説明

搬送装置

【課題】 搬送中の衝撃によるワークの損傷を防止することができる搬送装置を提供する。
【解決手段】 所定のストロークで往復動可能なワーク保持部12bを有する搬送ビーム10と、搬送ビーム10に沿って延びる受け台20とを備え、搬送ビーム10の上下動によりワーク保持部12bと受け台20との間でワークWを受け渡しながら搬送する搬送装置1であって、受け台20を上下動可能に構成し、ワーク保持部12b及び受け台20の静止状態でワークWの受け渡しを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関し、より詳しくは、太陽電池基板などの薄板状のワークを搬送するのに好適な搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の搬送装置として、例えば、特許文献1に開示された構成が知られている。図6(a)に示すように、搬送装置50は、一対の固定ビーム51,52の間に移動ビーム53が配置されて構成されている。移動ビーム53の上面には、ワーク保持部54が搬送方向に沿って複数設置されており、移動ビーム53の昇降動作及び進退動作により、ワーク保持部54がワーク55を支持して搬送する。
【0003】
すなわち、固定ビーム51,52にワーク55が支持された状態で、矢示A方向に移動ビーム53を上昇させることにより、ワーク55が固定ビーム51,52から持ち上げられる。そして、図6(b)の矢示B方向に移動ビーム53を所定のストロークで移動させてワーク55を搬送し、矢示C方向に移動ビーム53を下降させてワーク55を固定ビームに載置した後、移動ビーム53をもとの位置に後退させる。こうして、固定ビーム51,52と移動ビーム53との間でワーク55の受け渡しを行いながら、ワーク55を順次搬送することができる。
【特許文献1】特開2006−321610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された搬送装置50は、ワーク受け部54の上面を凹凸形状にすることで、ワーク55との間における異物の介入を抑制し、ワーク55の搬送中における位置ずれや割れなどの発生を防止している。
【0005】
しかし、固定ビーム51,52と移動ビーム53との間におけるワーク55の受け渡し時に、固定ビーム51,52や移動ビーム53とワーク55との衝突が避けられないことから、従来の搬送装置50は、依然としてワーク55が損傷するおそれがあった。特に、ワークが太陽電池基板の場合、基板自体の薄型化と共に高速搬送性が近年要求されることから、搬送時のワークの破損が生じやすい状況となっており、歩留まりの改善に対する要求が高まっている。
【0006】
そこで、本発明は、搬送中の衝撃によるワークの損傷を防止することができる搬送装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、所定のストロークで往復動可能なワーク保持部を有する搬送ビームと、前記搬送ビームに沿って延びる受け台とを備え、前記搬送ビームの上下動により前記ワーク保持部と前記受け台との間でワークを受け渡しながら搬送する搬送装置であって、前記受け台を上下動可能に構成し、前記ワーク保持部及び前記受け台の静止状態でワークの受け渡しを行う搬送装置により達成される。
【0008】
この搬送装置は、ワークの受け渡しを一定の高さ位置で行うことが好ましい。
【0009】
また、前記搬送ビームは、上下動可能な上下動ビームと、前記上下動ビームに対して往復動可能な往復動ビームとを備えることができ、前記上下動ビーム、往復動ビームおよび受け台を、同一のカム軸により駆動することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、搬送中の衝撃によるワークの損傷を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る搬送装置を搬送方向後方側から見た図である。また、図2、図3及び図4は、図1における矢示X方向の要部側面図である。なお、図1においては、理解を容易にするために、一部の構成要素を省略して記載している。
【0012】
図1に示すように、搬送装置1は、床面Fに設置されたフレーム2の上部に、太陽電池基板などの薄板状のワークWを搬送方向(図面を貫通する方向)に移動させる搬送ビーム10と、この搬送ビーム10との間でワークWの受け渡しを行う受け台20とが、支持されている。搬送ビーム10は、搬送方向に沿って延びる上下動ビーム11と、上下動ビーム11に支持された往復動ビーム12とを備えている。
【0013】
上下動ビーム11は、上方に突出するガイド部11aを備えている。また、往復動ビーム12は、ガイド部11aを収容する溝12aを備えており、上下動ビーム11の長手方向に沿って摺動可能とされている。往復動ビーム12の上面には、ワーク保持部12bが長手方向に沿って所定の間隔で設けられている。ワーク保持部12bは真空ポンプ(図示せず)に接続されており、バルブの開閉によりワークWの吸引保持および解除を制御することができる。
【0014】
受け台20は、搬送ビーム10の両側に沿って延びる一対のビーム台21,21と、これらビーム台21,21を支持する上向きコ字状のブラケット22とを備えている。ビーム台21には、上方に突出する支持突起21aが複数設けられており、一対のビーム台21,21によりワークWの周縁部を4点で支持できるように構成されている。
【0015】
上下動ビーム11、往復動ビーム12及び受け台20は、一端側にタイミングプーリ3が設けられたカム軸4の回転によって駆動される。
【0016】
図1及び図2に示すように、カム軸4には、上下動カム41(図2では基礎円を2点鎖線で示す)が取り付けられており、主レバー411に設けられたカムフォロア412が上下動カム41に外接するように構成されている。
【0017】
主レバー411は、カム軸4の上方に配置された上側レバー軸413に対してベアリング(図示せず)を介して空転するように取り付けられており、上側レバー軸413を中心として図2の矢示方向に揺動し、垂直バー414を介して上下動ビーム11を上下動させる。また、主レバー411は、水平バー415を介して副レバー416(図1では不図示)に連結されており、副レバー416は、主レバー411の揺動に伴い固定支点417を中心として揺動し、垂直バー418を介して上下動ビーム11を上下動させる。こうして、上下動カム41の回転により、上下動ビーム11の長手方向全体が上下動する。
【0018】
図2に示すように、タイミングプーリ3には、タイミングベルト5を介して駆動モータ6に連結されており、駆動モータ6の作動によりカム軸4が回転駆動される。
【0019】
また、図1及び図3に示すように、カム軸4には、第1往復動カム42及び第2往復動カム43(図3ではそれぞれの基礎円を2点鎖線で示す)が取り付けられており、第1往復動カム42には第1レバー421のカムフォロア422が外接し、第2往復動カム43には第2レバー423のカムフォロア424が外接するように構成されている。第1レバー421及び第2レバー423は、カム軸4の下方に配置された下側レバー軸425に一体的に取り付けられており、第1レバー421と第2レバー423との間が側面視において一定の角度を維持したまま、下側レバー軸425を回転中心として図3の矢示方向に揺動する。
【0020】
下側レバー軸425には、長尺レバー426の一端側が取り付けられており、長尺レバー426の他端側には係合突部426aが設けられている。係合突部426aは、往復動ビーム12から垂下するブラケット12cの長孔12dに係合する。これにより、第1レバー421と第2レバー423の揺動に伴い長尺レバー426も揺動し、往復動ビーム12が上下動ビーム11に沿って図3の矢示方向に往復動する。
【0021】
また、図1及び図4に示すように、カム軸4には、受け台カム44(図4では基礎円を2点鎖線で示す)が取り付けられており、主レバー441に設けられたカムフォロア442が受け台カム44に外接するように構成されている。
【0022】
主レバー441は、上側レバー軸413に取り付けられており、同じく上側レバー軸413に取り付けられた副レバー443と一体的に回転する。副レバー443は、上側レバー軸413を中心として揺動し、垂直バー444を介して支持バー445を上下動させる。支持バー445の上面には、フレーム2に支持されたガイド筒2a,2aを貫通する複数の上下動ロッド446,446が設けられており、上下動ロッド446の先端は、受け台20のブラケット22の下面に連結されている。また、主レバー441は、水平バー447を介して他の副レバー448(図1では不図示)に連結されており、副レバー448は、固定支点449を中心として揺動し、垂直バー450を介して支持テーブル445に連結されている。こうして、受け台カム44の回転により、受け台20が図4の矢示方向に上下動する。
【0023】
本実施形態の搬送装置1によれば、共通するカム軸4に取り付けられた上下動カム41、第1往復動カム42及び第2往復動カム43、及び、受け台カム44によって、上下動ビーム11の上下動、往復動ビーム12の往復動、及び、受け台20の上下動が、一定のタイミングで行われる。この動作を、図5に示すタイミングチャートに基づき説明する。なお、図5の横軸は、カム軸4が一回転する間の角度位置を表している。
【0024】
往復動ビーム12と受け台20との間におけるワークWの受け渡しは、上下動ビーム11及び受け台20がいずれも上方位置にあるときに行われる。このとき、受け台20は、図1に示す位置から上昇して支持突起21aがワークWの下面に当接しており、ワークWが、ワーク保持部12b及び支持突起21aにより支持された状態になる(状態a)。状態aでは、往復動ビーム12は後方位置にある。
【0025】
また、ワーク保持部12bの吸引オン/オフは、例えばサーボモータからなる駆動モータ6のエンコーダによる回転角度の検出に基づいて制御することが可能であり、状態aでは、ワークWの吸引はオフとなっている。なお、ワークWの吸引は、ワークWの搬送に必須のものではなく、ワーク保持部12bの構造や搬送速度によってはワークWを吸引せずに搬送することも可能である。
【0026】
カム軸4が状態aから角度θ1だけ回転すると、受け台20が下降を開始すると共に、ワーク保持部12bの吸引が開始される。受け台20が下方位置に到達した状態(状態b)では、図1に示すように、ワークWがワーク保持部12bのみに保持される。
【0027】
状態bからカム軸4が角度θ2だけ回転すると、往復動ビーム12は前方へ移動し、ワークWが1ストローク分搬送される。ワークWが前方位置まで移動すると(状態c)、受け台20が上昇を開始すると共に、ワークWの吸引が解除される。こうして、受け台20が上方位置に到達すると(状態d)、ワークWが、ワーク保持部12b及び支持突起21aにより再び支持され、ワークWの受け渡しが可能になる。
【0028】
カム軸4が状態dから角度θ3だけ回転すると、上下動ビーム11が下降を開始し、ワークWが受け台20のみにより支持された状態になる。上下動ビーム11が下方位置に到達すると(状態e)、往復動ビーム12は後方へ移動する。そして、往復動ビーム12が後方位置まで移動すると(状態f)、上下動ビーム11が上昇して再び状態aになる。
【0029】
このように、本実施形態の搬送装置1によれば、ワーク保持部12bと受け台20との間におけるワークWの受け渡しを、それぞれが静止した状態(図5の状態a及び状態d)で行うことができるので、受け渡し時にワークWが衝撃を受けるおそれがなく、ワークWの損傷を防止することができる。本実施形態では、静止状態でのワークWの受け渡しを確実にするため、一定の受け渡し時間(図5のθ1,θ3)を確保しているが、ワーク保持部12b及び受け台20の静止状態は一瞬であってもよい。
【0030】
また、ワークWの受け渡しを、上下動ビーム11及び受け台20の上方位置において常に行うため、ワークWの受け渡しが一定の高さ位置で行われる。したがって、ワークWを上下動させることなく搬送することができ、これによってもワークWの損傷のおそれを軽減することができる。
【0031】
受け台20の上方位置は、高さ調整ねじ等により、搬送装置1の設置現場で高さ調整できるように構成することが好ましい。これにより、薄板状のワークWに反り等が生じていても、ワークWの受け渡し時に、ワーク保持部12b及び支持突起21aによりワークWを確実に支持することができ、受け渡し時の衝撃や上下動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送装置を搬送方向後方側から見た図である。
【図2】図1に示す搬送装置の要部側面図である。
【図3】図1に示す搬送装置の要部側面図である。
【図4】図1に示す搬送装置の要部側面図である。
【図5】図1に示す搬送装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】従来の搬送装置の要部概略構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1 搬送装置
4 カム軸
10 搬送ビーム
11 上下動ビーム
12 往復動ビーム
12b ワーク保持部
20 受け台


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のストロークで往復動可能なワーク保持部を有する搬送ビームと、
前記搬送ビームに沿って延びる受け台とを備え、
前記搬送ビームの上下動により前記ワーク保持部と前記受け台との間でワークを受け渡しながら搬送する搬送装置であって、
前記受け台を上下動可能に構成し、前記ワーク保持部及び前記受け台の静止状態でワークの受け渡しを行う搬送装置。
【請求項2】
ワークの受け渡しを一定の高さ位置で行う請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送ビームは、上下動可能な上下動ビームと、前記上下動ビームに対して往復動可能な往復動ビームとを備えており、
前記上下動ビーム、往復動ビームおよび受け台を、同一のカム軸により駆動する請求項1または2に記載の搬送装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−285308(P2008−285308A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134176(P2007−134176)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(505095224)
【Fターム(参考)】