこのピン36Aを中心に回動可能にされている。連結部35Aをこのように回動可能とするのは以下の理由による。
【0035】
駆動輪20と2つのLMガイドブロック30A、30Bとが支持台10と一体でリジッドであると見なされる場合、万一、駆動輪20が例えばごみのような物を踏んでLMガイドブロック30Aあるいは30Bと駆動輪20との間にレベル差が生じようとすると、LMガイドブロック30Aあるいは30Bには大きなストレスが作用して破損するおそれがある。しかし、本実施形態のように、LMガイドブロック30A、30Bの連結部35A、35Bを回動可能としていることにより、上記レベル差が生じようとすると、連結部が回動することでストレスの発生が防止される。
【0036】
また、コア210の長さが大きいと、AGVの走行方向に関して傾きがある場合、この傾きは要求される位置決め精度に大きく効いてくる。このような傾きの発生を無くすために、本実施形態では、2つの連結部35A、35Bにおけるピン36A、36Bの軸芯を同心とし、しかもこれらを結ぶ線分の延長線と、2つのチャッキング装置300を結ぶ線分とが常に直角になるようにしている。言い換えれば、LMガイドレールと2つのチャッキング装置300を結ぶ線分とが直角になるようにしている。これは、2つのチャッキング装置300は互いに接近、離反する方向にのみ変位可能で、それ以外には変位せず、LMガイド31A、31Bもレール2Bに対してがたつきがほとんど無く、常に定間隔で一直線上の位置にあることで実現される。
【0037】
なお、ここでは機械的強度向上のために2つの連結部35A、35Bをバー38で結んでいるが、バー38は省略されても良い。
【0038】
以上のように、本実施形態では、駆動輪20の反対側に2つのLMガイドブロック30A、30Bを間隔をおいて配置することで必ず駆動力が伝達される、みかけ上3輪駆動構造(3点支持構造)としている。そして、2つのLMガイドブロック30A、30Bを結ぶ線分の延長線が2つのチャッキング装置300を結ぶ線分に常に直角になるようにしたことにより、図7で説明したような走行方向の傾きの発生を無くすことができる。これにより、AGVに搭載した原反ロールを2つのチャッキング装置300に渡す際のチャッキング装置300に対するAGVの位置決め、特に2つのコア受けで保持している原反ロールの突出部の位置決めに対する要求精度(±1.5〜2mm程度)を満足することができる。なお、上下方向に関する位置決めは、図4で説明した上下方向の駆動機構の採用で従来と同様に満足することができる。また、クリーン性に関する要求に対しても、電動式のリフター機構の採用に加えて、クリーン対応LMガイド、例えば低発塵グリースを採用したものや、錆対策のレイデント処理を施したもの、あるいはSUS等の材料を使用することで満足することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかるAGVのうちの走行系と、軌道側の構成を説明するための図であり、図1(a)はAGVの走行系の平面図、図1(b)は走行系及びレールを含む床の構成を正面側から見た図、図1(c)は走行系及びレールを側面側から見た図、図1(d)は走行系と原反コアにおけるコア及びチャッキング装置との位置的関係を説明するための図である。
【図2】図2は、本発明において用いられるLMガイドを説明するための図である。
【図3】図3は、図1(b)におけるLMガイドブロック及びその周辺の構造を拡大して示した図である。
【図4】図4(a)〜図4(c)は、従来の無軌道式のAGVによりチャッキング装置で保持されている原反ロールを受け取る際の動作を説明するための図である。
【図5】図5(a)、図5(b)は、図4に示されたチャッキング装置の保持部について2つの例を示した図である。
【図6】図6(a)、図6(b)は、従来の軌道式のAGVにおけるレールと車輪との関係を2つの例について示した図である。
【図7】図7は、従来の軌道式のAGVにおいて生ずる可能性のある走行方向に関する傾きについて説明するための平面図である。
【符号の説明】
【0040】
1、500 床
2A、2B、600 レール
10 支持台
20 駆動輪
30A、30B LMガイドブロック
31A、31B LMガイド
35A、35B 連結部
36A、36B ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行経路に沿って敷設された一対のレール上を走行する搬送装置において、
前記一対のレールの一方の上を走行する駆動輪と、
前記一対のレールの他方に、走行方向に間隔をおいて装着され、前記駆動輪による当該搬送装置の走行をガイドする2つのLMガイドブロックとを備えたことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記2つのLMガイドブロックはそれぞれ、前記一対のレールの他方に装着されたLMガイドと、該LMガイドと搬送装置本体とを連結する連結部とを有し、2つの前記連結部はそれぞれ、同心でかつ前記他方のレールの延在方向と同じ方向に延在するピンにより該ピンを中心に回動可能にされていることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記駆動輪は該搬送装置の両サイドのうちの一方の中間部に設けられ、前記2つのLMガイドブロックは前記両サイドのうちの他方であって走行方向に関して前後に設けられることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
該搬送装置は、中心にコアを持つロール体であって前記コアが該ロール体の両端から突出した突出部を有するロール体を、互いに対向し合うように設置された前記ロール体の突出部の保持手段との間で受け渡しを行うためのロール体搬送装置であり、
前記2つの連結部を結ぶ前記同心の線分と、2つの前記保持手段を結ぶ線分とが直角になるようにされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−246557(P2008−246557A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93398(P2007−93398)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】