説明

搬送装置

【課題】本発明は、ローラが真円でなく偏心があるとの理由で発生する、画像のズレや漏れを解消でき、安価なローラを使用できる搬送装置を提供することを目的とする。
【解決手段】第1のライン型記録ヘッド33Aの上流側に配置され、上側搬送ローラ(従動ローラ)41aと下側搬送ローラ(駆動ローラ)41b間に印刷用紙21を挟んで第1のライン型記録ヘッド33Aへ搬入する第1の搬送ローラ対41と、第1のライン型記録ヘッド33Aの下流側に配置され、上側搬送ローラ41aと下側搬送ローラ41b間に印刷用紙21を挟んで搬出する第2の搬送ローラ対42と、第2の搬送ローラ対42に印刷用紙21の先端が到達したことを検出する光電センサ81を備え、光電センサ81により第2の搬送ローラ対42に印刷用紙21の先端が到達したことが検出されると、上側搬送ローラ41aを下側搬送ローラ41bから離間させる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット等により画像が印刷される媒体を搬送する搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記搬送装置の一例が、特許文献1に開示されている。
この特許文献1に開示されている搬送装置は、インクを噴射して用紙に画像を印刷するヘッドユニットへ、前記用紙を搬入し搬出する装置であり、前記ヘッドユニットの上流側に、ヘッドユニットへ用紙を搬入する搬送ローラ対を設け、ヘッドユニットの下流側に、用紙を搬出する排紙ローラ対を設け、これらローラ対の駆動によりヘッドユニットに対する用紙の搬入・搬出を行っている。
【0003】
このような搬送ローラ対と排紙ローラ対による用紙の搬送では、同一速度で用紙が搬送されないと、搬送ローラ対による用紙の送り量と排紙ローラ対による用紙の送り量とに差が生じて、搬送ローラ対と排紙ローラ対との間で用紙の引っ張り合いや弛みが生じ、その結果、用紙に印刷された画像にズレや洩れが生じる。そこで、搬送ローラ対と排紙ローラ対をタイミングベルトなどにより同期させ、搬送ローラ対と排紙ローラ対のローラが同一速度で回転するように対応がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−7899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の搬送装置では、搬送ローラ対と排紙ローラ対のローラを同一速度で回転させても、搬送ローラ対と排紙ローラ対を形成する全てのローラが真円で偏心していない完全なローラでないと、やはり搬送ローラ対による用紙の送り量と排紙ローラ対による用紙の送り量とに差が生じて、搬送ローラ対と排紙ローラ対との間で用紙の引っ張り合いや弛みが生じ、その結果、印刷された画像にズレや洩れが発生する。しかし、前記真円で偏心していないローラは、ローラを製作する上での加工ムラを考慮すると非常に高価なものとなり、多く本数を使用する搬送装置において、このような高価なローラを採用することは実際的でなく、よってローラの真円と偏心の度合いに妥協し、安価なローラを使用する必要があったが、そうすると、やはり用紙の引っ張り合いや弛みが生じ、結局、印刷された画像にズレや洩れが発生していた。
【0006】
そこで本発明は、媒体を搬送するローラが真円でなく偏心があるとの理由で発生する、画像のズレや漏れを解消でき、安価なローラを使用できる搬送装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の搬送装置は、印刷対象の媒体をこの媒体に画像が印刷される画像形成部へ搬入し、前記画像形成部より印刷された前記媒体を搬出する搬送装置であって、前記画像形成部の上流側に配置され、駆動ローラと従動ローラ間に前記媒体を挟んで前記画像形成部へ搬入する上流ローラ対と、前記画像形成部の下流側に配置され、駆動ローラと従動ローラ間に前記媒体を挟んで前記画像形成部から搬出する下流ローラ対と、前記下流ローラ対に前記媒体の先端が到達したことを検出する検出手段と、前記上流ローラ対の駆動ローラと従動ローラのうち一方のローラを他方のローラから離間させる離間手段を備え、前記検出手段により前記下流ローラ対に前記媒体の先端が到達したことが検出されると、前記離間手段により前記上流ローラ対の駆動ローラと従動ローラのうち一方のローラを他方のローラから離間させることを特徴とする。
【0008】
また本発明の搬送装置は、前記離間手段を、前記従動ローラを前記駆動ローラから離間させる構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、媒体は上流ローラ対から画像形成部へ供給され、下流ローラ対に到達すると、すなわち媒体が下流ローラ対に挟まれると、検出手段がこれを検知し、上流ローラ対の駆動ローラと従動ローラのうち一方のローラを他方のローラから離間し、上流ローラ対により媒体を搬送する力を失くすことにより、媒体に、上流ローラ対と下流ローラ対による引っ張り合いの力が働くこと、および弛みが発生することを回避でき、よって真円でなく偏心がある安価なローラを使用しても、媒体に印刷された画像にズレや洩れが発生してしまうことを回避でき、鮮明な印刷画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態における搬送装置を使用したインクジェット式印刷装置の画像形成部の構成を示す平面図である。
【図2】同インクジェット式印刷装置の画像形成部の構成を示し、(a)は図1のX−X矢視断面図、(b)は図1のY−Y矢視断面図である。
【図3】同インクジェット式印刷装置の画像形成部の構成を示す側面図である。
【図4】同インクジェット式印刷装置の離間装置を示し、(a)は正面から見た構成図、(b)は用紙の搬送方向の左側面から見た構成図、(c)は用紙の搬送方向の右側面から見た構成図である。
【図5】同インクジェット式印刷装置の離間装置の動作説明図である。
【図6】同インクジェット式印刷装置の全体構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の搬送装置を、インクジェット式印刷装置に使用した実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図6はインクジェット式印刷装置11の全体構成図であり、インクジェット式印刷装置11は、給紙機構部12、用紙搬送機構部13、画像形成部(印刷装置本体部)14、排紙部(排紙装置部)15、紙受け機構部16から構成されている。
【0012】
給紙機構部12は、印刷対象の媒体である印刷用紙21を積載する給紙台22と、給紙台22から印刷用紙21を1枚ずつ繰り出すための給紙ローラ23および捌き台24を備え、用紙搬送機構部13は、給紙機構部12より繰り出された印刷用紙21を画像形成部14へ供給する上下で対をなす搬送ローラ25を備えており、印刷用紙21を1枚ずつ画像形成部14へ供給する。そして、画像形成部14において印刷された印刷用紙21は、排紙部15により排出され、紙受け機構部16に重ねられる。
【0013】
本発明の搬送装置は、画像形成部14に使用されている。画像形成部14について詳細に説明する。
図1〜図3に示すように、画像形成部14は、水性インクをインクジェット方式で、給紙機構部12より繰り出された印刷用紙21の紙面に噴射して印刷を行う印刷部であり、印刷用紙21の搬送面30を形成し、搬送面30上の印刷用紙21を下方から支持する搬送ガイド31と、搬送面30上の印刷用紙21を搬送方向Aに搬送(移動)する搬送ローラ32と、搬送面30の上方に配置された複数のライン型記録ヘッド33と、規制部材34と、用紙導入部材35を備えている。前記搬送面30は、低摩擦部材(あるいは低摩擦剤をコーティングしたもの)で構成される。
【0014】
「ライン型記録ヘッド33」
前記ライン型記録ヘッド33は、搬送方向Aと直交する方向に所定幅の画像形成範囲を有しており、模式的にかつ透過的に示すように、ライン状に形成した複数のインク吐出部33aを搬送方向Aに沿って複数段に配置したものであり、一つのインク吐出部33aにおいて複数色を吐出するタイプであっても良く、一つのインク吐出部33aにおいて単色を吐出し、インク吐出部33a毎に異なる色を吐出するタイプであっても良く、その構造は公知のものであるので説明を省略する。また図6に示すように、各ライン型記録ヘッド33に対向して、その下方にそれぞれキャップ手段36が配置されており、キャップ手段36は、各ライン型記録ヘッド33にそれぞれ対応したキャップ37と、吸引用ポンプ38と、廃液タンク39を有している。前記キャップ37は、昇降装置(図示せず)により垂直に昇降可能に構成され、キャップ37が昇降してライン型記録ヘッド33に接近できるように開口部30aが、各ライン型記録ヘッド33に対応して搬送ガイド31(搬送面30)に設けられ、キャップ37および昇降装置を使用する、フラッシング動作とキャッピング動作とワイピング動作を可能としている。フラッシング動作とは、ライン型記録ヘッド33の性能を維持・回復するため、印刷の直前や印刷の合間を見計らって、キャップ37をライン型記録ヘッド33に接近させ、印刷とは関係しない一定量のインクをキャップ37へ吐出しライン型記録ヘッド33のノズル詰まりを防止するためのインクの空打ち動作、キャッピング動作とは、ライン型記録ヘッド33のノズルの乾燥を防止するためにキャップ37をライン型記録ヘッド33(ノズル)に接近させ被せる動作、ワイピング動作とは、キャップ37をライン型記録ヘッド33に接近させ、ノズルの先端に付着したインクを払拭する動作である。
【0015】
また複数のライン型記録ヘッド33は、千鳥状に配列してあり、搬送方向Aと直交する方向に所定間隔で並列配置した複数のライン型記録ヘッド33で記録ヘッド列を形成し、記録ヘッド列を搬送方向Aに沿って多段に配置している。
【0016】
このため、搬送方向Aと直交する方向においては、全てのライン型記録ヘッド33の画像形成範囲が重なることはなく、複数のライン型記録ヘッド33を並列に配置して実質的に記録領域の幅を広げた画像形成装置をなしている。本実施の形態では、2つの記録ヘッド列を搬送方向Aの前後に配置しているが、記録ヘッド列の数は本実施の形態に例示する構成に限るものではない。以下において、ライン型記録ヘッド33は、前段の記録ヘッド列に配列したものを第1のライン型記録ヘッド33Aとし、後段の記録ヘッド列に配列したものを第2のライン型記録ヘッド33Bとして説明する。
【0017】
「搬送ローラ32」
搬送ローラ32は、前段の第1のライン型記録ヘッド33Aの上流側にそれぞれ配置された第1の搬送ローラ対41と、前段の第1のライン型記録ヘッド33Aの画像形成範囲外、すなわち下流側で、且つ後段の第2のライン型記録ヘッド33Bの上流側にそれぞれ配置された第2の搬送ローラ対42と、後段の第2のライン型記録ヘッド33Bの画像形成範囲外、すなわち下流側で、且つ隣接し合う第2のライン型記録ヘッド33Bの間に対応して配置された第3の搬送ローラ対43から構成されている。なお、前段の第1のライン型記録ヘッド33Aによる画像形成部に対しては、第1の搬送ローラ対41が上流ローラ対を形成し、第2の搬送ローラ対42が下流ローラ対を形成している。また後段の第2のライン型記録ヘッド33Bによる画像形成部に対しては、第2の搬送ローラ対42が上流ローラ対を形成し、第3の搬送ローラ対43が下流ローラ対を形成している。
【0018】
各搬送ローラ対41,42,43はそれぞれ上下に対をなす上側搬送ローラ(従動ローラ)41a,42a,43aと下側搬送ローラ(駆動ローラ)41b,42b,43bとから構成され、搬送ガイド31には、各下側搬送ローラ41b,42b,43bの配置位置に対応して開口部31aが形成され、各下側搬送ローラ41b,42b,43bが開口部31aを介して搬送面30から上方へ所定距離(例えば0.8mm)だけ突出しており、搬送ガイド31上の印刷用紙21を、上側搬送ローラ41a,42a,43aと挟んで(ピンチして)搬送できるように構成されている。
【0019】
また第1および第2の搬送ローラ対41,42は、下側搬送ローラ41b、42bの駆動軸(回転軸)41c,42cが上側搬送ローラ41a,42aの従動軸(回転軸)41d,42dよりも搬送方向Aにおいて上流側に位置されており、これにより、搬送ローラ対41,42を通過する際に、印刷用紙21は搬送面30に向けて斜め下方に送り出される。また第3の搬送ローラ対43の上側搬送ローラ43aは、点接触ローラから形成されており、第3の搬送ローラ対43は、第1および第2の搬送ローラ対41,42とは逆に、下側搬送ローラ43bの駆動軸(回転軸)43cが上側搬送ローラ43aの従動軸(回転軸)43dよりも搬送方向Aにおいて下流側に位置されている。
【0020】
また図3に示すように、各搬送ローラ対41,42,43の下側搬送ローラ(駆動ローラ)41b,42b,43bの駆動軸41c,42c,43cにはそれぞれプーリー51が取り付けられており、これらプーリー51とテンションを維持する2個の補助プーリー52と駆動プーリー53間に渡って駆動ベルト54が巻かれており、駆動プーリー53に駆動モータ55の回転軸が連結されている。この構成により、駆動モータ55の駆動により駆動プーリー53、駆動ベルト54、補助プーリー52を介して3個のプーリー51が同期して回転駆動され、各搬送ローラ対41,42,43の下側搬送ローラ(駆動ローラ)41b,42b,43bが同期駆動され、各搬送ローラ対41,42,43は同じ回転速度で回転される。
【0021】
また図1、図3および図4に示すように、第1および第2の搬送ローラ対41,42の上側搬送ローラ(従動ローラ)41a,42aの従動軸41d,42dにはそれぞれ、上側搬送ローラ(従動ローラ)41a,42aを各搬送ローラ対41,42の下側搬送ローラ(駆動ローラ)41b,42bから離間させる離間装置(離間手段の一例)61,62が配置されている。
【0022】
第1の搬送ローラ対41の上側搬送ローラ41aの離間装置61について詳細に説明する。なお、第2の搬送ローラ対42の上側搬送ローラ42aの離間装置62は、同一な構成となっており、説明は省略する。
【0023】
離間装置61は、上側搬送ローラ41aの従動軸41dの両端をそれぞれ回転自在に支持する軸受け65a,65bと、これら軸受け65a,65bをそれぞれ下方に付勢する、すなわち下側搬送ローラ(駆動ローラ)41bへ押し付ける方向へ付勢するバネ(付勢手段)66a,66bと、従動軸41dの両端をそれぞれ、軸受け65a,65bより外方で支持するカム67a,67bと、カム67a,67bをそれぞれカム67a,67bの支持軸68a,68bを中心に回転させるギヤ69a,69bと、これらギヤ69a,69bを回転させる駆動機構70から構成されている。
【0024】
カム67a,67bは、先端が上向きの嘴状で上辺部で従動軸41dを回転自在に支持する支持部71と、支持部71の前端から上方に従動軸41dを通す空間を設けて支持部71上方へ連なる駆動部73から形成されており、駆動部73には、上端部に前記ギヤ69a,69bに歯合する歯72が形成され、下方に前記支持軸68a,68bが設けられている。このカム67a,67bの形状により、ギヤ69a,69bが回転されると、駆動部73が支持軸68a,68bを中心に回転し、この回転により支持部71に支持された従動軸41dが持ち上がり、上側搬送ローラ41aは下側搬送ローラ41bから離間される。
【0025】
前記駆動機構70は、ギヤ69a,69bの回転軸に固定された連動軸75と、一方のギヤ69aに歯合する駆動ギヤ76と、この駆動ギヤ76の回転軸に連結された正逆駆動可能な駆動源としてのモータ77から構成され、モータ77の回転は、駆動ギヤ76を介してギヤ69aに伝達され、さらに連動軸75を介してギヤ69bへ伝達され、ギヤ69aおよび69bが回転される。
【0026】
このような、離間装置61,62の構成による作用を説明する。
図4(b),(c)に示すように、従動軸41d.42dが下降されているとき、バネ66a,66bにより軸受け65a,65bが下方へ付勢されていることにより、上側搬送ローラ41a,42aは下側搬送ローラ41b,42bへ付勢されており、第1および第2の搬送ローラ対41,42は印刷用紙21をピンチして搬送できる。
【0027】
またモータ77が一方の方向に駆動されてギヤ69a,69bが回転し、カム67a,67bが回転すると、カム67a,67bの支持部71により、バネ66a,66bの付勢力に抗して従動軸41d.42dの軸端が持ち上げられ(上昇され)、上側搬送ローラ41a,42aは下側搬送ローラ41b,42bから離間され、第1および第2の搬送ローラ対41,42により印刷用紙21はピンチされず、第1および第2の搬送ローラ対41,42により印刷用紙21を搬送する力は失われる。
【0028】
またモータ77が他方の方向に駆動されてギヤ69a,69bが逆に回転し、カム67a,67bが逆に回転すると、カム67a,67bの支持部71により、バネ66a,66bの付勢力も加えて従動軸41d.42dが下降され、第1および第2の搬送ローラ対41,42により印刷用紙21がピンチされ、搬送する力が回復される。
【0029】
このように、上側搬送ローラ41a,42aは下側搬送ローラ41b,42bに対して、離間装置61,62の作用により押圧され、離間される。
また図1および図3に示すように、第2および第3の搬送ローラ対42,43には、下側搬送ローラ42b、43bにそれぞれ印刷用紙21が到達したことを検出する光電センサ(検出手段の一例)81,82が設けられている。
【0030】
上記離間装置61,62のモータ77はそれぞれ、コントローラ(図示せず)により下記のように制御される。
図5に示すように、第1の搬送ローラ対41の離間装置61のモータ77は、第2の搬送ローラ対42に設けられた光電センサ81がオン(先端検出)すると、一定時間、従動軸41dを持ち上げる方向に回転され、上側搬送ローラ41aは下側搬送ローラ41bから離間され、また印刷用紙21が第1の搬送ローラ対41を通過すると、一定時間、従動軸41dを降ろす方向に回転され、上側搬送ローラ41aは下側搬送ローラ41bに隙間無く押圧される。
【0031】
光電センサ81がオンしてから印刷用紙21が第1の搬送ローラ対41位置を通過してしまう時間は、予め設定される印刷用紙21のサイズと、搬送の向きにより決定される搬送方向Aの長さから、第1の搬送ローラ対41と第2の搬送ローラ対42との間の距離を減算し、減算して残った長さを、印刷用紙21の搬送速度(第2の搬送ローラ対42による印刷用紙21の搬送速度)で除算することにより求まる。よって、光電センサ81がオンしてからタイマーをスタートさせ、タイマーのカウントが、求めた時間となると、第1の搬送ローラ対41を印刷用紙21が通過したものと判断し、上述したように、一定時間、従動軸41dを降ろす方向に回転する。
【0032】
同様に、第2の搬送ローラ対42の離間装置62のモータ77は、第3の搬送ローラ対43に設けられた光電センサ82がオン(先端検出)すると、一定時間、従動軸42dを持ち上げる方向に回転され、また印刷用紙21が第2の搬送ローラ対42を通過すると、一定時間、従動軸42dを降ろす方向に回転される。
【0033】
光電センサ82がオンしてから印刷用紙21が第2の搬送ローラ対42位置を通過してしまう時間は、予め設定される印刷用紙21のサイズと向きにより決定される搬送方向Aの長さから、第2の搬送ローラ対42と第3の搬送ローラ対43との間の距離を減算し、減算して残った長さを、印刷用紙21の搬送速度(第3の搬送ローラ対43による印刷用紙21の搬送速度)で除算することにより求まり、光電センサ82がオンしてからタイマーをスタートさせ、タイマーのカウントが、求めた時間となると、第2の搬送ローラ対42を印刷用紙21が通過したものと判断し、上述したように、一定時間、従動軸42dを降ろす方向に回転する。
【0034】
「規制部材34」
搬送ガイド31の上方には、搬送方向Aとは直角な方向に、複数の規制部材34が搬送面30と対向して、かつ搬送面30との間に所定間隙(例えば2mm)を介して配置されている。これら規制部材34は、第1のライン型記録ヘッド33Aよりも搬送方向Aの上流側へ第1の搬送ローラ対41まで延在し、搬送方向Aで第2のライン型記録ヘッド33Bの上流側直近まで延在している。
【0035】
規制部材34は導電性材料からなり、印刷用紙21に帯電した静電気を除去して用紙の張付きを防止し、印刷用紙21と前段の第1のライン型記録ヘッド33Aとの接触を規制するものであり、規制部材34の下面が第1のライン型記録ヘッド33Aおよび第2のライン型記録ヘッド33Bの下面よりも所定距離(例えば0.5mm)だけ下方に突出している。
【0036】
また規制部材34は、後段の第2のライン型記録ヘッド33Bの上流側において、前段の第1のライン型記録ヘッド33Aの画像形成範囲外、つまり隣接し合う第1のライン型記録ヘッド33Aの間に位置している。
【0037】
「用紙導入部材35」
前段の第1のライン型記録ヘッド33Aの上流側には、用紙導入部材35が搬送面30と対向して、かつ搬送面30との間に所定間隙(例えば2mm)を介して配置されている。これら用紙導入部材35は、第1のライン型記録ヘッド33Aの上流側に第1の搬送ローラ対41まで延在している。
【0038】
また用紙導入部材35は搬送方向Aと直交する方向に少なくとも第1のライン型記録ヘッド33Aと同等の所定幅を有しており、規制部材34と規制部材34の間に配置している。
【0039】
また、上記規制部材34および用紙導入部材35は搬送方向Aの上流側端面の角部が面取りした形状をなし、搬送面30との間が広く開いており、印刷用紙21のエッジを逃がす構造をなしている。
[作用効果]
上記した構成により、本実施の形態では以下の作用効果を奏している。
【0040】
印刷用紙21の搬送方向Aに沿って多段に記録ヘッド列を配置し、各記録ヘッド列の第1のライン型記録ヘッド33Aおよび第2のライン型記録ヘッド33Bがそれぞれ所定幅の画像形成範囲において印刷用紙21に画像(印字)を形成することで、印刷用紙21の任意の位置に画像を形成することができる。
【0041】
つまり、前段の第1の搬送ローラ対41の上側搬送ローラ41aと下側搬送ローラ41bにより印刷用紙21をピンチして浮き上がりを防止する状態で搬送方向Aに搬送し、印刷用紙21を第1のライン型記録ヘッド33Aと搬送面30との間に搬送して第1のライン型記録ヘッド33Aで印刷用紙21に画像を形成する。
【0042】
さらに、第1のライン型記録ヘッド33Aを通過した印刷用紙21を第2の搬送ローラ対42の上側搬送ローラ42aと下側搬送ローラ42bによりピンチして浮き上がりを防止する状態で搬送方向Aに搬送し、印刷用紙21を第2のライン型記録ヘッド33Bと搬送面30との間に搬送して第2のライン型記録ヘッド33Bで印刷用紙21に画像を形成する。このとき、第2の搬送ローラ対42の光電センサ81により印刷用紙21の先端が検出されると、離間装置61により、第1の搬送ローラ対41の上側搬送ローラ41aは下側搬送ローラ41bから離間される。
【0043】
さらに第2のライン型記録ヘッド33Bを通過した印刷用紙21を第3の搬送ローラ対43の上側搬送ローラ43aと下側搬送ローラ43bによりピンチして搬送方向Aに搬送し、第2のライン型記録ヘッド33Bで画像が形成された印刷用紙21は、すなわち画像形成部14から搬出された印刷用紙21は、排紙部15により排出されて、紙受け機構部16に重ねられる。このとき、第3の搬送ローラ対43の光電センサ82により印刷用紙21の先端が検出されると、離間装置62により、第2搬送ローラ対42の上側搬送ローラ42aは下側搬送ローラ42bから離間される。
【0044】
また、ライン型記録ヘッド33が搬送面30の上方に千鳥状に配列されていることにより、前段の第1のライン型記録ヘッド33Aの画像形成範囲と後段の第2のライン型記録ヘッド33Bの画像形成範囲が重ならず、後段の第2の搬送ローラ対42を前段の第1のライン型記録ヘッド33Aの画像形成範囲外に配置することが可能になる。よって、後段の第2の搬送ローラ対42は前段の第1のライン型記録ヘッド33Aにより画像形成した画像形成済領域に触れることなく印刷用紙21に当接し、印刷用紙21が搬送面30の上から浮き上がることを防止できる。
【0045】
また第1および第2の搬送ローラ対41,42において、下側搬送ローラ41b,42bの駆動軸41c,42cが上側搬送ローラ41a,42aの従動軸41d,42dよりも搬送方向Aにおいて上流側に位置することで、第1および第2の搬送ローラ対41,42を通過する際に、印刷用紙21は搬送面30に向けて斜め下方に送り出される。つまり、印刷用紙21は下方へ向けてカールするように矯正される。よって、印刷用紙21は、第1および第2のライン型記録ヘッド33A,33Bから離間する方向に付勢されながら、第1および第2のライン型記録ヘッド33A,33Bと搬送面30との間を通過する。また、印刷用紙21が前段の第1のライン型記録ヘッド33Aを通過する際に、規制部材34により印刷用紙21の浮き上がりが防止される。第1および第2の搬送ローラ対41,42が印刷用紙21を下方へ向けてカールするように矯正することで、搬送方向Aにおいて第2のライン型記録ヘッド33Bに沿った領域には、印刷用紙21の浮き上がりを防止する規制部材を配置する必要がない。
【0046】
したがって、印刷用紙21と第1および第2のライン型記録ヘッド33A,33Bとの間隔である紙間を狭く設定しても印刷用紙21が第1および第2のライン型記録ヘッド33A,33Bに当接することがなく、インク汚れが発生せず、鮮明な印字結果を得ることができる。
【0047】
また用紙導入部材35により、印刷用紙21を前段の第1のライン型記録ヘッド33Aと搬送面30との間に導入する際のジャムの発生が抑制される。
以上のように本実施の形態によれば、印刷用紙21は第1の搬送ローラ対41から前段の第1のライン型記録ヘッド33Aへ搬入(供給)され、第2の搬送ローラ対42に到達されると、光電センサ81がこれを検知し、第1の搬送ローラ対41の上側搬送ローラ41aが下側搬送ローラ41bから離間され、第1の搬送ローラ対41により印刷用紙21はピンチされずに搬送する力が失われることにより、印刷用紙21が、第2の搬送ローラ対42に挟まれたときに、第1の搬送ローラ対41による印刷用紙21の送り量と第2の搬送ローラ対42による印刷用紙21の送り量に差がなくなり、互いの干渉が避けられ、印刷用紙21に、第1の搬送ローラ対41と第2の搬送ローラ対42による引っ張り合いの力が働くこと、および弛みが発生することを回避でき、前段の第1のライン型記録ヘッド33Aにより印刷用紙21に印刷された画像にズレや洩れが発生してしまうことを回避できる。
【0048】
また同様に、印刷用紙21は第2の搬送ローラ対42から後段の第2のライン型記録ヘッド33Bへ供給され、第3の搬送ローラ対43に到達されると、光電センサ82がこれを検知し、第2の搬送ローラ対42の上側搬送ローラ42aが下側搬送ローラ42bから離間され、第2の搬送ローラ対421により印刷用紙21はピンチされずに搬送する力が失われることにより、印刷用紙21が、第3の搬送ローラ対43に挟まれたときに、第2の搬送ローラ対42による印刷用紙21の送り量と第3の搬送ローラ対43による印刷用紙21の送り量に差がなくなり、互いの干渉が避けられ、印刷用紙21に、第2の搬送ローラ対42と第3の搬送ローラ対43による引っ張り合いの力が働くこと、および弛みが発生することを回避でき、後段の第2のライン型記録ヘッド33Bにより印刷用紙21に印刷された画像にズレや洩れが発生してしまうことを回避できる。
【0049】
したがって、第1〜第3の搬送ローラ対41,42,43に使用する搬送ローラ41a,41b,42a,42b,43bに、加工ムラにより真円ではなく、偏心がある安価なローラを使用することができ、価格を抑えることができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、離間装置61,62により、上側搬送ローラ41a,42aを上下動させて、上側搬送ローラ41a,42aを下側搬送ローラ41b,42bから離間させているが、下側搬送ローラ41b,42bを上下動させて、下側搬送ローラ41b,42bを上側搬送ローラ41a,42aから離間させるようにしてもよい。なお、下側搬送ローラ41b,42bは駆動ローラであり、駆動機構の駆動ベルト54等も上下動させる必要があるため、離間装置61,62の構造が複雑となるという点、さらに従動ローラである上側搬送ローラ41a,42aは自分で回転していないため、印刷用紙21との接触により摩擦が発生して下流側の搬送ローラ対42,43の負荷となってしまい、下流側の搬送ローラ対42,43による印刷用紙21の送り量に変化が生じる恐れがあるという点から、上側搬送ローラ(従動ローラ)41a,42aを上下動させることのほうが好ましい。
【0051】
また本実施の形態によれば、離間装置61,62により上側搬送ローラ41a,42aを下側搬送ローラ41b,42bから離間させて、印刷用紙21を挟むことがないようにしている(上側搬送ローラ41a,42aが印刷用紙21に全く接触しないようにしている)が、上側搬送ローラ41a,42aが印刷用紙21に全く接触しないようにまで離間させる必要はない。しかし、上述したように、多少でも上側搬送ローラ41a,42aが印刷用紙21が接触されると、印刷用紙21に、上流側の搬送ローラ対41,42と下流側の搬送ローラ対42,43による引っ張り合いの力が働くこと、および弛みが発生することを完全に回避することができず、印刷用紙21に印刷された画像にズレや洩れが発生してしまう恐れが残るために、上側搬送ローラ41a,42aが印刷用紙21と全く接触しないように、上側搬送ローラ41a,42aを上方へ離間させるほうが好ましい。
【0052】
また本実施の形態によれば、離間装置61,62をカム67a,67b、ギヤ69a,69b等のカム機構を使用して構成しているが、必ずしもこのようなカム機構により構成する必要はない。たとえば、油圧機構で従動軸41d,42dを上下動させることも可能である。
【0053】
また本実施の形態によれば、プーリー51と駆動ベルト54を使用して、搬送ローラ対41,42,43を同期駆動して、同じ回転速度で回転させているが、このようなプーリー51と駆動ベルト54に限ることなく、搬送ローラ対41,42,43を同期駆動して、同じ回転速度で回転させることも可能である。例えば、ラックとピニオンの組み合わせ、歯車とチェーンの組み合わせなどにより可能である。
【0054】
また本実施の形態によれば、印刷用紙21の先端を検出する検出手段として光電センサ81,82を使用しているが、光電センサに限ることはなく、例えば、上方にカメラを配置して上方から画像形成部14を撮影し、その撮像データの変化により印刷用紙21の先端が第2および第3の搬送ローラ対42,43に到達したことを検出するようにしてもよい。
【0055】
また本実施の形態によれば、印刷対象の媒体を印刷用紙21としているが、媒体は印刷用紙21に限ることはなく、搬送ローラ対41,42,43のローラの加工ムラにより、印刷に影響を受ける媒体、例えば、フィルム等であってもよい。
【0056】
また本実施の形態では、搬送面30の上方に配置された複数のライン型記録ヘッド33は、千鳥状に配列してあるが、印刷用紙21に目的の画像が印刷できるように配置されてあればよく、例えば上流・下流の2列でなく1列でもよく、また複数のライン型記録ヘッド33ではなく1個の長いライン状ヘッドであってもよい。
【0057】
また本実施の形態によれば、画像形成部14では、インクジェット式を使用してインクを噴射しているが、インク以外の他の液体(液滴)を噴射したり吐出したりしてもよい。この場合、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態を言い、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施の形態で説明したようなインクが挙げられ、その他として液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。
【符号の説明】
【0058】
11 インクジェット式印刷装置
14 画像形成部
31 搬送ガイド
32 搬送ローラ
33 ライン型記録ヘッド
33A 第1のライン型記録ヘッド
33B 第2のライン型記録ヘッド
34 規制部材
35 用紙導入部材
41 第1の搬送ローラ対
41a 上側搬送ローラ
41b 下側搬送ローラ
41c 駆動軸
41d 従動軸
42 第2の搬送ローラ対
42a 上側搬送ローラ
42b 下側搬送ローラ
42c 駆動軸
42d 従動軸
43 第3の搬送ローラ対
43a 上側搬送ローラ
43b 下側搬送ローラ
43c 駆動軸
43d 従動軸
61,62 離間装置
65a,65b 軸受け
66a,66b バネ
67a,67b カム
68a,68b 支持軸
69a,69b ギヤ
70 駆動機構
71 支持部
72 歯
73 駆動部
75 連動軸
76 駆動ギヤ
77 モータ
81,82 光電センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象の媒体をこの媒体に画像が印刷される画像形成部へ搬入し、前記画像形成部より印刷された前記媒体を搬出する搬送装置であって、
前記画像形成部の上流側に配置され、駆動ローラと従動ローラ間に前記媒体を挟んで前記画像形成部へ搬入する上流ローラ対と、
前記画像形成部の下流側に配置され、駆動ローラと従動ローラ間に前記媒体を挟んで前記画像形成部から搬出する下流ローラ対と、
前記下流ローラ対に前記媒体の先端が到達したことを検出する検出手段と、
前記上流ローラ対の駆動ローラと従動ローラのうち一方のローラを他方のローラから離間させる離間手段
を備え、
前記検出手段により前記下流ローラ対に前記媒体の先端が到達したことが検出されると、前記離間手段により前記上流ローラ対の駆動ローラと従動ローラのうち一方のローラを他方のローラから離間させること
を特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記離間手段を、前記従動ローラを前記駆動ローラから離間させる構成としたこと
を特徴とする請求項1に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−215401(P2010−215401A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67147(P2009−67147)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】