説明

携帯用通信機のPTTつまみ

【課題】良好な動作感が得られ、しかも長期間使用しても疲労破壊する恐れのない携帯用通信機のPTTつまみ提供する。
【解決手段】ケースの穴から突出する釦部2の下面にスイッチ作動部5が設けられ、前記釦部2の両側にヒンジ3、4が形成され、少なくとも一方のヒンジ3がスリット8を介して二股状の連結部7で前記釦部2に繋がり前記各ヒンジ3、4の先端3a、4aがケースに固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は携帯用通信機に係わり、特に、そのPTTつまみに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯用通信機のPTT(push to talk) つまみの例を図3により説明する。図3(a)は従来の携帯用通信機のPTTつまみの例を示す平面図、図3(b)は同PTTつまみを示す側面図、図3(c)は同PTTつまみを示す底面図、図3(d)は図3(a)におけるA−A断面図である。
【0003】
図3に示すPTTつまみ10は合成樹脂により一体成形されており、中央の釦部2の両側にはヒンジ3とヒンジ4が左右方向に延びているヒンジ3とヒンジ4の夫々の先端部3aおよび先端部4aは中央側の部分より一段高い面となっている。
【0004】
押釦部2は図示していないケース側面の穴より外部に露出しており、押釦部2の下面にはスイッチ作動部5が突起状に形成されており、スイッチ作動部5は図示していないシャシまたはシャシに固定されたプリント基板に設けられたスイッチの作動子と対向している。
【0005】
ヒンジ3の先端部3aおよびヒンジ4の先端部4aは夫々ケース内面に形成された凹みに嵌まりPTTつまみ10が位置決めされ、ヒンジ3の先端部3aおよびヒンジ4の先端部4aはケースとシャシで挾持されることによりケースに固定される。ヒンジ4の中間に設けられている円弧形状部6、6の両側に形成された足6a、6aはシャシに当接する。
【0006】
ケース外部に露出した釦部2を指で押すことにより、釦部2が下動し、スイッチ作動部5がスイッチの作動子を作動させることにより、送信・受信状態が切り替えられる。このとき円弧形状部6、6の両側に形成された足6a、6aがシャシに当接するめ、釦部2の縁を押してもヒンジ4が捩じり変形せず、釦部2が傾かない。
【0007】
ところで、携帯用通信機の側面のスペースは限られており、PTTつまみのために広いスペースとることはできない。従って、ヒンジの長さは短くなる。短いヒンジで押釦部2にスイッチを作動させるための十分な上下動のストロークを与えるためにはヒンジの撓みが大きくなり、ヒンジには大きい応力が加わることになる。
【0008】
PTTつまみは頻繁に作動されるために、ヒンジには繰り返し応力が多数回加わることになる。印加される応力が大きくなると、繰り返し応力により疲労破壊に至る応力繰り返し回数が少なくなる。従って、上記したPTTつまみ10は作動される回数が多くなると疲労破壊する恐れがあった。
【0009】
特開平11−149845号公報に開示されたヒンジ付きツマミは、ヒンジ2がツマミ支持体1とツマミ部4に連なるように一体に形成され、ヒンジ2は片持梁として作用する。このヒンジ付きツマミはツマミ部4が片持梁で支持されているので、ツマミ部4を押したときにツマミ部4が傾き、動作感が損なわれるという問題があった。
【特許文献1】特開平11−149845号公報、段落0010、段落0011、図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は上記した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、良好な動作感が得られ、しかも長期間使用しても疲労破壊する恐れのない携帯用通信機のPTTつまみ提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の携帯用通信機のPTTつまみは、ケースの穴から突出する釦部の下面にスイッチ作動部が設けられ、前記釦部の両側にヒンジが形成され、少なくとも一方のヒンジがスリットを介して二股状の連結部で前記釦部に繋がり前記各ヒンジの先端がケースに固定されるものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の携帯用通信機のPTTつまみによれば、良好な動作感が得られ、しかも長期間使用しても疲労破壊する恐れがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1(a)はこの発明の実施例である携帯用通信機のPTTつまみを示す平面図、図1(b)は同PTTつまみを示す側面図、図1(c)は同PTTつまみを示す底面図、図1(d)は図1(a)におけるA−A断面図である。
【0014】
図1に示すPTTつまみ1は合成樹脂により一体成形されており、中央の釦部2の両側にはヒンジ3とヒンジ4が左右方向に延びているヒンジ3とヒンジ4の夫々の先端部3aおよび先端部4aは中央側の部分より一段高い面となっている。
【0015】
押釦部2は図示していないケース側面の穴より外部に露出しており、押釦部2の下面にはスイッチ作動部5が突起状に形成されており、スイッチ作動部5は図示していないシャシまたはシャシに固定されたプリント基板に設けられたスイッチの作動子と対向している。
【0016】
ヒンジ3の先端部3aおよびヒンジ4の先端部4aは夫々ケース内面に形成された凹みに嵌まりPTTつまみ10が位置決めされ、ヒンジ3の先端部3aおよびヒンジ4の先端部4aはケースとシャシで挾持されることによりケースに固定される。ヒンジ4の中間に設けられている円弧形状部6、6の両側に形成された足6a、6aはシャシに当接する。
【0017】
図1に示すスリット7はこの発明の特徴部分であり、ヒンジ3の付根部に設けられており、スリット7の外側に形成される二股状連結部8を介してヒンジ3が押釦部2と繋がっている。
【0018】
ケース外部に露出した釦部2を指で押すことにより、釦部2が下動し、スイッチ作動部5がスイッチの作動子を作動させることにより、送信・受信状態が切り替えられる。このとき円弧形状部6、6の両側に形成された足6a、6aがシャシに当接するめ、釦部2の縁を押してもヒンジ4が捩じり変形せず、釦部2が傾かない。
【0019】
実施例のPTTつまみはヒンジ3と押釦部2の間に二股状連結部8が介在するために、押釦部2の変位を生じさせる梁の長さが長くなり、押釦部2の単位変位量に対するヒンジ3および二股状連結部8に加わる応力が全体に亘り小さくなる。
【0020】
さらに、応力が流れる断面積変化で発生する応力集中については、二股状連結部8の付根2箇所での断面積の和はスリットがないときのスリット付根の断面積の2倍程度となり応力が流れる断面積変化は小さくなる。従って応力集中が小さくなる。さらに、釦部2を片押ししたときの捩じれ変形については、捩じれ変形で発生するトルクを2か所の大きいスパンで受けるため、捩じれ変形で発生する応力も小さくなる。
【0021】
図2に実施例と従来例のPTTつまみに発生する最大応力を応力解析で得た結果を示す。図2の表で明らかなように、各印加された荷重1〜5kgf に対する最大応力は本実施例のものの方が従来例のものよりいずれの荷重に対しても小さくなっている。この応力の差により、本実施例のPTTつまみは従来例のPTTつまみよりも2倍以上の繰り返し荷重に耐えることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1(a)はこの発明の実施例である携帯用通信機のPTTつまみを示す平面図、図1(b)は同PTTつまみを示す側面図、図1(c)は同PTTつまみを示す底面図、図1(d)は図1(a)におけるA−A断面図である。
【図2】実施例と従来例のPTTつまみ応力を比較して示す表である。
【図3】図3(a)は従来の携帯用通信機のPTTつまみの例を示す平面図、図3(b)は同PTTつまみを示す側面図、図3(c)は同PTTつまみを示す底面図、図3(d)は図3(a)におけるA−A断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 PTTつまみ
2 釦部
3 ヒンジ、3a先端部
4 ヒンジ、4a先端部
5 スイッチ作動部
6 円弧形状部、6a 足
7 スリット
8 二股状連結部
10 PTTつまみ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの穴から突出する釦部の下面にスイッチ作動部が設けられ、前記釦部の両側にヒンジが形成され、少なくとも一方のヒンジがスリットを介して二股状の連結部で前記釦部に繋がり前記各ヒンジの先端がケースに固定される携帯用通信機のPTTつまみ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−135055(P2009−135055A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311977(P2007−311977)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】