携帯型腹膜透析システム
患者のための携帯型腹膜透析システムは、患者の腹膜腔に流入物を供給するための入口ポート、患者の腹膜腔からの流出物を供給するための出口ポート、およびある容量の透析物を含み、該透析物は患者の腹膜腔内に流入し、該腹膜腔から流出し、それにより、該透析物中に拡散した尿毒症老廃代謝産物が該透析物から除去される。また、該携帯型腹膜透析システムは、患者の腹膜腔内に透析物を流入させ、該腹膜腔から流出させるための、ポンプを含む閉鎖液流ループと、該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む有機物およびリン酸塩除去ステージとを含み、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物から有機化合物およびリン酸塩を除去するための物質を含む。さらに、該携帯型腹膜透析システムは、該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む尿素およびアンモニア除去ステージを含み、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物から尿素およびアンモニアを除去するための物質含み、該物質が、カチオンを拒絶する繊維内壁を有する半透過性中空繊維の周囲に充填され、それにより透析物中にカチオンが保持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年11月3日に出願された米国特許仮出願第61/198,102号の恩典を主張する。
上記出願の全教示は、参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
腎臓機能障害または腎不全、特に末期腎疾患により、身体から、水および無機塩類を除去する能力ならびに有害代謝産物を排泄する能力、酸-塩基バランスを保つ能力、ならびに電解質および無機塩類の濃度を生理的範囲内に調節する能力が失われる。身体組織中の尿、クレアチニン、尿酸およびリン蓄積物などの尿毒性老廃代謝産物は、腎臓のろ過機能が回復しなかった場合にヒトを死に至らしめることがある。
【0003】
一般的に、透析は、これらの老廃毒物および余分な水を除去して、腎臓機能に取って代わるために使用される。透析治療の1つの型の血液透析において、外部血液透析装置中の患者の血液から毒素が除去される。血液は、外的補充透析物から半透過性膜により分離された透析器を通って、患者から移動する。老廃物および血液は、半透過性膜を通って血液から透析物へと除去され、その後廃棄される。典型的に、血液透析治療は、数時間続き、週に3または4回医療監視下で行われなければならず、患者の自立性および生活の質を大きく低下させることを必要とする。また、血液透析は連続的ではなく定期的に行われるので、患者の状態および一般的な幸せは共に、血液透析の直前(毒物レベルが高いとき)および血液透析の直後(電解質が不均衡のとき)に悪くなることがあり、患者に、悪心および嘔吐から水腫にわたる症状をもたらす。
【0004】
腹膜透析は、滅菌、発熱物質非含有透析液を患者の腹腔内に注入する、腎臓機能に取って代わるために使用される別の型の透析治療である。腹膜は、天然の透析器として機能し、尿毒性老廃代謝産物および種々のイオンを、腹膜を通して患者の血流から透析液中に、濃度勾配によって拡散させる。同時に、浸透圧勾配により腹腔中に水を引き込む。透析液は、半連続または連続的に除去され、廃棄されて新しい透析液と取り替えられる。腹膜透析に必要な大量の溶液の排出、廃棄および置換は、特に治療施設ではなく自宅での腹膜透析治療にとって、依然として不都合、非実際的かつ高額である。
【0005】
この問題に対処するために、使用済み透析物を、血液透析液および/または腹膜透析液から廃棄とは対照的に再構成するデバイスを設計した。透析物は、溶液から尿素を排除するデバイスを使用する機械中で再生され得る。例えば、元来のREDY(登録商標)(REcirculating DYalysis)Sorbent System(Blumenkrantz et al., Artif. Organs 3(3):230-236, 1978)は、再生のために尿毒性老廃代謝産物を含む透析液が通過する5つの層を有する吸着カートリッジからなる。通過した透析物は、重金属(例えば、銅および鉛)ならびに酸化物(例えば、塩素およびクロラミン)を除去する精製層、いくつかの酸化アルミニウムに結合して、透析物中の尿素をアンモニアと二酸化炭素ガス(炭酸アンモニウムと平衡)に分解するウレアーゼを含む酸化アルミニウム層、他のカチオン(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウム)と共に尿素分解から生じたアンモニウムイオンを吸着するリン酸ジルコニウム層、酢酸と引き換えにリン酸および他のアニオン(例えば、フッ素および硫黄)と結合する水酸化ジルコニウム層、ならびに他の有機化合物(例えば、クレアチニンおよび尿酸)を吸着する活性炭層を通過する。
【0006】
典型的に、REDY(登録商標) Sorbent System等のデバイスに使用される吸着剤は、尿素分解産物だけでなく、透析物中に拡散した必須イオン、例えばカルシウムおよびマグネシウムも吸着する。これらのイオンはその後患者に補充しなければならない。典型的に、現在の吸着剤ベースの血液透析機械は、過剰なポンプおよび関連した弁を使用してこれらの必須イオンを継続的に交換して機構を制御しており、デバイスは血液透析機械の重量および複雑性が増し、腹膜透析システムについて、現在同様の課題が示されている。
【0007】
そのため、より便利、安全かつ効果的で、現在のデバイスおよび方法と比べて患者の生活の質を大きく改善する透析デバイスが必要である。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明は、快適に身につけることができるか、または患者が持ち運ぶことができ、透析期間中、継続的または半継続的に作動して、患者の体内から、例えばカルシウムおよびマグネシウム等の必須イオンを過剰に枯渇させることなく、腎臓機能障害または腎不全を有する患者から尿毒性老廃代謝産物を除去し得る、携帯型腹膜透析デバイスを提供する。
【0009】
本発明の携帯型腹膜透析システムは、患者の腹腔への流入をもたらす流入口、患者の腹腔からの流出をもたらす流出口、および患者の腹腔の内外の流入および流出のためのある容量の(a volume of)透析物を備え得、それにより透析物に拡散した尿毒性老廃代謝産物を透析物から除去する。この携帯型腹膜透析システムは、患者の腹腔の内外に透析物を流すためのポンプを含む閉鎖系液流ループ(loop)、ならびに閉鎖系液流ループ中の、患者の腹腔から除去された透析物から有機化合物およびリン酸塩を除去するための物質を含む少なくとも1つの交換可能カートリッジを含む有機物およびリン酸塩除去ステージも備え得る。一態様において、この物質は半透過性中空繊維の周囲に充填される。この携帯型腹膜透析システムは、さらに、閉鎖系液流ループ中の、患者の腹腔から除去された透析物から尿素およびアンモニアを除去するための物質を含む少なくとも1つの交換可能カートリッジを含む尿素およびアンモニア除去ステージを備え得、該物質は、内部繊維壁がカチオンに反発することで、透析物中にカチオンを保持する半透過性中空繊維の周囲に充填される。別の態様において、有機化合物およびリン酸塩を除去するためのカートリッジ中の物質は、活性炭および酸化ジルコニウムの混合物を含み得る。さらに別の態様において、尿素およびアンモニアを除去するためのカートリッジ中の物質は、ウレアーゼおよび強酸カチオン交換樹脂またはイオン交換吸着剤等の吸着剤を含み得る。一態様において、ウレアーゼは、ナタマメ粉ポリエチレンイミン-炭素架橋複合物の形態であり得る。別の態様において、該携帯型腹膜透析システムはさらに、閉鎖系液流ループ中の、患者の腹腔から除去された透析物からアンモニアを除去するための物質を含む少なくとも1つの交換可能カートリッジを含むアンモニア除去ステージを含み得、該物質は、内部繊維壁がカチオンを反発するために透析物中にカチオンを保持する中空繊維の周囲に充填される。一態様において、カチオンを反発する内部繊維壁を有する半透過性中空繊維は、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムカチオンを反発し得る。別の態様において、アンモニアを除去するためのカートリッジ中の物質は、強酸カチオン交換樹脂またはイオン交換吸着剤などの吸着剤を含み得る。さらに別の態様において、該携帯型腹膜透析システムはさらに、閉鎖系液流ループ中の、患者の腹腔から除去された透析物から有機化合物を除去するための物質を含む少なくとも1つの交換可能カートリッジを含む有機物およびリン酸除去ならびにpH制御ステージを含み得、該物質は透析物のpHを生理的pHまたはその近位に制御する。一態様において、有機化合物を除去するためのカートリッジ中の物質は活性炭を含み得、透析物のpHを制御するためのカートリッジ中の物質は酸化ジルコニウムおよび炭酸ジルコニウムナトリウムの混合物を含み得る。
【0010】
別の態様において、該携帯型腹膜透析システムは、患者が身につけるように適合されたベルトとして構成され得、各ステージの各カートリッジは、実質的に長方形で、患者の衣類の下に隠せるほど充分に小さい。別の態様において、該携帯型腹膜透析システムは、ベルトとして患者が着用するように適合されるか、または卓上合体ユニットに合体された統合系ループとして構成され得る。さらに別の態様において、該携帯型腹膜透析システムは、卓上ユニットとして構成され得る。
【0011】
本発明はまた、ある容量の透析物を患者の腹腔の内外に流すための閉鎖系液流ループを備える携帯型腹膜透析システムを使用して、透析物再生ステージにより、患者に腹膜透析を提供する方法に関する。該方法は、閉鎖系液流ループ中の、患者の腹腔から除去された透析物から有機化合物およびリン酸塩を除去するための物質を含む少なくとも1つの交換可能カートリッジを含む、有機およびリン酸塩除去ステージにより患者の腹腔から大量の透析物を流すことを含む。従って、本発明はさらに、閉鎖系液流ループ中の、患者の腹腔から除去された透析物から尿素およびアンモニアを除去するための物質を含む少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む、尿素およびアンモニア除去ステージに含まれる半透過性中空繊維中に、ある容量の透析物を流すことを含み、該物質は、半透過性中空繊維の周囲に充填され、該半透過性中空繊維は、カチオンを反発する内部繊維壁を有し、それにより透析物から、透析物に拡散された尿毒性老廃代謝産物を除去しながら、透析物中にカチオンを保持し、再生された透析物を生成して、該再生された透析物を患者の腹腔に導入することを含む。
【0012】
これまでの透析システムとは異なり、本発明の携帯型腹膜透析システムは、患者がより正常で活発なライフスタイルを維持することを可能にする透析デバイスを提供する。腹膜透析液が再生されるため、該携帯型腹膜透析システムに循環させる必要な透析物は比較的少量であり、それによりシステムを比較的小型化および軽量化することが可能になるので快適に着用または運べる。携帯型腹膜透析システムは、透析物の再生により透析の期間連続的または半連続的に作動させることができるので、患者の全体的な幸福および生活の質が向上し、大きな労働力を要し、時間がかかりおよび/または医学的監視を必要とする透析システムから患者は解放される。さらに、該携帯型腹膜透析システムは、透析物、最終的には患者の体内から特定の必須イオンを除去することなく透析物を再生する。この事は、これらの必須イオンを補充する現在の装置は一般的に携帯型腹膜透析システムの重量および複雑性を増加させる余分なポンプを含むので、最大の利点である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
同様の参照記号が異なる図面を通じて同様の部位を参照する添付の図面に示されるように、上述の事柄は、以下の本発明の好ましい態様のより具体的な記載から明白であろう。図面は必ずしも同じ縮尺であるとは限らず、本発明の態様の説明を強調している。
【0014】
【図1】図1は、本発明の携帯型腹膜透析システムの模式図である。
【図2】図2は、1.10グラムのリン酸二水素ナトリウムおよび0.40グラムの無水クレアチニンを含む2リットル容量の溶液からの3.6グラムの酸化ジルコニウム、6.2グラムの活性炭、および3.6gの酸化ジルコニウムと6.2gの活性炭の混合物によるリン除去の試験における時間の関数としてのリン濃度のグラフである。
【図3】図3は、本発明の携帯型腹膜透析システムの第1清浄化ステージの模式図である。
【図4】図4は、8.0mg/dLのリンおよび12mg/dLのクレアチニンを含む溶液からの第1ステージカートリッジによるリンおよびクレアチニン除去の試験における時間の関数としてのリン濃度のグラフである。
【図5】図5は、8.0mg/dLのリンおよび12mg/dLのクレアチニンを含む溶液からの第1ステージカートリッジによるリンおよびクレアチニン除去の試験における時間の関数としてのクレアチニン濃度のグラフである。
【図6】図6は、本発明の携帯型腹膜透析システムの第2清浄化ステージの模式図である。
【図7】図7は、図6に示された携帯型腹膜透析システムの第2清浄化ステージの内部の拡大部分切断面図である。
【図8】図8は、141gのリン酸ジルコニウムおよび5gの固定ウレアーゼ複合物を含む第2ステージカートリッジによる尿素およびアンモニア除去の試験における時間の関数としての血中尿素窒素(BUN)濃度のグラフである。
【図9】図9は、141gのリン酸ジルコニウムおよび5gの固定ウレアーゼ複合物を含む第2ステージカートリッジによる尿素およびアンモニア除去の試験における時間の関数としてのアンモニア濃度のグラフである。
【図10】図10は、132gのリン酸ジルコニウムおよび5gの固定ウレアーゼ複合物を含む第2ステージカートリッジによる尿素およびアンモニア除去の試験における時間の関数としての血中尿素窒素(BUN)濃度のグラフである。
【図11】図11は、132gのリン酸ジルコニウムおよび5gの固定ウレアーゼ複合物を含む第2ステージカートリッジによる尿素およびアンモニア除去の試験における時間の関数としてのアンモニア濃度のグラフである。
【図12】図12は、第2ステージカートリッジの薄膜複合膜中空繊維を通過する尿素およびカチオン輸送の試験における時間の関数としての血中尿素窒素(BUN)濃度のグラフである。
【図13】図13は、第2ステージカートリッジの薄膜複合膜中空繊維を通過する尿素およびカチオン輸送の試験における時間の関数としてのカルシウム(Ca+)濃度のグラフである。
【図14】図14は、第2ステージカートリッジの薄膜複合膜中空繊維を通過する尿素およびカチオン輸送の試験における時間の関数としてのカリウム(K+)濃度のグラフである。
【図15】図15は、第2ステージカートリッジの薄膜複合膜中空繊維を通過する尿素およびカチオン輸送の試験における時間の関数としてのナトリウム(Na+)濃度のグラフである。
【図16】図16は、本発明の携帯型腹膜透析システムの第3清浄化ステージの模式図である。
【図17】図17は、本発明の携帯型腹膜透析システムの第4清浄化ステージの模式図である。
【図18】図18は、本発明の携帯型腹膜透析システムの一態様の模式的フロー図である。
【図19】図19は、清浄化ステージのための「レーストラック」設計のカートリッジ殻の写真である。
【図20】図20は、ベルト構成の携帯型腹膜透析システムの態様の写真である。
【図21】図21は、ベルト構成の携帯型腹膜透析システムの態様の模式図である。
【図22】図22は、統合型ループ構成の携帯型腹膜透析システムの態様の図示である。
【図23】図23は、ベルト構成の図22に示された統合型ループの態様の図示である。
【図24】図24は、卓上合体ユニット構成の図22に示された統合型ループの態様の図示である。
【図25】図25は、角のある卓上合体ユニット構成の図22に示された統合型ループの態様の図示である。
【図26】図26は、卓上構成の携帯型腹膜透析システムの態様の図示である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は一般的に、尿毒素の蓄積に関連する障害(例えば、慢性腎不全)に苦しむ患者から尿毒性老廃代謝産物を除去する携帯型腹膜透析システムに関する。該系は、例えば、早期腎疾患、腎機能障害または腎不全(例えば末期腎疾患)などの腎疾患などの障害を治療するために使用され得る。本明細書において使用される場合、用語「尿毒性老廃代謝産物」および「尿毒性溶質」は、身体で老廃物として生成される窒素含有物などの化合物のことをいい、尿素、尿酸、クレアチニン、リンおよびβ-2ミクログロブリンなどの化合物ならびに他の物質が挙げられる。Vanholder R. et al., Kidney International 63: 1934-1943, (2003)参照。腎不全または腎機能障害は、患者内の尿毒性老廃代謝産物のレベルが正常腎機能を有する個体における毒素のレベルと比べて高い場合に生じる尿毒性をもたらす。
【0016】
従って、本発明は、従来の系およびデバイスとは異なり、患者に大きな負担をかけることなく着用可能または携帯可能なほどに充分に小さいものであり得る携帯型腹膜透析システムに関する。該腹膜透析システムは、透析物を該系中で循環させて再生する、1つ以上の交換可能なカートリッジを含む清浄化ステージを含むので、腹膜透析は連続または半連続的に実施できる。透析物を約7.4の生理的pHに維持しながら、携帯型腹膜透析(PD)系により典型的な患者から尿毒性溶質を毎日除去する所望の量の例を表1に列挙する。表1に示すように、最大所望量は、例えば、治療を失敗したかまたは典型的な患者よりも実質的に大きな筋肉質量を有するか、あるいは食事制限には特に従わない患者からの除去である。
【0017】
【0018】
一態様において、携帯型腹膜透析システムは、透析物の清浄化のための一列につながれたいくつかのステージ、例えば2、3、4以上のステージを含み得る。好ましい態様において、各清浄化ステージは、1つ以上のカートリッジにより達成される。該カートリッジは患者に着用され得るかまたは持ち運ばれ得るかのいずれかであるか、あるいは卓上構成である。別の好ましい態様において、全てのステージは、ベルト構成で、好ましくは衣類の下に隠せるように患者が快適に着用できるように充分に小さくあり得る。好ましくは、ベルトに取り付けられた電池式ポンプなどのポンプにより、患者の腹腔を含む閉鎖ループ中で各カートリッジを通して透析物が循環される。好ましい態様において、該ポンプは、清浄化ステージと一体化して一体型ループを形成する使い捨てカセットまたは使い捨てポンプヘッドを含み得る。使い捨てカセットまたはポンプヘッドは、ポンプ機構と透析物を隔離するために使用され、機構の洗浄および滅菌を必要とせずにポンプの再利用を可能にする。それぞれの清浄化ステージは、透析物再生の際に1つ以上の機能を実行し得る。大量の尿毒性溶質の除去を必要とする患者のために、1つ以上の同一のカートリッジを一列に連結し得るか、または並行に連結し得る。1つ以上の使用済みカートリッジは、必要に応じて患者により取り替えられ得る。好ましい態様において、一体型ループは毎日取り替えられ得る。
【0019】
図1には、本発明の携帯型腹膜透析システムの特定の好ましい態様を示す。構成要素のそれぞれは、各清浄化ステージの説明においてより詳細に説明される。
【0020】
活性炭および酸化ジルコニウムを含み、半透過性繊維を取り囲む第1清浄化ステージは、有機化合物、リンおよび/またはリン酸塩および硫酸塩を除去するために使用され得る。有機化合物としては、例えばクレアチニン、p-クレソールスルフェート、尿酸およびβ-2-ミクログロブリンが挙げられ得る。通常、有機化合物は、活性炭、典型的には木炭を使用して除去される。好ましくは、活性炭は、単位容量当たり大きな表面積、種々の大きさの尿毒素の吸着のための広い範囲の孔径を有し、高い純度および/またはUSP等級を有する。炭素の高純度は、任意の水溶性不純物を除去するための多重酸および水洗により達成され得る。繊維の周囲の最適な分配および最適な溶質輸送のために、炭素を小顆粒または粗製粉末にすることも有利である。適切な活性炭の例としては、Nuchar(登録商標) Aquaguard 40(MeadWestvaco, Glen Allen, VA)、Norit(登録商標) ROXおよびNorit(登録商標) E Supra(Norit Americas, Marshall, TX)が挙げられる。好ましい活性炭は、Calgon Carbon Corporation, Pittsburgh, PAにより販売されているものなどの酸洗浄熱分解石炭由来活性炭である。
【0021】
リン酸塩(PO43-、HPO42-およびH2PO4-)としてのリンならびに硫酸塩(SO42-)は、アニオン交換樹脂または水酸化ジルコニウム(HZO)に結合させることで除去し得る。適切なアニオン交換樹脂としては、DOWEXTM 1(水酸化形態)、M-43、21 K XLT、MarathonTM MSA、およびM4195(銅形態)(Dow Chemical, Midland, MI)、およびAmberliteTM 96(Rohm and Haas, Philadelphia, PA)が挙げられる。好ましい態様において、水酸化ジルコニウム(例えば酢酸または炭酸対イオン形態の酸化ジルコニウム)は、リン酸塩および硫酸塩を結合するために使用され得る。より好ましい態様において、活性炭粉末と水酸化ジルコニウムの混合物を第1カートリッジに充填する前に、活性炭粉末と水酸化ジルコニウム粉末を混合し得る。1.10グラムのリン酸三ナトリウム二水和物および0.40グラムの無水クレアチニンを含む2リットル容量の溶液を混合して、同じ量の分離成分と比較した際の6.2グラムの活性炭粉末と3.6グラムの水酸化ジルコニウムの混合物を使用したリン除去の比較を行った。第1ステージカートリッジの中空繊維により溶液を100ml/分(1分当たりのミリリットル)でくみ出した。定期的に試料を取り出して分析した。図2に示されるように、水酸化ジルコニウムは、活性炭と混合した場合にリン酸と結合する能力を有する。
【0022】
効果的な尿毒溶質除去およびカートリッジを通した透析物輸送のために、活性炭と水酸化ジルコニウム粉末の混合物を、繊維壁の孔を通過する尿毒溶質の高速の拡散性かつ対流的な輸送用および中空繊維の内部(内腔側)を通過する透析物のフローの低抵抗性用に設計した中空繊維の周りに充填し得る。適切な中空繊維物質としては、セルロース、ナイロン、フッ化ポリビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、およびポリプロピレンが挙げられる。好ましい態様としては、約210μm(マイクロメートル)以下の内径、約40μm以下の壁厚さ、および約100kDa(キロダルトン)の限外ろ過分子量カットオフを有するポリスルホン中空繊維、例えばOptiflux 180透析器(Fresenius Medical Care North America, Waltham, MA)が挙げられ得る。
【0023】
第1ステージの1つの態様を図3に示す。ここでは、第1ステージカートリッジ100は、約4500本の中空繊維110を含み得るが、図には4本の繊維を示す。活性炭および水酸化ジルコニウム粉末の混合物120を該繊維110の周囲に充填する。好ましい態様において、該中空繊維はポリスルホン製であり、少なくとも約100ml/分の透析物を流し、生じる圧の増大が最大で約10mmgであるように設計される。0.21m2(平方メートル)の全膜面積に対して、結束(potted)端を除いた4500本のポリスルホン繊維が占める全体の容積は、約15〜30cc(立法センチメートル)、より好ましくは約18ccである。約40〜80g、好ましくは約60gの水酸化ジルコニウム(酢酸対イオン形態)および約30〜55g、好ましくは約44gの活性炭の混合物を均一に混合し、ポリスルホン繊維の周囲に充填する。透析物は繊維110の内部(内腔側)に流入し、有機化合物、リン酸塩および硫酸塩は、繊維の孔を通過して、活性炭と水酸化ジルコニウムの混合物120により殻側で吸着される。殻側上の液体により除去される任意の気体は、疎水性通気孔130を通って、外気に放出される。疎水性通気孔(例えば、D30480, W, L. Gore & Associates, Newark, DE)は、気体を通すが液体は通さない。一部清浄化された透析物は、その後カートリッジ100から次の清浄化ステージに流れる。7.39グラムのNa2HPO4・12H2Oおよび0.96グラムの無水クレアチニンを含む容積8リットルの溶液を混合して、第1ステージにおけるリンおよびクレアチニン除去の試験を行った。混合物は、8.0mg/dL(1デシリットル当たりのミリグラム)の濃度のリンおよび12mg/dLの濃度のクレアチニンを生じるように設計した。第1ステージカートリッジの中空繊維を通して、100ml/分で溶液をくみ上げた。試料を定期的に取り出して分析した。リンおよびクレアチニン濃度の結果を時間の関数として図4および5のそれぞれに示す。
【0024】
第二清浄化ステージは、透析物から尿素を除去するために使用され得る。尿素は、強酸カチオン交換樹脂もしくは吸着剤、例えばイオン交換吸着剤への吸着により、または尿素分解酵素により尿素を第1にアンモニアと二酸化炭素ガスに分解してその後強酸カチオン交換樹脂もしくは吸着剤への吸着によるアンモニア副産物の除去および二酸化炭素の外気への放出により取り除き得る。尿素分解酵素は天然に存在し得る(例えば、ナタマメ、他の種子または細菌由来ウレアーゼ)か、または(例えば、尿素分解酵素を発現および/または分泌する細菌、真菌、昆虫、もしくは哺乳動物細胞中の)組み換え技術により生成し得るか、または合成により生成し得る(例えば、合成し得る)。
【0025】
一態様において、固定によりウレアーゼは酵素活性を保ちながら安定化され、ウレアーゼがカートリッジの透析物流および生成アンモニア流中に入り、アンモニア吸着剤から離れる可能性が低減されるので、一般的にウレアーゼを固定化することが好ましい。ウレアーゼは、酸化アルミニウム(例えば、SORB、HISORB、Sorb Technology)または樹脂、例えばAmberzymeTM(Rohm and Haas)に結合させることにより固定化され得る。酵素(例えば、ウレアーゼ)はまた、膜に、または代替的に多孔性のビーズもしくは樹脂に、化学的に結合され得る。この結合により、酵素は拡張使用のために安定化され、多孔性ビーズまたは樹脂への結合の場合には、ウレアーゼはデバイス中に充填および/または置き換えされ得る。特に、ウレアーゼは、ポリスルホン中空繊維膜の外部または別の繊維もしくは樹脂に化学的に結合され得る。結合は、チオール基、アミド基またはカルボン酸基などの触媒部位に大きな影響を与えない、酵素のアミノ酸部分の反応性付属(pendant)基を介し得る。酵素または架橋酵素結晶(CLEC)の固定化に使用され得る化学物質は、当該技術分野に周知である(例えば、J. Jegan Roy and T, EmiliaAbraham, Strategies in Making Cross-Linked Enzyme Crystals, Chemical Reviews, 104(9):3705-3721 (2004)参照)。また、ウレアーゼは、例えば尿素の分解のために結晶化形態で使用することができ、イオン交換樹脂または吸着剤と混合され得る。好ましい態様において、ナタマメ由来のウレアーゼ酵素は、2009年9月2日に出願された米国特許出願第12/552,332号に記載されるように、ポリエチレンイミン-炭素複合物と架橋することにより固定化され得る。
【0026】
尿素の酵素分解により生じるアンモニアは、高濃度(例えば、約2000μg/dL(マイクログラム/デシリットル)より高い)の場合、ヒトに対して毒性であり得、pHを生理的pHから変化させ、ウレアーゼの酵素活性を阻害する。そのため、アンモニアを除去することが必要であり、アンモニアは、ポリマー強酸カチオン交換樹脂、例えばスルホン酸置換ポリスチレン架橋ジビニルベンゼンへの吸着、またはイオン交換吸着剤、例えばリン酸ジルコニウムへの吸着のいずれかにより除去し得る。充分なアンモニア(アンモニウムイオン)結合能および純度を有する任意の強酸カチオン交換樹脂が適切である。強酸カチオン交換樹脂の具体例としては、AmberliteTM IRN 77、IRN 97、IRN 99、IR 120、UP 252、CG 15、CG 120、IRC 50、IR 200およびIRA 900(Rohm and Haas, Philadelphia, PA)、またはDow Chemical、Mitsubishi、Purolite、Sybron、およびLanxess製の同等の樹脂が挙げられる。
【0027】
好ましい態様において、アンモニアは、リン酸ジルコニウムへの吸着により除去し得る。より好ましい態様において、米国特許出願第12/569,485号に記載のように、アンモニア結合能を向上させたリン酸ジルコニウムを調製する。リン酸ジルコニウムの有利な特性は、pHをウレアーゼの付近に調節して、生理学的pHまたはその付近に維持することが補助され、それによりウレアーゼの酵素活性が維持されることである。
【0028】
ポリマー強酸カチオン交換樹脂またはイオン交換吸着剤は、アンモニウムイオン(NH4+)の形態のアンモニアに結合し、該樹脂または吸着剤がアンモニウムイオンに結合する能力は、結合部位の他の正電荷イオン(カチオン)との競合により低減されるので、より多量のアンモニア除去樹脂または吸着剤が必要になり、カートリッジの重量が増加する。そのため、ウレアーゼおよびカチオン交換樹脂またはリン酸ジルコニウム吸着剤を含むカートリッジの一部から、アンモニウムイオン以外のカチオンを除去することが好ましい。透析物中にカチオンが残ることは、患者の系において、必須イオン、例えばカルシウム(Ca+2)およびマグネシウム((Mg+2)が過剰に枯渇しないというさらなる利点を有する。
【0029】
透析物中でカチオンを保持するための好ましいアプローチには、尿素は通すが高濃度のカチオンは通さない壁を有する中空繊維が使用される。中空繊維は、カチオン反発(cation-rejecting)物質で作製されるかまたはカチオン反発物質で覆われる。例えば、中空繊維の内側または外側をカチオン反発物質で被覆またはカチオン反発物質と同時押出し成形することで、中空繊維の内側または外側に層が形成され得る。選択的カチオン反発層を形成する物質は、例えば、エステル化セルロースまたはアセチルセルロース(酢酸セルロース)であり得る。好ましい態様において、選択層は、2008年1月3日に出願されたドイツ国特許出願第DE 10 2008 003 090.2号、および2009年7月9日に公開されたWO 2009/083260 A1に記載されるように、アセチルセルロースであり得る。該出願に開示されるように、中空繊維は位相反転プロセスにより作製した。最初に、2つの紡糸ドープ(spinning dope)溶液AおよびBを生成した。第1の紡糸ドープ溶液Aは、中空繊維膜の内腔側選択層用の物質を含み、第2の紡糸ドープ溶液Bは、支持層用の物質を含んだ。
【0030】
支持層用紡糸ドープ溶液(外層)は、ジメチルアセトアミドの溶液中、20重量%のUdel 3500ポリスルホンおよび5重量%のK90ポリビニルピロリドンおよび1重量%の水で構成された。この溶液の粘度は、約11500 mPa・sであった。内腔側選択層用紡糸ドープは、30重量%の、29kD(キロダルトン)の分子量および40%のアセチル含量を有する二酢酸セルロース(Sigma/Aldrichから入手可能)で構成された。これを攪拌してジメチルアセトアミドに溶解した。この溶液の粘度は約15000mPa・sであった。
【0031】
二種類の紡糸ドープ溶液を適当な用量比で、先行技術で公知の複合中空繊維用ダイにて紡糸した。先行技術において、複合中空繊維ダイ、2種類の溶液は、内部および外部の紡糸ドープの同時押出しを可能にする相互に同心のダイチャンネルによって誘導された。2つの同心ダイチャンネルは、軸チャンネルの周囲にあり、該軸チャンネルを通って、2つの紡糸ドープ層用の凝固剤が誘導された。内部凝固剤として水を使用した。ダイパック(スピンパック)の温度は20℃であったが、該方法の範囲においてさらに変化させることができた。驚くべきことに、低温(<30℃)で紡糸した繊維は、ナトリウム、カリウムなどの一価のカチオンよりも高い尿素の選択性を有することが見出された。
【0032】
スピンパックから排出された後、中空繊維は約250mmのエアギャップを通過し、その後、約42℃の温度を有する水充填凝固槽に入った。続いて、そのようにし得られた複合中空繊維を、75℃に調節されたリンス槽でリンスした。繊維の進行速度は250mm/秒であった。このようにして得られた中空繊維を、その後、約95℃で乾燥させた。凝固槽およびリンス槽の容積および進行速度は、溶媒非含有通常中空繊維が得られるように調整した。
【0033】
続いて、乾燥繊維をリールに巻き取った。中空繊維の束は、0.4m2の全表面積を有する2300本の繊維から構成されていた。繊維の内径は200μmであった。繊維の外径は261μmであった。選択層の厚さは約500nmであった。
【0034】
繊維を筺体に成形して、ポリウレタンで結束させ、繊維内腔および繊維外側表面に対する独立フローを確実にするモジュールを形成した。続いて、中空繊維膜を、限外ろ過速度ならびに尿素および種々の塩についての透過性に関して調べた。
【0035】
水性限外ろ過は、37℃で内腔側に過剰な圧力をかけ、中空繊維の内腔側から中空繊維の外側へ通過する水の量を測定することにより測定した。膜について測定された限外ろ過速度は、0.1〜0.3(ml/(hトールm2))の範囲であった。
【0036】
尿素および塩の透過性は、25mM尿素、141mM NaCl、2.5mM CaCl2、249mMグルコースおよびを含む500〜700mlの尿素含有塩溶液を使用して測定し、50ml/分で内腔側の中空繊維中に再循環させた。
【0037】
中空繊維の内腔側の溶液は、圧密封容器中の状態にあったので、試験溶液の容積は実験期間中変化し得なかった。538mMのグルコース溶液を50ml/分の流速で逆流させて膜の外表面に汲み上げた。
【0038】
室温で2時間後、内腔側を循環する溶液の試料を取り出して、市販の分析装置(Cobas Integra 400, Hoffmann-La Roche, Diagnostics Div., Basel, Switzerland)で分析した。分析した開始溶液の濃度を使用して、膜透過性および選択性を計算することができる。膜は、前述の尿素含有溶液の除去について表2に示される結果を示した。
【0039】
【0040】
測定の変化の係数は、ナトリウムについて1%、カルシウムについて3.5%、および尿素について1.8%であった。測定値から明らかなように、本発明の中空繊維により尿素は効果的に除去されるが、ナトリウムおよびカルシウムは実質的に残る。
【0041】
膜はさらに、純粋な気体を用いた透過試験を特徴とした。この目的で、約1barの過剰圧の気体を内腔側の中空繊維にかけ、膜を通過する得られた気体流量を測定した。表3に典型的な結果を示す。
【0042】
【0043】
従来の膜を通過する通常の流量は典型的に数リットル/(hトールm2)であるため、この結果は、膜が有する細孔は非常にごくわずかであることを示す。
【0044】
あるいは、カチオン拒絶物質は、既存の膜の表面上に界面重合コーティングを堆積させた薄膜複合膜であり得る。界面重合コーティングは、例えば、p-フェニレンジアミンなどの1つより多くのアミン基を含む化合物の水溶液を中空繊維の内部に流した後、例えば、塩化トリメソイルなどの、2つ以上の多くのカルボニル基を含み、アミンと共有結合を形成し得る酸塩化物の非水溶液を中空繊維の内部に流すことにより堆積され得る。好ましい態様において、水に溶解させた約0.2〜2.0%、より好ましくは約2.0重量%のp-フェニレンジアミン、続いて、ヘキサンに溶解させた約0.5〜2.0%、より好ましくは約2.0重量%の塩化トリメソイルを用いて、ポリスルホン中空繊維の内腔側面上に、約50kDa以下の限外濾過分子量カットオフ、約210μm以下の内径、および約40μm以下の壁厚さを有する薄膜複合膜が作製され得る。
【0045】
また、上記の利点を保持したまま透析物中にカチオンを保持することにより、透析物中に溶解した溶質の濃度により、中空繊維壁内外で浸透圧が生じ得、これは、繊維壁のウレアーゼおよびアンモニア吸着剤含む側である殻側で均衡させる必要がある。あるいは、カートリッジの殻側から二酸化炭素および他のガスを排出するために使用される通気孔から空気を吸い込みながら、液体を中空繊維の内腔側面内に流す。空気中への尿素の拡散速度は液体中への拡散速度よりもずっと低く、したがって、ウレアーゼおよびアンモニア吸着剤物質内での尿素の効率的な物質移動のために、殻側は、好ましくは液体で満たされる。浸透圧は、無毒性であり、ウレアーゼまたはアンモニア吸着剤と反応せず、かつ最も重要なことには膜壁を通過して中空繊維の内腔側面内に入らないのに充分高い分子量を有する物質により均衡され得る。適切な浸透剤(osmotic agent)としては、スクロースならびに例えば、ポリデキストリンおよびイコデキストリンなどの他の多糖、ならびにラフィノースが挙げられる。好ましくは浸透剤は、カチオン拒絶中空繊維壁を通過して実質的に輸送されないためスクロースである。好ましい態様において、浸透剤は、強酸カチオン交換樹脂または吸着剤と混合され得る。
【0046】
第2ステージカートリッジの一態様を図6に示す。図において、第2ステージカートリッジ200は約4500本のカチオン拒絶中空繊維210を含み得、そのうち4本の繊維を示す。好ましい態様において、カチオン拒絶中空繊維はポリスルホンで作製され得、カチオン拒絶薄膜複合膜が、中空繊維の内腔側面(内部)上にコーティングされている。ウレアーゼ、アンモニア吸着剤およびスクロースの混合物220は、周囲の第2ステージカートリッジ200の殻側の繊維210に充填され得る。中空繊維は少なくとも約100ml/分の透析物が流動するように構成され、生じる最大圧力は約10mmHgになる。結束端を除く4500本のポリスルホン繊維によって占められる全容積は、総膜面積0.21m2で約15〜30cc、より好ましくは約18ccである。ポリエチレンイミン-炭素複合材上に固定した約10ccの架橋ナタマメウレアーゼと約110ccのアンモニア結合樹脂(ジビニルベンゼンと架橋させたスルホン酸置換ポリスチレン)またはリン酸ジルコニウムの混合物をポリスルホン繊維の周囲に、総充填床容積約138ccで充填する。
【0047】
より好ましい態様では、前述の2つの尿素除去カートリッジは、図1に示すように直列で連結され得る。図6に示すように、第2ステージカートリッジ200では、透析物を繊維210の内部(内腔側)に流すと、尿素が繊維を通過し、殻側で固定ウレアーゼによってアンモニアと二酸化炭素に分解される。アンモニアはアンモニア結合樹脂によって吸着され、二酸化炭素および他のガスは、殻側で、疎水性通気孔230から雰囲気中に放出される。次いで、一部清浄化された透析物は、カートリッジ200から次の清浄化ステージに流出される。
【0048】
図7は、カチオン拒絶中空繊維210、ならびにカートリッジの殻側の固定ウレアーゼ、アンモニア吸着剤樹脂およびスクロースの混合物220を示すカートリッジ200の部分分解断面図である。第2ステージでの尿素およびアンモニア除去の試験を行ない、ここで、第2ステージカートリッジには、5.0グラムの摩砕した架橋ナタマメ粉固定ウレアーゼ複合材とブレンドしたリン酸ジルコニウム141グラムを含めた。カートリッジには、0.21m2の総膜面積を有し、カチオン拒絶修飾なしの上記の約4500本のポリスルホン中空繊維の膜を含めた。1.50グラムの尿素の溶液は1リットルの脱イオン水中に溶解させたものであった。この溶液をカートリッジ内に100ml/分で循環させ、ビーカーに戻した。結果によって示されるように、ウレアーゼは急速に尿素を加水分解し、リン酸ジルコニウムは、生成した大部分のアンモニアに結合し、アンモニア濃度は2000μg/dL未満に維持された。また、実験により、この条件下で吸着剤が急速に湿ること(5分未満)、および尿素が殻側へと膜を横断し、殻側で反応し得ることが示された。図8および9は、それぞれ、この実験での時間の関数としての血中尿素窒素(BUN)濃度およびアンモニア濃度を示す。技術的には誤った名称であるが、用語BUNは当該技術分野で広く知られており、通常、血清または血漿中に尿素の形態で存在している窒素の量をいう。BUNの測定は、例えば透析物などの他の液体でも行なわれ得る。
【0049】
第2の実験で、同様のカートリッジを使用した。これは、わずかに少ないリン酸ジルコニウム(132グラム)および5.0グラムの固定ウレアーゼ複合材を有した。有意に大きな容量の溶液を使用し(8リットル)、総尿素はずっと多かった(9.6グラム)。好ましくはこの型の2つのカートリッジが携帯型腹膜透析システムに使用され得るため、9.6グラムは、デバイス内の単一のカートリッジが患者に曝露され得る尿素の量に匹敵する。わずか約100ml/分の流速では、全容量の溶液を循環させるのに1時間より多くが必要とされた。実験中、5〜11時間の間のある程度の時間、アンモニアの濃度は、患者に戻すのに安全とみなされるレベル(約2000μg/dL)を超えた。さらなる同等のカートリッジおよびリン酸ジルコニウムのみを含む第3カートリッジにより、アンモニアレベルは、約2000μg/dL未満に維持されると予測され得る。実験中、過半量の尿素が加水分解された。図10および11は、それぞれ、この実験での時間の関数としての血中尿素窒素(BUN)濃度およびアンモニア濃度を示す。
【0050】
薄膜複合膜のカチオン拒絶特性を測定するため、2つの溶液をビーカー内で混合し、互いに向流で、約100ml/分で、総膜面積が0.62m2の上記の約4500本のポリスルホン中空繊維を含み、内腔側面上に上記のようにして調製したカチオン拒絶薄膜複合膜を含むカートリッジ内にポンプ輸送した。内腔側の溶液は、4.00リットルの脱イオン水中に溶解させた30.85グラムの塩化ナトリウム、1.36グラムの塩化カルシウム二水和物、2.42グラムの塩化カリウムおよび6.00グラムの尿素からなるものであった。吸着剤側には、4リットルの脱イオン水中に195.6グラムのD-グルコース(ほぼ均衡浸透圧に計算)を含めた。予測どおり、尿素は膜を横断した。分析装置の精度範囲内で、わずかに微量のナトリウムが横断したが、カルシウムまたはカリウムは横断しなかった。ナトリウムでは10mEq/L(ミリ当量/リットル)、カリウムでは1.0mEq/L、およびカルシウムでは0.2mg/dLの値を、この実験でナトリウム、カリウムおよびカルシウムを検出するために使用した分析装置の正確な測定の下限とみなした。図12は、時間の関数としての血中尿素窒素(BUN)濃度を示し、内腔側(透析物側)では高濃度および吸着剤側では低濃度から始まり、次いで、この実験では尿素を除去しなかったため、尿素がカチオン拒絶膜を横断するにつれて、膜の両側の尿素濃度がほぼ等しくなった。図13〜15は、カチオン拒絶膜によって、内腔側から吸着剤側へのカチオン横断が妨げられていたため、それぞれ、カルシウム、カリウムおよびナトリウムカチオンの濃度が、膜の内腔側では高く、吸着剤側では低い状態で維持されたことを示す。
【0051】
第2ステージカートリッジ内の固定ウレアーゼ複合材はカートリッジの出口まで充填され得、したがって、いくらかのアンモニアが透析物中に放出され得るが、アンモニア結合樹脂または吸着剤との接触によって除去されない。したがって、第3の任意の清浄化ステージは、上記と同じだがウレアーゼなしのカチオン拒絶繊維およびアンモニア結合樹脂または吸着剤を使用することにより残留アンモニアをいずれも透析物から除去するために使用され得る。第3ステージカートリッジの一態様を図16に示す。図において、第3ステージカートリッジ300は約4500本のカチオン拒絶中空繊維310を含むものであり得、そのうち4本の繊維を示す。アンモニア結合樹脂または吸着剤320は繊維310の周囲に充填される。好ましい態様において、カチオン拒絶中空繊維はポリスルホンで作製され得、内腔側に、上記のようにして調製されるカチオン拒絶薄膜複合膜を含む。結束端を除くポリスルホン繊維によって占められる全容積は、総膜面積0.21m2で約15〜30cc、より好ましくは約18ccである。スクロースと混合した約120ccのアンモニア結合樹脂(ジビニルベンゼンと架橋させたスルホン酸置換ポリスチレン)がカチオン拒絶ポリスルホン繊維の周囲に、約138ccの総充填床容積で充填される。透析液を繊維310の内部(内腔側)に流すと、アンモニアがアンモニア結合樹脂320によって吸着される。殻側で流体に移動させられたガスはいずれも、疎水性通気孔330から雰囲気中に放出される。次いで、一部清浄化された透析物は、カートリッジ300から次の清浄化ステージに流出される。
【0052】
第4の任意の清浄化ステージは、残留する有機化合物、リンおよび硫酸塩いずれも除去するため、および透析物が、再生透析物を患者に戻す前に通常の生理学的pH約7.4であることを確実にするために使用され得る。第4ステージカートリッジは、上記の第1ステージカートリッジと同様または同一であってもよく、第4ステージカートリッジは、活性炭と混合した含水酸化ジルコニウムと炭酸ジルコニウムナトリウムの混合物を含んでいてもよい。改善されたpH制御を有する含水酸化ジルコニウムと炭酸ジルコニウムナトリウムの混合物は、2003年9月30日に発行された米国特許第6,627,164号に記載されている。あるいは、第4ステージカートリッジは、活性炭と混合したpH調整混合床イオン交換樹脂(例えば、IRN 150、Rohm and Haas)を含み得る。図17に示す一態様において、第4ステージカートリッジは第1ステージのカートリッジと同一であり得る。図において、第4ステージカートリッジ400は約4500本の中空繊維410を含み得、そのうち4本の繊維を示す。活性炭と含水酸化ジルコニウムの混合物420粉末は繊維410の周囲に充填される。好ましい態様において、中空繊維は、ポリスルホン製であり、透析物が少なくとも約100ml/分(ミリリットル/分)で流れ、生じる最大圧が約10mmHgとなるように構成され得る。結束端を除く4500本のポリスルホン繊維によって占められる全容積は総膜面積0.21m2で約15〜30cc(立方センチメートル)、より好ましくは約18ccである。約40〜80g、好ましくは約60gの含水酸化ジルコニウム(酢酸対イオン形態)と約30〜55g、好ましくは約44gの活性炭の混合物を均一に混合し、ポリスルホン繊維の周囲に充填する。透析物を繊維410の内部(内腔側)に流すと、有機化合物、リン酸塩および硫酸塩が繊維の細孔を通過し、殻側で活性炭と含水酸化ジルコニウムの混合物420によって吸着される。殻側で流体により移動させられたガスはいずれも、殻側で疎水性通気孔430から雰囲気中に放出される。実質的に浄化された透析物は、次いで、カートリッジ400から流出され、患者の腹膜腔に戻される。
【0053】
したがって、携帯型腹膜透析システムの交換可能なカートリッジに流した後、透析物は再生され、再利用の準備ができている。透析物は、尿素、尿酸およびクレアチニンを実質的に含まず、リン酸塩および硫酸塩レベルが低い。その構成要素によってカチオンが拒絶されるような尿素除去ステージの設計のため、透析物は、充分なレベルのカルシウムおよびマグネシウムイオンを保持し、患者においてこれらのイオンを補充する機構の必要性が排除される。また、ナトリウムおよびカリウムなどのカチオンの反発により、イオンが第2および第3ステージ交換可能なカートリッジの殻側に進入することが妨げられ、第2および第3ステージカートリッジ構成要素(例えば、カチオン交換樹脂または吸着剤)の殻側に結合されるイオンの負荷ならびにカートリッジを交換/再生させる必要性の頻度が減少する。したがって、ナトリウムおよびカリウムの拒絶により寿命が延び、第2および第3ステージ交換可能なカートリッジの大きさおよび重量が低減される。
【0054】
携帯型腹膜透析システムは、患者の腹膜腔への流入および該腹膜腔からの流出を提供するための閉鎖ループ液体システムに連結するための1つ以上のアクセスポートを有し得、この場合、アクセスポートとしては、医療に適切なプラスチックチューブ、二重内腔カテーテルまたは2つの単独内腔カテーテルが挙げられ得る。また、携帯型腹膜透析システムは、患者の腹膜を介して腹膜透析溶液中に分散する尿毒症老廃代謝産物が該腹膜透析溶液によって除去されるように患者の腹膜腔内に注入され、該腹膜腔から取り出される、ある容量の腹膜透析溶液(透析物)を含む。好ましくは、システムは腹膜透析溶液を、腹膜を通過する尿毒症毒素の輸送が最大量となるように継続的に循環させるが、定期的に循環なしの休止時間も流体除去に有利であり得る。1回の透析サイクル中の携帯型腹膜透析システムの好ましい使用方法は、患者の腹膜腔内へのある容量の透析物の注入、約2時間の休止時間の待機、休止時間中に患者の腹膜腔内に蓄積された流体(限外濾過液)の容量、典型的に約0.8リットルにほぼ等しい容量の透析物の排出、携帯型腹膜透析システム中での透析物の約8時間の連続循環、全容量の透析物の排出、患者の腹膜腔内へのさらなる容量の透析物の注入、約2時間の休止時間の待機、次いで、患者の腹膜腔からの透析物の排出、さらなる腹膜透析サイクルを開始する前の約12時間、該腔を比較的乾燥状態にしておくことを含み得る。携帯型腹膜透析システムは、透析物を腹膜透析サイクルの一部の時間で循環させるが、サイクルはまた、透析物を循環させていない期間も含むことに注意されたく、この型のサイクルを、本明細書において携帯型腹膜透析システムの半連続操作と称する。
【0055】
種々の腹膜透析溶液が使用され得(例えば、Delflex)、これらの溶液は市販されており(例えば、Fresenius Medical Care North America、Waltham、MA)、当該技術分野で周知である。約0.5〜3リットルの容量の腹膜透析溶液が携帯型腹膜透析システム内に導入され得、約2.5リットルの溶液が注入されることが好ましい。好ましくは、いくらかの新鮮腹膜透析溶液が携帯型腹膜透析システムに、都合のよい時点で添加され得る。また、腹膜透析溶液は、血清中のタンパク質に結合された尿毒症毒素に結合する該溶液に添加される物質も含み得る。例えば、これらのタンパク質結合毒素の除去を補助するためにアルブミンが腹膜透析溶液に添加され得る。
【0056】
透析物は、ポンプによって携帯型腹膜透析システム中に循環させる。ポンプは、好ましくは大きさが小さく、好ましくはカートリッジとほぼ同じ大きさであり、軽量であり、携帯可能なように少なくとも約12時間バッテリー作動が可能であり、充分な流速、典型的に約100ml/分で、システム圧力、典型的に約50〜60mmHg(ミリメートル水銀)での送達が可能であり、好ましくは透析物と接触する構成要素を滅菌する能力を含み、または、より好ましくは、ポンプ全体を交換する必要なく該構成要素を新たな滅菌構成要素と交換する能力を含むものである。適切なポンプとしては、Xavitech V1500およびP1500(Xavitech、Haernoesand、Sweden)、または圧電ダイヤフラムポンプ、または2007年8月29日に出願されたPCT出願番号PCT/US2007/077119に記載の使い捨てカセットポンプが挙げられ得る。使い捨てカセットは、ポンプ機構を透析物から隔離する機能を果たし、該機構の清浄化および滅菌の必要性なくポンプの再使用を可能にする。
【0057】
患者から尿毒症老廃代謝産物を一貫して効率的に除去するため、携帯型腹膜透析システム、特に、ポンプ流速ならびに透析システムの要素のタイミングおよびシーケンスの制御は電子制御され得る。好ましい態様において、制御機構は、透析システムの制御ユニットの一部であってもよいマイクロプロセッサであり得る。より好ましい態様では、携帯型腹膜透析システムは、制御システムと一体化され、ポンプを制御し、透析物中のアンモニア濃度が患者に戻すのに安全なレベル、典型的に約2000μg/dLを超えた場合にシステム中での透析物の流れを停止させるアンモニアセンサーを含み得る。さらにより好ましい態様において、携帯型腹膜透析システムは、さらに、マイクロプロセッサによって制御され、透析物を清浄化ステージ中に戻すことを指令し、患者を迂回して、患者の腹膜腔に透析物を戻す前に約2000μg/dL未満などの安全レベルまでのさらなるアンモニア除去のためのバイパスソレノイドを含み得る。
【0058】
携帯型腹膜透析システムのフロー図を図18に示す。図において、好ましい態様では、携帯型腹膜透析システム500は、透析物を、第1ステージカートリッジ100、第2ステージ200、第3ステージカートリッジ300、および第4ステージカートリッジ400中にポンプ輸送するポンプ520を含み得る。透析物はシステム内に、入口チューブ530から入り、任意のアンモニアセンサー550を通過した後、システムから出口チューブ540を通って排出される。より好ましい態様では、腹膜透析システム500は、アンモニアセンサー550によって起動されるか、またはマイクロプロセッサによって制御され、透析物を清浄化ステージ100〜400中に戻すことを指令し、患者を迂回して、患者の腹膜腔に透析物を戻す前に2000μg/dL未満のレベルまでのさらなるアンモニア除去のためのバイパスソレノイド555を含み得る。別の態様において、腹膜透析システム500は、患者の腹膜腔内に蓄積された流体(限外濾過液)を除液するための除液容器580を含み得る。除液容器は、手動により操作され得るか、またはマイクロプロセッサによって制御され得るオン/オフ弁590によって制御され得る。また、マイクロプロセッサにより携帯型腹膜透析システムの操作の他の局面が制御され得る。
【0059】
カートリッジは、透析物を汚染しない任意の充分に強度があり軽量の物質から作製され得る。適切な物質としては、金属、プラスチックおよび炭素複合材料が挙げられ得る。好ましい物質はポリカーボネートである。好ましい設計では、図19に示すように、楕円を平らにした「競走場」の設計が使用され得、これは、円柱状の「缶」設計よりもベルトにて着用するのにより快適である。
【0060】
次に、図20を見ると、好ましい態様では、携帯型腹膜透析システム500は、
ベルト510として構成され得る。ポンプ520は、透析物を、第1ステージカートリッジ100、第2ステージ200(ここでは、同一のカートリッジ200を2つという好ましい態様で示している)、第3ステージカートリッジ300、および第4ステージカートリッジ400中にポンプ輸送する。透析物はシステム内に、入口チューブ530から入り、任意のアンモニアセンサー550を通過した後、システムから出口チューブ540を通って排出される。ベルトとして着用される携帯型腹膜透析システムを図21に示す。
【0061】
別の態様において、図22に示すように、腹膜透析システムは一体型ループとして構成され得る。図において、一体型ループ600は、透析物を、第1ステージカートリッジ100、第2ステージ200(ここでは、同一のカートリッジ200を2つという好ましい態様で示している)、第3ステージカートリッジ300、および第4ステージカートリッジ400中にポンプ輸送するポンプ620を含み得る。透析物はシステム内に入口チューブ630から入り、システムから出口チューブ640を通って排出される。図23に示すように、一体型ループはベルト610として着用され得るか、あるいは、図24に示すように、一体型ループは、卓上ドッキングユニット615にドッキングされ得る。また別の態様において、図25に示すように、卓上ドッキングユニット615は、一体型ループ構成要素が卓上に対してある角度をなしてドッキングされるように配置され得る。
【0062】
また、本発明の携帯型腹膜透析システムは、外部電源によって電力供給され得、また、患者治療データ(例えば、治療期間、センサー読取、流速など)の処理、揮発性または非揮発性記憶装置への保存、および入/出力が可能な卓上ユニットとして構成され得る。また、卓上ユニットを、通信ネットワークを介して他のコンピューター計算デバイス/処理およびサーバーコンピュータ(1つまたは複数)に連結してもよい。通信ネットワークは、遠隔アクセスネットワーク、グローバルネットワーク(例えば、インターネット)、世界的なコンピュータ集合体、ローカルエリアまたは広域ネットワーク、ならびに現在それぞれのプロトコル(TCP/IP、Bluetoothなど)を用いて互いに通信されるゲートウェイの一部であってもよい。
【0063】
次に、図26を見ると、一態様において、携帯型腹膜透析システム500は卓上ユニット560として構成され得る。ポンプ520は、透析物を、第1ステージカートリッジ100、第2ステージ200(ここでは、同一のカートリッジ200を2つという好ましい態様で示している)、第3ステージカートリッジ300、および第4ステージカートリッジ400中にポンプ輸送する。透析物はシステム内に入口チューブ530から入り、システムから出口チューブ540を通って排出される。
【0064】
本明細書に挙げたすべての特許、公開出願および参考文献の関連する教示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0065】
本発明を、その好ましい態様を参照して具体的に示し、記載したが、形態および詳細における種々の変形が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱せずになされ得ることは、当業者によって理解されよう。特に、実験(特に動物)で得られた、または該実験から外挿される化学的および/または生物学的実験データは、当業者には公知のように、後に得られる人間に適切な値と有意に異なることがあり得る。かかる後に得られる値は、当業者の自身の知識および本明細書に示す教示を用いる当業者の通常の技能の範囲に含まれる。
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年11月3日に出願された米国特許仮出願第61/198,102号の恩典を主張する。
上記出願の全教示は、参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
腎臓機能障害または腎不全、特に末期腎疾患により、身体から、水および無機塩類を除去する能力ならびに有害代謝産物を排泄する能力、酸-塩基バランスを保つ能力、ならびに電解質および無機塩類の濃度を生理的範囲内に調節する能力が失われる。身体組織中の尿、クレアチニン、尿酸およびリン蓄積物などの尿毒性老廃代謝産物は、腎臓のろ過機能が回復しなかった場合にヒトを死に至らしめることがある。
【0003】
一般的に、透析は、これらの老廃毒物および余分な水を除去して、腎臓機能に取って代わるために使用される。透析治療の1つの型の血液透析において、外部血液透析装置中の患者の血液から毒素が除去される。血液は、外的補充透析物から半透過性膜により分離された透析器を通って、患者から移動する。老廃物および血液は、半透過性膜を通って血液から透析物へと除去され、その後廃棄される。典型的に、血液透析治療は、数時間続き、週に3または4回医療監視下で行われなければならず、患者の自立性および生活の質を大きく低下させることを必要とする。また、血液透析は連続的ではなく定期的に行われるので、患者の状態および一般的な幸せは共に、血液透析の直前(毒物レベルが高いとき)および血液透析の直後(電解質が不均衡のとき)に悪くなることがあり、患者に、悪心および嘔吐から水腫にわたる症状をもたらす。
【0004】
腹膜透析は、滅菌、発熱物質非含有透析液を患者の腹腔内に注入する、腎臓機能に取って代わるために使用される別の型の透析治療である。腹膜は、天然の透析器として機能し、尿毒性老廃代謝産物および種々のイオンを、腹膜を通して患者の血流から透析液中に、濃度勾配によって拡散させる。同時に、浸透圧勾配により腹腔中に水を引き込む。透析液は、半連続または連続的に除去され、廃棄されて新しい透析液と取り替えられる。腹膜透析に必要な大量の溶液の排出、廃棄および置換は、特に治療施設ではなく自宅での腹膜透析治療にとって、依然として不都合、非実際的かつ高額である。
【0005】
この問題に対処するために、使用済み透析物を、血液透析液および/または腹膜透析液から廃棄とは対照的に再構成するデバイスを設計した。透析物は、溶液から尿素を排除するデバイスを使用する機械中で再生され得る。例えば、元来のREDY(登録商標)(REcirculating DYalysis)Sorbent System(Blumenkrantz et al., Artif. Organs 3(3):230-236, 1978)は、再生のために尿毒性老廃代謝産物を含む透析液が通過する5つの層を有する吸着カートリッジからなる。通過した透析物は、重金属(例えば、銅および鉛)ならびに酸化物(例えば、塩素およびクロラミン)を除去する精製層、いくつかの酸化アルミニウムに結合して、透析物中の尿素をアンモニアと二酸化炭素ガス(炭酸アンモニウムと平衡)に分解するウレアーゼを含む酸化アルミニウム層、他のカチオン(例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウム)と共に尿素分解から生じたアンモニウムイオンを吸着するリン酸ジルコニウム層、酢酸と引き換えにリン酸および他のアニオン(例えば、フッ素および硫黄)と結合する水酸化ジルコニウム層、ならびに他の有機化合物(例えば、クレアチニンおよび尿酸)を吸着する活性炭層を通過する。
【0006】
典型的に、REDY(登録商標) Sorbent System等のデバイスに使用される吸着剤は、尿素分解産物だけでなく、透析物中に拡散した必須イオン、例えばカルシウムおよびマグネシウムも吸着する。これらのイオンはその後患者に補充しなければならない。典型的に、現在の吸着剤ベースの血液透析機械は、過剰なポンプおよび関連した弁を使用してこれらの必須イオンを継続的に交換して機構を制御しており、デバイスは血液透析機械の重量および複雑性が増し、腹膜透析システムについて、現在同様の課題が示されている。
【0007】
そのため、より便利、安全かつ効果的で、現在のデバイスおよび方法と比べて患者の生活の質を大きく改善する透析デバイスが必要である。
【発明の概要】
【0008】
発明の概要
本発明は、快適に身につけることができるか、または患者が持ち運ぶことができ、透析期間中、継続的または半継続的に作動して、患者の体内から、例えばカルシウムおよびマグネシウム等の必須イオンを過剰に枯渇させることなく、腎臓機能障害または腎不全を有する患者から尿毒性老廃代謝産物を除去し得る、携帯型腹膜透析デバイスを提供する。
【0009】
本発明の携帯型腹膜透析システムは、患者の腹腔への流入をもたらす流入口、患者の腹腔からの流出をもたらす流出口、および患者の腹腔の内外の流入および流出のためのある容量の(a volume of)透析物を備え得、それにより透析物に拡散した尿毒性老廃代謝産物を透析物から除去する。この携帯型腹膜透析システムは、患者の腹腔の内外に透析物を流すためのポンプを含む閉鎖系液流ループ(loop)、ならびに閉鎖系液流ループ中の、患者の腹腔から除去された透析物から有機化合物およびリン酸塩を除去するための物質を含む少なくとも1つの交換可能カートリッジを含む有機物およびリン酸塩除去ステージも備え得る。一態様において、この物質は半透過性中空繊維の周囲に充填される。この携帯型腹膜透析システムは、さらに、閉鎖系液流ループ中の、患者の腹腔から除去された透析物から尿素およびアンモニアを除去するための物質を含む少なくとも1つの交換可能カートリッジを含む尿素およびアンモニア除去ステージを備え得、該物質は、内部繊維壁がカチオンに反発することで、透析物中にカチオンを保持する半透過性中空繊維の周囲に充填される。別の態様において、有機化合物およびリン酸塩を除去するためのカートリッジ中の物質は、活性炭および酸化ジルコニウムの混合物を含み得る。さらに別の態様において、尿素およびアンモニアを除去するためのカートリッジ中の物質は、ウレアーゼおよび強酸カチオン交換樹脂またはイオン交換吸着剤等の吸着剤を含み得る。一態様において、ウレアーゼは、ナタマメ粉ポリエチレンイミン-炭素架橋複合物の形態であり得る。別の態様において、該携帯型腹膜透析システムはさらに、閉鎖系液流ループ中の、患者の腹腔から除去された透析物からアンモニアを除去するための物質を含む少なくとも1つの交換可能カートリッジを含むアンモニア除去ステージを含み得、該物質は、内部繊維壁がカチオンを反発するために透析物中にカチオンを保持する中空繊維の周囲に充填される。一態様において、カチオンを反発する内部繊維壁を有する半透過性中空繊維は、カルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムカチオンを反発し得る。別の態様において、アンモニアを除去するためのカートリッジ中の物質は、強酸カチオン交換樹脂またはイオン交換吸着剤などの吸着剤を含み得る。さらに別の態様において、該携帯型腹膜透析システムはさらに、閉鎖系液流ループ中の、患者の腹腔から除去された透析物から有機化合物を除去するための物質を含む少なくとも1つの交換可能カートリッジを含む有機物およびリン酸除去ならびにpH制御ステージを含み得、該物質は透析物のpHを生理的pHまたはその近位に制御する。一態様において、有機化合物を除去するためのカートリッジ中の物質は活性炭を含み得、透析物のpHを制御するためのカートリッジ中の物質は酸化ジルコニウムおよび炭酸ジルコニウムナトリウムの混合物を含み得る。
【0010】
別の態様において、該携帯型腹膜透析システムは、患者が身につけるように適合されたベルトとして構成され得、各ステージの各カートリッジは、実質的に長方形で、患者の衣類の下に隠せるほど充分に小さい。別の態様において、該携帯型腹膜透析システムは、ベルトとして患者が着用するように適合されるか、または卓上合体ユニットに合体された統合系ループとして構成され得る。さらに別の態様において、該携帯型腹膜透析システムは、卓上ユニットとして構成され得る。
【0011】
本発明はまた、ある容量の透析物を患者の腹腔の内外に流すための閉鎖系液流ループを備える携帯型腹膜透析システムを使用して、透析物再生ステージにより、患者に腹膜透析を提供する方法に関する。該方法は、閉鎖系液流ループ中の、患者の腹腔から除去された透析物から有機化合物およびリン酸塩を除去するための物質を含む少なくとも1つの交換可能カートリッジを含む、有機およびリン酸塩除去ステージにより患者の腹腔から大量の透析物を流すことを含む。従って、本発明はさらに、閉鎖系液流ループ中の、患者の腹腔から除去された透析物から尿素およびアンモニアを除去するための物質を含む少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む、尿素およびアンモニア除去ステージに含まれる半透過性中空繊維中に、ある容量の透析物を流すことを含み、該物質は、半透過性中空繊維の周囲に充填され、該半透過性中空繊維は、カチオンを反発する内部繊維壁を有し、それにより透析物から、透析物に拡散された尿毒性老廃代謝産物を除去しながら、透析物中にカチオンを保持し、再生された透析物を生成して、該再生された透析物を患者の腹腔に導入することを含む。
【0012】
これまでの透析システムとは異なり、本発明の携帯型腹膜透析システムは、患者がより正常で活発なライフスタイルを維持することを可能にする透析デバイスを提供する。腹膜透析液が再生されるため、該携帯型腹膜透析システムに循環させる必要な透析物は比較的少量であり、それによりシステムを比較的小型化および軽量化することが可能になるので快適に着用または運べる。携帯型腹膜透析システムは、透析物の再生により透析の期間連続的または半連続的に作動させることができるので、患者の全体的な幸福および生活の質が向上し、大きな労働力を要し、時間がかかりおよび/または医学的監視を必要とする透析システムから患者は解放される。さらに、該携帯型腹膜透析システムは、透析物、最終的には患者の体内から特定の必須イオンを除去することなく透析物を再生する。この事は、これらの必須イオンを補充する現在の装置は一般的に携帯型腹膜透析システムの重量および複雑性を増加させる余分なポンプを含むので、最大の利点である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
同様の参照記号が異なる図面を通じて同様の部位を参照する添付の図面に示されるように、上述の事柄は、以下の本発明の好ましい態様のより具体的な記載から明白であろう。図面は必ずしも同じ縮尺であるとは限らず、本発明の態様の説明を強調している。
【0014】
【図1】図1は、本発明の携帯型腹膜透析システムの模式図である。
【図2】図2は、1.10グラムのリン酸二水素ナトリウムおよび0.40グラムの無水クレアチニンを含む2リットル容量の溶液からの3.6グラムの酸化ジルコニウム、6.2グラムの活性炭、および3.6gの酸化ジルコニウムと6.2gの活性炭の混合物によるリン除去の試験における時間の関数としてのリン濃度のグラフである。
【図3】図3は、本発明の携帯型腹膜透析システムの第1清浄化ステージの模式図である。
【図4】図4は、8.0mg/dLのリンおよび12mg/dLのクレアチニンを含む溶液からの第1ステージカートリッジによるリンおよびクレアチニン除去の試験における時間の関数としてのリン濃度のグラフである。
【図5】図5は、8.0mg/dLのリンおよび12mg/dLのクレアチニンを含む溶液からの第1ステージカートリッジによるリンおよびクレアチニン除去の試験における時間の関数としてのクレアチニン濃度のグラフである。
【図6】図6は、本発明の携帯型腹膜透析システムの第2清浄化ステージの模式図である。
【図7】図7は、図6に示された携帯型腹膜透析システムの第2清浄化ステージの内部の拡大部分切断面図である。
【図8】図8は、141gのリン酸ジルコニウムおよび5gの固定ウレアーゼ複合物を含む第2ステージカートリッジによる尿素およびアンモニア除去の試験における時間の関数としての血中尿素窒素(BUN)濃度のグラフである。
【図9】図9は、141gのリン酸ジルコニウムおよび5gの固定ウレアーゼ複合物を含む第2ステージカートリッジによる尿素およびアンモニア除去の試験における時間の関数としてのアンモニア濃度のグラフである。
【図10】図10は、132gのリン酸ジルコニウムおよび5gの固定ウレアーゼ複合物を含む第2ステージカートリッジによる尿素およびアンモニア除去の試験における時間の関数としての血中尿素窒素(BUN)濃度のグラフである。
【図11】図11は、132gのリン酸ジルコニウムおよび5gの固定ウレアーゼ複合物を含む第2ステージカートリッジによる尿素およびアンモニア除去の試験における時間の関数としてのアンモニア濃度のグラフである。
【図12】図12は、第2ステージカートリッジの薄膜複合膜中空繊維を通過する尿素およびカチオン輸送の試験における時間の関数としての血中尿素窒素(BUN)濃度のグラフである。
【図13】図13は、第2ステージカートリッジの薄膜複合膜中空繊維を通過する尿素およびカチオン輸送の試験における時間の関数としてのカルシウム(Ca+)濃度のグラフである。
【図14】図14は、第2ステージカートリッジの薄膜複合膜中空繊維を通過する尿素およびカチオン輸送の試験における時間の関数としてのカリウム(K+)濃度のグラフである。
【図15】図15は、第2ステージカートリッジの薄膜複合膜中空繊維を通過する尿素およびカチオン輸送の試験における時間の関数としてのナトリウム(Na+)濃度のグラフである。
【図16】図16は、本発明の携帯型腹膜透析システムの第3清浄化ステージの模式図である。
【図17】図17は、本発明の携帯型腹膜透析システムの第4清浄化ステージの模式図である。
【図18】図18は、本発明の携帯型腹膜透析システムの一態様の模式的フロー図である。
【図19】図19は、清浄化ステージのための「レーストラック」設計のカートリッジ殻の写真である。
【図20】図20は、ベルト構成の携帯型腹膜透析システムの態様の写真である。
【図21】図21は、ベルト構成の携帯型腹膜透析システムの態様の模式図である。
【図22】図22は、統合型ループ構成の携帯型腹膜透析システムの態様の図示である。
【図23】図23は、ベルト構成の図22に示された統合型ループの態様の図示である。
【図24】図24は、卓上合体ユニット構成の図22に示された統合型ループの態様の図示である。
【図25】図25は、角のある卓上合体ユニット構成の図22に示された統合型ループの態様の図示である。
【図26】図26は、卓上構成の携帯型腹膜透析システムの態様の図示である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は一般的に、尿毒素の蓄積に関連する障害(例えば、慢性腎不全)に苦しむ患者から尿毒性老廃代謝産物を除去する携帯型腹膜透析システムに関する。該系は、例えば、早期腎疾患、腎機能障害または腎不全(例えば末期腎疾患)などの腎疾患などの障害を治療するために使用され得る。本明細書において使用される場合、用語「尿毒性老廃代謝産物」および「尿毒性溶質」は、身体で老廃物として生成される窒素含有物などの化合物のことをいい、尿素、尿酸、クレアチニン、リンおよびβ-2ミクログロブリンなどの化合物ならびに他の物質が挙げられる。Vanholder R. et al., Kidney International 63: 1934-1943, (2003)参照。腎不全または腎機能障害は、患者内の尿毒性老廃代謝産物のレベルが正常腎機能を有する個体における毒素のレベルと比べて高い場合に生じる尿毒性をもたらす。
【0016】
従って、本発明は、従来の系およびデバイスとは異なり、患者に大きな負担をかけることなく着用可能または携帯可能なほどに充分に小さいものであり得る携帯型腹膜透析システムに関する。該腹膜透析システムは、透析物を該系中で循環させて再生する、1つ以上の交換可能なカートリッジを含む清浄化ステージを含むので、腹膜透析は連続または半連続的に実施できる。透析物を約7.4の生理的pHに維持しながら、携帯型腹膜透析(PD)系により典型的な患者から尿毒性溶質を毎日除去する所望の量の例を表1に列挙する。表1に示すように、最大所望量は、例えば、治療を失敗したかまたは典型的な患者よりも実質的に大きな筋肉質量を有するか、あるいは食事制限には特に従わない患者からの除去である。
【0017】
【0018】
一態様において、携帯型腹膜透析システムは、透析物の清浄化のための一列につながれたいくつかのステージ、例えば2、3、4以上のステージを含み得る。好ましい態様において、各清浄化ステージは、1つ以上のカートリッジにより達成される。該カートリッジは患者に着用され得るかまたは持ち運ばれ得るかのいずれかであるか、あるいは卓上構成である。別の好ましい態様において、全てのステージは、ベルト構成で、好ましくは衣類の下に隠せるように患者が快適に着用できるように充分に小さくあり得る。好ましくは、ベルトに取り付けられた電池式ポンプなどのポンプにより、患者の腹腔を含む閉鎖ループ中で各カートリッジを通して透析物が循環される。好ましい態様において、該ポンプは、清浄化ステージと一体化して一体型ループを形成する使い捨てカセットまたは使い捨てポンプヘッドを含み得る。使い捨てカセットまたはポンプヘッドは、ポンプ機構と透析物を隔離するために使用され、機構の洗浄および滅菌を必要とせずにポンプの再利用を可能にする。それぞれの清浄化ステージは、透析物再生の際に1つ以上の機能を実行し得る。大量の尿毒性溶質の除去を必要とする患者のために、1つ以上の同一のカートリッジを一列に連結し得るか、または並行に連結し得る。1つ以上の使用済みカートリッジは、必要に応じて患者により取り替えられ得る。好ましい態様において、一体型ループは毎日取り替えられ得る。
【0019】
図1には、本発明の携帯型腹膜透析システムの特定の好ましい態様を示す。構成要素のそれぞれは、各清浄化ステージの説明においてより詳細に説明される。
【0020】
活性炭および酸化ジルコニウムを含み、半透過性繊維を取り囲む第1清浄化ステージは、有機化合物、リンおよび/またはリン酸塩および硫酸塩を除去するために使用され得る。有機化合物としては、例えばクレアチニン、p-クレソールスルフェート、尿酸およびβ-2-ミクログロブリンが挙げられ得る。通常、有機化合物は、活性炭、典型的には木炭を使用して除去される。好ましくは、活性炭は、単位容量当たり大きな表面積、種々の大きさの尿毒素の吸着のための広い範囲の孔径を有し、高い純度および/またはUSP等級を有する。炭素の高純度は、任意の水溶性不純物を除去するための多重酸および水洗により達成され得る。繊維の周囲の最適な分配および最適な溶質輸送のために、炭素を小顆粒または粗製粉末にすることも有利である。適切な活性炭の例としては、Nuchar(登録商標) Aquaguard 40(MeadWestvaco, Glen Allen, VA)、Norit(登録商標) ROXおよびNorit(登録商標) E Supra(Norit Americas, Marshall, TX)が挙げられる。好ましい活性炭は、Calgon Carbon Corporation, Pittsburgh, PAにより販売されているものなどの酸洗浄熱分解石炭由来活性炭である。
【0021】
リン酸塩(PO43-、HPO42-およびH2PO4-)としてのリンならびに硫酸塩(SO42-)は、アニオン交換樹脂または水酸化ジルコニウム(HZO)に結合させることで除去し得る。適切なアニオン交換樹脂としては、DOWEXTM 1(水酸化形態)、M-43、21 K XLT、MarathonTM MSA、およびM4195(銅形態)(Dow Chemical, Midland, MI)、およびAmberliteTM 96(Rohm and Haas, Philadelphia, PA)が挙げられる。好ましい態様において、水酸化ジルコニウム(例えば酢酸または炭酸対イオン形態の酸化ジルコニウム)は、リン酸塩および硫酸塩を結合するために使用され得る。より好ましい態様において、活性炭粉末と水酸化ジルコニウムの混合物を第1カートリッジに充填する前に、活性炭粉末と水酸化ジルコニウム粉末を混合し得る。1.10グラムのリン酸三ナトリウム二水和物および0.40グラムの無水クレアチニンを含む2リットル容量の溶液を混合して、同じ量の分離成分と比較した際の6.2グラムの活性炭粉末と3.6グラムの水酸化ジルコニウムの混合物を使用したリン除去の比較を行った。第1ステージカートリッジの中空繊維により溶液を100ml/分(1分当たりのミリリットル)でくみ出した。定期的に試料を取り出して分析した。図2に示されるように、水酸化ジルコニウムは、活性炭と混合した場合にリン酸と結合する能力を有する。
【0022】
効果的な尿毒溶質除去およびカートリッジを通した透析物輸送のために、活性炭と水酸化ジルコニウム粉末の混合物を、繊維壁の孔を通過する尿毒溶質の高速の拡散性かつ対流的な輸送用および中空繊維の内部(内腔側)を通過する透析物のフローの低抵抗性用に設計した中空繊維の周りに充填し得る。適切な中空繊維物質としては、セルロース、ナイロン、フッ化ポリビニリデン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、およびポリプロピレンが挙げられる。好ましい態様としては、約210μm(マイクロメートル)以下の内径、約40μm以下の壁厚さ、および約100kDa(キロダルトン)の限外ろ過分子量カットオフを有するポリスルホン中空繊維、例えばOptiflux 180透析器(Fresenius Medical Care North America, Waltham, MA)が挙げられ得る。
【0023】
第1ステージの1つの態様を図3に示す。ここでは、第1ステージカートリッジ100は、約4500本の中空繊維110を含み得るが、図には4本の繊維を示す。活性炭および水酸化ジルコニウム粉末の混合物120を該繊維110の周囲に充填する。好ましい態様において、該中空繊維はポリスルホン製であり、少なくとも約100ml/分の透析物を流し、生じる圧の増大が最大で約10mmgであるように設計される。0.21m2(平方メートル)の全膜面積に対して、結束(potted)端を除いた4500本のポリスルホン繊維が占める全体の容積は、約15〜30cc(立法センチメートル)、より好ましくは約18ccである。約40〜80g、好ましくは約60gの水酸化ジルコニウム(酢酸対イオン形態)および約30〜55g、好ましくは約44gの活性炭の混合物を均一に混合し、ポリスルホン繊維の周囲に充填する。透析物は繊維110の内部(内腔側)に流入し、有機化合物、リン酸塩および硫酸塩は、繊維の孔を通過して、活性炭と水酸化ジルコニウムの混合物120により殻側で吸着される。殻側上の液体により除去される任意の気体は、疎水性通気孔130を通って、外気に放出される。疎水性通気孔(例えば、D30480, W, L. Gore & Associates, Newark, DE)は、気体を通すが液体は通さない。一部清浄化された透析物は、その後カートリッジ100から次の清浄化ステージに流れる。7.39グラムのNa2HPO4・12H2Oおよび0.96グラムの無水クレアチニンを含む容積8リットルの溶液を混合して、第1ステージにおけるリンおよびクレアチニン除去の試験を行った。混合物は、8.0mg/dL(1デシリットル当たりのミリグラム)の濃度のリンおよび12mg/dLの濃度のクレアチニンを生じるように設計した。第1ステージカートリッジの中空繊維を通して、100ml/分で溶液をくみ上げた。試料を定期的に取り出して分析した。リンおよびクレアチニン濃度の結果を時間の関数として図4および5のそれぞれに示す。
【0024】
第二清浄化ステージは、透析物から尿素を除去するために使用され得る。尿素は、強酸カチオン交換樹脂もしくは吸着剤、例えばイオン交換吸着剤への吸着により、または尿素分解酵素により尿素を第1にアンモニアと二酸化炭素ガスに分解してその後強酸カチオン交換樹脂もしくは吸着剤への吸着によるアンモニア副産物の除去および二酸化炭素の外気への放出により取り除き得る。尿素分解酵素は天然に存在し得る(例えば、ナタマメ、他の種子または細菌由来ウレアーゼ)か、または(例えば、尿素分解酵素を発現および/または分泌する細菌、真菌、昆虫、もしくは哺乳動物細胞中の)組み換え技術により生成し得るか、または合成により生成し得る(例えば、合成し得る)。
【0025】
一態様において、固定によりウレアーゼは酵素活性を保ちながら安定化され、ウレアーゼがカートリッジの透析物流および生成アンモニア流中に入り、アンモニア吸着剤から離れる可能性が低減されるので、一般的にウレアーゼを固定化することが好ましい。ウレアーゼは、酸化アルミニウム(例えば、SORB、HISORB、Sorb Technology)または樹脂、例えばAmberzymeTM(Rohm and Haas)に結合させることにより固定化され得る。酵素(例えば、ウレアーゼ)はまた、膜に、または代替的に多孔性のビーズもしくは樹脂に、化学的に結合され得る。この結合により、酵素は拡張使用のために安定化され、多孔性ビーズまたは樹脂への結合の場合には、ウレアーゼはデバイス中に充填および/または置き換えされ得る。特に、ウレアーゼは、ポリスルホン中空繊維膜の外部または別の繊維もしくは樹脂に化学的に結合され得る。結合は、チオール基、アミド基またはカルボン酸基などの触媒部位に大きな影響を与えない、酵素のアミノ酸部分の反応性付属(pendant)基を介し得る。酵素または架橋酵素結晶(CLEC)の固定化に使用され得る化学物質は、当該技術分野に周知である(例えば、J. Jegan Roy and T, EmiliaAbraham, Strategies in Making Cross-Linked Enzyme Crystals, Chemical Reviews, 104(9):3705-3721 (2004)参照)。また、ウレアーゼは、例えば尿素の分解のために結晶化形態で使用することができ、イオン交換樹脂または吸着剤と混合され得る。好ましい態様において、ナタマメ由来のウレアーゼ酵素は、2009年9月2日に出願された米国特許出願第12/552,332号に記載されるように、ポリエチレンイミン-炭素複合物と架橋することにより固定化され得る。
【0026】
尿素の酵素分解により生じるアンモニアは、高濃度(例えば、約2000μg/dL(マイクログラム/デシリットル)より高い)の場合、ヒトに対して毒性であり得、pHを生理的pHから変化させ、ウレアーゼの酵素活性を阻害する。そのため、アンモニアを除去することが必要であり、アンモニアは、ポリマー強酸カチオン交換樹脂、例えばスルホン酸置換ポリスチレン架橋ジビニルベンゼンへの吸着、またはイオン交換吸着剤、例えばリン酸ジルコニウムへの吸着のいずれかにより除去し得る。充分なアンモニア(アンモニウムイオン)結合能および純度を有する任意の強酸カチオン交換樹脂が適切である。強酸カチオン交換樹脂の具体例としては、AmberliteTM IRN 77、IRN 97、IRN 99、IR 120、UP 252、CG 15、CG 120、IRC 50、IR 200およびIRA 900(Rohm and Haas, Philadelphia, PA)、またはDow Chemical、Mitsubishi、Purolite、Sybron、およびLanxess製の同等の樹脂が挙げられる。
【0027】
好ましい態様において、アンモニアは、リン酸ジルコニウムへの吸着により除去し得る。より好ましい態様において、米国特許出願第12/569,485号に記載のように、アンモニア結合能を向上させたリン酸ジルコニウムを調製する。リン酸ジルコニウムの有利な特性は、pHをウレアーゼの付近に調節して、生理学的pHまたはその付近に維持することが補助され、それによりウレアーゼの酵素活性が維持されることである。
【0028】
ポリマー強酸カチオン交換樹脂またはイオン交換吸着剤は、アンモニウムイオン(NH4+)の形態のアンモニアに結合し、該樹脂または吸着剤がアンモニウムイオンに結合する能力は、結合部位の他の正電荷イオン(カチオン)との競合により低減されるので、より多量のアンモニア除去樹脂または吸着剤が必要になり、カートリッジの重量が増加する。そのため、ウレアーゼおよびカチオン交換樹脂またはリン酸ジルコニウム吸着剤を含むカートリッジの一部から、アンモニウムイオン以外のカチオンを除去することが好ましい。透析物中にカチオンが残ることは、患者の系において、必須イオン、例えばカルシウム(Ca+2)およびマグネシウム((Mg+2)が過剰に枯渇しないというさらなる利点を有する。
【0029】
透析物中でカチオンを保持するための好ましいアプローチには、尿素は通すが高濃度のカチオンは通さない壁を有する中空繊維が使用される。中空繊維は、カチオン反発(cation-rejecting)物質で作製されるかまたはカチオン反発物質で覆われる。例えば、中空繊維の内側または外側をカチオン反発物質で被覆またはカチオン反発物質と同時押出し成形することで、中空繊維の内側または外側に層が形成され得る。選択的カチオン反発層を形成する物質は、例えば、エステル化セルロースまたはアセチルセルロース(酢酸セルロース)であり得る。好ましい態様において、選択層は、2008年1月3日に出願されたドイツ国特許出願第DE 10 2008 003 090.2号、および2009年7月9日に公開されたWO 2009/083260 A1に記載されるように、アセチルセルロースであり得る。該出願に開示されるように、中空繊維は位相反転プロセスにより作製した。最初に、2つの紡糸ドープ(spinning dope)溶液AおよびBを生成した。第1の紡糸ドープ溶液Aは、中空繊維膜の内腔側選択層用の物質を含み、第2の紡糸ドープ溶液Bは、支持層用の物質を含んだ。
【0030】
支持層用紡糸ドープ溶液(外層)は、ジメチルアセトアミドの溶液中、20重量%のUdel 3500ポリスルホンおよび5重量%のK90ポリビニルピロリドンおよび1重量%の水で構成された。この溶液の粘度は、約11500 mPa・sであった。内腔側選択層用紡糸ドープは、30重量%の、29kD(キロダルトン)の分子量および40%のアセチル含量を有する二酢酸セルロース(Sigma/Aldrichから入手可能)で構成された。これを攪拌してジメチルアセトアミドに溶解した。この溶液の粘度は約15000mPa・sであった。
【0031】
二種類の紡糸ドープ溶液を適当な用量比で、先行技術で公知の複合中空繊維用ダイにて紡糸した。先行技術において、複合中空繊維ダイ、2種類の溶液は、内部および外部の紡糸ドープの同時押出しを可能にする相互に同心のダイチャンネルによって誘導された。2つの同心ダイチャンネルは、軸チャンネルの周囲にあり、該軸チャンネルを通って、2つの紡糸ドープ層用の凝固剤が誘導された。内部凝固剤として水を使用した。ダイパック(スピンパック)の温度は20℃であったが、該方法の範囲においてさらに変化させることができた。驚くべきことに、低温(<30℃)で紡糸した繊維は、ナトリウム、カリウムなどの一価のカチオンよりも高い尿素の選択性を有することが見出された。
【0032】
スピンパックから排出された後、中空繊維は約250mmのエアギャップを通過し、その後、約42℃の温度を有する水充填凝固槽に入った。続いて、そのようにし得られた複合中空繊維を、75℃に調節されたリンス槽でリンスした。繊維の進行速度は250mm/秒であった。このようにして得られた中空繊維を、その後、約95℃で乾燥させた。凝固槽およびリンス槽の容積および進行速度は、溶媒非含有通常中空繊維が得られるように調整した。
【0033】
続いて、乾燥繊維をリールに巻き取った。中空繊維の束は、0.4m2の全表面積を有する2300本の繊維から構成されていた。繊維の内径は200μmであった。繊維の外径は261μmであった。選択層の厚さは約500nmであった。
【0034】
繊維を筺体に成形して、ポリウレタンで結束させ、繊維内腔および繊維外側表面に対する独立フローを確実にするモジュールを形成した。続いて、中空繊維膜を、限外ろ過速度ならびに尿素および種々の塩についての透過性に関して調べた。
【0035】
水性限外ろ過は、37℃で内腔側に過剰な圧力をかけ、中空繊維の内腔側から中空繊維の外側へ通過する水の量を測定することにより測定した。膜について測定された限外ろ過速度は、0.1〜0.3(ml/(hトールm2))の範囲であった。
【0036】
尿素および塩の透過性は、25mM尿素、141mM NaCl、2.5mM CaCl2、249mMグルコースおよびを含む500〜700mlの尿素含有塩溶液を使用して測定し、50ml/分で内腔側の中空繊維中に再循環させた。
【0037】
中空繊維の内腔側の溶液は、圧密封容器中の状態にあったので、試験溶液の容積は実験期間中変化し得なかった。538mMのグルコース溶液を50ml/分の流速で逆流させて膜の外表面に汲み上げた。
【0038】
室温で2時間後、内腔側を循環する溶液の試料を取り出して、市販の分析装置(Cobas Integra 400, Hoffmann-La Roche, Diagnostics Div., Basel, Switzerland)で分析した。分析した開始溶液の濃度を使用して、膜透過性および選択性を計算することができる。膜は、前述の尿素含有溶液の除去について表2に示される結果を示した。
【0039】
【0040】
測定の変化の係数は、ナトリウムについて1%、カルシウムについて3.5%、および尿素について1.8%であった。測定値から明らかなように、本発明の中空繊維により尿素は効果的に除去されるが、ナトリウムおよびカルシウムは実質的に残る。
【0041】
膜はさらに、純粋な気体を用いた透過試験を特徴とした。この目的で、約1barの過剰圧の気体を内腔側の中空繊維にかけ、膜を通過する得られた気体流量を測定した。表3に典型的な結果を示す。
【0042】
【0043】
従来の膜を通過する通常の流量は典型的に数リットル/(hトールm2)であるため、この結果は、膜が有する細孔は非常にごくわずかであることを示す。
【0044】
あるいは、カチオン拒絶物質は、既存の膜の表面上に界面重合コーティングを堆積させた薄膜複合膜であり得る。界面重合コーティングは、例えば、p-フェニレンジアミンなどの1つより多くのアミン基を含む化合物の水溶液を中空繊維の内部に流した後、例えば、塩化トリメソイルなどの、2つ以上の多くのカルボニル基を含み、アミンと共有結合を形成し得る酸塩化物の非水溶液を中空繊維の内部に流すことにより堆積され得る。好ましい態様において、水に溶解させた約0.2〜2.0%、より好ましくは約2.0重量%のp-フェニレンジアミン、続いて、ヘキサンに溶解させた約0.5〜2.0%、より好ましくは約2.0重量%の塩化トリメソイルを用いて、ポリスルホン中空繊維の内腔側面上に、約50kDa以下の限外濾過分子量カットオフ、約210μm以下の内径、および約40μm以下の壁厚さを有する薄膜複合膜が作製され得る。
【0045】
また、上記の利点を保持したまま透析物中にカチオンを保持することにより、透析物中に溶解した溶質の濃度により、中空繊維壁内外で浸透圧が生じ得、これは、繊維壁のウレアーゼおよびアンモニア吸着剤含む側である殻側で均衡させる必要がある。あるいは、カートリッジの殻側から二酸化炭素および他のガスを排出するために使用される通気孔から空気を吸い込みながら、液体を中空繊維の内腔側面内に流す。空気中への尿素の拡散速度は液体中への拡散速度よりもずっと低く、したがって、ウレアーゼおよびアンモニア吸着剤物質内での尿素の効率的な物質移動のために、殻側は、好ましくは液体で満たされる。浸透圧は、無毒性であり、ウレアーゼまたはアンモニア吸着剤と反応せず、かつ最も重要なことには膜壁を通過して中空繊維の内腔側面内に入らないのに充分高い分子量を有する物質により均衡され得る。適切な浸透剤(osmotic agent)としては、スクロースならびに例えば、ポリデキストリンおよびイコデキストリンなどの他の多糖、ならびにラフィノースが挙げられる。好ましくは浸透剤は、カチオン拒絶中空繊維壁を通過して実質的に輸送されないためスクロースである。好ましい態様において、浸透剤は、強酸カチオン交換樹脂または吸着剤と混合され得る。
【0046】
第2ステージカートリッジの一態様を図6に示す。図において、第2ステージカートリッジ200は約4500本のカチオン拒絶中空繊維210を含み得、そのうち4本の繊維を示す。好ましい態様において、カチオン拒絶中空繊維はポリスルホンで作製され得、カチオン拒絶薄膜複合膜が、中空繊維の内腔側面(内部)上にコーティングされている。ウレアーゼ、アンモニア吸着剤およびスクロースの混合物220は、周囲の第2ステージカートリッジ200の殻側の繊維210に充填され得る。中空繊維は少なくとも約100ml/分の透析物が流動するように構成され、生じる最大圧力は約10mmHgになる。結束端を除く4500本のポリスルホン繊維によって占められる全容積は、総膜面積0.21m2で約15〜30cc、より好ましくは約18ccである。ポリエチレンイミン-炭素複合材上に固定した約10ccの架橋ナタマメウレアーゼと約110ccのアンモニア結合樹脂(ジビニルベンゼンと架橋させたスルホン酸置換ポリスチレン)またはリン酸ジルコニウムの混合物をポリスルホン繊維の周囲に、総充填床容積約138ccで充填する。
【0047】
より好ましい態様では、前述の2つの尿素除去カートリッジは、図1に示すように直列で連結され得る。図6に示すように、第2ステージカートリッジ200では、透析物を繊維210の内部(内腔側)に流すと、尿素が繊維を通過し、殻側で固定ウレアーゼによってアンモニアと二酸化炭素に分解される。アンモニアはアンモニア結合樹脂によって吸着され、二酸化炭素および他のガスは、殻側で、疎水性通気孔230から雰囲気中に放出される。次いで、一部清浄化された透析物は、カートリッジ200から次の清浄化ステージに流出される。
【0048】
図7は、カチオン拒絶中空繊維210、ならびにカートリッジの殻側の固定ウレアーゼ、アンモニア吸着剤樹脂およびスクロースの混合物220を示すカートリッジ200の部分分解断面図である。第2ステージでの尿素およびアンモニア除去の試験を行ない、ここで、第2ステージカートリッジには、5.0グラムの摩砕した架橋ナタマメ粉固定ウレアーゼ複合材とブレンドしたリン酸ジルコニウム141グラムを含めた。カートリッジには、0.21m2の総膜面積を有し、カチオン拒絶修飾なしの上記の約4500本のポリスルホン中空繊維の膜を含めた。1.50グラムの尿素の溶液は1リットルの脱イオン水中に溶解させたものであった。この溶液をカートリッジ内に100ml/分で循環させ、ビーカーに戻した。結果によって示されるように、ウレアーゼは急速に尿素を加水分解し、リン酸ジルコニウムは、生成した大部分のアンモニアに結合し、アンモニア濃度は2000μg/dL未満に維持された。また、実験により、この条件下で吸着剤が急速に湿ること(5分未満)、および尿素が殻側へと膜を横断し、殻側で反応し得ることが示された。図8および9は、それぞれ、この実験での時間の関数としての血中尿素窒素(BUN)濃度およびアンモニア濃度を示す。技術的には誤った名称であるが、用語BUNは当該技術分野で広く知られており、通常、血清または血漿中に尿素の形態で存在している窒素の量をいう。BUNの測定は、例えば透析物などの他の液体でも行なわれ得る。
【0049】
第2の実験で、同様のカートリッジを使用した。これは、わずかに少ないリン酸ジルコニウム(132グラム)および5.0グラムの固定ウレアーゼ複合材を有した。有意に大きな容量の溶液を使用し(8リットル)、総尿素はずっと多かった(9.6グラム)。好ましくはこの型の2つのカートリッジが携帯型腹膜透析システムに使用され得るため、9.6グラムは、デバイス内の単一のカートリッジが患者に曝露され得る尿素の量に匹敵する。わずか約100ml/分の流速では、全容量の溶液を循環させるのに1時間より多くが必要とされた。実験中、5〜11時間の間のある程度の時間、アンモニアの濃度は、患者に戻すのに安全とみなされるレベル(約2000μg/dL)を超えた。さらなる同等のカートリッジおよびリン酸ジルコニウムのみを含む第3カートリッジにより、アンモニアレベルは、約2000μg/dL未満に維持されると予測され得る。実験中、過半量の尿素が加水分解された。図10および11は、それぞれ、この実験での時間の関数としての血中尿素窒素(BUN)濃度およびアンモニア濃度を示す。
【0050】
薄膜複合膜のカチオン拒絶特性を測定するため、2つの溶液をビーカー内で混合し、互いに向流で、約100ml/分で、総膜面積が0.62m2の上記の約4500本のポリスルホン中空繊維を含み、内腔側面上に上記のようにして調製したカチオン拒絶薄膜複合膜を含むカートリッジ内にポンプ輸送した。内腔側の溶液は、4.00リットルの脱イオン水中に溶解させた30.85グラムの塩化ナトリウム、1.36グラムの塩化カルシウム二水和物、2.42グラムの塩化カリウムおよび6.00グラムの尿素からなるものであった。吸着剤側には、4リットルの脱イオン水中に195.6グラムのD-グルコース(ほぼ均衡浸透圧に計算)を含めた。予測どおり、尿素は膜を横断した。分析装置の精度範囲内で、わずかに微量のナトリウムが横断したが、カルシウムまたはカリウムは横断しなかった。ナトリウムでは10mEq/L(ミリ当量/リットル)、カリウムでは1.0mEq/L、およびカルシウムでは0.2mg/dLの値を、この実験でナトリウム、カリウムおよびカルシウムを検出するために使用した分析装置の正確な測定の下限とみなした。図12は、時間の関数としての血中尿素窒素(BUN)濃度を示し、内腔側(透析物側)では高濃度および吸着剤側では低濃度から始まり、次いで、この実験では尿素を除去しなかったため、尿素がカチオン拒絶膜を横断するにつれて、膜の両側の尿素濃度がほぼ等しくなった。図13〜15は、カチオン拒絶膜によって、内腔側から吸着剤側へのカチオン横断が妨げられていたため、それぞれ、カルシウム、カリウムおよびナトリウムカチオンの濃度が、膜の内腔側では高く、吸着剤側では低い状態で維持されたことを示す。
【0051】
第2ステージカートリッジ内の固定ウレアーゼ複合材はカートリッジの出口まで充填され得、したがって、いくらかのアンモニアが透析物中に放出され得るが、アンモニア結合樹脂または吸着剤との接触によって除去されない。したがって、第3の任意の清浄化ステージは、上記と同じだがウレアーゼなしのカチオン拒絶繊維およびアンモニア結合樹脂または吸着剤を使用することにより残留アンモニアをいずれも透析物から除去するために使用され得る。第3ステージカートリッジの一態様を図16に示す。図において、第3ステージカートリッジ300は約4500本のカチオン拒絶中空繊維310を含むものであり得、そのうち4本の繊維を示す。アンモニア結合樹脂または吸着剤320は繊維310の周囲に充填される。好ましい態様において、カチオン拒絶中空繊維はポリスルホンで作製され得、内腔側に、上記のようにして調製されるカチオン拒絶薄膜複合膜を含む。結束端を除くポリスルホン繊維によって占められる全容積は、総膜面積0.21m2で約15〜30cc、より好ましくは約18ccである。スクロースと混合した約120ccのアンモニア結合樹脂(ジビニルベンゼンと架橋させたスルホン酸置換ポリスチレン)がカチオン拒絶ポリスルホン繊維の周囲に、約138ccの総充填床容積で充填される。透析液を繊維310の内部(内腔側)に流すと、アンモニアがアンモニア結合樹脂320によって吸着される。殻側で流体に移動させられたガスはいずれも、疎水性通気孔330から雰囲気中に放出される。次いで、一部清浄化された透析物は、カートリッジ300から次の清浄化ステージに流出される。
【0052】
第4の任意の清浄化ステージは、残留する有機化合物、リンおよび硫酸塩いずれも除去するため、および透析物が、再生透析物を患者に戻す前に通常の生理学的pH約7.4であることを確実にするために使用され得る。第4ステージカートリッジは、上記の第1ステージカートリッジと同様または同一であってもよく、第4ステージカートリッジは、活性炭と混合した含水酸化ジルコニウムと炭酸ジルコニウムナトリウムの混合物を含んでいてもよい。改善されたpH制御を有する含水酸化ジルコニウムと炭酸ジルコニウムナトリウムの混合物は、2003年9月30日に発行された米国特許第6,627,164号に記載されている。あるいは、第4ステージカートリッジは、活性炭と混合したpH調整混合床イオン交換樹脂(例えば、IRN 150、Rohm and Haas)を含み得る。図17に示す一態様において、第4ステージカートリッジは第1ステージのカートリッジと同一であり得る。図において、第4ステージカートリッジ400は約4500本の中空繊維410を含み得、そのうち4本の繊維を示す。活性炭と含水酸化ジルコニウムの混合物420粉末は繊維410の周囲に充填される。好ましい態様において、中空繊維は、ポリスルホン製であり、透析物が少なくとも約100ml/分(ミリリットル/分)で流れ、生じる最大圧が約10mmHgとなるように構成され得る。結束端を除く4500本のポリスルホン繊維によって占められる全容積は総膜面積0.21m2で約15〜30cc(立方センチメートル)、より好ましくは約18ccである。約40〜80g、好ましくは約60gの含水酸化ジルコニウム(酢酸対イオン形態)と約30〜55g、好ましくは約44gの活性炭の混合物を均一に混合し、ポリスルホン繊維の周囲に充填する。透析物を繊維410の内部(内腔側)に流すと、有機化合物、リン酸塩および硫酸塩が繊維の細孔を通過し、殻側で活性炭と含水酸化ジルコニウムの混合物420によって吸着される。殻側で流体により移動させられたガスはいずれも、殻側で疎水性通気孔430から雰囲気中に放出される。実質的に浄化された透析物は、次いで、カートリッジ400から流出され、患者の腹膜腔に戻される。
【0053】
したがって、携帯型腹膜透析システムの交換可能なカートリッジに流した後、透析物は再生され、再利用の準備ができている。透析物は、尿素、尿酸およびクレアチニンを実質的に含まず、リン酸塩および硫酸塩レベルが低い。その構成要素によってカチオンが拒絶されるような尿素除去ステージの設計のため、透析物は、充分なレベルのカルシウムおよびマグネシウムイオンを保持し、患者においてこれらのイオンを補充する機構の必要性が排除される。また、ナトリウムおよびカリウムなどのカチオンの反発により、イオンが第2および第3ステージ交換可能なカートリッジの殻側に進入することが妨げられ、第2および第3ステージカートリッジ構成要素(例えば、カチオン交換樹脂または吸着剤)の殻側に結合されるイオンの負荷ならびにカートリッジを交換/再生させる必要性の頻度が減少する。したがって、ナトリウムおよびカリウムの拒絶により寿命が延び、第2および第3ステージ交換可能なカートリッジの大きさおよび重量が低減される。
【0054】
携帯型腹膜透析システムは、患者の腹膜腔への流入および該腹膜腔からの流出を提供するための閉鎖ループ液体システムに連結するための1つ以上のアクセスポートを有し得、この場合、アクセスポートとしては、医療に適切なプラスチックチューブ、二重内腔カテーテルまたは2つの単独内腔カテーテルが挙げられ得る。また、携帯型腹膜透析システムは、患者の腹膜を介して腹膜透析溶液中に分散する尿毒症老廃代謝産物が該腹膜透析溶液によって除去されるように患者の腹膜腔内に注入され、該腹膜腔から取り出される、ある容量の腹膜透析溶液(透析物)を含む。好ましくは、システムは腹膜透析溶液を、腹膜を通過する尿毒症毒素の輸送が最大量となるように継続的に循環させるが、定期的に循環なしの休止時間も流体除去に有利であり得る。1回の透析サイクル中の携帯型腹膜透析システムの好ましい使用方法は、患者の腹膜腔内へのある容量の透析物の注入、約2時間の休止時間の待機、休止時間中に患者の腹膜腔内に蓄積された流体(限外濾過液)の容量、典型的に約0.8リットルにほぼ等しい容量の透析物の排出、携帯型腹膜透析システム中での透析物の約8時間の連続循環、全容量の透析物の排出、患者の腹膜腔内へのさらなる容量の透析物の注入、約2時間の休止時間の待機、次いで、患者の腹膜腔からの透析物の排出、さらなる腹膜透析サイクルを開始する前の約12時間、該腔を比較的乾燥状態にしておくことを含み得る。携帯型腹膜透析システムは、透析物を腹膜透析サイクルの一部の時間で循環させるが、サイクルはまた、透析物を循環させていない期間も含むことに注意されたく、この型のサイクルを、本明細書において携帯型腹膜透析システムの半連続操作と称する。
【0055】
種々の腹膜透析溶液が使用され得(例えば、Delflex)、これらの溶液は市販されており(例えば、Fresenius Medical Care North America、Waltham、MA)、当該技術分野で周知である。約0.5〜3リットルの容量の腹膜透析溶液が携帯型腹膜透析システム内に導入され得、約2.5リットルの溶液が注入されることが好ましい。好ましくは、いくらかの新鮮腹膜透析溶液が携帯型腹膜透析システムに、都合のよい時点で添加され得る。また、腹膜透析溶液は、血清中のタンパク質に結合された尿毒症毒素に結合する該溶液に添加される物質も含み得る。例えば、これらのタンパク質結合毒素の除去を補助するためにアルブミンが腹膜透析溶液に添加され得る。
【0056】
透析物は、ポンプによって携帯型腹膜透析システム中に循環させる。ポンプは、好ましくは大きさが小さく、好ましくはカートリッジとほぼ同じ大きさであり、軽量であり、携帯可能なように少なくとも約12時間バッテリー作動が可能であり、充分な流速、典型的に約100ml/分で、システム圧力、典型的に約50〜60mmHg(ミリメートル水銀)での送達が可能であり、好ましくは透析物と接触する構成要素を滅菌する能力を含み、または、より好ましくは、ポンプ全体を交換する必要なく該構成要素を新たな滅菌構成要素と交換する能力を含むものである。適切なポンプとしては、Xavitech V1500およびP1500(Xavitech、Haernoesand、Sweden)、または圧電ダイヤフラムポンプ、または2007年8月29日に出願されたPCT出願番号PCT/US2007/077119に記載の使い捨てカセットポンプが挙げられ得る。使い捨てカセットは、ポンプ機構を透析物から隔離する機能を果たし、該機構の清浄化および滅菌の必要性なくポンプの再使用を可能にする。
【0057】
患者から尿毒症老廃代謝産物を一貫して効率的に除去するため、携帯型腹膜透析システム、特に、ポンプ流速ならびに透析システムの要素のタイミングおよびシーケンスの制御は電子制御され得る。好ましい態様において、制御機構は、透析システムの制御ユニットの一部であってもよいマイクロプロセッサであり得る。より好ましい態様では、携帯型腹膜透析システムは、制御システムと一体化され、ポンプを制御し、透析物中のアンモニア濃度が患者に戻すのに安全なレベル、典型的に約2000μg/dLを超えた場合にシステム中での透析物の流れを停止させるアンモニアセンサーを含み得る。さらにより好ましい態様において、携帯型腹膜透析システムは、さらに、マイクロプロセッサによって制御され、透析物を清浄化ステージ中に戻すことを指令し、患者を迂回して、患者の腹膜腔に透析物を戻す前に約2000μg/dL未満などの安全レベルまでのさらなるアンモニア除去のためのバイパスソレノイドを含み得る。
【0058】
携帯型腹膜透析システムのフロー図を図18に示す。図において、好ましい態様では、携帯型腹膜透析システム500は、透析物を、第1ステージカートリッジ100、第2ステージ200、第3ステージカートリッジ300、および第4ステージカートリッジ400中にポンプ輸送するポンプ520を含み得る。透析物はシステム内に、入口チューブ530から入り、任意のアンモニアセンサー550を通過した後、システムから出口チューブ540を通って排出される。より好ましい態様では、腹膜透析システム500は、アンモニアセンサー550によって起動されるか、またはマイクロプロセッサによって制御され、透析物を清浄化ステージ100〜400中に戻すことを指令し、患者を迂回して、患者の腹膜腔に透析物を戻す前に2000μg/dL未満のレベルまでのさらなるアンモニア除去のためのバイパスソレノイド555を含み得る。別の態様において、腹膜透析システム500は、患者の腹膜腔内に蓄積された流体(限外濾過液)を除液するための除液容器580を含み得る。除液容器は、手動により操作され得るか、またはマイクロプロセッサによって制御され得るオン/オフ弁590によって制御され得る。また、マイクロプロセッサにより携帯型腹膜透析システムの操作の他の局面が制御され得る。
【0059】
カートリッジは、透析物を汚染しない任意の充分に強度があり軽量の物質から作製され得る。適切な物質としては、金属、プラスチックおよび炭素複合材料が挙げられ得る。好ましい物質はポリカーボネートである。好ましい設計では、図19に示すように、楕円を平らにした「競走場」の設計が使用され得、これは、円柱状の「缶」設計よりもベルトにて着用するのにより快適である。
【0060】
次に、図20を見ると、好ましい態様では、携帯型腹膜透析システム500は、
ベルト510として構成され得る。ポンプ520は、透析物を、第1ステージカートリッジ100、第2ステージ200(ここでは、同一のカートリッジ200を2つという好ましい態様で示している)、第3ステージカートリッジ300、および第4ステージカートリッジ400中にポンプ輸送する。透析物はシステム内に、入口チューブ530から入り、任意のアンモニアセンサー550を通過した後、システムから出口チューブ540を通って排出される。ベルトとして着用される携帯型腹膜透析システムを図21に示す。
【0061】
別の態様において、図22に示すように、腹膜透析システムは一体型ループとして構成され得る。図において、一体型ループ600は、透析物を、第1ステージカートリッジ100、第2ステージ200(ここでは、同一のカートリッジ200を2つという好ましい態様で示している)、第3ステージカートリッジ300、および第4ステージカートリッジ400中にポンプ輸送するポンプ620を含み得る。透析物はシステム内に入口チューブ630から入り、システムから出口チューブ640を通って排出される。図23に示すように、一体型ループはベルト610として着用され得るか、あるいは、図24に示すように、一体型ループは、卓上ドッキングユニット615にドッキングされ得る。また別の態様において、図25に示すように、卓上ドッキングユニット615は、一体型ループ構成要素が卓上に対してある角度をなしてドッキングされるように配置され得る。
【0062】
また、本発明の携帯型腹膜透析システムは、外部電源によって電力供給され得、また、患者治療データ(例えば、治療期間、センサー読取、流速など)の処理、揮発性または非揮発性記憶装置への保存、および入/出力が可能な卓上ユニットとして構成され得る。また、卓上ユニットを、通信ネットワークを介して他のコンピューター計算デバイス/処理およびサーバーコンピュータ(1つまたは複数)に連結してもよい。通信ネットワークは、遠隔アクセスネットワーク、グローバルネットワーク(例えば、インターネット)、世界的なコンピュータ集合体、ローカルエリアまたは広域ネットワーク、ならびに現在それぞれのプロトコル(TCP/IP、Bluetoothなど)を用いて互いに通信されるゲートウェイの一部であってもよい。
【0063】
次に、図26を見ると、一態様において、携帯型腹膜透析システム500は卓上ユニット560として構成され得る。ポンプ520は、透析物を、第1ステージカートリッジ100、第2ステージ200(ここでは、同一のカートリッジ200を2つという好ましい態様で示している)、第3ステージカートリッジ300、および第4ステージカートリッジ400中にポンプ輸送する。透析物はシステム内に入口チューブ530から入り、システムから出口チューブ540を通って排出される。
【0064】
本明細書に挙げたすべての特許、公開出願および参考文献の関連する教示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0065】
本発明を、その好ましい態様を参照して具体的に示し、記載したが、形態および詳細における種々の変形が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱せずになされ得ることは、当業者によって理解されよう。特に、実験(特に動物)で得られた、または該実験から外挿される化学的および/または生物学的実験データは、当業者には公知のように、後に得られる人間に適切な値と有意に異なることがあり得る。かかる後に得られる値は、当業者の自身の知識および本明細書に示す教示を用いる当業者の通常の技能の範囲に含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の腹膜腔に流入物を供給するための入口ポート;
患者の腹膜腔からの流出物を供給するための出口ポート;
ある容量の透析物、該透析物は患者の腹膜腔内に流入し、該腹膜腔から流出し、それにより、該透析物中に拡散した尿毒症老廃代謝産物が該透析物から除去される;
患者の腹膜腔内に透析物を流入させ、該腹膜腔から流出させるための、ポンプを含む閉鎖液流ループ;
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む有機物およびリン酸塩除去ステージ、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物から有機化合物およびリン酸塩を除去するための物質を含む;ならびに
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む尿素およびアンモニア除去ステージ、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物から尿素およびアンモニアを除去するための物質を含み、該物質が、カチオンを拒絶する繊維内壁を有する半透過性中空繊維の周囲に充填され、それにより透析物中にカチオンが保持される、
を備える、腎機能障害または腎不全を有する患者のための携帯型腹膜透析システム。
【請求項2】
有機化合物およびリン酸塩を除去するためのカートリッジ内の物質が活性炭と酸化ジルコニウムの混合物を含む、請求項1記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項3】
有機化合物およびリン酸塩を除去するためのカートリッジ内の物質が半透過性中空繊維の周囲に充填される、請求項2記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項4】
尿素およびアンモニアを除去するためのカートリッジ内の物質がウレアーゼおよび強酸カチオン交換樹脂または吸着剤を含む、請求項2記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項5】
吸着剤がイオン交換吸着剤を含む、請求項4記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項6】
ウレアーゼが架橋ナタマメ粉ポリエチレンイミン-炭素複合材の形態である、請求項4記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項7】
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含むアンモニア除去ステージであって、該カートリッジが、患者の腹膜腔から除去された透析物からアンモニアを除去するための物質を含み、該物質が、カチオンを拒絶する繊維内壁を有する半透過性中空繊維の周囲に充填され、それにより透析物中にカチオンが保持されるアンモニア除去ステージをさらに含む、請求項4記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項8】
カチオンを拒絶する繊維内壁を有する中空繊維がカルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムのカチオンを拒絶する、請求項7記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項9】
アンモニアを除去するためのカートリッジ内の物質が強酸カチオン交換樹脂またはイオン交換吸着剤を含む、請求項1記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項10】
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む、有機物およびリン酸塩を除去し、pHを制御するステージであって、該カートリッジが、患者の腹膜腔から除去された透析物から有機化合物を除去するための物質、および透析物のpHを生理学的pHまたはその付近に制御するための物質を含む、有機物およびリン酸塩を除去し、pHを制御するステージをさらに含む、請求項1記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項11】
有機化合物を除去するためのカートリッジ内の物質が活性炭を含み、透析物のpHを制御するためのカートリッジ内の物質が酸化ジルコニウムと炭酸ジルコニウムナトリウムの混合物を含む、請求項10記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項12】
患者が着用するのに適合されたベルトとして構成されている、請求項1記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項13】
患者がベルトとして着用するのに適合された、または卓上ドッキングユニットにドッキングされる一体型ループとして構成されている、請求項1記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項14】
卓上ユニットとして構成されている、請求項1記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項15】
患者の腹膜腔に流入物を供給するための入口ポート;
患者の腹膜腔からの流出物を供給するための出口ポート;
ある容量の透析物、該透析物は患者の腹膜腔内に注入され、該腹膜腔から排出され、それにより、該透析物中に拡散した尿毒症老廃代謝産物が該透析物から除去される;
患者からの透析物を該システム中に循環させ、患者に戻すための閉鎖液流ループ;
透析物を患者の腹膜腔内に流入させ、尿毒症老廃代謝産物を含む透析物を該患者の腹膜腔から流出させるための、閉鎖液流ループに取り付けられたポンプ;
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む有機物およびリン酸塩除去ステージ、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物から有機化合物およびリン酸塩を除去するための物質を含む;
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能な尿素およびアンモニア除去カートリッジを含む尿素およびアンモニア除去ステージ、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物から尿素およびアンモニアを除去するための物質を含み、該物質が、カチオンを拒絶する繊維内壁を有する半透過性中空繊維の周囲に充填され、それにより透析物中にカルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムのカチオンが保持される;
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含むアンモニア除去ステージ、該カートリッジはアンモニアを除去するための物質を含み、該物質は、カチオンを拒絶する繊維内壁を有する半透過性中空繊維の周囲に充填され、それにより透析物中にカルシウム、カリウムおよびナトリウムカチオンが保持される;ならびに
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む、有機物およびリン酸塩を除去し、pHを制御するステージ、該カートリッジは、有機化合物を除去するための物質、および透析物のpHを生理学的pHまたはその付近に制御するための物質を含む、
を備える、患者のための携帯型腹膜透析システム。
【請求項16】
患者の腹膜腔の内外および透析物再生ステージ中に、ある容量の透析物を流すための閉鎖液流ループを含む携帯型腹膜透析システムを用いて患者に腹膜透析を提供するための方法であって、
a)患者の腹膜腔からのある容量の透析物を、該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む有機物およびリン酸塩除去ステージに流入させる工程、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物から有機化合物およびリン酸塩を除去するための物質を含む;その後
b)該容量の透析物を、該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む尿素およびアンモニア除去ステージ内に含まれた半透過性中空繊維に流入させる工程、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物から尿素およびアンモニアを除去するための物質を含み、該物質は該半透過性中空繊維の周囲に充填され、該半透過性中空繊維は、カチオンを拒絶する繊維内壁を有し、それにより、透析物中に拡散した尿毒症老廃代謝産物は透析物から除去されるが、カチオンは透析物中に保持され、再生透析物が得られる;ならびに
c)再生透析物を患者の腹膜腔内に導入する工程
を含む、方法。
【請求項17】
有機化合物およびリン酸塩を除去するためのカートリッジ内の物質が活性炭と酸化ジルコニウムの混合物を含む、患者に腹膜透析を提供するための請求項16記載の方法。
【請求項18】
有機化合物およびリン酸塩を除去するためのカートリッジ内の物質が半透過性中空繊維の周囲に充填される、患者に腹膜透析を提供するための請求項17記載の方法。
【請求項19】
尿素およびアンモニアを除去するためのカートリッジ内の物質がウレアーゼおよび強酸カチオン交換樹脂または吸着剤を含む、患者に腹膜透析を提供するための請求項17記載の方法。
【請求項20】
吸着剤がイオン交換吸着剤を含む、患者に腹膜透析を提供するための請求項19記載の方法。
【請求項21】
ウレアーゼが架橋ナタマメ粉ポリエチレンイミン-炭素複合材の形態である、患者に腹膜透析を提供するための請求項19記載の方法。
【請求項22】
さらに、閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含むアンモニア除去ステージ内に該容量の透析物を流動させることを含み、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物からアンモニアを除去するための物質を含み、該物質が、カチオンを拒絶する繊維内壁を有する半透過性中空繊維の周囲に充填され、それにより透析物中にカチオンが保持される、患者に腹膜透析を提供するための請求項19記載の方法。
【請求項23】
カチオンを拒絶する繊維内壁を有する中空繊維がカルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムのカチオンを拒絶する、患者に腹膜透析を提供するための請求項22記載の方法。
【請求項24】
アンモニアを除去するためのカートリッジ内の物質が強酸カチオン交換樹脂またはイオン交換吸着剤を含む、患者に腹膜透析を提供するための請求項16記載の方法。
【請求項25】
さらに、該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む、有機物およびリン酸塩を除去し、pHを制御するステージ内に該容量の透析物を流動させることを含み、該カートリッジが、患者の腹膜腔から除去された透析物から有機化合物を除去するための物質、および透析物のpHを生理学的pHまたはその付近に制御するための物質を含む、患者に腹膜透析を提供するための請求項16記載の方法。
【請求項26】
有機化合物を除去するためのカートリッジ内の物質が活性炭を含み、透析物のpHを制御するためのカートリッジ内の物質が酸化ジルコニウムと炭酸ジルコニウムナトリウムの混合物を含む、患者に腹膜透析を提供するための請求項25記載の方法。
【請求項27】
システムが、患者が着用するのに適合されたベルトとして構成されている、患者に腹膜透析を提供するための請求項16記載の方法。
【請求項28】
システムが、患者がベルトとして着用するのに適合された、または卓上ドッキングユニットにドッキングされる一体型ループとして構成されている、患者に腹膜透析を提供するための請求項16記載の方法。
【請求項29】
システムが卓上ユニットとして構成されている、患者に腹膜透析を提供するための請求項16記載の方法。
【請求項1】
患者の腹膜腔に流入物を供給するための入口ポート;
患者の腹膜腔からの流出物を供給するための出口ポート;
ある容量の透析物、該透析物は患者の腹膜腔内に流入し、該腹膜腔から流出し、それにより、該透析物中に拡散した尿毒症老廃代謝産物が該透析物から除去される;
患者の腹膜腔内に透析物を流入させ、該腹膜腔から流出させるための、ポンプを含む閉鎖液流ループ;
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む有機物およびリン酸塩除去ステージ、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物から有機化合物およびリン酸塩を除去するための物質を含む;ならびに
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む尿素およびアンモニア除去ステージ、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物から尿素およびアンモニアを除去するための物質を含み、該物質が、カチオンを拒絶する繊維内壁を有する半透過性中空繊維の周囲に充填され、それにより透析物中にカチオンが保持される、
を備える、腎機能障害または腎不全を有する患者のための携帯型腹膜透析システム。
【請求項2】
有機化合物およびリン酸塩を除去するためのカートリッジ内の物質が活性炭と酸化ジルコニウムの混合物を含む、請求項1記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項3】
有機化合物およびリン酸塩を除去するためのカートリッジ内の物質が半透過性中空繊維の周囲に充填される、請求項2記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項4】
尿素およびアンモニアを除去するためのカートリッジ内の物質がウレアーゼおよび強酸カチオン交換樹脂または吸着剤を含む、請求項2記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項5】
吸着剤がイオン交換吸着剤を含む、請求項4記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項6】
ウレアーゼが架橋ナタマメ粉ポリエチレンイミン-炭素複合材の形態である、請求項4記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項7】
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含むアンモニア除去ステージであって、該カートリッジが、患者の腹膜腔から除去された透析物からアンモニアを除去するための物質を含み、該物質が、カチオンを拒絶する繊維内壁を有する半透過性中空繊維の周囲に充填され、それにより透析物中にカチオンが保持されるアンモニア除去ステージをさらに含む、請求項4記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項8】
カチオンを拒絶する繊維内壁を有する中空繊維がカルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムのカチオンを拒絶する、請求項7記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項9】
アンモニアを除去するためのカートリッジ内の物質が強酸カチオン交換樹脂またはイオン交換吸着剤を含む、請求項1記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項10】
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む、有機物およびリン酸塩を除去し、pHを制御するステージであって、該カートリッジが、患者の腹膜腔から除去された透析物から有機化合物を除去するための物質、および透析物のpHを生理学的pHまたはその付近に制御するための物質を含む、有機物およびリン酸塩を除去し、pHを制御するステージをさらに含む、請求項1記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項11】
有機化合物を除去するためのカートリッジ内の物質が活性炭を含み、透析物のpHを制御するためのカートリッジ内の物質が酸化ジルコニウムと炭酸ジルコニウムナトリウムの混合物を含む、請求項10記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項12】
患者が着用するのに適合されたベルトとして構成されている、請求項1記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項13】
患者がベルトとして着用するのに適合された、または卓上ドッキングユニットにドッキングされる一体型ループとして構成されている、請求項1記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項14】
卓上ユニットとして構成されている、請求項1記載の携帯型腹膜透析システム。
【請求項15】
患者の腹膜腔に流入物を供給するための入口ポート;
患者の腹膜腔からの流出物を供給するための出口ポート;
ある容量の透析物、該透析物は患者の腹膜腔内に注入され、該腹膜腔から排出され、それにより、該透析物中に拡散した尿毒症老廃代謝産物が該透析物から除去される;
患者からの透析物を該システム中に循環させ、患者に戻すための閉鎖液流ループ;
透析物を患者の腹膜腔内に流入させ、尿毒症老廃代謝産物を含む透析物を該患者の腹膜腔から流出させるための、閉鎖液流ループに取り付けられたポンプ;
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む有機物およびリン酸塩除去ステージ、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物から有機化合物およびリン酸塩を除去するための物質を含む;
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能な尿素およびアンモニア除去カートリッジを含む尿素およびアンモニア除去ステージ、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物から尿素およびアンモニアを除去するための物質を含み、該物質が、カチオンを拒絶する繊維内壁を有する半透過性中空繊維の周囲に充填され、それにより透析物中にカルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムのカチオンが保持される;
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含むアンモニア除去ステージ、該カートリッジはアンモニアを除去するための物質を含み、該物質は、カチオンを拒絶する繊維内壁を有する半透過性中空繊維の周囲に充填され、それにより透析物中にカルシウム、カリウムおよびナトリウムカチオンが保持される;ならびに
該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む、有機物およびリン酸塩を除去し、pHを制御するステージ、該カートリッジは、有機化合物を除去するための物質、および透析物のpHを生理学的pHまたはその付近に制御するための物質を含む、
を備える、患者のための携帯型腹膜透析システム。
【請求項16】
患者の腹膜腔の内外および透析物再生ステージ中に、ある容量の透析物を流すための閉鎖液流ループを含む携帯型腹膜透析システムを用いて患者に腹膜透析を提供するための方法であって、
a)患者の腹膜腔からのある容量の透析物を、該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む有機物およびリン酸塩除去ステージに流入させる工程、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物から有機化合物およびリン酸塩を除去するための物質を含む;その後
b)該容量の透析物を、該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む尿素およびアンモニア除去ステージ内に含まれた半透過性中空繊維に流入させる工程、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物から尿素およびアンモニアを除去するための物質を含み、該物質は該半透過性中空繊維の周囲に充填され、該半透過性中空繊維は、カチオンを拒絶する繊維内壁を有し、それにより、透析物中に拡散した尿毒症老廃代謝産物は透析物から除去されるが、カチオンは透析物中に保持され、再生透析物が得られる;ならびに
c)再生透析物を患者の腹膜腔内に導入する工程
を含む、方法。
【請求項17】
有機化合物およびリン酸塩を除去するためのカートリッジ内の物質が活性炭と酸化ジルコニウムの混合物を含む、患者に腹膜透析を提供するための請求項16記載の方法。
【請求項18】
有機化合物およびリン酸塩を除去するためのカートリッジ内の物質が半透過性中空繊維の周囲に充填される、患者に腹膜透析を提供するための請求項17記載の方法。
【請求項19】
尿素およびアンモニアを除去するためのカートリッジ内の物質がウレアーゼおよび強酸カチオン交換樹脂または吸着剤を含む、患者に腹膜透析を提供するための請求項17記載の方法。
【請求項20】
吸着剤がイオン交換吸着剤を含む、患者に腹膜透析を提供するための請求項19記載の方法。
【請求項21】
ウレアーゼが架橋ナタマメ粉ポリエチレンイミン-炭素複合材の形態である、患者に腹膜透析を提供するための請求項19記載の方法。
【請求項22】
さらに、閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含むアンモニア除去ステージ内に該容量の透析物を流動させることを含み、該カートリッジは、患者の腹膜腔から除去された透析物からアンモニアを除去するための物質を含み、該物質が、カチオンを拒絶する繊維内壁を有する半透過性中空繊維の周囲に充填され、それにより透析物中にカチオンが保持される、患者に腹膜透析を提供するための請求項19記載の方法。
【請求項23】
カチオンを拒絶する繊維内壁を有する中空繊維がカルシウム、マグネシウム、カリウムおよびナトリウムのカチオンを拒絶する、患者に腹膜透析を提供するための請求項22記載の方法。
【請求項24】
アンモニアを除去するためのカートリッジ内の物質が強酸カチオン交換樹脂またはイオン交換吸着剤を含む、患者に腹膜透析を提供するための請求項16記載の方法。
【請求項25】
さらに、該閉鎖液流ループ内に少なくとも1つの交換可能なカートリッジを含む、有機物およびリン酸塩を除去し、pHを制御するステージ内に該容量の透析物を流動させることを含み、該カートリッジが、患者の腹膜腔から除去された透析物から有機化合物を除去するための物質、および透析物のpHを生理学的pHまたはその付近に制御するための物質を含む、患者に腹膜透析を提供するための請求項16記載の方法。
【請求項26】
有機化合物を除去するためのカートリッジ内の物質が活性炭を含み、透析物のpHを制御するためのカートリッジ内の物質が酸化ジルコニウムと炭酸ジルコニウムナトリウムの混合物を含む、患者に腹膜透析を提供するための請求項25記載の方法。
【請求項27】
システムが、患者が着用するのに適合されたベルトとして構成されている、患者に腹膜透析を提供するための請求項16記載の方法。
【請求項28】
システムが、患者がベルトとして着用するのに適合された、または卓上ドッキングユニットにドッキングされる一体型ループとして構成されている、患者に腹膜透析を提供するための請求項16記載の方法。
【請求項29】
システムが卓上ユニットとして構成されている、患者に腹膜透析を提供するための請求項16記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公表番号】特表2012−507373(P2012−507373A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534854(P2011−534854)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/062967
【国際公開番号】WO2010/062716
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(507209609)フレゼニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/062967
【国際公開番号】WO2010/062716
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(507209609)フレゼニウス メディカル ケア ホールディングス インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】
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