説明

搬送装置

【課題】簡単な構造で飲食物が載置される走行体を安定して走行させることができる搬送装置を提供することを目的とする。
【解決手段】飲食物を載置可能な走行体11が走行する走行路12の側方に、該走行路12に沿って延設される搬送駆動部13と、前記搬送駆動部13の駆動により移動する移動体50と、前記移動体50と前記走行体11とを連結する連結手段51,52と、を備え、前記連結手段51,52は、前記走行体11の走行が阻害されたときに前記移動体50と前記走行体11との連結状態が解除可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば寿司等の飲食物が載置される走行体を走行させて該飲食物を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転寿司店等の飲食店において、飲食物を載置した飲食物皿等を搬送する搬送装置として、平面視ほぼ半月状をなす多数のスタットを、無端回送する搬送手段としてのチェーンに相対回動可能に取り付けたクレセントチェーンコンベアが一般的に知られている。
【0003】
一方、近年においては、クレセントチェーンコンベアを使用しない搬送装置として、例えば飲食物が載置されるトレーが車輪を介して搬送路面上を走行可能とされるとともに、搬送路面の下方には、所定間隔おきに設けた磁石が無端状の駆動チェーンにより循環走行可能に配設され、前記トレーに設けた磁性体と駆動チェーンの磁石との吸引力によりトレーを走行させて飲食物を搬送するもの等がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−16464号公報(第1頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の搬送装置にあっては、トレーを走行させるための駆動チェーンが搬送路面の下方に設けられることで、駆動チェーンの駆動力を搬送路面を通してトレーに伝達するために磁力等を利用する必要が生じるため、トレーの走行が不安定になるといった問題があった。
【0006】
また、駆動チェーンとトレーとを連結部材等により連結することも考えられるが、この場合には、搬送路面上に連結部材を通過させるための溝等を形成する必要があり、見栄えが悪くなる。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、簡単な構造で飲食物が載置される走行体を安定して走行させることができる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の搬送装置は、
飲食物を載置可能な走行体を走行させて飲食物を搬送する搬送装置であって、
前記走行体が走行する走行路の側方に、該走行路に沿って延設される搬送駆動部と、
前記搬送駆動部の駆動により移動する移動体と、
前記移動体と前記走行体とを連結する連結手段と、
を備え、
前記連結手段は、前記走行体の走行が阻害されたときに前記移動体と前記走行体との連結状態が解除可能に構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、搬送駆動部を駆動して移動体が移動することで走行体が走行するとともに、走行路面に溝等を形成することなく、走行体と移動体とを搬送路面を介すことなく直接連結することができるため、安定した走行を実現できる。また、走行体の走行が何らかの要因、例えば走行路上の落下物に引っかかったり、手で止められたりした場合には移動体と走行体との連結が解除され、搬送駆動部に無理な負荷が加わることがないので、搬送駆動部の損傷が防止される。
【0009】
本発明の請求項2に記載の搬送装置は、請求項1に記載の搬送装置であって、
前記連結手段は、前記移動体と前記走行体とを磁力にて連結するための磁性体を含むことを特徴としている。
この特徴によれば、連結及び連結の解除を簡単な機構で構成することができる。
【0010】
本発明の請求項3に記載の搬送装置は、請求項2に記載の搬送装置であって、
前記走行体が前記走行路を往復走行するように前記搬送駆動部の駆動制御を行う駆動制御手段を備え、
前記連結手段の連結面は、前記走行体の走行方向に対して略平行に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、走行体の連結が解除されたときに連結面同士が干渉して走行体が引きずられることがないとともに、再度連結する際に走行体を走行路に沿って移動させるだけで簡単に連結することができる。
【0011】
本発明の請求項4に記載の搬送装置は、請求項3に記載の搬送装置であって、
前記連結面における走行方向の側方に、前記走行路の幅方向に向けて傾斜する傾斜面が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、再度連結する際に、走行体を走行路に沿って移動させるだけで連結面が傾斜面により連結位置に誘導されるので、簡単に連結することができる。
【0012】
本発明の請求項5に記載の搬送装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載の搬送装置であって、
前記走行路に、前記走行体を走行方向に案内する案内部が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、走行体の走行が安定するばかりか、連結が解除された場合に走行体が走行路から逸脱しにくくなるので安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る搬送装置を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0014】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、飲食店等に設置された循環型飲食物搬送装置を示す平面図である。図2は、本発明の実施例としての注文搬送装置及び循環型飲食物搬送装置の要部を示す斜視図である。図3は、基台を客席側から視た状態を示す正面図である。図4は、図3におけるA−A断面図である。図5は、(a)は連結部材を示す図であり、(b)は走行体を示す平面図である。図6は、(a)は走行体の走行状況を示す概略図であり、(b)は走行体の走行が阻害された状態を示す概略図である。図7は、(a)は走行体が戻る状況を示す概略図であり、(b)は走行体が連結された状態を示す概略図である。尚、以下の説明において、搬送トレーの走行方向を前後方向、走行路の幅方向を左右方向として説明する。
【0015】
先ず図1には、本発明の実施例としての注文搬送装置10及び循環型飲食物搬送装置4が設けられた基台7の飲食店内における配置状況が示されている。飲食店内は、仕切り用の隔壁1により厨房エリア2と飲食客エリア3とに区画されている。基台7は、平面視略E型に形成され、3本の直線搬送路部7aが厨房エリア2内から飲食客エリア3内に向けて延設されており、該直線搬送路部7aの周囲には、テーブル8が搬送路に沿って複数配置されるとともに、テーブル8の周囲には客席9が配置されている。
【0016】
基台7の上面には、平面視略半月上をなす複数の搬送板がチェーンにより連結されてなる無端状のクレセントチェーンコンベア5(図2参照)が、厨房エリア2と飲食客エリア3とを循環走行自在に配設されており、このクレセントチェーンコンベア5により、平面視略E型の循環搬送路が構成されている。
【0017】
また、直線搬送路部7aにおけるクレセントチェーンコンベア5の上方には、本発明の実施例としての注文搬送装置10の注文搬送路が配設されている。詳しくは、クレセントチェーンコンベア5は、直線搬送路部7aの先端部にて折り返されることで、直線搬送路部7aには往路と復路とが並設されており、これら往路及び復路それぞれの上方に、直線状に構成された一対の注文搬送路がそれぞれ配設されている。つまり本実施例では、3本の直線搬送路部7aそれぞれに一対の注文搬送路が設けられている。
【0018】
これら循環型飲食物搬送装置4の循環搬送路及び注文搬送装置10の注文搬送路には、主に厨房エリア2内において飲食物が投入(供給)され、それぞれの搬送路に沿って搬送されて飲食客エリア3内の飲食客に提供されるようになっている。尚、循環型飲食物搬送装置4には、厨房エリア2内において飲食物F1が適宜投入されるとともに、注文搬送装置10には、主に適宜客席9の飲食客から注文を受けて調理した注文飲食物F2が、該注文客に対応する注文搬送装置10にて注文飲食客まで搬送されるようになっている。
【0019】
次に、注文搬送装置10の詳細な構造について、図2〜図4に基づいて説明する。尚、該注文搬送装置10は、往路及び復路双方の上方位置にそれぞれ一対に配設されているが、構造は同一のため、ここでは一方の装置のみ説明し、他方の詳細な説明は省略することとする。
【0020】
注文搬送装置10は、例えば寿司等の飲食物(注文飲食物)が載置された寿司皿Dが載置される走行体としての搬送トレー11(図2参照)を走行させることで、飲食物を搬送する搬送装置であって、搬送トレー11と、該搬送トレー11が走行する走行路12の長手方向に延設される搬送駆動部としての駆動ユニット13と、一端が該駆動ユニット13に設けられて搬送ユニット13の駆動により移動する移動体50と、該移動体50と搬送トレー11とを連結する連結手段を構成する移動体側磁石51及びトレー側磁石52と、から主に構成されている。
【0021】
駆動ユニット13は、図示しない搬送モータと、該搬送モータに連結された駆動回転体としての駆動ローラ(図示略)と、前記搬送モータに連係しない従動回転体としての従動ローラ(図示略)と、これら駆動ローラと従動ローラとの外周に掛け渡された環状部材としてのコンベアベルト15(図4参照)とを少なくとも含む駆動部品と、これら複数の駆動部品が一体的に組み付けられるケース部材16と、から構成されるコンベアユニットである。尚、この駆動ユニット13の搬送モータ(図示略)は、図示しない制御装置に接続されて駆動制御されるようになっている。
【0022】
図4に示されるように、ケース部材16は、搬送方向に延びる左右一対の側板17a,17bと、これら両側板17a,17bを連結する連結ボルト・ナット18と、両側板17a,17bの下方に配置される支持台19と、から上面が開放する箱状に構成されている。両側板17a,17b間における長手方向の両端側には、前述した駆動ローラと従動ローラとが、水平軸(図示略)を介して回動自在に配設され、これら駆動ローラと従動ローラとの外周には、合成樹脂製のコンベアベルト15が掛け渡されており、図示しない搬送モータの駆動によりコンベアベルト15が縦方向に回転するようになっている。
【0023】
両側板17a,17b間における連結ボルト・ナット18の上下には、縦断面上向きコ字形をなすベルト収容部材20,20が長手方向に延設されており、これら上下のベルト収容部材20,20内にコンベアベルト15の上下部が収容されている。
【0024】
このように、各駆動部品が一体的に組み付けられて内部に収容されてなる長手方向に延びるケース部材16は、図2及び図3に示されるように、クレセントチェーンコンベア5の上方所定高さ位置に、搬送方向に向けて延設されている。具体的には、基台7の上面における直線搬送路部7aにおける往路と復路との間には、略L字形をなすブラケット22が上部に固定された支柱21が、搬送方向に向けて所定間隔おきに複数立設されており、これら所定間隔おきに配置された各ブラケット22における屈曲部側に、ケース部材16が、支持台19を上方から載置した状態でそれぞれ図示しないネジ等にて固設されている。
【0025】
また、各ブラケット22の上面には、透明なアクリル板等にて構成される落下防止板33(図4参照)が、走行路12の長手方向にわたって配設されており、この落下防止板33の上面を搬送トレー11が走行するようになっている。このように落下防止板33が設けられることで、下方の循環型飲食物搬送装置4の循環搬送路上を移動する飲食物F1上や循環搬送路上への飲食物等の落下を防止できる。
【0026】
また、落下防止板33における外側方には、図2及び図4に示されるように、上下方向を向くガイド壁32が立設されており、このガイド壁32により、搬送トレー11の走行路12からの落下が防止されている。つまりこのガイド壁32は、走行体としての搬送トレー11を走行方向に案内する本発明の案内部を構成している。
【0027】
尚、各支柱21,21間には目隠し板23が配設されており、反対側の客席9との間が区画されているとともに、注文搬送装置10にて搬送されてきた注文飲食物F2を反対側の飲食客が誤って取り出すことが防止されている。また、支柱21の上部には、搬送方向に対して直交する方向を向く横フレーム24が設けられており、各横フレーム24の上部には、湯呑み等の食器類や調味料品等を載置可能な棚板25や、搬送路を照らす照明装置26等が配設されている。
【0028】
コンベアベルト15の長手方向の一部には、移動体50を構成する移動板53の上端が取り付けられている。具体的には、移動板53は、一部が側板17aの内面に摺接される縦断面略L字形の内ガイド板27とともに、ケース部材16の上部に露呈されるコンベアベルト15の上面所定箇所にボルト29により取り付けられているため、コンベアベルト15が回動することによりケース部材16の長手方向、つまり飲食物の搬送方向に沿って往復移動するようになっている。尚、ケース部材16には、該ケース部材16の上面開口及び移動体50を上方から覆うカバー部材54が長手方向にわたり延設されており、コンベアベルト15等を直接手で触れることができないようにして安全性が高められているとともに、駆動ユニット13内へのゴミ等の進入が防止されている。
【0029】
尚、図4に示されるように、側板17aの上部内面に内ガイド板27が近接配置され、また、移動板53の上部における側板17aとの対向面に摺接面28aが近接配置されて、側板17aの上部がこれら内ガイド板27と移動板53の上部とにより挟持されることにより、搬送トレー11の荷重による移動体50の傾きが、内ガイド板27及び移動板53と側板17aとの摺接作用により規制されるようになっている。
【0030】
移動体50は、上端がコンベアベルト15に取り付けられた移動板53及び移動体側磁石51を有している。移動板53は、図4及び図5に示されるように、駆動ユニット13上部のコンベアベルト15から下方に向けて垂下されるように屈曲形成された金属板からなり、その下部に形成された垂下片53aの下部における前後方向(図5中左右方向)の中央位置には、円盤状の移動体側磁石51が、搬送トレー11と対向するようにボルト・ナット59により固設されている。
【0031】
このように移動体側磁石51は、垂下片53aにおける搬送トレー11との対向面に固設されることで、連結面を構成する側面51aが垂線と平行をなす縦向き姿勢に設けられる。
【0032】
また、移動体側磁石51の前後方向の側部には、該移動体側磁石51と搬送トレー11との接触を防止するためのガイド部材55a,55bが水平に配設されている。ガイド部材55a,55bは、前後方向に細長に延設された合成樹脂材からなり、ガイド部材55aの前端部及びガイド部材55bの後端部には、走行路12の幅方向に傾斜するガイド部材傾斜面57,57がそれぞれ形成されている。また、垂下片53における前後端部には、ガイド部材傾斜面57,57に連続する垂下片傾斜面58,58が形成されており、これら前後一対のガイド部材傾斜面57,57及び垂下片傾斜面58,58により、移動体50の前後端部に、搬送トレー11を連結方向に摺接案内するガイド面が構成されている。
【0033】
また、ガイド部材55a,55bにおける搬送トレー11との対向面55cは、移動体側磁石51の側面51aとほぼ面一をなすように設けられているため、移動体側磁石51と搬送トレー11との接触が回避される。
【0034】
搬送トレー11は、図4及び図5に示されるように、金属板からなる基材40と、基材40の上面を覆うように固着されるトレーカバー41と、を有している。基材40は、平面視略長方形状に形成されており、その下面四隅には、走行路12の上面を転動する走行ローラ42がそれぞれ設けられ、搬送トレー11の荷重を支持している。駆動ユニット13側に配置された前後一対の走行ローラ42,42間には、移動体側磁石51に吸引されるトレー側磁石52が設けられている。
【0035】
トレー側磁石52は、移動体側磁石51と同じように円盤状をなし、基材40の下面から垂下されたブラケット43における移動体側磁石51との対向面に、ボルト・ナット44により固設されている。このようにトレー側磁石52は、ブラケット43における搬送トレー11との対向面に固設されることで、連結面を構成する側面52aが垂線と平行をなす縦向き姿勢に設けられる。
【0036】
また、トレー側磁石52は、コンベアベルト15の回動により、走行路12の上面から所定高さ位置において走行路12の長手方向に水平移動する移動体側磁石51と同高さ位置に配設されている。そして、トレー側磁石52と移動体側磁石51とは、それぞれの側面52aと側面51aとの磁力が互いに吸引するように配設されている、つまりS極とN極とが対向するように配設されているため、トレー側磁石52の側面52aと移動体側磁石51と側面51aとを対向させることで互いに吸着するようになっている。つまり、トレー側磁石52及び移動体側磁石51の磁力により側面52aと側面51aとが吸着することで、移動体50と搬送トレー11とが連結されるようになっている。
【0037】
また、トレーカバー41の上面には、寿司皿Dを載置可能な平面視円形の載置凹部11aが、走行方向に向けて所定間隔おきに4つ凹設されている。
【0038】
次に、このように構成された注文搬送装置の10の作用を図面に基づいて説明する。まず、搬送駆動部としての駆動ユニット13と、走行体としての搬送トレー11とは、図2及び図4に示されるように、飲食物の搬送方向に向かって左右側、つまり、搬送トレー11の走行路12における幅方向に並設されている。
【0039】
具体的には、図4に示されるように、駆動ユニット13は、ブラケット22における屈曲部側(図4中右側方)に配置され、搬送トレー11は、駆動ユニット13よりも客席側(図4中左側方)に配置されている。つまり、駆動ユニット13は、搬送トレー11が走行する走行路12における、搬送トレー11に載置される注文飲食物F2の取り出し口35と反対側の側方に配設されていることで、飲食客から視ると、駆動ユニット13は、搬送トレー11よりも奥側に配設されているため、注文飲食物F2を飲食客が取り出す際に、駆動ユニット13が邪魔になることがないとともに、安全性が向上する。
【0040】
このように構成された注文搬送装置10にあっては、搬送トレー11は、基本的に注文搬送装置10の注文搬送路(走行路12)における厨房エリア2側の端部にて待機されている。搬送トレー11と移動体50とは、トレー側磁石52及び移動体側磁石51を介して連結しておく。そして、飲食客から受け付けた注文飲食物が厨房エリア2内で調理され、該注文飲食物F2を載置した寿司皿Dを搬送トレー11に配置し、調理者が所定の搬送操作を行うことで、駆動ユニット13が駆動してコンベアベルト15が回転し、該コンベアベルト15の回転により移動体50が走行路12に沿って移動する。この移動体50の移動により、該移動体50に連結された搬送トレー11が飲食客エリア3に向けて走行する(図2及び図3中実線矢印方向)。
【0041】
駆動ユニット13の搬送モータは、図示しない制御部に接続されており、前述したように調理者が行う所定の搬送操作により、その駆動量すなわち搬送距離等が制御部により制御されるため、搬送トレー11が注文客の客席9に到達した時点で駆動が停止され、これにより搬送トレー11が注文客の客席9にて停止するようになっている(図3参照)。
【0042】
また、注文客が搬送トレー11上の飲食物を取り出したことが図示しない検出センサ等により検出され、または図示しない取り出し完了ボタン等が飲食客により操作されると、駆動ユニット13が再び駆動し、コンベアベルト15が逆回転して飲食物が取り出された空の搬送トレー11が走行路12を逆方向に走行し(図2及び図3中1点鎖線矢印方向)、厨房エリア2に戻るようになっている。つまり搬送トレー11は、走行路12を往復動自在に設けられている。
【0043】
次に、搬送トレー11の走行が、例えば走行路12上にある異物や飲食客の手などにより止められる等、何らかの要因で阻害された場合における作用を、図6及び図7に基づいて説明すると、例えば図6(a)に示されるように、移動体50の移動により走行路12上を走行している搬送トレー11に、例えば飲食客の手が接触するなどして、トレー側磁石52と移動体側磁石51との吸引力よりも強い負荷が搬送トレー11にかかった場合、駆動ユニット13の駆動により移動体50が移動を続けることで、トレー側磁石52と移動体側磁石51とが互いに切り離される。
【0044】
つまり、搬送トレー11に所定以上の負荷がかかって走行が阻害された場合には、トレー側磁石52と移動体側磁石51とが切り離されて移動体50と搬送トレー11との連結状態が解除され、移動体50のみが移動を続けることになる(図6(b)参照)。よって、搬送トレー11の走行が阻害された場合に、駆動ユニット13の駆動モータ等に無理な負荷が加わることがないので、駆動モータの故障等を回避できるばかりか、飲食客の手等が搬送トレー11により引張られてしまうこと等がないので、安全性が向上する。
【0045】
また、移動体側磁石51の側面51aの前後側方にガイド部材55a,55bが設けられていることで、移動体50と搬送トレー11との間に設けられた連結部であるトレー側磁石52と移動体側磁石51とが切り離されて移動体50のみが移動を続けた場合に、これらガイド部材55a,55bの対向面55cにより前後方向に延びるガイド面が形成されることで、搬送トレー11の側面が移動体50に摺接することで移動体50に引っ掛かって引きずられる虞がない。
【0046】
また、搬送トレー11が移動体50から切り離された場合でも、走行路12の幅方向の左右側が駆動ユニット13及びガイド壁32によりガイドされるため、搬送トレー11の前後が走行路12の幅方向に大きく傾いてしまったり(図6(b)参照)、走行路12の取り出し口35側から落下することが防止される。
【0047】
搬送トレー11が移動体50から切り離されてしまった場合においては、店員等が安全確認等を行った上で、再度トレー側磁石52と移動体側磁石51とを連結する必要があるが、このような場合には、図7(a)に示されるように、コンベアベルト13を逆回転して移動体50を逆移動させることで、トレー側磁石52と移動体側磁石51とが互いに対向したときにその磁力にて再度吸着し、これにより移動体50と搬送トレー11とを連結状態とすることができる。
【0048】
尚、移動体50が搬送トレー11に近づいたときに、移動体50側に張り出した搬送トレー11の端部がガイド部材55ab側の傾斜面57,58に摺接して反対側に押し出され、さらに対向面55cにより走行姿勢となるように案内されるため、トレー側磁石52と移動体側磁石51とを簡単に吸着させることができる。
【0049】
このように本実施例では、トレー側磁石52と移動体側磁石51とが切り離されて連結が解除された場合に駆動ユニット13の駆動を停止させる等、制御を複雑化する必要がなく、また、切り離しにより安全性を確保することができる。
【0050】
尚、本実施例では、連結状態が解除された場合の駆動制御の詳細は特に記載していないが、例えばトレー側磁石52と移動体側磁石51とが切り離されて連結が解除された場合において、再度連結状態を構成する場合、逆移動させた移動体50が搬送トレー11まで戻ってきたときに停止させることなく、例えば通常よりも低速度で徐行させることで磁力による連結がなされるようにしてもよい。
【0051】
また、トレー側磁石52と移動体側磁石51とが切り離されて連結が解除されたことを検知する検知手段等を設け、連結が解除された場合に、移動体50の移動、つまり駆動ユニット13の駆動を適宜停止するようにしてもよく、このようにすることで、移動体50のみの移動も防止されるため、安全性が高まる。
【0052】
さらに、トレー側磁石52と移動体側磁石51とが切り離されて連結が解除された場合に、連結が解除された旨を報知可能な報知手段等を設け、店員等が即座に対応できるようにしてもよい。
【0053】
以上説明したように、本発明の実施例としての注文搬送装置10にあっては、搬送駆動部としての駆動ユニット13を駆動して移動体50を移動させることで、走行体としての搬送トレー11が走行するとともに、搬送トレー11と駆動ユニット13との間には走行路面等が存在しないことで、連結手段としてのトレー側磁石52及び移動体側磁石51により搬送トレー11を移動体50に直接連結して搬送トレー11を安定して走行させることができる。また、搬送トレー11の走行が何らかの要因、例えば走行路12上の落下物に引っかかったり、手で止められたりした場合には移動体50と搬送トレー11との連結が解除され、駆動ユニット13に無理な負荷が加わることがないので、駆動ユニット13の損傷が防止される。
【0054】
さらに、搬送トレー11と駆動ユニット13とが走行路12の幅方向に並設されることで、走行路12の下方に駆動ユニット13を配設しなくて済むため、走行路12の構造を簡素化することができるばかりか、搬送トレー11上に載置された飯粒等の飲食物が、駆動ユニット13内に落下して、駆動に支障をきたすことがない。
【0055】
特に駆動ユニット13は、搬送トレー11に載置される飲食物の取り出し口35と反対側の側方、つまり走行路12における搬送トレー11よりも飲食客から視て奥側に配設されているため、飲食物の取り出しの際に駆動ユニット13が邪魔になることがないばかりか、安全性が向上する。
【0056】
また、駆動ユニットは、図示しない駆動モータ等により回転する駆動ローラ、従動ローラ、駆動ローラと従動ローラとに掛け渡され、移動体50が取り付けられるコンベアベルト15を含む駆動部品と、該駆動部品が一体的に組み付けられるケース部材16と、から構成されることで、各駆動部品がケース部材16に組み付けられユニット化されているため、駆動ユニット13を各ブラケット22上に載置するだけで、走行路12の側方に簡単に配設することができる。また、予め循環型飲食物搬送装置4のみが設けられていた基台7にも、後付で簡単に注文搬送装置10を設けることができる。
【0057】
また、注文搬送装置10の走行路12(注文搬送路)は、循環型飲食物搬送装置4のクレセントチェーンコンベア5(循環搬送路)の上方位置に、該循環搬送路に沿って配設されているため、循環型飲食物搬送装置4及び注文搬送装置10双方を用いて、飲食物を効率よく搬送することができるばかりか、注文飲食物F2を注文飲食客以外の飲食客が誤って取ることなく、確実に注文客に提供することができる。また、循環搬送路及び注文搬送路を上下にスペース効率よく配設することができる。
【0058】
また、移動体50と搬送トレー11とを連結する連結手段は、移動体50と搬送トレー11とを磁力にて連結するための磁性体であるトレー側磁石52及び移動体側磁石51にて構成されていることで、連結及び連結の解除を簡単な機構で構成することができる。
【0059】
また、図示しない駆動制御手段は、搬送トレー11が走行路12を往復走行するように駆動制御を行うとともに、トレー側磁石52及び移動体側磁石51の連結面である側面51a,52aは、搬送トレー11の走行方向に対して略平行に設けられていることで、搬送トレー11の連結が解除されたときに側面51a,52a同士が干渉して搬送トレー11が引きずられることがないとともに、再度連結する際に搬送トレー11を走行路12に沿って移動させるだけで簡単に連結することができる。
【0060】
また、本実施例では、トレー側磁石52及び移動体側磁石51の連結面である側面51a,52aが搬送トレー11の走行方向に対して略平行をなし、かつ垂直面に取り付けられて縦向きに設けられていたが、例えば図8に示されるように、所定の水平面に横向きに設けられていてもよい。
【0061】
また、本実施例では、移動体50と搬送トレー11とを連結する連結手段は、移動体50と搬送トレー11とを磁力にて連結するための磁性体であるトレー側磁石52及び移動体側磁石51にて構成されていたが、本発明はこのような磁性体に限定されるものではなく、例えば係脱手段等に構成されていてもよい。
【0062】
具体的には、例えば図9に示されるように、移動体50側に設けた係止体60に、搬送トレー11側に設けた被係止体61に形成された係止穴64に係脱自在な係止球62を、バネ63にて突出方向に付勢された状態で搬送トレー11との対向面に対して出没自在に設け、この係止球62による係止穴64に対する係脱にて、搬送トレー11と移動体50とを連結及び連結解除できるようにしてもよい。
【0063】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0064】
例えば、前記実施例に記載の注文搬送装置10は、循環型飲食物搬送装置4における循環搬送路の上方位置に配設されていたが、循環型飲食物搬送装置4の下方や側方、あるいは該循環型飲食物搬送装置4がない場所に単独で配設されてもよい。
【0065】
また、前記実施例に記載の注文搬送装置10は、搬送した注文飲食物F2を注文客に提供可能なように飲食客エリア3内に配設されていたが、必ずしも注文飲食物F2を搬送するものに限定されるものではなく、例えば遠方にいる調理者に飲食物を供給するための搬送装置として利用してもよい。
【0066】
また、前記実施例では、移動体50と搬送トレー11のブラケット43との間に連結手段としての移動体側磁石51及びトレー側磁石52からなる連結部が設けられていたが、これら連結部の配置位置は、移動体50と搬送トレー11との間であれば任意に変更可能であり、例えば移動体50とコンベアベルト15との取付位置に設けられていてもよい。
【0067】
また、前記実施例では、連結手段が移動体側磁石51及びトレー側磁石52にて構成されていたが、移動体50もしくは搬送トレー11側のうち一方に磁石を設け、他方を金属片等としてもよく、例えば搬送トレー11における金属製の基材40の一部を利用して移動体側磁石51を吸着するようにしてもよい。
【0068】
また、前記実施例では、搬送駆動部としての駆動ユニット13は、搬送モータ、駆動ローラ、従動ローラ、コンベアベルトにて構成されるベルトコンベアであったが、搬送モータ、駆動スプロケット、従動スプロケット、コンベアチェーンからなるチェーンコンベア等、連結部材を搬送方向に移動可能な搬送駆動部であれば、その形態は種々に変更可能である。
【0069】
また、前記実施例では、搬送トレー11と駆動ユニット13とは略水平方向に並設されていたが、例えば駆動ユニット13は、走行路12の搬送方向に向けて少なくとも左右いずれか一側方にのみ配設されていればよく、左右両側方に配設されていてもよいし、あるいは取り出し口35側にのみ配設されていてもよい。さらに、走行路12の側方に配設されていれば、その高さ位置は搬送トレー11と略水平な高さ位置に配設されるものに限定されるものではなく、搬送トレー11よりも上方位置または下方位置に配設されていてもよい。
【0070】
また、前記実施例では、走行路12上を左右前後の走行ローラ42を介して走行し、荷重がこれら走行ローラ42にて支持されていたが、例えば駆動ユニット13側の前後一対の走行ローラ42は特に設けなくてもよいし、あるいは走行ローラ42を全て外し、搬送トレー11を駆動ユニット13にて片持ち支持するようにしてもよい。
【0071】
また、前記実施例では、寿司皿Dに載置される飲食物F1,F2を寿司として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、寿司皿Dに載置される飲食物は、例えばジュースやビール、丼物、漬物等の他の飲食物であってもよい。さらに、走行体はトレー形状に形成されていたが、飲食物を載置可能であれば形状は種々に変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】飲食店等に設置された循環型飲食物搬送装置を示す平面図である。
【図2】本発明の実施例としての注文搬送装置及び循環型飲食物搬送装置の要部を示す斜視図である。
【図3】基台を客席側から視た状態を示す正面図である。
【図4】図3におけるA−A断面図である。
【図5】(a)は連結部材を示す図であり、(b)は走行体を示す平面図である。
【図6】(a)は走行体の走行状況を示す概略図であり、(b)は走行体の走行が阻害された状態を示す概略図である。
【図7】(a)は走行体が戻る状況を示す概略図であり、(b)は走行体が連結された状態を示す概略図である。
【図8】磁石の配置方法の変形例を示す断面図である。
【図9】連結手段の変形例を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0073】
2 厨房エリア
3 飲食客エリア
4 循環型飲食物搬送装置
5 クレセントチェーンコンベア(循環搬送路)
9 客席
10 注文搬送装置(搬送装置)
11 搬送トレー(走行体)
12 走行路
13 駆動ユニット(搬送駆動部)
15 コンベアベルト(搬送駆動部)
50 移動体
51 移動体側磁石(連結手段)
52 トレー側磁石(連結手段)
51a,52a 側面(連結面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食物を載置可能な走行体を走行させて飲食物を搬送する搬送装置であって、
前記走行体が走行する走行路の側方に、該走行路に沿って延設される搬送駆動部と、
前記搬送駆動部の駆動により移動する移動体と、
前記移動体と前記走行体とを連結する連結手段と、
を備え、
前記連結手段は、前記走行体の走行が阻害されたときに前記移動体と前記走行体との連結状態が解除可能に構成されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記連結手段は、前記移動体と前記走行体とを磁力にて連結するための磁性体を含むことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記走行体が前記走行路を往復走行するように前記搬送駆動部の駆動制御を行う駆動制御手段を備え、
前記連結手段の連結面は、前記走行体の走行方向に対して略平行に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記連結面における走行方向の側方に、前記走行路の幅方向に向けて傾斜する傾斜面が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記走行路に、前記走行体を走行方向に案内する案内部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−67486(P2009−67486A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234752(P2007−234752)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【特許番号】特許第4099210号(P4099210)
【特許公報発行日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(390010319)株式会社石野製作所 (85)
【Fターム(参考)】