説明

携帯型薬剤拡散装置

【課題】携帯型の薬剤拡散装置において、空気の通る開口部を大きくして高い能力が得られるようにする場合に、ストラップの取り付け作業性を良好にするとともに、更なるコンパクト化を図って携帯性を良好にする。
【解決手段】ケース10における吸気用開口部14及び排気用開口部20の周縁部には、該ケースにおける開口部14,20の周縁部を補強するための棒状部15及び柱状部21が設けられている。柱状部21にストラップ2が取り付けられるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防虫剤等の薬剤を空気中に拡散させるための薬剤拡散装置に関するものであり、特に、使用者が携帯可能な構造の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の携帯型薬剤拡散装置としては、例えば、特許文献1、2に開示されているように、送風用のファンと、ファンを駆動するためのモーターと、モーターの電源となる電池と、薬剤を保持した薬剤保持体とを備え、これらをケースに収容して構成された装置が知られている。
【0003】
ケースには、内部に空気を取り入れるための吸気用開口部と、取り入れた空気を排出するための排気用開口部とが形成されている。そして、モーターで駆動されたファンによってケースの吸気用開口部から空気を取り入れて薬剤保持体に当て、薬剤を含む空気を排気用開口部から排出することによって薬剤を空気中に拡散できるようになっている。
【0004】
また、特許文献1、2の装置は携帯型であるため、ケースにはストラップが取り付けられるストラップ取付部が設けられている。ストラップ取付部は、リング形状とされ、ケースの外側へ突出している。このようにストラップ取付部をケースの外側へ突出させることにより、ストラップを取り付ける際にケースが邪魔になりにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−185139号公報
【特許文献2】特開2005−204517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1、2のような薬剤拡散装置では、単位時間当たりの薬剤拡散量を多くして能力を向上させたいという要求がある。この要求に対して、ファンやモーターを大型化して大風量を確保することが考えられる。ところが、このような方法をとった場合には、大型のファンやモーターを収容する必要があることからケースが大型化してしまい、ひいては、薬剤拡散装置の携帯時に該装置が使用者の邪魔になりやすく、携帯性が悪化するという問題がある。
【0007】
そこで、ファンやモーターをそれほど大型化せずに能力を向上させる方法として、ケースの吸気用開口部や排気用開口部を大きくすることによって空気のケースへの出入りを全体的にスムーズにして損失を減少させることが考えられる。ところが、この方法を採用した場合には、ケースの開口部の面積が大きくなる分、ケースの強度低下を招くことになる。特に、携帯型の薬剤拡散装置では、携帯時に振り回されることや、落下することがあり、様々な力がかかることが想定されるので、ケースの強度が低下していると、ケースが変形したり破損する原因となり、問題となる。
【0008】
一方、携帯型の薬剤拡散装置では、ケースにストラップ取付部を設ける必要があるが、特許文献1、2のようにストラップ取付部がケースの外側へ突出していると、ストラップを取り付けやすくできる反面、薬剤拡散装置のコンパクト化を阻害する要因となる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、空気の通る開口部を大きくして高い能力が得られるようにする場合に、開口部の形成によるケースの強度低下を抑制する構造を設け、この強度低下を抑制する構造を利用してストラップを容易に取り付けることができるようにしてストラップの取り付け作業性を良好にするとともに、薬剤拡散装置の更なるコンパクト化を図って携帯性を良好にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、ケースの開口部の周縁部に設けた補強部をストラップの取付部として利用するようにした。
【0011】
第1の発明は、薬剤を保持した薬剤保持体と、上記薬剤保持体に空気を送るための送風機と、上記薬剤保持体及び上記送風機を収容するケースとを備え、上記ケースには、吸気用開口部及び排気用開口部が形成され、上記送風機の作動によって上記ケースの外部の空気を上記吸気用開口部から該ケースの内部に吸入して上記薬剤保持体に送風した後、上記排気用開口部から該ケースの外部へ排出して上記薬剤を空気中に拡散させるように構成された携帯型薬剤拡散装置において、上記ケースにおける吸気用開口部と排気用開口部との少なくとも一方の周縁部には、該ケースにおける開口部の周縁部を補強するための補強部が設けられ、上記補強部には、ストラップが取り付けられることを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、吸気用開口部と排気用開口部との少なくとも一方の周縁部が補強部によって補強されるので、吸気用開口部や排気用開口部を大型化して能力の向上を図る場合に、ケースの強度低下が抑制される。よって、携帯時にケースの変形や破損が起こりにくくなる。
【0013】
そして、ストラップをケースに取り付ける際には、上記補強部に取り付ければよいので、従来例のようにストラップを取り付けるためだけの専用のストラップ取付部をケースに設けずに済み、コンパクト化が図られる。また、補強部は開口部の周縁部に設けられているので、補強部の周りには空間があり、この空間を利用してストラップを補強部へ容易に取り付けることが可能になる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、補強部は、ケースの開口部の周縁部における互いに離れた部位同士を連結するように延びる柱状をなしていることを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、ストラップを取り付ける際には、ストラップの一部をケースの開口部へ差し込んで補強部に取り付けることが可能になる。
【0016】
第3の発明は、第1または2の発明において、補強部は、ケースにおける排気用開口部の周縁部に設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、排気用開口部から排出される薬剤を含む空気が補強部に当たって拡散し、さらにストラップにも当たって拡散することになる。
【0018】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、使用者に取り付け可能に構成されたストラップを備えており、上記ストラップには、ケースが使用者の体から離れる方向に移動するのを規制する規制部が設けられていることを特徴とするものである。
【0019】
この構成によれば、ストラップが取り付けられた状態で、規制部により、ケースが使用者の体から離れる方向に移動するのが規制される。
【0020】
第5の発明は、第1から4のいずれか1つの発明において、補強部は、互いに間隔をあけて複数設けられていることを特徴とするものである。
【0021】
この構成によれば、ケースの強度がより一層高まる。また、ストラップの取付位置を変更することが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、ケースにおける吸気用開口部と排気用開口部との少なくとも一方の周縁部に補強部を設けたので、ケースに大きな吸気用開口部や排気用開口部を形成して高い能力を得る場合にケースの変形や破損を抑制できる。また、開口部の周縁部に設けた補強部にストラップを取り付けるようにしたことで、ストラップの取り付け作業性を良好にでき、しかも、専用のストラップ取付部を不要にして薬剤拡散装置の更なるコンパクト化を図ることができ、携帯性を良好にすることができる。
【0023】
第2の発明によれば、補強部を、ケースの開口部の周縁部における互いに離れた部位同士を連結するように延びる柱状としたので、ストラップを取り付ける際に、ケースの開口部を有効に利用して補強部に容易に取り付けることができる。
【0024】
第3の発明によれば、補強部を排気用開口部の周縁部に設けたことで、薬剤を含んだ空気を補強部及びストラップに当てることができる。これにより、薬剤を広い範囲に拡散させることができる。
【0025】
第4の発明によれば、ストラップに、ケースが使用者の体から離れる方向に移動するのを規制する規制部を設けたので、例えば使用者が歩く際に、ケースが体から離れて体に当たるように動くのを抑制でき、携帯時の違和感を感じ難くできる。
【0026】
第5の発明によれば、補強部を互いに間隔をあけて複数設けたので、ケースの強度をより一層高めることができ、しかも、ストラップの取付位置の変更が可能となって利便性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態にかかる携帯型薬剤拡散装置の正面図である。
【図2】ストラップを取り外した状態の携帯型薬剤拡散装置の正面図である。
【図3】ストラップを取り付けた状態の携帯型薬剤拡散装置の斜視図である。
【図4】ストラップを取り外した状態の携帯型薬剤拡散装置の斜視図である。
【図5】ストラップを取り外した状態の携帯型薬剤拡散装置の平面図である。
【図6】ストラップを取り外した状態の携帯型薬剤拡散装置の右側面図である。
【図7】ストラップを取り外した状態の携帯型薬剤拡散装置の左側面図である。
【図8】ストラップを取り外した状態の携帯型薬剤拡散装置の背面図である。
【図9】図2におけるIX−IX線断面図である。
【図10】図2におけるX−X線断面図である。
【図11】ストラップの正面図である。
【図12】ストラップの側面図である。
【図13】変形例にかかる図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態にかかる携帯型薬剤拡散装置1を示すものである。薬剤拡散装置1は、使用者が例えば屋外で携帯して使用するものであり、携帯用のストラップ2を備えている。ストラップ2は、例えば、使用者のベルトや、乳母車の車体等に取り付けることが可能である。尚、詳細は後述するが、ストラップ2を薬剤拡散装置1から取り外して使用することも可能である。
【0030】
また、薬剤拡散装置1は、薬剤として害虫忌避剤を空気中に拡散するように構成されている。害虫忌避剤は、従来から用いられている周知の揮発性を有する薬剤であるため、詳細な説明は省略する。薬剤としては、他に、例えば、芳香剤、消臭剤、殺菌剤、防ダニ剤、殺虫剤等が挙げられ、これらのうち、1種類のみを拡散させるようにしてもよいし、2種類以上を拡散させるようにしてもよい。
【0031】
薬剤拡散装置1は、図9や図10に示すように、害虫忌避剤を保持した薬剤保持体3と、薬剤保持体3に空気を送るための送風機4と、送風機4の電源となる電池5と、薬剤保持体3、送風機4及び電池5を収容するケース10とを備えている。
【0032】
図2〜図7に示すように、ケース10は、略正面視で幅方向の寸法が奥行き方向の寸法よりも短い扁平形状とされている。ケース10の底壁部10aは略平坦に形成されており、よって、薬剤拡散装置1は、ストラップ2を取り外した状態で、例えば机の上等に置いて安定した状態で使用することもできるようになっている。
【0033】
図2に示すように、ケース10の上壁部10bは、上方へ向けて湾曲している。また、ケース10の左右両側壁部10c,10dは、略上下方向に延びており、左右両側壁部10c,10dの上端部は、上壁部10bの左右両縁部にそれぞれ連なっている。ケース10の前壁部10eは、略上下方向に延びている。図5に示すように、前壁部10eの周縁部には、面取りが施されている。
【0034】
前壁部10eには、図9や図10にも示すように、吸気用開口部14が該前壁部10eを貫通するように形成されている。図2に示すように、吸気用開口部14は、前壁部10eの周縁部を除く部分に広く形成されている。吸気用開口部14の上縁部は、ケース10の上壁部10bの湾曲形状に対応するように湾曲して延びている。吸気口用開口部14の左右両縁部は、ケース10の左右両側壁部10c,10dに沿うように略上下方向に延びている。また、吸気用開口部14の下縁部は、ケース10の底壁部10aに沿うように左右方向に延びている。従って、吸気用開口部14は、正面視におけるケース10の外形状と略相似な形状となっている。
【0035】
ケース10の前壁部10eには、吸気用開口部14が形成されていることによる強度低下を抑制するための複数の補強用棒状部(補強部)15,15,…が設けられている。棒状部15は、略上下方向に真っ直ぐに延びており、左右方向に略等しい間隔をあけて配置されている。棒状部15の上端部は、ケース10における吸気用開口部14の上縁部に一体化しており、また、棒状部15の下縁部は、ケース10における吸気用開口部14の下縁部に一体化している。つまり、棒状部15は、ケース10における吸気用開口部14の周縁部における互いに離れた部位同士を連結するように延びる柱状をなしている。
【0036】
図10に示すように、前壁部10eにおける吸気用開口部14の上縁部近傍には、下方へ行くほどケース10内側(後側)に位置するように傾斜する上側傾斜面16が形成されている。また、前壁部10eにおける吸気用開口部14の下縁部近傍には、上方へ行くほどケース10内側(後側)に位置するように傾斜する下側傾斜面17が形成されている。
【0037】
図8に示すように、ケース10の後壁部10fは、略平坦に延びており、この後壁部10fには、開口部や凸部、凹部は形成されていない。図5に示すように、後壁部10fの周縁部には、前壁部10eと同様に面取りが施されている。
【0038】
ケース10には、排気用開口部20が形成されている。図5〜図7に示すように、排気用開口部20は、左側壁部10cから上壁部10b、右側壁部10dに亘って広い範囲に形成されている。排気用開口部20は、上記壁部10c,10b,10dの後側部分に位置している。
【0039】
ケース10には、排気用開口部20が形成されていることによる強度低下を抑制するための補強用の上側、左側及び右側柱状部(補強部)21,22,23が設けられている。
【0040】
図4や図6に示すように、上側柱状部21は、上壁部10bにおいて排気用開口部20内に位置するように設けられており、排気用開口部20の前縁部と後縁部とを連結するように前後方向に延びている。つまり、上側柱状部21は、ケース10における排気用開口部20の周縁部における互いに離れた部位同士を連結するように延びている。また、上側柱状部21の断面形状は、略円形とされている。
【0041】
図7に示すように、左側柱状部22は、左壁部10cにおいて排気用開口部20内に位置するように設けられており、上側柱状部21と同様に、排気用開口部20の前縁部と後縁部とを連結するように前後方向に延び、略円形の断面形状を有している。この左側柱状部22は、排気用開口部20の下縁部よりも上方に離れている。
【0042】
また、図4や図6に示すように、右側柱状部23は、右壁部10eにおいて排気用開口部20内に位置するように設けられており、上側柱状部21と同様に、排気用開口部20の前縁部と後縁部とを連結するように前後方向に延び、略円形の断面形状を有している。右側柱状部23は、排気用開口部20の右縁部よりも上方に離れている。上記上側、左側及び右側柱状部21,22,23は同じ形状である。
【0043】
ケース10は、前側部材30と後側部材31とを備えている。前側部材30及び後側部材31は、それぞれ樹脂材で構成されている。後側部材31は、前側へ開放する箱状をなしている。前側部材30は、後側部材31の開放部分を前方から覆うように形成されている。前側部材30の下部は、後側部材31の下部に対し左右方向に延びる回動軸(図示せず)周りに回動可能に連結されている。また、図6に示すように、前側部材30の上部には、後方へ突出する爪部32が形成されている。この爪部32は、後側部材31の上部に対し、上方から係合するようになっている。爪部32の係合によって前側部材30が後側部材31を前方から覆った状態で保持される。
【0044】
上記吸気用開口部14は、前側部材30に形成され、上記排気用開口部20は、後側部材31に形成されている。
【0045】
図9及び図10に示すように、後側部材31には、ケース10の内部空間を前側と後側とに区画するための区画壁40が設けられている。区画壁40は上下方向に延びている。区画壁40よりも後側の空間は、送風機4を収容するための送風機収容部41とされている。送風機収容部41の左右両側方及び上方には、排気用開口部20が位置しており、送風機収容部41は排気用開口部20を介してケース10の外部と連通している。
【0046】
また、区画壁40よりも前側の空間は、薬剤保持体3を収容するための薬剤収容部42とされている。薬剤収容部42の前方には、吸気用開口部14が位置しており、薬剤収容部42は吸気用開口部14を介してケース10の外部と連通している。
【0047】
区画壁40の上下方向中央部には、前後方向に貫通する貫通孔43が形成されている。この貫通孔43を介して送風機収容部41と薬剤収容部42とが連通している。
【0048】
送風機4は、モーター46とモーター46の回転軸46aに固定されたファン47とを備えている。後側部材31には、モーター46を固定するための固定板48が設けられている。モーター46は、回転軸46aがケース10の前後方向に延びる姿勢となるように、かつ、前方へ向けて突出するように、固定板48に固定されている。ファン47は遠心式ファンに比較し、単位時間当たりの風量を多く確保できる軸流ファンを採用しているが、他の形式のファンを用いることも可能である。
【0049】
薬剤保持体3は、ろ紙や不織布等からなるシートに害虫忌避剤を含浸させたものであり、シートを所定幅で、山折り、谷折りをくり返して形成された多数のひだ状部分を有する、いわゆるジャバラ形状を有している(図示省略)。尚、この形状はプリーツ形状とも呼ばれる。
【0050】
薬剤保持体3は、箱状のカートリッジ50に収容されている。カートリッジ50の前側は開放されており、カートリッジ50の内部は吸気用開口部14と連通している。また、カートリッジ50の後側も開放されており、カートリッジ50の内部は送風機収容部41と連通している。また、ケース10の下部には、電池5が収容されている。
【0051】
上述のごとく、本実施形態では、シロッコファン等の遠心式ファンに比較して静圧の低い軸流ファンを採用しているが、他方、薬剤保持体3はハニカム構造や単純なシート状よりも単位投影面積当たりの通気面積の大きいジャバラ形状を有していることにより、静圧の低い軸流ファンを用いながらも、効率のよい蒸散効果(単位時間当たりの薬剤の蒸散量が多い)を奏することが可能になる。
【0052】
尚、薬剤保持体3の山及び谷の数や、山の高さ及び谷の深さ、山のピッチ等は、任意に設定することが可能である。
【0053】
図6に示すように、ケース10の左側壁部10cの下部には、スイッチ51が設けられている。スイッチ51は、モーター46及び電池5に接続されていて、モーター46のONとOFFを切り替えるためのものである。
【0054】
図11及び図12に示すように、ストラップ2は、フック部材60と、ベルト部材61とを備えている。フック部材60は、ケース10の上側、左側及び右側柱状部21,22,23のいずれか1つに引っ掛けて係合させるための部材であり、例えばポリアセタール等の弾性と強度を兼ね備えた樹脂材で構成されている。
【0055】
フック部材60は、板状部60aと、フック形状部60bと、ストッパ60c(図12参照)とを備えている。板状部60aは略矩形状に形成されている。板状部60aの一縁部60f近傍には、ベルト部材61が挿通する挿通孔60dが形成されている。挿通孔60dは、板状部60aの一縁部60fに沿って延びるスリット形状とされている。
【0056】
フック形状部60bは、板状部60aの他縁部60gに一体成形された棒状をなしている。フック形状部60bの基端側は、図11に示す板状部60aの平面視で、板状部60aから離れる方向に湾曲しながら延びている。フック形状部60bの基端側の形状は、柱状部21,22,23の外形状(図11に仮想線で示す)に対応した円弧を描く形状である。柱状部21,22,23は、フック形状部60bの基端側と板状部60aとの間に入り込むようになっている。
【0057】
フック形状部60bの先端側は、板状部60aの他縁部60gに近づく方向に延びた後、他縁部60gから再び離れる方向に延びるように屈曲形成されている。
【0058】
フック形状部60bの先端側のうち、板状部60aの他縁部60gに最も近づいた部分60hと、該他縁部60gとの間隔は、柱状部21,22,23の径よりも狭く設定されている。よって、フック形状部60bの基端側に入り込んだ柱状部21,22,23が先端側へ向けて不意に抜けないようになっている。
【0059】
フック形状部60bの先端側のうち、板状部60aの他縁部60gから再び離れる方向に延びる部分60iは、柱状部21,22,23をフック形状部60bの基端側に案内するための案内部である。また、フック形状部60bは、樹脂材の持つ弾性によって弾性変形するようになっている。
【0060】
また、図3に示すように、フック形状部60bは、ストラップ2の取り付け状態で、ケース10の排気用開口部20に挿入されるようになっている。このフック形状部60bは、排気用開口部20に挿入された状態で、排気用開口部20の内面に沿ってケース10の左右方向に延び、該内面に当接するようになっている。これにより、ケース10がストラップ2に対し該ケース10の前後方向(図3の矢印Y方向)に揺動するのが規制される。本発明の規制部は、フック形状部60bで構成されている。
【0061】
図12に示すように、ストッパ60cは、板状部60aから板厚方向に突出する突起で構成されている。図3に示すように、ストッパ60cは、ストラップ2がケース10に取り付けられた状態で、ケース10の排気用開口部20の周縁部に当接してストラップ2が柱状部21,22,23の周りに回転するのを阻止するためのものである。板状部60aには、ストラップ2の着脱方向を示す「着」の文字と、「脱」の文字と、三角形の矢印とが示されている。これにより、使用者がストラップ2の着脱作業を行いやすくなる。
【0062】
ベルト部材61は、帯状の部材からなり、板状部60aの挿入孔60dに挿通された状態で長手方向の両端部が面ファスナー等によって固着されて輪を形作っている。面ファスナーの代わりにボタン等を設けてもよい。
【0063】
尚、ストラップ2の構造は上記した構造に限られるものではなく、ベルト部材61の代わりに、紐や鎖等を用いてもよいし、使用者のベルト等に引っ掛けることが可能なフックを有する構造であってもよい。
【0064】
次に、上記のように構成された薬剤拡散装置1の動作について説明する。スイッチ51をONにするとモーター46に電池5から電流が供給されてモーター46が作動する。モーター46の作動によりファン47が回転する。図9に矢印で示すように、ファン47の回転によりケース10の外部の空気が吸気用開口部14から薬剤収容部42に取り込まれる。このとき、吸気用開口部14は、ケース10の前壁部10eの広い範囲に形成されているので、空気をスムーズに取り込むことができる。
【0065】
薬剤収容部42に取り込まれた空気は、薬剤保持体3を通過して薬剤を含み、区画壁40の貫通孔43を通って送風機収容部41に達する。送風機収容部41の空気は、排気用開口部20からケース10の外部に排出される。この排気用開口部20は、ケース10の左側壁部10cから上壁部10b、右側壁部10dに亘って広い範囲に形成されているので、空気をスムーズに排出することができる。
【0066】
このように吸気用開口部14及び排気用開口部20をケース10の広い範囲に形成したことで、空気の流れをスムーズにして損失を低減できる。その結果、モーター46やファン47をそれほど大型化しなくても十分に高い能力を得ることができるので、薬剤拡散装置1の小型化が可能になる。
【0067】
薬剤を含む空気は、排気用開口部20から排出される際、上側、左側及び右側柱状部21,22,23に当たるので、広い範囲に拡散することになる。
【0068】
上記ストラップ2を取り付ける際には、上側、左側及び右側柱状部21,22,23のいずれか1つに取り付けることができる。例えば、上側柱状部21に取り付ける場合には、ストラップ2のフック部材60を上側柱状部21に引っ掛けて係合させる。すなわち、図11に示すように、フック部材60におけるフック形状部60bの案内部60iと、板状部60aの他端部60gとの間に上側柱状部21を位置付けた後、上側柱状部21を径方向に相対的に移動させてフック形状部60bの基端側に入れる。ストラップ2をケース10に対して移動させる際には、フック部材60に示されている「着」の方向に移動させればよい。上側柱状部21をフック形状部60bの基端側に入れる際、フック形状部60bが板状部60aの他縁部60gから離れる方向に弾性変形して上側柱状部21がフック形状部60の基端側に入り込むのを許容する。
【0069】
ストラップ2を上側柱状部21に取り付ける際、上側柱状部21の周りは排気用開口部20内部の空間であるため、この空間を利用して容易に取り付けることが可能になる。
【0070】
図3に示すように、ストラップ2を取り付けると、ストッパ60cがケース10の排気用開口部20の周縁部に当接し、ストラップ2が上側柱状部21の周りに回転するのが阻止される。これにより、上側柱状部12がフック部材60の先端側から抜けるのを抑制できる。
【0071】
ストラップ2を例えば使用者のベルトに装着した場合には、排気用開口部20から排気される薬剤を含む空気は、上側柱状部21に当たって拡散するとともに、ストラップ2のフック部材60にも当たって拡散する。これにより、薬剤を広い範囲に拡散させることができる。
【0072】
また、ストラップ2を例えば使用者のベルトに装着した場合には、ケース10の後壁部10fが使用者の体に接触することになる。そして、使用者が歩行等すると、ケース10が上側柱状部21の軸線周りに揺れ動くことになる。このとき、ストラップ2のフック形状部60bは、排気用開口部20に挿入されて排気用開口部20の内面に当接していて、ケース10がストラップ2に対し該ケース10の前後方向(図3の矢印Y方向)、即ち、使用者の体から離れる方向に揺動するのが規制されている。よって、ケース10が使用者の体から離れて体に当たるように動くのを抑制でき、携帯時の違和感を感じ難くできる。
【0073】
薬剤拡散装置1の携帯時には、薬剤拡散装置1が何かに当たったり、落下したりすることがある。これらの場合に、吸気用開口部14の周縁部は棒状部15によって補強され、さらに、排気孔開口部20の周縁部は柱状部21,22,23によって補強されているので、ケース10の強度は十分に確保されており、よって、ケース10の変形や破損を抑制できる。
【0074】
また、ストラップ2を取り外す際には、上側柱状部21をフック形状部60bから抜けばよい。そして、ストラップ2は、例えば、左側柱状部22や右側柱状部23にも取り付けることができる。
【0075】
ストラップ2を取り外した状態で使用する場合には、薬剤拡散装置1を机の上等に置けばよい。このとき、上側、左側及び右側柱状部21,22,23は、排気用開口部20内に位置していて外部から見えにくくなっている。つまり、この実施形態では、ストラップ2を取り付ける構造をシンプルな外観で実現しており、意匠性に優れている。
【0076】
以上説明したように、この実施形態にかかる薬剤拡散装置1によれば、ケース10における吸気用開口部14の周縁部に棒状部15を設け、排気用開口部20の周縁部に柱状部21,22,23を設けたので、ケース10に大きな吸気用開口部14及び排気用開口部20を形成して高い能力を得る場合にケース10の変形や破損を抑制できる。また、排気用開口部20の周縁部に設けた柱状部21,22,23にストラップ2を取り付けるようにしたことで、ストラップ2の取り付け作業性を良好にでき、しかも、専用のストラップ取付部を不要にして薬剤拡散装置1の更なるコンパクト化を図ることができ、携帯性を良好にすることができる。
【0077】
また、柱状部21,22,23を、ケース10の排気用開口部20の周縁部における互いに離れた部位同士を連結するように延びる形状としたので、ストラップ2を取り付ける際に、ケース2の排気用開口部20を有効に利用して容易に取り付けることができる。
【0078】
また、柱状部21,22,23を排気用開口部20の周縁部に設けたことで、薬剤を含んだ空気を柱状部21,22,23及びストラップ2に当てることができる。これにより、薬剤を広い範囲に拡散させることができる。
【0079】
また、ケース10が使用者の体から離れる方向に移動するのを規制するようにしたので、例えば使用者が歩く際に、ケース10が体から離れて体に当たるように動くのを抑制でき、携帯時の違和感を感じ難くできる。
【0080】
また、柱状部21,22,23を互いに間隔をあけて設けたので、ケース10の強度をより一層高めることができ、しかも、ストラップ2の取付位置の変更が可能となって利便性を向上できる。
【0081】
尚、上記実施形態では、ケース10に棒状部15を設けているが、棒状部15を省略することもできる。
【0082】
また、上記実施形態では、ケース10の棒状部15が上下方向に延びる形状となっているが、これに限らず、例えば、ケース10の左右方向に延びる形状であってもよいし、斜めに延びる形状であってもよい。また、棒状部15を波形に形成してもよいし、円を描くように形成してもよい。
【0083】
また、図13に示す変形例のように、吸気用開口部14の周縁部には、補強用のグリル部70を設けてもよい。この場合、ストラップ2のフック部材60の形状をグリル部70に引っ掛けることが可能な形状とすればよい。
【0084】
また、上記実施形態では、上側、左側及び右側柱状部21,22,23にストラップ2を取り付けることができるようにしたが、これに限らず、棒状部15にストラップ2を取り付けるようにしてもよい。この場合、ストラップ2のフック部材60の形状を棒状部15に対応する形状となるようにすればよい。この場合、柱状部21,22,23を省略してもよい。
【0085】
また、薬剤拡散装置1の薬剤保持体3には、害虫忌避剤以外にも、芳香剤、消臭剤、殺菌剤、防ダニ剤、殺虫剤等を含浸させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上説明したように、本発明にかかる薬剤拡散装置は、例えば防虫用として使用できる。
【符号の説明】
【0087】
1 薬剤拡散装置
2 ストラップ
3 薬剤保持体
4 送風機
10 ケース
14 吸気用開口部
15 棒状部(補強部)
20 排気用開口部
21 上側柱状部(補強部)
22 左側柱状部(補強部)
23 右側柱状部(補強部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を保持した薬剤保持体と、
上記薬剤保持体に空気を送るための送風機と、
上記薬剤保持体及び上記送風機を収容するケースとを備え、
上記ケースには、吸気用開口部及び排気用開口部が形成され、
上記送風機の作動によって上記ケースの外部の空気を上記吸気用開口部から該ケースの内部に吸入して上記薬剤保持体に送風した後、上記排気用開口部から該ケースの外部へ排出して上記薬剤を空気中に拡散させるように構成された携帯型薬剤拡散装置において、
上記ケースにおける吸気用開口部と排気用開口部との少なくとも一方の周縁部には、該ケースにおける開口部の周縁部を補強するための補強部が設けられ、
上記補強部には、ストラップが取り付けられることを特徴とする携帯型薬剤拡散装置。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯型薬剤拡散装置において、
補強部は、ケースの開口部の周縁部における互いに離れた部位同士を連結するように延びる柱状をなしていることを特徴とする携帯型薬剤拡散装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の携帯型薬剤拡散装置において、
補強部は、ケースにおける排気用開口部の周縁部に設けられていることを特徴とする携帯型薬剤拡散装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の携帯型薬剤拡散装置において、
使用者に取り付け可能に構成されたストラップを備えており、
上記ストラップには、ケースが使用者の体から離れる方向に移動するのを規制する規制部が設けられていることを特徴とする携帯型薬剤拡散装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の携帯型薬剤拡散装置において、
補強部は、互いに間隔をあけて複数設けられていることを特徴とする携帯型薬剤拡散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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