説明

携帯端末用アンテナ及び携帯端末

【課題】曲げ荷重が負荷された際にアンテナエレメント部の根本部分に加わる応力を低下させることが可能であり、高い強度と耐久性を有する携帯端末用アンテナを提供する。
【解決手段】アンテナエレメント部2と、アンテナエレメント部2の基端部が嵌め込まれる嵌込孔32が形成され、嵌込孔32に嵌め込まれたアンテナエレメント部2を保持する保持部3と、保持部3の下側に設けられる接触導通部4とを備え、嵌込孔32の先端開口側に、先端開口に向かって所定の曲率半径でラッパ状に拡径する拡径部321が形成されている携帯端末用アンテナ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末用アンテナ及び携帯端末用アンテナを備える携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、携帯端末用アンテナは、直線状のアンテナエレメント部と、アンテナエレメント部を保持する保持部と、保持部の下側に設けられる接触導通部を有し、内側に接触バネを収容したホルダー部内に接触導通部が摺動可能に設けられる。アンテナの伸長時には接触導通部がホルダー部内の接触バネと接触し、給電部から給電されるホルダー部から接触バネ、接触導通部、保持部を介してアンテナエレメント部に給電される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−35067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年の携帯端末の小型化に伴い、携帯端末用アンテナには小径な細いものが求められているが、携帯端末用アンテナを細くすると、曲げ荷重が負荷された場合に破損する可能性が高くなる。特に、携帯端末用アンテナでは、曲げ加重が負荷された際に保持部で保持されるアンテナエレメント部の根本部分に大きな応力が加わり、この根本部分からアンテナエレメント部が破損する可能性が大きい。そのため、曲げ荷重が負荷された際にアンテナエレメント部の根本部分に加わる応力を低下させ、高い強度と耐久性を有する携帯端末用アンテナが切望されている。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、曲げ荷重が負荷された際にアンテナエレメント部の根本部分に加わる応力を低下させることが可能であり、高い強度と耐久性を有する携帯端末用アンテナ及びその携帯端末用アンテナを備える携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の携帯端末用アンテナは、アンテナエレメント部と、前記アンテナエレメント部の基端部が嵌め込まれる嵌込孔が形成され、前記嵌込孔に嵌め込まれた前記アンテナエレメント部を保持する保持部と、前記保持部の下側に設けられる接触導通部とを備え、前記嵌込孔の先端開口側に、前記先端開口に向かって所定の曲率半径でラッパ状に拡径する拡径部が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、嵌込孔のラッパ状に拡径する拡径部により、アンテナエレメント部に曲げ荷重が負荷された際にアンテナエレメント部の根本部分に加わる応力を低下させ、アンテナエレメント部の破損を防止することができる。従って、曲げ荷重に対する携帯端末用アンテナの強度を高め、耐久性を向上することができる。
【0007】
本発明の携帯端末用アンテナは、前記アンテナエレメント部の基端部の径が0.6〜1.2mm、前記保持部の径が1.5〜3mmであり、前記拡径部が、深さが1.5〜3mmで且つ曲率半径4〜7mmの略一定の曲率半径で形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、所定寸法のアンテナエレメント部と保持部に対して確実に適切な寸法の拡径部を設定し、曲げ荷重が負荷された際にアンテナエレメント部の根本部分に加わる応力を一層確実に低下させ、アンテナエレメント部の破損防止をより確かなものとすることができる。換言すれば、拡径部の深さや曲率半径が小さ過ぎて、アンテナエレメント部の根本部分に生ずる応力が増加することや、拡径部の深さや曲率半径が大き過ぎて、保持部の先端面と嵌込孔との突き合わせ部分に曲率半径が小さ過ぎる部分が形成され、アンテナエレメント部の根本部分に生ずる応力が増加すること等を確実に防止できる。
【0008】
本発明の携帯端末用アンテナは、前記拡径部の先端に曲率半径0.05〜1.5mmの微小アール部が形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、拡径部と微小アール部の双方により、曲げ荷重が負荷された際にアンテナエレメント部の根本部分に加わる応力を一層確実に低下させ、アンテナエレメント部の破損防止をより確かなものとすることができる。
【0009】
また、本発明の携帯端末は、本発明の携帯端末用アンテナを備えることを特徴とする。
この構成によれば、本発明の携帯端末用アンテナの効果を有する携帯端末を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、曲げ荷重が負荷された際にアンテナエレメント部の根本部分に加わる応力を低下させることが可能であり、携帯端末用アンテナの強度と耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は本発明による実施形態の携帯端末用アンテナの伸長状態における正面図、(b)はその一部の縦断面図。
【図2】実施形態の携帯端末用アンテナのアンテナエレメント部の根本部分近傍を示す縦断説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明による実施形態の携帯端末用アンテナについて説明する。
【0013】
〔実施形態の携帯端末用アンテナ〕
実施形態の携帯端末用アンテナ1は、図1及び図2に示すように、地上デジタルテレビ放送を受信する等のために携帯電話等の携帯端末に設置されるものであり、伸縮可能なアンテナエレメント部2と、アンテナエレメント部2を保持する保持部3と、保持部3の下側に設けられる接触導通部4とを備え、携帯端末筐体内に取り付けられる略有底円筒形のホルダー部5内に接触導通部4が摺動可能に設けられている。
【0014】
ホルダー部5の開口51近傍の内側には接触バネ52が設けられており、携帯端末筐体内の給電部からホルダー部5、接触バネ52に給電される。アンテナエレメント部2の伸長時には接触導通部4が接触バネ52に接触して電気的に接続され、接触導通部4、保持部3を介してアンテナエレメント部2に給電されるようになっており、アンテナエレメント部2の短縮時には、ホルダー部5内に短縮して収容されるアンテナエレメント部2の後述する第1アンテナエレメント21が接触バネ52に接触して電気的に接続され、アンテナエレメント部2に給電されるようになっている。
【0015】
アンテナエレメント部2は、導通性で筒状の第1アンテナエレメント21と、第1アンテナエレメント21に対して出没可能な導通性で筒状の第2アンテナエレメント22と、第2アンテナエレメント22に対して出没可能な導通性で筒状の第3アンテナエレメント23と、第3アンテナエレメント23に対して出没可能な導通性で棒状の第4アンテナエレメント24とから構成される。
【0016】
第1アンテナエレメント21は、その上端側には樹脂製のキャップ211が嵌め込まれていると共に、その下端に径を絞って丸みを帯びて形成されている縮径部212を有する。第2アンテナエレメント22には、上端部の周囲に外側に膨出する接触バネ221が設けられていると共に、その下端には径を絞って丸みを帯びて形成されている縮径部222を有する。第3アンテナエレメント23も同様に、上端部の周囲に外側に膨出する接触バネ231が設けられていると共に、その下端に径を絞って丸みを帯びて形成されている縮径部232を有する。
【0017】
筒状の第2アンテナエレメント22は、筒状の第1アンテナエレメント21内に挿入され、接触バネ221が第1アンテナエレメント21の内壁を長手方向に接触しながら摺動し、接触バネ221を介して第2アンテナエレメント22と第1アンテナエレメント21とが導通される。
【0018】
第1アンテナエレメント21を第2アンテナエレメント22から伸長した際には、縮径部212が接触バネ221に当接して伸長する長さが規制され、第2アンテナエレメント22の上端部及び接触バネ221は第1アンテナエレメント21内に常時存在する。また、第1アンテナエレメント21を第2アンテナエレメント22に対して短縮した際には、第2アンテナエレメント22は第1アンテナエレメント21内にほぼ全長に亘って収納される。
【0019】
筒状の第3アンテナエレメント23は、筒状の第2アンテナエレメント22内に挿入され、接触バネ231が第2アンテナエレメント22の内壁を長手方向に接触しながら摺動し、接触バネ231を介して第3アンテナエレメント23と第2アンテナエレメント22とが導通される。
【0020】
第2アンテナエレメント22を第3アンテナエレメント23から伸長した際には、縮径部222が接触バネ231に当接して伸長する長さが規制され、第3アンテナエレメント23の上端部及び接触バネ231は第2アンテナエレメント22内に常時存在する。また、第2アンテナエレメント22を第3アンテナエレメント23に対して短縮した際には、第3アンテナエレメント23は第2アンテナエレメント22内にほぼ全長に亘って収納される。
【0021】
棒状の第4アンテナエレメント24には、その上端に略球形の拡径部241が形成され、拡径部241の下側における第4アンテナエレメント24の上端近傍の周囲には外側に膨出する接触バネ242が設けられている。第4アンテナエレメント24は第3アンテナエレメント23内に挿入され、接触バネ242が第3アンテナエレメント23の内壁を長手方向に接触しながら摺動し、接触バネ242を介して第4アンテナエレメント24と第3アンテナエレメント23とが導通される。
【0022】
第3アンテナエレメント23を第4アンテナエレメント24から伸長した際には、縮径部232が接触バネ242に当接して伸長する長さが規制され、第4アンテナエレメント24の拡径部241及び接触バネ242は第3アンテナエレメント23内に常時存在する。また、第3アンテナエレメント23を第4アンテナエレメント24に対して短縮した際には、第4アンテナエレメント24は第3アンテナエレメント23内に下部を除いて収納される。
【0023】
保持部3は、略有底円筒形の基体31と、基体31に形成されている嵌込孔32と、その下端部に形成されている略弧状の板状部33とを有し、板状部33の下端面外周には傾斜面で形成される凹部と凸部で構成される係合溝331が複数形成されている。
【0024】
嵌込孔32は、その先端開口側に、先端開口に向かって所定の曲率半径でラッパ状に拡径する拡径部321が形成され、拡径部321の先端の周縁に沿って微小アール部322が形成されていると共に、その下部は略同一径の縮径部323になっており、縮径部323の深さと拡径部321の深さは、例えば1:2〜2:1程度の比率等とされる。嵌込孔32の縮径部323には、アンテナエレメント部2の基端部に相当する第4アンテナエレメント24の下端部243が嵌め込まれる。
【0025】
この嵌込孔32は、例えばアンテナエレメント部2の基端部に相当する第4アンテナエレメント24の下端部243の径が0.6〜1.2mm、保持部3の径に相当する基体31の径が1.5〜3mmである場合に、その全体の深さを3〜6mmとし、縮径部323の深さを1.5〜3mm、縮径部の径を0.6〜1.2mmとすると共に、拡径部321の深さを1.5〜3mm、拡径部321の曲率半径を4〜7mm、好ましくは5〜6mmの略一定とし、又、この際に微小アール部322を形成する場合には、微小アール部322の径を0.05〜1.5mmとすると好適である。
【0026】
接触導通部4は、上部が小径部、中間部が下方に向かって拡径するテーパ状の中間部、下部が大径部となっている略筒形の本体41を有し、本体41の上端部は二股に分かれた板状部42・42になっており、板状部42・42は保持部3の板状部33の両側にそれぞれ配置される。
【0027】
本体41の板状部42・42及び保持部3の板状部33の略中央には孔が形成され、前記孔にピン等を挿入することにより軸支部43とされており、軸支部43で保持部3が接触導通部4に軸支されている。保持部3は、軸支部43を中心に可動して接触導通部4に屈曲可能に支持されると共に、軸支部43で接触導通部4と保持部3及びこれに第4アンテナエレメント24が嵌め込まれているアンテナエレメント部2とが導通される。
【0028】
また、接触導通部4の内部には、本体41内の上端近傍に配置される球体等である係止体44と、本体41内に配置されて係止体44を上方に付勢するコイルバネである弾性材45とが設けられている。係止体44は弾性材45で接触導通部4の先端方向である上方に付勢され、球体の球面など係止体44の係合面が係合溝331に係脱可能に係合される。
【0029】
この係止体44と係合溝331との係合により、アンテナエレメント部2を所定の方向で定置することが可能になっていると共に、アンテナエレメント部2を軸支部43を中心に回転し、係止体44を弾性材45の弾性力に抗して押し下げ係合溝331の係合から外してアンテナエレメント部2を所定の方向に調整し、調整後の方向に対応する係合溝331に係止体44を係合して定置することが可能になっている。
【0030】
本実施形態の携帯端末用アンテナ1は、嵌込孔32のラッパ状に拡径する拡径部321により、アンテナエレメント部2に曲げ荷重が負荷された際にアンテナエレメント部の根本部分に加わる応力を低下させ、アンテナエレメント部2の破損を防止することができる。従って、曲げ荷重に対する携帯端末用アンテナ1の強度を高め、耐久性を向上することができる。更に、微小アール部322を設ける場合には、拡径部321と微小アール部322の双方により、曲げ荷重が負荷された際にアンテナエレメント部2の根本部分に加わる応力を一層確実に低下させ、アンテナエレメント部2の破損防止をより確かなものとすることができる。
【0031】
また、上記好適な設定寸法により、拡径部321の深さや曲率半径が小さ過ぎて、アンテナエレメント部2の根本部分に生ずる応力が増加することや、拡径部321の深さや曲率半径が大き過ぎて、保持部3の先端面と嵌込孔32との突き合わせ部分に曲率半径が小さ過ぎる部分が形成され、アンテナエレメント部2の根本部分に生ずる応力が増加すること等を確実に防止でき、アンテナエレメント部2の破損防止をより一層確実なものとすることができる。
【0032】
〔実施形態の携帯端末用アンテナの強度試験結果〕
実施形態の携帯端末用アンテナ1の強度試験結果について説明する。
【0033】
本試験で用いられる実施例の携帯端末用アンテナ1は、アンテナエレメント部2の第4アンテナエレメント24を直径0.8mmのニッケル−チタン系合金製とし、保持部3の縮径部323を径0.8mm、深さ2mmとし、保持部3の拡径部321を曲率半径5.5mmのラッパ状とし、微小アール部322の曲率半径を0.1mmとするものである。また、比較例とする携帯端末用アンテナは、実施例の携帯端末用アンテナ1の拡径部321の部分を縮径部323に代えて、略一定の径0.8mmの嵌込孔とし、その先端周縁に曲率半径0.1mmの微小アール部が形成されている構成である。
【0034】
この実施例の携帯端末用アンテナ1と比較例の携帯端末用アンテナに耐屈曲性の強度試験を行った。その試験方法は、アンテナエレメント部2を伸長した状態でキャップ211を把持し、図2の太線一点鎖線で示すように、アンテナエレメント部2を強制的に90°曲げて再び元の状態に戻す動作を、保持部3及びアンテナエレメント部2の屈曲可能方向(可動方向)と直交する方向の左右に繰り返し行い、破断するまでの動作回数を実施例と比較例で各3回行って確認した。アンテナエレメント部2が正中の位置から左又は右に曲げられて正中に再び位置するまでの時間は1秒、正中から左→右→正中となる1サイクルの時間は2秒とした。破断する迄の回数の結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1の試験結果から明らかなように、実施例の携帯端末用アンテナ1は、所要強度として要求される破断回数である2000回を大幅に上回り、平均的には2500回前後の破断回数となる。これに対して、比較例の携帯端末用アンテナは、所要強度として要求される破断回数である2000回を超えることができず、平均的には1500回前後の破断回数となる。即ち、本実施形態の携帯端末用アンテナ1の構成とすることにより、大幅に強度と耐久性を高められることが分かる。
【0037】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明には、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、例えば携帯電話等の携帯端末用アンテナとして利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…携帯端末用アンテナ 2…アンテナエレメント部 21…第1アンテナエレメント 211…キャップ 212…縮径部 22…第2アンテナエレメント 221…接触バネ 222…縮径部23…第3アンテナエレメント 231…接触バネ 232…縮径部 24…第4アンテナエレメント 241…拡径部 242…接触バネ 243…下端部 3…保持部 31…基体 32…嵌込孔 321…拡径部 322…微小アール部 323…縮径部 33…板状部 331…係合溝 4…接触導通部 41…本体 42…板状部 43…軸支部 44…係止体 45…弾性材 5…ホルダー部 51…開口 52…接触バネ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナエレメント部と、
前記アンテナエレメント部の基端部が嵌め込まれる嵌込孔が形成され、前記嵌込孔に嵌め込まれた前記アンテナエレメント部を保持する保持部と、
前記保持部の下側に設けられる接触導通部とを備え、
前記嵌込孔の先端開口側に、前記先端開口に向かって所定の曲率半径でラッパ状に拡径する拡径部が形成されていることを特徴とする携帯端末用アンテナ。
【請求項2】
前記アンテナエレメント部の基端部の径が0.6〜1.2mm、前記保持部の径が1.5〜3mmであり、
前記拡径部が、深さが1.5〜3mmで且つ曲率半径4〜7mmの略一定の曲率半径で形成されていることを特徴とする請求項1記載の携帯端末用アンテナ。
【請求項3】
前記拡径部の先端に曲率半径0.05〜1.5mmの微小アール部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の携帯端末用アンテナ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の携帯端末用アンテナを備えることを特徴とする携帯端末。



【図1】
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【図2】
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