説明

携帯型スペクトル分析機のデータ処理方法

【課題】 波長可変半導体レーザ光源からの可視光や近赤外光を対象物に照射して得られる透過スペクトルや反射スペクトルを分析すると、対象物に含まれる特定成分の含有率が得られる。しかしあらかじめ対象物の正しい品種名がわかっていないと基準スペクトルが設定できないから、測定したスペクトルとの比較ができず、特定成分の含有率の算出が不可能となる問題があった。
【解決手段】 そこでこの発明は、あらかじめ対象となる分野毎に様々な品種に関してスペクトルと特定成分の含有率を測定して、それをデータベース化してカードメモリに記憶させておく。測定時に携帯型スペクトル分析機に該当分野のカードメモリをセットし、測定したスペクトルとカードメモリ内のデータベースのスペクトルをコンピュータで逐次パターン比較して最も近似したスペクトルを決定して対象物の品種名を自動的に同定し、双方のスペクトルのわずかな差異から特定成分の含有率を算出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は可視光や近赤外光を発生する波長可変半導体レーザ光源による携帯型スペクトル分析機のデータを処理する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
波長可変半導体レーザ光源からの可視光や近赤外光を対象物に照射して得られる透過スペクトルや反射スペクトルを分析すると、対象物に含まれる特定成分の含有率が求まる。据え置き型の分光分析機では熟練者が操作するので問題がないが、携帯型スペクトル分析機では一般人が操作するために、あらかじめ対象物の正しい品種名がわかっていないと基準スペクトルが設定できないから、測定したスペクトルとの比較ができず、特定成分の含有率の算出が不可能となる問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこでこの発明は、対象物の正しい品種名がわからない場合でも、自動的に対象物の品種名を同定して特定成分の含有率を算出できるようにして、一般人でも容易にスペクトル分析ができる事を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
あらかじめ対象となる分野毎に、様々な品種の対象物に関してスペクトルと特定成分の含有率を測定して、それをデータベース化してカードメモリに記憶させておく。測定時に携帯型スペクトル分析機に該当分野のカードメモリを選択してセットし、測定したスペクトルとカードメモリ内のデータベースのスペクトルをコンピュータで逐次パターン比較して最も近似したスペクトルを決定して対象物の品種名を自動的に同定し、双方のスペクトルのわずかな差異から特定成分の含有率を算出している。
【発明の効果】
【0005】
測定者が対象物に関して得られる情報の範囲内でカードメモリの該当分野を選択してセットすればよいから、簡単に対象物の品種名の同定ができ、それに含まれる特定成分の含有率を自動的に算出できる。携帯型スペクトル分析機はすべてのカードメモリに共通して利用できるから、データベースを人間・果実・茸・魚・肉・鉱物・プラスチック・金属などの細かい品目別にカードメモリで供給すれば、あらゆる対象物のスペクトル分析に対応できる。データベースを内臓メモリに入れる方法はデータベースの数が多くなりすぎて検索に時間がかかる欠点があるが、カードメモリを使うとデータベースの数が限定される為検索時間が短く、データの追加や更新も簡単にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
波長が400nmから2000nmまでの可視光や近赤外光を人体の血管部分に照射して得られる透過スペクトルや反射スペクトルを解析すると、血糖値やコレステロール値やアルコール濃度が得られる。しかし人種・性別・年齢・体型・健康状態などによってスペクトルや血液成分データにばらつきがあるために、標準となるスペクトルの設定が困難であった。また同じ人でも朝・昼・夜の測定の時間帯や測定部位によりスペクトルや血液成分データが変動する問題があった。そこで測定可能なあらゆる人々に関して様々な状態の透過もしくは反射スペクトルを測定し、得られたスペクトルとその時の血液成分データを、データベース化してカードメモリに人種や性別や年齢などで分類して保存している。対象となる人物の人種や性別や年齢などは明らかであるから、そのカードメモリを携帯型スペクトル分析機にあらかじめセットし、実際に測定したスペクトルとカードメモリ内のデータベースをコンピュータでパターン比較して最も近いスペクトルを求め、このスペクトルの人物を擬似標準人物として標準データを一時的に設定する。そして、この擬似標準人物に関するデータベース内の複数のスペクトルと測定スペクトルとの差異から、求める血液成分に関する値をそれぞれ算出する。標準データを特定せず、測定の都度に擬似標準人物を設定しているので、算出する血液成分の値の誤差を小さくできる。この方式では当人の体型や年齢が変化していっても自動的に擬似標準人物も変化するので、標準データを固定する方式より優れている。
【産業上の利用可能性】
【0007】
糖尿病患者の血糖値の測定、交通違反者のアルコール濃度測定、収穫前の果物の糖度の測定、茸狩りの毒茸の判別、カット魚肉の判別、牛肉と豚肉の混合物の混合割合の算出、廃プラスチックの分別、廃品金属の分別などの様々な分野で利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ対象となる分野毎に、様々な品種の対象物に関してスペクトルと特定成分の含有率を測定して、それをデータベース化してカードメモリに記憶させておき、測定時に携帯型スペクトル分析機に該当分野のカードメモリをセットして、測定したスペクトルとカードメモリ内のデータベースのスペクトルをコンピュータで逐次パターン比較して最も近似したスペクトルを決定して対象物の品種名を自動的に同定し、双方のスペクトルのわずかな差異から特定成分の含有率を算出する方法。

【公開番号】特開2009−282007(P2009−282007A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162537(P2008−162537)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(508081569)
【Fターム(参考)】