説明

携帯端末、ノイズ除去処理方法

【課題】消費電流を増加させることなく、マイクで集音した音声から、ノイズ源で発生したノイズを除去すること。
【解決手段】本発明は、マイクおよびノイズ源を備え、前記マイクで集音した音声から、前記ノイズ源で発生したノイズを除去するノイズ除去処理を行う携帯端末に適用される。本発明の携帯端末は、予め前記マイクに伝達される前記ノイズのノイズ成分の帯域を表すノイズデータを記録する記憶部と、前記ノイズ源で前記ノイズを発生する契機を検知する検知部と、前記検知部により前記契機が検知されたときに、前記記憶部に記録された前記ノイズデータに基づいて、前記マイクで集音した音声から前記ノイズを除去するノイズ除去処理を行うノイズ除去処理部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクおよびノイズ源を備える携帯端末において、マイクで集音した音声から、ノイズ源で発生したノイズを除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、入力手段としてタッチセンサー(タッチパネルともいう)を有する、スマートフォンや携帯電話機を代表とする携帯端末が普及している。
【0003】
また、この種の携帯端末において、音声通話、音声録音、動画撮影などマイクを用いて音声を集音している最中にネット検索やスケジュール確認などを並行して行う際に、使用者がタッチセンサーを操作するシーンが増加している。
【0004】
しかし、上述したようなシーンにおいて、使用者がタッチセンサーを操作した際に、キー入力を認識したことを使用者に報知する応答処理のために駆動するバイブレータの駆動ノイズ(駆動音)がマイクに集音され、通話音声や録音音声などに重畳し、通話音声や録音音声などが聞き取りにくくなるという問題があった。
【0005】
この問題を解決するため、従来から、マイクとバイブレータとの実装距離を離したり、低ノイズのバイブレータを採用したり、ノイズが伝わりにくいように実装を工夫したりするといった種々の対策がとられている。
【0006】
しかし、この種の対策では、実装上の制約を受けたり、多くの場合、携帯端末の大型化を招いたりするといったデメリットを伴う。
【0007】
そこで、最近は、上記のようなデメリットを伴うことなく、携帯端末内のノイズ源で発生するノイズを除去するために、信号処理技術が用いられてきている。
【0008】
バイブレータの駆動ノイズを除去する信号処理の一例として、バンドパスフィルタやイコライザなどを用いて、バイブレータの駆動周波数(例えば、100〜150Hz)の帯域を除去するものがある。
【0009】
しかし、バイブレータの駆動ノイズは、マイクには、バイブレータ自体の振動音(駆動音)として筐体内部および筐体外部を介して伝達されたり、バイブレータの振動に伴う筐体や基板などの振動音として伝達されたりするため、バイブレータの駆動周波数以外の帯域にもピークを持つことが多い。
【0010】
そのため、バイブレータの駆動周波数の帯域のみをバンドパスフィルタなどで除去しても充分なノイズ除去効果は得られない。
【0011】
そこで、例えば、特許文献1,2においては、バイブレータなどのノイズ源で発生しマイクに伝達されるノイズのスペクトル波形を予め分析して得られたノイズデータを記録しておき、そのノイズデータを用いて、ノイズに逆位相特性の信号を乗算するキャンセリング方式や、バンドパスフィルタやイコライザを用いてノイズ成分帯域を除去する帯域除去方式などのノイズ除去処理を行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−081363号公報
【特許文献2】特開2010−118975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した特許文献1,2に開示された技術においては、バイブレータなどのノイズ源で発生するノイズを除去することが可能である。
【0014】
しかし、上述した特許文献1,2に開示された技術のように、信号処理によりノイズ除去処理を行う場合、デジタルシグナルプロセッシング(以下、DSP)内で演算処理が行われるため、DSPの演算量が増加する。
【0015】
その結果、携帯端末の消費電流が増加し、音声通話、音声録音、動画撮影などの使用時間が短くなってしまうという課題がある。
【0016】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたものであって、消費電流を増加させることなく、マイクで集音した音声から、ノイズ源で発生したノイズを除去することができる携帯端末、ノイズ除去処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の携帯端末は、
マイクおよびノイズ源を備え、前記マイクで集音した音声から、前記ノイズ源で発生したノイズを除去するノイズ除去処理を行う携帯端末であって、
予め前記マイクに伝達される前記ノイズのノイズ成分の帯域を表すノイズデータを記録する記憶部と、
前記ノイズ源で前記ノイズを発生する契機を検知する検知部と、
前記検知部により前記契機が検知されたときに、前記記憶部に記録された前記ノイズデータに基づいて、前記マイクで集音した音声から前記ノイズを除去するノイズ除去処理を行うノイズ除去処理部と、を備える。
【0018】
本発明のノイズ除去処理方法は、
マイクおよびノイズ源を備え、前記マイクで集音した音声から、前記ノイズ源で発生したノイズを除去する携帯端末によるノイズ除去処理方法であって、
予め前記マイクに伝達される前記ノイズのノイズ成分の帯域を表すノイズデータを記憶部に記録する記録ステップと、
前記ノイズ源で前記ノイズを発生する契機を検知する検知ステップと、
前記契機が検知されたときに、前記記憶部に記録された前記ノイズデータに基づいて、前記マイクで集音した音声から前記ノイズを除去するノイズ除去処理を行う除去ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ノイズ源で発生しマイクに伝達されるノイズのノイズ成分の帯域を表すノイズデータを予め記録しておき、このノイズデータを基に、ノイズ源で発生するノイズを除去するノイズ除去処理を行うため、充分なノイズ除去効果が得られる。
【0020】
また、本発明によれば、ノイズ源でノイズが発生する契機を検知したときにのみ、ノイズ除去処理を行うため、消費電流の増加を必要最低限に抑え、音声通話、動画録音などの使用時間の増加に寄与することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態の携帯端末の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した携帯端末において、タッチセンサーが操作されたときの基本的な動作を説明するフローチャートである。
【図3】バイブレータ自体が発生するノイズの周波数スペクトルを示す図である。
【図4】バイブレータ駆動時にマイクに伝達されるノイズの周波数スペクトルを示す図である。
【図5】図1に示した携帯端末において、マイク動作中に使用者がタッチセンサーを操作した際に、使用者への応答処理のために駆動したバイブレータの駆動ノイズを除去する動作を説明するフローチャートである。
【図6】図1に示した携帯端末において、マイク動作中に電話の着信などを使用者に報知するために駆動したバイブレータの駆動ノイズを除去する動作を説明するフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施形態の携帯端末の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
(1)第1の実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態の携帯端末の構成を示すブロック図である。
【0023】
本実施形態の携帯端末は、バイブレータの駆動ノイズ(駆動音)を除去するものであり、スマートフォン、携帯電話機などにより実現される。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の携帯端末は、CPU1、表示部2、タッチセンサー(タッチパネルともいう)3、タッチセンサー回路4、バイブレータ5、バイブレータ駆動回路6、レシーバ7、レシーバアンプ(REC AMP)8、D/Aコンバータ9、マイク10、マイクアンプ(MIC AMP)11、A/Dコンバータ12、バイブレータノイズサプレッサ13、イコライザ14、音声符号/復号器15、および、メモリ16を有している。また、メモリ16は、ノイズデータ格納部17を有している。
【0025】
なお、図1において、バッテリー、電源/充電回路、スピーカ、無線回路、アンテナなどは、図示省略している。
【0026】
CPU1は、携帯端末の通話に関係する種々の演算処理を行うとともに、表示部2、タッチセンサー回路4、メモリ16、バイブレータ駆動回路6、バイブレータノイズサプレッサ13、および、イコライザ14などの制御を行う中央制御部である。
【0027】
表示部2は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶表示装置)によって構成され、操作に必要な情報を表示する。
【0028】
タッチセンサー3は、メニュー呼出、各機能の操作、電話番号、文字入力など、使用者が携帯端末を操作するための入力装置として使用され、使用者の指やペンなどが接触した場所の位置検出を行う。位置検出の方式としては、静電容量結合方式、抵抗膜方式、赤外線方式、超音波方式、および、電磁誘導/結合方式などが知られているが、本発明では、位置検出の方式に制限はない。
【0029】
タッチセンサー回路4は、タッチセンサー3に使用者が触れると、キー入力があったことを検知し、使用者の操作に応じたキー入力信号をCPU1に出力すると同時に、バイブレータノイズサプレッサ13にもキー入力信号を出力する。バイブレータノイズサプレッサ13は、このキー入力信号を受信することによりノイズ除去処理を開始する。
【0030】
バイブレータ5は、バイブレータ駆動回路6の出力信号により駆動する振動モータであり、使用者がタッチセンサー3を操作したときにキー入力を認識したことや、電話の着信や電子メールの受信などがあったことを、使用者に振動により報知する。なお、バイブレータ5は、シリンダータイプ、コインタイプなどの種類は問わないものとする。また、バイブレータ5の振動素子は、スピーカとの複合タイプの振動素子であっても良く、セラミックタイプの振動素子であっても良い。
【0031】
D/Aコンバータ9は、音声符号/復号器15から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換し、レシーバアンプ8に出力する。
【0032】
レシーバアンプ8は、D/Aコンバータ9から出力されたアナログ信号を増幅し、レシーバ7から音声(例えば、受話音声)を出力する。
【0033】
マイク10は、通話音声、録音音声、および、周囲騒音などを集音し電気信号に変換するデバイスである。
【0034】
マイクアンプ11は、マイク10の出力信号を増幅し、A/Dコンバータ12に出力する。
【0035】
A/Dコンバータ12は、マイクアンプ11から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、バイブレータノイズサプレッサ13に出力する。
【0036】
ノイズデータ格納部17は、フラッシュメモリなどで構成され、予めマイク10に伝達されるバイブレータ5の駆動ノイズのスペクトル波形を分析して得られたノイズ成分帯域を表すノイズ成分帯域パラメータ(ノイズデータ)を記録し、バイブレータノイズサプレッサ13に出力する。
【0037】
バイブレータノイズサプレッサ13は、ノイズデータ格納部17に記録されたノイズ成分帯域パラメータを用いて、マイク10に集音された音声からバイブレータ5の駆動ノイズ(駆動音)を除去するノイズ除去処理を行う。ノイズ除去処理としては、ノイズに逆位相特性の信号を乗算するキャンセリング方式や、バンドパスフィルタやイコライザを用いてノイズ成分帯域を除去する帯域除去方式など、一般的な手法を用いて良い。
【0038】
イコライザ14は、バイブレータノイズサプレッサ13によりバイブレータ5の駆動ノイズが除去された音声の音質を調整し周波数特性を補正し、音声符号/復号器15に出力する。イコライザ14は、パラメトリックイコライザ、グラフィックイコライザなどの種類は問わないものとする。
【0039】
音声符号/復号器15は、イコライザ14から出力された音声(例えば、送話音声)を符号化し無線回路(図示省略)に出力するとともに、無線回路からの信号を音声(例えば、受話音声)に復号しD/Aコンバータ9に出力する。
【0040】
なお、図1において、バイブレータ5は、ノイズ源の一例であり、メモリ16は、記憶部の一例であり、バイブレータノイズサプレッサ13は、ノイズ除去処理部の一例である。
【0041】
以下、本実施形態の携帯端末の動作について説明する。
【0042】
最初に、使用者がタッチセンサー3を操作したときの基本的な動作について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0043】
図2に示すように、待機状態にあるタッチセンサー3(ステップS11)に使用者が触れると、タッチセンサー回路4は、キー入力があったことを検知し(ステップS12)、使用者の操作に応じたキー入力信号をCPU1に出力する。
【0044】
CPU1は、キー入力信号を受けると、使用者の操作に応じた画面表示を表示部2において行う(ステップS13)。
【0045】
また、CPU1は、バイブレータ駆動信号をバイブレータ駆動回路6に出力し、バイブレータ駆動回路6は、バイブレータ5を駆動し、キー入力を認識したことを使用者に振動により報知する応答処理を行う(ステップS14)。
【0046】
その後、CPU1は、使用者の操作に応じたメニューや機能を起動し(ステップS15)、一定期間キー入力がない場合は、処理を終了する。
【0047】
ところで、現在の携帯端末は、多機能となっており、音声通話、音声録音、動画撮影などマイク10を用いて音声を集音するマイク動作中に、ネット検索やスケジュール確認などを並行して行うことができるようになっており、マイク動作中にタッチセンサー3を使用することが多くなってきている。
【0048】
しかし、マイク動作中にタッチセンサー3を使用し、バイブレータ5による応答処理(ステップS14)が行われた場合、バイブレータ5の駆動ノイズをマイク10で集音してしまうことで通話音声や録音音声などに駆動ノイズが重畳し、通話音声や録音音声などが聞き取りにくくなるという問題がある。
【0049】
この問題を解決するため、従来から、マイク10とバイブレータ5との実装距離を離したり、低ノイズのバイブレータ5を採用したり、ノイズが伝わりにくいように実装を工夫したりするといった種々の対策がとられている。
【0050】
しかし、この種の対策では、実装上の制約を受けたり、多くの場合、携帯端末の大型化を招いたりするといったデメリットを伴う。
【0051】
そこで、最近は、上記のようなデメリットを伴うことなく、携帯端末内のノイズ源が発するノイズを除去するために、信号処理技術が用いられてきている。
【0052】
ここで、バイブレータノイズサプレッサ13において、バイブレータ5の駆動ノイズを除去する動作について説明する。
【0053】
携帯端末に一般的に使用されるバイブレータ5の駆動周波数は100〜150Hzであり、バイブレータ5の駆動時には、図3のような周波数スペクトルのノイズが発生する。
【0054】
しかし、バイブレータ5の駆動時には、マイク10には、バイブレータ5自体の振動音(駆動音)が筐体内部および筐体外部を介して伝達されたり、バイブレータ5の振動に伴う筐体や基板などの振動音が伝達されたりするため、マイク10に伝達されるバイブレータ5の駆動ノイズは、例えば、図4のように、バイブレータ5の駆動周波数以外の帯域にもピークを持つことが多い。
【0055】
そのため、バイブレータ5の駆動周波数の帯域のみをバンドパスフィルタなどで除去しても充分なノイズ除去効果は得られない。
【0056】
そこで、本実施形態においては、特許文献1,2のように、予めマイク10に伝達されるバイブレータ5の駆動ノイズのスペクトル波形を分析して得られたノイズ成分帯域パラメータを記録し、このノイズ成分帯域パラメータを用いて、バイブレータ5の駆動ノイズのノイズ成分帯域のレベルを低減する処理を行うことで、良好なノイズ除去効果を得る。
【0057】
即ち、本実施形態においては、予めマイク10に伝達されるバイブレータ5の駆動ノイズのスペクトル波形を分析して得られたノイズ成分帯域パラメータをメモリ16内のノイズデータ格納部17に記録しておき、バイブレータノイズサプレッサ13において、ノイズ除去処理時に、このノイズ成分帯域パラメータを用いて、バイブレータ5の駆動ノイズのノイズ成分帯域のレベルを低減する。
【0058】
ノイズ成分帯域パラメータは、携帯端末の製造時に記録されても良いし、使用者自らが記録する構成としても良い。
【0059】
ノイズ除去処理としては、ノイズに逆位相特性の信号を乗算するキャンセリング方式や、バンドパスフィルタやイコライザを用いてノイズ成分帯域を除去する帯域除去方式など、一般的な手法を用いて良い。なお、バンドパスフィルタやイコライザを用いた帯域除去方式の場合、一般に、人の聴感特性では1/3オクターブ以下の周波数範囲では音の識別が難しく、1/3オクターブ以下の周波数帯域の欠損は聴感上気にならない。
【0060】
なお、ノイズ成分帯域パラメータ、ノイズ成分帯域パラメータを用いたノイズ除去処理に関しては、特許文献1,2などに開示された周知の技術を利用可能である。
【0061】
ただし、バイブレータノイズサプレッサ13は、DSP内で演算処理されるため、僅かながら消費電流の増加が起こることから、音声通話、音声録音、動画撮影などの使用時間に影響を及ぼすという問題がある。
【0062】
そこで、本実施形態では、上記問題を鑑みて、消費電流に極力影響を与えず、必要なときだけバイブレータ5の駆動ノイズを除去する方法を提案する。
【0063】
続いて、マイク動作中に使用者がタッチセンサー3を操作した際に、使用者への応答処理のために駆動したバイブレータ5の駆動ノイズを除去する動作について、図5のフローチャートを用いて説明する。なお、図5の例では、タッチセンサー回路4が検知部となる。
【0064】
図5に示すように、マイク動作中は、マイク10で集音した音声は、マイクアンプ11で増幅され、A/Dコンバータ12でアナログ信号からデジタル信号に変換される(ステップS21)。
【0065】
ここで、待機状態にあるタッチセンサー3(ステップS22)に使用者が触れると、タッチセンサー回路4は、キー入力があったことを検知し(ステップS23)、使用者の操作に応じたキー入力信号をCPU1に出力すると同時に、バイブレータノイズサプレッサ13にもキー入力信号を出力する。
【0066】
バイブレータノイズサプレッサ13は、キー入力信号を受けると、メモリ16内のノイズデータ格納部17に保持されたノイズ成分帯域パラメータを使用して、バイブレータ5の駆動ノイズのノイズ除去処理を開始する(ステップS24)。これと同時に、CPU1は、使用者の操作に応じた画面表示を表示部2において行う(ステップS25)。
【0067】
次に、CPU1は、バイブレータ駆動信号をバイブレータ駆動回路6に出力し(ステップS26)、バイブレータ駆動回路6は、バイブレータ5を駆動し、キー入力を認識したことを使用者に振動により報知する応答処理を行う(ステップS27)。
【0068】
次に、CPU1は、使用者の操作に応じたメニューや機能を起動する(ステップS28)。
【0069】
その後、CPU1は、バイブレータノイズサプレッサ13の終了判定を行い(ステップS29)、終了判定の基準を満たせばバイブレータノイズサプレッサ13の動作を停止させる(ステップS30)。
【0070】
なお、終了判定の条件として、バイブレータノイズサプレッサ13でノイズ除去処理を開始してから予め既定された時間が経過したこと、使用者のキー入力が終了したこと(即ち、タッチセンサー3が最後に操作されてから予め既定された時間が経過したこと)、バイブレータ5の駆動を伴わない機能が起動したことなどを設定しておく。これにより、適切なタイミングでバイブレータノイズサプレッサ13の動作を停止させることができ、消費電流の増加を抑えることができる。
【0071】
図5では、マイク動作中に使用者がタッチセンサー3を操作した際に、使用者への応答処理のために駆動したバイブレータ5の駆動ノイズを除去する動作について説明した。
【0072】
続いて、マイク動作中に、電話の着信、電子メールの受信、アラームなどを使用者に報知するために駆動したバイブレータ5の駆動ノイズを除去する動作について、図6のフローチャートを用いて説明する。なお、図6の例では、CPU1が検知部となる。
【0073】
図6に示すように、マイク動作中は、マイク10で集音した音声は、マイクアンプ11で増幅され、A/Dコンバータ12でアナログ信号からデジタル信号に変換される(ステップS41)。
【0074】
ここで、携帯端末に電話の着信、電子メール受信、アラームなどが発生すると(ステップS42)、CPU1は、これを検知して、バイブレータ駆動信号をバイブレータ駆動回路6に出力し(ステップS43)、これと同時に、バイブレータノイズサプレッサ13にもバイブレータ駆動信号を出力する。
【0075】
バイブレータノイズサプレッサ13は、バイブレータ駆動信号を受けると、メモリ16内のノイズデータ格納部17に保持されたノイズ成分帯域パラメータを使用して、バイブレータ5の駆動ノイズのノイズ除去処理を開始する(ステップS44)。これと同時に、バイブレータ駆動回路6は、バイブレータ5を駆動し、電話の着信、電子メール受信、アラームなどが発生したことを使用者に振動により報知する(ステップS45)。
【0076】
その後、CPU1は、バイブレータノイズサプレッサ13の終了判定を行い(ステップS46)、終了判定の基準を満たせばバイブレータノイズサプレッサ13の動作を停止させる(ステップS47)。
【0077】
なお、終了判定の条件として、バイブレータ5の駆動が終了したこと、バイブレータノイズサプレッサ13でノイズ除去処理を開始してから予め既定された時間が経過したこと、電話による通話が開始されたことなどと設定しておく。これにより、適切なタイミングでバイブレータノイズサプレッサ13の動作を停止させることができ、消費電流の増加を抑えることができる。
【0078】
以降にマイク動作が終了すると(ステップS48)、処理を終了する。
【0079】
上述したように本実施形態においては、予めマイク10に伝達されるバイブレータ5の駆動ノイズのスペクトル波形を分析して得られたノイズ成分帯域パラメータを記録し、このノイズ成分帯域パラメータを用いて、バイブレータ5の駆動ノイズのノイズ除去処理を行うことで、良好なノイズ除去効果が得られる。
【0080】
また、本実施形態においては、タッチセンサー3の操作、電話の着信、電子メール受信、アラームなどを検知したときのみ、バイブレータノイズサプレッサ13がノイズ除去処理を行うため、消費電流の増加を必要最低限に抑えることができ、音声通話、音声録音、動画撮影などの使用時間の増加に寄与することができるという効果が得られる。
(2)第2の実施形態
図7は、本発明の第2の実施形態の携帯端末の構成を示すブロック図である。
【0081】
本実施形態の携帯端末は、第1の実施形態と同様にバイブレータの駆動ノイズ(駆動音)を除去するだけでなく、オートフォーカス機構の駆動ノイズ(駆動音)も除去するものである。
【0082】
図7に示すように、本実施形態の携帯端末は、図1の第1の実施形態と基本的構成は同様であるが、オートフォーカスノイズサプレッサ20、オートフォーカス機構21、およびカメラ22を追加した点が、第1の実施形態とは異なる。
【0083】
なお、図7において、図1に示した第1の実施形態のタッチセンサー3、タッチセンサー回路4、バイブレータ5、バイブレータ駆動回路6、および、バイブレータノイズサプレッサ13は、図示省略している。
【0084】
また、図7において、バッテリー、電源/充電回路、スピーカ、無線回路、アンテナなども、図示省略している。
【0085】
カメラ22は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子、レンズ等を備え、静止画や動画撮影を行う。
【0086】
オートフォーカス機構21は、カメラ22のレンズをサーボモータで駆動することにより、カメラ22で撮像した画像が合焦するように作動するオートフォーカス動作を行い、特に、動画を撮影している間、合焦した状態が持続するように継続的かつ自動的にレンズ位置を調整する。また、オートフォーカス機構21は、オートフォーカス動作の開始時に、オートフォーカス動作信号をオートフォーカスノイズサプレッサ20に出力する。
【0087】
ノイズデータ格納部17は、予めマイク10に伝達されるオートフォーカス機構21の駆動ノイズのスペクトル波形を分析して得られたノイズ成分帯域を表すノイズ成分帯域パラメータ(ノイズデータ)を記録し、オートフォーカスノイズサプレッサ20に出力する。
【0088】
オートフォーカスノイズサプレッサ20は、ノイズデータ格納部17に記録されたノイズ成分帯域パラメータを用いて、マイク10に集音された音声からオートフォーカス機構21の駆動ノイズ(駆動音)を除去するノイズ除去処理を行うものであり、第1の実施形態のバイブレータノイズサプレッサ13と同様の構成であり、基本動作も共通である。
【0089】
上記以外の各ブロックの構成および動作は第1の実施形態と同じなので説明を省略する。
【0090】
なお、図7において、オートフォーカス機構21は、ノイズ源および検知部の一例であり、メモリ16は、記憶部の一例であり、オートフォーカスノイズサプレッサ20は、ノイズ除去処理部の一例である。
【0091】
以下に、本実施形態の携帯端末の動作について説明する。
【0092】
オートフォーカス機構21は、マイク動作中にオートフォーカス動作を開始する場合、オートフォーカスノイズサプレッサ20にオートフォーカス動作信号を出力し、これと同時に、オートフォーカス動作を開始する。
【0093】
オートフォーカスノイズサプレッサ20は、オートフォーカス動作信号を受けると、メモリ16内のノイズデータ格納部17に保持されたノイズ成分帯域パラメータを使用して、オートフォーカス機構21の駆動ノイズのノイズ除去処理を開始する。
【0094】
上述したように本実施形態においては、予めマイク10に伝達されるオートフォーカス機構21の駆動ノイズのスペクトル波形を分析して得られたノイズ成分帯域パラメータを記録し、このノイズ成分帯域パラメータを用いて、オートフォーカス機構21の駆動ノイズのノイズ除去処理を行うことで、良好なノイズ除去効果が得られる。
【0095】
また、本実施形態においては、オートフォーカス機構21の動作を検知したときにのみ、オートフォーカスノイズサプレッサ20がノイズ除去処理を行うため、消費電流の増加を必要最低限に抑えることができ、音声通話、音声録音、動画撮影などの使用時間の増加に寄与することができるという効果が得られる。
【0096】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0097】
例えば、上記実施形態においては、タッチセンサー3やカメラ22を有するスマートフォンや携帯電話機などを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、マイク等の集音デバイスとノイズ源との両方を同一の筐体に納める構造を有する携帯端末、例えば、小型のビデオカメラなどにも適用可能である。
【0098】
また、上記実施形態においては、ノイズ源としてバイブレータ5やオートフォーカス機構21を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ノイズ源は、作動時に特定の周波数スペクトルを有するノイズを発生するものであれば、例えば、モータや固定磁気ディスク装置であっても良い。
【0099】
また、上記の実施の形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
マイクおよびノイズ源を備え、前記マイクで集音した音声から、前記ノイズ源で発生したノイズを除去するノイズ除去処理を行う携帯端末であって、
予め前記マイクに伝達される前記ノイズのノイズ成分の帯域を表すノイズデータを記録する記憶部と、
前記ノイズ源で前記ノイズを発生する契機を検知する検知部と、
前記検知部により前記契機が検知されたときに、前記記憶部に記録された前記ノイズデータに基づいて、前記マイクで集音した音声から前記ノイズを除去するノイズ除去処理を行うノイズ除去処理部と、を備える携帯端末。
(付記2)
タッチセンサーをさらに備え、
前記ノイズ源は、バイブレータであり、
前記検知部は、前記タッチセンサーが操作されたことを前記契機として検知する、付記1に記載の携帯端末。
(付記3)
前記ノイズ除去処理部は、前記ノイズ除去処理を開始してから予め既定された時間が経過した時点で、前記ノイズ除去処理を停止する、付記2に記載の携帯端末。
(付記4)
前記ノイズ除去処理部は、前記タッチセンサーが最後に操作されてから予め既定された時間が経過した時点で、前記ノイズ除去処理を停止する、付記2に記載の携帯端末。
(付記5)
前記ノイズ除去処理部は、前記バイブレータの駆動を伴わない機能が起動した時点で、前記ノイズ除去処理を停止する、付記2に記載の携帯端末。
(付記6)
前記ノイズ源は、バイブレータであり、
前記検知部は、電話の着信、電子メールの受信、または、アラームの発生があったことを前記契機として検知する、付記1に記載の携帯端末。
(付記7)
前記ノイズ除去処理部は、前記バイブレータの駆動が終了した時点で、前記ノイズ除去処理を停止する、付記6に記載の携帯端末。
(付記8)
前記ノイズ除去処理部は、前記ノイズ除去処理を開始してから予め既定された時間が経過した時点で、前記ノイズ除去処理を停止する、付記6に記載の携帯端末。
(付記9)
前記ノイズ除去処理部は、電話による通話が開始された時点で、前記ノイズ除去処理を停止する、付記6に記載の携帯端末。
(付記10)
前記バイブレータは、シリンダータイプまたはコインタイプである、付記2から9のいずれか1項に記載の携帯端末。
(付記11)
前記バイブレータの振動素子は、セラミックタイプの振動素子である、付記2から9のいずれか1項に記載の携帯端末。
(付記12)
前記ノイズ源は、カメラのオートフォーカス機構であり、
前記検知部は、前記オートフォーカス機構の動作が開始したことを前記契機として検知する、付記1に記載の携帯端末。
(付記13)
前記ノイズ源は、固定磁気ディスク装置であり、
前記検知部は、前記固定磁気ディスク装置の動作が開始したことを前記契機として検知する、付記1に記載の携帯端末。
(付記14)
前記ノイズ除去処理部は、前記ノイズ除去処理として、前記ノイズに逆位相特性の信号を乗算する処理を行う、付記1から13のいずれか1項に記載の携帯端末。
(付記15)
前記ノイズ除去処理部は、前記ノイズ除去処理として、バンドパスフィルタまたはイコライザを用いて、前記ノイズのノイズ成分の帯域を除去する処理を行う、付記1から13のいずれか1項に記載の携帯端末。
(付記16)
マイクおよびノイズ源を備え、前記マイクで集音した音声から、前記ノイズ源で発生したノイズを除去する携帯端末によるノイズ除去処理方法であって、
予め前記マイクに伝達される前記ノイズのノイズ成分の帯域を表すノイズデータを記憶部に記録する記録ステップと、
前記ノイズ源で前記ノイズを発生する契機を検知する検知ステップと、
前記契機が検知されたときに、前記記憶部に記録された前記ノイズデータに基づいて、前記マイクで集音した音声から前記ノイズを除去するノイズ除去処理を行う除去ステップと、を有するノイズ除去処理方法。
【符号の説明】
【0100】
1 CPU
2 表示部
3 タッチセンサー(タッチパネル)
4 タッチセンサー回路
5 バイブレータ
6 バイブレータ駆動回路
7 レシーバ
8 レシーバアンプ
9 D/Aコンバータ
10 マイク
11 マイクアンプ
12 A/Dコンバータ
13 バイブレータノイズサプレッサ
14 イコライザ
15 音声符号/復号器
16 メモリ
17 ノイズデータ格納部
20 オートフォーカスノイズサプレッサ
21 オートフォーカス機構
22 カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクおよびノイズ源を備え、前記マイクで集音した音声から、前記ノイズ源で発生したノイズを除去するノイズ除去処理を行う携帯端末であって、
予め前記マイクに伝達される前記ノイズのノイズ成分の帯域を表すノイズデータを記録する記憶部と、
前記ノイズ源で前記ノイズを発生する契機を検知する検知部と、
前記検知部により前記契機が検知されたときに、前記記憶部に記録された前記ノイズデータに基づいて、前記マイクで集音した音声から前記ノイズを除去するノイズ除去処理を行うノイズ除去処理部と、を備える携帯端末。
【請求項2】
タッチセンサーをさらに備え、
前記ノイズ源は、バイブレータであり、
前記検知部は、前記タッチセンサーが操作されたことを前記契機として検知する、請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記ノイズ除去処理部は、前記ノイズ除去処理を開始してから予め既定された時間が経過した時点で、前記ノイズ除去処理を停止する、請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記ノイズ除去処理部は、前記タッチセンサーが最後に操作されてから予め既定された時間が経過した時点で、前記ノイズ除去処理を停止する、請求項2に記載の携帯端末。
【請求項5】
前記ノイズ除去処理部は、前記バイブレータの駆動を伴わない機能が起動した時点で、前記ノイズ除去処理を停止する、請求項2に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記ノイズ源は、バイブレータであり、
前記検知部は、電話の着信、電子メールの受信、または、アラームの発生があったことを前記契機として検知する、請求項1に記載の携帯端末。
【請求項7】
前記ノイズ除去処理部は、前記バイブレータの駆動が終了した時点で、前記ノイズ除去処理を停止する、請求項6に記載の携帯端末。
【請求項8】
前記ノイズ除去処理部は、前記ノイズ除去処理を開始してから予め既定された時間が経過した時点で、前記ノイズ除去処理を停止する、請求項6に記載の携帯端末。
【請求項9】
前記ノイズ除去処理部は、電話による通話が開始された時点で、前記ノイズ除去処理を停止する、請求項6に記載の携帯端末。
【請求項10】
マイクおよびノイズ源を備え、前記マイクで集音した音声から、前記ノイズ源で発生したノイズを除去する携帯端末によるノイズ除去処理方法であって、
予め前記マイクに伝達される前記ノイズのノイズ成分の帯域を表すノイズデータを記憶部に記録する記録ステップと、
前記ノイズ源で前記ノイズを発生する契機を検知する検知ステップと、
前記契機が検知されたときに、前記記憶部に記録された前記ノイズデータに基づいて、前記マイクで集音した音声から前記ノイズを除去するノイズ除去処理を行う除去ステップと、を有するノイズ除去処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−156625(P2012−156625A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11869(P2011−11869)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】