説明

携帯情報端末

【課題】 温度変化などの影響による誤動作を抑制し、方向入力時の操作性を向上させた携帯情報端末を提供する。
【解決手段】 隣接して配置された圧力センサ34と、接点式スイッチからなる方向キー31と、ポインタを画面表示するメインディスプレイ11と、圧力センサ34及び接点式スイッチの出力に基づいて、ポインタ移動信号を生成するポインタ制御部110により構成される。ポインタ制御部110は、短押しモード時における接点式スイッチの検出結果に基づいて、押圧操作の開始を検知し、当該押圧操作の開始時にポインタ移動信号を生成する短押し制御部111と、押圧操作が一定時間継続していると判断した場合に、短押しモードを長押しモードに切り替えるモード切替部113と、長押しモード時における圧力センサ34の検出結果に基づいて、押圧力に応じたポインタ移動信号を繰返し生成する長押し制御部112を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯情報端末に係り、さらに詳しくは、圧力センサ及び接点式スイッチの出力に基づいてポインタを移動させる携帯情報端末の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、円環状のパッド面に指を接触させた際の押圧力の大きさ及びパッド面の傾きを検出する圧力センサを用いて、画面のスクロール、マウスポインタやカーソルの移動、フォーカスの移動、ボリューム調整などを行う技術が提案されている。圧力センサは、押圧操作の押圧力に応じて電極間隔が変化する複数のコンデンサを用いてユーザによる操作を検知する静電容量方式の入力装置であり、各コンデンサの静電容量に基づいて、押圧力の大きさ及びパッド面の傾きを検出する制御回路を備えて構成される。
【0003】
この様な圧力センサを携帯電話機やPDA(Personal Digital Assistants)などの携帯情報端末に搭載すれば、操作のバリエーションを増やすことができる。すなわち、端末のCPUが圧力センサから押圧力の大きさ及びパッド面の傾きを一定時間ごとに読み出すことにより、パッド面に指を接触させた際の押圧力、パッド面の傾き及びその変化量に応じた入力処理を行わせることができる。例えば、上方向の方向入力のための操作位置として予め定められているパッド面内の部位を押し込むことにより、画面を上方向にスクロールさせ、或いは、選択候補を示すフォーカスを上方向に移動させることができる。
【0004】
通常、押圧力は、非操作時の静電容量と押圧操作時の静電容量との差分値から求められる。この様にして求められた押圧力が閾値を越えた場合に、画面のスクロールやフォーカスの移動処理が行われる。なお、特許文献1及び2には、画面をスクロールさせる際のスクロール速度やカーソルを移動させる際の移動速度を押圧力に応じて調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4079656号公報
【特許文献2】特許第3690657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した圧力センサを用いた入力処理では、温度変化などの影響によりコンデンサの静電容量が変動し、ユーザの意に反して方向入力が行われなかったり、意図しない方向入力が行われてしまう場合があった。一方、パッド面の押込みによりオンし、方向入力信号を出力する接点式スイッチからなる方向キーの場合、温度変化などの影響を受けにくく、ユーザの意に反して方向入力が行われないということが少ない。そこで、その様な方向キーによる入力処理と圧力センサによる入力処理とを組み合わせることによって、方向入力時における操作性を向上させることが考えられる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、温度変化などの影響による誤動作を抑制し、ポインタ移動時の操作性を向上させることができる携帯情報端末を提供することを目的としている。特に、押圧力に応じたポインタの移動を可能としつつ、誤動作を抑制することができる携帯情報端末を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明による携帯情報端末は、隣接して配置された圧力センサ及び接点式スイッチと、ポインタを画面表示する表示手段と、上記圧力センサ及び上記接点式スイッチの出力に基づいて、上記ポインタを移動させるためのポインタ移動信号を生成するポインタ制御手段とを備え、上記圧力センサが、押圧操作に応じて電極間隔が変化するコンデンサと、上記コンデンサの静電容量に基づいて、上記押圧操作の押圧力を検出する押圧力検出手段とを有し、上記ポインタ制御手段が、短押しモード時における上記接点式スイッチの検出結果に基づいて、上記押圧操作の開始を検知し、当該押圧操作の開始時に上記ポインタ移動信号を生成する短押し制御手段と、上記押圧操作が一定時間継続していると判断した場合に、短押しモードを長押しモードに切り替えるモード切替手段と、長押しモード時における上記圧力センサの検出結果に基づいて、上記押圧力に応じた上記ポインタ移動信号を繰返し生成する長押し制御手段とを有するように構成される。
【0009】
この様な構成によれば、接点式スイッチの検出結果に基づいて押圧操作の開始を検知してポインタ移動信号が生成されるので、押圧力に応じたポインタの移動を可能とする構成でありながら、温度変化などの影響による誤動作を抑制することができる。
【0010】
第2の本発明による携帯情報端末は、上記構成に加えて、上記モード切替手段が、上記接点式スイッチが上記押圧操作の開始を検知してから終了を検知するまでに上記一定時間が経過した場合に、短押しモードを長押しモードに切り替えるように構成される。この様な構成によれば、接点式スイッチを押し続けるだけで、押圧力に応じたポインタ移動に自動的に移行させることができる。
【0011】
第3の本発明による携帯情報端末は、上記構成に加えて、上記モード切替手段が、上記接点式スイッチが上記押圧操作の開始を検知した後、上記圧力センサにより検出される上記押圧力が第1閾値を下回ることなく上記一定時間が経過した場合に、短押しモードを長押しモードに切り替え、第1閾値が、上記接点式スイッチが上記押圧操作の終了を検知する際の押圧力よりも小さいように構成される。この様な構成によれば、接点式スイッチが押圧操作の終了を検知する際の押圧力よりも小さな押圧力で圧力センサを押し続けることにより、押圧力に応じたポインタ移動に移行させることができる。
【0012】
第4の本発明による携帯情報端末は、上記構成に加えて、上記モード切替手段が、上記押圧力を上記接点式スイッチが上記押圧操作の開始を検知する際の押圧力よりも小さな第2閾値と比較し、この比較結果に基づいて長押しモードを短押しモードに切り替えるように構成される。
【0013】
この様な構成によれば、圧力センサにより検出される押圧力と、接点式スイッチが押圧操作の開始を検知する際の押圧力よりも小さな第2閾値との比較結果に基づいて、長押しモードが短押しモードに切り替えられるので、接点式スイッチが押圧操作の終了を検知するタイミングで短押しモードに復帰させる場合に比べて、第2閾値から押圧力の上限値までの範囲を有効に使ってポインタの移動速度を調整させることができる。
【0014】
第5の本発明による携帯情報端末は、上記構成に加えて、2以上の選択項目からなる項目列の画面表示を制御する項目列表示手段を備え、上記項目列が、上記選択項目のいずれか1つが選択候補として表示され、上記選択候補が、上記ポインタ移動信号に基づいて、上記選択項目間で移動するように構成される。この様な構成によれば、押圧力に応じたポインタ移動を可能としつつ、温度変化などの影響による誤動作が抑制されるので、選択候補を選択項目間で移動させる際の操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明による携帯情報端末によれば、接点式スイッチの検出結果に基づいて押圧操作の開始を検知してポインタ移動信号が生成されるので、押圧力に応じたポインタの移動を可能とする構成でありながら、温度変化などの影響による誤動作を抑制することができる。従って、温度変化などの影響による誤動作を抑制し、ポインタ移動時の操作性を向上させた携帯情報端末を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1による携帯情報端末の概略構成の一例を示した図であり、携帯情報端末の一例として折り畳み式の携帯電話機100が示されている。
【図2】図1の携帯電話機100の要部における構成例を示した平面図であり、操作筐体30を構成するキートップシート40が示されている。
【図3】図1の携帯電話機100の要部における構成例を示した図であり、操作筐体30内のメイン基板36上に配設された圧力センサ34が示されている。
【図4】図1の携帯電話機100の要部における構成例を示した断面図であり、A−A線による切断面の様子が示されている。
【図5】図3の圧力センサ34における感圧パッド部34aを模式的に示した説明図である。
【図6】図1の携帯電話機100の動作の一例を模式的に示した説明図であり、キートップシート40のキートップ部41及び42が示されている。
【図7】図1の携帯電話機100の動作の一例を模式的に示した説明図であり、ダウンイベントの発生時から押込限界時までの操作筐体30内部の様子が示されている。
【図8】図1の携帯電話機100の構成例を示したブロック図であり、携帯電話機100内部の機能構成の一例が示されている。
【図9】図8の携帯電話機100の要部における構成例を示したブロック図であり、操作入力部101内の機能構成の一例が示されている。
【図10】図8の携帯電話機100の動作の一例を示した図であり、複数の選択項目64からなる項目列を表示するためのリスト画面60が示されている。
【図11】図8の携帯電話機100の動作の一例を示した図であり、方向キー31の短押し時における押圧力の変化が示されている。
【図12】図8の携帯電話機100の動作の一例を示した図であり、方向キー31の長押し時における押圧力の変化が示されている。
【図13】図8の携帯電話機100の動作の一例を示した図であり、方向キー31の押圧操作時におけるフォーカス65の移動の様子が示されている。
【図14】図8の携帯電話機100における方向キー31の押圧操作時の動作の一例を示したフローチャートである。
【図15】本発明の実施の形態2による携帯情報端末の構成例を示したブロック図であり、操作入力部101の他の例が示されている。
【図16】図15の携帯情報端末の動作の他の一例を示した図であり、方向キー31の長押し時における押圧力の変化が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施の形態1.
まず、本発明の実施の形態1による携帯情報端末が前提とする圧力センサ及び接点式スイッチの構成について、図1〜図7を用いて以下に説明する。
【0018】
図1(a)及び(b)は、本発明の実施の形態1による携帯情報端末の概略構成の一例を示した図であり、携帯情報端末の一例として折り畳み式の携帯電話機100が示されている。図1(a)には、オープン状態の携帯電話機100を正面から見た様子が示され、図1(b)には、クローズ状態の携帯電話機100が示されている。
【0019】
携帯電話機100は、上下方向に長い薄型の表示筐体10及び操作筐体30と、これらの筐体を連結するヒンジ部20とからなる携帯情報端末であり、両筐体を展開させたオープン状態、折り畳んでコンパクトに収納させたクローズ状態を遷移させることができる。
【0020】
表示筐体10の前面には、メインディスプレイ11及び受話用レシーバ12が設けられ、背面には、サブディスプレイ13が設けられている。受話用レシーバ12は、通話時に受信した音声信号を再生するための音声出力装置であり、表示筐体10のヒンジ部20とは反対側の端部に配置されている。
【0021】
メインディスプレイ11は、表示画面を有する表示装置であり、例えば、液晶パネルやバックライトによって構成される。サブディスプレイ13は、メインディスプレイ11よりも小さな表示画面を有する表示装置である。
【0022】
ヒンジ部20は、表示筐体10及び操作筐体30を連結する連結機構である。操作筐体30の前面には、4つの方向キー31、センターキー32、テンキー33、ガイドキー33aなどの複数の操作キーと、圧力センサ34及び送話用マイクロホン35が設けられている。送話用マイクロホン35は、通話時に音声を入力するための音声入力装置であり、操作筐体30のヒンジ部20とは反対側の端部に配置されている。
【0023】
各方向キー31は、センターキー32を挟んで当該センターキー32の上下及び左右にそれぞれ配置された操作キーであり、押圧操作により、上下左右の位置に応じた方向入力を行うことができる。例えば、方向キー31として、上キー、下キー、左キー及び右キーを備え、上キー、センターキー32及び下キーが上下方向の直線上に配置され、左キー、センターキー32及び右キーが当該直線と交差する左右方向の直線上に配置される。
【0024】
方向キー31、センターキー32、テンキー33及びガイドキー33aは、いずれも接点間の導通又は遮断によりオン又はオフする接点式スイッチからなり、それぞれ押圧操作時に所定のキー割込信号を生成する。方向キー31は、圧力センサ34と共通のパッド面を押し込むことによってオンし、キー割込信号として、押圧部位に応じた方向入力信号が出力される。
【0025】
圧力センサ34は、センターキー32を中心とする円環状の感圧領域を有する入力装置であり、押圧操作に応じて電極間隔が変化するコンデンサを用いてユーザ操作を検知し、所定のセンサ割込信号を生成する。この圧力センサ34により、パッド面に指を接触させた際の押圧力の大きさやパッド面の傾きに応じた入力処理を行わせることができる。
【0026】
4つの方向キー31は、圧力センサ34を構成するコンデンサの近傍に配置された操作キーであり、当該コンデンサは、方向キー31とセンターキー32との間に配置される。つまり、各方向キー31と圧力センサ34とは、間に他の操作キーを挟むことなく、隣接して配置され、共通の押圧操作によって操作される入力デバイスである。
【0027】
この例では、各方向キー31と圧力センサ34とが、パッド面上における押圧部位に応じて異なる方向入力を行うことができる1つの多入力デバイスを構成しており、ヒンジ部20とテンキー33との間に配置されている。
【0028】
<キートップシート>
図2(a)及び(b)は、図1の携帯電話機100の要部における構成例を示した平面図であり、操作筐体30を構成するキートップシート40が示されている。図2(a)には、キートップシート40の表面が示され、図2(b)には、裏面の様子が示されている。キートップシート40は、可撓性を有するフィルム状のカバー部材であり、操作筐体30の前面に配置される。
【0029】
このキートップシート40には、4つの方向キー31及び圧力センサ34に共通のキートップ部41と、センターキー32の位置を示すキートップ部42と、各テンキー33の位置を示す複数のキートップ部43と、マイク孔44が形成されている。
【0030】
キートップ部41は、円形のキートップ部42を中心とする円環状のパッドである。また、各キートップ部43は、6行3列のマトリクス状にそれぞれ配置された矩形状のパッドである。キートップ部41〜43の裏面には、操作キーを構成する接点式スイッチを押し込むための押し子41a,42a,43aや、圧力センサ34を構成するコンデンサを押し込むための押し子41bが設けられている。
【0031】
すなわち、キートップ部41の裏面には、各方向キー31を押し込むための4つの押し子41aと、圧力センサ34のコンデンサを押し込むための円環状の押し子41bとが形成されている。押し子41bは、キートップ部41と同心に配置されている。押し子41aは、キートップ部41の外側の周縁部に配置され、押し子41bは、内側の周縁部に配置されている。
【0032】
また、キートップ部42の裏面には、センターキー32を押し込むための押し子42aが形成され、キートップ部43の裏面には、テンキー33を押し込むための押し子43aが形成されている。キートップシート40は、その上端に形成された切り欠き部45にヒンジ部20を挿入した状態で操作筐体30に取り付けられる。
【0033】
<圧力センサ>
図3は、図1の携帯電話機100の要部における構成例を示した図であり、操作筐体30内のメイン基板36上に配設された圧力センサ34が示されている。メイン基板36は、圧力センサ34、操作キー31,33を構成する接点式スイッチ、CPUなどの回路素子が配設される配線基板である。
【0034】
圧力センサ34は、感圧パッド部34a、センターキー32及びセンサ制御回路34dがフレキシブル基板37上に形成されたセンサモジュールである。感圧パッド部34aは、センターキー32を挟んで上下及び左右にそれぞれ配置された4つのコンデンサ34bと、円環状のコンデンサ34cとからなるコンデンサユニットである。
【0035】
コンデンサ34b,34cは、いずれも互いに対向させて配置された平板状の2つの電極からなる容量素子であり、押圧操作時の押圧力に応じて電極間隔が変化する。各コンデンサ34bは、コンデンサ34cを取り囲むように、コンデンサ34cを挟んで上下及び左右にそれぞれ配置されている。コンデンサ34bの電極は、扇形形状からなる。
【0036】
コンデンサ34cは、センターキー32を中心とする環状形状からなり、このセンターキー32とコンデンサ34bとの間に配置されている。センサ制御回路34dは、コンデンサ34b,34cの静電容量に基づいて、コンデンサごとの押圧力を検出し、所定のセンサ割込信号を生成する。上記押圧力は、キートップ部41を介して感圧パッド部34aに加えられる圧力である。
【0037】
コンデンサ34cは、押圧力の大きさを判断するのに用いられ、コンデンサ34bは、押圧部位に応じた方向入力に用いられる。また、押圧操作の検知には、コンデンサ34b,34cのいずれを用いることもできるが、ここでは、コンデンサ34cを用いるものとする。
【0038】
<A−A断面>
図4は、図1の携帯電話機100の要部における構成例を示した断面図であり、A−A線による切断面の様子が示されている。操作筐体30内のメイン基板36は、キートップシート40の裏面に対向させて配置されている。
【0039】
キートップシート40には、前面側にキートップ部41,42が形成され、背面側に押し子41a,41b,42aが形成されている。押し子41aは、メイン基板36上に配設された方向キー31に対向する位置に形成された突出部である。
【0040】
方向キー31は、ドーム形状の電極板31aを電極31bに接触させるメタルドーム式の接点スイッチにより構成されている。キートップ部41を押し込むと、押し子41aが電極板31aと当接して当該電極板31aが弾性変形し、電極板31aが電極31bに接触することにより接点間が導通してオン状態となる。
【0041】
押し子41bは、コンデンサ34b及び34cからなる感圧パッド部34aに対向する位置に形成された突出部である。感圧パッド部34aは、センターキー32と方向キー31との間に配置されている。コンデンサ34bは、互いに離間させて配置された2つの電極板53からなり、押圧操作時に電極板53間の距離が変化する。コンデンサ34cは、互いに離間させて配置された2つの電極板52からなり、押圧操作時に電極板52間の距離が変化する。
【0042】
この例では、コンデンサ34bの各電極板52とコンデンサ34cの各電極板53とが、それぞれ弾性部材54によってメイン基板36と平行に保持されている。また、コンデンサ34b,34cの前面側には、弾性部材54を介して円環状の金属板51が固着されている。
【0043】
金属板51は、押し子41bを当接させる感圧部であり、電極板52,53全体を覆っている。キートップ部41を押し込むと、押し子41aが電極板31aに接触するよりも前に、押し子41bが金属板51と当接し、弾性部材54の変形により電極板52間の距離や電極板53間の距離が変化する。
【0044】
押し子42aは、感圧パッド部34aの中心部に配設されたセンターキー32に対向する位置に形成された突出部である。センターキー32は、ドーム形状の電極板32aを電極32bに接触させるメタルドーム式の接点スイッチにより構成されている。キートップ部42を押し込んだ際に、押し子42aが弾性部材54に当接し、弾性部材54を介して電極板32aを弾性変形させる。そして、センターキー32は、電極板32aが電極32bに接触することにより接点間が導通してオン状態となる。
【0045】
<感圧パッド部>
図5は、図3の圧力センサ34における感圧パッド部34aを模式的に示した説明図である。感圧パッド部34aは、センターキー32を挟んで上下左右にそれぞれ配置された4つのコンデンサ34bと、センターキー32を中心として、コンデンサ34bよりも内側に配置されたコンデンサ34cとによって構成される。
【0046】
この例では、左右方向をX方向、上下方向をY方向、押圧操作時の押込み方向をZ方向とし、4つのコンデンサ34bが、X(+)コンデンサ、X(−)コンデンサ、Y(+)コンデンサ及びY(−)コンデンサとして用いられ、コンデンサ34cが、Zコンデンサとして用いられる。
【0047】
左キー、センターキー32及び右キーは、X方向に配列され、上キー、センターキー32及び下キーは、Y方向に配列されている。X(+)コンデンサ及びX(−)コンデンサは、金属板51のX方向の傾きを検出するためのコンデンサであり、センターキー32を中心としてX方向に配列されている。X方向の傾きは、X(+)コンデンサ及びX(−)コンデンサの静電容量を一定時間ごとに検出し、非操作時における静電容量との差分値からコンデンサごとの押圧力を求めることによって決定される。
【0048】
(+)コンデンサ及びY(−)コンデンサは、金属板51のY方向の傾きを検出するためのコンデンサであり、センターキー32を中心としてY方向に配列されている。Y方向の傾きは、Y(+)コンデンサ及びY(−)コンデンサの静電容量を一定時間ごとに検出し、非操作時における静電容量との差分値からコンデンサごとの押圧力を求めることによって決定される。
【0049】
Zコンデンサは、金属板51がZ方向に押し込まれた際の押圧力の大きさを検出するためのコンデンサであり、センターキー32を中心として、当該センターキー32とコンデンサ34bとの間に配置されている。
【0050】
圧力センサ34は、X方向及びY方向の傾きとZ方向の押圧力とから、これらをX,Y,Z成分とするベクトル量(X,Y,Z)を求めて出力することができる。また、X方向及びY方向の傾きの変化量から、単位時間当たりの回転角を求めて出力することもできる。
【0051】
図6及び図7は、図1の携帯電話機100の動作の一例を模式的に示した説明図であり、感圧パッド部34a周辺の様子が示されている。図6(a)には、キートップシート40のキートップ部41及び42が示され、図6(b)には、非操作時の操作筐体30内部の様子が示されている。
【0052】
キートップ部41は、4つの方向キー31と、感圧パッド部34aのコンデンサ34b及び34cとに共通のパッドであり、指を接触させた際に、0°から360°までの範囲でどの方向がどれくらいの強さ(押圧力)で押し込まれたかを検知することができる。キートップ部41の非操作時には、押し子41a及び方向キー31間と、押し子41b及び感圧パッド部34a間とにそれぞれ間隙が形成されている。
【0053】
この携帯電話機100では、キートップ部41のパッド面に指を接触させた際、押圧力が一定値を越えた場合に、センサ割込み信号が出力され、押圧操作が検知される。ここで、パッド面に指を接触させる動作をダウンイベントと呼び、パッド面から指を離間させる動作をアップイベントと呼ぶことにすると、押圧力が一定値を越えることによって指のダウンイベントが検知されることになる。
【0054】
図7(a)には、指によるダウンイベントの発生時の操作筐体30内部の様子が示され、図7(b)には、キートップ部41をさらに押し込んだ状態が示されている。図7(c)には、押込限界時の操作筐体30内部の様子が示されている。
【0055】
キートップ部41に指を接触させた際、圧力センサ34により検出される押圧力が一定値よりも小さければ、方向キー31の接点スイッチはオフ状態のままである。例えば、キートップ部41の左キー付近に指を接触させてキートップ部41を押し込んだ場合、その押圧力が小さい状態(ダウンイベント発生時)では、押し子41bのみが感圧パッド部34aと当接し、押し子41a及び左キー間には間隙が形成されたままとなる。
【0056】
キートップ部41をさらに押し込み、押圧力が一定値を越えると、押し子41aも方向キー31、すなわち、左キーと当接して当該左キーの接点スイッチがオンすることにより、左キーの操作が検知される。
【0057】
つまり、方向キー31を押圧操作する場合、方向キー31よりも前に圧力センサ34において押圧操作が検知され、押圧力や操作位置が出力される。そして、キートップ部41が一定値を越えてさらに押し込まれた場合には、方向キー31の操作が検知される。キートップ部41を押し込む際の押圧力を増大させれば、方向キー31や感圧パッド部34aの弾性変形量が大きくなり、やがて押込限界に達することとなる。
【0058】
次に、共通の押圧操作によって操作される圧力センサ34及び方向キー31の出力を利用してポインタを移動させる構成について、図8〜図14を用いて以下に説明する。
【0059】
図8は、図1の携帯電話機100の構成例を示したブロック図であり、携帯電話機100内部の機能構成の一例が示されている。この携帯電話機100は、メインディスプレイ11、操作入力部101、アプリケーション記憶部102、項目列表示部103、文書ファイル記憶部104及び文章表示部105により構成される。
【0060】
操作入力部101は、ユーザによる操作を検知し、所定の入力処理を行う入力処理装置であり、メインディスプレイ11上に画面表示されるポインタを移動させるためのポインタ移動信号を生成して、項目列表示部103及び文章表示部105へ出力する。上記ポインタは、選択候補を示すフォーカスやカーソルの画面内における位置を規定する位置情報である。
【0061】
項目列表示部103は、アプリケーション記憶部102から読み出したアプリケーションプログラムに基づいて動作し、複数の選択項目からなる項目列の画面表示を制御する。選択項目とは、様々な機能が割り当てられ、或いは、情報が関連付けされる選択可能な表示オブジェクトのことであり、所定の操作により、選択項目に割り当てられた機能や関連付けされた情報を選択することができる。
【0062】
上記項目列は、上下方向又は左右方向に配列された複数の選択項目によって構成され、選択項目のいずれか1つが選択候補として表示される。具体的には、選択項目にフォーカスを当てることによって選択候補が表示される。フォーカスが当てられた選択項目は、他の選択項目とは表示態様を異ならせて表示される。例えば、フォーカス中の選択項目は、反転表示され、或いは、他の選択項目とは異なる表示色で表示される。
【0063】
選択候補は、操作入力部101からのポインタ移動信号に基づいて、選択項目間で移動する。選択候補を隣の選択項目に変更する際には、フォーカスの移動を滑らかに見せるために、選択項目間に擬似フォーカスが当てられる。この擬似フォーカスは、各選択項目が矩形形状の表示枠を用いて表示され、互いに隣接して配置されている場合に、互いに隣接する2つの選択項目に表示枠がまたがって表示される表示オブジェクトである。
【0064】
文章表示部105は、アプリケーション記憶部102から読み出したアプリケーションプログラムに基づいて動作し、文書ファイル記憶部104から文書ファイルを読み出して、行方向及び列方向に整列配置された複数の文字からなる文章の画面表示を制御する。
【0065】
文書ファイルの編集中には、文章中の文字のいずれか1つが、選択候補として表示される。具体的には、文字の近傍にカーソルを配置することによって選択候補が表示される。選択候補は、操作入力部101からのポインタ移動信号に基づいて、文字間で移動する。
【0066】
図9は、図8の携帯電話機100の要部における構成例を示したブロック図であり、操作入力部101内の機能構成の一例が示されている。この操作入力部101は、方向キー31、圧力センサ34及びポインタ制御部110により構成される。
【0067】
ポインタ制御部110は、短押し制御部111、長押し制御部112及びモード切替部113により構成され、方向キー31及び圧力センサ34の出力に基づいて、ポインタ移動信号を生成する。
【0068】
短押し制御部111は、方向キー31の検出結果に基づいて、押圧操作の開始を検知し、当該押圧操作の開始時に所定のポインタ移動信号を生成する。一方、長押し制御部112は、圧力センサ34の検出結果に基づいて、押圧力に応じたポインタ移動信号を生成する。具体的には、圧力センサ34からのセンサ割込信号に基づいて、ポインタ移動信号が繰返し生成される。
【0069】
例えば、ポインタ移動信号は、圧力センサ34によって検出される押圧力の大きさに対応付けられたデジタルデータが、ポインタ移動信号として一定時間ごとに生成される。或いは、ポインタ移動信号は、押圧力の大きさに応じて、単位時間当たりのパルス数が異なる信号として生成される。或いは、ポインタ移動信号は、押圧力に応じてパルス幅又は信号強度が異なる信号として生成される。
【0070】
モード切替部113は、操作開始検出部114、短押し終了検出部115、タイマー116、短長切替判定部117、終了閾値記憶部118及び長短切替判定部119からなり、短押し制御部111又は長押し制御部112のいずれか一方のポインタ移動信号を出力する。
【0071】
操作開始検出部114は、方向キー31からのキー割込信号に基づいて、キートップ部41のパッド面に対する押圧操作の開始を検出し、その検出結果を短長切替判定部117へ出力する。押圧操作の開始は、例えば、方向キー31がオンすることによって検知される。
【0072】
短押し終了検出部115は、方向キー31からのキー割込信号に基づいて、短押し操作の終了を検出し、その検出結果を短長切替判定部117へ出力する。短押し操作の終了は、方向キー31がオフ状態に遷移することによって検知される。
【0073】
短長切替判定部117は、操作開始検出部114及び短押し終了検出部115の検出結果に基づいて、押圧操作が一定時間継続していると判断した場合に、短押しモードを長押しモードに切り替える。具体的には、方向キー31がオンした後、当該方向キー31がオフすることなく一定時間Bが経過したことをタイマー116からの時間情報に基づいて検知した場合に、動作モードが短押しモードから長押しモードに切り替えられる。つまり、ここでは、方向キー31を一定時間B以上押し続ける操作を長押しと呼び、一定時間Bが経過するまでにオフさせる操作を短押しと呼んでいる。
【0074】
長短切替判定部119は、圧力センサ34によって検出される押圧力を終了閾値Thと比較し、その比較結果に基づいて、長押しモードを短押しモードに切り替える。具体的には、押圧力が終了閾値Thを下回れば、キートップ部41のパッド面に対する押圧操作が終了した判断し、動作モードが長押しモードから短押しモードに切り替えられる。終了閾値記憶部118には、終了閾値Thとして、方向キー31がオンする際の押圧力(一定値P)よりも小さな一定値が保持されている。
【0075】
<リスト画面>
図10は、図8の携帯電話機100の動作の一例を示した図であり、上下方向に配列された複数の選択項目64からなる項目列を表示するためのリスト画面60が示されている。リスト画面60は、上下方向又は左右方向に整列された複数の選択項目64からなる項目列の一部又は全部を表示し、ユーザに所望の選択項目を選択させるための入力画面であり、メインディスプレイ11上に表示される。
【0076】
このリスト画面60は、上下方向に配列された4つの表示領域、すなわち、ピクト表示領域61、タイトル表示領域62、項目列表示領域63及びキー割当表示領域66からなる。ピクト表示領域61は、電波の受信状態や電池残量を示すピクトグラム(絵文字)を表示するための横長の矩形領域である。キー割当表示領域66は、方向キー31やセンターキー32などの操作キーに対する機能割当てを所定のアイコンを用いて表示するための横長の矩形領域である。
【0077】
項目列表示領域63は、項目列を表示するための縦長の矩形領域である。項目数が多い場合には、項目列の一部が項目列表示領域63内に表示され、画面をスクロールさせることにより、当該項目列の他の部分を表示させることができる。選択候補には、フォーカス65が当てられている。
【0078】
選択項目64の表示態様や選択項目64に割り当てられる機能は、実行させるアプリケーションプログラム及び動作状況ごとに異なる。例えば、電話帳データとして登録されている電話番号や電子メールのメールアドレスを表示させるプログラムの場合、1つの宛先を1つの選択項目64として、宛先ごとの登録情報が表形式で表示される。そして、各選択項目64には、登録情報の閲覧機能や編集機能が割り当てられ、閲覧機能を実行させれば、選択候補の登録情報の詳細を閲覧することができる。また、編集機能を実行させれば、選択候補の登録情報を編集することができる。
【0079】
或いは、着信履歴データとして保持されている送信元情報を表示させるプログラムの場合には、1件の送信元情報を1つの選択項目64として、送信元ごとの保持情報が表形式で表示される。或いは、実行可能なコンテンツを示す複数のアイコンからなるコンテンツメニューを表示させるプログラムの場合には、1つのアイコンを1つの選択項目64として、コンテンツごとのアイコンがマトリクス形式で表示される。
【0080】
或いは、スケジュールデータとして登録されている登録情報を表示させるプログラムの場合には、1件の登録情報を1つの選択項目64として、登録情報が登録順や登録日時ごとに表形式で表示される。
【0081】
この項目列は、スケジュール表の例であり、上から順に1から10まで番号付けされた10個の選択項目64が、互いに離間させることなく隣接させて配置されている。また、第4の項目にフォーカス65が当てられている。キー割当表示領域66には、上下の方向キー31及びセンターキー32に対する機能割当てを示すアイコン67と、ガイドキー33aに対する機能割当てを示すアイコン68が表示されている。
【0082】
上又は下の方向キー31を操作することにより、フォーカス65を隣接する選択項目に移動させることができる。例えば、上キーを1回だけ短押しすれば、フォーカス65を第4の項目から第3の項目に移動させることができる。
【0083】
一方、下キーを1回だけ短押しすれば、フォーカス65を第4の項目から第5の項目に移動させることができる。つまり、方向キー31を短押しするごとにフォーカス65が隣の選択項目に1項目だけ移動する。
【0084】
また、いずれかの選択項目が選択されている状態でセンターキー32を操作することにより、選択候補に割り当てられている機能を実行させることができる。また、ガイドキー33aを操作することにより、このスケジュール表の閲覧機能を実行させる前の状態に復帰させることができる。
【0085】
方向キー31の短押し時には、方向キー31を操作するごとにフォーカス65が隣接項目に移動するのに対して、方向キー31の長押し時には、フォーカス65が隣接項目に移動した後、長押しモードに移行し、圧力センサ34による押圧力の検出値に応じた速度でフォーカス65が移動する。つまり、長押しモードでは、押圧力が大きければ、押圧力が小さい場合に比べて移動速度が速くなる。
【0086】
<方向キーの押圧操作>
図11及び図12は、図8の携帯電話機100の動作の一例を示した図であり、方向キー31の押圧操作時における押圧力の変化が示されている。図11には、下キーを繰り返し短押しした場合の押圧力の変化、方向キー31の動作状態及びポインタ移動信号が示されている。
【0087】
方向キー31が押圧操作された場合、圧力センサ34によって検出される押圧力が所定の閾値、例えば、終了閾値Thを越えれば、指によるダウンイベントが検出され、圧力センサ34からセンサ割込信号が出力される。そして、押圧力が一定値P(P>Th)を越えれば、方向キー31がオンする。
【0088】
方向キー31がオンしてからオフするまでの時間、すなわち、時刻tにオン状態に遷移してから時刻tにオフ状態に遷移するまでの経過時間B1が、一定時間B(例えば、1秒程度)よりも短ければ、当該方向キー31の操作が短押しと判断される。そして、押圧力が閾値Thを下回れば、指のアップイベントが検出される。
【0089】
短押しモード時には、方向キー31がオンすることによって押圧操作の開始が検知され、当該押圧操作の開始時、すなわち、時刻tにポインタ移動信号が生成される。つまり、時刻tから時刻tまでの期間C1が押圧操作の継続期間である。
【0090】
アップイベントの検出後、押圧力が再度終了閾値Thを越えれば、指によるダウンイベントが検出され、さらに、押圧力が一定値Pを越えれば、方向キー31がオンする。そして、方向キー31が時刻tにオン状態に遷移してから時刻tにオフ状態に遷移するまでの経過時間B2が、一定時間Bよりも短ければ、短押しと判断される。方向キー31がオンすることによって押圧操作の開始が検知され、時刻tにポインタ移動信号が生成され、時刻tから時刻tまでの期間C1が押圧操作の継続期間である。
【0091】
図12には、下キーを長押しした場合の押圧力の変化、方向キー31の動作状態及びポインタ移動信号が示されている。圧力センサ34によって検出される押圧力が終了閾値Thを越えれば、指によるダウンイベントが検出され、圧力センサ34からセンサ割込信号が出力される。そして、押圧力が一定値Pを越えれば、方向キー31がオンする。
【0092】
方向キー31が時刻tにオンした後、当該方向キー31がオフすることなく一定時間Bが経過すれば、当該方向キー31の操作が長押しと判断され、動作モードが短押しモードから長押しモードに切り替えられる。その後、押圧力は、時刻tで一定値Pを下回り、方向キー31がオフ状態に遷移している。そして、押圧力が終了閾値Thを下回れば、指のアップイベントが検出され、短押しモードに復帰する。
【0093】
この例では、時刻tから時刻tまでの期間C2が押圧操作の継続期間である。また、一定時間Bの経過時点、すなわち、時刻tにおいて動作モードが長押しモードに切り替えられ、この時刻tから時刻tにおいてアップイベントが検出されるまでの長押しモード期間B3には、圧力センサ34による押圧力の検出値に応じたポインタ移動信号が生成される。すなわち、短押しモード時には、信号強度が一定レベルであるパルス状のポインタ移動信号が生成されるのに対して、長押しモード時には、信号強度が押圧力に応じて変化するポインタ移動信号が生成されている。具体的には、長押しモードの場合、下限値(Th)から上限値Pまでの範囲内の押圧力に対応する信号強度のポインタ移動信号が繰返し生成される。この様なポインタ移動信号を参照することにより、強く押し込むほどポインタの移動速度が速くなるような制御を行わせることができる。
【0094】
ここで、押圧力の終了閾値Thは、方向キー31がオンする際の押圧力(一定値P)に比べて十分に小さく、また、押圧力の上限値P(押込限界時の押圧力)が、一定値Pよりも大きいので、長押しモードでは、終了閾値Th以上上限値P以下の範囲内の押圧力に応じてポインタの移動速度を調整することができる。つまり、押圧力が終了閾値Thを下回った時点で長押しモードが解除されるので、方向キー31がオフするタイミングで長押しモードを解除する場合に比べて、終了閾値Thから上限値Pまでの範囲を有効に使ってポインタの移動速度を調整させることができる。
【0095】
<ポインタ移動>
図13(a)及び(b)は、図8の携帯電話機100の動作の一例を示した図であり、方向キー31の押圧操作時におけるフォーカス65の移動の様子が示されている。図13(a)には、下キーの短押し時の様子が示され、図13(b)には、長押し時の様子が示されている。
【0096】
リスト画面60内のフォーカス65は、下キーのオン状態への遷移に基づいて、第4の項目から第5の項目に1項目分だけ移動する。短押しの場合には、方向キー31のオフ状態への遷移は無視される。
【0097】
一方、下キーのオン状態への遷移により、フォーカス65が第4の項目から第5の項目に移動した後、一定時間Bの経過により長押しであると判定された場合には、圧力センサ34による押圧力の検出値に応じた速度でフォーカス65が移動する。その際、選択項目64間に擬似フォーカス69を当てながらフォーカス65の移動が行われる。
【0098】
この擬似フォーカス69は、フォーカス65の移動を滑らかに見せるために、選択項目64間の領域に当てられるフォーカス、或いは、選択項目64にまたがって表示される擬似的なフォーカスである。この例では、フォーカス65が第5の項目から第6の項目に移動する際、第5の項目と第6の項目との間に両項目にまたがった擬似フォーカス69が表示されている。
【0099】
文書ファイルの編集時に文章中のカーソルを移動させる場合にもフォーカス65の移動と同様にして行われる。すなわち、選択候補を示すカーソルが文字の近傍に表示され、ポインタ移動信号に基づいて、当該カーソルが文字間で移動する。具体的には、方向キー31の短押しにより、カーソルが1文字分だけ隣の文字に移動する。例えば、下キーを操作すれば、カーソルが下方向に移動し、右キーを操作すれば、カーソルが右方向に移動する。
【0100】
一方、方向キー31のオン状態への遷移により、カーソルが1文字分だけ移動した後、一定時間Bの経過により長押しであると判定された場合には、圧力センサ34による押圧力の検出値に応じた速度でカーソルが移動する。方向キー31の短押し時には、文字単位でカーソルが移動されるのに対して、長押しモード時には、例えば、画素単位でカーソルの移動が行われる。
【0101】
図14のステップS101〜S111は、図8の携帯電話機100における方向キー31の押圧操作時の動作の一例を示したフローチャートである。まず、操作入力部101のポインタ制御部110は、圧力センサ34からセンサ割込信号によって押圧力の検出値が一定値を越えたことを検知すれば、指によるダウンイベントが発生したと判断して、割込み処理を実行する(ステップS101)。その後、方向キー31がオンすることなくアップイベントが検出されれば、この処理を終了する(ステップS102,S111)。
【0102】
一方、方向キー31がオンされた場合には、短押し制御部111が、当該方向キー31からの方向入力信号に基づいて、ポインタ移動信号を生成し、選択候補が隣接する選択項目に変更される(ステップS102,S103)。次に、短長切替判定部117は、方向キー31がオンすることによって押圧操作の開始が検出されてから当該押圧操作が一定時間B継続していると判断すれば、当該方向キー31の操作が長押しであると判断し、動作モードを短押しモードから長押しモードに切り替える(ステップS104,S105)。また、方向キー31がオンした後、一定時間Bが経過する前に当該方向キー31がオフした場合には、この処理を終了する(ステップS104,S110)。
【0103】
長押し制御部112は、長押しモードに移行後、圧力センサ34によって検出される押圧力を参照してポインタの移動速度を決定し、押圧力に応じた移動速度を示すポインタ移動信号を生成する。そして、ポインタ移動信号に基づいて、フォーカス65がリスト画面60内で移動する(ステップS106〜S108)。ステップS106からステップS108までの処理手順は、押圧力が終了閾値Thを下回ることによって指のアップイベントが検知されるまで繰り返され、アップイベントが検知されれば、長押しモードから短押しモードに動作モードが切り替えられ、この処理は終了する(ステップS109)。
【0104】
本実施の形態によれば、方向キー31の検出結果に基づいて押圧操作の開始を検知してポインタ移動信号が生成されるので、押圧力に応じたポインタの移動を可能とする構成でありながら、温度変化などの影響による誤動作を抑制することができる。また、方向キー31を押し続けるだけで、押圧力に応じたポインタ移動に自動的に移行させることができる。従って、温度変化などの影響による誤動作を抑制し、ポインタ移動時の操作性を向上させることができる。
【0105】
実施の形態2.
実施の形態1では、方向キー31がオンした後、当該方向キー31がオフすることなく一定時間Bが経過した場合に、動作モードが短押しモードから長押しモードに切り替えられる場合の例について説明した。本実施の形態では、方向キー31がオンした後、押圧力が一定値を下回ることなく一定時間が経過した場合に、短押しモードを長押しモードに切り替える場合について説明する。
【0106】
図15は、本発明の実施の形態2による携帯情報端末の構成例を示したブロック図であり、操作入力部101の他の例が示されている。この操作入力部101は、図9の操作入力部101と比較すれば、ポインタ制御部110のモード切替部113が短押し判定閾値記憶部121を備えている点で異なる。
【0107】
操作入力部101の短押し終了検出部115では、方向キー31がオンした後、押圧力が所定の短押し判定閾値Thを下回ることなく一定時間が経過したことをタイマー115からの時間情報に基づいて検知した場合に、押圧操作が一定時間継続していると判断し、短押しモードを長押しモードに切り替える。
【0108】
短押し判定閾値記憶部121には、押圧操作が短押しであるか否かを判定するための閾値として、方向キー31がオフする際の押圧力(例えば、一定値P)よりも小さな短押し判定閾値Th(Th>Th)が保持される。
【0109】
図16は、図15の携帯情報端末の動作の一例を示した図であり、方向キー31の長押し時における押圧力の変化、方向キー31の動作状態及びポインタ移動信号が示されている。方向キー31が時刻tにオンした後、当該方向キー31は、時刻t10でオフしている。
【0110】
一方、圧力センサ34によって検出される押圧力は、方向キー31のオン後、一定値Pよりも小さな短押し判定閾値Thを下回ることなく一定時間Bが経過すれば、押圧操作が長押しと判断され、動作モードが短押しモードから長押しモードに切り替えられる。
【0111】
つまり、方向キー31がオンしてから、押圧力が時刻t12で短押し判定閾値Thを下回るまでの経過時間B4が一定時間Bよりも長い場合に、長押しモードに移行する。そして、押圧力が閾値Thを下回れば、指のアップイベントが検出され、動作モードが長押しモードから短押しモードに切り替えられる。
【0112】
一定時間Bの経過時点、すなわち、時刻t11において動作モードが長押しモードに切り替えられ、この時刻t11から時刻t15においてアップイベントが検出されるまでの期間B5は、圧力センサ34による押圧力の検出値に応じたポインタ移動信号が生成される。
【0113】
本実施の形態によれば、方向キー31が押圧操作の終了を検知する際の押圧力よりも小さな押圧力で圧力センサ34を押し続けることにより、押圧力に応じたポインタ移動に移行させることができる。
【0114】
なお、実施の形態1及び2では、押圧操作が一定時間継続すれば動作モードが短押しモードから長押しモードに切り替えられる場合の例について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、圧力センサ34によって検出される押圧力を方向キー31がオンする際の押圧力(一定値P)よりも大きな一定値Th(Th<P)と比較し、この比較結果に基づいて短押しモードを長押しモードに切り替えるような構成であっても良い。すなわち、方向キー31を押込限界近くまで強押しすることにより、一定時間の経過を待つことなく長押しモードに切り替えるような構成であっても良い。
【0115】
また、実施の形態1及び2では、キートップ部41を押し込んだ際に接点式スイッチがオンし、押圧操作の開始が検知される場合の例について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、キートップ部41を押し込んだ際にオフする接点式スイッチを用いるものにも本発明は適用することができる。
【符号の説明】
【0116】
10 表示筐体
11 メインディスプレイ
12 受話用レシーバ
13 サブディスプレイ
20 ヒンジ部
30 操作筐体
31 方向キー
32 センターキー
33 テンキー
33a ガイドキー
34 圧力センサ
34a 感圧パッド部
34b,34c コンデンサ
34d センサ制御回路
35 送話用マイクロホン
36 メイン基板
37 フレキシブル基板
40 キートップシート
41〜43 キートップ部
41a,41b,42a,43a 押し子
44 マイク孔
45 切り欠き部
51 金属板
52,53 電極板
54 弾性部材
60 リスト画面
61 ピクト表示領域
62 タイトル表示領域
63 項目列表示領域
64 項目
65 フォーカス
66 キー割当表示領域
67,68 アイコン
69 擬似フォーカス
100 携帯電話機
101 操作入力部
102 アプリケーション記憶部
103 項目列表示部
104 文書ファイル記憶部
105 文章表示部
110 ポインタ制御部
111 短押し制御部
112 長押し制御部
113 モード切替部
114 操作開始検出部
115 短押し終了検出部
116 タイマー
117 短長切替判定部
118 終了閾値記憶部
119 長短切替判定部
121 短押し判定閾値記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接して配置された圧力センサ及び接点式スイッチと、ポインタを画面表示する表示手段と、上記圧力センサ及び上記接点式スイッチの出力に基づいて、上記ポインタを移動させるためのポインタ移動信号を生成するポインタ制御手段とを備え、
上記圧力センサは、押圧操作に応じて電極間隔が変化するコンデンサと、上記コンデンサの静電容量に基づいて、上記押圧操作の押圧力を検出する押圧力検出手段とを有し、
上記ポインタ制御手段は、短押しモード時における上記接点式スイッチの検出結果に基づいて、上記押圧操作の開始を検知し、当該押圧操作の開始時に上記ポインタ移動信号を生成する短押し制御手段と、
上記押圧操作が一定時間継続していると判断した場合に、短押しモードを長押しモードに切り替えるモード切替手段と、
長押しモード時における上記圧力センサの検出結果に基づいて、上記押圧力に応じた上記ポインタ移動信号を繰返し生成する長押し制御手段とを有することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項2】
上記モード切替手段は、上記接点式スイッチが上記押圧操作の開始を検知してから終了を検知するまでに上記一定時間が経過した場合に、短押しモードを長押しモードに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の携帯情報端末。
【請求項3】
上記モード切替手段は、上記接点式スイッチが上記押圧操作の開始を検知した後、上記圧力センサにより検出される上記押圧力が第1閾値を下回ることなく上記一定時間が経過した場合に、短押しモードを長押しモードに切り替え、
第1閾値は、上記接点式スイッチが上記押圧操作の終了を検知する際の押圧力よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の携帯情報端末。
【請求項4】
上記モード切替手段は、上記押圧力を上記接点式スイッチが上記押圧操作の開始を検知する際の押圧力よりも小さな第2閾値と比較し、この比較結果に基づいて長押しモードを短押しモードに切り替えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の携帯情報端末。
【請求項5】
2以上の選択項目からなる項目列の画面表示を制御する項目列表示手段を備え、
上記項目列は、上記選択項目のいずれか1つが選択候補として表示され、
上記選択候補が、上記ポインタ移動信号に基づいて、上記選択項目間で移動することを特徴とする請求項1に記載の携帯情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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