説明

携帯用ドライヤ

【課題】 バーナーの点火時に確実に着火を検知することができ、操作性に優れた携帯用ドライヤを提供すること。
【解決手段】 本発明の携帯用ドライヤ10の発明は、ガスボンベ13から供給されたガスを燃焼させるバーナーと、バーナーの点火を行う点火機構20と、バーナーの着火を検知する着火検知部と、ガスの燃焼によりバーナー周辺で熱せられた空気を温風として吹き出し口14から吹き出させるファン15bと、ファン15bを駆動するモータ15aの回転数を制御する制御部50と、を備え、着火検知部は着火検知条件を多段階に切り替えてバーナーの着火を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコードレスの携帯用ドライヤに関し、特に熱源としてガスを使用した操作性に優れたガス式の携帯用ドライヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアードライヤの熱源として、電気ヒータに代えて、ボンベに充填したブタンガス等の液化石油ガスの燃焼熱を利用したヘアードライヤが開発され、既に市販されている。ガスの燃焼熱を利用したヘアードライヤは、電気ヒータを用いたものに比べて、外部電源への接続が不要となるためにコードレスとすることができるので、電源が入手できないところでも使用できる等、使用場所が制限されないことから、広く使用されるようになってきている。
【0003】
例えば、図9は下記特許文献1に開示された携帯用ヘアードライヤの構成を示す断面図である。このヘアードライヤ100は、ピストル型のドライヤ本体、前側に吐風口103を有し後側に吸気口104を形成した縦方向断面形状が円筒形又は楕円形円筒状ケース102、前記筒形ケーシング内の吐風部103側に近い位置に配設したバーナー105、前記バーナーの近くに固定した生ガスに点火する点火器(スパークプラグ)106、バーナーでの燃焼に必要な空気を取り込むエジェクター107、前記筒形ケース内の吸気部104側に近い位置に配設され、ファン109を回転駆動するモータ108を備えている。
【0004】
さらに、前記筒状ケース102の後方寄りの下部に該ケースと一体形成した膨出部110が設けられており、その内部には空所111を形成し、この空所内にはマイコンを搭載したコントロール基板が取り付けられており、前記バーナー105の燃焼状態を見てガス流路の開閉や電池電圧を検圧してモータ108の回転動作及び回転数を制御している。
【0005】
前記筒状ケース102の下部であって該ケースの外壁面形状に沿って形成した空間収納部113には、電池114を弧状に収納し、前記バーナー105の近傍に設けた着火検知装置115は、サーミスタを用いて着火時のバーナーでの温度上昇を検知し、生ガスに着火したかどうかを検知している。
【0006】
すなわち、前記コントロール基板に組み込んだ回路によって、温度上昇判定のための基準値を用意し、一定時間内に基準値以上の温度上昇があれば着火したものと判断し、温度上昇が基準値以下であればミス着火であると判断する。
【0007】
ここで、上記基準値を大小2つ用意し、直前にバーナーが燃焼されておらず、バーナー近傍が冷めた状態のときには大きい方の基準値を採用し、直前までバーナーが燃焼されており、バーナー消火後、短時間(例えば3秒)のうちに再度着火したときのように前回の燃焼熱が残存した状態のときには小さい方の基準値を採用することにより、状況に応じて適切な判断がなされるようにしてある。
【特許文献1】特開2005−87445号公報(段落[0010]〜[0023]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている携帯用ヘアードライヤにおいては、ドライヤの稼動タイミングによって2つの基準値を切り替えて採用する必要があり、そのための判別手段が別途必要になる。
【0009】
また、この基準値の設定を行う際にも、基準値自体は一定値であるため、周囲環境に十分に適応させることが難しい。すなわち、感度を下げすぎると低室温内でドライヤを使用する場合には着火検知ができず、また感度を上げすぎるとバーナーを再点火する場合に着火を誤検知してしまう場合があった。
【0010】
本発明者らは上記課題に鑑み、着火検知の際に稼動タイミングを検知することなく、かつ周囲の環境の差異に左右されることなく確実に着火を検知できる方法を種々検討した結果、基準値を着火開始から経時的に変化させることで、バーナーの余熱の有無に関わらず、且つ周囲環境に左右されずに着火検知が行えるようになることを見出し、本発明に至ったものである。
【0011】
すなわち、本発明はバーナーの点火時に確実に着火を検知することができる操作性に優れた携帯用ドライヤを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に係る携帯用ドライヤの発明は、ガスボンベから供給されたガスを燃焼させるバーナーと、前記バーナーの点火を行う点火機構と、前記バーナーの着火を検知する着火検知部と、前記ガスの燃焼により前記バーナー周辺で熱せられた空気を温風として吹き出し口から吹き出させるファンと、前記ファンを駆動するモータの回転数を制御する制御部と、を備えた携帯用ドライヤであって、前記着火検知部は着火検知条件を多段階に切り替えてバーナーの着火を検知することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の携帯用ドライヤにおいて、前記着火検知部は着火検知条件を時間ごとに複数段階に切り替えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の携帯用ドライヤにおいて、前記着火検知条件は、一定時間当たりの温度変化が基準値より大きいときに着火と判定するものであることを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に係る発明は、請求項3に記載の携帯用ドライヤにおいて、前記着火検知条件は、着火検知開始から第1時間t1に至るまでの単位時間あたりの温度上昇率が第1基準値T1℃/sec以上であれば着火と判定し、前記第1時間t1から第2時間t2に至るまでの単位時間あたりの温度上昇率が第2基準値T2℃/sec以上であれば着火と判定し、前記第2時間t2から第3時間t3に至るまでの単位時間あたりの温度上昇率が第3基準値T3℃/sec以上であれば着火と判定し、さらに、前記第1〜第3基準値T1〜T3はそれぞれT1>T2>T3であることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に係る発明は、請求項1〜4の何れかに記載の携帯用ドライヤにおいて、前記点火機構は前記モータの低速回転中に前記バーナーの点火を行い、前記制御部は前記着火検知部がバーナーの着火を検知すると前記モータの回転数を所定期間内に所定の高速回転数にまで上昇させることを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れかに記載の携帯用ドライヤにおいて、前記制御部は前記モータの回転数を低速回転数から直線的に上昇させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上記のような構成を備えることにより以下に述べるような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1に係る発明によれば、バーナーの点火の際には着火検知条件を多段階に切り替えて着火を検知するため、着火の誤検知を防止するとともに、着火の検知が確実に行なわれるようにすることができ、使い勝手に優れた携帯用ドライヤを提供できる。
【0019】
また、請求項2に係る発明によれば、バーナーの点火の際には着火検知条件を時間ごとに複数段階に切り替えて着火を検知するため、着火センサの周囲温度が時間経過に伴って変化していくことに応じて着火検知条件を切り替えることができ、着火の誤検知を防止するとともに、着火の検知が確実に行なわれるようにすることができ、使い勝手に優れた携帯用ドライヤを提供できる。
【0020】
また、請求項3に係る発明によれば、一定時間当たりの温度変化が基準値より大きいときに着火と判定するため、バーナーが燃焼するときの熱による温度変化を検知して着火の判定を行うので、着火の誤検知を防止するとともに、着火の検知が確実に行なわれるようにすることができ、使い勝手に優れた携帯用ドライヤを提供できる。
【0021】
また、請求項4に係る発明によれば、例えば第1〜第3時間をそれぞれt1=2秒、T2=3秒、t3=10秒とし、第1〜第3基準値をそれぞれT1=3℃/sec、T2=2℃/sec、T3=1℃/secとすると、着火検知開始後0〜2秒の2秒間に単位時間(1秒)当たりの温度上昇が3℃以上であれば着火と判定するため、着火検知開始直後、点火なし・余熱ありの場合であっても誤検知を防止することが可能となり、ここで検知できなかった場合には、着火判定の感度を上げて着火検知開始後2〜3秒の1秒間に単位時間当たりの温度上昇が2℃以上であれば着火と判定する。さらに、低室温内で使用する場合、上記着火検知条件で着火検知ができないことがあるので、さらに着火判定の感度を上げて着火検知開始後3〜10秒の7秒間に単位時間当たりの温度上昇が1℃以上であれば着火と判定するため、着火を確実に検知することができる。なお、第3時間(10秒)を越えても着火が検知されない場合には着火ミスとして異常停止させる。
【0022】
また、請求項5に係る発明によれば、バーナーの点火の際にはモータにより駆動されるファンの回転数を低速にして着火が確実に行なわれるようにするとともに、着火が検知されると徐々に回転数を上昇させて使用時には回転数を高速にして吹き出す温風量を増やすことができ、安全で使い勝手に優れた携帯用ドライヤを提供できる。
【0023】
また、請求項6の発明によれば、モータにより駆動されるファンの回転数を直線的に上昇させるため、バーナーが着火した後に空気の供給量に急激な変化が起こらないので、燃焼状態を安定的に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、実施例及び図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための携帯用ドライヤを例示するものであって、本発明をこの携帯用ドライヤに特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものにも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0025】
図1は本発明に係る携帯用ドライヤの一実施例の外観斜視図であり、図2は図1の携帯用ドライヤの正面図であり、図3は一実施例の携帯用ドライヤの内部配置の概要を説明する一部切り欠き断面図であり、また、図4は一実施例の携帯用ドライヤのボンベカバーを外した内部を示す斜視図である。
【0026】
更に、図5は一実施例の携帯用ドライヤの制御用電気回路を示すブロック図であり、図6は一実施例の携帯用ドライヤがとりうる各動作状態間の関係を説明する図であり、図7は図6に示す点火モードにおける着火検知のサブルーチンを示すフローチャートであり、図8は一実施例の携帯用ドライヤの動作を説明するタイムチャートである。
【0027】
本発明の実施例に係る携帯用ドライヤ10は、図1及び図2に示すように、外ケース10aを横断面が楕円形、縦断面の基本形体は斜辺が緩やかな膨らみを有する略直角三角形形状とし、図3に示すように、外ケース10aの内部に熱風発生室11とガスボンベ室12とを一端で連結してV字型に配置収納している。
【0028】
この携帯用ドライヤ10の外ケース10aは、耐熱性の成型品やステンレス・スチールなどにより構成され、図2に示すように、横断面の輪郭が略楕円形となされている。また、外ケース10aの縦断面の基本形体は、図3に示すように、略直角三角形であるが、特にその斜辺10hが緩やかな膨らみを有して大きく変形し、また略直角三角形の頂点付近10sは丸められて滑らかな円形ドーム形状となっている。
【0029】
外ケース10aはその側面にスライドつまみ26の一部が僅かに出ているだけで、全体として滑らかな形態をしている。この外ケース10aは、本体10b、ボンベカバー10c、後部カバー10dから構成されており、楕円形の輪郭を有する外ケース正面の上部には、熱風を吹き出す吹き出し口14が開口している。また、斜辺10hの後端近くにはストラップ取り付け手段40が設けてあり、本体10bの側面の一部は保持を容易にするための窪み又は突起10gが形成されている。ちなみに、図1に示した携帯用ドライヤ10は、ボンベカバー10cに比べて吹き出し口14が若干前面に突出しているが、このようなものも基本形体は略直角三角形であり、他にも例えばボンベカバー10cが背面方向に傾斜しているものであってもよい。
【0030】
この外ケース10aの内部には、図3に示すように、熱風発生室11をガスボンベ室12と一端で連結してV字型となるように配置している。すなわち、V字の一方の辺には円筒形に形成された熱風発生室11が配置され、熱風発生室11の先端に外部に熱風を吹き出す吹き出し口14が位置し、その内部には、図示しないが、触媒燃焼部などガス燃焼室とバーナーなどの熱源、さらには熱源の後方には送風室15が設けられ、風を送るファンモータ15aとファン15bが設けられている。V字の他方の辺には円筒形のガスボンベ室12が設けられ、ガスボンベ室12にはプロパン、ブタンなどの燃料ガスを充填したガスボンベ13が着脱自由に装着される(図4参照)。
【0031】
熱風発生室11とガスボンベ室12との間にはガスの点火機構20が収納され、V字の2辺が接触する位置に設けられた後部カバー10dには外気を導入するため複数の孔からなる吸気口18が設けられている。点火機構20は、電池収納部21に装着された電池とマイクロスイッチ22を含む制御用電気回路と、ガスボンベ室12に装着したガスボンベ13からの燃料ガス供給量を制御するバルブ23と、火花放電用の電子的高電圧発生回路24及び点火プラグ25からなる点火器54とで構成されており、電子的高電圧発生回路24に高電圧を発生させるための操作スイッチ(スライドつまみ26)が外ケースの側壁面に設けてある。
【0032】
電子的高電圧発生回路24の出力は一方の放電電極を形成する点火プラグ25に接続されている。他方の放電電極は、熱風発生室11の外周部に設けられており、電子的高電圧発生回路24と電線により接続されている。なお、図3においては、ガスボンベ13、バルブ23及び熱風発生室11のノズル相互間の配管や電線の接続は図示を省略してある。
【0033】
熱風発生室11の内部には、ガスボンベ13からバルブ23を介したガス供給路の中継パイプの出口に位置するノズルが設けられており、ノズルの後方から吹き出し口14に向けて空気を供給する送風ファン15bによって送風される空気と燃料ガスを混合して混合気体を作る混合部と、混合気体を所定の温度まで加熱する予熱部と、予熱部で混合気体に点火する着火部と、予熱部によって加熱された混合気体を燃焼させるバーナーや触媒燃焼部などのガス燃焼室を構成する熱源及び放熱フィンなどが設けられている。なお、触媒燃焼部は担体として多孔質のコーディエライトやアルミナなどのセラミックスや金属板が、触媒としては白金やパラジウムなどが用いられる。
【0034】
バルブ23は、ガスボンベ13のガスが供給される熱風発生室11のノズルにつながる中継パイプの途中に位置している。バルブ23は、その弁の開閉を制御してガスボンベ13からの燃料ガス供給量を制御する。バルブ23の周辺部に設けられたクランクレバー27の掛止片には弁開閉機構を構成するバルブシャフト23aが係止されている。このバルブシャフト23aが移動することにより、ばねの弾性力に抗してバルブシャフト23aはバルブから引き出される。このときバルブ23の後端部に形成された制御弁(図示せず)の絞り口の開口面積が増大しガスの供給量が増加する。また、中継パイプの先端に設けたノズルは、ガスボンベ13内のガスが気化されたガスを図示しない混合部に噴射させる。
【0035】
予熱部は、触媒燃焼を促進するために、混合気体を所定の温度にまで加熱する部分であり、触媒燃焼部の外周を覆うとともに一端が混合部まで延設された余熱フィンと熱源の出口を覆う通気性のある網目状ネットで構成されている。混合され予熱されたガスは、電子的高電圧発生回路24から印加された高電圧に基づく火花放電により着火、燃焼される。
【0036】
送風室15は、ファン15bとファンモータ15aとからなり、ガスと空気を一定の割合に混合するよう混合部に所要の空気量を送る。ボンベカバー10cを外して携帯用ドライヤ10の内部を示した図4を参照すると明らかなように、ファンモータ15aの駆動用電源である電池収納部21は、外ケース10内の円筒形の熱風発生室11と同じく円筒形のガスボンベ室12に挟まれた空間に設けられている。V字を構成する一方の辺と他方の辺の中間に生じる隙間に電池収納部21を設けると、前記熱風発生室11とガスボンベ12とに挟まれた隙間は電池の収納スペースとして有効利用され、携帯用ドライヤを小型にできる。さらに、電池収納部21の前面には着脱自在な蓋17を設けたので、電池交換時の電池の出し入れが容易となる。ボンベカバー10cの脱着は、ロックボタン10eを押して引っ張ることにより、溝16をスライドさせて外すことができ、溝16に嵌め込んでスライドさせながら押し込むことにより装着できるようになっている。なお、10fはボンベカバー10cの他方のロックボタンである。
【0037】
つぎに、図5を参照して本実施例の携帯用ドライヤに用いられている制御用電気回路について説明する。
【0038】
図5に示すように、この制御用電気回路は、主に、メイン基板に搭載されているマイコンを用いた制御部50から構成されている。この制御部50には、動作状態に応じてファンモータ15aの回転数を制御する回転数制御部51、制御に必要な時間を計時する内蔵タイマ部52、予め設定した基準値との比較により一定時間当たりの温度上昇を判断して着火を検知する着火判定部53が含まれている。また、制御部50には、ガス燃焼室内の混合ガスに点火する点火器54、バルブ23を電気的に開閉制御するときに用いられるソレノイド(マグネットユニット)55、各部へ電源電圧を供給する電池56、モータにより駆動されるファン等の動作状態を表示するための動作表示LED57、ガス燃焼室内の混合ガスの着火を検知する着火センサ58、熱風発生室11内の温度過昇を検知する過昇センサ59が接続される。さらに、制御部50には、ファンを駆動するファンモータ15a、操作スイッチ26が接続されている。
【0039】
つぎに、本実施例の携帯用ドライヤを使用するときの各動作状態と各動作状態間の遷移について説明する。図6に示すように、本実施例の携帯用ドライヤは、その動作状態として、スタンバイモード、起動モード、低速運転モード、点火モード、モータ回転上昇モード、平常運転モード、正常停止モード、ガス抜きモード、異常停止モードの何れかの状態をとる。
【0040】
[スタンバイモード]
スタンバイモード(モード0)は、ドライヤを停止させたときのモードであり、電池からの電源供給(VOPOUT)が停止しており、ファンモータ15aが停止、動作表示LED57が消灯、バルブ23が閉状態、点火機構20が未点火状態になっている。
【0041】
[起動モード]
起動モード(モード1)は、スタンバイモードで操作スイッチ26をONにしたときの最初のモードであり、電池からの電源供給(VOPOUT)が開始され、ファンモータ15aが高速回転、動作表示LED57が点滅、バルブ23が開状態、点火機構20が未点火状態になっている。ここで、本実施例ではファンモータ15aと動作表示LED57はVOPOUTが出力されてから30ms後に作動するように設定されている。
【0042】
[低速運転モード]
低速運転モード(モード2)は、起動モードになった後、所定時間(例えば、0.2秒)経過した後に遷移するモードであり、電池からの電源供給(VOPOUT)が出力され、ファンモータ15aが低速回転、動作表示LED57が点滅、バルブ23が開状態、点火機構20が未点火状態になっている。
【0043】
[点火モード]
点火モード(モード3)は、低速運転モードになった後、所定時間(例えば、0.2秒)経過した後に遷移するモードであり、電池からの電源供給(VOPOUT)が出力され、ファンモータ15aが低速回転、動作表示LED57が点滅、バルブ23が開状態、点火機構20が点火状態になっている。
【0044】
なお、この点火モードは、図7に示すように、第一着火検知モード(ステップS02、S03)、第二着火検知モード(ステップS04、S05)、及び第三着火検知モード(ステップS06、S07)と時間ごとに3段階に分かれており、着火センサ58により一定時間当たりの温度変化を検知し、これと基準値(着火検知条件)との比較により着火の判定を行っている。
【0045】
すなわち、点火モードに遷移すると、先ず着火検知が開始され、点火器54がONとされ(ステップS01)、同時に内蔵タイマ部52による計時が開始される。そして、先ず第1着火検知モードとして、着火検知開始から第1時間t1(例えば、2秒)までの期間における単位時間当たりの温度変化ΔTが第1基準値T1(例えば、3℃/sec)以上の温度上昇であるか否かを判定し(ステップS02)、第1基準値以上の温度上昇が検知されれば着火と判断してモータ回転上昇モードに移行し、第1基準値以上の温度上昇が検知されずに第1時間t1を経過すると(ステップS03)、第二着火検知モードに移行する。次に、第二着火検知モードとして、着火検知開始後第1時間t1(2秒)から第2時間t2(例えば、3秒)までの期間における単位時間当たりの温度変化ΔTが第2基準値T2(例えば、2℃/sec)以上の温度上昇であるか否かを判定し(ステップS04)、第2基準値T2以上の温度上昇が検知されれば着火と判断してモータ回転上昇モードに移行し、第2基準値T2以上の温度上昇が検知されずに第2時間t2を経過すると(ステップS05)、第三着火検知モードに移行する。最後に、第三着火検知モードとして、第2時間t2(3秒)から第3時間t3(例えば、10秒)までの期間における単位時間当たりの温度変化ΔTが第3基準値T3(例えば、1℃/sec)以上の温度上昇であるか否かを判定し(ステップS06)、第3基準値T3以上の温度上昇が検知されれば着火と判断してモータ回転上昇モードに移行し、第3基準値T3以上の温度上昇が検知されずに第3時間t3を経過すると(ステップS07)、着火ミスとして異常停止モードに移行するため、ガス抜きモードに移行する。
【0046】
この判定において、第一着火検知モードでは、着火検知開始直後、点火なし・余熱ありの場合の誤検知を無くすために、着火判定の感度を低く設定することで誤検知を防止することが可能となり、第一着火検知モードで検知できなければ、第二着火検知モードへ遷移し、着火判定の感度を上げることで着火を検知する。さらに、低室温内で使用する場合、第一着火検知モード及び第二着火検知モードでの条件で着火検知ができないことがあるので、第三着火検知モードへ遷移し、さらに着火判定の感度を上げて検知する。このような構成とすることで、点火なし・余熱ありの場合の温度変化はその温度勾配が時間経過に伴って緩くなるため、着火検知の感度を時間ごとに上げても誤検知することはなく、バーナー近傍の温度状態に応じて適切な判断ができるようにしている。
【0047】
[モータ回転上昇モード]
モータ回転上昇モード(モード4)は、着火センサによる着火検知後、所定期間(例えば、0.5秒)経過した後に遷移するモードであり、電池からの電源供給(VOPOUT)が出力され、ファンモータ15aがPWM制御による直線的加速回転、動作表示LED57が点灯、バルブ23が開状態、点火機構20が点火状態になっている。ここで、点火機構20は、モータ回転上昇モードになった後、所定期間(例えば、0.5秒)だけ点火状態になる。
【0048】
[平常運転モード]
平常運転モード(モード5)は、モータ回転上昇モードになった後、所定期間(例えば、3秒)経過した後に遷移するモードであり、電池からの電源供給(VOPOUT)が出力され、ファンモータ15aが高速回転、動作表示LED57が点灯、バルブ23が開状態、点火機構20が未点火状態になっている。
【0049】
[正常停止モード]
正常停止モード(モード6)は、平常運転モードで操作スイッチ26をOFFにしたときのモードであり、電池からの電源供給(VOPOUT)が出力され、ファンモータ15aが高速回転、動作表示LED57が消灯、バルブ23が閉状態、点火機構20が未点火状態になっている。なお、正常停止モードは、起動モード、低速運転モード、点火モード、あるいはモータ回転上昇モードで操作スイッチ26をOFFにしたときにも遷移するモードである。また、正常停止モードのときに、所定時間内(例えば、3秒間)に操作スイッチ26をONにした場合には、低速運転モードへ遷移し、操作スイッチ26をONにしないで所定時間(例えば、3秒)経過した場合には、スタンバイモードへ遷移する。
【0050】
[ガス抜きモード]
ガス抜きモード(モード7)は、低速運転モード、点火モード、モータ回転上昇モード、平常運転モード、あるいは正常停止モードでセンサ異常(温度異常など)を検知した場合や、モータ回転上昇モードや平常運転モードで消火判定がなされたときに遷移するモードであり、電池からの電源供給(VOPOUT)が出力され、ファンモータ15aが高速回転、動作表示LED57が消灯、バルブ23が閉状態、点火機構20が未点火状態になっている。
【0051】
[異常停止モード]
異常停止モード(モード8)は、ガス抜きモードで操作スイッチ26をOFFにしたときのモードであり、電池からの電源供給(VOPOUT)が出力され、ファンモータ15aが高速回転、動作表示LED57が消灯、バルブ23が閉状態、点火機構20が未点火状態になっている。なお、異常停止モードのときに、所定時間内(例えば、3秒間)に操作スイッチ26をONにした場合には、センサ異常を検知するとガス抜きモードへ遷移し、センサ異常を検知しないと低速運転モードへ遷移し、操作スイッチ26をONにしないで所定時間(例えば、3秒)経過した場合には、スタンバイモードへ遷移する。また、点火モードのときに回転異常(回転異常L)を検知した場合や、平常運転モードから所定時間(例えば、0.2秒)経過した後、正常停止モード、ガス抜きモード、あるいは異常停止モードのときに回転異常(回転異常H)を検知した場合には、スタンバイモードへ遷移する。
【0052】
さらに、図8を参照して本実施例の携帯用ドライヤの動作について説明する。図8は、本発明に係る携帯用ドライヤの動作を説明するタイムチャートであり、操作スイッチ26によってドライヤを平常運転するまでのものである。図8において、最初はスタンバイモードになっており、操作スイッチ26がOFF状態であり、ファンモータが停止、点火器がOFF状態(未点火)になっている。
【0053】
そして、操作スイッチ26をON状態にすると、起動モードになり、低速運転時はファンモータ電圧が低くなっているのでファンモータが起動しにくいことから起動時のみモータ電圧を高くする。また、操作スイッチ26がON状態に切り替わると同時に、タイマが作動し、所定時間(例えば、0.2秒)経過すると、起動モードから低速運転モードに遷移し、ファンモータが低速回転し、熱風発生室11には点火に適した燃焼ガス濃度の混合ガスが送られる。
【0054】
さらに、低速運転モードに遷移してから所定時間(例えば、0.2秒)経過すると、低速運転モードから点火モードに遷移し、ファンモータは低速回転のままで点火器がON状態(点火状態)に切り替わり、点火動作が開始される。
【0055】
また、点火モードに移行すると同時に、着火検知のためのタイマが作動し、着火センサ58が所定期間内(第3時間t3、例えば10秒以内)に正常に温度上昇を検知すれば正常に着火したと判定され、所定時間内に着火が検知されない場合は着火ミス状態の判定がなされる。なお、このときの着火検知方法については既に上述した記載及び図7において説明したのでここでは重複説明を省略する。
【0056】
点火モード中に点火器による点火動作を行うことで混合ガスが着火され、所定時間内(例えば、10秒以内)に着火センサによる着火検知がなされると、TESTOUTの出力をON状態(Hレベル)にする。TESTOUTの出力をON状態(Hレベル)にすると同時に、モータ回転上昇モードへ遷移するタイミングを判定するためのタイマが作動し、所定期間(例えば、0.5秒)経過すると、点火モードからモータ回転上昇モードに遷移し、ファンモータの回転数を直線的に上昇させる。
【0057】
ここで、ファンモータの出力をPWM出力とし、所定期間(例えば、3秒間)でデューティー比を100%まで上げていく。このときPWM出力の1サイクルは0.4mS程度とし、デューティー比上昇は最小でも30ステップ程度で上昇させれば良く、それよりもステップ数は多くても良い。
【0058】
また、モータ回転上昇モードになってから所定期間(例えば、0.5秒)経過すると、点火器がOFF状態(未点火)に切り替わる。なお、点火モードに遷移してからモータ回転上昇モードに遷移するまでの間、回転異常L判定を行うためにファンモータの回転検知が開始される。
【0059】
やがて、モータ回転上昇モードでのファンモータの回転数が高速回転に達すると、モータ回転上昇モードから平常運転モードに切り替わり、TESTOUTの出力をOFF状態(Lレベル)にする。さらに、平常運転モードに遷移してから所定時間(例えば、0.2秒)経過すると、回転異常H判定を行うためにファンモータの回転検知が開始される。
【0060】
以上説明したように、本実施例では、所定の第1、第2、第3時間t1、t2、t3を着火検知開始からそれぞれ2秒、3秒、10秒と設定し、温度変化ΔTに対する着火判定の基準値である第1、第2、第3基準値T1、T2、T3をそれぞれ3℃/sec、2℃/sec、1℃/secと設定したが、これは一例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において他の値に設定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る携帯用ドライヤの一実施例の外観斜視図である。
【図2】図1の携帯用ドライヤの正面図である。
【図3】図1の携帯用ドライヤの内部配置の概要を説明する一部切り欠き断面図である。
【図4】図1の携帯用ドライヤのボンベカバーをはずして内部を示す斜視図である。
【図5】一実施例に係る携帯用ドライヤの制御用電気回路を示すブロック図である。
【図6】一実施例に係る携帯用ドライヤがとりうる各動作状態間の関係を説明する図である。
【図7】図6に示す点火モードにおける着火検知のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図8】一実施例に係る携帯用ドライヤの動作を説明するタイムチャートである。
【図9】従来例の携帯用ドライヤの構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 携帯用ドライヤ
10a 外ケース
11 熱風発生室
12 ガスボンベ室
13 ガスボンベ
14 吹き出し口
15 送風室
15a ファンモータ
15b ファン
17 電池収納部の蓋
18 吸気口
20 点火機構
21 電池収納部
22 マイクロスイッチ
23 バルブ
24 電子的高電圧発生回路
25 点火プラグ
26 スライドつまみ(操作スイッチ)
50 制御部
51 回転数制御部
52 内蔵タイマ部
53 着火判定部
54 点火器
55 ソレノイド(マグネットユニット)
56 電池
57 動作表示LED
58 着火センサ
59 過昇センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスボンベから供給されたガスを燃焼させるバーナーと、前記バーナーの点火を行う点火機構と、前記バーナーの着火を検知する着火検知部と、前記ガスの燃焼により前記バーナー周辺で熱せられた空気を温風として吹き出し口から吹き出させるファンと、前記ファンを駆動するモータの回転数を制御する制御部と、を備えた携帯用ドライヤであって、前記着火検知部は着火検知条件を多段階に切り替えてバーナーの着火を検知することを特徴とする携帯用ドライヤ。
【請求項2】
前記着火検知部は着火検知条件を時間ごとに複数段階に切り替えることを特徴とする請求項1に記載の携帯用ドライヤ。
【請求項3】
前記着火検知条件は、一定時間当たりの温度変化が基準値より大きいときに着火と判定するものであることを特徴とする請求項2に記載の携帯用ドライヤ。
【請求項4】
前記着火検知条件は、
着火検知開始から第1時間t1に至るまでの単位時間あたりの温度上昇率が第1基準値T1℃/sec以上であれば着火と判定し、前記第1時間t1から第2時間t2に至るまでの単位時間あたりの温度上昇率が第2基準値T2℃/sec以上であれば着火と判定し、
前記第2時間t2から第3時間t3に至るまでの単位時間あたりの温度上昇率が第3基準値T3℃/sec以上であれば着火と判定し、さらに、前記第1〜第3基準値T1〜T3はそれぞれT1>T2>T3であることを特徴とする請求項3に記載の携帯用ドライヤ。
【請求項5】
前記点火機構は前記モータの低速回転中に前記バーナーの点火を行い、前記制御部は前記着火検知部が前記バーナーの着火を検知すると前記モータの回転数を所定期間内に所定の高速回転数にまで上昇させることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の携帯用ドライヤ。
【請求項6】
前記制御部は前記モータの回転数を低速回転数から直線的に上昇させることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の携帯用ドライヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−86684(P2008−86684A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−273747(P2006−273747)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)鳥取三洋電機株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】